上記特許文献2に記載されている浴室用洗い場床では、支持基材層の上にクッション層が積層され、そのクッション層の上に表面層が積層されているので、表面層に耐久性を備えさせることで、柔らかさを備えつつ浴室の洗い場床として要求される耐久性を具備することができるものである。その表面層は、耐久性を有するとともに強度を確保するための厚肉部と、可撓性を付与するための薄肉部とによって構成されている。また、その厚肉部は、表面層上に荷重が加わった際に、その荷重が加わった部分が局所的に変形しないように作用するので、例えば使用者が足を乗せた場合には、上記特許文献の図4に示されているように、踏んだところを中心にしなやかに撓み、その近辺のみが沈み込むような柔らかい感覚を得ることができる。
上記特許文献2に記載されている浴室用洗い場床は上述のように、使用者が柔らかさを感じつつ、表面層の局所的な変形も抑制することができるものであるから、使用者が通常の入浴動作をしたり通常浴室に配置される浴室用椅子を使用したりといった場合には、従来にない非常に良好な使用感を与えることができ、浴室用の洗い場床に求められる基本的な性能も十分に達成することができる優れたものである。
しかしながら、浴室においては通常の入浴動作以外に、例えば浴室内の天井を掃除したり、天井に設けられている様々な機器のメンテナンスを行ったりする必要もある。その場合、通常はダイニング等に置かれている4本脚の椅子や脚立を洗い場床に乗せて、その椅子が脚立に使用者が乗って作業を行う場合がある。このように4本脚の椅子等を用いると、通常の使用状態よりも表面層に集中的な荷重が加わり、荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくなるため、場合によっては凹状の跡がついてしまったり、亀裂が生じたりすることも想定される。一方で、4本脚の椅子や脚立を用いた場合にも凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにするために、例えば表面層やクッション層の剛性を上げてしまうと、通常使用時の柔らかさが失われてしまうおそれがある。また、クッション層を薄くすることで表面層の変形に規制をかけることも考えられるけれども、クッション層が薄くなることで通常使用時においてクッション層が完全に潰れて支持基材層に底付きしてしまう感触が伝わってしまい、使用感の低下を招くおそれがある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ使用者に柔らかさを感じさせることのできる浴室用洗い場床であって、4本脚の椅子等を用いた場合にも凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにする浴室用洗い場床を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る浴室用洗い場床は、荷重を支えるための支持基材層と、前記支持基材層の上に積層され、弾性変形可能なクッション層と、前記クッション層の上に積層され、耐久性及び可撓性を有する表面層と、を備えた浴室用洗い場床であって、前記クッション層は、前記表面層上に荷重が加わった際に前記支持基材層との間に挟まれて圧縮変形され、その圧縮変形される際の基準荷重に対する縮み量が第一量である易変形領域と、その圧縮変形される際の基準荷重に対する縮み量が前記第一量よりも少ない第二量である難変形領域とを有し、前記易変形領域と前記難変形領域とが鉛直方向において重なるように配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、支持基材層とクッション層と表面層とを備え、支持基材層の上にクッション層を積層し、クッション層の上に表面層を積層しているので、表面層上に使用者が載ったり物を載せたりした場合の荷重を、クッション層を介して支持基材層によって支えることができる。クッション層は弾性変形可能なように構成されているので、表面層上に載っている使用者に対して柔らかな感触を与えることができ、その弾性変形度合を調整することで使用者にとって心地よい柔らかさを提供することができる。表面層は耐久性及び可撓性を有するように構成されているので、浴室用洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ、表面層上に載った使用者の荷重をクッション層に伝えて撓むことができる。
更に本発明では、クッション層は易変形領域と難変形領域とを有しており、それらは鉛直方向において重なるように配置されている。易変形領域及び難変形領域は共に、表面層上に荷重が加わった際に支持基材層との間に挟まれて圧縮変形されるものであって、易変形領域の基準荷重に対する縮み量は第一量であり、難変形領域の基準荷重に対する縮み量は第二量である。
