以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。図1において、スイッチング電源装置1は、スイッチング回路110、トランス40、整流回路111、平滑回路112、制御手段100、蓄積手段113、クランプ電圧制御手段114、で構成され、入力端子10aと10b、出力端子70aと70b、71aと71bを備えている。
直流電源10が入力端子10aと10bを介してスイッチング回路110に接続され、スイッチング回路110の出力がトランス40の1次巻線40aに接続され、トランス40の2次巻線40bが整流回路111に接続され、整流回路111の出力が平滑回路112に接続され、平滑回路112の出力がスイッチング電源装置1の出力端子70aと70bを介し、第一の負荷である負荷70に接続される。制御手段100には、入力端子10aと10b、出力端子70aと70b、スイッチング回路110、整流回路111が接続される。制御手段100は、入力端子10a、10bからの入力電圧値と出力端子70a、70bからの出力電圧値をもとに、所望の出力電圧が得られるようスイッチング回路110と整流回路111を制御する。以上は、一般的な電源装置の回路構成に相当する。
更に図1では、前述の回路構成に、本発明に関わる蓄積手段113とクランプ電圧制御手段114が接続される。蓄積手段113の入力は、トランス40の2次巻線40bと整流回路111との接続端子へ接続され、蓄積手段113の出力にクランプ電圧制御手段114の入力が接続され、蓄積手段113の出力が出力端子71aと71bを介して第2の負荷である負荷71へ接続される。
本実施例の動作について説明する。まず、本発明に関わる蓄積手段113、クランプ電圧制御手段114を付加しない場合の動作を説明する。直流電源10から入力された直流電圧は、スイッチング回路110のスイッチング動作により交流電圧に変換され、前記交流電圧がトランス40の1次巻線40aに印加され、トランス40は入力された交流電圧をトランス40の巻線比に従い変圧し、トランス40の2次巻線40bに交流電圧を出力する。整流回路111は、2次巻線40bに誘起した交流電圧を整流する。平滑回路112は、整流回路111の出力電圧を滑らかな直流電圧に変換し、負荷70へ直流電圧を出力する。
ここで、前述の整流回路111が交流電圧を整流する際、整流回路111にサージ電圧が発生する場合がある。前記サージ電圧が発生したとき、整流回路111内の整流用スイッチング素子に印加される電圧Vsの波形を図2に示す。図2では、前記電圧Vsにサージ電圧が重畳され、その最大値Vs(peak)が前記整流用スイッチング素子の耐圧VDSSを上回っている。この場合、整流用スイッチング素子が破壊される。
本実施例では、前記サージ電圧が前記蓄積手段の電圧以上になろうとするとき、前記蓄積手段113がサージ電圧のエネルギーを吸収、蓄積し、サージ電圧のピーク値は前記蓄積手段の電圧に制限される。このときの蓄積手段113の電圧をクランプ電圧と呼び、前記サージ電圧のエネルギーをサージエネルギーと呼ぶ。なお、蓄積手段113は、前記サージエネルギーを直流エネルギーとして蓄積する。前記直流エネルギーをサージ電力と呼ぶ。このときの整流用スイッチング素子の電圧Vsの波形を図3に示す。図3において、記号Vcで示す波形は前記クランプ電圧である。図3の波形のように、サージ電圧をクランプ電圧で制限することをクランプすると呼ぶ。
ここで、前記クランプ電圧の適正な値について述べる。クランプ電圧を整流用スイッチング素子の耐圧VDSSより低く選べば素子の破壊を防止でき、また、図3の矩形パルスの波高値Vt2より高く選べばスイッチング電源の電力伝達作用に悪影響は無い。このため、本実施例ではクランプ電圧Vcを整流用スイッチング素子の耐圧より低くかつ図3の矩形パルスの波高値Vt2より高く選んだ。
前記クランプ電圧は、蓄積手段113の出力に接続されたクランプ電圧制御手段114により所望の電圧に制御される。そして、所望の電圧に変換されたサージ電力は、負荷71へ回生する。
以上説明したように、本実施例では、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
本実施例では、整流回路111に蓄積手段113を接続したが、蓄積手段113の接続箇所を限定するものではない。蓄積手段113を、サージ電圧、或いはなんらかの過電圧が発生する恐れのある箇所に接続することで、前述箇所の素子を保護することが可能である。
図4は、本発明の第2の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。図4において、図1と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。
図4と図1で異なる点について説明する。図4において、スイチング電源装置2は回生電力制御手段115を具備する。蓄積手段113の出力に回生電力制御手段115の入力が接続され、回生電力制御手段115の出力が出力端子70aと70bを介して負荷71へ接続される。
本実施例では、回生電力制御手段115を具備することで、蓄積手段113に蓄積したサージエネルギーを所望の電圧へ変換して、前記エネルギーを負荷71へ回生することができる。
本実施例でも前述の実施例と同様に、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
図5は、本発明の第3の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。図5において、図4と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。
