JP2011111325A - 印刷装置および異常判定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ユーザーの予期せぬ行為による異常発生を正確に判定することが困難だった。
【解決手段】印刷媒体を収容するとともに、本体部に対して着脱可能な給紙トレーを備える印刷装置であって、上記給紙トレーから搬送経路に供給される印刷媒体に接しつつ搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、上記搬送の速度が異なる複数の印刷モードの中から印刷モードを設定する印刷条件設定部と、上記設定された印刷モードおよび上記搬送ローラーの回転量に基づいて、上記搬送モーターの駆動を制御する制御部と、少なくとも上記設定された印刷モードに応じたしきい値を設定するしきい値設定部と、上記印刷媒体が搬送される期間において上記搬送モーターの負荷を示す監視値を計測し、当該監視値が上記設定されたしきい値よりも大きいとき異常であると判定する判定部とを備える。
【選択図】図8
【解決手段】印刷媒体を収容するとともに、本体部に対して着脱可能な給紙トレーを備える印刷装置であって、上記給紙トレーから搬送経路に供給される印刷媒体に接しつつ搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、上記搬送の速度が異なる複数の印刷モードの中から印刷モードを設定する印刷条件設定部と、上記設定された印刷モードおよび上記搬送ローラーの回転量に基づいて、上記搬送モーターの駆動を制御する制御部と、少なくとも上記設定された印刷モードに応じたしきい値を設定するしきい値設定部と、上記印刷媒体が搬送される期間において上記搬送モーターの負荷を示す監視値を計測し、当該監視値が上記設定されたしきい値よりも大きいとき異常であると判定する判定部とを備える。
【選択図】図8
Description
本発明は、印刷装置および異常判定方法に関する。
DVDやCDのレーベル面に印刷を行うプリンターにおいて、DVDやCDを載置するディスクトレーの搬送異常を搬送用モーターの電流に基づいて判定する技術が提案されている(特許文献1参照。)。ディスクトレーが障害物等に干渉する場合、搬送用ローラーとディスクトレーとの間にスリップが生じ、このスリップを生じさせるための過剰な電流が搬送用モーターに流れることとなる。この過剰な電流をしきい値判定によって検出することにより、間接的にディスクトレーの搬送異常を検知することができる。
特許文献1において、搬送用ローラーとディスクトレーとの間にスリップを生じるときの過剰な電流の大きさは、搬送用ローラーとディスクトレーとの間の摩擦抵抗の大きさに応じたものと考えることができる。一方、多種多様な印刷モードや用紙種類や用紙サイズを採用し得るプリンターにおいて印刷用紙の搬送異常を検知する場合には、異常か否かを判定するための基準も多種多様となるため、特許文献1のような一つの摩擦抵抗の大きさに応じたしきい値判定を採用することには問題があった。すなわち、印刷モードや用紙種類や用紙サイズ等の印刷条件が異なれば、正常な印刷が行なわれる際に搬送用モーターに供給される電流量も異なるため、固定化されたしきい値を用いた判定では、誤った判定結果が生じるという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、種々の印刷条件下においてそれぞれ印刷媒体の搬送異常を正確に判定することが可能な印刷装置および異常判定方法を提供する。
本発明の態様の一つは、印刷媒体を収容するとともに、本体部に対して着脱可能な給紙トレーを備える印刷装置であって、上記給紙トレーから搬送経路に供給される印刷媒体に接しつつ搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、上記搬送の速度が異なる複数の印刷モードの中から印刷モードを設定する印刷条件設定部と、上記設定された印刷モードおよび上記搬送ローラーの回転量に基づいて、上記搬送モーターの駆動を制御する制御部と、少なくとも上記設定された印刷モードに応じたしきい値を設定するしきい値設定部と、上記印刷媒体が搬送される期間において上記搬送モーターの負荷を示す監視値を計測し、当該監視値が上記設定されたしきい値よりも大きいとき異常であると判定する判定部とを備える構成としてある。監視値は搬送モーターの負荷の状態を示すものであればよく、制御部による制御に基づいて搬送モーターに印加される電圧や電流であってもよいし、制御部が搬送モーターをPWM制御する場合のPWMパルスのデューティー比等であってもよい。
制御部は、搬送ローラーの回転量が目標値(上記設定された印刷モード下での目標値)となるように搬送モーターに駆動用の電力を供給するため、印刷媒体が異常な状況に陥った場合には、搬送モーターの負荷が異常な値となる。特に、印刷媒体が本体部と給紙トレーとの間に挟まって搬送ができない(印刷媒体が動かない)状況となった場合には、搬送ローラーが印刷媒体との間の摩擦抵抗に抗してスリップ(空転)し、このスリップを生じさせるだけの過剰な負荷を搬送モーターが生じさせる。このような状況において、搬送モーターの負荷が示す監視値が上記しきい値よりも大きい場合には、異常であると判定する。これにより、印刷媒体が正常に搬送されていないのにインク吐出が実行される等といった異常な印刷を防止できる。ところで、搬送モーターの負荷は、印刷速度の違い、すなわち印刷モードの違いに応じて異なる。本発明では、上記しきい値を、少なくともそのとき設定されている印刷モードに応じて設定する。そのため、各印刷モードの種類に適した判定を行うことができ、そのときの印刷モードにとっては正常な負荷(監視値)であるのに異常と誤判定したり、逆に、そのときの印刷モードにとっては異常な負荷(監視値)であるのに正常と誤判定したりすることを、防止できる。
搬送経路は、搬送ローラーよりも印刷媒体の搬送方向後方側において印刷媒体の搬送方向が湾曲する湾曲部を有する。印刷媒体を湾曲させて搬送することにより搬送経路をコンパクトに形成し、印刷装置を小型化することができる。このような搬送経路において印刷媒体が本体部と給紙トレーとの間に挟まると、印刷媒体が一直線に張るような張力が作用する。すると、印刷媒体の湾曲の内側に存在するローラーに対して印刷媒体が接近しようとする押圧力が作用し、この湾曲の外側に存在するローラーに対しては印刷媒体が離反しようとする。そのため、印刷装置において、印刷媒体に対して湾曲の内側から接しつつ搬送モーターの駆動により回転駆動する中間ローラーを具備させた場合には、中間ローラーに押圧力が作用し、中間ローラーが回転駆動することができなくなり、中間ローラーと同様に搬送モーターによって回転駆動される搬送ローラーも回転駆動することができなくなる。従って、搬送モーターの回転量に基づいて制御部は異常を判定することができる。
一方、印刷装置において、印刷媒体に対して湾曲の外側から接しつつ搬送モーターの駆動により回転駆動する中間ローラーを具備させた場合には、中間ローラーに上記押圧力が作用することなく、中間ローラーは自由に回転駆動することができるようになる。そのため、少なくとも搬送ローラーと印刷媒体との摩擦抵抗に抗した負荷を搬送モーターが出力していれば、搬送ローラーの回転量は正常に制御されることとなる。従って、このような構成では、搬送モーターの負荷を示す監視値が、そのときの印刷モード下において搬送ローラーと印刷媒体との摩擦抵抗に抗した負荷を生じさせる程の値となっているかどうかを判定し、異常を検知する。また、上記湾曲部における印刷媒体に接する能動的なローラーを具備しない場合にも、少なくとも搬送ローラーと印刷媒体との摩擦抵抗に抗した負荷を搬送モーターが出力していれば、搬送ローラーの回転量は正常に制御される。そのため、この場合も搬送モーターの負荷を示す監視値が、そのときの印刷モード下において搬送ローラーと印刷媒体との摩擦抵抗に抗した負荷を生じさせる程の値となっているかどうかを判定し、異常を検知する。
上記しきい値設定部は、上記印刷媒体が上記搬送経路の所定の給紙搬送終了位置まで搬送される期間における搬送モーターの負荷を示す給紙搬送メジャメント値と、少なくとも上記設定された印刷モードに応じて異なる許容値と、の和を上記しきい値として設定するとしてもよい。当該構成によれば、許容値を各印刷モードに応じた適切な値とすることで、どのような印刷モードが設定されている場合であっても異常か否かの正確な判定を行うことができる。