本発明において第二量は第一量よりも少ない量であるので、表面層上に載る使用者や表面層上に載せるものの重量に即した基準荷重を設定することで、例えば使用者が表面層上に載った場合に易変形領域が主として先に変形して底付きし、難変形領域は従たる変形を成して完全には押し潰されていない部分を残すことができる。従って、使用者に表面層を介してクッション層には変形する残り代があることを感じさせることができ、例えば使用者が更に力を入れて踏み込んだような場合であっても、仮に易変形領域が完全に押し潰されても、難変形領域は変形しにくい分、完全に押し潰されていないため、残りの難変形領域を変形させることで、使用者に完全なる底付き感を感じさせることがなく、心地良い踏み心地を感じさせることができる。
一方、4本脚の椅子や脚立を用いた場合には、総重量が同じであっても接地面積が狭いため集中荷重が表面層に作用する。この場合には易変形領域も難変形領域も共に変形するけれども、易変形領域と難変形領域との変形割合を異ならせているため、先に易変形領域が完全に押し潰され、難変形領域には変形する余地が残ることになる。本発明では、クッション層を易変形領域と難変形領域とを鉛直方向において重ねることで形成しているので、全体の厚みよりも易変形領域の厚みも難変形領域の厚みも薄くなるように構成している。従って、易変形領域が完全に押し潰された状態であっても、易変形領域の厚みがクッション層の厚みよりも薄いことと表面層の荷重分散効果とによって、難変形領域は変形しにくい分、完全に押し潰されていないため、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくならないようにすることができることで、表面層の過度の凹みを防止することができ、結果として表面層に亀裂が生じることを抑制できる。更に、易変形領域が変形した後であっても変形する余地が残っている難変形領域の厚みもクッション層の厚みよりも薄いことと、易変形領域よりも変形し難いことによって、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくならないようにすることができ、表面層における過度の局所的な凹みを防止することができ、表面層に亀裂が生じることをより効果的に抑制できる。従って、使用者が載った場合には柔らかい使用感を感じさせることができる機能は維持しつつ、4本脚の椅子や脚立を用いた場合には凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにすることが可能な浴室用洗い場床を提供することができる。
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記難変形領域が前記易変形領域よりも前記表面層側に配置されていることも好ましい。
この好ましい態様では、難変形領域が易変形領域よりも表面層側に配置されているので、表面層と難変形領域とを当接させた状態に位置させることができる。従って、集中荷重が表面層に作用した場合に、表面層と難変形領域とが協働して荷重分散効果を発揮させることができ、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくならないようにすることができるので、表面層における過度の局所的な凹みを防止し、結果として表面層に亀裂が生じることを抑制できる。
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記難変形領域と前記易変形領域とはそれぞれ別の部材によって構成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、基準荷重が加わった場合の変形量がそれぞれ異なる難変形領域と易変形領域とを別の部材で構成するので、難変形領域と易変形領域とのそれぞれの特性に応じた材料や形態を採用した別部材を結合することでクッション層を形成することができ、容易に本発明に係るクッション層を形成することができる。
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記難変形領域と前記易変形領域との間には、上方に配置されている方の領域が受けた力を下方に配置されている方の領域に伝達する荷重分散領域が設けられており、前記荷重分散領域は、上方に配置されている領域から下方に配置されている領域に力を伝達する際に、力を伝える範囲がより広がるように伝達することも好ましい。
