以下、本発明に係る実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、矢印UPを上方向、矢印RIを右方向、矢印FRを前方向とし、各図において、上記各矢印が示されている場合には、その矢印で示す方向に従って上下・左右・前後の表現をする。また、以下において、シート状部材である記録媒体の搬送方向上流側及び搬送方向下流側を、単に「上流側」、「下流側」という場合がある。
図1で示すように、本実施形態に係る画像形成装置10は、記録媒体の一例としての記録用紙Pに現像剤像(以下「トナー画像」という)を二次転写して搬送する工程までとされる第1処理部12と、第1処理部12から搬送されて来た記録用紙Pにトナー画像を定着する工程以降の処理を行う第2処理部14と、が一体的に(記録用紙Pを受け渡し可能に)左右横方向(水平方向)に連結されて構成されている。
第1処理部12は、第1筐体11内に組み込まれ、第2処理部14は、第1筐体11と着脱可能とされた第2筐体13内に組み込まれている。そして、第1筐体11に隣接する第2筐体13上には、制御手段の一例としての制御部16が組み込まれた第3筐体15が配設されており、その第3筐体15の横(下流側)の第2筐体13上には、表示装置18が配設されている。
第1処理部12には、記録用紙Pを収容する給紙部20と、記録用紙Pを搬送する搬送部120と、記録用紙Pにトナー画像を転写する転写部100と、転写部100に一次転写させるトナー画像を形成する画像形成部30と、が備えられている。具体的に説明すると、まず、第1筐体11内の下部には、記録用紙Pがそれぞれ収容される2個の給紙カセット22が左右横方向に並んで設けられている。
この給紙カセット22は、第1筐体11内から前方側へ引出可能とされており、給紙カセット22を第1筐体11内から引き出すと、給紙カセット22内に設けられたボトムプレート24が下降し、その上に記録用紙Pを載せることで、記録用紙Pの補充ができるようになっている。なお、給紙カセット22を第1筐体11内に取り付けると、ボトムプレート24は上昇する構成になっている。
各給紙カセット22の上方には搬送部120が配設されており、その搬送部120の上方には転写部100が配設され、その転写部100の上方には画像形成部30が配設されている。なお、画像形成部30、転写部100、搬送部120については後述する。また、第1筐体11の第2筐体13と対向する右壁面11Aには、記録用紙Pを上部から搬出し、下部から搬入させる開口部26が形成されている。
第2処理部14には、転写部100によって記録用紙Pに二次転写されたトナー画像を、その記録用紙Pに定着するための定着装置の一例としての定着部50と、定着部50によってトナー画像が定着された記録用紙Pを冷却するための冷却部60と、両面印刷時に、記録用紙Pを反転させて、再度第1処理部12へ搬送するための反転部80と、が備えられている。
すなわち、第1筐体11の右壁面11Aと対向する第2筐体13の左壁面13Bには、記録用紙Pを上部から搬入し、下部から搬出させる開口部28が、開口部26と対向して形成されており、その上側の開口部28を通って搬送されて来た記録用紙Pに対してトナー画像を定着可能なように定着部50が配設されている。なお、定着部50については、後で詳述する。
また、定着部50の横(下流側)には冷却部60が配設されている。この冷却部60は、記録用紙Pの搬送経路122(後述)を挟んで上側に、記録用紙Pと接触して、その熱を吸収する吸収装置70が設けられ、下側に、搬送される記録用紙Pを吸収装置70に押し付ける押付装置62が設けられて構成されている。
吸収装置70は、駆動力を伝達する駆動ロール72と複数個の張架ロール73に巻き掛けられた無端状の吸収ベルト74を有しており、その吸収ベルト74の内側には、吸収ベルト74と面状に接触して、吸収ベルト74が吸収した熱を放熱させるヒートシンク76を有している。そして、ヒートシンク76から熱を奪い、その熱気を外部へ排出させる吸込ファン78が、第2筐体13の後壁部側(図示の奥側)に2個並んで設けられている。
また、押付装置62は、搬送される記録用紙Pと接触して、吸収装置70へ押し付ける無端状の押付ベルト64を有しており、その押付ベルト64は複数個の張架ロール65に張架されて回転可能に支持されている。このような構成の冷却部60により、定着部50から搬送されて来た記録用紙Pが冷却されるようになっている。
また、冷却部60の横(下流側)には、記録用紙Pのカールを矯正する(記録用紙Pを平坦にする)デカール処理部66が配設されている。そして、そのデカール処理部66の横(下流側)には、記録用紙Pに定着されたトナー画像の濃度欠陥、画像欠陥、画像位置欠陥等を光学的に検出するインラインセンサー部68が配設されている。
