JP2011119068A - 色素増感型太陽電池用電極および色素増感型太陽電池 - Google Patents

色素増感型太陽電池用電極および色素増感型太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】フレキシブル性や軽量性を確保して、量産化および低コスト化を図りながら、電解液による浸透を防止して、発電効率の低下を防止することのできる、色素増感型太陽電池用電極および色素増感型太陽電池を提供すること。
【解決手段】色素増感型太陽電池用電極に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類とパラフェニレンジアミン類との反応により得られるポリイミドフィルムからなる基板を備える。作用電極2と、作用電極2と間隔を隔てて対向配置される対極3と、作用電極2および対極3間に充填され、ヨウ素を含有する電解質4とを備える色素増感型太陽電池1において、上記の色素増感型太陽電池用電極を対極3および/または作用電極2として用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池用電極および色素増感型太陽電池、詳しくは、色素増感型太陽電池の対極および/または作用電極に好適に用いられる色素増感型太陽電池用電極、および、それを用いた色素増感型太陽電池に関する。
近年、色素増感半導体を用いた色素増感型太陽電池が、量産化および低コスト化の観点から、シリコン型太陽電池に替わる新たな太陽電池として提案されている。
色素増感型太陽電池は、通常、光増感作用を有する作用電極(アノード)と、作用電極と間隔を隔てて対向配置される対向電極(対極、カソード)と、2つの電極間に充填される電解液とを備えている。色素増感型太陽電池では、太陽光の照射に基づいて作用電極に発生する電子が、配線を介して対極に移動するとともに、2つの電極間の電解液において、電子が授受される。
このような色素増感型太陽電池において、作用電極は、基板(アノード側基板)、その表面に積層される透明導電性膜およびその表面に積層され、色素を吸着した色素増感半導体からなり、対向電極は、基板(カソード側基板)、その表面に積層される導電性膜およびその表面に積層される触媒層からなる。上記した各電極の基板は、通常、ガラスからそれぞれ形成されている。また、電解液は、ヨウ素を含有している。
また、色素増感型太陽電池では、柔軟化や軽量化を図るべく、各電極の基板を樹脂から形成することが提案されている。例えば、対極の基板を、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)から形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2006−282970号公報
しかし、特許文献1の色素増感型太陽電池では、高温下において、基板にヨウ素が浸透し易く、そのため、基板の物性の低下を生じたり、基板の外観不良を生じる。その結果、色素増感型太陽電池の発電効率が低下するという不具合がある。
また、色素増感型太陽電池の基板には、高温下において、電解液のヨウ素による分解を防止する必要がある。
本発明の目的は、フレキシブル性や軽量性を確保して、量産化および低コスト化を図りながら、電解液による浸透を防止して、発電効率の低下を防止することのできる、色素増感型太陽電池用電極および色素増感型太陽電池を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の色素増感型太陽電池用電極は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類とパラフェニレンジアミン類との反応により得られるポリイミドフィルムからなる基板を備えていることを特徴としている。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極では、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、パラフェニレンジアミン類が、パラフェニレンジアミン類であることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極は、前記基板の表面に形成される導電層をさらに備えていることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極では、前記導電層は、金、銀、銅、白金、ニッケル、錫、錫ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化錫およびカーボンからなる群から選択される少なくとも1種から形成されていることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極では、前記導電層は、触媒層を兼ねており、カーボンから形成されていることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極では、前記導電層の表面に形成される触媒層をさらに備えていることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極では、前記触媒層は、白金および/またはカーボンから形成されていることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極では、前記導電層の表面に形成される色素増感半導体層をさらに備えていることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池用電極では、前記色素増感半導体層は、半導体粒子に色素が吸着された色素増感半導体粒子から形成されていることが好適である。
また、本発明の色素増感型太陽電池は、作用電極と、前記作用電極と間隔を隔てて対向配置される対極と、前記作用電極および前記対極間に充填され、ヨウ素を含有する電解質とを備える色素増感型太陽電池であって、前記作用電極および/または前記対極が、上記した色素増感型太陽電池用電極であることを特徴としている。
