JP2011119645A - 希土類磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することが可能な希土類磁石を提供すること。
【解決手段】希土類元素を含む磁石素体10と、磁石素体10上に構成元素としてケイ素、窒素及び水素を有する化合物を含む皮膜20とを備えており、皮膜20は、磁石素体10側に第1の領域1と、該第1の領域1の外側に配置された第2の領域2とを有し、第2の領域2は、第1の領域1よりも高い水素の含有率を有する希土類磁石100。
【選択図】図2

Description

本発明は、皮膜を有する希土類磁石に関する。
希土類元素を含むR−Fe−B系磁石等の希土類磁石は、高い磁気特性を有することから、永久磁石として様々な分野で活用されている。このような希土類磁石は、通常、比較的容易に腐食される希土類元素を含有する。このため、永久磁石としての磁気特性の低下を抑制するために、磁石素体の上に種々の材質の皮膜を設けることが提案されている。
例えば、下記特許文献1では、Si又はTi下地皮膜と水素含有非晶質カーボン被膜とを順次形成して、耐食性を改善することが試みられている。
特開2005−268340号公報
しかしながら、上述の特許文献1のような希土類磁石の水素含有非晶質カーボン被膜は、価電子の数が4である元素同士の結合を有することから、元素間に強固な結合が形成されるものの、結合の自由度が低いために大きな内部応力(残留応力)が発生しやすく、構造欠陥が生じやすい傾向にある。このため、腐食環境下で使用した場合に、構造欠陥から腐食性の物質が侵入して磁石素体が腐食されてしまい、本来の希土類磁石の磁気特性を維持することが困難であった。
磁石素体の表面に設ける皮膜の他の例としては、窒化ケイ素膜が挙げられる。しかしながら、膜の代表的な製造方法であるCVD法によって形成された窒化ケイ素の皮膜中には、製造プロセスにおいて用いられる水素が皮膜中に残留する傾向にある。このため、残留する水素が拡散して磁石素体の応力腐食割れを誘発し、優れた磁気特性が損なわれることが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することが可能な希土類磁石を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、皮膜の材質や構造を種々検討した。そして、特定の化合物を含有するとともに、水素の含有率が異なる複数の領域を所定の位置に配置することによって、希土類磁石の耐食性が大幅に改善されることを見出した。すなわち、本発明は、希土類元素を含む磁石素体と該磁石素体上に構成元素としてケイ素、窒素及び水素を有する化合物を含む皮膜とを備える希土類磁石であって、皮膜は、磁石素体側に第1の領域と、該第1の領域の外側に配置された第2の領域とを有し、第2の領域は、前記第1の領域よりも水素の含有率が高い希土類磁石を提供する。
上記本発明の希土類磁石は、十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することができる。本発明者らは、このような効果が得られる要因を次にように考えている。すなわち、本発明の希土類磁石の皮膜は、価電子の数がそれぞれ、4、3、1であるケイ素、窒素、水素を構成元素として有する化合物を含む。このような皮膜は、構成元素として、水素の代わりに酸素やホウ素、炭素、リン等を有する化合物を含む皮膜に比べて、構成元素間の結合が形成されやすく、緻密な構造になり易いと考えられる。これは、価電子数の多い構成元素同士の結合は密になる一方、結合末端を水素とすることができるために結合角が不安定である格子の数が低減されるためであると考えられる。
また、本発明の希土類磁石は、磁石素体側に水素の含有率が低い第1の領域を有するとともに、第1の領域の外側に水素の含有率が高い第2の領域を有しているため、磁石素体への水素の拡散量を低減して磁石素体の脆性破壊を抑制しつつ、皮膜の外側を一層緻密化することができる。このような要因によって、十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することが可能な希土類磁石とすることができる。ただし、本発明の効果が得られる理由は、上述の要因に限定されるものではない。
本発明の希土類磁石は、第1の領域を含む第1層と、第1層の上に第2の領域を含む第2層と、を有することが好ましい。このような積層構造を有する皮膜を備える希土類磁石は、表面全体において優れた耐食性を有するため、一層優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を一層長期間に亘って維持することができる。また、第1層と第2層の境界において水素の拡散が抑制されるため、磁石素体の水素脆化を一層抑制することができる。このため、希土類磁石の磁気特性を一層向上することができる。
本発明の希土類磁石における皮膜は、磁石素体に近接するにつれて水素の含有率が低下する領域を有することが好ましい。このような領域を有することによって、磁石素体への水素の拡散が一層低減されて、磁石素体の水素脆化を十分に抑制することができる。また、皮膜が一層緻密となり、耐食性を一層向上することができる。
本発明の希土類磁石における皮膜は、第1の領域における水素の含有率に対する、第2の領域における水素の含有率の比率が1.2〜5であることが好ましい。これによって、皮膜表面の緻密化を十分に図りつつ、磁石素体への水素の拡散を十分に低減することが可能となる。したがって、このような皮膜を有する希土類磁石は、優れた磁気特性を一層長期間に亘って維持することができる。
本発明の希土類磁石における皮膜は、第2の領域における水素の含有率が10原子%を超えることが好ましい。これによって、十分に優れた耐食性を有する希土類磁石とすることができる。また、この場合、第1の領域における水素の含有率が10原子%以下となることから、磁石素体への水素の拡散が十分に低減され、磁石素体の脆性破壊を十分に抑制することができる。