上記しきい値設定部は、少なくとも印刷モードに応じて予め算出された複数の上記許容値であって、印字処理のために印刷媒体が搬送される期間における搬送モーターの負荷を示す印字搬送メジャメント値と上記給紙搬送メジャメント値との差および、所定の異常が発生した状況における搬送モーターの負荷を示す異常時メジャメント値と当該印字搬送メジャメント値との差、に基づいて算出された上記複数の許容値の中から、上記設定された印刷モードに対応する許容値を選択し、当該選択した許容値を用いて上記しきい値を設定するとしてもよい。当該構成によれば、印字搬送メジャメント値と給紙搬送メジャメント値との差、および、異常時メジャメント値と印字搬送メジャメント値との差、に基づく許容値を印刷モード毎に予め用意しておくため、そのとき設定されている印刷モードにとって適したしきい値を容易に設定することができ、かつ正確な判定結果を得ることができる。
上記しきい値設定部は、印刷モードの違いに加え、印刷媒体の種類およびまたは印刷媒体のサイズに応じてしきい値を設定するとしてもよい。当該構成によれば、印刷媒体の種類やサイズの違いに応じた適切なしきい値が設定されることにより、異常か否かについて極めて正確な判定を行うことができる。
印刷装置は、設定可能な印刷モードとして少なくとも第一印刷モードと当該第一印刷モードよりも搬送の速度が遅い第二印刷モードとを備え、上記しきい値設定部は、上記印刷媒体の種類が普通紙であってかつ印刷モードが第一印刷モードに設定されている場合には、印刷媒体の種類が普通紙であってかつ印刷モードが第二印刷モードに設定されている場合に設定するしきい値よりも、高いしきい値を設定するとしてもよい。つまり、第二印刷モードよりも印刷速度が速めに設定されている第一印刷モードにおいては、例えば普通紙を印刷するときに搬送モーターが生じさせる負荷は、第二印刷モードで普通紙を印刷するために搬送モーターが生じさせる負荷よりも大きい値となる。従って、このような差を考慮して、しきい値も差を設けて設定する。
上記判定部は、上記印刷媒体が上記搬送経路の所定の給紙搬送終了位置まで搬送された以降において、上記監視値を計測するとしてもよい。当該構成によれば、印刷媒体(印刷媒体の先端)が給紙搬送終了位置に到達した以降の搬送における異常の有無を的確に判定することができる。
上述したように、本発明では、特に印刷媒体が本体部と給紙トレーとの間に挟まって搬送ができない状況となった場合に異常であると判定することができる。しかしながら、印刷媒体を搬送する期間のうち、印刷媒体の搬送方向後方端部が給紙トレーの着脱位置から離脱した後の期間においては、印刷媒体が本体部と給紙トレーとの間に挟まり得ない。そのため、印刷媒体の搬送方向後方の端部が上記給紙トレーの着脱位置から離脱した後の期間においては、監視値の計測を停止することにより、処理負荷を軽減させるのが望ましい。
上述したように、本発明では、特に印刷媒体が本体部と給紙トレーとの間に挟まって搬送ができない状況となった場合に異常であると判定することができる。しかしながら、印刷媒体を搬送する期間のうち、印刷媒体の搬送方向後方端部が給紙トレーの着脱位置から離脱した後の期間においては、印刷媒体が本体部と給紙トレーとの間に挟まり得ない。そのため、印刷媒体の搬送方向後方の端部が上記給紙トレーの着脱位置から離脱した後の期間においては、監視値の計測を停止することにより、処理負荷を軽減させるのが望ましい。
本発明の技術的思想は、印刷装置以外によっても実現可能である。例えば、上述した印刷装置の各部が実行する処理工程を有する方法(異常判定方法)の発明や、上述した印刷装置の各部が実行する機能を所定のハードウェア(印刷装置が内蔵するコンピューター等)に実行させるプログラムの発明をも把握可能である。なお、本発明の印刷装置は、単一の装置のみならず、複数の装置によって分散して存在可能である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.印刷装置の概略構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるプリンター1の構造を概略的に示す図である。プリンター1は印刷装置の一種である。図1において、プリンター1は、側方視略矩形状(直方体状)の本体部10を有し、本体部10の下部にプリンター1の前後方向に細長い凹部10aが設けられている。凹部10aは側方視略矩形状(直方体状)に形成されており、プリンター1の前側から凹部10aに対して給紙トレー40を前後にスライドさせて着脱することが可能となっている。実線は給紙トレー40を装着した状態を示し、破線は給紙トレー40をプリンター1の前方に引き抜いた状態を示している。給紙トレー40は、凹部10aよりわずかに小さい直方体状の外形を有しており、内部に上方が開放する用紙収容部40aを有している。この用紙収容部40aに対して印刷媒体としての印刷用紙を重ねて載置することが可能となっている。用紙収容部40aに載置された印刷用紙のうち最も上に載置された印刷用紙に対して、PUローラー(ピックアップローラー)12がその外周を接するように備えられている。PUローラー12はPUモーター(ピックアップモーター)とギア等によって結合されており、PUモーターの駆動によりPUローラー12が印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転駆動する。なお、PUモーターとPUローラー12は、取出部を構成する。
1.印刷装置の概略構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるプリンター1の構造を概略的に示す図である。プリンター1は印刷装置の一種である。図1において、プリンター1は、側方視略矩形状(直方体状)の本体部10を有し、本体部10の下部にプリンター1の前後方向に細長い凹部10aが設けられている。凹部10aは側方視略矩形状(直方体状)に形成されており、プリンター1の前側から凹部10aに対して給紙トレー40を前後にスライドさせて着脱することが可能となっている。実線は給紙トレー40を装着した状態を示し、破線は給紙トレー40をプリンター1の前方に引き抜いた状態を示している。給紙トレー40は、凹部10aよりわずかに小さい直方体状の外形を有しており、内部に上方が開放する用紙収容部40aを有している。この用紙収容部40aに対して印刷媒体としての印刷用紙を重ねて載置することが可能となっている。用紙収容部40aに載置された印刷用紙のうち最も上に載置された印刷用紙に対して、PUローラー(ピックアップローラー)12がその外周を接するように備えられている。PUローラー12はPUモーター(ピックアップモーター)とギア等によって結合されており、PUモーターの駆動によりPUローラー12が印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転駆動する。なお、PUモーターとPUローラー12は、取出部を構成する。
PUローラー12は、図1において反時計回りに回転し、外周にて接する印刷用紙を後方に送り出す。すると、印刷用紙の後方端部(以下、搬送方向先頭側の端部と表記。)を先頭として印刷用紙が後方に進行し、搬送方向先頭側の端部が用紙収容部40aの後方側に設けられた斜面40a1に干渉する。斜面40a1に干渉した印刷用紙の搬送方向先頭側の端部は、斜面40a1によって上方に誘導される。本体部10における斜面40a1の上方には、側方視略U字状に湾曲した湾曲部としての搬送ガイド13が形成されており、PUローラー12によって送り出された印刷用紙は、搬送方向先頭側の端部から搬送ガイド13に誘導される。これにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿って湾曲しつつ上方に供給される。搬送ガイド13の経路の中央部においては、中間ローラー19が備えられている。この中間ローラー19は、その外周が搬送ガイド13の印刷用紙に外側から接しつつ、印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転する。中間ローラー19は、PFモーター14(搬送モーター。図2参照。)と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動により能動的に回転駆動する。図1において中間ローラー19が回転駆動する方向は、時計回りである。印刷用紙を挟んで中間ローラー19に対向するように中間従動ローラー19aが設けられている。中間ローラー19が回転駆動することにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿ってさらに上方に搬送され、搬送方向先頭側がプリンター1の前方に向かって略水平に進行する。