図5と図4で異なる点について説明する。図5において、スイッチング電源装置3は単出力であり、回生電力制御手段115の出力が出力端子70aと70bを介し負荷70へ接続されている。つまり、蓄積手段113に蓄積されたサージエネルギーは、第一の負荷70へ回生される。
本実施例でも前述の実施例と同様に、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
図6は、本発明の第4の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。図6において、図5と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。
図6と図5で異なる点について説明する。図6において、回生電力制御手段115の出力はスイッチング電源装置4内部の負荷72に接続されている。ここで、負荷72は冷却ファンであり、スイッチング電源装置4を冷却する機能を有する。つまり、蓄積手段113に蓄積されたサージエネルギーは、負荷72の冷却ファンへ回生される。
本実施例でも前述の実施例と同様に、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
なお、本実施例では、負荷72を冷却ファンとおいたが、それに限定することなく、電源装置内の制御手段や、その他の回路としてもよい。
図7は、本発明の第5の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。図7において、図6と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。
スイッチング電源装置5の1次側について説明する。直流電源10には、入力端子10aと10bを介して、バイパスコンデンサ60、スイッチング素子20と21の直列接続体、及び、スイッチング素子22と23の直列接続体が接続され、スイッチング素子20と21の接続点と、スイッチング素子22と23の接続点がスイッチング回路110の出力である。スイッチング素子20〜23には、それぞれフリーホイールダイオード30〜33が接続される。前述のバイパスコンデンサ60、スイッチング素子20〜23、フリーホイールダイオード30〜33がスイッチング回路110を構成する。そして、スイッチング回路110の出力が共振インダクタ41を介して、トランス40の1次巻線40aに接続される。なお、前記共振インダクタ41は、トランス40の漏洩インダクタンスで代用することも可能であり、その場合は省略できる。
次に、スイッチング電源装置5の2次側について説明する。トランス40の2次巻線40bの両端には、それぞれ、スイッチング素子24と25のドレイン端子が接続され、前記スイッチング素子24と25はぞれぞれのソース端子が接続されている。スイッチング素子24と25には、それぞれ、フリーホイールダイオード34と35が接続されている。ここで、スイッチング素子24と25、フリーホイールダイオード34と35は、整流回路111を構成する。整流回路111の後段に、平滑インダクタ42と43、平滑コンデンサ61で構成された平滑回路112が接続される。前記平滑インダクタ42と43の直列接続体の端点が、それぞれ、スイッチング素子25と24のドレイン端子に接続され、前記平滑インダクタ42と43の接続点が、平滑コンデンサ61の正極に接続される。
そして、前記スイッチング素子24と25のソース端子が平滑コンデンサ61の負極へ接続される。平滑コンデンサ61の両端が、平滑回路112の出力となり、出力端子70aと70bを介して負荷70へ接続される。
制御手段100には、入出力電圧を検出するため、入力端子10aと10b、出力端子70aと70bが接続される。そして、制御手段100には、スイッチング素子20〜25のゲートが接続され、それらのスイッチング素子を制御する。
図7では、整流回路111に発生するサージ電圧を低減し、サージエネルギーを回生する回路が付加されており、以下に回路構成を説明する。
スイッチング素子24と25のドレイン端子は、それぞれ、ダイオード50と51のアノードに接続され、前記ダイオード50と51のカソードは、クランプコンデンサ62の正極へ接続され、クランプコンデンサ62の負極は前記スイッチング素子24と25のソース端子へ接続される。ここで、ダイオード50と51、クランプコンデンサ62は蓄積手段113を構成する。クランプコンデンサ62の両端には、ツェナダイオード90が接続され、前記ツェナダイオード90は第2のクランプ電圧制御手段140を形成し、クランプ電圧の上限を決める。前記第2のクランプ電圧制御手段140の両端には、スイッチング素子26とダイオード52が直列接続され、前記ダイオード52の両端には、平滑インダクタ44と平滑コンデンサ63が直列接続され、スイッチング素子26にはフリーホイールダイオード36が逆並列接続される。ここで前述のスイッチング素子26、フリーホイールダイオード36、ダイオード52、平滑インダクタ44、平滑コンデンサ63はクランプコンデンサ62を電源とする電力変換手段116を構成する。更に、クランプコンデンサ62の両端には、その電圧を検出する電圧検出手段101が接続され、前記電圧検出手段101の出力が制御手段102に接続され、制御手段102の出力がスイッチング素子26のゲートに接続される。また、平滑コンデンサ63の両端に電圧検出手段103が接続され、前記電圧検出手段103の出力が制御手段102に出力される。ここで、前述の電力変換手段116、電圧検出手段101、制御手段102は、第1のクランプ電圧制御手段114を構成する。そして、電力変換手段116、電圧検出手段103、制御手段102は、回生電力制御手段115を構成する。前記クランプ電圧制御手段114と回生電力制御手段115の機能は後述する。平滑コンデンサ63の正極にはダイオード53のアノードが接続され、前記ダイオード53のカソードに第二の負荷72の正極が接続される。負荷72の負極は平滑コンデンサ63の負極に接続される。