本発明の希土類磁石における皮膜の第1層の厚みは、0.1〜10μmであることが好ましい。これによって、製膜コストを低く維持しつつ第2層から磁石素体への水素の拡散を十分に抑制することができる。
また、本発明の希土類磁石における皮膜の第2層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましい。これによって、希土類磁石の耐食性を一層向上することができる。
本発明によれば、十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することが可能な希土類磁石を提供することができる。
本発明の希土類磁石の好適な実施形態を模式的に示す斜視図である。 図1に示す希土類磁石をII−II線に沿って切断した場合の模式断面図である。 本発明の希土類磁石の別の実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の希土類磁石のさらに別の実施形態を模式的に示す断面図である。
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態の希土類磁石を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す希土類磁石100をII−II線に沿って切断した場合の模式断面図である。希土類磁石100は、磁石素体10と、該磁石素体10の表面を覆う皮膜20とを有する。皮膜20は、磁石素体10側から第1層22及び第2層24が順次積層された積層構造を有する。
磁石素体10は、希土類元素として、長周期型周期表の3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイドからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む。ここで、ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を含む。
磁石素体10は、希土類元素として、上述したもののうち、Nd、Pr、Ho及びTbから選ばれる少なくとも1種の元素、又は、La、Sm、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYから選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
磁石素体10は、焼結磁石であってもよく、ボンド磁石であってもよい。磁石素体に含まれる磁性粒子としては、Sm−Co系の磁性粒子、Nd−Fe−B系の磁性粒子、Sm−Fe−N系の磁性粒子等が挙げられる。これらのなかでも、磁性粒子としては、SmCoやSmCo17で表されるSm−Co系の磁性粒子、又は、NdFe14Bで表されるNd−Fe−B系の磁性粒子が好ましい。
磁石素体10がNd−Fe−B系の焼結磁石である場合、磁石素体10中の希土類元素の含有割合は、好ましくは8〜40質量%であり、より好ましくは15〜35質量%である。希土類元素の含有割合が8質量%未満であると、高い保磁力(iHc)を有する希土類磁石100が得られ難くなる傾向にある。一方、希土類元素の含有割合が40質量%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、希土類磁石100の残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。
磁石素体10中のFeの含有割合は、好ましくは42〜90質量%であり、より好ましくは60〜80質量%である。Feの含有割合が42質量%未満であると希土類磁石100のBrが低下する傾向にあり、90質量%を超えると希土類磁石100のiHcが低下する傾向にある。
磁石素体10中のBの含有割合は、好ましくは0.5〜5質量%である。Bの含有割合が0.5質量%未満であると、希土類磁石100のiHcが低下する傾向にあり、5質量%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、希土類磁石100のBrが低下する傾向にある。
なお、Feの一部をコバルト(Co)で置換してもよい。これによって、希土類磁石100の磁気特性を損なうことなく温度特性を改善することができる。また、Bの一部を炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)及び銅(Cu)からなる群より選ばれる1種以上の元素で置換してもよい。これによって、希土類磁石100の生産性が向上し、その生産コストを削減することができる。
希土類磁石100の保磁力の向上、生産性の向上及び低コスト化の観点から、磁石素体10は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)及び/又はハフニウム(Hf)等のうちの1種以上の元素を含んでいてもよい。
磁石素体10中には、不可避的不純物として、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及び/又はカルシウム(Ca)等が含まれていてもよい。
皮膜20は、磁石素体10側から順に第1層22及び第2層24を有する。第1層22及び第2層24は、構成元素としてケイ素、窒素及び水素を有する化合物を主成分として含んでおり、第1層22における水素の含有率は、第2層24における水素の含有率よりも低い。具体的な化合物としては、構成元素として水素を含むシリコン窒化物が挙げられる。第1層22及び第2層24は、このような化合物を、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上の含有率で含有する。
