本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置10は、カラー画像又は白黒画像を形成するものであり、正面視で左側に配置された第1処理部10Aと、第1処理部10Aと着脱可能とされ右側に配置された第2処理部10Bとを有している。第1処理部10A及び第2処理部10Bは、筐体11を有している。
第2処理部10Bの内部であって鉛直方向上側には、コンピュータから送られてくる画像データに画像処理を施す画像データ処理部を含み、画像形成装置10の各部の駆動制御を行う制御部13が設けられている。また、制御部13の下側には、電源ユニット230が設けられている。電源ユニット230は、外部から取り込んだ交流電流を直流電流に変えて、画像形成装置10の各部へ給電を行っている。
一方、第1処理部10Aの内部であって鉛直方向上側には、第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各トナーを収容するトナーカートリッジ14V、14W、14Y、14M、14C、14Kが水平方向に並んで設けられている。なお、第1特別色及び第2特別色には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外の特別色(透明を含む)から選択される。また、以後の説明では、V、W、Y、M、C、Kを区別する場合は、数字の後にV、W、Y、M、C、Kのいずれかの英字を付して説明し、V、W、Y、M、C、Kを区別しない場合は、V、W、Y、M、C、Kを省略する。
トナーカートリッジ14の下側には、各色のトナーに対応する6つの画像形成ユニット16が、各トナーカートリッジ14と対応して水平方向に並んで設けられ、各トナーカートリッジ14の下側には、画像形成ユニット16毎に露光ユニット40が設けられている。露光ユニット40は、前述した制御部13から画像処理を施された画像データを受け取り、半導体レーザ(図示省略)を色材階調データに応じて変調して、これらの半導体レーザから露光光Lを出射するように構成されている。詳細には、後述する感光体18(図2参照)の表面に各色に対応した露光光Lを照射して感光体18上に静電潜像を形成するようになっている。
図2に示すように、画像形成ユニット16は、矢印A(図2の時計回り)方向に回転駆動される感光体18を備えている。そして、感光体18の周囲には、感光体18を帯電するコロナ放電方式(非接触帯電方式)のスコロトロン帯電器20と、露光ユニット40によって出射された露光光Lにより感光体18上に形成された静電潜像を各色の現像剤(トナー)で現像する現像装置22と、転写後の感光体18の表面をクリーニングするクリーニングブレード24と、転写後の感光体18の表面に光を照射して除電を行うイレーズランプ26が設けられている。そして、スコロトロン帯電器20、現像装置22、クリーニングブレード24、イレーズランプ26は、感光体18の表面と対向して、感光体18の回転方向上流側から下流側へ向けてこの順番で配置されている。
また、現像装置22は、画像形成ユニット16の側方(本実施形態では紙面右側)に配置され、トナーを含んだ現像剤Gが充填された現像剤収容部材22Aと、現像剤収容部材22Aに充填されたトナーを感光体18の表面に移動させる現像ロール22Bとを含んで構成されている。そして、現像剤収容部材22Aは、トナーカートリッジ14(図1参照)とトナー供給路(図示省略)を通して接続されており、トナーカートリッジ14からトナーが供給されるようになっている。
図1に示すように、各画像形成ユニット16の下側には、転写部32が設けられている。転写部32は、各感光体18と接触する無端状の中間転写ベルト34と、中間転写ベルト34の内側に配置され、各感光体18上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト34に多重転写させる6つの1次転写部材としての1次転写ロール36とを含んで構成されている。中間転写ベルト34は、図示しないモータで駆動される駆動ロール38と、中間転写ベルト34の張力を調整する張力付与ロール41と、後述する2次転写ロール62と対向配置された支持ロール42と、複数個の支持ロール44とに巻き掛けられており、駆動ロール38により、図1の矢印B方向(反時計回り方向)に循環移動されるようになっている。
詳細には、各1次転写ロール36は、中間転写ベルト34を挟んでそれぞれの各画像形成ユニット16の感光体18と対向配置されている。また、1次転写ロール36は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。この構成により感光体18上に形成されたトナー画像が中間転写ベルト34に転写されるようになっている。また、駆動ロール38と中間転写ベルト34を挟んで反対側には、先端部が中間転写ベルト34と接触するクリーニングブレード46が設けられおり、このクリーニングブレード46は、循環移動する中間転写ベルト34上の残留トナーや紙粉等を除去するようになっている。