更に図7では、補助電源117を備え、前記補助電源117の入力は入力端子10aと10bを介して直流電源10に接続され、また補助電源117の正側の出力は端子117aを介してダイオード54のアノードに接続され、前記ダイオード54のカソードは負荷72の正極へ接続される。補助電源117の負側の出力は端子117bを介して負荷72の負極へ接続される。ここで、前述のダイオード53と54は、電力変換手段116並びに補助電源117から供給される電力を突き合わせて負荷72へ伝達するオア手段118である。
なお、図7中のフリーホイールダイオード30〜36はスイッチング素子20〜26がMOSFETの場合、ボディダイオードを使用できる。蓄積手段113は、ダイオード50と51とクランプコンデンサ62で構成したが、前記ダイオードについては、電流を一方向にのみ通す非線形素子であれば代用でき、例えば、MOSFETのボディダイオードなどでも良く、スイッチング素子を制御するなどして用いても良い。また、前記クランプコンデンサ62は電池などでも代用できる。電力変換手段116は、クランプコンデンサ62を電源として降圧した直流電圧を出力する降圧コンバータ回路を構成している。ここで、前記電力変換手段116は一例にすぎず、クランプコンデンサ62を電源として電力を変換するものであれば、どのような構成でもよい。
次に本実施例の動作を説明する。
直流電源10から入力された直流電圧は、スイッチング回路110を構成するスイッチング素子20〜23が所定のスイッチング動作を行うことにより、交流電圧に変換され、共振インダクタ41を介して、前記交流電圧がトランス40の1次巻線40aに印加され、トランス40は入力された交流電圧をトランス40の巻線比に従い変圧し、トランス40の2次巻線40bに交流電圧を誘起する。整流回路111は、2次巻線40bに誘起した交流電圧を整流する。平滑回路112は、整流回路111の出力電圧を滑らかな直流電圧に変換し、負荷70へ直流電圧を出力する。
前述の動作で、1次側のスイッチング素子の状態が切り替わり、2次巻線40bの電流の向きが切り替わる瞬間、2次側のスイッチング素子及びフリーホイールダイオードの両端に、サージ電圧が発生する場合がある。
次に、本実施例での、サージ電圧を低減する技術について説明する。前述のサージエネルギーは、ダイオード50と51を介して蓄積手段113のクランプコンデンサ62に蓄積される。ここで、クランプコンデンサ62の容量が十分大きいと、クランプコンデンサ62の両端の電圧はほとんど変化せず、サージ電圧は、ダイオード50、51の作用により、クランプコンデンサ62の両端の電圧にほぼ等しくなる。すなわち、サージ電圧が低減する。以降、このクランプコンデンサ62の両端の電圧をクランプ電圧と呼び、記号Vcで表す。また、以降、ダイオード50、51の作用によりサージ電圧がクランプ電圧に制限されることを、クランプすると呼ぶ。このときのスイッチング素子の電圧Vs1とVs2の波形は実施例1で説明した図3と同様になる。また、このときのクランプ電圧は、実施例1で述べた通り、スイッチング素子の耐圧より低くかつ図3の矩形パルスの波高値Vt2より高く選んだ。
クランプ電圧Vcの制御方法について触れる。サージエネルギーがクランプコンデンサ62に蓄積し続けると、クランプ電圧Vcは上昇して、スイッチング素子の耐圧より高い値になる可能性がある。そこで、クランプコンデンサ62から蓄積されたエネルギーを取り出し、クランプ電圧Vcを適正な値に保つ必要がある。
クランプ電圧Vcを適正な値に制御するのが、クランプ電圧制御手段である。ここで、サージ電力、及び、回生電力を利用する負荷72の電力量の関係を図8に示す。以下、図8を参照しながら説明する。図8の縦軸は電力量を、横軸はファン(負荷72)の回転数を示し、Wsはサージ電力、Wfは負荷72の電力を示す。いま、負荷72の電力Wfがサージ電力Wsと等しいときには(図8の点A)、第1及び第2のクランプ電圧制御手段は何もせず、回生電力制御手段115は負荷72に電力を供給する。負荷72の電力Wfがサージ電力Wsよりも大きいとき(図8の点Aより右側)、第2のクランプ電圧制御手段140は何もしない。一方、第1のクランプ電圧制御手段は、クランプ電圧が所望の電圧になるようにサージ電力Wsをクランプコンデンサ62から取り出し、負荷72へ供給する。なお、このとき負荷72の電力は、第1のクランプ電圧制御手段114及び補助電源117の双方からオア手段118を介して供給される。負荷72の電力Wfがサージ電力Wsよりも小さいときには(図8の点Aより左側)、回生電力制御手段115は負荷72が必要とする電力を供給し、第2のクランプ電圧制御手段140が余剰な電力を消費してクランプ電圧の上昇を防止する。このようにして、クランプ電圧Vcは適正な値に制御される。
ここで、第2のクランプ電圧制御手段140について触れる。第2のクランプ電圧制御手段140は、前述した通り、サージ電力Ws>ファン電力Wfの条件のとき、余剰な電力を消費し、クランプ電圧の上限値を決める手段である。図7では、前述の手段をツェナダイオード90が担っている。しかし、一般にツェナダイオードの降伏電圧は、数ボルト刻みである。そのため、クランプ電圧の上限値を細かく設定したい場合は、ツェナダイオードではない別の手段が必要になる。そこで、クランプ電圧の上限値を細かく設定できる回路の一例を図9に示す。