第1層22における水素の含有率は、第1層22に含まれる総原子数を基準として、好ましくは10原子%以下であり、より好ましくは9原子%以下である。第1層22における水素の含有率が10原子%を超えると、皮膜20から磁石素体10への水素拡散量が増加して、磁石素体10の水素脆化が発生し、希土類磁石100の磁気特性が低下する傾向にある。第1層22における水素の含有率を9原子%以下とすることによって、磁石素体10への水素の拡散量を十分に低減することが可能となり、水素脆化に伴う磁気特性の低下を十分に抑制することができる。
第1層22における水素の含有率は、第1層22に含まれる総原子数を基準として、好ましくは0.1原子%以上であり、より好ましくは1原子%以上である。第1層22における水素の含有率が0.1原子%未満である皮膜は、形成に長時間所要するため、製造効率が低下する傾向にある。第1層22における水素の含有率を1原子%以上とすることによって、皮膜の製造効率を高くすることができる。
第1層22におけるケイ素の含有率は、気密性に一層優れた皮膜とする観点から、第1層22に含まれる総原子数を基準として、好ましくは10〜80原子%であり、より好ましくは20〜75原子%である。
第1層22における窒素の含有率は、気密性に一層優れた皮膜とする観点から、第1層22に含まれる総原子数を基準として、好ましくは10〜70原子%であり、より好ましくは20〜60原子%である。
第2層24における水素の含有率は、第2層24に含まれる総原子数を基準として、好ましくは50原子%以下であり、より好ましくは45原子%以下である。第2層24における水素の含有率が50原子%を超えると、皮膜20の優れた気密性が損なわれる傾向にある。第2層24における水素の含有率が45原子%以下である場合、第2層24の形成が容易となり、高い製造効率で皮膜20を形成することができる。
第2層24における水素の含有率は、第2層24に含まれる総原子数を基準として、好ましくは10原子%を超え、より好ましくは11原子%以上である。第2層24における水素の含有率が10原子%以下であると、皮膜20の優れた気密性が損なわれる傾向にある。第2層24における水素の含有率が11原子%以上であると、第2層24が一層緻密な層となり、希土類磁石100の耐食性を一層向上することができる。
第2層24におけるケイ素の含有率は、気密性に一層優れた皮膜とする観点から、第2層24に含まれる総原子数を基準として、好ましくは10〜80原子%であり、より好ましくは15〜70原子%である。
第2層24における窒素の含有率は、気密性に一層優れた皮膜とする観点から、第2層24に含まれる総原子数を基準として、好ましくは10〜70原子%であり、より好ましくは20〜60原子%である。
第1の層22における水素の含有率に対する、第2の層24における水素の含有率の比率は、好ましくは1.2〜5、より好ましくは1.3〜4、さらに好ましくは2〜4である。当該比率が低くなり過ぎると、水素の拡散が十分に抑制され難くなる傾向にあり、当該比率が高くなり過ぎると、皮膜20の強度が低下してしまう傾向にある。
第1層22と第2層24との界面は、市販の分析装置を用いて特定することができる。例えば、皮膜20を膜厚方向に削りながら組成分析をすることが可能なグロー放電発光分光分析により構成元素の含有量を測定し、膜厚方向に沿って、構成元素の含有率が不連続に変化する箇所を、層の界面として特定することができる。
なお、第1層22及び第2層24における各構成元素の含有率は均一でなくてもよい。例えば、第1層22及び第2層24の厚さ方向(膜厚方向)に沿って、各構成元素の含有率が連続的に変化していてもよい。このような構造のうち、第1層22及び/又は第2層24における水素の含有率が、磁石素体10に近接するにつれて、低下することが好ましい。このような層とすることによって、皮膜20の気密性を一層向上することができる。
第1層22及び第2層24は、領域1及び領域2をそれぞれ含む。領域1又は2において、厚さ方向に水素の含有率が変化する場合、領域1又は2内の位置によって水素の含有率が異なる場合がある。この場合、領域1又は2における水素の含有率は、領域1又は2に含まれる元素全体に対する水素全体の比率として求めることができる。
第1層22の厚みは、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上である。通常、磁石素体10は、表面の算術平均粗さRaが0.7〜3μmであるため、厚みが0.1μm未満となると、特に磁石素体10の凸部において、水素脆化が発生する傾向にある。第1層22の厚みが0.3μm以上であると、第2層24から磁石素体10に拡散する水素の量を十分に低減することができる。
第1層22の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。当該厚みが10μmを超えると、製造コストが増大する傾向にある。当該厚みが5μm以下であると、第2層24から磁石素体10への水素の拡散量が十分に低減された希土類磁石100を低い製造コストで製造することができる。
第2層24の厚みは、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは1μm以上である。当該厚みが0.1μm未満であると、十分に優れた耐食性や耐湿性が損なわれる傾向にある。当該厚みが1μm以上であると、耐食性及び耐湿性を一層向上することができる。
第2層24の厚みは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。当該厚みが50μmを超えると、皮膜20の厚さが大きくなり過ぎて、優れた磁気特性が得られ難くなる傾向になる。また、製造コストが増大する傾向にある。第2層24の厚みが30μm以下であると、十分に優れた耐食性及び耐湿性を有する希土類磁石100を低い製造コストで製造することができる。