本発明の色素増感型太陽電池用電極は、フレキシブル性や軽量性を確保でき、量産化および低コスト化を図ることができながら、耐ヨウ素性に優れている。そのため、基板がヨウ素によって染色されることを防止でき、ヨウ素が基板に浸透することを防止することができる。
そのため、本発明の色素増感型太陽電池用電極が電極として用いられる色素増感型太陽電池は、量産化および低コスト化が図られた太陽電池として種々の分野で用いることができながら、電解質のヨウ素による外観不良の防止、さらには、電解質のヨウ素による基板の浸透および/または分解に起因する発電効率の低下を防止することができる。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態(触媒層から露出するカソード側基板が電解質と接触する態様)の断面図を示す。 図2は、本発明の色素増感型太陽電池用電極の一実施形態(対極が、カソード側基板、カソード側導電層および触媒層を備える態様)の断面図を示す。 図3は、本発明の色素増感型太陽電池用電極の他の実施形態(対極が、カソード側基板およびカソード側導電層を備える態様)の断面図を示す。 図4は、本発明の色素増感型太陽電池の他の実施形態(カソード側基板および電解質間にカソード側導電層が介在する態様)の断面図を示す。 図5は、本発明の色素増感型太陽電池の他の実施形態(アノード側導電層およびカソード側導電層が集電配線に接続される態様)の断面図を示す。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態(触媒層から露出するカソード側基板が電解質と接触する態様)の断面図、図2は、本発明の色素増感型太陽電池用電極の一実施形態(対極が、カソード側基板、カソード側導電層および触媒層を備える態様)の断面図を示す。
図1において、この色素増感型太陽電池1は、作用電極2(アノード)と、作用電極2と厚み方向(図1における上下方向)において間隔を隔てて対向配置される対極(カソード、対向電極)3と、作用電極2および対極3間に充填される電解質4とを備えている。
作用電極2は、光増感作用を有しており、略平板形状に形成されている。作用電極2は、アノード側基板5、その下面(電解質4に対向する対向面、表面)に積層される導電層としてのアノード側導電層6、および、その下面(電解質4に対向する対向面、表面)に積層される色素増感半導体層7を備えている。
アノード側基板5は、透明であり、平板形状に形成されており、例えば、ガラス基板などのリジッド板や、プラスチックフィルムなどのフレキシブルフィルム(後述する特定のモノマーの反応により得られるポリイミドフィルムを除く)などの、絶縁板や絶縁フィルムから形成されている。
プラスチックフィルムのプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂(後述する液晶ポリマーを除く)、例えば、サーモトロピック液晶ポリエステル、サーモトロピック液晶ポリエステルアミドなどの液晶ポリマー、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどのアクリル系樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、例えば、ポリイミド(後述するビフェニルテトラカルボン酸二無水物類とパラフェニレンジアミン類との反応により得られるポリイミドを除く)、ポリアミドイミドなどのイミド系樹脂、例えば、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホンなどのエーテル系樹脂などが挙げられる。これらプラスチック材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
アノード側基板5の厚みは、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜400μmである。
アノード側導電層6は、例えば、透明導電薄膜からなり、アノード側基板5の下面全面に形成されている。
透明導電薄膜を形成する導電材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、錫、アルミニウムなどの金属材料、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)などの金属酸化物(複合酸化物)材料、例えば、カーボンなどの炭素材料などが挙げられる。これら導電材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
アノード側導電層6の抵抗率は、例えば、1.0×10−2Ω・cm以下、好ましくは、1.0×10−3Ω・cm以下である。
また、アノード側導電層6の厚みは、例えば、0.01〜100μm、好ましくは、0.1〜10μmである。
色素増感半導体層7は、アノード側導電層6の下面の幅方向(図1における左右方向)途中に形成され、すなわち、アノード側導電層6の幅方向両端部が露出するように形成されている。
色素増感半導体層7は、色素増感半導体粒子がフィルム状に積層されることにより形成されており、そのような色素増感半導体粒子は、例えば、金属酸化物からなる多孔質の半導体粒子に、色素が吸着されている。
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブテン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銀などが挙げられる。好ましくは、酸化チタンが挙げられる。
色素としては、例えば、ルテニウム錯体、コバルト錯体などの金属錯体、例えば、シアニン、メロシアニン、フタロシアニン、クマリン、リボフラビン、キサンテン、トリフェニルメタン、アゾ、キノンなどの有機系色素などが挙げられる。好ましくは、ルテニウム錯体、メロシアニンが挙げられる。
色素増感半導体粒子の平均粒子径は、1次粒子径で、例えば、5〜200nm、好ましくは、8〜100nmである。
