JP2007158030A - 希土類系永久磁石およびその製造方法 - Google Patents

希土類系永久磁石およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れる希土類系永久磁石およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 磁石の表面にCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜を介して水素含有非晶質カーボン被膜を有することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れる希土類系永久磁石およびその製造方法に関する。
Nd−Fe−B系永久磁石に代表されるR−Fe−B系永久磁石などの希土類系永久磁石は、高い磁気特性を有していることから、今日、様々な分野で使用されている。しかしながら、希土類系永久磁石は、大気中で酸化腐食されやすい希土類元素:Rを含む。それ故、表面処理を行わずに使用した場合には、わずかな酸やアルカリや水分などの影響によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁気特性の劣化やばらつきを招くことになる。さらに、磁気回路などの装置に組み込んだ磁石に錆が発生した場合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。そこで、上記の点に鑑み、希土類系永久磁石に耐食性を付与することを目的として、各種の耐食性被膜をその表面に形成する方法が提案され、既に実用に供されている。特に、耐食性被膜として金属被膜や金属酸化物被膜や金属窒化物被膜などを表面に有する希土類系永久磁石は、電子部品や自動車用部品に組み込まれるなどして幅広く用いられている。
ところで、近頃、希土類系永久磁石の使用分野は拡大の一途を辿っており、それに伴い、磁石に求められる特性も多様化し、耐食性、絶縁性、他材との接着性などの他、部品への組み込み時に要求される寸法精度、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性などについても優れた特性が要求されるようになりつつある。
しかしながら、既存の技術をもってしては、このような要求を満足させることは残念ながら困難である。例えば、従来の湿式電気めっき法により形成されるNiめっき被膜は、優れた耐食性を有するが耐摩耗性は十分なものではない。また、濡れ性に劣るので、接着剤との間で強い接着性を確保することができないことから、磁石をモータや電子部品などの各種部品に組み込んだ際に接着剥がれを起こすことがある。また、Crめっき被膜やNi−P合金めっき被膜などは、耐摩耗性に優れるがヒートサイクル性は十分なものではなく、温度変化の激しい場所で長期間用いた場合、被膜にクラックが発生する場合がある。さらに、Crめっき被膜は、昨今の環境保護の観点からも問題があると言わざるを得ない。また、これらの金属めっき被膜では、水素液化システムなどにおける高温高圧水素環境下(例えば温度50℃以上×水素分圧0.1MPa以上)での耐水素性を確保することはできない。また、TiN被膜などの金属窒化物被膜は、優れた耐食性や耐摩耗性を有するがヒートサイクル性や濡れ性や耐水素性に劣る。
例えば、Niめっき被膜は、その表面にクロム酸塩被膜を形成したり、リン酸亜鉛被膜を形成したりすることで濡れ性の改善を図ることができる(特許文献1や特許文献2)。しかしながら、前者の方法においては、クロム酸塩被膜を形成するためには環境や人体への影響を考えると使用を控えたい6価クロムを含有する処理液を用いなければならないといった問題がある。また、後者の方法においては、リン酸亜鉛被膜を形成するためにはNiめっき被膜の表面を反応性が高く安定性に劣る処理液を用いてエッチングする必要があるため、工程が煩雑であるといった問題がある。
特開平5−198414号公報 特開平6−318512号公報
そこで本発明は、耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れる希土類系永久磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、希土類系永久磁石の表面にCuやNiからなる下地被膜を介して水素含有非晶質カーボン被膜を形成することで、磁石に耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性を付与できることを見出した。なお、特開2005−268340号公報には、磁石の表面にSiやTiからなる下地被膜を介して水素含有非晶質カーボン被膜を有する希土類系永久磁石が耐食性や耐摩耗性に優れることが記載されているが、磁石の表面にCuやNiからなる下地被膜を介して水素含有非晶質カーボン被膜を形成することで、磁石にヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性を付与できることについては記載も示唆もない。