この好ましい態様では、上方に配置されている領域から下方に伝達される力を分散するための荷重分散領域が設けられているので、表面層のみならずこの荷重分散領域においても荷重分散効果を発揮することができ、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくならないようにすることができるので、表面層における過度の局所的な凹みを防止し、結果として表面層に亀裂が生じることを抑制できる。
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記難変形領域と前記易変形領域とは単一の部材によって構成されており、その部材の前記難変形領域に対応する部分は基準荷重に対する縮み量が前記第二量となる硬さで形成され、その部材の前記易変形領域に対応する部分は基準荷重に対する縮み量が前記第一量となる硬さで形成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、難変形領域の硬さと易変形領域の硬さとを異ならせることで、難変形領域及び易変形領域それぞれの特性を発揮させるように構成しているので、特別な形態を採用することなく本発明に係るクッション層を形成することができる。
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記難変形領域と前記易変形領域とは単一の部材によって構成されており、その部材の前記難変形領域に対応する部分は基準荷重に対する縮み量が前記第二量となる密度で形成され、その部材の前記易変形領域に対応する部分は基準荷重に対する縮み量が前記第一量となる密度で形成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、難変形領域の密度と易変形領域の密度とを異ならせることで、難変形領域及び易変形領域それぞれの特性を発揮させるように構成しているので、例えば、難変形領域と易変形領域とを同一の材料で形成した後に易変形領域相当部分に空隙を設けるなどして易変形領域を形成することができたり、難変形領域と易変形領域とを同一の材料で形成し相互の発泡倍率を異ならせることで易変形領域を形成することができる。従って、特別な材料を用いることなく本発明に係るクッション層を形成することができる。
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記難変形領域が前記表面層又は前記支持基材層に当接する受圧面の面積よりも、前記易変形領域が前記表面層又は前記支持基材層に当接する受圧面の面積が小さくなるように構成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、難変形領域が表面層又は支持基材層に当接する受圧面の面積よりも、易変形領域が表面層又は支持基材層に当接する受圧面の面積が小さくなるように構成されているので、表面層及び支持基材層から加わる外力によって難変形領域は変形し難く易変形領域は変形し易いように、容易に相互の変形量を異ならせることができる。より具体的には、難変形領域側の受圧面を相対的に広くすることで、難変形領域に加わる力を分散して難変形領域を変形し難く形成することができる。一方で、易変形領域側の受圧面を相対的に狭くすることで、易変形領域に加わる力を集中させて易変形領域を変形しやすく形成することができる。従って、特別な材料を用いることがなく簡単な手法で本発明に係るクッション層を形成することができる。尚、本発明のこの好ましい態様における趣旨に鑑みれば、例えば難変形領域から極めて短い突起を突出させることで表面層又は支持基材層に当接する受圧面の面積を、易変形領域における受圧面の面積と同等以下にしたとしても、その極めて短い突起が先に潰されて残りの部分が実質的に難変形領域として機能する限りにおいては、本発明のこの好ましい態様が包摂する概念に含まれるものである。
本発明によれば、洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ使用者に柔らかさを感じさせることのできる浴室用洗い場床であって、4本脚の椅子等を用いた場合にも凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにする浴室用洗い場床を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床を用いた浴室について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床FPを用いた浴室BRを示す部分断面図であって、浴室BRの洗い場領域における部分断面図である。図1に示すように、浴室BRは、浴室用洗い場床FPの周囲に壁パネル50が立設されている。
浴室用洗い場床FPは、硬質の支持基材層10と、支持基材層10の上に積層されたクッション性を有するクッション層4と、クッション層4の上に積層された表面層5とを備えている。