また、色素増感半導体層7の厚みは、例えば、0.4〜100μm、好ましくは、0.5〜50μm、さらに好ましくは、0.5〜15μmである。
対極3は、後で詳述するが、略平板形状に形成されている。
電解質4は、例えば、それが溶媒に溶解された溶液(電解液)や、あるいは、その溶液がゲル化されたゲル電解質として調製されている。
電解質4は、必須成分として、ヨウ素、および/または、ヨウ素およびヨウ素化合物の組み合わせ(レドックス系)を含んでいる。
ヨウ素化合物としては、例えば、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化カルシウム(CaI)などの金属ヨウ化物、例えば、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイドなどの有機4級アンモニウムヨウ化物塩などが挙げられる。
また、電解質4は、任意成分として、例えば、臭素などのハロゲン(ヨウ素を除く)、例えば、臭素および臭素化合物の組み合わせなどの、ハロゲンおよびハロゲン化合物の組み合わせ(ヨウ素およびヨウ素化合物の組み合わせを除く)を含んでいてもよい。
溶媒としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネ−ト化合物、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ガンマ−ブチロラクトンなどのエステル化合物、例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、2−メチルーテトラヒドラフランなどのエーテル化合物、例えば、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドンなどの複素環化合物、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリルなどのニトリル化合物、例えば、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性化合物などの有機溶媒や、水などの水性溶媒が挙げられる。好ましくは、有機溶媒、さらに好ましくは、ニトリル化合物が挙げられる。
電解質の含有割合は、電解液100重量部に対して、例えば、0.001〜10重量部、好ましくは、0.01〜1重量部である。また、電解質の分子量によるが、電解質4における電解質の濃度を、規定度で、例えば、0.001〜10M、好ましくは、0.01〜1Mに設定することができる。
ゲル電解質は、電解液に公知のゲル化剤などを適宜の割合で配合することによって調製される。
ゲル化剤としては、例えば、天然高級脂肪酸、アミノ酸化合物などの多糖類などの低分子ゲル化剤、例えば、ポリビニリデンフロオライド、ビニリデンフロオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子や、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどのビニル系高分子などの高分子ゲル化剤などが挙げられる。
また、この色素増感型太陽電池1には、電解質4を作用電極2および対極3間に封止するための封止層11が設けられている。
封止層11は、色素増感型太陽電池1の幅方向両端部において、作用電極2および対極3間にわたって充填されている。また、封止層11は、色素増感半導体層7の両外側に隣接配置されている。
封止層11を形成する封止材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ホットメルト樹脂、ガラスフリットなどが挙げられる。
封止層11の厚み(上下方向長さ)は、例えば、5〜500μm、好ましくは、5〜100μm、さらに好ましくは、10〜50μmである。
そして、図1において、色素増感型太陽電池1には、対極3として、本発明の色素増感型太陽電池用電極の一実施形態(図2)が用いられており、この対極3は、基板としてのカソード側基板8を備えている。
図1および図2において、カソード側基板8は、ポリイミドフィルムから形成されている。
ポリイミドフィルムは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類と、パラフェニレンジアミン類との反応により得ることができる。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、または、それらの誘導体などが挙げられる。
誘導体としては、例えば、2,2’−ジフルオロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジヨード−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのハロゲン化ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリクロロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリブロモメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリヨードメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのハロゲン化アルキル−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、好ましくは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類は、単独使用または2種以上併用することができる。
