以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を表すものである。このスイッチング電源装置1は、電源本体部10と、補助電源50と、電源本体部10に並列に接続された電圧検出部20とを備えている。
(電源本体部10)
最初に、電源本体部10の構成について説明する。
電源本体部10は、ヒューズ18と、入力平滑コンデンサ12と、インバータ回路13と、共振用インダクタ14と、トランス(メイントランス)11と、整流回路15と、平滑回路16と、制御回路17とを有している。電圧本体部10は、いわゆるスイッチング電源回路であり、例えば降圧型の直流入力直流出力電源(DC/DCコンバータ)として機能し、高圧バッテリHB側の入力端子T1,T2から入力される直流入力電圧Vinを電圧変換する(降圧する)ことにより、直流出力電圧Voutを生成すると共に、この直流出力電圧Voutを出力端子T3,T4を介して低圧バッテリLBへ供給するようになっている。なお、この例では、高圧バッテリHBは、300V程度の電圧を蓄電するバッテリであり、低圧バッテリLBは、12V程度の電圧を蓄電するバッテリである。
ヒューズ18は、入力端子T1に接続された1次側高圧ラインL1Hに挿入配置されており、1次側高圧ラインL1Hに接続された全ての回路への電力供給が、このヒューズ18を介して行われるようになっている。ヒューズ18は、後述するように、トランス11やトランス21などに予期せぬ事態が発生し、例えば、トランス11の1次側巻線11Aやトランス21の1次側巻線21Aがショートした場合において、その過大電流により切断されるようになっている。
入力平滑コンデンサ12は、1次側高圧ラインL1Hと入力端子T2に接続された1次側低圧ラインL1Lとの間に配置されており、高圧バッテリHBから供給される直流入力電圧Vinを平滑化するためのものである。
インバータ回路13は、高圧バッテリHBから供給される直流入力電圧Vinをほぼ矩形波状の単相交流電圧に変換する単相インバータ回路である。このインバータ回路13は、制御回路17から供給されるSW制御信号Vswによってそれぞれ駆動される4つのスイッチング素子13A,13B,13C,13Dをフルブリッジ接続してなるフルブリッジ型のスイッチング回路である。これらのスイッチング素子13A〜13Dとしては、例えば、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの素子が用いられる。
スイッチング素子13Aは、1次側高圧ラインL1Hとスイッチング素子13Dの一端との間に設けられ、スイッチング素子13Dは、スイッチング素子13Aの一端と1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられている。スイッチング素子13Cは、1次側高圧ラインL1Hとスイッチング素子13Bの一端との間に設けられ、スイッチング素子13Bは、スイッチング素子13Cの一端と1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられている。スイッチング素子13A,13Dの接続点は、共振用インダクタ14を介してトランス11の1次側巻線11A(後述)の一端と接続されている。スイッチング素子13B,13Cの接続点は、1次側巻線11A(後述)の他端と接続されている。
この構成により、インバータ回路13では、スイッチング素子13A,13Bがオン動作のときには、1次側高圧ラインL1Hから順にスイッチング素子13A、共振用インダクタ14、1次側巻線11Aおよびスイッチング素子13Bを通って1次側低圧ラインL1Lに至る経路に電流が流れるようになっている。一方、スイッチング素子13C,13Dがオン動作のときには、1次側高圧ラインL1Hから順にスイッチング素子13C、1次側巻線11A、共振用インダクタ14およびスイッチング素子13Dを通って1次側低圧ラインL1Lに至る経路に電流が流れるようになっている。
共振用インダクタ14は、スイッチング素子13A,13Dの接続点と1次側巻線11Aの一端との間に配置されており、スイッチング素子13A〜13D内の寄生容量と共に所定のLC共振回路を構成するためのものである。なお、共振用インダクタ14は、コイル部品を実際に配置してもよいが、これに代えて、またはこれと共に、トランス11のリーケージインダクタンス(図示せず)や配線などを含めた直列インダクタンスを利用して構成してもよい。
トランス11は、1次側巻線11Aおよび2次側巻線11B,11Cを含んで構成された3巻線型のトランスである。2次側巻線11Bと11Cとは、互いに同じ極性で直列に接続される。1次側巻線11Aは上述したようにインバータ回路13に接続されている。一対の2次側巻線11B,11CはセンタタップCで互いに接続され、このセンタタップCが接地ラインLGを介して出力端子T4に接続されている。つまり、このスイッチング電源装置はセンタタップ型のものである。これにより、このトランス11は、インバータ回路13によって変換された交流電圧を変圧(降圧)し、一対の2次側巻線11B,11Cの各端部A,Bから、互いに位相が180度異なる交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の変圧の度合いは、1次側巻線11Aと2次側巻線11B,11Cとの巻数比によって定まる。
整流回路15は、一対のダイオード15A,15Bからなる単相全波整流型のものである。ダイオード15Aのアノードは2次側巻線11Bの一端Aに、ダイオード15Bのアノードは2次側巻線11Cの一端Bにそれぞれ接続されている。ダイオード15A,15Bの各カソード同士は、接続点Dにおいて互いに接続されると共に、出力ラインLOに接続されている。つまり、この整流回路15はカソードコモン接続の構造を有しており、トランス11の交流出力電圧の各半波期間をそれぞれダイオード15A,15Bによって個別に整流するようになっている。
平滑回路16は、チョークコイル16Aと平滑コンデンサ16Bとを含んで構成されている。チョークコイル16Aは、出力ラインLOに挿入配置されており、その一端は接続点Dに、その他端は出力端子T3にそれぞれ接続されている。平滑コンデンサ16Bは、出力端子T3に接続されたチョークコイル16Aの他端と出力端子T4に接続された接地ラインLGとの間に配置されている。この構成により、平滑回路16は、整流回路15で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、これを出力端子T3,T4から低圧バッテリLBに給電するとともに、後述する補助電源50に供給するようになっている。