上記の知見に基づいてなされた本発明の希土類系永久磁石は、請求項1記載の通り、磁石の表面にCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜を介して水素含有非晶質カーボン被膜を有し、耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れることを特徴とする。
また、請求項2記載の希土類系永久磁石は、請求項1記載の希土類系永久磁石において、水素含有非晶質カーボン被膜の膜厚が0.1μm〜25μmであることを特徴とする。
また、請求項3記載の希土類系永久磁石は、請求項1または2記載の希土類系永久磁石において、下地被膜の膜厚が0.01μm〜15μmであることを特徴とする。
また、請求項4記載の希土類系永久磁石は、請求項1乃至3のいずれかに記載の希土類系永久磁石において、下地被膜が2層以上存在することを特徴とする。
また、請求項5記載の希土類系永久磁石は、請求項1乃至4のいずれかに記載の希土類系永久磁石において、下地被膜と水素含有非晶質カーボン被膜との間にTi,Si,W,Crから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる中間被膜を有することを特徴とする。
また、請求項6記載の希土類系永久磁石は、請求項5記載の希土類系永久磁石において、中間被膜の膜厚が0.005μm〜3μmであることを特徴とする。
また、本発明の耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れる希土類系永久磁石の製造方法は、請求項7記載の通り、磁石の表面にCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜を形成した後、または、下地被膜を形成してからさらにその表面にTi,Si,W,Crから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる中間被膜を形成した後、その表面にプラズマCVD法により水素含有非晶質カーボン被膜を形成することを特徴とする。
また、請求項8記載の製造方法は、請求項7記載の製造方法において、原料ソースとして水素化炭素ガスを用いて水素含有非晶質カーボン被膜を形成することを特徴とする。
また、請求項9記載の製造方法は、請求項7または8記載の製造方法において、下地被膜を湿式電気めっき法または気相蒸着法により形成することを特徴とする。
また、請求項10記載の製造方法は、請求項7乃至9のいずれかに記載の製造方法において、中間被膜をプラズマCVD法により形成することを特徴とする。
本発明によれば、耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れる希土類系永久磁石およびその製造方法を提供できる。
本発明の希土類系永久磁石は、磁石の表面にCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜を介して水素含有非晶質カーボン被膜を有し、耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れることを特徴とするものである。本発明において水素含有非晶質カーボン被膜とは、ダイアモンド構造を一部含んだ炭素原子と水素原子からなる非晶質被膜を意味し、当業者において周知のDLC被膜(Diamond Like Carbon被膜)をその概念に包含するものである。なお、水素含有非晶質カーボン被膜は、被膜構造中における炭素原子の一部がSiやTiなどの金属原子や酸素原子に置換されることでこのような原子を含有するものであってもよい。
本発明の希土類系永久磁石は、例えば、磁石の表面にCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜を形成した後、その表面にプラズマCVD法により水素含有非晶質カーボン被膜を形成することで製造できる。
希土類系永久磁石の表面へのCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜の形成は、例えば、自体公知の湿式電気めっき法(CuやNiまたはこれらの金属を含む合金からなる被膜を形成するために好適である)や気相蒸着法(AlやZnまたはこれらの金属を含む合金からなる被膜を形成するために好適である)により行うことができる。下地被膜の膜厚は0.01μm〜15μmであることが望ましい。膜厚が0.01μm未満であると下地被膜を形成することの効果、例えば、磁石に対する耐水素性の付与といった効果が十分に発揮されない恐れがある。一方、膜厚が15μmを越えると製造コストの上昇を招く恐れがある。なお、下地被膜は2層以上存在させてもよい。この場合、下地被膜の合計膜厚は0.01μm〜40μmであることが望ましい。