なお、インラインセンサー部68の横(下流側)には、片面に画像が形成された記録用紙Pを第2筐体13の右壁面13Aに取り付けられた排出部(排出トレイ)90に排出する排出ロール92が設けられており、片面印刷時には、その排出ロール92によって記録用紙Pが排出部90上へ排出されるようになっている。
また、定着部50、冷却部60、デカール処理部66、インラインセンサー部68の下方には、反転部80が配設されている。すなわち、記録用紙Pの両面に画像を形成する際には、インラインセンサー部68から送出された記録用紙Pを反転部80へ搬送する。詳細には、その記録用紙Pを、図示しない切替部材によって、反転部80に設けられた反転経路82へ導く。
反転経路82は、第2処理部14における搬送経路122(後述)から分岐する分岐パス84と、分岐パス84に沿って搬送される記録用紙Pを第1処理部12側へ向けて搬送する用紙搬送パス86と、用紙搬送パス86に沿って搬送される記録用紙Pを逆方向へ向けて折り返し、スイッチバック搬送して表裏を反転させる反転パス88と、を備えている。
この構成により、反転パス88によってスイッチバック搬送された記録用紙Pは、下側の開口部28及び開口部26を通って第1処理部12内へ向けて搬送され、更に搬送部120における搬送経路122へ送出されて、後述する二次転写ロール110とバックアップロール112との狭持部である転写ポイントTへ再度送り込まれるようになっている。
なお、第1筐体11の左壁面11Bには、その左壁面11Bに隣接して外付けされる大容量の給紙カセット(図示省略)から記録用紙Pを供給できるようにするための供給部94が設けられている。また、制御部16には、図示しないコンピューター等から送られてくる画像データに処理を施す画像信号処理部96と、各部へ電力を供給する電源部98と、が備えられている。
次に、画像形成部30について説明する。本実施形態に係る画像形成装置10には、第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各トナーを収容するトナーカートリッジ32V、32W、32Y、32M、32C、32Kが左右横方向(水平方向)に並んで交換可能に設けられており、フルカラー画像又は白黒画像を形成可能に構成されている。
なお、第1特別色及び第2特別色には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外の特別色(透明を含む)から適宜選択される。また、以後の説明では、V、W、Y、M、C、Kを区別する場合は、数字の後にV、W、Y、M、C、Kの何れかの英字を付して説明し、V、W、Y、M、C、Kを区別しない場合は、V、W、Y、M、C、Kを省略する。
トナーカートリッジ32の下側には、各色のトナーに対応する6つの画像形成ユニット34が、各トナーカートリッジ32と対応するように左右横方向(水平方向)に並んで設けられている。そして、各トナーカートリッジ32と画像形成ユニット34との間には、露光ユニット40が設けられている。
画像形成ユニット34毎に設けられた露光ユニット40は、上記した画像信号処理部96によって処理を施された画像データを受け取り、色材階調データに応じて各半導体レーザー(図示省略)を変調し、各半導体レーザーから露光光Lを色材階調データに応じて出射するように構成されている。詳細には、後述する感光体36(図2参照)の表面に各色に対応した露光光Lを照射して、その感光体36上に静電潜像を形成するようになっている。
図2で示すように、画像形成ユニット34は、矢印A(図示の時計回り)方向に回転駆動される感光体36を備えている。感光体36の周囲には、感光体36を一様に帯電する帯電装置としてのコロナ放電方式(非接触帯電方式)のスコロトロン帯電器38と、露光ユニット40によって出射された露光光Lにより感光体36上に形成された静電潜像を各色の現像剤(トナー)で現像する現像装置42と、転写後の感光体36の表面をクリーニングするクリーニング装置としてのクリーニングブレード44と、転写後の感光体36の表面に光を照射して除電を行う除電装置としてのイレーズランプ46が設けられている。
なお、スコロトロン帯電器38、現像装置42、クリーニングブレード44、イレーズランプ46は、感光体36の表面と対向して、感光体36の回転方向上流側から下流側へ向けて、この順番で配置されている。