制御回路17は、この直流出力電圧Voutが所定の電圧を保つように、SW制御信号Vswを生成するとともに、その信号をインバータ回路13に供給するものである。
(補助電源50)
補助電源50は、制御回路17などの電源として機能するものであり、低圧バッテリLBから供給される電圧Voutを基に、電圧Vlを生成するものである。この例では、補助電源50は、12Vの電圧Voutを基に、7Vの電圧Vlを生成し、制御回路17、ドライブ回路27(後述)、比較部30(後述)、ダイオード24A(後述)に供給している。なお、この例では、補助電源50は1つの電圧Vlのみ生成するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の電圧を生成し、それぞれ別々の回路に供給するものであってもよい。
(電圧検出部20)
次に、電圧検出部20の構成について説明する。
電圧検出部20は、スイッチング素子23と、トランス21と、保持部25,26と、ダイオード24Aと、比較部30と、ドライブ回路27とを有している。電圧検出部20は、直流入力電圧Vinを電圧変換(降圧)して、その直流入力電圧Vinに対応する電圧を検出電圧Vdetとして出力端子T5より出力するとともに、トランス21に予期せぬ事態が発生したときに、これを検出し、スイッチング素子23のスイッチング動作を停止する機能を有している。
スイッチング素子23は、トランス21の1次側巻線21A(後述)の一端と1次側低圧ラインL1Lとの間に配置されており、ドライブ回路27から供給されるSW制御信号Vgによってオン・オフ動作が制御されるようになっている。なお、このスイッチング素子23としては、スイッチング素子13A〜13Dと同様に、例えばMOS−FETやIGBTなどの素子が用いられる。
トランス21は、1次側巻線21Aおよび2次側巻線21B,21Cを含んで構成された3巻線型のトランスである。1次側巻線21Aと2次側巻線21Bとはフライバック接続されている。つまり、1次側巻線21Aと2次側巻線21Bとは、その極性が互いに反対の向きになるように磁気結合されている。一方、1次側巻線21Aと2次側巻線21Cとはフォワード接続されている。つまり、1次側巻線21Aと2次側巻線21Cとは、その極性が互いに同じ向きになるように磁気結合されている。1次側巻線21Aの巻数はNaであり、2次側巻線21Bの巻数はNbであり、2次側巻線21Cの巻数はNcである。1次側巻線21Aの一端はスイッチング素子23を介して1次側低圧ラインL1Lに接続され、1次側巻線21Aの他端は1次側高圧ラインL1Hに接続されている。すなわち、ヒューズ18、1次側巻線21A、およびスイッチング素子23は、高圧バッテリHBの両端間に互いに直列接続されている。2次側巻線21Bの一端は保持部25に接続され、他端は接地ラインLGに接続されている。2次側巻線21Cの一端は保持部26に接続され、他端は接地ラインLGに接続されている。
この構成により、2次側巻線21Cの両端には、1次側巻線21Aと1次側巻線21Cとの巻数比(Nc/Na)に応じて変圧された交流電圧が出力される。一方、2次側巻線21Bの両端には、後述するように保持部25の出力にダイオード24Aが接続されているため、振幅が制限された交流電圧が出力される。
保持部25,26のそれぞれは、入力された交流電圧のピーク電圧に対応する電圧を保持し、その電圧(直流電圧)を出力する回路である。
保持部25は、この例では、ダイオード25Aと、容量素子25Bと、抵抗25Cとを有している。ダイオード25Aは、アノードが2次側巻線21Bの一端と接続され、カソードが保持部25の出力端子と接続されている。容量素子25Bは、保持部25の出力端子と接地ラインLGとの間に配置されている。抵抗25Cは、保持部25の出力端子と接地ラインLGとの間に配置され、容量素子25Bと並列に接続されている。
ダイオード24Aは、アノードが保持部25の出力端子と接続され、カソードが補助電源50の出力端子と接続されている。ダイオード24Aは、トランス21に蓄積された励磁エネルギーを放出するとともに、そのエネルギーを補助電源50に回生するものである。
この構成により、保持部25は、後述するように、直流入力電圧Vinが小さいようなごく一部の領域を除いて、補助電源の出力電圧Vlに基づいたほぼ一定の電圧VBを保持するとともに、その電圧VBを比較部30に供給するようになっている。なお、直流入力電圧Vinが小さい領域では、保持部25は、2次側巻線21Bの両端間の電圧V21Bのピーク電圧VPBに対応する電圧VBを保持するように動作する。
保持部26は、この例では、ダイオード26Aと、容量素子26Bと、抵抗26Cとを有している。ダイオード26Aは、アノードが2次側巻線21Cの一端と接続され、カソードが保持部26の出力端子と接続されている。容量素子26Bは、保持部26の出力端子と接地ラインLGとの間に配置されている。抵抗26Cは、保持部26の出力端子と接地ラインLGとの間に配置され、容量素子26Bと並列に接続されている。
この構成により、保持部26は、後述するように、2次側巻線21Cの両端間の電圧V21Cのピーク電圧VPCに対応する電圧VCを保持するとともに、その電圧VCを比較部30に供給するようになっている。また、保持部26の出力電圧VCは、検出電圧Vdetとして、出力端子T5から出力される。この検出電圧Vdetは、直流入力電圧Vinに対応したものであり、外部回路がこの検出電圧Vdetに基づいて、直流入力電圧Vinを得ることができるようになっている。外部回路の機能としては、例えば、直流入力電圧Vinを常に監視し、直流入力電圧Vinが所定の電圧範囲を超えた場合において、インバータ回路13のスイッチング動作を停止するように制御するようにしてもよい。
比較部30は、トランス21に予期せぬ事態が発生したときに、保持部25,26から供給された電圧VB,VCに基づいてそれを検出し、その検出結果を比較出力Vcompとしてドライブ回路27に供給する。ドライブ回路27は、この比較出力Vcompに基づいてスイッチング素子23のスイッチング動作を停止しオフ状態にする。これにより、電圧検出部20は、トランス21の予期せぬ事態の影響を最小限に食い止めるように機能する。