皮膜20全体の厚みは、好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは1.3μm以上である。当該厚みが0.2μm未満であると、十分に優れた耐食性や耐湿性が損なわれる傾向にある。当該厚みが1.3μm以上であると、耐食性及び耐湿性を一層向上することができる。
皮膜20全体の厚みは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。当該厚みが50μmを超えると、皮膜20の厚さが大きくなり過ぎて、優れた磁気特性が得られ難くなる傾向になる。また、製造コストが増大する傾向にある。皮膜20全体の厚みが30μm以下であると、十分に優れた耐食性及び耐湿性を有する希土類磁石100を低い製造コストで製造することができる。
次に、本実施形態の希土類磁石100の製造方法の一例を説明する。ここで説明する希土類磁石100の製造方法は、磁石素体を製造する第1工程と、磁石素体の表面に皮膜を形成する第2工程とを有する。以下、各工程の詳細について説明する。
第1工程では、磁石素体10がR−Fe−B系の磁性粒子を主成分とする焼結磁石である場合、以下に説明する焼結法によって磁石素体10を製造する。まず、希土類元素(R)、鉄(Fe)及びホウ素(B)や、上述の他の元素を所定の比率で含む組成物を鋳造し、インゴットを得る。得られたインゴットを、スタンプミル等を用いて粒径10〜100μm程度に粗粉砕し、続いて、ボールミル等を用いて粒径0.5〜5μm程度に微粉砕して磁性粉末を得る。
次に、得られた磁性粉末を、好ましくは磁場中にて成形して成形体を調製する。この場合、印加する磁場強度は10kOe(約795.8kA/m)以上であると好ましく、成形圧力は1〜5ton/cm(98〜490.3MPa)程度であると好ましい。
調製した成形体を、1000〜1200℃で0.5〜5時間程度焼結し、急冷する。なお、焼結雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であると好ましい。そして、好ましくは不活性ガス雰囲気中で、500〜900℃にて1〜5時間熱処理(時効処理)を行うことによって磁石素体10が得られる。
磁石素体10がボンド磁石である場合、以下に説明する方法によって、磁石素体10を製造することができる。まず、焼結磁石の製造と同様にして、磁性粉末を得る。得られた磁性粉末と、バインダー樹脂及び硬化剤等とを混合した後、加圧ニーダー等の混練機に投入して混練し、混練物を得る。磁性粉末とバインダー樹脂の混合比率は、磁性粉末とバインダー樹脂の合計100質量部に対し、磁性粉末を95〜98質量部とすることが好ましい。
次いで、この混錬物を、圧縮成形機等により圧縮成形する。この際、磁場中で圧縮成形を行うことにより着磁を同時に行ってもよい。なお、着磁は、圧縮成形後に別途行ってもよい。優れた磁気特性を有する磁石素体10を得る観点からは、784〜980MPa程度の高圧力で圧縮成形を行うことが好ましい。
バインダー樹脂としては、磁性粉末同士を結着させることができる熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を適用することができる。このようなバインダー樹脂としは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のエラストマー、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なかでも、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂がより好ましい。
バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合には、圧縮成形後、得られた成形体を100〜250℃程度で加熱することによりバインダー樹脂を硬化させて、磁石素体10を得ることができる。バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合には、このような熱硬化は行わなくてもよい。
第2工程では、上述のようにして得られた磁石素体10の表面上に、構成元素としてケイ素、窒素及び水素を有する化合物を主成分として含む皮膜を形成する。皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法若しくは溶射法等の気相成長法、塗布法若しくは溶液析出法等の液相成長法、又はゾルゲル法等の公知の成膜技術を用いることができる。これらのなかで、組成の異なる層を連続的に形成できる点、及び磁石素体10の表面に多少の凹凸があっても、当該表面に皮膜を確実に形成できる点で、CVD法が好ましい。CVD法としては、プラズマCVD法、熱CVD法、又はCat−CVD法などを例示することができる。
CVD法では、原料ガスとして、例えばSiHガス、Nガス、NHガス、Hガスを用い、これらを所定の条件で反応させて、磁石素体10の表面上に、構成元素としてケイ素、窒素及び水素を含む非晶質からなる第1層22を形成する。この際、SiHガス、Nガス、NHガス、Hガスの供給比率を調製し、第1層22における水素の含有率を、好ましくは10原子%以下とする。このような観点から、原料ガス全体に対するNHガスの体積比率は、好ましくは2体積%以下であり、より好ましくは1体積%以下である。第1層22の形成時には、NHガスを用いなくてもよい。一方、原料ガス全体に対するHガスの体積比率は、好ましくは5体積%以下、より好ましくは3体積%以下である。第1層22の形成時には、Hガスを用いなくてもよい。この場合、皮膜に含まれるケイ素、窒素及び水素を有する化合物の水素源は、SiHガスである。原料ガス全体に対するSiHガスの体積比率は、好ましくは1〜30体積%、より好ましくは3〜12体積%である。このような原料ガスを用いることによって、所望の水素の含有率を有する第1層22を形成することができる。