下地被膜の表面へのプラズマCVD法による水素含有非晶質カーボン被膜の形成は、原料ソースとしてメタンガスやアセチレンガスなどの水素化炭素ガスを用いて行うことが望ましい。原料ソースをプラズマ化して分解し、その反応性を利用して被膜形成を行うプラズマCVD法によれば、比較的低温でも優れた特性を有する被膜を、非常につきまわりよく、しかも均一に形成することができる。また、希土類系永久磁石の表面に下地被膜を予め形成してあるので、原料ソースとして用いる水素化炭素ガスが、磁石の優れた磁気特性に悪影響を及ぼすことがないといった利点も有する。被膜形成条件としては、通常、原料ソースのガス圧が1mTorr〜500mTorr、基板温度が常温〜350℃といった条件を採用することができる(RF電力密度は任意)。
水素含有非晶質カーボン被膜は、非晶質であるので粒界組織を呈さず、脱粒や粒界腐食という問題がなく、被膜全面に亘り均一構造であることから、それ自体に腐食の起点が生じない。また、酸やアルカリや水分などに対して反応性がないのでこれらと接触しても非常に腐食しにくい。よって、水素含有非晶質カーボン被膜は、薄膜でも非常に優れた耐食性を発揮し、下地被膜によって発揮される耐水素性などの特性の劣化を効果的に防止する。また、水素含有非晶質カーボン被膜は、それ自体が硬質であり、部品への組み込み時に損傷を受けにくいものであるとともに、非晶質であるので粒界組織を呈さないことから、非常に表面が滑らかで摩擦係数が小さく、摺動性に優れている。従って、部品への組み込み時に、磁石を組み込む部材に対して損傷を与えにくいといった利点を有し、また、耐磨耗性にも優れる。また、水素含有非晶質カーボン被膜は、被膜構造中にグラファイト構造の炭素組成を有することから、ヒートサイクル性に優れ、温度変化の激しい場所で用いられた場合でも、被膜にクラックが発生することがない。そして、合成樹脂系接着剤との相性は金属被膜や金属酸化物被膜や金属窒化物被膜などに比べて格段に高く、非常に接着性に優れている。さらに、水素含有非晶質カーボン被膜は、濡れ性に優れており、350℃未満の環境下であれば濡れ性が劣化することがないので、長期にわたって強い接着性を確保することができる。また、たとえ損傷が生じたとしても、雰囲気酸素との反応で二酸化炭素ガス化するだけなので、発塵頻度が低く、周辺部品への汚染が少ない。また、原料ソースとして水素化炭素ガスを用いた場合、原料コストが低いので被膜の形成能率が高いことから、生産性に優れるといった利点も有する。
水素含有非晶質カーボン被膜の膜厚は、0.1μm〜25μmであることが望ましく、0.2μm〜10μmであることがより望ましい。プラズマCVD法により形成された水素含有非晶質カーボン被膜は、下地被膜に表面凹凸が存在していても非常につきまわりよく形成されているため、0.1μm以上の膜厚があればその優れた特性を遺憾なく発揮することができる。膜厚が0.1μm未満であると優れた特性が発揮されない恐れがある。一方、膜厚が25μmを超えると製造コストの上昇を招くだけでなく、被膜が有する応力が大きくなりすぎて被膜と磁石との密着性が損なわれる恐れがある。
水素含有非晶質カーボン被膜中の水素含有量は、原料ソースのガス圧などの被膜形成条件によって任意に設定することができる。被膜中の水素含有量は4mol%〜40mol%であることが望ましい。この場合、被膜のビッカース硬度は500〜3000である(加重25gf)。水素含有量が4mol%未満であると被膜が有する応力が大きくなりすぎて被膜と下地被膜との密着性が損なわれる恐れがある。一方、水素含有量が40mol%を超えると被膜が樹脂の性質を帯びて硬度が小さくなり、部品への組み込み時に損傷を受けやすくなる恐れがある。
なお、下地被膜の表面への水素含有非晶質カーボン被膜の形成は、固体炭素をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により行うこともできる。
また、下地被膜と水素含有非晶質カーボン被膜との間にTi,Si,W,Crから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる中間被膜を、例えば、プラズマCVD法により形成してもよい。中間被膜を形成することで、下地被膜と水素含有非晶質カーボン被膜との密着性の向上を図ることができる。中間被膜の膜厚は0.005μm〜3μmであることが望ましい。膜厚が0.005μm未満であると中間被膜を形成することの効果が十分に発揮されない恐れがある。一方、膜厚が3μmを越えると製造コストの上昇を招く恐れがある。なお、中間被膜としてTi被膜を形成する場合、原料ソースとしてトリメチルチタンを用いることが望ましい。また、中間被膜としてSi被膜を形成する場合、原料ソースとして水素化珪素を用いることができる。中間被膜の形成条件は水素含有非晶質カーボン被膜の形成条件に準じればよい。