比較部30は、この例では、リファレンス電圧生成回路31〜33と、コンパレータ34〜36と、AND回路37と、OR回路38と、判定回路39とを有している。リファレンス電圧生成回路31〜33は、リファレンス電圧Vref1〜Vref3をそれぞれ生成する回路である。コンパレータ34は保持部25の出力電圧VBとリファレンス電圧Vref1とを比較し、コンパレータ35はリファレンス電圧Vref2と保持部25の出力電圧VBとを比較し、コンパレータ36は保持部26の出力電圧VCとリファレンス電圧Vref3とを比較するようになっている。AND回路37は、コンパレータ35の出力信号とコンパレータ36の出力信号との論理積を求める論理回路である。OR回路38は、コンパレータ34の出力信号とAND回路37の出力信号との論理和を求める論理回路である。判定回路39は、OR回路38の出力電圧が所定の時間高レベル電圧の状態になったときに、高レベル電圧を出力し、その出力信号を比較結果Vcompとしてドライブ回路27に供給するようになっている。なお、この例では、リファレンス電圧Vref1は26Vであり、リファレンス電圧Vref2は1Vであり、リファレンス電圧Vref3は2.3Vである。また、上記所定の時間は、後述するように、例えば10秒などに設定される。
この構成により、比較部30は、後述するように、以下の2つの条件のうちのどちらかを満たす状態が所定の時間続いた場合において、比較結果Vcompとして高レベルの電圧を出力し、それに基づいてドライブ回路27がスイッチング素子23のスイッチング動作を停止する。第1の条件は、保持部25の出力電圧VBがリファレンス電圧Vref1(例えば26V)より大きいことである。これは、後述するように、トランス21の2次側巻線21Cがショートした場合に対応する。第2の条件は、保持部25の出力電圧VBがリファレンス電圧Vref2(例えば1V)より小さく、かつ保持部26の出力電圧VCがリファレンス電圧Vref3(例えば2.3V)より大きいことである。これは、後述するように、トランス21の2次側巻線21Bがショートした場合に対応する。
なお、この例では、リファレンス電圧生成回路31〜33を内蔵するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば外部から供給されるようにしてもよい。また、コンパレータ34〜36を設けてアナログ電圧を比較するようにしたが、これに代えて、例えば、A/D(Analog to Digital)変換した後にデジタル値で比較するようにしても良い。また、3つのコンパレータ34〜36を設けるようにしたが、これに代えて、例えば1つのコンパレータが時分割的に動作するようにしてもよい。
また、比較部30は、例えば、比較結果Vcompをさらに制御回路17にも供給し、トランス21に予期せぬ事態が発生したときに、インバータ回路13のスイッチング動作を停止するようにしてもよい。
ドライブ回路27は、所定のパルス幅をもつSW制御信号Vgを生成し、スイッチング素子23に供給するとともに、比較部30から供給される比較結果Vcompに基づいて、スイッチング素子23のスイッチング動作を停止するように動作するものである。具体的には、ドライブ回路27は、通常は、比較部30から供給される比較結果Vcompを監視しつつ、所定のパルス幅をもつSW制御信号Vgをスイッチング素子23に供給し、スイッチング素子23にスイッチング動作をさせる。そして、比較結果Vcompが高レベル電圧の状態になったときに、ドライブ回路27は、SW制御信号Vgを停止し、スイッチング素子23をオフ状態にするように機能する。
なお、例えば、比較部30およびドライブ回路27の機能、またはこれらの一部の機能を、マイクロコントローラ(MCU)を用いて実現するようにしてもよい。
ここで、電圧検出部20は、本発明における「電圧検出回路」の一具体例に対応する。トランス21は本発明における「トランス」の一具体例に対応し、1次側巻線21Aは本発明における「1次側巻線」の一具体例に対応し、2次側巻線21B,21Cは本発明における「第1および第2の2次側巻線」の一具体例にそれぞれ対応する。スイッチング素子23は、本発明における「スイッチング素子」の一具体例に対応する。ダイオード24Aは、本発明における「放出回路」および「回生回路」の一具体例に対応する。保持部25,26は、本発明における「第1および第2の保持回路」の一具体例にそれぞれ対応する。比較部30およびドライブ回路27は、本発明における「スイッチング制御回路」の一具体例に対応する。リファレンス電圧Vref1は、本発明における「第1の参照電圧」の一具体例に対応し、リファレンス電圧Vref2は、本発明における「第2の参照電圧」の一具体例に対応し、リファレンス電圧Vref3は、本発明における「第3の参照電圧」の一具体例に対応する。電源本体部10は、本発明における「スイッチング電源回路」の一具体例に対応する。
[動作および作用]
次に、本実施の形態のスイッチング電源装置1の動作および作用について説明する。
(スイッチング電源装置1の基本動作)
まず、図1を参照して、スイッチング電源装置1の基本動作について説明する。
電源本体部10は、高圧バッテリHBから供給された直流入力電圧Vinを直流出力電圧Voutに変圧(降圧)し、その変圧した直流出力電圧Voutを低圧バッテリLBに給電する。具体的には、インバータ回路13は、スイッチング素子13A〜13Dをスイッチングすることにより、高圧バッテリHBから入力端子T1,T2を介して供給される直流入力電圧Vinを交流電圧に変換し、トランス11の1次側巻線11Aの両端間に供給する。そしてトランス11はこの交流電圧を変圧し、2次側巻線11B,11Cから変圧された交流電圧を出力する。整流回路15は、トランス11B,11Cから出力された交流電圧をダイオード15A,15Bによって個別に整流し出力する。平滑回路16は、整流回路15の整流出力を平滑化し、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力し、低圧バッテリLBに給電するとともに、補助電源50に供給する。補助電源50は、この直流出力電圧Voutに基づいて直流出力電圧Vlを生成し、制御回路17などに電源電圧として供給する。制御回路17は、直流出力電圧Voutが所定の電圧を保つように、SW制御信号Vswを生成するとともに、その信号をインバータ回路13に供給する。
このとき、インバータ回路13は、SW制御信号Vswに基づいて、以下のようなスイッチング動作を行う。