印刷用紙の搬送方向先頭側が前方に向かって略水平にしばらく進行すると、印刷用紙の搬送方向先頭側の端部がPEセンサー(紙端センサー)20に到達する。PEセンサー20は図示しない発光部と受光部を有しており、発光部と受光部の間の光路を印刷用紙が遮るか否かを判定することにより、印刷用紙の紙端を検出する。本実施形態では、印刷用紙が給紙トレー40からPUローラー12によって送り出され、その印刷用紙の搬送方向先頭側の端部がPEセンサー20に検出されるまでの期間における印刷用紙の搬送を「給紙搬送」と呼ぶ。従って、搬送方向先頭側の端部がPEセンサーに20検出されたときの印刷用紙の位置が、搬送経路の所定の給紙搬送終了位置に該当する。
搬送方向先頭側の端部がPEセンサー20にて検出され、引き続きPFモーター14が駆動し、印刷用紙が搬送方向先頭側から前方に搬送される。搬送経路におけるPEセンサー20の前方には、PFローラー(搬送ローラー)17が備えられており、その外周が印刷用紙に対して下側から接する。PFローラー17も、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーターの駆動により能動的に回転駆動する。図1においてPFローラー17が回転駆動する方向は、反時計回りである。印刷用紙を挟んでPFローラー17に対向するようにPF従動ローラー17aが設けられている。
印刷用紙の搬送方向先頭側がPFローラー17に到達すると、印刷用紙はPFローラー17によって搬送される。印刷用紙の搬送方向後方側の端部が中間ローラー19よりも下方に位置する場合には、PFモーター14の駆動によるPFローラー17と中間ローラー19の双方の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。一方、印刷用紙の搬送方向後方側の端部が中間ローラー19よりも上方に位置する場合にも、PFモーター14の駆動によりPFローラー17と中間ローラー19が同期して回転駆動するものの、PFローラー17の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。印刷用紙の搬送方向先頭側の端部がPFローラー17よりも搬送方向後方に位置する場合には、PFモーター14の駆動によりPFローラー17と中間ローラー19が同期して回転駆動するものの、中間ローラー19の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。プリンター1においては、PFローラー17と中間ローラー19による印刷用紙の搬送速度が互いに同じとなるようにローラー径やギア比が設定されている。
PFローラー17のさらに前方にはプラテン22が設けられており、プラテン22が搬送される印刷用紙を下方から支持する。プラテン22には図示しない吸引機構が備えられており、吸引機構が印刷用紙を下方に吸引することにより、プラテン22上において印刷用紙が安定して保持される。プラテン22に印刷用紙を挟んで上方から対向するようにキャリッジ21が備えられている。キャリッジ21は下方に印字ヘッド21aを備えており、印字ヘッド21aの下面に配列する多数のノズルからインクを吐出することが可能となっている。キャリッジ21は、図1の紙面に対して垂直な方向に移動(主走査)することが可能である。キャリッジ21は、主走査を行いながらインクを吐出することにより、プラテン22上に保持された印刷用紙におけるノズルに対向する領域(印字位置)に対して、主走査方向に沿ったラスタラインを描画することができる。主走査を行った後に、PFモーターを駆動させ、印刷用紙を搬送することにより、印刷用紙における印字位置をずらす(副走査)ことができる。従って、印刷用紙における異なる位置にラスタラインを描画することができる。すなわち、上述した主走査と副走査を順次繰り返して実行することにより、印刷用紙上に印刷画像を形成することができる。
ここで、給紙搬送後の搬送(印刷用紙が給紙搬送終了位置まで搬送された後の搬送)は、「頭出し搬送」と、「印字搬送」と、「排紙搬送」とに分けることができる。頭出し搬送とは、印刷用紙の搬送方向先頭側の端部がPEセンサー20に検出されてから、当該印刷用紙における最初の印字位置が印字ヘッド21a下の所定位置に到達するまでの期間における搬送を言う。印字搬送とは、印字処理のための印刷用紙の搬送であり、主走査と主走査との合間に行なわれる印刷用紙の搬送(副走査)を意味する。ただし、頭出し搬送を、最初の印字搬送と捉えることもできる。排紙搬送とは、印刷用紙の印字位置に対する必要な印刷画像の形成が全て終了した後に、当該印刷用紙をプリンター1前方に排出するための搬送を言う。以下では適宜、給紙搬送後の搬送をまとめて「紙送り」と呼ぶ。
図2は、プリンター1の機能構成を示すブロック図である。プリンター1は、既に説明した以外の構成として、外部I/F(外部インターフェイス)30と、CPUとROMとRAMとからなるマイクロコンピューター31と、ASIC32と、ロータリーエンコーダー33と、モータードライバー15と、を備えている。外部I/F30は外部のホストコンピューター60との仲介をなし、外部I/F30を介してホストコンピューター60から印刷データPDを取得する。印刷データPDは、ハーフトーン処理等が行われた印刷画像を構成するラスターデータと、プリンター1を制御するための制御データ等から構成されている。制御データには、印刷モードの種類や印刷用紙の種類や印刷用紙のサイズ等(まとめて印刷条件と呼ぶ。)を指定する情報が含まれている。これら印刷条件は、ホストコンピューター60が実行するアプリケーションプログラムやプリンタードライバーを使用して、ユーザーが予め指定している。ASIC32は、PF制御部32aと、キャリッジ制御部32bと、PU制御部(ピックアップローラー制御部)32cを備えている。さらにPF制御部32aは、搬送速度演算部32a1とPID演算部32a2とPWM部32a3を備え、設定された印刷モードおよび搬送速度に基づくフィードバック制御を行う。
搬送速度演算部32a1は、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号(パルス周期)に基づいて現在の印刷用紙の搬送速度(回転量に比例する値)を算出する。ロータリーエンコーダー33は、PFローラー17またはPFローラー17と結合されたいずれかのギアに備えられたエンコード板と当該エンコード板を挟んで配置された発光部と受光部とから構成され、受光部における受光状態に基づいてPFローラー17の回転駆動速度に応じたパルス周期を有するパルス信号を生成する。PID演算部32a2は、マイクロコンピューター31側から与えられた目標速度に対する現在の搬送速度の偏差に基づくPID演算を行うことにより、PWM部32a3に出力する制御電圧を決定する。このPID演算においては、偏差の比例値と時間積分値と時間微分値を所定のゲインによって結合することによりPFモーター14の制御電圧が決定される。
PWM部32a3は、PID演算部32a2から出力された制御電圧に相当するデューティー比DRを決定し、モータードライバー15に出力する。モータードライバー15は、所定の直流電圧Vc(例えば、Vc=42V)を上記デューティー比DR(パルスの周期に対するONの期間の比率)に応じてパルス幅変調することにより、パルスとしてのPWM信号を生成し、PFモーター14に出力する。PFモーター14は、DCモーターであり、モータードライバー15から出力されたPWM信号を駆動電源として駆動する。すなわち、PFモーター14は、PWM信号(PWM信号のデューティー比DR)に応じた負荷を生じさせる。ここで、PWM信号のデューティー比DRが大きければ大きいほど、PFモーター14に印加される電圧Vmおよび電流Imの平均的な値は大きくなり、PFモーター14の負荷も大きくなる。
デューティー比DRは、DR=d/PWMcycleと表現することができる。PWMcycleは、例えば3000といった整数である。dは、デューティー(Duty)値であり、デューティー比DRにおける分子である。PWMcycle=3000とした場合、d=0〜3000の整数である。つまり本実施形態では、PWM部32a3は、上記制御電圧に応じたデューティー比DRを、パルス周期の1/3000単位で調整して決定することができる。
搬送速度演算部32a1とPID演算部32a2は、微小な時間(制御ステップ)ごとに搬送速度に基づく制御電圧の更新を行っている。すなわち、PFモーター14を駆動させるにあたり、制御ステップごとに目標速度が設定され、目標速度と現在の搬送速度との偏差に基づくフィードバック制御が繰り返される。一方、キャリッジ制御部32bはキャリッジ21や印字ヘッド21aを駆動制御するための処理を実行し、PU制御部32cはPUローラー12を駆動制御するための処理を実行する。本実施形態では、PUモーターとPU制御部32cを単独で備えるとしたが、PUモーターとPU制御部32cの機能(すなわち印刷用紙のピックアップ機能)を、PFモーター14とPF制御部32aが兼ねるようにしてもよい。