支持基材層10は、浴室外に湯水を漏出させない防水性、および壁パネル50、天井パネル、風呂椅子、洗面器などの静荷重、使用者の動荷重を受けても大きく撓んだり破損したりしない十分な強度を有する硬質材料から形成されている。例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の熱硬化性樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂に補強を施したものから形成されている。
支持基材層10には縦断面視で凹状に形成される凹部2が設けられている。凹部2は支持基材層10の上面視における大部分の面積を占め、凹部2より外方側には凹部2の上面(底面)よりも一段高くされた縁部6が設けられている。縁部6よりも外方側であって支持基材層10の最外縁部には、上方に立ち上がった水返し壁として機能する側壁部8が設けられている。
支持基材層10は硬質材を熱間成型することにより一体成形され、よって、凹部2、縁部6および側壁部8は一体に形成される。
クッション層4は、支持基材層10の凹部2に全体が収容され、凹部2の上面(底面)に例えば両面テープ等の接着剤により接着固定される。クッション層4は、弾性変形可能であり、例えばウレタン等の発泡体からなる。なお、クッション層4は弾性変形可能なゴム材であっても構わないが、ゴム臭のない発泡体の方が気密性の高い浴室の洗い場床として利用するには好ましい。本実施形態では、クッション層4を機能的に少なくとも二つの領域からなるように構成しており、その詳細については後述する。
表面層5は、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐衝撃性など、洗い場床表面に要求される基本性能(耐久性)を満足するべく比較的硬質で強靱な材料から形成されている。そのような表面層5の材料としては、FRP、PVC(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン・ポリエステル・オレフィン・アクリル系の各種エラストマー、EVA、EPDM、シリコンゴムなどのゴム(硬質)系、あるいはこれらを十分な耐久性が期待できる程度の硬さに調整したもの、あるいはこれらをベースに充填材や強化材を加えた複合材料などが一例として挙げられる。これら材料は一例であって、その他、表面層5の材料としては、ある程度の可撓性を有する材料で、且つ浴室の一般的な使用に際し十分な耐久性を有するべく強靱な材料であればよく、前述したものに限られない。なお、特に、洗い場床材に要求される基本性能発揮に実績のあるFRPを表面層5に用いることで信頼性の高い製品を提供することができる。
表面層5の詳細構造について図2を参照しながら説明する。図2は、浴室用洗い場床FPの斜視図である。図3に示すように、表面層5は、洗い場床の表面強度を確保するための厚肉部5aと、クッション層4の変形に追従可能な可撓性を表面層5に付与するための薄肉部5bとを有する。表面層5における浴室内に露出される表面側から切り込まれた溝12を形成することによって、厚肉部5aと薄肉部5bとが形成される。溝12は、下層のクッション層4には達しておらず、溝12は表面層5を完全に分断してはいない。
薄肉部5bは溝12の下に位置し、薄肉部5bの厚みは、厚肉部5aの厚みよりも薄い。溝12及びその下に位置する薄肉部5bは、表面層5の全体に渡って格子状に形成され、厚肉部5aは、溝12及び薄肉部5bで囲まれた島状に形成されている。
溝12を凹状断面視で見た場合における薄肉部5bの幅は、同じ断面視における厚肉部
5aの幅よりも小さい。表面層5全体における、厚肉部5aの平面面積は薄肉部5bの平
面面積よりも大きい。
再び図1を参照すると、表面層5は、クッション層4の上面及び凹部2を覆うようにクッション層4に積層される。表面層5の平面サイズは、クッション層4の平面サイズより大きく(縦横ともに長く形成されている)、表面層5においてクッション層4からはみ出る周縁部は、クッション層4を介さずに支持基材層10の縁部6の上面に積層される。表面層5において上記溝12が形成された面の反対側の裏面は、例えば両面テープ等の接着材で、クッション層4の上面及び支持基材層10の縁部6の上面に接着固定される。
表面層5はクッション層4より薄い。表面層5の平面サイズは、支持基材層10全体の平面サイズより小さく(縦横ともに短く形成されている)且つ凹部2の平面サイズより大きい(縦横ともに長く形成されている)。
支持基材層10、クッション層4および表面層5の積層構造を得るにあたっては、それらを一体に熱間成型することにより相互に溶着固定させてもよいし(インサート及びラミネート成形)、支持基材層10の成型加工後に、その凹部2の上面(底面)に対してクッション層4を例えば両面テープ等の接着剤を用いて貼り付け、さらにそのクッション層4の表面に例えば両面テープ等の接着剤を用いて表面層5を貼り付けてもよい。