パラフェニレンジアミン類としては、例えば、パラフェニレンジアミン(p−フェニレンジアミン)、パラアミノジフェニルアミン(p−アミノジフェニルアミン、4−アミノジフェニルアミン)、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−o−トリル−N’フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−p−トリル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1−メチルプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス−(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス−(1−メチルプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−p−トルエンスルホニル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
好ましくは、パラフェニレンジアミンが挙げられる。
パラフェニレンジアミン類は、単独使用または2種以上併用することができる。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類とパラフェニレンジアミン類との反応では、例えば、まず、上記した成分(モノマー)を配合して、それらを重縮合させて、ポリアミック酸(ポリアミド酸、ポリイミドの前駆体)を調製し、その後、ポリアミック酸をイミド化(硬化)させる。
ポリアミック酸を得るには、まず、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類とパラフェニレンジアミン類とを、実質的に等モル比となるような割合で、必要により、適宜の有機溶媒に溶解させて、モノマー溶液を調製する。
有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミドなどの極性溶媒が挙げられる。
極性溶媒の配合割合は、得られるポリアミック酸の濃度が、例えば、5〜50重量%、好ましくは、10〜25重量%となるように、調整する。
また、モノマー溶液は、上記したモノマーを、例えば、25〜80℃、5〜48時間、攪拌することにより、調製することができる。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類とパラフェニレンジアミン類との重縮合は、例えば、0〜80℃で1〜48時間、モノマー溶液を加熱する。これにより、ワニス(ポリアミック酸の溶液)として得ることができる。
その後、ポリアミック酸をイミド化するには、得られたワニスからフィルムを成形し、次いで、フィルムを加熱硬化する。
フィルムを成形する方法として、例えば、キャスティング成形、押出成形などが挙げられる。
キャスティング成形では、例えば、ワニスを、基材の上に塗布し、その後、乾燥する。
基材としては、例えば、金属箔や金属板などが挙げられる。金属箔や金属板は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル/鉄合金、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅−ベリリウム、リン青銅などから形成される。
塗布は、スピンコート法、バーコート法などの公知の塗布方法が用いられる。
また、乾燥は、例えば、80〜150℃、好ましくは、90〜120℃で加熱する。
押出成形では、例えば、ギアポンプおよびヘッド(口金)などを備える公知の押出機を用いて、フィルム成形および乾燥を実施する。
また、押出成形では、ヘッドから押し出されたフィルムをテンター延伸することができ、その場合には、延伸方向(走行方向)に、例えば、1.1〜2.5倍、幅方向(延伸方向に直交する方向)に、例えば、0.5〜2.0倍延伸する。
加熱硬化の加熱温度は、例えば、250〜500℃、好ましくは、350〜450℃である。
このような加熱硬化によって、ポリアミック酸がイミド化され、ポリイミドフィルムからなるカソード側基板8を形成することができる。
このようなポリイミドフィルムは、市販されているものを用いることができ、例えば、ユーピレックスSシリーズ(宇部興産社製)などが用いられる。
また、ポリイミドフィルムは、その結晶化度が、例えば、50%以上、好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、65%以上であり、通常、90%以下である。なお、ポリイミドフィルムの結晶化度は、X線回折により求められる。
結晶化度が上記範囲にあれば、優れた耐ヨウ素性を得ることができる。
また、ポリイミドフィルムは、23℃の水に24時間浸漬させたときの吸水率(ASTM D570)は、例えば、5重量%以下、好ましくは、3重量%以下、通常、0.03重量%以上である。
また、ポリイミドフィルムは、後述する耐ヨウ素性試験の重量変化率が、例えば、10重量%以下、好ましくは、5重量%以下、さらに好ましくは、1重量%以下、とりわけ好ましくは、0.5重量%以下であり、通常、0.01重量%以上である。また、耐ヨウ素性試験において、後述するポリイミドフィルムのヨウ素含有量は、例えば、3000(μgヨウ素/g)以下、好ましくは、1000(μgヨウ素/g)以下、さらに好ましくは、300(μgヨウ素/g)以下であり、通常、10(μgヨウ素/g)以上である。
カソード側基板8の厚みは、例えば、5〜500μm、好ましくは、8〜100μm、さらに好ましくは、12〜50μmである。カソード側基板8の厚みが上記範囲に満たない場合には、作業性が低下する場合があり、カソード側基板8の厚みが上記範囲を超える場合には、コストが増大する場合がある。
また、対極3は、具体的には、導電層としてのカソード側導電層9と、触媒層10とをさらに備えている。
カソード側導電層9は、カソード側基板8の上面(電解質4に対向する対向面、表面)に形成されており、具体的には、導電薄膜からなり、カソード側基板8の上面の幅方向途中(中央部)に形成されている。詳しくは、カソード側導電層9は、厚み方向に投影したときに、色素増感半導体層7に含まれており、カソード側基板8の幅方向両側部分が露出するように形成されている。