また、現像装置42は、画像形成ユニット34の横(図示の右側)に配置され、トナーを含んだ現像剤Gが充填された現像剤収容部材48と、現像剤収容部材48に充填されたトナーを感光体36の表面に移動させる現像ロール49と、を含んで構成されている。そして、現像剤収容部材48は、トナーカートリッジ32(図1参照)とトナー供給路(図示省略)を通して接続されており、トナーカートリッジ32からトナーが供給されるようになっている。
次に、転写部100について説明する。図1で示すように、各画像形成ユニット34の下側には、転写部100が設けられている。この転写部100は、各感光体36と接触する無端状の中間転写ベルト102と、中間転写ベルト102の内側に配置され、各感光体36上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト102に多重転写させる6つの一次転写部材としての一次転写ロール104と、を含んで構成されている。
更に、この中間転写ベルト102は、図示しないモーターで駆動される駆動ロール106と、中間転写ベルト102の張力を調整する張力付与ロール108と、後述する二次転写ロール110と対向配置されたバックアップロール112と、複数個の張架ロール114との間に、一定の張力で巻き掛けられており、駆動ロール106により、図1の矢印B(図示の反時計回り)方向に循環移動されるようになっている。
詳細には、各一次転写ロール104は、中間転写ベルト102を挟んでそれぞれの各画像形成ユニット34の感光体36と対向配置されている。また、一次転写ロール104は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。この構成により、感光体36上に形成されたトナー画像が中間転写ベルト102に転写されるようになっている。
一方、駆動ロール106の中間転写ベルト102を挟んだ反対側には、先端部が中間転写ベルト102と接触するクリーニングブレード116が設けられおり、このクリーニングブレード116は、循環移動する中間転写ベルト102上の残留トナーや紙粉等を除去するようになっている。
次に、第1処理部12における搬送部120について説明する。給紙カセット22の一端側(図示の右側)の上方には、給紙カセット22から記録用紙Pを搬送経路122へ送出する送出ロール118が設けられており、上昇するボトムプレート24に載せられた最上位の記録用紙Pに送出ロール118が接触するようになっている。
送出ロール118の下流側には、記録用紙Pの重送を防止する一対の分離ロール124が設けられており、分離ロール124の下流側には、記録用紙Pを下流側に搬送する一対の搬送ロール126が複数設けられている。
給紙部20(給紙カセット22)と転写部100(中間転写ベルト102)との間に設けられる搬送部120の搬送経路122は、給紙カセット22から送出された記録用紙Pを第1折返部122Aで図示の左方向へ折り返し、更に第2折返部122Bで図示の右方向へ折り返して二次転写ロール110とバックアップロール112との挟持部である転写ポイントTへ向けて送出するようになっている。
第2折返部122Bと転写ポイントTとの間には、搬送される記録用紙Pの傾き等を矯正するアライナー(図示省略)が設けられており、このアライナーと転写ポイントTとの間には、中間転写ベルト102上のトナー画像の移動タイミングと記録用紙Pの搬送タイミングを合わせるための位置合わせロール128が設けられている。
また、位置合わせロール128の下流側に設けられている二次転写部材としての二次転写ロール110は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。この構成により、中間転写ベルト102上に多重転写された各色のトナー画像が、二次転写ロール110によって、搬送経路122に沿って搬送されて来た記録用紙Pに二次転写される構成となっている。なお、上記した供給部94は、搬送経路122の第2折返部122Bへ合流するようになっている。
また、転写ポイントTの下流側には、トナー画像が転写された記録用紙Pを第2処理部14内へ向けて搬送する複数個のバキューム搬送装置130が設けられている。各バキューム搬送装置130は、回転駆動する駆動ロール132と、回転可能に支持された従動ロール134と、駆動ロール132と従動ロール134に巻き掛けられる複数本のベルト部材136と、を備えている。
ベルト部材136の表面には、複数個の貫通孔(図示省略)が全面に渡って設けられており、その貫通孔から空気をベルト部材136の内側へ吸い込む吸込ファン138が、第1筐体11の後壁部側(図示の奥側)に配置されている。