CVD法では、上述の原料ガスの他に、キャリアーガスとして、アルゴンガスやヘリウムガスを用いてもよい。なお、上述の各原料ガスの体積比率の計算にキャリアーガスの流量は用いない。すなわち、キャリアーガスの使用の有無にかかわらず、各原料ガスの体積比率の好適な範囲は上述の範囲となる。
所定の厚みを有する第1層22を形成した後、第1層22の表面を覆うように、第1層22よりも水素の含有率が高い第2層24を形成する。第2層24は、第1層22と同様にCVD法によって形成することができる。ここで、第1層22よりも第2層24の水素の含有率を高くするために、第1層22の形成時よりも、原料ガスにおけるNHの比率を大きくすることが好ましい。これによって、第1層22よりも水素の含有率が高い第2層24を容易に形成することができる。具体的には、原料ガス全体に対するNHの体積比率を、好ましくは2〜90体積%、より好ましくは3〜80体積%とする。一方、原料ガス全体に対するHの体積比率は、好ましくは20体積%以下、より好ましくは18体積%以下であり、原料ガス全体に対するSiHの体積比率は、好ましくは3〜20体積%、より好ましくは3〜12体積%である。このような原料ガスを用いることによって、水素の含有率が第1層22よりも高い第2層24を容易に形成することができる。
以上の工程によって、磁石素体10の上に、第1層22及び第2層24からなる皮膜20を有する希土類磁石100を製造することができる。このような希土類磁石100は、構成元素としてケイ素及び窒素に加えて水素を有する緻密な皮膜20を備えており、当該皮膜20は、磁石素体10側から、構成元素として水素を有する化合物を含む第1層と当該第1層よりも水素の含有率が高い化合物を含む第2層が順次積層された積層構造を有する。このため、腐食環境下で使用しても、主に第2層24によって腐食物質の磁石素体10への侵入を十分に抑制することができる。さらに、第2層24よりも水素含有率が低い第1層が磁石素体10側に設けられていることから、皮膜20に含まれる水素が拡散することによって生じる磁石素体の脆性破壊を十分に抑制することができる。このような作用によって、本実施形態の希土類磁石100は、十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することができる。このような特性を有する本実施形態の希土類磁石100は、例えば、優れた耐食性を有することが求められる電動機器の回転素子に好適に用いられる。
次に、本発明の希土類磁石の別の実施形態を説明する。
図3は、本発明の希土類磁石の別の実施形態を模式的に示す断面図である。希土類磁石200は、磁石素体10と、磁石素体10の上に構成元素としてケイ素、窒素及び水素を有する化合物を主成分として含む皮膜30とを備える。皮膜30は、厚さ方向に、連続的に水素の含有率が変化しており、磁石素体10との接触面34から希土類磁石200の表面36に向けて、水素の含有率が徐々に増加している。皮膜30に含まれる2つの領域31,32のうち、領域31は、領域32よりも磁石素体10側にあり、領域31における水素の含有率は、領域32における水素の含有率よりも低くなっている。
希土類磁石200における皮膜30は、上記実施形態の皮膜20と同様の方法で製造することができる。皮膜30をCVD法によって形成する場合、原料ガスとして用いるSiH、N、NH、Hの各ガスの混合比率を徐々に変化させることによって、水素の含有率が厚み方向に異なる皮膜30を形成することができる。例えば、原料ガス全体に対するNHガスの体積比率を徐々に変えることによって、皮膜30を形成することができる。このように、希土類磁石200における皮膜30は、一段階の工程で製造することができるため、製造工程を簡略化することができる。この製造方法は、希土類磁石を大量生産する際に特に有用である。
図4は、本発明の希土類磁石のさらに別の実施形態を模式的に示す断面図である。希土類磁石300は、磁石素体10と、磁石素体10の上に皮膜40を備える。皮膜40は、磁石素体10側から、下地層42、第1層44、第2層46が順次積層された積層構造を有する。下地層42は、例えば、電解ニッケルめっきによって形成されたニッケルめっきであってもよい。一方、第1層44及び第2層46は、上述の実施形態の希土類磁石100における第1層22及び第2層24と同一の組成とすることができる。
すなわち、希土類磁石300は、磁石素体10と第1層44との間に下地層42を備える点で、上述の実施形態の希土類磁石100と相違する。希土類磁石300のように、磁石素体10と第1層44との間に下地層42を有していても、十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することができる。このような下地層42は、例えば、磁石素体10の表面に凹凸がある場合に、その表面を平坦化するができる。このため、第1層44及び第2層46の厚みを薄くしても、耐食性及び耐湿性に十分に優れる希土類磁石とすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、希土類磁石100は、第1層22と第2層24との間に、めっき層やケイ素、窒素及び水素のいずれかを含有しない層、又は第1層22よりも水素の含有率が低い層を有していてもよい。また、希土類磁石100、200及び300は、皮膜20,30及び40の上に、当該皮膜を構成する層とは異なる組成を有する層(例えば構成元素として水素を含有しない化合物からなる層、又は水素の含有率が第1層及び第2層よりも低い層)を有していてもよい。
本発明の内容を実施例及び比較例を参照してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[希土類磁石の作製と皮膜の組成分析]