支持基材層10の凹部2より外方側に配置される表面層5の周縁部は、例えばシリコンや目地部材等のシーリング材11で水密的にシールされ、表面層5と支持基材層10との間への水の浸入が防止されている。
表面層5の周縁部より外方側における支持基材層10の縁部6の上面には、壁パネル50が載置されている。シーリング材11は、表面層5の周縁部と支持基材層10との間、および壁パネル50と支持基材層10との間を兼用して水密的にシールする。
前述したようにクッション層4の表面側に表面層5を積層した構造においては、使用者は表面層5に触れることになるがその使用者にクッション層4の機能(柔らかさ)を感じさせるようにするため、表面層5にはクッション層4の変形に追従可能な可撓性が求められる。
本実施形態では、耐久性を具備すべく硬質の表面層5としても、その表面層5の厚みが面方向に均一ではなく、厚肉部5aと薄肉部5bとを有する構造としたため、クッション層4の変形に追従させて表面層5をしなやかに撓ませることができクッション層4のやわらかさを使用者に伝達することが可能なものとなっている。
続いて、クッション層4の詳細な構成について図3を参照しながら説明する。図3は、浴室用洗い場床FPの部分断面図である。図3に示すように、クッション層4は、第一クッション層4a(難変形領域)と、第二クッション層4b(易変形領域)とが鉛直方向において重なるように積層することで構成されている。
易変形領域としての第二クッション層4bは、表面層5上に荷重が加わった際に支持基材層10との間に挟まれて圧縮変形され、その圧縮変形される際の基準荷重に対する縮み量が第一量である層である。本実施形態の場合、基準荷重は使用者として想定される体重に基づいて算出され、使用者が表面層5上に載った場合に、第二クッション層4bが略潰される程度に変形し、その縮み量である第一量が第二クッション層4bの厚みと略同一となるように設定されている。
難変形領域としての第一クッション層4aは、表面層5上に荷重が加わった際に支持基材層10との間に挟まれて圧縮変形され、その圧縮変形される際の基準荷重に対する縮み量が第二量である層である。第二量は前述した第一量よりも少なくなるように設定されている。本実施形態の場合、難変形領域としての第一クッション層4aは、比較的硬く変形し難い材料によって形成されており、易変形領域としての第二クッション層4bは、比較的柔らかく変形し易い材料によって形成されている。
このようにクッション層4を構成した場合に、表面層5上に4本脚の椅子が載せられて集中荷重が作用した例を図4に示し、表面層5上に使用者が載って非集中荷重が作用した例を図5に示す。
本実施形態における浴室用洗い場床FPは、支持基材層10とクッション層4と表面層5とを備え、支持基材層10の上にクッション層4を積層し、クッション層4の上に表面層5を積層しているので、表面層5上に使用者が載ったり物を載せたりした場合の荷重を、クッション層4を介して支持基材層10によって支えることができる。クッション層4は弾性変形可能なように構成されているので、表面層5上に載っている使用者に対して柔らかな感触を与えることができ、その弾性変形度合を調整することで使用者にとって心地よい柔らかさを提供することができる。表面層5は耐久性及び可撓性を有するように構成されているので、浴室用洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ、表面層5上に載った使用者の荷重をクッション層に伝えて撓むことができる。
本実施形態では、表面層5に荷重が加わると、溝12(図2参照)及びその下の薄肉部5b(図2参照)が節となって断面凹状に撓む。このため、硬質の表面層5であっても、表面層5がつっぱって撓みを抑制するようなことがなく、踏んだところを中心にしなやかに撓み、その近辺のみが沈み込むようなやわらかい感覚を得ることができる。
表面層5にしなやかな可撓性を付与する役割を担う薄肉部5b(図2参照)は、表面層5の表面全体に渡って格子状に形成されているため、すなわち表面層5の表面上縦横に変形の節となる薄肉部5bが偏在することなく分散配置され、床面上のどの部分に荷重がかかっても、変形の方向に指向性が生ずることなく、踏んだところを面上全方位的に違和感なくくぼませることができる。
更に本実施形態では、クッション層4は易変形領域としての第二クッション層4bと難変形領域としての第一クッション層4aとを有しており、それらは鉛直方向において重なるように配置されている。第二クッション層4b及び第一クッション層4aは共に、表面層5上に荷重が加わった際に支持基材層10との間に挟まれて圧縮変形されるものであって、第二クッション層4bの基準荷重に対する縮み量は第一量であり、第一クッション層4aの基準荷重に対する縮み量は第二量である。