インバータ回路13において、スイッチング素子13C,13Dがオフ状態になるとともに、スイッチング素子13A,13Bがオン状態になると、1次側高圧ラインL1Hから、スイッチング素子13A、共振用インダクタ14、トランス11の1次側巻線11A、スイッチング素子13B、1次側低圧ラインL1Lの経路に電流が流れる。このとき、トランス11の2次側巻線11Bの両端に現れる電圧が、ダイオード15Aに対して順方向になるとともに、2次側巻線11Cの両端に現れる電圧が、ダイオード15Bに対して逆方向になる。このため、2次側巻線11Bからダイオード15Aを通って出力ラインLOに電流が流れる。
その後、スイッチング素子13Bがオフ状態になるとともに、スイッチング素子13Cがオン状態になると、トランス11の2次側巻線11Cの両端に現れる電圧が、ダイオード15Bに対して順方向となる。このため、2次側巻線11Cからダイオード15Bを通って出力ラインLOに電流が流れる。
次に、インバータ回路13において、スイッチング素子13A,13Bがオフ状態になるとともに、スイッチング素子13C,13Dがオン状態になると、1次側高圧ラインL1Hから、スイッチング素子13C、トランス11の1次側巻線11A、共振用インダクタ14、スイッチング素子13D、1次側低圧ラインL1Lの経路に電流が流れる。このとき、トランス11の2次側巻線11Cの両端に現れる電圧が、ダイオード15Bに対して順方向になるとともに、2次側巻線11Bの両端に現れる電圧が、ダイオード15Aに対して逆方向になる。このため、2次側巻線11Cからダイオード15Bを通って出力ラインLOに電流が流れる。
その後、スイッチング素子13Cがオフ状態になるとともに、スイッチング素子13Bがオン状態になると、トランス11の2次側巻線11Bの両端に現れる電圧が、ダイオード15Aに対して順方向となる。このため、2次側巻線11Bからダイオード15Aを通って出力ラインLOに電流が流れる。
以上の動作を繰り返すことにより、電源本体部10は、直流出力電圧Voutが所定の電圧を保つように動作する。
電圧検出部20は、直流入力電圧Vinを電圧変換(降圧)して、その直流入力電圧Vinに対応する電圧を検出電圧Vdetとして出力端子T5より出力するとともに、トランス21に予期せぬ事態が発生したときに、これを検出し、スイッチング素子23のスイッチング動作を停止する。具体的には、スイッチング素子23は、スイッチング動作により、高圧バッテリHBから入力端子T1,T2を介して供給される直流入力電圧Vinを交流電圧に変換し、トランス21の1次側巻線21Aの両端間に供給する。そしてトランス21はこの交流電圧を変圧し、2次側巻線21B,21Cから変圧された交流電圧を出力する。保持部25は、2次側巻線21Bの両端間の電圧V21Bのピーク電圧VPBに対応する電圧VBを保持し、その電圧VBを比較部30に供給する。保持部26は、2次側巻線21Cの両端間の電圧V21Cのピーク電圧VPCに対応する電圧VCを保持し、その電圧VCを比較部30に供給するとともに、検出電圧Vdetとして出力端子T5から出力する。ダイオード24Aは、トランス21に蓄積された励磁エネルギーを放出するとともに、そのエネルギーを補助電源50に回生する。比較部30は、保持部25,26の出力電圧VB,VCを常に監視し、トランス21に予期せぬ事態が発生したことに起因して、電圧VB,VCが所定の電圧範囲を超えたときに、比較出力Vcompとして高レベルの電圧を出力する。ドライブ回路27は、所定のパルス幅をもつSW制御信号Vgを生成し、スイッチング素子23に供給するとともに、比較部30から供給される比較結果Vcompに基づいて、スイッチング素子23のスイッチング動作を停止する。
(電圧検出部20の詳細動作)
次に、図2〜図4を参照して、電圧検出部20の詳細動作について説明する。
図2は、電圧検出部20の動作を、回路図を用いて表すものであり、(A)はスイッチング素子23がオンになった状態を示し、(B)はスイッチング素子23がオフになった状態を示す。
図3は、電圧検出部20のタイミング波形図を表すものであり、(A)はSW制御信号Vgの波形を示し、(B)は1次側巻線21Aの電流I21Aの波形を示し、(C)は2次側巻線21Bの電流I21Bの波形を示し、(D)は2次側巻線21Bの電圧V21Bの波形を示し、(E)は保持部25の出力電圧VBの波形を示し、(F)は2次側巻線21Cの電圧V21Cの波形を示し、(G)は保持部26の出力電圧VCの波形を示す。ここで、スイッチング素子23は、SW制御信号Vgが高レベルのときにオン状態になるものとする。つまり、スイッチング素子23がオンになった状態(図2(A))は図3においてタイミングt1〜t2間の動作に対応し、オフになった状態(図2(B))は図3においてタイミングt2〜t3間の動作に対応する。電圧検出部20は、後述するように、このタイミングt1〜t3間の動作を、所定の時間間隔を隔てて繰り返して行う。
図4は、保持部25の出力電圧VBおよび保持部26の出力電圧VCと直流入力電圧Vinとの関係を表すものである。
電圧検出部20では、タイミングt1において、SW制御信号Vgが高レベルになると(図3(A))、スイッチング素子23がオンになり、図2(A)に示したように、1次側高圧ラインL1Hから、1次側巻線21A、スイッチング素子23、1次側低圧ラインL1Lの経路で電流I21Aが流れ始める。その後、電流I21Aは、直流入力電圧Vinと1次側巻線21AのインダクタンスL21Aで決まる傾き(Vin/L21A)の割合で増加する(図3(B))。これにより、スイッチング素子23がオンの間、トランス21に励磁エネルギーが蓄積されるとともに、2次側巻線21Bの両端間に電圧V21Bが誘起され(図3(D))、2次側巻線21Cの両端間に電圧V21Cが誘起される(図3(F))。このとき、電圧V21Cは(Nc/Na)×Vinになり、これがピーク電圧VPCになる(図3(F))。保持部26は、ピーク電圧VPCからダイオード26Aの順方向電圧Vfを減じた電圧((Nc/Na)×Vin−Vf)を保持し、電圧VCとして比較部30に供給する(図3(G))。つまり、電圧VCは、図4に示したように、直流入力電圧Vinと比例関係になる。保持部26は、この電圧VCを検出電圧Vdetとして出力端子T5から出力する。