(実施例1)
<磁石素体の調製>
粉末冶金法によって、Nd−Dy−B−Fe系合金からなるインゴットを得た。このインゴットの組成は、Nd含有率:27.4質量%、Dy含有率:3質量%、B含有率:1質量%、Fe含有率:68.6質量%であった。このインゴットを、スタンプミル及びボールミルにより粉砕して、上記組成の合金微粉末を得た。
得られた合金微粉末を、磁場中でプレス成形して成形体を調製した。この成形体を、保持温度1100℃、保持時間1時間の条件下で焼結して焼結体を得た。その後、焼結体に、アルゴンガス雰囲気下、保持温度600℃、保持時間2時間の条件で時効処理を施した。時効処理を施した焼結体を、20×10×1(mm)のサイズの直方体形状に加工し、バレル研磨処理によって面取りを行って、磁石素体を得た。
<前処理>
磁石素体に、アルカリ脱脂処理、水洗、硝酸溶液による酸洗浄処理、水洗、超音波洗浄によるスマット除去処理、水洗を順次行う前処理を施した。前処理を施した磁石素体を、真空成膜チャンバーの内部に配置した後、当該真空成膜チャンバーの内部の圧力が所定値(1×10−3Pa)以下になるまで、当該真空成膜チャンバーの排気を行った。
<第1層の形成>
プラズマCVD気相成膜法によって、構成元素として水素を含むシリコン窒化物からなる第1層(厚み:2μm)を磁石素体の表面上に形成した。プラズマCVD気相製膜法の条件は以下の通りとした。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)
導入ガスの流量:SiH=40ml/分、N=600ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
磁石素体の表面温度:170℃
高周波電力:300W
<第2層の形成>
次に、プラズマCVD気相成膜法によって、構成元素として水素を含むシリコン窒化物からなる第2層(厚み:3μm)を、磁石素体の表面上に形成された第1層の上に形成した。プラズマCVD気相製膜法の条件は以下の通りとした。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)、NH(アンモニア)
ガス流量:SiH=60ml/分、N=600ml/分、NH=30ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
第1層の表面温度:200℃
高周波電力:300W
このようにして、磁石素体の上に構成元素として水素を含むシリコン窒化物からなる第1層及び第2層からなる皮膜が形成された希土類磁石を得た。
<組成分析>
得られた希土類磁石の皮膜のグロー放電発光分光分析(JOBIN YVON社製、装置名:GD−PROFILER2)を行って、皮膜を構成する第1層及び第2層の組成を分析した。なお、分析条件は、グロー放電電力:20W、放電範囲:直径2mmとした。その結果、第1層及び第2層は、ともにケイ素、窒素及び水素を含有しており、第1層における水素の含有率は8原子%、第2層における水素の含有率は12原子%であった。
(実施例2)
<磁石素体の調製及び前処理>
実施例1と同様にして、磁石素体を調製して、実施例1と同様の前処理を行った。前処理を施した磁石素体を、真空成膜チャンバーの内部に配置した後、当該真空成膜チャンバーの内部の圧力が所定値(1×10−3Pa)以下になるまで排気した。
<皮膜の形成>
次に、プラズマCVD気相成膜法によって、厚み2μmの皮膜1を磁石素体の表面上に形成した。プラズマCVD気相製膜法の条件は以下の通りとした。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)
導入ガスの流量:SiH=40ml/分、N=600ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
磁石素体の表面温度:170℃
高周波電力:300W
上述のプラズマCVD気相成膜法による皮膜1を形成した後、連続して、NHの導入を開始した。導入するNHの流量を、0.5ml/分の割合で30ml/分まで増量し、その後、NHの流量を30ml/分に維持した。また、NHの導入開始とともに、導入するSiHの流量を、0.33ml/分の割合で60ml/分まで増量し、その後、SiHの流量を60ml/分に維持した。これらの操作とともに、磁石素体の表面温度を、0.5℃/分の割合で200℃まで昇温した。これによって、構成元素として水素を含むシリコン窒化物からなり、厚み方向に組成が連続的に変化する皮膜2を、皮膜1の形成に引き続いて形成した。磁石素体の上に形成された皮膜の合計厚みは5μmであった。
<組成分析>
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成を分析した。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、磁石素体近傍における皮膜の水素の含有率は8原子%であった。皮膜の水素の含有率は、希土類磁石の表面に近づくにつれて高くなっており、希土類磁石の表面では12原子%であった。
(実施例3)
プラズマCVD気相成膜法による第2層の形成条件を、以下の条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
導入ガス:SiH(シラン)、NH(アンモニア)、H(水素)
ガス流量:SiH=60ml/分、NH=500ml/分、H=100ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
第1層の表面温度:300℃
高周波電力:300W