本実施形態において第二量は第一量よりも少ない量であるので、表面層5上に載る使用者や表面層5上に載せるものの重量に即した基準荷重を設定することで、使用者が表面層5上に載った場合に第二クッション層4bが主として先に潰れて底付きし、第一クッション層4aは従たる変形を成して完全には押し潰されていない部分を残すことができる(図5参照)。換言すれば、この場合には第二クッション層4bも第一クッション層4aも共に変形するけれども、第二クッション層4bと第一クッション層4aとの変形割合を異ならせているため、先に第二クッション層4bが完全に押し潰され、第一クッション層4aには変形する余地が残ることになる。従って図5に示すように、使用者の足22が表面層5に載ると、使用者には表面層5を介してクッション層5には変形する残り代(第一クッション層4a)があることを感じさせることができ、例えば使用者が更に力を入れて踏み込んだような場合であっても、残りの第一クッション層4aを変形させることで、使用者に完全なる底付き感を感じさせることがなく、心地良い踏み心地を感じさせることができる。
一方、図4に示すように、4本脚の椅子を用いた場合には、総重量が同じであっても接地面積が狭い椅子脚20を介して力が加わるため集中荷重が表面層5に作用する。この場合には第二クッション層4bが先に潰れるものであって、第二クッション層4bが完全に押し潰された後に第一クッション層4aが変形する余地が残ることになる。本実施形態では、クッション層4を第二クッション層4bと第一クッション層4aとを鉛直方向において重ねることで形成しているので、全体の厚みよりも第二クッション層4bの厚みも難第一クッション層4aの厚みも薄くなるように構成している。
従って、図4に示すように、第二クッション層4bが完全に押し潰された状態であっても、第二クッション層4bの厚みがクッション層4の厚みよりも薄く半分程度であることと表面層5の荷重分散効果とによって、椅子脚20の荷重点近傍における表面層5の変形角が過度に大きくならないようにすることができることで、表面層5の過度の凹みを防止することができ、結果として表面層5に亀裂が生じることを抑制できる。更に、第二クッション層4bが潰れた後にも変形する余地が残る第一クッション層4aの厚みもクッション層4の厚みよりも薄く半分程度であることと、第二クッション層4bよりも変形し難いことによって、椅子脚20の荷重点近傍における表面層5の変形角が過度に大きくならないようにすることができ、表面層5における過度の局所的な凹みを防止することができ、表面層5に亀裂が生じることをより効果的に抑制できる。
従って、図5に示すように使用者が載った場合には柔らかい使用感を感じさせることができる機能は維持しつつ、図4に示すように4本脚の椅子や脚立を用いた場合には凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにすることができる。
本実施形態では、第一クッション層4aが第二クッション層4bよりも表面層5側に配置されているので、表面層5と第一クッション層4aとを当接させた状態に位置させることができる。従って、集中荷重が表面層5に作用した場合に、表面層5と第一クッション層4aとが協働して荷重分散効果を発揮させることができ、図4に示すように椅子脚20の荷重点近傍における表面層5の変形角が過度に大きくならないようにすることができる。
尚、本実施形態では、難変形領域である第一クッション層4aを表面層5側に配置し、易変形領域である第二クッション層4bを支持基材層10側に配置しているけれども、易変形領域である第二クッション層4bを表面層5側に配置し、難変形領域である第一クッション層4aを支持基材層10側に配置しても構わない。
また本実施形態では、基準荷重が加わった場合の変形量がそれぞれ異なる第一クッション層4aと第二クッション層4bとを別の部材で構成するので、第一クッション層4aと第二クッション層4bとのそれぞれの特性に応じた材料や形態を採用した別部材を結合することでクッション層4を形成することができ、容易に本実施形態の特性に適合したクッション層4を形成することができる。
続いて、本実施形態の第一変形例について図6を参照しながら説明する。図6は、第一変形例としての浴室用洗い場床FPaを説明する部分断面図である。図6に示す洗い場床FPaは、図3〜図5を参照しながら説明した浴室用洗い場床FPのクッション層4をクッション層41に置き換えたものである。クッション層41は、クッション層4の第一クッション層4aと第二クッション層4bとの間にセパレータ4c(荷重分散領域)を挟み込んだものとなっている。セパレータ4cは、第一クッション層4a及び第二クッション層4bに比較して硬く変形し難い材料によって構成されており、好ましくは鉄板等が用いられる。