次に、タイミングt2において、SW制御信号Vgが低レベルになると(図3(A))、スイッチング素子23がオフになり、1次側高圧ラインL1Hから1次側低圧ラインL1Lへの電流経路が遮断される。これに伴い、図2(B)に示したように、2次側巻線21Bの他端から一端へ電流I21Bが流れ始め、ダイオード25Aおよびダイオード24Aに供給される。その後、電流I21Bは、補助電源50の出力電圧Vl、ダイオード25A,24Aの順方向電圧Vf、および2次側巻線21BのインダクタンスL21Bで決まる傾き(−(Vl+2×Vf)/L21B)の割合で減少する(図3(C))。これにより、トランス21に蓄積された励磁エネルギーが放出される。ダイオード24Aに供給された電流は、補助電源50の出力端子に流れ、補助電源50に回生される。このとき、2次側巻線21Bの両端間の電圧V21Bは、補助電源50の出力電圧Vlにダイオード25A,24Aの順方向電圧Vfを加えた電圧(Vl+2×Vf)になり(図3(D))、これがピーク電圧VPBになる。電圧V21Bは、電流I21Bが減少している間は保持され、電流I21Bが停止し、トランス21に蓄積された励磁エネルギーが全て放出されコアがリセットされると、ゼロになる(図3のタイミングt3)。保持部25は、電圧VPBからダイオード25Aの順方向電圧Vfを減じた電圧(Vl+Vf)を保持し、電圧VBとして比較部30に供給する(図3(E))。つまり、電圧VBは、図4に示したように、直流入力電圧Vinが小さいような一部の条件を除いて、直流入力電圧Vinに依存せずほぼ一定値となる。
電圧検出部20は、以上の動作を繰り返すことにより、直流入力電圧Vinを検出しつつ、トランス21に蓄積された励磁エネルギーを放出する。出力端子T5から出力される検出電圧Vdet(保持部26の出力電圧VC)は、上述したように、直流入力電圧Vinと比例関係になる。
比較部30は、保持部25の出力電圧VB、および保持部26の出力電圧VCが、以下の2つの条件のうちのどちらかを満たし、かつその状態が所定の時間続いた場合において、高レベルの電圧を比較出力Vcompとして出力する。第1の条件は、保持部25の出力電圧VBがリファレンス電圧Vref1(例えば26V)より大きいことである。第2の条件は、保持部25の出力電圧VBがリファレンス電圧Vref2(例えば1V)より小さく、かつ保持部26の出力電圧VCがリファレンス電圧Vref3(例えば2.3V)より大きいことである。この2つの条件は、後述するように、トランス21に予期せぬ事態が発生したときに、その事態に応じて少なくともどちらか一方が満たされるものである。
ドライブ回路27は、比較出力Vcompとして高レベル電圧が入力されたときに、所定のパルス幅をもつSW制御信号Vgの生成を停止し、低レベルの電圧を出力する。これにより、スイッチング素子23はスイッチング動作を停止し、オフ状態を維持するようになる。その結果、トランス21の予期せぬ事態の影響を最小限に食い止めることができる。
なお、上記所定の時間は、トランス21に予期せぬ事態が発生した後、トランス21や電圧検出部20に大きな影響が及ばないような時間が望ましく、例えば10秒などに設定される。
(トランス21の予期せぬ事態とその検出方法)
次に、トランス21の予期せぬ事態と、それを検出する方法について説明する。
一般に、トランスの不具合としては、各巻線のショートが挙げられる。このような不具合のあるトランスを使用した場合には、回路に過大な電流が流れるなどのおそれがあり、その状態が長く続いた場合には、発煙や発火を引き起こすおそれがある。電圧検出部20は、トランス21にこのような予期せぬ事態が発生したとき、これを検出しスイッチング動作を停止することにより、その影響を最小限に食い止めることができる。なお、以下では、巻線のショートとしては、その影響が一番大きいと考えられる、巻線の両端間のショートを想定することとする。
以下に、トランス21の3つの巻線(1次側巻線21A、2次側巻線21B、2次側巻線21C)でショートが発生した場合の検出方法を示す。
トランス21の1次側巻線21Aのショートは、ヒューズ18により検出できる。すなわち、1次側巻線21Aがショートした場合、スイッチング素子23がオン状態になると、過大な電流が1次側高圧ラインL1Hから1次側低圧ラインL1Lに流れる。このとき、この電流は高圧バッテリHBからヒューズ18を介して供給されるため、その過大な電流によりヒューズ18が切断され、電流供給経路が遮断される。これにより、1次側巻線21Aにはいかなる電流も供給されなくなり、トランス21は発煙や発火を免れることができ、結果として、1次側巻線21Aのショートの影響を最小限に食い止めることができる。
トランス21の2次側巻線21Bのショートは、以下に示すように、保持部25の出力電圧VB、および保持部26の出力電圧VCの両方を監視することにより検出できる。
2次側巻線21Bがショートしている場合、2次側巻線21Bの電圧V21Bが0Vになり、そのピーク電圧VPBは0Vとなり、保持部25の出力電圧VBもまた0Vとなる。よって、2次側巻線21Bのショートの判定には、まず、例えば、この出力電圧VBが1V以下であるかどうかを利用することができる。これは、図1において、リファレンス電圧Vref2を1Vに設定することにより、コンパレータ35によって検出される。つまり、コンパレータ35は、保持部25の出力電圧VBが1V以下では、2次側巻線21Bのショートを検出して高レベル電圧を出力し、一方、保持部25の出力電圧VBが1V以上では、2次側巻線21Bはショートしていないと判断して低レベル電圧を出力する。
ただし、電圧検出部20では、図4に示したように、例えば、直流入力電圧Vinが0V付近など十分に低い場合には、電圧VBが低くなる。このことは、直流入力電圧Vinが低いときには、2次側巻線21Bがショートしていなくても、保持部25の出力電圧VBが1V以下になりえるため、コンパレータ35が高レベル電圧を出力してしまうことを意味している。一方、図4において、例えば電圧VBが1V以下になるような、十分に低い直流入力電圧Vinがスイッチング電源装置1に入力された場合には、仮に2次側巻線21Bがショートしていても、一般に発煙や発火のおそれはきわめて低い。そこで、電圧検出部20では、直流入力電圧Vinを監視することにより、発煙や発火のおそれがないような低い直流入力電圧Vinにおいては、保持部25の出力電圧VBが1V以下であっても、スイッチング素子23のスイッチング動作が停止しないようにしている。
以下に、発煙や発火のおそれがないような直流入力電圧Vinの範囲と、その検出方法を示す。