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成を分析した。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、皮膜を構成する第1層及び第2層の水素の含有率は、それぞれ8原子%及び30原子%であった。
(実施例4)
プラズマCVD気相成膜法による第1層の形成条件を、以下の条件としたこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)
導入ガスの流量:SiH=20ml/分、N=600ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
磁石素体の表面温度:150℃
高周波電力:300W
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成を分析した。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、皮膜を構成する第1層及び第2層の水素の含有率は、それぞれ5原子%及び12原子%であった。
(実施例5)
プラズマCVD気相成膜法による第2層の形成条件を、以下の条件にしたこと以外は、実施例4と同様にして希土類磁石を得た。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)、NH(アンモニア)、H(水素)
ガス流量:SiH=60ml/分、N=300ml/分、NH=200ml/分、H=50ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
第1層の表面温度:250℃
高周波電力:300W
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成を分析した。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、皮膜を構成する第1層及び第2層の水素の含有率は、それぞれ5原子%及び20原子%であった。
(実施例6)
プラズマCVD気相成膜法による第1層の形成条件を、以下の条件としたこと以外は、実施例3と同様にして希土類磁石を得た。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)
導入ガスの流量:SiH=60ml/分、N=600ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
磁石素体の表面温度:180℃
高周波電力:300W
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成を分析した。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、皮膜を構成する第1層及び第2層の水素の含有率は、それぞれ9原子%及び30原子%であった。
(実施例7)
プラズマCVD気相成膜法による第2層の形成条件を、以下の条件にしたこと以外は、実施例4と同様にして希土類磁石を得た。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)、NH(アンモニア)
ガス流量:SiH=40ml/分、N=600ml/分、NH=30ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
第1層の表面温度:190℃
高周波電力:300W
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成を分析した。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、皮膜を構成する第1層及び第2層の水素の含有率は、それぞれ5原子%及び11原子%であった。
(比較例1)
<磁石素体の調製及び前処理>
実施例1と同様にして、磁石素体を調製して、実施例1と同様の前処理を行った。前処理を施した磁石素体を、真空成膜チャンバーの内部に配置した後、当該真空成膜チャンバーの内部の圧力が所定値(1×10−3Pa)以下になるまで、当該真空成膜チャンバーの排気を行った。
<皮膜の形成>
プラズマCVD気相成膜法によって、構成元素として水素を含むシリコン窒化物からなる皮膜(厚み:5μm)を磁石素体の表面上に形成した。プラズマCVD気相製膜法の条件は以下の通りとした。
導入ガス:SiH(シラン)、N(窒素)
導入ガスの流量:SiH=20ml/分、N=600ml/分
(導入ガスの流量は、温度及び圧力を、25℃及び1気圧に換算した値である。)
チャンバー内の圧力:30Pa
磁石素体の表面温度:150℃
高周波電力:300W
<組成分析>
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成分析を行った。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、水素の含有率は5原子%であった。
(比較例2)
第2層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。すなわち、比較例2の希土類磁石は、磁石素体の上に、第1層のみからなる皮膜(膜厚:5μm)を有していた。実施例1と同様にして皮膜の組成分析を行ったところ、皮膜は、ケイ素、窒素及び水素を含有しており、水素の含有率は8原子%であった。
(比較例3)
第1層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。すなわち、比較例3の希土類磁石は、磁石素体の上に、第2層のみからなる皮膜(膜厚:5μm)を有していた。実施例1と同様にして皮膜の組成分析を行ったところ、皮膜は、ケイ素、窒素及び水素を含有しており、水素の含有率は12原子%であった。
(比較例4)