一方、転写部32の下方で第1処理部10Aの下側には、記録媒体の一例としてのシート部材Pが収納される大型の給紙カセット48が水平方向に並んで2個設けられており、シート部材Pが大量に収納可能とされている。なお、2個の給紙カセット48は、同様の構成とされているため、一方の給紙カセット48について説明し、他方の給紙カセット48については説明を省略する。
給紙カセット48は、第1処理部10Aから引き出し自在とされており、給紙カセット48を第1処理部10Aから引き出すと、給紙カセット48内に設けられシート部材Pが載せられるボトムプレート50が、図示せぬ制御手段の指示によって下降するようになっている。ボトムプレート50が下降することで、ユーザがシート部材Pを補充可能となっている。また、給紙カセット48を第1処理部10Aに取り付けると、ボトムプレート50が、制御手段の指示によって上昇する。給紙カセット48の一端側の上方には、給紙カセット48からシート部材Pを搬送経路60へ送り出す送出ロール52が設けられており、上昇するボトムプレート50に載せられた最上位のシート部材Pと送出ロール52が接触するようになっている。さらに、送出ロール52のシート部材搬送方向下流側(以下単に「下流側」という)には、シート部材Pの重送を防止する分離ロール56が設けられ、分離ロール56の下流側には、シート部材Pを搬送方向下流側に搬送する複数個の搬送ロール54が設けられている。
給紙カセット48の上側に設けられる搬送経路60は、給紙カセット48から送出されたシート部材Pを第1折返部60Aで反対側(図示の左側)に折り返し、さらに、第2折返部60Bで反対側(図示の右側)に折り返して、2次転写ロール62と支持ロール42で挟まれた転写位置Tに向けて延びるようになっている。
第2折返部60Bと転写位置Tとで挟まれる部位には、搬送されるシート部材Pの傾き等を修正するアライナー(図示省略)が設けられており、このアライナーと転写位置Tとで挟まれる部位には、中間転写ベルト34上のトナー画像の移動タイミングとシート部材Pの搬送タイミングを合わせるための位置合せロール64が設けられている。
また、2次転写ロール62は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。この構成により中間転写ベルト34上に多重転写された各色のトナー画像が、2次転写ロール62によって搬送経路60に沿って搬送されてきたシート部材Pに2次転写される構成となっている。さらに、搬送経路60の第2折返部60Bへ合流するように、第1処理部10Aの側面から延びる予備経路66が設けられており、第1処理部10Aに隣接して配置された外付けの大容量集積部(図示省略)から送出されたシート部材Pが、予備経路66を通って搬送経路60に入り込めるようになっている。
一方、転写位置Tの下流側には、トナー画像が転写されたシート部材Pを第2処理部10Bに向けて搬送する複数個の搬送装置70が設けられている。搬送装置70は、図示しない駆動ロールと従動ロールに巻き掛けられる複数本のベルト部材が備えられており、駆動ロールを回転駆動させてベルト部材を回転させることで、シート部材Pを下流側に向けて搬送するようになっている。
搬送装置70の下流側は、第1処理部10Aから第2処理部10Bへ延びており、搬送装置70によって送り出されたシート部材Pが、第2処理部10Bに設けられた搬送装置80によって受取られ、さらに下流側に搬送されるようになっている。また、搬送装置80の下流側には、シート部材Pの表面に転写されたトナー画像をシート部材Pに熱と圧力で定着させる定着装置の一例としての定着ユニット82が設けられている。そして、定着ユニット82の上方には、断熱構造100が設けられている。
図3に示すように、定着ユニット82は、定着ベルト84を備える定着ベルトモジュール86と、定着ベルトモジュール86に圧接配置された加圧ロール88とで構成されている。定着ベルトモジュール86と加圧ロール88との間で、通過するシート部材Pを加圧加熱してトナー画像を定着させるニップ部Nが形成されている。
定着ベルトモジュール86は、無端状の定着ベルト84と、加圧ロール88側で定着ベルト84を張架しながらモータ(図示省略)の回転力で回転駆動する加熱ロール89と、加熱ロール89と異なる位置で内側から定着ベルト84を張架する支持ロール90とを備えている。また、定着ベルト84の外側に配置されてその周回経路を規定する支持ロール92と、加熱ロール89から支持ロール90までの定着ベルト84の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール94とを備えている。