図9において、点140a−140b間には、抵抗141と抵抗142の直列体、抵抗143と抵抗144とシャントレギュレータ145の直列体、トランジスタ146と抵抗147と抵抗148の直列体、抵抗149とトランジスタ150の直列体らが並列接続される。更に、抵抗141と抵抗142の接続点がシャントレギュレータ145のリファレンス端子(145R)に接続され、抵抗143と抵抗144の接続点がトランジスタ146のベースに接続され、抵抗147と抵抗148の接続点がトランジスタ150のゲートに接続される。また、トランジスタ150にはフリーホイールダイオード160が逆並列に接続され、トランジスタ150がMOSFETの場合は、フリーホイールダイオード160はトランジスタ150のボディダイオードで代用できる。
次に、動作について説明する。図9の点140a−140b間に印加された電圧は、抵抗141と抵抗142で分圧され、抵抗142両端の電圧が、シャントレギュレータ145のリファレンス(145R)−アノード(145A)端子間に印加される。シャントレギュレータ145は、前述のリファレンス(145R)−アノード(145A)端子間の電圧と、自己の基準電圧とを比較する。ここで、抵抗141と142を調整し、前述のクランプ電圧上限値が点140a−140b間に印加された際に、抵抗142の両端電圧がシャントレギュレータ145の内部基準電圧より大きくなるよう設定しておけば、シャントレギュレータ145のカソード−アノード間が導通する。そして、抵抗143と抵抗144に電圧が印加され、トランジスタ146がオンし、抵抗147と抵抗148に電圧が印加される。更に、抵抗148両端の電圧がトランジスタ150のゲート−ソース間に印加され、トランジスタ150がオンする。すると、点140a−140b間の抵抗分は抵抗149のみとなり、このとき、点140a−140b間にクランプコンデンサ62が接続されていれば、前述のコンデンサの電荷を引き抜き、設定したクランプ電圧上限値を維持することができる。
従って、図9の回路において、抵抗141と142の抵抗比を設定することで、クランプコンデンサ62の上限電圧を所望の電圧に制御することができる。
本実施例においても前述の実施例と同様に、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
図10は、本発明の第6の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。
スイッチング電源装置6の1次側について説明する。直流電源10には、入力端子10aと10bを介して、バイパスコンデンサ60が接続され、バイパスコンデンサ60の両端にトランス40の1次巻線40aとスイッチング素子27の直列接続体が接続され、スイッチング素子27には逆並列にフリーホイールダイオード37が接続されている。前述のバイパスコンデンサ60、スイッチング素子27、フリーホイールダイオード37がスイッチング回路120を構成する。
次に、スイッチング電源装置6の2次側について説明する。トランス40の2次巻線40bの両端には、スイッチング素子28と29のそれぞれのソース端子が接続された直列接続体が接続されている。前記スイッチング素子28と29には、それぞれ、フリーホイールダイオード38と39が逆並列に接続されている。前記スイッチング素子28と29の直列接続は、前記スイッチング素子27がオンしたときに前記2次巻線40bに誘起した電圧に対してフリーホイールダイオード39が逆バイアスされる向きで、2次巻線40bに接続される。スイッチング素子28、29、フリーホイールダイオード38、39は整流回路121を構成する。整流回路121の後段に、平滑インダクタ45aと平滑コンデンサ61で構成された平滑回路122が接続される。前記平滑インダクタ45aと平滑コンデンサ61の直列接続体が前記スイッチング素子29の両端に並列接続される。そして、平滑コンデンサ61の両端が平滑回路122の出力となり、平滑回路122の出力が出力端子70aと70bを介して第1の負荷70へ接続される。
制御手段100には、入出力電圧を検出するため、入力端子10aと10b及び出力端子70aと70bが接続される。制御手段100には、スイッチング素子27〜29のゲートが接続され、それらのスイッチング素子を制御する。
図10では、整流回路121に発生するサージ電圧を低減し、サージエネルギーを回生する回路が付加されており、以下に回路構成を説明する。
前記スイッチング素子29の両端に、ダイオード55とクランプコンデンサ62の直列接続体が接続される。ここで、ダイオード55とクランプコンデンサ62は蓄積手段123を構成する。クランプコンデンサ62の両端には、ツェナダイオード90が接続され、前記ツェナダイオード90は第2のクランプ電圧制御手段140を形成し、クランプ電圧の上限を決める。前記第2のクランプ電圧制御手段140の両端には、補助インダクタ45bと整流ダイオード56の直列接続体が接続される。また、クランプコンデンサ62の両端は出力端子71aと71bを介して第二の負荷71へ接続される。前述の平滑インダクタ45aと補助インダクタ45bと整流ダイオード56は、第三のクランプ電圧制御手段124を構成する。なお、前記補助インダクタ45bは、平滑インダクタ45aと磁気的に結合しており、トランス45を形成する。平滑インダクタ45aと補助インダクタ45bの結合方向は、平滑インダクタ45aが負荷70へエネルギーを放出するとき、補助インダクタ45bに発生した電圧によりクランプコンデンサ62が充電される方向が、クランプコンデンサ62にサージエネルギーが蓄積される方向と同一となる方向である。なお、前述のフリーホイールダイオード37〜39は、スイッチング素子27〜29がMOSFETの場合、ボディダイオードを利用できる。