この構成により、トナー画像が形成されていない記録用紙Pの裏面(非画像面)をベルト部材136に吸い付け、駆動ロール132を回転駆動させてベルト部材136を回転させることで、その記録用紙Pを更に下流側、即ち第2処理部14のバキューム搬送装置130へ搬送するようになっている。
なお、第2処理部14のバキューム搬送装置130も、第1処理部12のバキューム搬送装置130と同様の構成であり、第2処理部14における搬送経路122は、第1処理部12の搬送部120における搬送経路122と連続している。
次に、画像形成工程(作用)について説明する。画像信号処理部96で画像処理が施された画像データは、各色の色材階調データに変換され、各露光ユニット40に順次出力される。各露光ユニット40では、各色の色材階調データに応じて各露光光Lを出射し、スコロトロン帯電器38によって帯電された各感光体36上に走査露光を行い、静電潜像を形成する。
感光体36上に形成された静電潜像は、現像装置42によって、それぞれ第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像(現像剤像)として顕在化される(現像される)。
各画像形成ユニット34V、34W、34Y、34M、34C、34Kの各感光体36上に形成された各色のトナー画像は、6つの一次転写ロール104V、104W、104Y、104M、104C、104Kによって中間転写ベルト102上に順次多重転写される。
中間転写ベルト102上に多重転写された各色のトナー画像は、二次転写ロール110によって、給紙部20(給紙カセット22)から搬送されて来た記録用紙P上に二次転写される。トナー画像が転写された記録用紙Pは、バキューム搬送装置130によって定着部50へ搬送される。
定着部50に搬送された記録用紙Pは、その定着部50において加熱・加圧されることにより、その記録用紙P上に転写された各色のトナー画像が定着される。そして、各色のトナー画像が定着された記録用紙Pは、冷却部60を通過して冷却された後、デカール処理部66に送り込まれ、記録用紙Pに生じたカールが矯正される。カールが矯正された記録用紙Pは、インラインセンサー部68によって画像欠陥等が検出された後、排出ロール92によって排出部90に排出される。
なお、記録用紙Pの画像が形成されていない裏面に画像を形成する場合(両面印刷の場合)には、その記録用紙Pは、インラインセンサー部68を通過後に、反転部80へ送出される。反転部80へ送出された記録用紙Pは、反転経路82を通過して反転され、再度第1処理部12へ送り込まれて、上記した手順で、その裏面にトナー画像が形成される。
以上のような構成の画像形成装置10において、次に定着部50(定着装置)の構成について詳細に説明する。図3で示すように、この定着部50は、定着ベルト56を備えた加熱部材の一例としての定着ベルトモジュール51と、定着ベルトモジュール51に対して圧接・離隔可能に配置される加圧部材の一例としての加圧ロール58と、を含んで構成されている。
そして、定着ベルト56(定着ベルトモジュール51)と加圧ロール58とが圧接する領域がニップ部Nとされ、そのニップ部Nにおいて記録用紙Pが加圧及び加熱されることで、その記録用紙Pにトナー画像が定着されるようになっている。
定着ベルトモジュール51は、無端状の定着ベルト56と、加圧ロール58側で定着ベルト56を張架しながら駆動モーター(図示省略)の回転力で回転駆動する加熱ロール52と、加熱ロール52と異なる位置(上方位置)で内側から定着ベルト56を張架する支持ロール54と、定着ベルト56の外側に配置されて、その周回経路を規定する支持ロール55と、定着ベルト56の内側に配置されて、その姿勢を矯正する姿勢矯正ロール53と、を備えている。
そして、定着ベルトモジュール51と加圧ロール58とが圧接する領域であるニップ部N内の下流側領域で、かつ定着ベルト56の内側には、加熱ロール52の近傍位置に配置されて、加熱ロール52の外周面から定着ベルト56を剥離する剥離パッド57と、ニップ部Nの下流側において、定着ベルト56を張架する支持ロール59と、が設けられている。
ここで、この加熱ロール52は、アルミニウムからなる円筒状の芯金の表面に、金属磨耗を防止する保護層が形成されたハードロールとされており、その保護層は、例えば厚さ200μmのフッ素樹脂皮膜とされている。なお、加熱ロール52の内部には、熱源の一例としてのハロゲンヒーター142が設けられている。
また、支持ロール54は、アルミニウムで形成された円筒状のロールであり、その内部には、熱源の一例としてのハロゲンヒーター144が配設されており、定着ベルト56を内周面側から加熱するようになっている。なお、支持ロール54の両端部には、巻き掛けられた定着ベルト56を外側へ押圧するバネ部材(図示省略)が配設されている。