マイクロコンピューター31のCPUは、後述する印刷処理の際に、異常判定処理も行なう。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して、搬送指示モジュール31aと、負荷監視モジュール31bと、しきい値設定モジュール31cと、判定モジュール31dと、通知モジュール31eと、を実行することにより、異常判定処理を実現する。この意味で、プリンター1は異常判定方法の実行主体であると言える。搬送指示モジュール31aは、上記印刷データPDに情報として含まれている印刷モード等の指定に基づいて、印刷用紙を搬送する目標速度を設定し、PF制御部32aに通知する。負荷監視モジュール31bは、PFモーター14の負荷を直接的あるいは間接的に示す値を取得する。本実施形態では、負担監視モジュール31bは、PWM部32a3によって決定されたデューティー比DRのデューティー値dを取得(監視)する。しきい値設定モジュール31cは、給紙搬送の期間に負荷監視モジュール31bが取得したデューティー値dを基準値D1として取得する。さらに、しきい値設定モジュール31cは、印刷データPDに含まれる印刷モード等を指定する情報を取得し、印刷モード等に対応する許容値αを取得する。印刷モード等と許容値αとの対応関係は、予めROMに記憶されたテーブルT1に記録されている。
しきい値設定モジュール31cは、基準値D1と許容値αとを合計することにより、しきい値Dth(=D1+α)を算出し、しきい値Dthを判定モジュール31dに設定する。判定モジュール31dは、紙送りの期間において負荷監視モジュール31bが取得したデューティー値dを監視値D2として取得するとともに、監視値D2がしきい値Dthよりも大きいか否かを判定する。そして、監視値D2がしきい値Dthよりも大きい場合には、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったと判断する。当該判断がなされた場合には、通知モジュール31eが本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まった旨を外部に通知等する。
2.許容値αの記録処理
次に、許容値αを算出してテーブルT1に記録する処理について説明する。許容値αのテーブルT1への記録は、異常判定処理を伴う印刷処理の実行よりも前に実行され、マイクロコンピューター31のROMに記憶されるものとする。許容値αは、少なくとも印刷モードに応じて異なる値が算出される。許容値αは、下記式(1)で表される。
α=(M2−M1)+k・(M3−M2) …(1)
次に、許容値αを算出してテーブルT1に記録する処理について説明する。許容値αのテーブルT1への記録は、異常判定処理を伴う印刷処理の実行よりも前に実行され、マイクロコンピューター31のROMに記憶されるものとする。許容値αは、少なくとも印刷モードに応じて異なる値が算出される。許容値αは、下記式(1)で表される。
α=(M2−M1)+k・(M3−M2) …(1)
M1は、給紙搬送メジャメント値であり、給紙搬送の期間におけるPFモーター14の負荷を示す値である。M2は、印字搬送メジャメント値であり、印字搬送の期間におけるPFモーター14の負荷を示す値である。M3は、異常時メジャメント値であり、所定の異常が発生した期間(本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まった状況)におけるPFモーター14の負荷を示す値である。これら給紙搬送メジャメント値M1、印字搬送メジャメント値M2、異常時メジャメント値M3も、それぞれの期間において負荷監視モジュール31bによって取得されるデューティー値dである。kは、(M3−M2)に乗算される所定の係数であり、本実施形態では、例えばk=1/2に設定されている。
本実施形態では、このような給紙搬送メジャメント値M1、印字搬送メジャメント値M2、異常時メジャメント値M3を予め計測することにより許容値αを算出しておく。つまりプリンター1は、様々な印刷条件で駆動することにより、印刷条件ごとに給紙搬送メジャメント値M1、印字搬送メジャメント値M2、異常時メジャメント値M3を計測し、計測した各メジャメント値M1,M2,M3に基づいて許容値αを算出し、算出した許容値αと印刷条件とを対応付けてテーブルT1に記録する。なお、異常時メジャメント値M3は、プリンター1の通常の動作においては計測できない値であるため、各印刷条件下で人為的あるいは機械的に本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まって印刷用紙が動かない状況を作り出し、かかる状況において駆動するPFモーター14の負荷を監視することにより取得する。
図3は、異なる2つの印刷モード(第一印刷モード、第二印刷モード)でプリンター1が印刷用紙を搬送したときにそれぞれ得られるデューティー値dの変動であって、フィードバック制御を開始してからの給紙搬送の期間、印字搬送の期間、上記所定の異常が発生した期間(異常発生期間)、それぞれにおけるデューティー値dの変動を簡易的に例示している。図3では、横軸に時間(制御ステップ)を示し、縦軸にデューティー値dを示している。デューティー値dの変動は、むろんデューティー比DRの変動と捉えることもできるし、PFモーター14に印加される電圧Vmの変動と捉えることもできる。
印刷モードが異なるとは、基本的に、印刷速度すなわち印刷用紙の搬送速度が異なることを意味する。印刷モードには、搬送速度が速いものから順に、例えば「高速モード」、「通常モード」、「きれいモード」、「静音モード・高精細モード」等がある。マイクロコンピューター31側からPID演算部32a2に与える目標速度は印刷モードの違いに応じて異なるため、印刷モードの違いに応じてPFモーター14の回転速度が異なることになる。
印刷モードが異なるとは、基本的に、印刷速度すなわち印刷用紙の搬送速度が異なることを意味する。印刷モードには、搬送速度が速いものから順に、例えば「高速モード」、「通常モード」、「きれいモード」、「静音モード・高精細モード」等がある。マイクロコンピューター31側からPID演算部32a2に与える目標速度は印刷モードの違いに応じて異なるため、印刷モードの違いに応じてPFモーター14の回転速度が異なることになる。
ここでは、第一印刷モードは、第二印刷モードよりも搬送速度が速いモードであるとして説明を行なう。図3では説明を簡単にするために、給紙搬送の期間におけるデューティー値dの変動については、第一印刷モードと第二印刷モードとで同じとしている。むろん、給紙搬送の目標速度を第一印刷モードと第二印刷モードとで異ならせることで、給紙搬送の期間におけるデューティー値dの変動について、第一印刷モードと第二印刷モードとで異なるようにしてもよい。給紙搬送の期間におけるデューティー値dの変動は、上昇して、略一定値で安定して、下降する、という変動を見せている。これは、給紙搬送における目標速度には、加速期間と定速期間と減速期間とが設けられているからである。つまり、プリンター1においては搬送速度が大きくなるほどPFモーター14の負荷が増大する関係があるため、デューティー値dと目標速度は、ほぼ同じように変動すると考えることができる。
プリンター1は、上記定速期間中の所定のメジャメント期間(定速期間内の数制御ステップの間)、負荷監視モジュール31bがデューティー値dを繰り返し計測(メジャメント)し、その平均値を給紙搬送メジャメント値M1として取得する。この給紙搬送メジャメント値M1は、図3の例では、第一印刷モード、第二印刷モードともに共通である。ただし、上述したように給紙搬送の目標速度が第一印刷モードと第二印刷モードとで異なる場合には、給紙搬送メジャメント値M1を、第一印刷モード、第二印刷モードそれぞれで取得する必要がある。
次に、プリンター1は、印字搬送の期間におけるデューティー値dの変動から、印字搬送メジャメント値M2を求める。印字搬送の期間においても上記と同様に定速期間があるため、かかる定速期間中の所定のメジャメント期間(定速期間内の数制御ステップの間)において負荷監視モジュール31bがデューティー値dを繰り返し計測(メジャメント)し、その平均値を印字搬送メジャメント値M2として取得する。図3に示すように、第一印刷モードの印字搬送におけるデューティー値dの変動(一点鎖線)と、第二印刷モードの印字搬送におけるデューティー値dの変動(二点鎖線)とは異なるため、プリンター1は、第一印刷モードの印字搬送メジャメント値M2(M2a)および第二印刷モードの印字搬送メジャメント値M2(M2b)を算出する。