以下、本発明を実施例と比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例と比較例は、例えば、米国特許4770723号公報や米国特許4792368号公報に記載されているようにして、公知の鋳造インゴットを粉砕し、微粉砕後に成形、焼結、熱処理、表面加工を行うことによって得られた14Nd−79Fe−6B−1Co組成(at%)の縦40mm×横20mm×高さ2mm寸法の板状焼結磁石を、硝酸(0.1mol以下)を含む酸洗液にて表面活性化を行った後、超音波水洗してから用いて行った(以下、磁石体試験片と称する)。
実施例1:
(工程1)
以下の条件で磁石体試験片の表面に第一下地被膜として膜厚2μmのNiめっき被膜を形成した。
液組成 硫酸ニッケル・6水和物 130g/L
クエン酸二アンモニウム 60g/L
ホウ酸 15g/L
塩化アンモニウム 15g/L
サッカリンナトリウム 8g/L
液温 50℃
pH 6.0(アンモニア水で調整)
電流密度 0.5A/dm2
処理時間 24分
(工程2)
次に、以下の条件でNiめっき被膜の表面に第二下地被膜として膜厚7μmのパルスCuめっき被膜を形成した。
液組成 硫酸銅・5水和物 75g/L
エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム・2水和物
186g/L
硫酸ナトリウム 71g/L
酒石酸ナトリウム・2水和物 23g/L
エタノールアミン 4.2mL/L
液温 60℃
pH 11.5(水酸化ナトリウムで調整)
CDmax 5A/dm2
CDmin 0A/dm2
on 4ms
off 6ms
処理時間 52分
(工程3)
次に、以下の条件でパルスCuめっき被膜の表面に第三下地被膜として膜厚15μmのCuめっき被膜を形成した。
液組成 ピロリン酸銅 95g/L
ピロリン酸カリウム 360g/L
アンモニア水 2mL/L
ピロブライトPY−61 0.3mL/L
液温 55℃
pH 8.5
電流密度 3.0A/dm2
処理時間 70分
(工程4)
続いて、図1に概略構成を示すプラズマCVD装置の真空処理室内の基板支持台上に、表面に第一下地被膜〜第三下地被膜を形成した磁石体試験片を載置した後、原料ソースとしてトリメチルチタンを用い、原料ソースのガス圧50mTorr、基板温度200℃の条件で30分間処理を行い、中間被膜として膜厚0.1μmのTi被膜を第三下地被膜であるCuめっき被膜の表面に形成した。
(工程5)
最後に、図1に概略構成を示すプラズマCVD装置の真空処理室内の基板支持台上に、表面に第一下地被膜〜第三下地被膜と中間被膜を形成した磁石体試験片を載置した後、原料ソースとしてメタンガスを用い、原料ソースのガス圧50mTorr、基板温度100℃の条件で2時間処理を行い、膜厚2μmの非晶質水素含有カーボン被膜を中間被膜であるTi被膜の表面に形成し、実施例(本発明)の希土類系永久磁石を得た。形成された非晶質水素含有カーボン被膜が非晶質であることはX線回折で確認した。被膜中の水素含有量をFTIRで測定したところ30mol%であった。被膜のビッカース硬度は850であった(加重25gf)。
比較例1:
実施例1と同様にして表面に第一下地被膜〜第三下地被膜を形成した磁石体試験片に対し、磁石体試験片温度350℃、バイアス電圧−100V、アーク電流100mA、窒素ガス1Paの条件で、ターゲットとして金属Tiを用いたアークイオンプレーティング法を2時間行い、第三下地被膜の表面に膜厚2μmのTiN被膜を形成し、比較例の希土類系永久磁石を得た。
比較例2:
実施例1と同様にして表面に第一下地被膜を形成した磁石体試験片に対し、実施例1の工程2で用いためっき液を用いて電流密度2.0A/dm2で35分間処理を行い、第一下地被膜の表面に膜厚5μmのCuめっき被膜を形成した。次に、以下の条件でCuめっき被膜の表面に膜厚3μmのNiめっき被膜をバレル法により形成し、比較例の希土類系永久磁石を得た。
液組成 硫酸ニッケル・6水和物 300g/L
塩化ニッケル・6水和物 50g/L
ホウ酸 20g/L
サッカリンナトリウム 8g/L
1,3,6ナフタレンスルホン酸ナトリウム
0.5g/L
液温 50℃
pH 4.0(炭酸ニッケルで調整)
電流密度 0.15A/dm2
処理時間 45分
評価例1:耐食性
実施例1、比較例1、比較例2の希土類系永久磁石に対し、温度80℃×相対湿度90%の条件下に1000時間放置する耐食性試験を行ったところ、いずれの磁石にも発錆は観察されず、耐食性に優れることがわかった。
評価例2:耐摩耗性