また、支持ロール55は、アルミニウムで形成された円筒状のロールであり、支持ロール55の表面には、例えば厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト56の外周面からの僅かなオフセットトナーや紙粉が支持ロール55に堆積するのを防止するために形成されている。
また、この支持ロール55の内部には、熱源の一例としてのハロゲンヒーター146が配設されており、定着ベルト56を外周面側から加熱するようになっている。つまり、本実施形態に係る定着部50では、加熱ロール52、支持ロール54、支持ロール55によって、定着ベルト56が加熱されるようになっている。
姿勢矯正ロール53は、アルミニウムで形成された円柱状のロールであり、姿勢矯正ロール53の近傍には、定着ベルト56の端部位置を測定する端部位置測定機構(図示省略)が配置されている。そして、姿勢矯正ロール53には、端部位置測定機構の測定結果に応じて定着ベルト56の移動方向と直交する幅方向(軸方向)における接触位置を変位させる軸変位機構(図示省略)が配設され、定着ベルト56の蛇行を制御するように構成されている。
また、剥離パッド57は、加熱ロール52の軸方向の長さと対応する長さを有するブロック状の部材であり、例えば鉄系の金属や樹脂等の剛体で形成されている。剥離パッド57の断面形状は、加熱ロール52に面する湾曲した内側面57Aと、定着ベルト56を加圧ロール58に向けて押圧する押圧面57Bと、押圧面57Bに対して予め決められた角度を有して定着ベルト56を屈曲させる外側面57Cと、を備えた略三日月形状とされている。
また、この剥離パッド57の押圧面57Bと外側面57Cとで角部Uが構成されるようになっており、その角部Uは、加圧ロール58によって押し付けられた定着ベルト56を屈曲させるようになっている。このように、定着ベルト56が屈曲されていると、記録用紙Pの先端が、角部Uを通過した際に、定着ベルト56から剥離され易くなる。
一方、加圧ロール58は、アルミニウムからなる円柱状のロール58Aを基体として、その基体(ロール58A)側から順に、シリコーンゴムからなる弾性層58Bと、膜厚100μmのフッ素系樹脂からなる剥離層(以下「表面部」という)58Cと、が積層された構成となっている。
また、加圧ロール58は、回転自在に支持されるとともに、図示しない接離手段により、加熱ロール52に巻回されている定着ベルト56に対して圧接・離隔されるようになっている。そして、この加圧ロール58は、定着ベルト56に圧接されることにより、その定着ベルト56の矢印C方向への循環移動に従動して矢印E方向へ回転するようになっている。
また、この加圧ロール58の表面部58Cには、ファン(シロッコファン)150によって冷却風が送風されるようになっている。すなわち、加圧ロール58の上流側下部近傍には、その軸方向にファン150が3個配置されている。詳細には、このファン150は、加圧ロール58の回転軸158(表面部58C)の軸方向中央部と軸方向両端部に1個ずつ配置されている。
また、加圧ロール58の下方には、ファン150からの冷却風を、表面部58Cに沿って流れるように案内する案内部材152が配置されている。この案内部材152の上面には、整流板としてのリブ154が、加圧ロール58の周方向及び軸方向に複数並んで形成されており、ファン150からの冷却風が、加圧ロール58の下部側の表面部58Cに効率よく送風されるようになっている。また、この加圧ロール58の下流側上部近傍には、加圧ロール58に記録用紙Pが貼り付かないようにするための剥離爪156が配置されている。
また、ファン150から送風される冷却風による影響が出ない位置、例えば加圧ロール58を挟んでファン150が配置された位置とは略180度反対側で、かつ剥離爪156よりも下方側の位置には、加圧ロール58の表面部58Cの温度(表面温度)を非接触で測定する赤外線放射温度センサー(以下「赤外線センサー」という)140が、加圧ロール58に対向して配置されている。
そして、この赤外線センサー140によって測定された加圧ロール58の表面部58Cの温度データは、制御部(制御手段)16に送られ、その制御部16によって、各ファン150の駆動が制御されるようになっている。つまり、赤外線センサー140による測定結果に基づいて、加圧ロール58の表面部58Cの温度が予め決められた範囲内になるように制御されるようになっている。
また、図3、図4で示すように、定着ベルト56の外周面には、送風手段の一例としてのファン(ファンモーター)160によって冷却風が送風されるようになっている。すなわち、定着部50に搬送される記録用紙Pの挙動を乱さない位置、例えば支持ロール54と姿勢矯正ロール53との間における定着ベルト56の外周面に対向する位置には、その幅方向(軸方向)にファン160が3個配置されている。