カソード側導電層9を形成する導電材料としては、上記したアノード側導電層6を形成する導電材料と同様の導電材料が挙げられ、好ましくは、金、銀、銅、白金、ニッケル、錫、ITO、FTO、カーボンが挙げられる。このような導電材料であれば、電子が効率よく授受される利点がある。
これら導電材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
カソード側導電層9の抵抗率は、例えば、1.0×10−2Ω・cm以下、好ましくは、1.0×10−3Ω・cm以下、さらに好ましくは、1.0×10−5Ω・cm以下である。
また、カソード側導電層9の厚みは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは、1〜50μmである。カソード側導電層9の厚みが上記範囲に満たない場合には、導電性が過度に低下する(抵抗率が過度に増大する)場合があり、カソード側導電層9の厚みが上記範囲を超える場合には、コストが増大したり、薄型化が困難となる場合がある。
触媒層10は、カソード側導電層9の上面(電解質4に対向する対向面、表面)に形成されており、具体的には、カソード側基板8の上において、カソード側導電層9の表面(上面および幅方向両側面)を被覆するように形成されている。
また、触媒層10は、厚み方向に投影したときに、色素増感半導体層7に含まれており、幅方向一側面が、色素増感半導体層7の幅方向一側面およびカソード側導電層9の幅方向一側面間に位置し、幅方向他側面が、色素増感半導体層7の幅方向他側面およびカソード側導電層9の幅方向他側面間に位置している。
触媒層10を形成する材料としては、例えば、白金、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属材料、例えば、ポリジオキシチオフェン、ポリピロールなどの導電性有機材料、例えば、カーボンなどの炭素材料などが挙げられる。好ましくは、白金、カーボンが挙げられる。これらの材料であれば、電子が効率よく授受される利点がある。
これら材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
触媒層10の厚みは、例えば、50nm〜100μm、好ましくは、100nm〜50μmである。触媒層10の厚みが上記範囲に満たない場合には、電解質4における電解質による酸化還元反応の促進を十分に図れず、発電効率が低下する場合がある。触媒層10の厚みが上記範囲を超える場合には、コストが増大する場合がある。
そして、この色素増感型太陽電池1を製造するには、まず、作用電極2、対極3および電解質4をそれぞれ用意(あるいは作製)する。
作用電極2は、アノード側基板5、アノード側導電層6、および、色素増感半導体層7を厚み方向下方に向かって順次積層することにより、作製する。
電解質4は、上記した電解液あるいはゲル状電解質として調製する。
対極3を作製するには、まず、カソード側基板8を用意する。
次いで、必要により、カソード側基板8の上面を、プラズマ処理あるいは物理蒸着法により、表面処理する。これら表面処理は、単独または2種以上併用することができる。
プラズマ処理としては、例えば、窒素プラズマ処理が挙げられる。窒素プラズマ処理の条件を以下に記載する。
圧力(減圧度) :0.01〜100Pa、好ましくは、0.05〜10Pa
導入窒素流量 :10〜1000SCCM(standard cc/min)好ましくは、10〜300SCCM
処理温度 :0〜150℃、好ましくは、0〜120℃
電力 :30〜1800W、好ましくは、150〜1200W
処理時間 :0.1〜30分間、好ましくは、0.15〜10分間
窒素プラズマ処理により、カソード側基板8の上面が窒化される。
物理蒸着法としては、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどが挙げられ、好ましくは、スパッタリングが挙げられる。
スパッタリングとしては、例えば、ニッケル、クロムなどの金属をターゲットとする金属スパッタリングが挙げられる。金属スパッタリングにより、カソード側基板8の上面に、金属薄膜(図示せず)が形成される。金属薄膜の厚みは、例えば、1〜1000nm、好ましくは、10〜500nmである。
上記した表面処理によって、カソード側導電層9のカソード側基板8に対する密着性を向上させることができる。
次いで、カソード側導電層9を、カソード側基板8の上に形成する。
カソード側導電層9は、例えば、印刷法、スプレー法、物理蒸着法、アディティブ法、サブトラクティブ法などによって、上記したパターンに形成する。
印刷法では、例えば、上記した導電材料の微粒子を含むペーストを、カソード側基板8の上面に、上記したパターンでスクリーン印刷する。
スプレー法では、例えば、まず、上記した導電材料の微粒子を公知の分散媒で分散させた分散液を調製する。また、所定のパターンに開口されたマスクによってカソード側基板8の上面を被覆する。その後、カソード側基板8およびマスクの上方から、調製した分散液を噴き付ける(スプレーする)。その後、マスクを除去し、分散媒を蒸発させる。
物理蒸着法としては、好ましくは、スパッタリングが用いられる。具体的には、所定のパターンに開口されたマスクによってカソード側基板8の上面を被覆した後、例えば、金属材料や金属酸化物材料をターゲットとしてスパッタリングし、その後、マスクを除去する。
アディティブ法では、例えば、まず、カソード側基板8の上面に、図示しない導体薄膜(種膜)を形成する。導体薄膜は、スパッタリング、好ましくは、クロムスパッタリングにより、クロム薄膜を積層する。なお、導体薄膜の形成は、上記した表面処理(物理蒸着法)によって金属薄膜がすでに形成されている場合には、カソード側基板8の表面処理を兼ねることができる。
次いで、この導体薄膜の上面に、上記したパターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する導体薄膜の上面に、電解めっきにより、カソード側導電層9を形成する。その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体薄膜を除去する。