次に、本実施例の動作について説明する。はじめに、蓄積手段123、第2のクランプ電圧制御手段140、第3のクランプ電圧制御手段124を付加しない場合の動作について説明する。
図10において、蓄積手段123、第2のクランプ電圧制御手段140、第3のクランプ電圧制御手段124を付加しない場合の各部の電圧電流波形を図11に示す。図11において、Vg(27)、Vg(28)、Vg(29)は、それぞれ、スイッチング素子27、28、29のゲート駆動電圧である。また、VsとIsは、スイッチング素子29とフリーホイールダイオード39の並列接続体の両端の電圧と電流である。IL1は平滑インダクタ45aの電流である。以下、図11を参照しながら動作を説明する。
図11において、スイッチング素子27と28は同時にオン・オフし、前記スイッチング素子28とスイッチング素子29は相補にオン・オフする。前記スイッチング素子28と29は、2次巻線40bに発生した電圧を同期整流する。時刻t0−t1の間では、スイッチング素子27がオンし、直流電源10から入力された直流電圧は1次巻線40aに印加される。そして、2次巻線40bにはフリーホイールダイオード39を逆バイアスする向きに電圧が発生し、2次巻線40b→平滑インダクタ45a→平滑コンデンサ61→スイッチング素子28とフリーホイールダイオード38のループで電流が流れ、平滑インダクタ45aにエネルギーを蓄えると同時に負荷70に電力が伝達される。また、このときトランス40の励磁インダクタンタンスに励磁エネルギーが蓄積する。次に、時刻t1−t2の間では、スイッチング素子27がオフし、直流電源10の直流電圧は1次巻線40aには印加されない。前述の動作でトランス40に蓄えられた励磁エネルギーにより、2次巻線40bには、フリーホイールダイオード38を逆バイアスする向きに電圧が発生する。このとき、2次巻線40bに電流は流れない。平滑インダクタ45aは前述の動作で蓄えたエネルギーを放出して、平滑インダクタ45aの両端には前記平滑インダクタ45aと平滑コンデンサ61の接続点を正とした電圧が発生する。前記平滑インダクタ45aに発生した電圧は、負荷70への出力電圧、つまり、本電源装置の出力電圧と等しい。そして、平滑インダクタ45a→平滑コンデンサ61→スイッチング素子29とフリーホイールダイオード39のループで電流が流れ、負荷70に電力が伝達される。
前述の動作で、時刻t0−t1間のはじめ、2次巻線40bにフリーホイールダイオード39を逆バイアスする電圧が発生するとき、2次側のスイッチング素子29及びフリーホイールダイオード39の両端に、サージ電圧が発生する場合がある。
次に、蓄積手段123、第2のクランプ電圧制御手段140、第3のクランプ電圧制御手段124を付加した場合の動作を説明する。その場合の各部の電圧電流波形を図12に示す。図12において、Vcはクランプコンデンサ62の電圧、VL2とIL2は補助インダクタ45bの両端の電圧と電流であり、その他の記号は図11と同様の箇所を示す。
以下、図12を参照しながら、本実施例でのサージ電圧を低減する技術について説明する。
時刻t0−t1の間、サージ電圧が発生するとき、サージエネルギーはダイオード55を介してクランプコンデンサ62に蓄積され、その作用により、サージ電圧はクランプ電圧Vcにクランプされる。そして、クランプコンデンサ62に蓄積されたサージエネルギーは、クランプコンデンサ62に接続された負荷71へ回生される。
ここで、クランプ電圧Vcの制御方法について説明する。本実施例では、クランプ電圧Vcを制御する手段として、第3のクランプ電圧制御手段124を備えている。まず、第3のクランプ電圧制御手段124の動作を説明する。図12の時刻t1−t2の間では、平滑インダクタ45aは本電源装置の出力電圧と等しい電圧を発生させて負荷側へエネルギーを放出する。このとき、平滑インダクタ45aと磁気的に結合した補助インダクタ45bには、本電源装置の出力電圧、及び、前記平滑インダクタ45aと補助インダクタ45bの巻線比で決定する電圧(図12中の記号VL2の正の電圧)が誘起する。そして、前記補助インダクタ45bに誘起した電圧は、整流ダイオード56で整流され、クランプコンデンサ62に印加される。ここで、負荷71の電力がサージ電力より大きい場合、補助インダクタ45b→クランプコンデンサ62→整流ダイオード56のループで電流(図12中のIL2)が流れ、補助インダクタ45bより電力が供給される。前記補助インダクタ45bから供給された電力は、クランプコンデンサに蓄積して平滑されて負荷71に出力される。これらの動作により、負荷71の電力がサージ電力を上回るなどしても、クランプ電圧Vcは前記補助インダクタ45bに誘起した電圧、即ちクランプ電圧制御手段124から出力される電圧にほぼ保たれる。つまり、クランプ電圧制御手段124はクランプ電圧Vcの下限値を制御する。このときのクランプ電圧Vcについては、本電源装置の出力電圧をVo、平滑インダクタ45aの巻線数をN1、補助インダクタ45bの巻線数をN2とおくと、Vc=Vo×N2/N1となる。クランプ電圧Vcは、平滑インダクタ45a及び補助インダクタ45bの巻線数を変更することにより、所望の値に設定できる。一方、クランプ電圧制御手段124は、負荷71に電力を供給できることから、前述した実施例5での補助電源に相当する役割も持っている。