詳細には、このファン160は、定着ベルト56の移動方向と直交する幅方向(軸方向)中央部と両端部に1個ずつ配置されている。そして、各ファン160から送風される冷却風が、定着ベルト56の外周面に効率よく当たるように、ファン160の送風方向下流側には、カバー体162が配置されている。
また、図3、図4で示すように、加熱ロール52の外周面(以下「表面部」という)52Aの温度(表面温度)を非接触で測定する測定手段の一例としての赤外線放射温度センサー(以下「赤外線センサー」という)148が、加熱ロール52の軸方向に2個、その表面部52Aに対向して配置されている。詳細には、この赤外線センサー148は、加熱ロール52の軸方向中央部と軸方向一端部に1個ずつ配置されている。
そして、この赤外線センサー148によって測定された加熱ロール52の表面部52Aの温度データは、制御部(制御手段)16に送られ、その制御部16によって、各ファン160の駆動が独立して制御されるようになっている。つまり、赤外線センサー148による測定結果に基づいて、定着ベルト56の外周面の温度が調整されるように構成されている。
なお、加熱ロール52の軸方向中央部に対向配置された赤外線センサー148で測定した結果を基に、定着ベルト56の幅方向(軸方向)中央部に対向配置されたファン160の駆動が制御され、加熱ロール52の軸方向一端部に対向配置された赤外線センサー148で測定した結果を基に、定着ベルト56の幅方向(軸方向)両端部に対向配置されたファン160の駆動が制御されるようになっていることは言うまでもない。
以上のような構成とされた定着部50(定着装置)において、次にその定着ベルト56に冷却風を送風するファン160の作用について説明する。制御部16により、加熱ロール52の軸方向中央部及び一端部に対向配置された赤外線センサー148の測定結果を基に、各ファン160の駆動が独立して制御され、定着ベルト56の温度が調整される。
ここで、定着ベルト56の温度は、記録用紙Pの紙種(例えば、普通紙、コート紙、キャスト紙、エンボス紙など)、坪量(例えば、55〜80g/m2、81〜105g/m2、106〜135g/m2、136〜157g/m2など)に応じて、予め適切な温度が設定されている。すなわち、トナー画像を定着させるための定着ベルト56の温度は、記録用紙Pの紙種、坪量に応じて予め決まっており、制御部16には、記録用紙Pの紙種、坪量に応じた定着ベルト56の設定温度がテーブル(一覧表)として記憶されている。
したがって、例えば設定温度の高い記録用紙P(例えば、エンボス紙)から設定温度の低い記録用紙P(例えば、普通紙)へ変更して連続的に印刷する場合には、制御部16によって、上記テーブルから適切な設定温度が選択され、それに基づいて各ファン160が駆動される。つまり、各ファン160により、定着ベルト56の温度が、設定温度に近づくように、短時間で調整される。よって、設定温度の高い記録用紙Pから設定温度の低い記録用紙Pに変更して連続的に印刷するときの印刷開始までの待ち時間(印刷停止時間)が短縮される。
また、ファン160は、定着ベルト56の幅方向(軸方向)中央部及び両端部に配置されている。そのため、その定着ベルト56の幅方向(軸方向)で大きな温度差が生じたときでも(例えば、大きいサイズの記録用紙Pから小さいサイズの記録用紙Pへ変更になったときでも)、駆動させるファン160を選択することで、その幅方向(軸方向)における温度むらを短時間で均一にすることが可能となる。よって、記録用紙Pに定着されたトナー画像に濃度欠陥、画像欠陥が生じるのが抑制される。
なお、このファン160は、印刷実行中に駆動されることはないが、駆動されていても、搬送されて来る記録用紙Pの挙動を乱さない位置に配置されているので、定着ベルト56の幅方向(軸方向)における温度むらを改善することが可能である。また、設定温度の低い記録用紙Pから設定温度の高い記録用紙Pへ変更するときには、ファン160の駆動を停止させればよいことは言うまでもない。
以上、本実施形態に係る定着部50(定着装置)及び画像形成装置10について説明したが、本実施形態に係る定着部50(定着装置)及び画像形成装置10は、図示の実施例に限定されるものではない。例えば、加熱ロール52に対向配置される赤外線センサー148は、加熱ロール52の軸方向両端部は同じ温度となるので、上記実施例のように、その軸方向一端部にだけ設けられていれば充分であるが、その軸方向他端部にも設けるようにしてもよい。