第1層を形成しなかったこと以外は、実施例3と同様にして希土類磁石を得た。すなわち、比較例4の希土類磁石は、磁石素体の上に、第2層のみからなる皮膜(膜厚:5μm)を有していた。実施例1と同様にして皮膜の組成分析を行ったところ、皮膜は、ケイ素、窒素及び水素を含有しており、水素の含有率は30原子%であった。
(比較例5)
第1層と第2層を形成する順序を逆にしたこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。すなわち、比較例5の希土類磁石は、磁石素体の上に、磁石素体側から第2層(内側層)及び第1層(外側層)が順次積層された皮膜を有していた。
実施例1と同様にして、磁石素体の上に形成された皮膜の組成を分析した。その結果、皮膜はケイ素、窒素及び水素を含有しており、皮膜を構成する第2層及び第1層の水素の含有率は、それぞれ12原子%及び8原子%であった。
[希土類磁石の特性評価]
各実施例及び各比較例で得られた希土類磁石を試料として、耐食性、耐湿性及び磁気特性を以下の手順で評価した。
<耐食性評価>
JIS C0023の規格に準拠して、塩水(NaCl濃度:5質量%)、試験温度35℃の条件で塩水噴霧試験(SST)を行った。この条件下で、試料を所定時間(24時間、48時間及び96時間)保持し、保持後の試料の表面状態を目視で観察して、錆、皮膜の剥離及び膨れの有無を評価した。錆、皮膜の剥離及び膨れが観察されなかった試料を「A」、錆、皮膜の剥離及び膨れの少なくとも一つが観察された試料を「B」と判定した。評価結果を表1に示す。
実施例1〜7の希土類磁石は、96時間保持後も、錆、皮膜の剥離及び膨れが観察されず、優れた耐食性を有していた。一方、比較例1、2、5の希土類磁石は、24〜96時間保持後に、錆が発生した。これらの結果から、比較例1、2、5の希土類磁石は、実施例1〜7の希土類磁石よりも耐食性に劣ることが確認された。
<耐湿性評価>
飽和水蒸気が存在する雰囲気下、試料温度:121℃、相対湿度99%の条件下で、プレッシャークッカー試験(PCT)を行った。この条件下で試料を100時間保持し、保持後の試料の表面状態を目視で観察して、錆の発生、皮膜の剥離及び膨れの有無を観察した。錆、皮膜の剥離及び膨れが観察されなかった試料を「A」、錆、皮膜の剥離及び膨れの少なくとも一つが観察された試料を「B」と判定した。評価結果を表1に示す。
実施例1〜7の希土類磁石は、100時間保持後も、錆、皮膜の剥離及び膨れが観察されず、優れた耐湿性を有していた。一方、比較例1、2の希土類磁石は、100時間保持後に、皮膜の剥離が発生した。これらの結果から、比較例1、2の希土類磁石は、実施例1〜4の希土類磁石よりも耐湿性に劣ることが確認された。
<磁気特性評価>
PCT前の試料とPCT後の試料とを、それぞれ20個ずつ準備した。そして、それぞれの試料を2T(テスラ)で着磁し、7回巻きサーチコイル及びフラックスメータを用いて、試料表面から0.5mm離れた位置における磁束[mWb・turn]を測定し、それぞれの測定値から平均値を算出した。そして、PCT前である試料の磁束の平均値(A)とPCT後である試料の磁束の平均値(B)とから、以下の式(1)によって磁束の低下率を算出した。その結果を表1に示す。
磁束の低下率(%)=[(A−B)/A]×100 (1)
Figure 2011119645
実施例1〜7の希土類磁石は、PCT前後における磁束の低下率が1%以下であり、PCT後も優れた磁気特性を示すことが確認された。一方、比較例1〜5の希土類磁石は、低下率が1%を超えており、各実施例よりも磁気特性の低下が著しいことが確認された。また、比較例3〜5の希土類磁石は、実施例1〜7の希土類磁石よりもPCT前の磁束が0.05[mWb・turn]以上、すなわち2.8%以上低くなっていた。つまり、実施例1〜7の希土類磁石は、PCT前の高い磁気特性をPCT後にも高水準で維持できることが確認された。
本発明によれば、十分に優れた耐食性を有し、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することが可能な希土類磁石を提供することができる。
1,2,31,32…領域、10…磁石素体、20,30…皮膜,22,44…第1層,24,46…第2層、42…下地層、100,200,300…希土類磁石。

Claims (7)

  1. 希土類元素を含む磁石素体と、該磁石素体上に構成元素としてケイ素、窒素及び水素を有する化合物を含む皮膜と、を備えており、
    前記皮膜は、前記磁石素体側に第1の領域と、該第1の領域の外側に配置された第2の領域とを有し、
    前記第2の領域は、前記第1の領域よりも水素の含有率が高い希土類磁石。
  2. 前記皮膜は、前記第1の領域を含む第1層と、前記第1層の上に前記第2の領域を含む第2層と、を有する、請求項1に記載の希土類磁石。
  3. 前記皮膜は、前記磁石素体に近接するにつれて水素の含有率が低下する領域を有する、請求項1又は2に記載の希土類磁石。
  4. 前記第1の領域における水素の含有率に対する、前記第2の領域における水素の含有率の比率が1.2〜5である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  5. 前記第2の領域における水素の含有率が10原子%を超える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  6. 前記第1層の厚みは0.1〜10μmである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  7. 前記第2層の厚みは0.1μm以上である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の希土類磁石。
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