サブトラクティブ法では、例えば、まず、カソード側基板8の上面に、上記した導電材料からなる導体箔が予め積層されている2層基材(銅張2層基材など)を用意し、その導体箔の上に、ドライフィルムレジストを積層した後、露光および現像し、上記したカソード側導電層9と同一パターンのエッチングレジストを形成する。その後、エッチングレジストから露出する導体箔を、例えば、塩化第二鉄水溶液などのエッチング液を用いて化学エッチングした後、エッチングレジストを除去する。
なお、2層基材の用意では、カソード側基板8の上面に、導体箔を熱融着により接着したり、あるいは、カソード側基板8と導体箔との間に、公知の接着剤層を介在させることもできる。
なお、上記したサブトラクティブ法によるカソード側導電層9の形成において、銅張2層基材としては、市販品を用いることができ、例えば、ポリイミドフィルムの上面に、銅箔が予め積層されているポリイミド銅張積層板として、ユピセルNシリーズ(宇部興産社製)などが用いられる。
次いで、触媒層10を、カソード側基板8の上に、カソード側導電層9を被覆するように形成する。
触媒層10は、例えば、印刷法、スプレー法、物理蒸着法などの公知の方法によって、上記したパターンに形成する。印刷法、スプレー法、物理蒸着法は、上記した方法に準じて実施できる。
触媒層10を貴金属から形成する場合には、好ましくは、物理蒸着法(例えば、真空蒸着、スパッタリングなど)が用いられ、触媒層10を導電性有機化合物や炭素材料から形成する場合には、印刷法やスプレー法が用いられる。
これにより、対極3を作製する。
次いで、作用電極2および対極3を、色素増感半導体層7および触媒層10が隣接するように、封止層11が設けられる間隔を隔てて対向配置させる。これとともに、封止層11を、作用電極2および対極3間の幅方向一方側に設け、次いで、電解質4を、作用電極2および対極3間に流し込んだ後、さらに、封止層11を、作用電極2および対極3間の幅方向他方側に設けることにより、電解質4を封止する。
これにより、色素増感型太陽電池1を製造することができる。
そして、このようにして得られる色素増感型太陽電池1において、対極3は、カソード側基板8が上記したポリイミドフィルムからなることから、フレキシブル性や軽量性を確保でき、量産化および低コスト化を図ることができる。
また、対極3のカソード側基板8は、上記したポリイミドフィルムからなるので、高い結晶化度を確保でき、耐ヨウ素性に優れている。そのため、カソード側基板8がヨウ素によって染色されることを防止でき、ヨウ素がカソード側基板8に浸透することを防止することができるとともに、ヨウ素によるカソード側基板8の分解を抑制することができる。
また、良好な外観を確保することができる。
その結果、上記した対極3が用いられる色素増感型太陽電池1は、量産化および低コスト化が図られた太陽電池として種々の分野で用いることができながら、電解質4のヨウ素による外観不良の防止、さらには、電解質4のヨウ素によるカソード側基板8の浸透および/または分解に起因する発電効率の低下を防止することができる。
図3は、本発明の色素増感型太陽電池用電極の他の実施形態(対極が、カソード側基板およびカソード側導電層を備える態様)の断面図、図4は、本発明の色素増感型太陽電池の他の実施形態(カソード側基板および電解質間にカソード側導電層が介在する態様)の断面図、図5は、本発明の色素増感型太陽電池用電極の他の実施形態(アノード側導電層およびカソード側導電層が集電配線に接続される態様)の断面図を示す。
なお、上記した各部に対応する部材については、図3〜図5において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上記した説明では、色素増感型太陽電池用電極3に、触媒層10を設けたが、例えば、図3に示すように、触媒層10を設けることなく、色素増感型太陽電池用電極3を、カソード側基板8およびカソード側導電層9から形成することもできる。
さらに、カソード側導電層9が触媒層10を兼ねることもできる。その場合には、カソード側導電層9は、好ましくは、カーボンなどの炭素材料から形成されている。
また、上記した説明では、カソード側基板8の上面において、カソード側導電層9、触媒層10および封止層11から露出する部分が、電解質4に接触しているが、例えば、図4に示すように、カソード側導電層9の幅方向両側面を、封止層11の内側面と接触させるように形成することにより、カソード側基板8の上面全面を、カソード側導電層9および封止層11によって被覆することができる。
図4において、カソード側導電層9は、幅方向において封止層11間にわたって形成されている。すなわち、カソード側導電層9は、厚み方向に投影したときに、その幅方向両側面が、色素増感半導体層7の幅方向両側面と同一位置に位置している。つまり、カソード側導電層9は、カソード側基板8と、電解質4および触媒層10との間に介在している
触媒層10は、カソード側導電層9の上面の幅方向途中(中央部)に形成されている。つまり、触媒層10は、カソード側導電層9の上面の幅方向両端部を露出している。
この色素増感型太陽電池1では、カソード側導電層9が、カソード側基板8および電解質4間に介在しているので、電解質4がカソード側基板8に直接接触しないことから、電解質4のヨウ素のカソード側基板8への直接的な浸透を防止することができる。
しかし、カソード側導電層9を、例えば、ITOから形成する場合には、電解質4のヨウ素がカソード側導電層9に浸透して、カソード側基板8に達する場合がある。その場合にも、この色素増感型太陽電池1の対極3では、カソード側基板8が、耐ヨウ素性に優れているので、カソード側基板8がヨウ素によって染色されることを有効に防止でき、ヨウ素がカソード側基板8に浸透することを有効に防止することができるとともに、ヨウ素によるカソード側基板8の分解を有効に抑制することができる。
さらにまた、図5に示すように、色素増感半導体層7および触媒層10を、幅方向に沿って複数設けるとともに、それらの間に集電配線12に設けることもできる。