実施例1、比較例1、比較例2の希土類系永久磁石に対し、JIS K 5600−5−10記載の試験片往復法により耐磨耗性の評価を行ったところ、実施例1の磁石の非晶質水素含有カーボン被膜と比較例1の磁石のTiN被膜については表面に傷は認められず、耐磨耗性に優れることがわかった。一方、比較例2の磁石のNiめっき被膜については表面に傷およびクラックが認められ、耐摩耗性に劣ることがわかった。
評価例3:ヒートサイクル性
実施例1、比較例1、比較例2の希土類系永久磁石に対し、−40℃〜120℃のヒートサイクルを500サイクル行ったところ、実施例1の磁石の非晶質水素含有カーボン被膜と比較例2の磁石のNiめっき被膜については表面に異常は認められず、ヒートサイクル性に優れることがわかった。一方、比較例1の磁石のTiN被膜については表面にクラックが認められ、ヒートサイクル性に劣ることがわかった。
評価例4:濡れ性
実施例1の希土類系永久磁石の非晶質水素含有カーボン被膜の表面にJIS K 6788の濡れ試験液(37dyne/cm)をガラス棒を用いて滴下することで濡れ性の評価を行ったところ、濡れ試験液は滴下直後に被膜の表面に広がり、濡れ性に優れることがわかった。一方、比較例1の希土類系永久磁石のTiN被膜と比較例2の希土類系永久磁石のNiめっき被膜に対して同様の評価を行ったところ、濡れ試験液はいずれの被膜の表面においてもほとんど広がることがなく、濡れ性に劣ることがわかった。
評価例5:耐水素性
実施例1、比較例1、比較例2の希土類系永久磁石それぞれ5個に対し、温度120℃×水素分圧0.3MPaで高温水素加圧試験を行い、磁石が崩壊するまでの時間を測定したところ、実施例1の磁石はいずれも試験開始から1000時間経過した後も崩壊は起こらず、耐水素性に優れることがわかった。一方、比較例1の磁石はいずれも試験開始から200時間以内に、また、比較例2の磁石はいずれも試験開始から100時間以内に崩壊し、耐水素性に劣ることがわかった。
本発明は、耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れる希土類系永久磁石およびその製造方法を提供できる点において産業上の利用可能性を有する。
実施例で使用したプラズマCVD装置の概略構成図である。

Claims (10)

  1. 磁石の表面にCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜を介して水素含有非晶質カーボン被膜を有し、耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れることを特徴とする希土類系永久磁石。
  2. 水素含有非晶質カーボン被膜の膜厚が0.1μm〜25μmであることを特徴とする請求項1記載の希土類系永久磁石。
  3. 下地被膜の膜厚が0.01μm〜15μmであることを特徴とする請求項1または2記載の希土類系永久磁石。
  4. 下地被膜が2層以上存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の希土類系永久磁石。
  5. 下地被膜と水素含有非晶質カーボン被膜との間にTi,Si,W,Crから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる中間被膜を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の希土類系永久磁石。
  6. 中間被膜の膜厚が0.005μm〜3μmであることを特徴とする請求項5記載の希土類系永久磁石。
  7. 磁石の表面にCu,Ni,Al,Znから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる下地被膜を形成した後、または、下地被膜を形成してからさらにその表面にTi,Si,W,Crから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金からなる中間被膜を形成した後、その表面にプラズマCVD法により水素含有非晶質カーボン被膜を形成することを特徴とする耐食性、耐摩耗性、ヒートサイクル性、濡れ性、耐水素性に優れる希土類系永久磁石の製造方法。
  8. 原料ソースとして水素化炭素ガスを用いて水素含有非晶質カーボン被膜を形成することを特徴とする請求項7記載の製造方法。
  9. 下地被膜を湿式電気めっき法または気相蒸着法により形成することを特徴とする請求項7または8記載の製造方法。
  10. 中間被膜をプラズマCVD法により形成することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の製造方法。
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