次に、実施例5で説明した図8を参照しながら、負荷71の電力とクランプ電圧の関係を述べる。図8中のWfを、負荷71の電力へ読み替えるものとする。図8より、負荷71の電力Wfがサージ電力Wsと等しいときには(図8の点A)、クランプ電圧制御手段は何もしない。負荷71の電力Wfがサージ電力Wsよりも小さいときには(図8の点Aより左側)、負荷71には必要な電力が蓄積手段123から供給される。第2のクランプ電圧制御手段140は余剰な電力を消費し、クランプ電圧の上昇を防止する。第3のクランプ電圧制御手段は何もしない。負荷71の電力Wfがサージ電力Wsよりも大きいとき(図8の点Aより右側)、サージ電力Wsは負荷71に供給され、負荷71の電力Wfとサージ電力Wsとの差分の電力(Wf−Ws)は前述した通り、第3のクランプ電圧制御手段124より供給される。このとき第3のクランプ電圧制御手段は、前記補助インダクタ45bから出力される電圧を、クランプコンデンサ62に印加して、クランプ電圧を制御する。
前述したとおり、本実施例における第3のクランプ電圧制御手段124はクランプ電圧の下限値を制御し、且つ、負荷に電力を供給する機能を有する。
本実施例においても前述の実施例と同様に、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
図13は、本発明の第7の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。図13において、図10と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。
図13と図10で異なる点について説明する。図13において、図10に示した第2のクランプ電圧制御手段140と負荷71を削除し、回生スイッチ151と前記回生スイッチ151を制御する制御手段104を新たに備える。図13において、回生スイッチ151のドレイン端子が整流ダイオード56のカソード端子に接続され、前記回生スイッチ151のソース端子が前記整流ダイオード56のアノードに接続される。即ち、回生スイッチ151は整流ダイオード56に逆並列に接続される。そして、前記回生スイッチ151のゲート端子が制御手段104の出力に接続され、前記制御手段104の入力が制御手段100に接続される。制御手段104は制御手段100からスイッチングの同期信号を受け取り、それをもとに回生スイッチ151を制御する。前述の平滑インダクタ45a、補助インダクタ45b、整流ダイオード56、回生スイッチ151、制御手段104は、第4のクランプ電圧制御手段125を構成する。なお、前記回生スイッチ151がMOSFETの場合は、前記整流ダイオード56はボディダイオードで代用できる。
次に、本実施例の動作について説明する。図13において、各部の電圧電流波形を図14に示す。図14において、Vg(27)〜Vg(29)、及び、Vg(151)は、それぞれ、スイッチング素子27〜29、回生スイッチ151のゲート駆動電圧である。また、VsとIsは、スイッチング素子29とフリーホイールダイオード39の並列接続体の両端の電圧と電流である。IL1は平滑インダクタ45aの電流である。VL2、IL2は補助インダクタ45bの両端の電圧と電流である。以下、図14を参照しながら動作を説明する。
図14において、スイッチング素子27と28は同時にオン・オフし、前記スイッチング素子28とスイッチング素子29は相補にオン・オフする。また、スイッチング素子29と回生スイッチ151は同時にオン・オフする。
本実施例において、直流電源10から負荷70に電力を伝達する基本動作は前記実施例6と同様である。また、本実施例でも、2次側のスイッチング素子29及びフリーホイールダイオード39の両端にサージ電圧が発生する場合がある。
本実施例でのサージ電圧を低減する技術を、図14を参照しながら説明する。時刻t0−t1の間、サージ電圧が発生するとき、サージエネルギーはダイオード55を介してクランプコンデンサ62に蓄積され、その作用により、サージ電圧はクランプ電圧Vcにクランプされる。更に、本実施例では、クランプコンデンサ62に蓄積されたサージエネルギーを、補助インダクタ45bと平滑インダクタ45aを介して、負荷70へ回生する。
次に、本実施例における、クランプ電圧Vcの制御方法、及び、サージエネルギーの回生方法について説明する。本実施例では、クランプ電圧Vcを制御する手段として、第4のクランプ電圧制御手段125を備えている。まず、クランプ電圧制御手段125の動作を説明する。
時刻t0以前、平滑インダクタ45aは本電源装置の出力電圧と等しい電圧を発生させて負荷側へエネルギーを放出する。このとき、平滑インダクタ45aと磁気的に結合した補助インダクタ45bには、本電源装置の出力電圧、及び、前記平滑インダクタ45aと補助インダクタ45bの巻線比で決定する電圧(図14中の記号VL2の正の電圧)が誘起する。そして、前記補助インダクタ45bに誘起した電圧は、整流ダイオード56で整流され、クランプコンデンサ62に印加される。前述の動作により、クランプ電圧の下限が決定される。このときのクランプ電圧Vcについては、本電源装置の出力電圧をVo、平滑インダクタ45aの巻線数をN1、補助インダクタ45bの巻線数をN2とおくと、Vc=Vo×N2/N1となる。