さらに、定着ベルトモジュール86と加圧ロール88とが圧接する領域であるニップ部N内の下流側領域で且つ定着ベルト84の内側には、加熱ロール89の近傍位置に配置され加熱ロール89の外周面から定着ベルト84を剥離する剥離パッド96と、ニップ部Nの下流側において定着ベルト84が張架される支持ロール98とが設けられている。
さらに、ニップ部Nの上流側において、定着ベルトモジュール86の定着ベルト84に接触し、かつ、押し付けられた状態で、定着ベルト84の表面を予め定められた表面粗さRaに調整する表面調整ロール99が設けられている。
加熱ロール89は、アルミニウムからなる円筒状の芯金の表面の金属磨耗を防止する保護層として、芯金表面に厚さ200μmのフッ素樹脂皮膜が形成されたハードロールである。さらに、加熱ロール89の内部には、加熱手段としてハロゲンヒータ102が設けられている。また、支持ロール90は、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、内部には加熱源としてハロゲンヒータ104が配設されており、定着ベルト84を内面側から加熱するようになっている。さらに、支持ロール90の両端部には定着ベルト84を外側に押圧するバネ部材(図示省略)が配設されている。
支持ロール92は、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、支持ロール92の表面には厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト84の外周面からの僅かなオフセットトナーや紙粉が支持ロール92に堆積するのを防止するために形成されるものである。この支持ロール92の内部には、加熱手段としてのハロゲンヒータ106が配設されており、定着ベルト84を外周面側から加熱するようになっている。つまり、本実施形態では、加熱ロール89と支持ロール90及び支持ロール92とによって、定着ベルト84が加熱される構成となっている。
姿勢矯正ロール94は、アルミニウムで形成された円柱状ロールであり、姿勢矯正ロール94の近傍には、定着ベルト84の端部位置を測定する端部位置測定機構(図示省略)が配置されている。そして、姿勢矯正ロール94には、端部位置測定機構の測定結果に応じて定着ベルト84の軸方向における当り位置を変位させる軸変位機構(図示省略)が配設され、定着ベルト84の蛇行を制御するように構成されている。
また、剥離パッド96は、一例として、鉄系の金属や樹脂等の剛体で形成された加熱ロール89と対応する長さを有するブロック状の部材である。剥離パッド96の断面形状は、加熱ロール89に面する湾曲した内側面96Aと、定着ベルト84を加圧ロール88に向けて押圧する押圧面96Bと、押圧面96Bに対して決められた角度を有して定着ベルト84を屈曲させる外側面96Cとを備えて構成される略円弧状を呈している。詳細には、押圧面96Bと外側面96Cから構成される角部Uは、加圧ロール88によって角部Uに押し付けられた定着ベルト84を屈曲させ、角部Uをシート部材Pの先端が通過する際に、シート部材Pの先端と定着ベルト84を剥離させるようになっている。
一方、加圧ロール88は、アルミニウムからなる円柱状ロール88Aを基体として、基体側から順に、シリコーンゴムからなる弾性層88Bと、膜厚100μmのフッ素系樹脂からなる剥離層とが積層された構成となっている。また、加圧ロール88は、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリング等の付勢手段によって定着ベルト84が加熱ロール89に巻き回された部位に圧接されて設けられている。これにより、定着ベルトモジュール86の加熱ロール89が矢印C方向へ回転移動するのに伴って、加熱ロール89に従動して矢印E方向に回転移動するようになっている。
表面調整ロール99は、例えば外径30mmの円筒状ロールであり、加熱ロール89に対し定着ベルト84を挟んで対向する位置に設けられている。表面調整ロール99の詳細は後述する。表面調整ロール99の周辺には、表面調整ロール99を、定着ベルト84に対し接近又は離間させる方向に移動させる移動機構99Aが設けられており、移動機構99Aが備えるモータ(図示省略)の駆動より、表面調整ロール99を、定着ベルト84に対し接近又は離間させる方向に移動させる。また、移動機構99Aは、表面調整ロール99を、定着ベルト84に接触させた状態で、更に接近させる方向にモータを駆動させることにより、表面調整ロール99は、定着ベルト84の表面に押し付けられた状態となる。