さらに、プリンター1は、異常発生期間(異常発生期間中であって、デューティー値dが所定範囲内で安定する期間)においても、負荷監視モジュール31bがデューティー値dを繰り返し計測(メジャメント)し、その平均値を異常時メジャメント値M3として取得する。図3に示すように、第一印刷モードの異常発生期間におけるデューティー値dの変動(一点鎖線)と、第二印刷モードの異常発生期間におけるデューティー値dの変動(二点鎖線)とは異なるため、プリンター1は、第一印刷モードの異常時メジャメント値M3(M3a)および第二印刷モードの異常時メジャメント値M3(M3b)を算出する。このように、第一印刷モード、第二印刷モードそれぞれについて、各メジャメント値M1,M2,M3を得ることにより、プリンター1は、第一印刷モード、第二印刷モードそれぞれの許容値αを算出することができ、算出した各許容値αと各印刷モードとを対応付けてテーブルT1に記録する。なお図3の例においては、上記式(1)で算出される第一印刷モードの許容値αは正値となり、第二印刷モードの許容値αは負値となる(k=1/2の場合)。
上記では、印刷モードの違いに応じた許容値αを予め算出してテーブルT1に記録しておく場合について説明したが、さらにプリンター1は、許容値αを、印刷モードの違いに加え、印刷用紙の種類(用紙種類)およびまたは印刷用紙のサイズ(用紙サイズ)に応じて予め算出してテーブルT1に記録しておいてもよい。つまり、印刷処理に用いる用紙の種類やサイズが異なればPFモーター14の負荷も変る。そのため、上記監視値D2との比較に用いるしきい値Dthも、印刷処理に用いる用紙の種類やサイズの違いに応じて変えるべきだからである。
図4は、上記アプリケーションプログラムやプリンタードライバーを使用してユーザーが指定可能な、用紙種類と印刷モードとの組み合わせを例示している。図4においては、例えば、用紙を「普通紙」、印刷モードを「高速モード」に指定した場合、プリンター1は、給紙搬送は目標速度20ips(インチ/秒)で、印字搬送は目標速度20ipsでそれぞれ実行することを意味している。目標速度が記載されていない用紙種類と印刷モードとの組み合わせは、指定不能であることを意味している。
図5は、上記アプリケーションプログラムやプリンタードライバーを使用してユーザーが指定可能な、用紙種類と用紙サイズとの組み合わせを○印にて例示している。なお、ユーザーが実際に指定可能な用紙種類や用紙サイズは図5に示したもの以外にも有り得るが、そもそも印刷処理に際して異常判定処理を行なう必要がない用紙種類や用紙サイズについては、図5では記載を除外している。印刷処理に際して異常判定処理を行なう必要がない用紙種類や用紙サイズ、の意味については後述する。このような図4,5を例にした場合、例えば、印刷モード「高速モード」については、用紙種類は「普通紙」を指定することができ、用紙サイズは「A4」、「Letter」、「Legal」、「B5」の中から指定できる。また、印刷モード「高精細モード」であれば、用紙種類は「写真用紙1」、「写真用紙2」のいずれかを指定することができ、「写真用紙1」については用紙サイズを「A4」または「六つ切り」から指定することができ、「写真用紙2」については「A4」を指定できる。本実施形態では、このようにユーザーが指定可能な印刷モードと用紙種類と用紙サイズとの組み合わせの一つ一つについて、予め上記許容値αを算出し、テーブルT1に記録しておく。
図6,7は、上記のように算出した許容値αと印刷条件との対応関係を例示している。図6では、用紙種類が「普通紙」であり、印刷モードおよびまたは用紙サイズを変更した場合に得られる16通りの印刷条件(図4,5参照)と許容値αとの対応関係を示している。図7は、「普通紙」以外の用紙種類に関して、印刷モードおよびまたは用紙サイズを変更した場合に得られる8通りの印刷条件(図4,5参照)と許容値αとの対応関係を示している。図6から明らかなように、用紙種類が「普通紙」であるとき、印刷速度が比較的速いモード(高速モードおよび通常モード)の場合に算出される許容値αは全て正値となり、印刷速度が比較的遅いモード(きれいモード、静音モード)の場合に算出される許容値αは全て負値となることがわかる。これは、普通紙の印刷速度が比較的速いモード(高速モードおよび通常モード)の場合、給紙搬送と印字搬送との目標速度に差がないため(図4参照)、M2−M1が正値となる(目標速度が同じであれば、給紙搬送よりも一回あたりの搬送期間が短い印字搬送の方が時間あたりの加速が大きくなりやすい)傾向にある一方で、印刷速度が比較的遅いモード(きれいモード、静音モード)の場合、給紙搬送よりも印字搬送の目標速度の方がかなり遅く(図4参照)、M2−M1が負値となる傾向にあるからである。
また、図7に示すように、用紙種類が「普通紙」以外の場合は、全て許容値αは負値となっている。これは、用紙種類が「普通紙」以外の場合、いずれの印刷モードにおいても給紙搬送よりも印字搬送の目標速度の方がかなり遅く(図4参照)、M2−M1が負値となる傾向にあるからである。
ここで、デューティー比DR(=d/PWMcycle)は理論上、下記式(2)によって表すことができる。
DR={(Z/kt)・R+ke・ω}/Vc …(2)
ここで、デューティー比DR(=d/PWMcycle)は理論上、下記式(2)によって表すことができる。
DR={(Z/kt)・R+ke・ω}/Vc …(2)
式(2)において、ZはPFモーター14の動負荷、ktはPFモーター14のトルク定数、RはPFモーター14の巻線抵抗値、keはPFモーター14の逆起電圧定数、ωはPFモーター14の回転速度である。つまり、デューティー比DR(デューティー値d)の大きさは、ke・ω、すなわち印刷用紙の搬送速度に大きく依存すると言える。そのため、印刷モードの違い(特に、給紙搬送の目標速度と印字搬送の目標速度との差)によって、許容値α(および、許容値αに基準値D1を足すことで得られるしきい値Dth)が大きく変ることになる。例えば、図6を参照すると、用紙が「普通紙A4」の場合、印刷モードが「通常モード」であれば許容値αは409であり、「きれいモード」であれば許容値αは−208である。そのため、仮に基準値D1が共通であったとしても(実際には「通常モード」よりも「きれいモード」の方が給紙搬送の目標速度も遅いため、「通常モード」よりも「きれいモード」の方が基準値D1も小さくなる。)しきい値Dthは、「通常モードかつ普通紙A4」の方が「きれいモードかつ普通紙A4」の場合よりも高いものとなる。
3.異常判定処理を伴う印刷処理
図8は、プリンター1が実行する印刷処理を示すフローチャートである。
ステップS100においては、マイクロコンピューター31がホストコンピューター60から印刷データPDを取得する。ステップS105においては、しきい値設定モジュール31cが、少なくとも印刷データPDに含まれる印刷モードの指定を取得して当該指定にかかる印刷モードを以降の印刷処理における印刷モードとして設定するとともに、テーブルT1から当該指定に対応する許容値αを一つ選択して読み出す。むろん、テーブルT1において印刷モード、用紙種類、用紙サイズに応じて異なる許容値αが記録されている場合には、印刷データPDに含まれている印刷モード、用紙種類、用紙サイズの指定に対応する許容値αをテーブルT1から一つ選択して読み出す。
図8は、プリンター1が実行する印刷処理を示すフローチャートである。
ステップS100においては、マイクロコンピューター31がホストコンピューター60から印刷データPDを取得する。ステップS105においては、しきい値設定モジュール31cが、少なくとも印刷データPDに含まれる印刷モードの指定を取得して当該指定にかかる印刷モードを以降の印刷処理における印刷モードとして設定するとともに、テーブルT1から当該指定に対応する許容値αを一つ選択して読み出す。むろん、テーブルT1において印刷モード、用紙種類、用紙サイズに応じて異なる許容値αが記録されている場合には、印刷データPDに含まれている印刷モード、用紙種類、用紙サイズの指定に対応する許容値αをテーブルT1から一つ選択して読み出す。
ステップS110においては、給紙搬送を開始する。給紙搬送を開始し、印刷用紙の搬送方向先頭側の端部が中間ローラー19に到達すると、PF制御部32aによる前記フィードバック制御も開始される。むろん、ここでのフィードバック制御は、上記設定した印刷モードにおける目標速度に基づいて行なわれる。ステップS115においては、フィードバック制御を開始してからの制御ステップの数が所定の基準数Nsとなったか否かを判定する。上述したように給紙搬送における目標速度では、加速期間と定速期間と減速期間が設けられており、制御ステップの数の基準数Nsは定速期間の中に位置している。すなわち、制御ステップの数が基準数Nsになると、印刷用紙がある程度安定して定速搬送されていると考えることができる。