図6に示す第一変形例では、難変形領域である第一クッション層4aと易変形領域である第二クッション層4bとの間に、上方に配置されている方の領域である第一クッション層4aが受けた力を下方に配置されている方の領域である第二クッション層4bに伝達する荷重分散領域としてセパレータ4cが設けられている。荷重分散領域としてのセパレータ4cは、第一クッション層4aから第二クッション層4bに力を伝達する際に、力を伝える範囲がより広がるように伝達している。従って、表面層5のみならずこのセパレータ4cにおいても荷重分散効果を発揮することができ、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層5の変形角が過度に大きくならないようにすることができるので、表面層5における過度の局所的な凹みを防止し、結果として表面層に亀裂が生じることを抑制できる。
続いて、本実施形態の第二変形例について図7を参照しながら説明する。図7は、第二変形例としての浴室用洗い場床FPbを説明する部分断面図である。図7に示す洗い場床FPbは、図3〜図5を参照しながら説明した浴室用洗い場床FPのクッション層4をクッション層42に置き換えたものである。クッション層42は単一の部材によって構成されており、難変形領域に対応する第一部分4dは基準荷重に対する縮み量が第二量となる硬さで形成され、易変形領域に対応する第二部分4eは基準荷重に対する縮み量が第一量となる硬さで形成されている。具体的には、一体成形のウレタンによってクッション層42が形成されており、第一部分4dと第二部分4eとの硬さが異なるものであって、第一部分4dは硬く、第二部分4eは柔らかくなるよう、それぞれの発泡率が異なるように形成されている。このように、難変形領域に相当する第一部分4dの硬さと易変形領域に相当する第二部分4eの硬さとを異ならせることで、第一部分4d及び第二部分4eそれぞれの特性を発揮させるように構成しているので、特別な形態を採用することなく本発明の趣旨に適うクッション層42を形成することができる。
続いて、本実施形態の第三変形例について図8を参照しながら説明する。図8は、第三変形例としての浴室用洗い場床FPcを説明する部分断面図である。図8に示す洗い場床FPcは、図3〜図5を参照しながら説明した浴室用洗い場床FPのクッション層4をクッション層43に置き換えたものである。クッション層43は単一の部材によって構成されており、難変形領域に対応する第一部分4fは基準荷重に対する縮み量が第二量となる密度で形成され、易変形領域に対応する第二部分4fは基準荷重に対する縮み量が第一量となる密度で形成されている。
具体的には、第一部分4fは密な板状を成すように形成されており、第二部分4gは、第一部分4fから支持基材10に向けて突起4hが複数形成され、突起4hと突起4hとの間には溝4jが形成されている。換言すれば、第一部分4fが表面層5に当接する受圧面の面積よりも、第二部分4gが支持基材10に当接する受圧面の面積が狭くなるように構成されている。より具体的には、難変形領域である第一部分4f側の受圧面を相対的に広くすることで、第一部分4fに加わる力を分散して第一部分4fを変形し難く形成することができる。一方で、易変形領域である第二部分4g側の受圧面を相対的に狭くすることで、第二部分4gに加わる力を集中させて第二部分4gを変形しやすく形成することができる。従って、特別な材料を用いることがなく簡単な手法で本実施形態に係るクッション層43を形成することができる。尚、本発明の趣旨に鑑みれば、例えば難変形領域である第一部分4fから極めて短い突起を表面層5側に突出させることで表面層5に当接する受圧面の面積を、易変形領域である第二部分4gにおける受圧面(支持基材10に当接する面)の面積と同等以下にしたとしても、その極めて短い突起が先に潰されて残りの部分における第一部分4fが実質的に難変形領域として機能する限りにおいては、本発明が包摂する概念に含まれるものである。このように、易変形領域を難変形領域を構成する第一部分4fから突出する複数の突起4h及び溝4jによって形成しているので、難変形領域である第一部分4fと易変形領域である第二部分4gとを同一の材料で形成した後に易変形領域相当部分に突起4hが突出するように残余の部分を除去したり、易変形領域相当部分に突起4hが突出するように第一部分4fと第二部分4gとを一体的に成形したりすることで易変形領域を形成しているので、特別な材料を用いることがなく簡単な手法で本発明の趣旨に適うクッション層43を形成することができる。