図1に示すように、定着ユニット82の下流側には、定着ユニット82から送出されたシート部材Pを下流側へ搬送する搬送装置108が設けられ、搬送装置108の下流側には、定着ユニット82によって加熱されたシート部材Pを冷却する冷却ユニット110が設けられている。冷却ユニット110は、搬送経路60を挟んで上側にシート部材Pの熱を吸収する吸収装置112が設けられ、下側には、搬送されるシート部材Pを吸収装置112に押し付ける押付装置114が設けられている。また、冷却ユニット110の下流側には、シート部材Pの反りを矯正するデカール処理ユニット140が設けられている。
吸収装置112には、シート部材Pと接触し、シート部材Pの熱を吸収する無端状の吸収ベルト116が設けられており、吸収ベルト116を支持する複数個の支持ロール118と、吸収ベルト116へ駆動力を伝達する駆動ロール120が、吸収ベルト116の内側に設けられている。さらに、吸収ベルト116の内側には、吸収ベルト116と面状に接触して吸収ベルト116が吸収した熱を放熱させるアルミニウム材料で形成されたヒートシンク122が設けられている。
押付装置114には、シート部材Pと接触し、シート部材Pを吸収装置112へ押し付ける無端状の押付ベルト130と、押付ベルト130が張架されると共に回転可能に支持される複数個の支持ロール132が設けられている。これらの構成により、シート部材Pの熱が奪われ、シート部材Pが冷却されるようになっている。
デカール処理ユニット140の下流には、片面に画像が形成されたシート部材Pを第2処理部10Bの側面に取り付けられた排出部196に排出する排出ロール198が設けられている。ここで、シート部材Pの両面に画像を形成させる場合は、デカール処理ユニット140の下流に設けられた反転ユニット200へシート部材Pが搬送される。
反転ユニット200には、反転経路202が設けられている。反転経路202には、搬送経路60から分岐する分岐パス202Aと、分岐パス202Aに沿って搬送されるシート部材Pを第1処理部10A側に向けて搬送する用紙搬送パス202Bと、用紙搬送パス202Bに沿って搬送されるシート部材Pを逆方向に向けて折返してスイッチバック搬送させ表裏を反転させる反転パス202Cとが設けられている。この構成により、反転パス202Cでスイッチバック搬送されたシート部材Pは、第1処理部10Aに向けて搬送され、さらに、給紙カセット48の上方に設けられた搬送経路60に入り込み、転写位置Tへ再度送り込まれるようになっている。
次に、表面形状調整部材の一例である表面調整ロール99について説明する。
図4は、本実施の形態における表面調整ロール99の構造を説明する断面図である。図4に示すように、表面調整ロール99は、金属製の円筒状ロールからなる基体99Bと、定着ベルト84に接触する表面調整層99Dとを有している。
基体99Bは、例えば、外径30mmのステンレス(SUS)で形成された円柱状ロールである。
表面調整ロール99の表面調整層99Dの実施の形態としては、フッ素樹脂及び平均粒径2μm以上50μm以下の範囲の無機粒子を含み、プライマー層99Cを介して基体99Bの表面に固着されているものが挙げられる。
表面調整層99Dがフッ素樹脂及び平均粒径2μm以上50μm以下の範囲の無機粒子を含むことにより、無機粒子の種類に応じて、定着ベルト84の表面が研磨されたり、定着ベルト84の表面に無機粒子の粒径に相当する凹凸形状が付与されたりする。そして、定着ベルト84の表面が予め定められた表面粗さRaの範囲に調整されることにより、定着動作の際に生じる定着ベルト84の表面に生じる傷跡や筋跡に起因する画像不良の発生が低減される。
このとき、定着ベルト84の表面は、表面粗さRa0.05μm以上0.2μm以下の範囲、特に0.1μm以上0.15μm以下の範囲に調整されることが好ましい。
この場合、表面調整層99Dに含まれるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体等のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。さらに、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
これらのフッ素樹脂の中でも、特に耐熱性、機械特性等の面から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)等のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が好適に用いられる。
表面調整層99Dにフッ素樹脂が含まれることにより、表面調整ロール99の表面にトナーが付着することが防止される。
表面調整層99Dに含まれる無機粒子を構成する無機化合物としては、例えば、炭化ケイ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、グラファイト、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等が挙げられる。これらの中でも、炭化ケイ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム等が好ましく、特に酸化アルミニウムが好ましい。