図5は、2次側巻線21Bがショートしたトランス21における、直流入力電圧Vinと巻線温度上昇量ΔTとの関係を表すものである。ここで、巻線温度上昇量ΔTとは、ある環境温度においてこのトランス21をスイッチング電源装置1に使用したときの、その環境温度からの巻線の温度の上昇量である。図5に示したように、直流入力電圧Vinが高いほど、巻線温度上昇量ΔTが増加する。ここで、一例として、構成する巻線がポリウレタン銅線からなり、層間テープがポリエステルテープからなり、これらの材料の温度の定格が130℃であるトランスを使用する場合を想定する。このようなトランスを、環境温度の定格が85℃であるようなスイッチング電源装置において使用する場合、許容される温度上昇量ΔTは45℃(=130℃−85℃)となる。この場合、図5に示したように、例えば、直流入力電圧Vinが120V以下であれば、トランスの温度の定格130℃を超えることはなく、発煙や発火のおそれはきわめて低くなる。
電圧検出部20では、例えば、直流入力電圧Vinが120V以下であるかどうかを、保持部26の出力電圧VCにより監視する。図4は、2次側巻線21Bが正常の場合とショートしている場合における、電圧VCと直流入力電圧Vinの関係を示している。図4に示したように、2次側巻線21Bがショートした場合の電圧VCは、2次側巻線21Bがショートしていない場合の電圧VCと異なり、同じ直流入力電圧Vinではその値がより小さいものとなる。この例では、2次側巻線21Bがショートした場合の電圧VCは、2次側巻線21Bがショートしていない場合の6割程度となっている。このとき、例えば、電圧VCが2.3V以下のときは、2次側巻線21Bのショートのいかんに依らず、直流入力電圧Vinは120V以下となり、発煙や発火のおそれはきわめて低くなる。よって、2次側巻線21Bのショートの判定には、上述した電圧VBに関する条件に加え、例えば、電圧VCが2.3V以上であるかどうかを利用することができる。これは、図1において、リファレンス電圧Vref3を2.3Vに設定することにより、コンパレータ36によって検出される。つまり、コンパレータ36は、電圧VCが2.3V以下では、2次側巻線21Bのショートのいかんに依らずトランス21に発煙や発火のおそれがないため、安全なレベルであると判断し低レベル電圧を出力する。一方、電圧VCが2.3V以上では、コンパレータ36は、2次側巻線21Bがショートしている場合においてトランス21に発煙や発火のおそれがあるため、高レベル電圧を出力する。
以上のように、電圧検出部20では、トランス21の2次側巻線21Bのショートは、コンパレータ35の出力およびコンパレータ36の出力を用いて検出される。すなわち、AND回路37は、コンパレータ35,36の論理積を求めることにより、2次側巻線21Bがショートしていて、かつ、それによりトランス21が発煙や発火のおそれがあるときのみ、高レベル電圧を出力する。
AND回路37の出力電圧が高レベルになったとき、OR回路38は高レベル電圧を出力し、ドライブ回路27に供給する。ドライブ回路27は、これに基づいてスイッチング素子23のスイッチング動作を停止し、スイッチング素子23はオフ状態を維持するようになる。これにより、トランス21は、発煙や発火を免れることができ、結果として、2次側巻線21Bのショートの影響を最小限に食い止めることができる。
トランス21の2次側巻線21Cのショートは、保持部25の出力電圧VBを監視することにより検出できる。すなわち、2次側巻線21Cがショートした場合には、2次側巻線21Bから放出される励磁エネルギーが大きくなり、電圧V21Bの振幅が大きくなり、そのピーク電圧VPBが高くなるため、保持部25の出力電圧VBもまた高くなる。このとき、例えば、電圧VBは、26Vを超えるようになる。よって、2次側巻線21Cのショートの判定には、例えば、この電圧VBが26V以上であるかどうかを利用することができる。これは、図1において、リファレンス電圧Vref1を26Vに設定することにより、コンパレータ34によって検出される。つまり、コンパレータ34は、電圧VBが26V以上では、2次側巻線21Cのショートを検出して高レベル電圧を出力し、一方、電圧VBが26V以下では、2次側巻線21Cはショートしていないと判断して低レベル電圧を出力する。
コンパレータ34の出力電圧が高レベルになったとき、OR回路38は高レベル電圧を出力し、ドライブ回路27に供給する。ドライブ回路27は、これに基づいてスイッチング素子23のスイッチング動作を停止し、スイッチング素子23はオフ状態を維持するようになる。これにより、トランス21は、発煙や発火を免れることができ、結果として、2次側巻線21Cのショートの影響を最小限に食い止めることができる。
[効果]
以上のように本実施の形態では、トランス21の各巻線のショートを検出したときに、スイッチング動作を停止するようにしたので、電圧検出部の高い信頼性を実現することができる。
また、本実施の形態では、トランス21の2次側巻線21Bのショートを検出する際、保持部25の出力電圧VBに加え、保持部26の出力電圧VCも使用するようにしたので、直流入力電圧Vinが低いときでも電圧検出部20が誤動作しないようにすることができる。
また、本実施の形態では、トランス21の2次側巻線21Cのショートを検出する際、そのショートに起因して生じる保持部25の出力電圧VBの上昇を利用するようにしたので、所定の閾値を超えるかどうかのみでショートを検出でき、検出回路をシンプルにすることができる。
また、本実施の形態では、トランス21のショートの検出を、励磁エネルギーの放出を行う2次側巻線21Bを共用して行うようにしたので、部品点数を削減することができる。
また、本実施の形態では、OR回路37の出力電圧が所定の時間、高レベル電圧の状態になったときに、スイッチング素子23のスイッチング動作を停止するようにしたので、トランス21が正常な場合に、ノイズなどの過渡的な動作に応答することなく、より確実な電圧検出動作が実現できる。
また、本実施の形態では、トランス21の1次側巻線21Aと2次側巻線21Bをフライバック接続とし、1次側巻線21Aと2次側巻線21Cをフォワード接続にしたので、2次側巻線21Bを用いた励磁エネルギーの放出と、2次側巻線21Cを用いた直流入力電圧Vinの検出とを、一つのトランスで実現できる。
さらに、本実施の形態では、トランス21に蓄積された励磁エネルギーを、ダイオード24Aを介して補助電源50に回生するようにしたので、高効率な動作が実現できる。
上記実施の形態では、トランス21の励磁エネルギーを2次側巻線21Bから放出する際、ダイオード24Aを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、図6に示したように放出回路を用いてもよい。この放出回路24は、ダイオード24Bと、抵抗24Cと、容量素子24Dとを有している。放出回路24は、抵抗によって励磁エネルギーを消費するように動作するものである。