時刻t0−t1の間、サージ電圧が発生するとき、クランプコンデンサ62がサージエネルギーを蓄積して、サージ電圧をクランプする。ここで、クランプコンデンサ62が前記サージエネルギーを蓄積した際、クランプ電圧がΔV上昇したものとする。クランプ電圧Vcは前記クランプ電圧の下限電圧よりΔV高い状態が時刻t1まで維持される。
時刻t1になると、時刻t0以前と同様に、平滑インダクタ45aが負荷側へエネルギーを放出し、補助インダクタ45bに電圧が誘起する。その後、時刻t1′で回生スイッチ151がオンする。ここで、クランプ電圧Vcは、補助インダクタ45bに誘起した電圧よりΔV高いことから、クランプコンデンサ62→補助インダクタ45b→回生スイッチ151のループで電流が流れる。また、補助インダクタ45bは平滑インダクタ45aと磁気的に結合しており、平滑インダクタ45aには、負荷側を正とした向きで、前記ループ電流の補助インダクタ45bと平滑インダクタ45aの巻数比で変換された電流が重畳する。つまり、クランプコンデンサ62に蓄積したサージエネルギーが、補助インダクタ45bと平滑インダクタ45aを介して、負荷70へ回生する。サージエネルギーの負荷への回生が終わると、クランプ電圧は補助インダクタ45bに誘起した電圧に等しくなる。前述の通り、クランプ電圧制御手段125は、クランプコンデンサ62に蓄積したサージエネルギーを負荷へ回生し、クランプ電圧の上昇を防止する機能を有する。なお、クランプコンデンサ62の容量が十分大きければ、前記ΔVは十分に小さくできる。また、回生スイッチ151のオンする期間については、図14に示した限りではなく、平滑インダクタ45aがエネルギーを放出しているときであって、補助インダクタ45bに電圧が誘起している期間内であればよい。
前述したとおり、本実施例における第4のクランプ電圧制御手段125は、クランプ電圧の下限値および上限値を制御し、サージエネルギーを負荷に回生する機能を有する。
本実施例でも前述の実施例と同様に、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
図15は、本発明の第8の実施例によるスイッチング電源装置の回路構成図である。
スイッチング電源装置8の1次側について説明する。1次側の回路は、実施例5で示したスイッチング電源装置5の1次側の回路と同様の構成である。
次に、スイッチング電源装置8の2次側について説明する。トランス40の2次巻線40bの両端には、それぞれ、スイッチング素子24と25のドレイン端子が接続され、前記スイッチング素子24と25はぞれぞれのソース端子が接続されている。スイッチング素子24と25には、それぞれ、フリーホイールダイオード34と35が接続されている。ここで、スイッチング素子24と25、フリーホイールダイオード34と35は、整流回路111を構成する。整流回路111の後段に、平滑インダクタ46aと46b、平滑コンデンサ61で構成された平滑回路122が接続される。前記平滑インダクタ46aと46bの直列接続体の端点が、それぞれ、スイッチング素子25と24のドレイン端子に接続され、前記平滑インダクタ46aと46bの接続点が、平滑コンデンサ61の正極に接続される。そして、前記スイッチング素子24と25のソース端子が平滑コンデンサ61の負極へ接続される。平滑コンデンサ61の両端が、平滑回路122の出力となり、出力端子70aと70bを介して負荷70へ接続される。
制御手段100には、入出力電圧を検出するため、入力端子10aと10b、出力端子70aと70bが接続される。そして、制御手段100には、スイッチング素子20〜25のゲートが接続され、それらのスイッチング素子を制御する。
図15では、整流回路111に発生するサージ電圧を低減し、サージエネルギーを回生する回路が付加されており、以下に回路構成を説明する。
スイッチング素子24と25のドレイン端子は、それぞれ、ダイオード50と51のアノードに接続され、前記ダイオード50と51のカソードは、クランプコンデンサ62の正極へ接続され、クランプコンデンサ62の負極は前記スイッチング素子24と25のソース端子へ接続される。ここで、ダイオード50と51、クランプコンデンサ62は蓄積手段113を構成する。クランプコンデンサ62の両端には、補助インダクタ46cと整流ダイオード56の直列体が接続され、前記整流ダイオード56のカソードが回生スイッチ151のドレイン端子に接続され、前記整流ダイオード56のアノードが前記回生スイッチのソース端子に接続される。即ち、回生スイッチ151は整流ダイオード56に逆並列に接続される。そして、前記回生スイッチ151のゲート端子が制御手段104の出力に接続され、前記制御手段104の入力が前記制御手段100に接続される。
前述の平滑インダクタ46aと46b、補助インダクタ46c、整流ダイオード56、回生スイッチ151、制御手段104は、第5のクランプ電圧制御手段126を構成する。なお、前記回生スイッチ151がMOSFETの場合は、前記整流ダイオード56はボディダイオードで代用できる。また、平滑インダクタ46aと46b、及び、補助インダクタ46cは磁気的に結合しており、トランス46を形成する。平滑インダクタ46aと46b、及び、補助インダクタ46cの結合方向は、平滑インダクタ46aまたは平滑インダクタ46bが負荷70へエネルギーを放出するとき、補助インダクタ46cに発生した電圧によりクランプコンデンサ62が充電される方向が、クランプコンデンサ62にサージエネルギーが蓄積する方向と同一となる方向である。
次に、本実施例の動作について説明する。本実施例において、直流電源10から負荷70に電力を伝達する基本動作は前記実施例5と同様である。また、本実施例でも、1次側のスイッチング素子の状態が切り替わり、2次巻線40bの電流の向きが切り替わる瞬間、2次側のスイッチング素子及びフリーホイールダイオードの両端に、サージ電圧が発生する場合がある。