無機粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以上であり、50μm以下である。無機粒子の平均粒径が過度に小さいと、定着ベルトの表面に付与する形状が小径となるため、表面粗さを変えにくくなる傾向がある。また、平均粒径が過度に大きいと、定着ベルトの表面に付与する形状が大径となるため、表面粗さを変えにくくなる傾向がある。
無機粒子の形状は、球状、棒状、針状、繊維状等が挙げられ、中でも球状が好ましい。
表面調整層99Dの厚さは、使用する無機粒子の大きさに対して、通常半分以上、2/3以下が好ましい。表面調整層99Dの厚さが過度に薄いと、無機粒子が脱落する傾向がある。また、表面調整層99Dの厚さが過度に厚いと、無機粒子の表面に出ている高さが小さくなるので、表面調整能力が低下する傾向がある。
プライマー層99Cは、基体99Bに表面調整層99Dを被覆接着する接着層としての役割を有するものである。プライマー層99Cを構成する材料としては、例えば、付加反応型シリコーンゴム、シランカップリング剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
これらの化合物を用いてプライマー層99Cを形成することにより、基体99Bと表面調整層99Dとが接着される。
また、表面調整層99Dの他の実施形態として、前述した基体99Bの表面にブラスト処理を施すことにより凹凸形状を形成し、これにフッ素樹脂を被覆することにより調製されたものが挙げられる。
この場合、予め定められた荷重をかけて表面調整ロール99を定着ベルト84の表面に接触させることにより、表面調整ロール99の表面に形成された凹凸形状が型押しされ、定着ベルト84の表面に凹凸形状が付与される。そして、定着ベルト84の表面が予め定められた表面粗さRaの範囲に調整され、定着ベルト84の表面に生じる傷跡や筋跡に起因する画像不良の発生を低減させる。
図5は、制御部13の構成を示す図である。
制御部13は、画像形成装置10の全体の制御を司るCPU150を備える。CPU150は、ROM152、RAM154、ハードディスク記憶装置156、画像データ入力部158、操作表示部160、画像形成制御部162、及び画像データ処理部164の各々と、コントロールバスやデータバス等のバス166を介して接続される。
ROM152は、画像形成装置10を制御するための制御プログラムを記憶する。RAM154は、種々のデータ等を処理するためのワークスペースとして用いられる。ハードディスク記憶装置156は、画像データや画像形成に関する種々のデータ等を記憶する。
画像データ入力部158は、パソコン等から画像データの入力を受け付ける。入力された画像データは、ハードディスク記憶装置156に送信される。
操作表示部160は、操作機能と表示機能とが一体化されたタッチパネルの他、ユーザが各種操作を行うための操作ボタンを含んで構成される。操作表示部160は、シート部材Pへの画像形成の開始等の操作を受け付け、画像形成装置10の制御の状態等をユーザに報知する。
画像形成制御部162は、画像データに基づいてシート部材Pに画像を形成するために、画像形成ユニット16K、16C、16M、16Y、16W、16Vの駆動、及び各種ロール等のモータ(図示省略)の駆動を制御する。また、画像形成制御部162は、給紙カセット48に設けられた用紙サイズ検知センサ(図示省略)や、予め設定された用紙情報を含む画像形成設定情報から、シート部材Pの大きさや重量に関する情報(例えば、シート部材Pの搬送方向の長さである用紙長、用紙幅、坪量など)を取得して、シート部材Pに対する画像形成制御を行う。
画像データ処理部164は、ハードディスク記憶装置156に記憶された画像データに対して、各色の色材階調データへの変換などの画像処理を行う。
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、画像形成装置10の画像形成工程について説明する。
図1に示すように、画像形成装置10の各ユニットが作動状態になると、制御部13で画像処理が施された画像データは、各色の色材階調データに変換され、露光ユニット40に順次出力される。各露光ユニット40では、各色の色材階調データに応じて各露光光Lを出射して、スコロトロン帯電器20(図2参照)によって帯電した各感光体18に走査露光を行い、静電潜像が形成される。そして、感光体18(図2参照)上に形成された静電潜像は、現像装置22によってそれぞれ第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像(現像剤像)として顕在化され現像が行われる。