フィードバック制御を開始してからの制御ステップの数が所定の基準数Nsとなったと判定された場合(ステップS115において“Yes”)には、所定のメジャメント期間(定速期間内の数制御ステップの間)、負荷監視モジュール31bがデューティー値dを繰り返し計測(メジャメント)し、その平均値を基準値D1として取得する(ステップS117)。つまり、当該印刷処理の過程でも、給紙搬送メジャメント値M1を取得し、これを基準値D1とする。なお、当該ステップS117で取得する給紙搬送メジャメント値M1(基準値D1)と、上述したように許容値αを予め算出しておく際に取得する給紙メジャメント値M1とは、印刷モード、用紙種類、用紙サイズなどの印刷条件が同じであっても、厳密には同じ値とならないことがある。これは、プリンター1における用紙搬送のための各機構に経時変化が生じるためである。従って、当該印刷処理においては、過去(許容値αを予め算出した時)に取得した給紙搬送メジャメント値M1ではなく、現在のプリンター1において得られる給紙搬送メジャメント値M1を基準値D1として取得する。
ステップS120において、しきい値設定モジュール31cは、基準値D1に、上記ステップS105で読み出した許容値αを加算することにより、しきい値Dthを算出する。しきい値DthはRAMに記憶される。なお図3では、第一印刷モードのしきい値Dthおよび第二印刷モードのしきい値Dthをそれぞれ例示しているが、これらは許容値αを算出したときに取得した給紙搬送メジャメント値M1を基準値D1とみなした場合の各しきい値Dthであるため、あくまで理解を容易とするための目安である。
印刷用紙の搬送方向先頭側の端部がPEセンサー20に到達し、ステップS125においてPEセンサー20が印刷用紙の紙端を検出する。これにより給紙搬送が終了する。なお、ステップS125においてPEセンサー20が印刷用紙の搬送方向先頭側の端部を検出することにより、マイクロコンピューター31は、以降はPFローラー17の回転量に基づいて、印刷用紙の搬送方向先頭側の紙端の位置を特定することができる。また、印刷用紙のサイズ(長さ)が印刷データPDによって特定できるため、印刷用紙の搬送方向後方側の紙端の位置も特定することができる。
印刷用紙の搬送方向先頭側の端部がPEセンサー20に到達し、ステップS125においてPEセンサー20が印刷用紙の紙端を検出する。これにより給紙搬送が終了する。なお、ステップS125においてPEセンサー20が印刷用紙の搬送方向先頭側の端部を検出することにより、マイクロコンピューター31は、以降はPFローラー17の回転量に基づいて、印刷用紙の搬送方向先頭側の紙端の位置を特定することができる。また、印刷用紙のサイズ(長さ)が印刷データPDによって特定できるため、印刷用紙の搬送方向後方側の紙端の位置も特定することができる。
ステップS130において、マイクロコンピューター31は、印刷用紙の搬送方向後方側の端部の位置を特定する。最初の段階では、印刷用紙の搬送方向先頭側の端部がPEセンサー20の位置にあるため、搬送経路において、PEセンサー20の位置から印刷用紙の長さだけ搬送方向後方側の位置に、印刷用紙の搬送方向後端側の端部が位置することとなる。ステップS135において、マイクロコンピューター31は、印刷用紙の搬送方向後方側の端部が、給紙トレー40の上端40a2(図1参照)よりも上にあるか否かを判定する。印刷用紙の搬送方向後方側の端部が給紙トレー40の上端40a2よりも上方にある場合にはステップS140に進み、印刷用紙の搬送方向後方側の端部が給紙トレー40の上端40a2よりも下方にある場合にはステップS145に進む。ステップS140,S145においては、上記ステップS105で取得した指定にかかる印刷モード下での目標速度が搬送指示モジュール31aによってPID演算部32a2に設定され、PFモーター14に対する前記フィードバック制御が行われる。
これによりPFモーター14が駆動し、PFローラー17と中間ローラー19とが回転駆動し、印刷用紙が紙送りされる。最初の紙送りでは、頭出し搬送が行なわれ、印刷用紙における印刷開始位置に印字ヘッド21aが対向するように印刷用紙が搬送される。ステップS140,S145における一回分の紙送りが完了すると、ステップS160において、キャリッジ制御部32bがキャリッジ21や印字ヘッド21aを駆動制御する。すなわち、印刷用紙に対してインクを吐出してラスタラインを描画する主走査を行う。主走査が完了すると、ステップS165において印刷が完了したか否かを判定し、完了していない場合には、ステップS130に戻る。これにより、印刷が完了するまで、印字搬送(副走査)と主走査を繰り返して実行することができる。印刷が完了すると、図示しない排紙ローラーを駆動させて排紙搬送を行なって印刷用紙を排出し、印刷処理を終了させる。
ところで、ステップS140,S145においては同様に目標速度が設定されて紙送りが行われるが、ステップS145における紙送りの期間では、負荷監視モジュール31bが、常時、PWM部32a3が決定するデューティー値dを監視値D2として取得する。そして、ステップS150において、判定モジュール31dは、監視値D2がRAMに記憶された上記しきい値Dthよりも大きいか否かを判定する。監視値D2がしきい値Dthよりも大きい場合には、判定モジュール31dは、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まっており異常であると判定する。そして、ステップS155において、通知モジュール31eが本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まった旨を示す異常信号をホストコンピューター60に送信するとともに、PF制御部32aによるPFモーター14の駆動制御、および、キャリッジ制御部32bによるキャリッジ21や印字ヘッド21aの駆動制御等を停止させ、印刷処理を異常終了させる。また、通知モジュール31eは、本体部10に警告用LEDが備えられる場合には、警告用LEDを点灯させる。
図9は、以上説明した印刷処理におけるデューティー値dの変動を模式的に示している。図9に示すように、まず給紙搬送の際にデューティー値dが大きくなり、定速期間中のメジャメント期間においてデューティー値dが基準値D1として取得される。この基準値D1に印刷モード等に応じた許容値αを加算した値が、しきい値Dthとなる。給紙搬送が完了すると、次に紙送りが順次行われ、各紙送りの際にデューティー値dが大きくなる。最初の紙送りは、頭出し搬送である。初期の紙送りにおいては、印刷用紙の搬送方向後方側の端部が給紙トレー40の上端40a2よりも下方に位置するため、ステップS145において、常時、デューティー値d(監視値D2)が監視される。そして、監視値D2がしきい値Dthよりも大きくなった場合には、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったと判断し、印刷処理を異常終了させる。
本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まることなく正常に印刷用紙が搬送されていれば、紙送り期間においては、印刷モード等の印刷条件に応じて予め取得された上記印字搬送メジャメント値M2と同程度のデューティー値dが発生しているはずである。そのためデューティー値d(監視値D2)はしきい値Dthを下回る。しかしながら、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まった場合には、印刷用紙が搬送できなくなる(動けなくなる)。このとき、PFローラー17や中間ローラー19と印刷用紙との間でスリップが起きており、ロータリーエンコーダー33にて計測されるPFローラー17と中間ローラー19の回転量は正常であるものの、PFローラー17や中間ローラー19と印刷用紙との間の摩擦抵抗に抗してスリップを起こさせるだけの過剰な負荷(出力トルク)をPFモーター14が生じさせていることになる。
具体的には、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まった場合には、PFローラー17や中間ローラー19が目標速度で回転駆動するための負荷を生じさせるデューティー値d(印字搬送メジャメント値M2相当)に、摩擦抵抗に抗してスリップを起こさせるだけの負荷を生じさせる過剰なデューティー値d(異常時メジャメント値M3−印字搬送メジャメント値M2に相当)を上積みしたデューティー値d(監視値D2)によってPFモーター14が駆動されていると考えることができる。しきい値Dthは、基本的には、異常時メジャメント値M3と印字搬送メジャメント値M2との間に設定されている。そのため、しきい値Dthよりも監視値D2が大きくなる場合に本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったと判定することができる。PFモーター14を駆動させるためのデューティー値dは、そのとき設定されている印刷モードを始めとして、用紙種類、用紙サイズによって異なる。そのため、本実施形態のように、少なくとも印刷モードの違いに応じて、さらには用紙種類、用紙サイズの違いに応じて、許容値αをテーブルT1に規定しておき、印刷処理時の少なくとも印刷モードに応じた、さらには用紙種類、用紙サイズに応じた、しきい値Dthを設定することにより、どのような印刷条件においても誤判定を防止することができる。