各色素増感半導体層7および各触媒層10は、幅方向に間隔を隔てて整列配置されており、厚み方向に投影したときに、それぞれ、同一位置に位置している。
集電配線12は、作用電極2において、アノード側導電層6の下面における各色素増感半導体層7間に複数形成され、各集電配線12は、幅方向において色素増感導体層7と間隔を隔てて配置されている。作用電極2における集電配線12は、アノード側導電層6と電気的に接続されている。
また、集電配線12は、対極3において、カソード側導電層9の上面における各触媒層10間に複数形成され、各集電配線12は、幅方向において触媒層10と間隔を隔てて配置されている。対極3における集電配線12は、カソード側導電層9と電気的に接続されている。
集電配線12を形成する導電材料は、上記した導電材料と同様である。集電配線12の厚みは、例えば、0.5〜50μm、好ましくは、0.5〜20μmである。
また、集電配線12の表面には、電解質4による集電配線12の腐食を防止するために保護層13が形成されている。
保護層13を形成する材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの樹脂材料、例えば、ニッケル、金などの金属材料が挙げられる。保護層13の厚みは、例えば、0.5〜30μmである。
この色素増感型太陽電池1では、複数のアノード側導電層6およびカソード側導電層9の電流を、複数の集電配線12によって集電することによって、発電効率を向上させることができる。
なお、上記した説明では、色素増感型太陽電池1における作用電極2および対極3における各基板(アノード側基板5およびカソード側基板8)のうち、カソード側基板8のみを、ポリイミドフィルムから形成しているが、例えば、アノード側基板5およびカソード側基板8の両方をポリイミドフィルムから形成することもできる。
また、アノード側基板5をポリイミドフィルムから形成する一方、カソード側基板8を上記したガラス基板やプラスチックフィルムから形成することもできる。
実施例1
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを、等モル比となる割合で、N,N−ジメチルアセトアミド中に、ポリアミック酸濃度が20重量%となるように溶解させてモノマー溶液を調製した。次いで、モノマー溶液を、室温で24時間、反応させることにより、ポリアミック酸の溶液(ワニス)を調製した。
その後、調製したワニスを、ステンレスからなる基材の上に塗布し、その後、105℃で乾燥することにより、フィルムを成形した。
その後、フィルムを、375℃で、加熱硬化することにより、ポリイミドフィルム(厚み25μm)を得た。なお、このポリイミドフィルムは、23℃の水に24時間浸漬させたときの吸水率(ASTM D570)が1.4重量%である。
そして、得られたポリイミドフィルムを、カソード側基板として供した。
次いで、窒素プラズマ処理によって、カソード側基板の上面を窒化処理した。窒素プラズマ処理の条件を以下に記載する。
圧力(減圧度) :1.2Pa
導入窒素流量 :70SCCM
処理温度 :21℃
電力 :200W
処理時間 :0.5分間
次いで、アディティブ法によって、銅からなるカソード側導電層を上記パターンに形成した(図2参照)。
すなわち、まず、カソード側基板の上面に、クロムスパッタリングにより、厚み100nmのクロム薄膜からなる導体薄膜を形成した。次いで、この導体薄膜の上面に、上記したパターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する導体薄膜の表面に、電解銅めっきにより、厚み18μmのカソード側導電層を形成した。その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体薄膜を除去した。なお、カソード側導電層の抵抗率は1.76×10−6Ω・cmであった。
その後、カソード側基板の上に、カソード側導電層の表面を被覆するパターンで、白金からなる触媒層を形成した。
すなわち、まず、上記した所定のパターンに開口されたマスクによって、カソード側基板およびカソード側導電層の上面を被覆した後、白金真空蒸着によって、厚み300nmの触媒層を形成した(図2参照)。その後、マスクを除去した。
これにより、図2に示す対極(色素増感型太陽電池用電極)を作製した。
実施例2
カソード側基板の用意において、上記したポリイミドフィルム(厚み25μm)に代えて、ポリイミドフィルム(アピカルNPI、厚み25μm、カネカ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、対極(色素増感型太陽電池用電極)を作製した。
なお、このポリイミドフィルム(ユーピレックスS)は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンとの反応により得られている。
また、このポリイミドフィルム(ユーピレックスS)の23℃の水に24時間浸漬させたときの吸水率(ASTM D570)が1.4重量%である。
比較例1
カソード側基板の用意において、ポリイミドフィルム(厚み25μm)に代えて、ポリイミドフィルム(アピカルNPI、厚み25μm、カネカ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、対極(色素増感型太陽電池用電極)を作製した。
なお、このポリイミドフィルム(アピカルNPI)は、ピロメリット酸と4,4’−ジアミノフェニルエーテルとの反応により得られている。
また、このポリイミドフィルム(アピカルNPI)の23℃の水に24時間浸漬させたときの吸水率(ASTM D570)が1.7重量%である。
比較例2
カソード側基板の用意において、ポリイミドフィルム(厚み25μm)に代えて、ポリイミドフィルム(カプトンV、厚み25μm、東レ・デュポン社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、対極(色素増感型太陽電池用電極)を作製した。