続いて、各画像形成ユニット16V、16W、16Y、16M、16C、16Kの感光体18上に順次形成された各色のトナー画像は、6つの1次転写ロール36V、36W、36Y、36M、36C、36Kによって中間転写ベルト34上に順次多重転写される。そして、中間転写ベルト34上に多重転写された各色のトナー画像は、2次転写ロール62によって、給紙カセット48から搬送されてきたシート部材P上に2次転写される。トナー画像が転写されたシート部材Pは、搬送装置70によって第2処理部10Bの内部に設けられた定着ユニット82に向けて搬送される。
続いて、シート部材P上の各色のトナー画像が定着ユニット82により加熱、加圧されることでシート部材Pに定着される。さらに、トナー画像が定着されたシート部材Pは、冷却ユニット110を通過して冷却された後、デカール処理ユニット140に送り込まれ、シート部材Pに生じた反りが矯正される。そして、反りが矯正されたシート部材Pは、排出ロール198によって排出部196に排出される。
一方、画像が形成されていない非画像面に画像を形成させる場合(両面印刷の場合)は、切替部材(図示省略)によってシート部材Pを反転ユニット200に送り出す。反転ユニット200へ送り出されたシート部材Pは、反転経路202を通過して反転され、給紙カセット48の上方に設けられた搬送経路60に送り込まれて、前述した手順で裏面にトナー画像が形成される。
上記のシート部材Pに対する画像形成工程が終了すると、制御部13のCPU150により、図6に示す表面調整制御処理ルーチンが実行される。
まず、ステップ300において、終了した画像形成工程で画像が形成されたシート部材Pに関する情報として、用紙長、用紙幅、及び坪量を、画像形成制御部162から取得する。
そして、ステップ302において、上記ステップ300で取得した用紙長、用紙幅、坪量に基づいて、以下の(1)式に従って、定着ベルト84へ与えるダメージ量を表わすベルトダメージ量を算出する。
(ベルトダメージ量)
=(用紙長)*{(用紙幅補正係数)+(坪量補正係数)}/2
・・・(1)
ただし、用紙幅補正係数は、用紙幅による定着ベルト84へのベルトダメージ度合いに応じた重み係数であり、用紙幅に応じて予め定められている。坪量補正係数は、坪量による定着ベルト84へのベルトダメージ度合いに応じた重み係数であり、坪量に応じて予め定められている。
次のステップ304では、前回までのベルトダメージ量を累積したベルトダメージ累積量に、上記ステップ302で算出したベルトダメージ量を加算して、ベルトダメージ累積量を更新する。なお、複数のシート部材Pに対して連続して画像形成工程が行われていた場合には、シート部材Pの枚数分のベルトダメージ量を、ベルトダメージ累積量に加算する。
そして、ステップ306において、上記ステップ304で更新されたベルトダメージ累積量が、閾値以上であるか否かを判定し、ベルトダメージ累積量が、閾値未満である場合には、表面調整動作を行うときの条件を満たしていないと判断して、表面調整制御処理ルーチンを終了する。なお、ベルトダメージ累積量が閾値以上であることが、予め定められた条件の一例である。
一方、上記ステップ306で、ベルトダメージ累積量が、閾値以上である場合、表面調整動作を行うときの条件を満たしたと判断し、ステップ308において、画像形成制御部162に対し、表面調整動作を行うように指示する。
このとき、画像形成制御部162では、表面調整ロール99を、定着ベルト84へ接近させる方向に、移動機構99Aのモータを駆動させて、表面調整ロール99を、定着ベルト84に接触させた状態とする。また、画像形成制御部162は、加熱ロール89、支持ロール90、及び支持ロール92に対する各モータを駆動させて、定着ベルト84を回転させる。画像形成制御部162は、更に、表面調整ロール99を、定着ベルト84へ接近させる方向に、移動機構99Aのモータを駆動させて、表面調整ロール99を、定着ベルト84に対して押圧した状態とし、予め設定された時間だけ、表面調整ロール99を、定着ベルト84に対して押圧させた状態を継続する。
当該押圧状態では、表面調整ロール99と加熱ロール89とで定着ベルト84を挟み、定着ベルト84の回転に応じて表面調整ロール99が矢印F方向(図3参照)に従動回転する。表面調整ロール99が定着ベルト84の回転に伴い従動回転することにより、定着ベルト84の表面に生じる用紙突入傷に類似する形状の凹凸が、定着ベルト84の表面に付与される。
当該押圧状態が、予め設定された時間だけ経過すると、画像形成制御部162では、表面調整ロール99を、定着ベルト84から離間させる方向に、移動機構99Aのモータを駆動させて、表面調整ロール99を、定着ベルト84に接触していない状態とする。
そして、ステップ310において、ベルトダメージ累積量をリセットして、表面調整制御処理ルーチンを終了する。