なお、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まると、印刷用紙が正常に搬送できなくなるため、正常な印刷が行われないこととなる。そのため、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったと判断される場合には、印刷処理を終了させる。本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まることの原因は、ユーザーが印刷用紙の継ぎ足し等をしようとして印刷処理の最中に給紙トレー40を抜き挿しすることである。ただし、終盤の紙送りにおいては、印刷用紙の搬送方向後方側の端部が給紙トレー40の上端40a2よりも上方に位置することとなる。すなわち、もはや給紙トレー40の着脱位置から印刷用紙の搬送方向後方側の端部が離脱したこととなるため、この段階で給紙トレー40を挿しても本体部10との間に印刷用紙が挟まることはない。従って、印刷用紙の搬送方向後方側の端部が給紙トレー40の上端40a2よりも上方に位置する段階では、ステップS140において、デューティー値d(監視値D2)の監視を行うことなく紙送りを行う。すなわち、給紙トレー40の着脱位置から印刷用紙の搬送方向後方側の端部が離脱した段階で、デューティー値d(監視値D2)の監視を停止する。これにより、CPUの処理負荷を軽減させることができる。
印刷用紙の種類やサイズによっては、印刷処理に際して初めから異常判定処理を行なう必要がないものも存在する。つまり、搬送方向先頭側の端部がPEセンサー20に検知されたときに、搬送方向後方側の端部が給紙トレー40の上端40a2よりも上方に位置するような種類やサイズの印刷用紙に関しては、紙送り期間において印刷用紙が給紙トレー40と本体部10との間に挟まることはない。従って、プリンター1は、上記図8のフローチャートにおいてステップS100とステップS105との間に、印刷データPDに含まれている用紙種類や用紙サイズの指定と、予め情報として有するPEセンサー20と上記上端40a2との搬送経路上での距離と、に基づいて、紙送り期間において給紙トレー40と本体部10との間に挟まり得ない印刷用紙であるか否かの判定を行なうとしてもよい。そして、紙送り期間において給紙トレー40と本体部10との間に挟まり得ない印刷用紙であると判定した場合には、ステップS105以降に進むことなく、通常の印刷処理を行なってフローチャートを終了するとしてもよい。
図10は、給紙トレー40を本体部10に対して抜き挿しするタイミングと、異常判定の可能性との関係を示す表である。給紙搬送中に給紙トレー40を抜いた場合、それ以後において給紙トレー40が挿されることが考えられ得る。給紙搬送中に給紙トレー40を抜き、かつ、給紙搬送中に給紙トレー40を挿した場合、印刷用紙の搬送方向先頭側の端部はPEセンサー20に到達しない。そのため、ステップS125以降の処理が実行されず、異常な印刷が実行されることはない。給紙搬送を開始してからPEセンサー20が印刷用紙の端部を検出するまでの期間にタイムアウトを設けておき、タイムアウトとなった場合には用紙なしエラーを発する構成としてもよい。給紙搬送中に給紙トレー40を抜き、かつ、頭出し搬送中に給紙トレー40を挿した場合、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことが検出できないと、プラテン22(印字ヘッド21aの対向位置まで印刷用紙が搬送される前の場合)や、印刷用紙の同一位置(印字ヘッド21aの対向位置まで印刷用紙が搬送される後の場合)に繰り返して印字が行われることとなる。
これに対して、本実施形態では、頭出し搬送中にもデューティー値d(監視値D2)の監視を行うため、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことを検知することができる。また、給紙搬送中に給紙トレー40を抜き、かつ、印字搬送中(頭出し搬送中以外)に給紙トレー40を挿した場合にも、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことが検出できないと、印刷用紙の同一位置に繰り返して印字が行われることとなるが、印字搬送中にも上記監視を行うため、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことを検知することができる。なお、給紙搬送中におけるメジャメント期間(ステップS117)において給紙トレー40を抜いた場合には、メジャメント期間において印刷用紙に作用する力の状態が複雑となるため、基準値D1の精度が低下することとなる。そのため、メジャメント期間におけるデューティー値dのばらつきが大きい場合には、基準値D1の算出を回避し、過去の基準値D1を使用するようにしてもよい。なお、同一の印刷条件で複数枚印刷する場合は、基準値D1のメジャメントは印刷用紙を給紙搬送するごとに行う必要はなく、例えば、印刷用紙を一定枚数給紙するごとに基準値D1のメジャメントを行うようにしてもよいし、一定時間ごとに基準値D1のメジャメントを行うようにしてもよい。
次に、頭出し搬送中に給紙トレー40を抜いた場合、それ以後において給紙トレー40が挿されることが考えられ得る。頭出し搬送中に給紙トレー40を抜き、かつ、頭出し搬送中に給紙トレー40を挿した場合も、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことが検出できないと、プラテン22や、印刷用紙の同一位置に繰り返して印字が行われることとなる。これに対して、本実施形態では、頭出し搬送中にも上記監視を行うため、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことを検知することができる。また、頭出し搬送中に給紙トレー40を抜き、かつ、印字搬送中(頭出し搬送中以外)に給紙トレー40を挿した場合にも、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことが検出できないと、印刷用紙の同一位置に繰り返して印字が行われることとなるが、印字搬送中にも上記監視を行うため、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことを検知することができる。
さらに、印字搬送中(頭出し搬送中以外)に給紙トレー40を抜いた場合、印字搬送中(頭出し搬送中以外)において給紙トレー40が挿されることが考えられ得る。この場合も、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことが検出できないと、印刷用紙の同一位置に繰り返して印字が行われることとなる。これに対して、本実施形態では、印字搬送中(頭出し搬送中以外)にも上記監視を行うため、本体部10と給紙トレー40との間に印刷用紙が挟まったことを検知することができる。
4.変形例
上述した実施形態では、負担監視モジュール31bは、PWM部32a3が出力するディーティー比DRにおけるデューティー値dを監視するようにしたが、ディーティー比DRを監視して、各メジャメント値M1,M2,M3、基準値D1、監視値D2を取得してもよい。あるいは、負担監視モジュール31bは、PFモーター14における電圧Vmを監視して各メジャメント値M1,M2,M3、基準値D1、監視値D2を取得してもよいし、PFモーター14における電流Imを監視して各メジャメント値M1,M2,M3、基準値D1、監視値D2を取得してもよい。さらに、PID演算部32a2がPWM部32a3に出力する制御電圧を計測することにより、PFモーター14の駆動電源を間接的に監視するようにしてもよい。
上述した実施形態では、負担監視モジュール31bは、PWM部32a3が出力するディーティー比DRにおけるデューティー値dを監視するようにしたが、ディーティー比DRを監視して、各メジャメント値M1,M2,M3、基準値D1、監視値D2を取得してもよい。あるいは、負担監視モジュール31bは、PFモーター14における電圧Vmを監視して各メジャメント値M1,M2,M3、基準値D1、監視値D2を取得してもよいし、PFモーター14における電流Imを監視して各メジャメント値M1,M2,M3、基準値D1、監視値D2を取得してもよい。さらに、PID演算部32a2がPWM部32a3に出力する制御電圧を計測することにより、PFモーター14の駆動電源を間接的に監視するようにしてもよい。