なお、このポリイミドフィルム(カプトンV)は、ピロメリット酸と4,4’−ジアミノフェニルエーテルとの反応により得られている。
また、このポリイミドフィルム(カプトンV)の23℃の水に24時間浸漬させたときの吸水率(ASTM D570)が2.9重量%である。
比較例3
カソード側基板の用意において、ポリイミドフィルム(厚み25μm)に代えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックス Q51、PENフィルム、厚み25μm、帝人デュポン社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、対極(色素増感型太陽電池用電極)を作製した。
なお、このポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックス Q51)23℃の水に24時間浸漬させたときの吸水率(ASTM D570)が0.3重量%である。
(評価)
(結晶化度)
各実施例および各比較例において用意したカソード側基板の結晶化度を、X線回折により測定した。
すなわち、X線回折は、X線回折装置(D8Discover with GADDS、Bruker Axs社製)を用い、ブランク(空気)とカソード側基板とのそれぞれの2次元X線回折パターンを測定した。その後、ブランクのパターンからブランク基板の回折パターンを差し引いて回折パターンを一元化した後、結晶部の面積と非晶部の面積とから、結晶化度を次式によって算出した。
結晶化度=(結晶部の面積)/[(結晶部の面積)+(非晶部の面積)]×100
その結果を、表1に示す。
(耐ヨウ素性試験)
実施例および各比較例により得られた色素増感型太陽電池用電極を、電解液(電解質:ヨウ素、規定度:0.1M、溶媒:3−メトキシプロピオニトリル)に浸漬させ、80℃で、1週間放置した。
1)重量変化率
上記した耐ヨウ素性試験の前後における色素増感型太陽電池用電極の重量変化率(増加率、重量%)を測定した。その結果を、表1に示す。
2)ヨウ素含有量
耐ヨウ素性試験の前後の電解液について、イオンクロマトグラフを用いて、ヨウ素含量をそれぞれ測定した。その後、耐ヨウ素性試験前の電解液中のヨウ素含量から、耐ヨウ素性試験後の電解液中のヨウ素含量を差し引くことによって、色素増感型太陽電池用電極のヨウ素含有量を算出した。その結果を、表1に示す。
3)外観
上記した耐ヨウ素性試験の前後における色素増感型太陽電池用電極のカソード側基板について、目視により、染色の有無を観察した。その結果を、表1に示す。表1中の略号の詳細を以下に記載する。
○:カソード側基板がヨウ素によって染色されていることを確認できなかった。
×:カソード側基板がヨウ素によって染色されていることが確認された。
Figure 2011119068
1 色素増感型太陽電池
2 作用電極(色素増感型太陽電池用電極)
3 対極(色素増感型太陽電池用電極)
4 電解質
5 アノード側基板
6 アノード側導電層
7 色素増感半導体層
8 カソード側基板
9 カソード側導電層
10 触媒層

Claims (11)

  1. ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類とパラフェニレンジアミン類との反応により得られるポリイミドフィルムからなる基板を備えていることを特徴とする、色素増感型太陽電池用電極。
  2. 前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、
    パラフェニレンジアミン類が、パラフェニレンジアミン類であることを特徴とする、請求項1に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  3. 前記基板の表面に形成される導電層をさらに備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  4. 前記導電層は、金、銀、銅、白金、ニッケル、錫、錫ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化錫およびカーボンからなる群から選択される少なくとも1種から形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  5. 前記導電層は、触媒層を兼ねていることを特徴とする、請求項3に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  6. 前記導電層は、カーボンから形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  7. 前記導電層の表面に形成される触媒層をさらに備えていることを特徴とする、請求項3または4に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  8. 前記触媒層は、白金および/またはカーボンから形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  9. 前記導電層の表面に形成される色素増感半導体層をさらに備えていることを特徴とする、請求項3または4に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  10. 前記色素増感半導体層は、半導体粒子に色素が吸着された色素増感半導体粒子から形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  11. 作用電極と、
    前記作用電極と間隔を隔てて対向配置される対極と、
    前記作用電極および前記対極間に充填され、ヨウ素を含有する電解質とを備える色素増感型太陽電池であって、
    前記作用電極および/または前記対極が、請求項1〜10のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする、色素増感型太陽電池。
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