また、上記実施の形態では、ダイオード24Aを保持部25の出力に接続するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図7に示したように、トランス21の2次側巻線21Bに接続してもよい。
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置について説明する。本実施の形態は、補助電源と電圧検出部を一体化したものである。なお、上記第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置1と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
[構成例]
図8は、スイッチング電源装置2の構成を表すものである。スイッチング電源装置2は電圧検出部60を備えている。電圧検出部60は、トランス41と、整流回路45と、平滑回路46と、スイッチング制御回路47と、ダイオード61とを有している。
トランス41は、1次側巻線41Aおよび2次側巻線41B,41C,41Dを含んで構成された4巻線型のトランスである。1次側巻線41Aと2次側巻線41Bとはフライバック接続されている。つまり、1次側巻線41Aと2次側巻線41Bとは、その極性が互いに反対の向きになるように磁気結合されている。一方、1次側巻線41Aと2次側巻線41C、および1次側巻線41Aと2次側巻線41Dは、それぞれフォワード接続されている。つまり、1次側巻線41Aと2次側巻線41Cとは、その極性が互いに同じ向きになるように磁気結合されており、1次側巻線41Aと2次側巻線41Dとは、その極性が互いに同じ向きになるように磁気結合されている。1次側巻線41Aの巻数はNaであり、2次側巻線41Bの巻数はNbであり、2次側巻線41Cの巻数はNcであり、2次側巻線41Dの巻数はNdである。1次側巻線41Aの一端はスイッチング素子23を介して1次側低圧ラインL1Lに接続され、1次側巻線41Aの他端は1次側高圧ラインL1Hに接続されている。すなわち、ヒューズ18、1次側巻線41A、およびスイッチング素子23は、高圧バッテリHBの両端間に互いに直列接続されている。2次側巻線41Bの一端は保持部25に接続され、他端は接地ラインLGに接続されている。2次側巻線41Cの一端は保持部26に接続され、他端は接地ラインLGに接続されている。2次側巻線41Dの一端は整流回路45に接続され、他端は接地ラインLGに接続されている。
この構成により、2次側巻線41Cの両端には、1次側巻線41Aと1次側巻線41Cとの巻数比(Nc/Na)に応じて変圧された交流電圧が出力され、2次側巻線41Dの両端には、1次側巻線41Aと1次側巻線41Dとの巻数比(Nd/Na)に応じて変圧された交流電圧が出力される。一方、2次側巻線41Bの両端には、保持部25の出力にダイオード24Aが接続されているため、振幅が制限された交流電圧が出力される。
整流回路45は、一対のダイオード45A,45Bからなる単相全波整流型のものである。ダイオード45Aのアノードは2次側巻線41Dの一端に、ダイオード45Bのアノードは2次側巻線41Dの他端にそれぞれ接続されている。ダイオード45A,45Bの各カソード同士は互いに接続されると共に、2次側ラインL2に接続されている。
平滑回路46は、整流回路45にて整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Vlを生成し、制御回路17、スイッチング制御回路47(後述)、比較部30、ダイオード24Aに電源電圧として供給するものである。つまり、スイッチング制御回路47と、トランス41(1次側巻線41Aと2次側巻線41D)、整流回路45と、平滑回路46は、第1の実施の形態における補助電源50に対応したものである。
スイッチング制御回路47は、この電圧Vlが所定の電圧を保つように、SW制御信号Vgのパルス幅を変調し、その信号をスイッチング素子23に供給するとともに、比較部30から供給される比較結果Vcompに基づいて、スイッチング素子23のスイッチング動作を停止するように動作するものである。具体的には、スイッチング制御回路47は、通常は、比較部30から供給される比較結果Vcompを監視しつつ、電圧Vlが所定の電圧を保つように、SW制御信号Vgのパルス幅を変調し、スイッチング素子23に供給する。そして、比較結果Vcompが高レベル電圧になったときに、スイッチング制御回路47は、SW制御信号Vgを停止し、スイッチング素子23をオフ状態にするように機能する。
ダイオード61は、アノードが低圧バッテリLBの出力に接続され、カソードが平滑回路46の出力に接続されている。この構成により、平滑回路46の出力電圧Vlから電源供給を受けている制御回路17などの回路は、トランス41に予期せぬ事態が発生し、電圧Vlが低下しても、低圧バッテリLBからダイオード61を介して電源供給を受けることができるようになっている。
ここで、トランス41は本発明における「トランス」の一具体例に対応し、1次側巻線41Aは本発明における「1次側巻線」の一具体例に対応し、2次側巻線41B,41C,41Dは本発明における「第1から第3の2次側巻線」の一具体例にそれぞれ対応する。比較部30およびスイッチング制御回路47は、本発明における「スイッチング制御回路」の一具体例に対応する。整流回路45および平滑回路46は、本発明における「整流平滑回路」の一具体例に対応する。
[動作および作用]
(電圧検出部60の詳細動作)
次に、図9〜図11を参照して、電圧検出部60の詳細動作について説明する。
図9は、スイッチング素子23がオンのときのスイッチング電源装置2の動作状態を、回路図を用いて表すものである。図10は、スイッチング素子23がオフのときの電圧検出部60の動作状態を、回路図を用いて表すものである。
図11は、電圧検出部60のタイミング波形図を表すものであり、(A)はSW制御信号Vgの波形を示し、(B)は1次側巻線41Aの電流I41Aの波形を示し、(C)は2次側巻線41Bの電流I41Bの波形を示し、(D)は2次側巻線41Bの電圧V41Bの波形を示し、(E)は保持部25の出力電圧VBの波形を示し、(F)は2次側巻線41Cの電圧V41Cの波形を示し、(G)は保持部26の出力電圧VCの波形を示し、(H)は2次側巻線41Dの電圧V41Dの波形を示す。