本実施例でのサージ電圧を低減する技術を説明する。サージ電圧が発生するとき、サージエネルギーはダイオード50と51を介してクランプコンデンサ62に蓄積され、その作用により、サージ電圧はクランプ電圧Vcにクランプされる。更に、本実施例では、クランプコンデンサ62に蓄積されたサージエネルギーを、補助インダクタ46cと平滑インダクタ46aと46bを介して、負荷70へ回生する。
次に、本実施例における、クランプ電圧Vcの制御方法、及び、サージエネルギーの回生方法について説明する。本実施例では、クランプ電圧Vcを制御する手段として、第5のクランプ電圧制御手段126を備えている。
第5のクランプ電圧制御手段126がクランプ電圧Vcを制御する動作は、前記実施例7で説明した第4のクランプ電圧制御手段125と同様である。いま、制御手段100がスイッチング回路110と整流回路111を所定のスイッチング動作で制御しており、平滑インダクタ46aと46bが共に負荷側へエネルギー放出する期間がある。前記平滑インダクタ46aと46bが共に負荷側へエネルギーを放出している期間が、前記実施例7で説明した図14のt1−t2の期間に相当する。このとき、補助インダクタ46cには、本電源装置の出力電圧、及び、前記平滑インダクタ46aと46bと補助インダクタ46cの巻線比で決定する電圧(図14中の記号VL2の正の電圧)が誘起する。そして、前記補助インダクタ46cに誘起した電圧は、整流ダイオード56で整流され、クランプコンデンサ62に印加される。この動作により、クランプ電圧の下限が決定される。またここで、回生スイッチ151がオンすることで、クランプコンデンサ62に蓄積されたサージエネルギーが、クランプコンデンサ62から補助巻線46cおよび平滑インダクタ46aと46bを介して負荷へ回生し、クランプ電圧の上昇が防止される。なお、回生スイッチ151のオンする期間については、平滑インダクタ46aと46bが共に負荷側へエネルギーを放出しているときであって、補助インダクタ46cに電圧が誘起している期間内であればよい。
前述したとおり、本実施例における第5のクランプ電圧制御手段126は、クランプ電圧の下限値および上限値を制御し、サージエネルギーを負荷に回生する機能を有する。本実施例のように、平滑インダクタが2つある場合は、それぞれの平滑インダクタ或いは片側の平滑インダクタに実施例7で説明した第4のクランプ電圧制御手段125を形成しても、サージ電圧の低減とサージエネルギーの回生は可能である。しかし、第5のクランプ電圧制御手段126のように、平滑インダクタ同士を結合することで、回路素子を削減でき、且つ、平滑インダクタ同士の電流をよりバランスさせることができる。
本実施例でも前述の実施例と同様に、サージ電圧を所望の電圧にクランプすることでサージ電圧の低減ができ、整流回路を構成する整流用スイッチング素子に低耐圧のものが使用でき、電源装置の損失を低減することが可能である。また、サージエネルギーを回生することで、電源装置全体の損失を低減することが可能である。
図16は、本発明の第9の実施例による電源システムの構成図である。
図16において、200は電源システムであり、201は電源入力端子であり、202は整流回路であり、203はスイッチング電源装置204の電源入力端子であり、204は実施例1〜8で示したスイッチング電源装置1〜8であり、205はスイッチング電源装置204の電源出力端子であり、206は電源システム200の電源出力端子である。
図16に示すとおり、本実施例の電源システム200は電源入力端子201に整流回路202の入力を接続し、整流回路202の出力にスイッチング電源装置204の電源入力端子203を接続し、スイッチング電源装置204の電源出力端子205に電源システム200の電源出力端子206を接続したものである。
電源システム200は、商用電源等の電力を電源入力端子201から受電し、整流回路202で直流に変換し、スイッチング電源装置204で所望の値で安定化された直流電圧を作り、電源出力端子206へ出力する。
ここで、商用電源等の交流電力を直流に変換する整流回路202には、ダイオードブリッジを使用した整流回路、PFC(力率改善)回路などを使用することができる。
電源システム200は、実施例1〜8で説明したスイッチング電源装置1〜8を使用していることから、従来の電源システムより、電力損失が少なく発熱量が少ない。そのため、電源システム200は、従来の電源と同じ冷却能力のファンで、同じ外形寸法で、整流回路を大きくできて、より出力の大きい電源装置とすることができた。
図17は、本発明の第10の実施例による電子装置の構成図である。
図17において、300は電子装置であり、301は電子装置300の電源入力端子であり、200は実施例9で示した電源システムであり、302は電子回路である。図17に示すように、本実施例の電子装置300は電源入力端子301に電源システム200を接続し、電源システム200に電子回路302を接続したものである。
ここで、電子回路302は、例えば、電子演算回路、メモリ回路、増幅回路、発振回路、D/Aコンバータ、A/Dコンバータなどのデジタル回路、アナログ回路を問わない全ての電子回路である。
電子装置300は、本発明の実施例9の電源システム200を使用している。従来の電源システムの電力容量では電子回路5個が給電できたが、それ以上は電力が不足であった。本発明の電源システム200を用いた場合、出力電力が増え、6個の電子回路を給電することができた。これより、本電子装置300の性能が向上した。