図11は、変形例にかかるプリンター101の構造を概略的に示す図である。図11においては、図1と同じ構成については図1と同じ符号を付している。プリンター101は能動的に回転駆動する中間ローラーを備えておらず、搬送ガイド13にて湾曲する印刷用紙の内側および外側にそれぞれ中間従動ローラー119a1,119a2が備えている。このように能動的に回転駆動する中間ローラーが備えられない場合であっても、印刷用紙が本体部10と給紙トレー40との間に挟まった場合には、PFモーターの負荷が増大し、上記デューティー値dが増大する。従って、前述の実施形態と同様の手法によって、印刷用紙が本体部10と給紙トレー40との間に挟まったと判定することができる。
さらに、本変形例においては、PEセンサー20の付近に紙種センサー139が備えられている。本変形例の紙種センサー139は、印刷用紙に対して検査光を照射し、該検査光の反射状態を観測することにより、印刷用紙の種類を判定する方式を採用する。本変形例においても、しきい値設定モジュール31cが基準値D1に許容値αを加算することによりしきい値Dthを設定するが、紙種センサー139が判定した印刷用紙の種類に対応する許容値αがテーブルT1から取得される。このようにすることにより、適切なしきい値Dthを設定することができるため、誤判定を防止することができる。
図12は、変形例にかかるプリンター201の構造を概略的に示す図である。図12においては、図1と同じ構成については図1と同じ符号を付している。プリンター201は能動的および従動的に回転する中間ローラーおよび中間従動ローラーのいずれも備えていない。このような場合であっても、印刷用紙が本体部10と給紙トレー40との間に挟まった場合には、PFモーターの負荷が増大し、上記デューティー値dが増大する。従って、前述の実施形態と同様の手法によって、印刷用紙が本体部10と給紙トレー40との間に挟まったと判定することができる。
図13は、比較例にかかるプリンター301の構造を概略的に示す図である。図13においては、図1と同じ構成については図1と同じ符号を付している。プリンター301は能動的に回転駆動する中間ローラー319を、搬送ガイド13にて湾曲する印刷用紙の内側に備えている。中間ローラー319に対応して、湾曲する印刷用紙の外側に中間従動ローラー319aが備えられている。本比較例でも、中間ローラー319とPFローラー17はともにPFモーターに結合されており、PFモーターの駆動により中間ローラー319とPFローラー17が回転駆動する。中間ローラー319は、PFローラー17よりも径が大きいが、中間ローラー319とPFローラー17による印刷用紙の搬送速度が一致するようにギア比等が設定されている。このような構成において印刷用紙が本体部10と給紙トレー40との間に挟まった場合には、PFローラー17が回転駆動することにより、印刷用紙を引っ張る張力が作用し、中間ローラー319が内側に向かって押圧されることとなる。すると、中間ローラー319と印刷用紙との間や中間ローラー319の回転軸まわりに大きな摩擦抵抗が生じ、PFモーターが駆動不能となる。このような場合には、PFローラー17も回転しなくなるため、本発明の手法を用いることなく、ロータリーエンコーダーによる回転量の検出によって異常を判定することができる。
1…プリンター、10…本体部、10a…凹部、12…PUローラー、13…搬送ガイド、14…PFモーター、15…モータードライバー、17…PFローラー、17a…PF従動ローラー、19…中間ローラー、19a…中間従動ローラー、20…PEセンサー、21…キャリッジ、21a…印字ヘッド、22…プラテン、30…外部I/F、31…マイクロコンピューター、31a…搬送指示モジュール、31b…負荷監視モジュール、31c…しきい値設定モジュール、31d…判定モジュール、31e…通知モジュール、32…ASIC、32a…PF制御部、32a1…搬送速度演算部、32a2…PID演算部、32a3…PWM部、32b…キャリッジ制御部、32c…PU制御部、33…ロータリーエンコーダー、40…給紙トレー、40a…用紙収容部、40a1…斜面、40a2…上端、60…ホストコンピューター
Claims (8)
- 印刷媒体を収容するとともに、本体部に対して着脱可能な給紙トレーを備える印刷装置であって、
上記給紙トレーから搬送経路に供給される印刷媒体に接しつつ搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、
上記搬送の速度が異なる複数の印刷モードの中から印刷モードを設定する印刷条件設定部と、
上記設定された印刷モードおよび上記搬送ローラーの回転量に基づいて、上記搬送モーターの駆動を制御する制御部と、
少なくとも上記設定された印刷モードに応じたしきい値を設定するしきい値設定部と、
上記印刷媒体が搬送される期間において上記搬送モーターの負荷を示す監視値を計測し、当該監視値が上記設定されたしきい値よりも大きいとき異常であると判定する判定部とを備えることを特徴とする印刷装置。 - 上記しきい値設定部は、上記印刷媒体が上記搬送経路の所定の給紙搬送終了位置まで搬送される期間における搬送モーターの負荷を示す給紙搬送メジャメント値と、少なくとも上記設定された印刷モードに応じて異なる許容値と、の和を上記しきい値として設定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
- 上記しきい値設定部は、少なくとも印刷モードに応じて予め算出された複数の上記許容値であって、印字処理のために印刷媒体が搬送される期間における搬送モーターの負荷を示す印字搬送メジャメント値と上記給紙搬送メジャメント値との差および、所定の異常が発生した状況における搬送モーターの負荷を示す異常時メジャメント値と当該印字搬送メジャメント値との差、に基づいて算出された上記複数の許容値の中から、上記設定された印刷モードに対応する許容値を選択し、当該選択した許容値を用いて上記しきい値を設定することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
- 上記しきい値設定部は、印刷モードの違いに加え、印刷媒体の種類およびまたは印刷媒体のサイズに応じてしきい値を設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
- 設定可能な印刷モードとして、少なくとも第一印刷モードと、当該第一印刷モードよりも搬送の速度が遅い第二印刷モードとを備え、
上記しきい値設定部は、上記印刷媒体の種類が普通紙であってかつ印刷モードが第一印刷モードに設定されている場合には、印刷媒体の種類が普通紙であってかつ印刷モードが第二印刷モードに設定されている場合に設定するしきい値よりも、高いしきい値を設定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。 - 上記判定部は、上記印刷媒体が上記搬送経路の所定の給紙搬送終了位置まで搬送された以降において、上記監視値を計測することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の印刷装置。
- 上記判定部は、上記印刷媒体を搬送する期間のうち、印刷媒体の搬送方向後方の端部が上記給紙トレーの着脱位置から離脱した後の期間においては、上記監視値の計測を停止することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の印刷装置。
- 印刷媒体を収容するとともに、本体部に対して着脱可能な給紙トレーを備える印刷装置が実行する異常判定方法であって、
上記印刷装置は、
上記給紙トレーから搬送経路に供給される印刷媒体に接しつつ搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、
設定された印刷モードおよび上記搬送ローラーの回転量に基づいて、上記搬送モーターの駆動を制御する制御部とを備え、
上記搬送の速度が異なる複数の上記印刷モードの中から印刷モードを設定し、少なくとも上記設定した印刷モードに応じたしきい値を設定し、上記印刷媒体が搬送される期間において上記搬送モーターの負荷を示す監視値を計測し、当該監視値が上記設定したしきい値よりも大きいとき異常であると判定することを特徴とする異常判定方法。
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