まず、タイミングt11において、SW制御信号Vgが高レベルになると(図11(A))、スイッチング素子23がオン状態になり、図9に示したように、電流I41Aが流れ始める。その後、電流I41Aは、直流入力電圧Vinと1次側巻線41AのインダクタンスL41Aで決まる傾き(Vin/L41A)の割合で増加する(図11(B))。これにより、スイッチング素子23がオンの間、トランス41に励磁エネルギーが蓄積されるとともに、2次側巻線41Bの両端間に電圧V41Bが誘起され(図11(D))、2次側巻線41Cの両端間に電圧V41Cが誘起され(図11(F))、2次側巻線41Dの両端間に電圧V41Dが誘起される(図11(H))。
このとき、2次側巻線41Cの両端間の電圧V41Cは(Nc/Na)×Vinになり、これがピーク電圧VPCになる(図11(F))。このピーク電圧VPCは、スイッチング制御回路47によってSW制御信号Vgのパルス幅が変調されても変化することはない。保持部26は、ピーク電圧VPCからダイオード26Aの順方向電圧Vfを減じた電圧((Nc/Na)×Vin−Vf)を保持し、電圧VCとして比較部30に供給するとともに(図11(G))、検出電圧Vdetとして出力端子T5から出力する。よって、この電圧VCもまた、SW制御信号Vgのパルス幅に依存しない。
2次側巻線41Dの両端間の電圧V41Dは、(Nd/Na)×Vinになる(図11(H))。このとき、ダイオード45Aに対して順方向になるため、2次側巻線41Dからダイオード45Aを通って2次側ラインL2に電流I41Dが流れる(図9)。
次に、タイミングt12において、SW制御信号Vgが低レベルになると(図11(A))、スイッチング素子23がオフ状態になり、図10に示したように、2次側巻線41Bの他端から一端へ電流I41Bが流れ始め、ダイオード25Aおよびダイオード24Aに供給される。その後、電流I41Bは、電圧Vl、ダイオード25A,24Aの順方向電圧Vf、および2次側巻線41BのインダクタンスL41Bで決まる傾き(−(Vl+2×Vf)/L41B)の割合で減少する(図11(C))。これにより、トランス41に蓄積された励磁エネルギーが放出される。ダイオード24Aに供給された電流は、2次側ラインL2に流れ、平滑回路46に回生される。
このとき、2次側巻線41Bの両端間の電圧V41Bは、Vl+2×Vfになり、これがピーク電圧VPBになる(図11(D))。このピーク電圧VPBは、スイッチング制御回路47によってSW制御信号Vgのパルス幅が変調されても変化することはない。保持部25は、電圧VPBからダイオード25Aの順方向電圧Vfを減じた電圧(Vl+Vf)を保持し、電圧VBとして比較部30に供給する(図11(E))。よって、この電圧VBもまた、SW制御信号Vgのパルス幅に依存しない。
その後、タイミングt13において、トランス41に蓄積された励磁エネルギーが全て放出され、トランス41のコアがリセットされた後、再びタイミングt11においてSW制御信号Vgが高レベルとなり、以上の動作が繰り返される。その際、2次側巻線41Dの両端間の電圧V41Dは、整流回路45で整流され、平滑回路46で平滑化されることにより、電圧Vlが生成される。そして、スイッチング制御回路47によってSW制御信号Vgのパルス幅が変調されることにより、電圧Vlが所定の電圧を保つように制御される。
比較部30は、第1の実施の形態と同様に動作する。すなわち、比較部30は、保持部25の出力電圧VB、および保持部26の出力電圧VCが、以下の2つの条件のうちのどちらかを満たし、かつその状態が所定の時間続いた場合において、比較出力Vcompとして高レベルの電圧を出力する。第1の条件は、保持部25の出力電圧VBがリファレンス電圧Vref1(例えば26V)より大きいことである。これは、上述したように、トランス41の2次側巻線41Cがショートした場合に対応する。第2の条件は、保持部25の出力電圧VBがリファレンス電圧Vref2(例えば1V)より小さく、かつ保持部26の出力電圧VCがリファレンス電圧Vref3(例えば2.3V)より大きいことである。これは、上述したように、トランス41の2次側巻線41Bがショートした場合に対応する。
比較部30におけるこれらの比較動作は、電圧Vlが所定の電圧を保つように制御されている間、安定に動作することができる。すなわち、保持部25の出力電圧VB、および保持部26の出力電圧VCは、上述したようにSW制御信号Vgのパルス幅に依存しないため、これらの比較動作が、SW制御信号Vgのパルス幅に影響されることはない。
スイッチング制御回路47は、比較出力Vcompが高レベル電圧の状態になったときに、SW制御信号Vgの生成を停止し、低レベルの電圧を出力する。これにより、スイッチング素子23はスイッチング動作を停止し、オフ状態を維持するようになる。その結果、2次側巻線41B,41Cのショートの影響を最小限に食い止めることができる。
トランス41の1次側巻線41Aのショートは、第1の実施の形態と同様に、ヒューズ18により検出できる。すなわち、1次側巻線41Aがショートした場合、スイッチング素子23がオン状態になると、過大な電流が1次側高圧ラインL1Hから1次側低圧ラインL1Lに流れる。このとき、この電流は高圧バッテリHBからヒューズ18を介して供給されるため、その過大な電流によりヒューズ18が切断され、電流供給経路が遮断される。これにより、1次側巻線41Aにはいかなる電流も供給されなくなり、トランス41は発煙や発火を免れることができ、結果として、1次側巻線41Aのショートの影響を最小限に食い止めることができる。
なお、例えば、トランス41の2次側巻線41Bや41Cがショートした場合には、平滑回路46の出力電圧Vlが低下するおそれがあるが、この場合でも、ダイオード61を介して電圧が供給される。よって、比較部30やスイッチング制御回路47など、この電圧Vlが電源電圧として供給される回路は、停止することなく正常に動作することができる。
[効果]
以上のように本実施の形態では、補助電源と電圧検出部を一体化して構成するようにしたので、部品点数を削減でき、シンプルな回路構成を実現できる。
本実施の形態では、保持部26において、2次側巻線41Cのピーク電圧VPCにより直流入力電圧Vinを検出するようにしたので、SW制御信号Vgのパルス幅に影響されずに、安定してトランス41の各巻線のショートを検出することができる。
その他の効果は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、ダイオード24Aに代えて、放出回路24を用いるようにしてもよい。
例えば、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、ダイオード24Aを2次側巻線41Bに接続するようにしてもよい。