以上説明したように、第1の実施の形態に係る画像形成装置によれば、予め定められた条件が満たされたときに、定着ベルトに対する表面調整動作を行うように制御することにより、定着ベルトの表面に生じる傷跡や筋跡に起因する画像不良の発生が、ユーザからの操作入力がなくても抑制される。
また、定着ベルトと加圧ロールとの間を通過したシート部材の用紙長に、用紙幅及び坪量に応じた重み付けしたベルトダメージ量を累積したベルトダメージ累積量に関する条件が満たされたときに、定着ベルトに対する表面調整動作を行うように制御することにより、定着ベルトの表面に生じる傷跡や筋跡に起因する画像不良の発生が効率良く抑制される。
次に第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に係る画像形成装置は、第1の実施の形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
第2の実施の形態では、ユーザの選択に応じて、シート部材Pに対する画像形成工程が行われていない状態となる期間、表面調整ロールを定着ベルトに接触させるようにしている点が、第1の実施の形態と異なっている。
第2の実施の形態に係る画像形成装置では、シート部材Pに対する画像形成工程が行われていない状態となる期間、表面調整ロールを定着ベルトに接触させるモードにするか否かが、ユーザによって選択される。
以下、シート部材Pに対する画像形成工程が行われていない状態となる期間、表面調整ロールを定着ベルトに接触させるモードが選択されている場合について説明する。画像形成装置では、上記のシート部材Pに対する画像形成工程が終了すると、画像形成制御部162によって、表面調整ロール99を、定着ベルト84へ接近させる方向に、移動機構99Aのモータを駆動させて、表面調整ロール99を、定着ベルト84に接触させた状態とする。また、シート部材Pに対する画像形成工程が開始されるときに、画像形成制御部162によって、表面調整ロール99を、定着ベルト84から離間させる方向に、移動機構99Aのモータを駆動させて、表面調整ロール99を、定着ベルト84に接触させていない状態とする。
また、シート部材Pに対する画像形成工程が終了すると、制御部13のCPU150により、第1の実施の形態と同様に、表面調整制御処理ルーチンが実行される。
ここで、上記ステップ306で、ベルトダメージ累積量が、閾値以上であると判断され、上記ステップ308で、画像形成制御部162に対して、表面調整動作が指示される。
表面調整ロール99は、定着ベルト84に接触している状態となっているため、画像形成制御部162は、更に、表面調整ロール99を、定着ベルト84へ接近させる方向に、移動機構99Aのモータを駆動させて、表面調整ロール99を、定着ベルト84に対して押圧した状態とし、予め設定された時間だけ、表面調整ロール99を、定着ベルト84に対して押圧させた状態を継続する。
当該押圧状態が、予め設定された時間だけ経過すると、画像形成制御部162では、移動機構99Aのモータの駆動を停止させて、表面調整ロール99を、定着ベルト84に対して押圧させた状態を終了し、表面調整ロール99を、定着ベルト84に接触させた状態を継続させる。
シート部材Pに対する画像形成工程が行われていない状態となる期間、表面調整ロールを定着ベルトに接触させるモードが選択されていない場合については、上記第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
なお、上記第1の実施の形態〜第2の実施の形態では、定着ユニットを通過したシート部材の用紙長に、用紙幅及び坪量に応じた重み係数を乗算した値の累積量が、閾値以上であることを条件に、表面調整動作を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、定着ユニットを通過したシート部材の用紙長の累積量が、閾値以上であることを条件に、表面調整動作を行うようにしてもよい。
また、画像形成工程が終了したときに、制御部が、当該画像形成工程のシート部材の用紙情報を取得して、ベルトダメージ累積量を更新する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、シート部材が、定着ユニットを通過する毎に、制御部が、当該シート部材の用紙情報を取得して、ベルトダメージ量を算出し、ベルトダメージ累積量を更新するようにしてもよい。
また、画像形成工程が終了する毎に、ベルトダメージ量を演算する場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。用紙長、用紙幅、及び坪量に応じて予め求められたベルトダメージ量をメモリに記憶しておき、終了した画像形成工程のシート部材の用紙長、用紙幅、及び坪量に対応するベルトダメージ量を取得するようにしてもよい。