JP2011106536A - スタビライザ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】騒音特性が良く、組立性に優れた安価なスタビライザ装置を提供する。
【解決手段】第1および第2のプーリ2,3間のチェーン4の弦領域4bの振動を抑制するスタビライザ装置6が、弦領域4bを挿通させた筒状のスタビライザ7と、チェーン4の内周41と対向する内規制部材7と、チェーン4の外周42と対向する外規制部材9とを備える。スタビライザ7は、弦領域4bに沿って延び弦領域4bによって支持される。内規制部材7は、弦領域4bの走行方向Xへの、スタビライザ7の所定範囲の移動を許容する。外規制部材9は、スタビライザ7と接触することにより、走行方向Xとは交差する弦振動方向Yの外方への、弦領域4bの移動範囲を規制する。
【選択図】図1

Description

本発明はスタビライザ装置に関する。
動力伝達装置として、プライマリープーリと、セカンダリープーリと、これらプライマリープーリおよびセカンダリープーリの間に巻き掛けられたチェーン等の伝動部材と、これらを収容するケーシングとを備える無段変速機がある。各プーリは、固定シーブおよび可動シーブにより構成され、各シーブはそれぞれ円錐面状シーブ面を有している。
この種の動力伝達装置では、伝動部材のうちプーリ間にある弦領域(直線領域)は、プーリにより動きを規制されていないので、振動(いわゆる弦振動)を生じ易い。特に、伝動部材がプーリに噛み込むときやプーリから離脱するとき(すなわち伝動部材の拘束状態と非拘束状態とが切り換わるとき)において、伝動部材の姿勢変化が激しく、これにより弦振動を引き起し易い。このような弦振動により、例えば3000〜4000Hzの周波数域の耳障りな音が発生し、騒音の原因となる。
そこで、ケーシングに固定されたボスによって回転可能に支持され、伝動部材の内周に対向するガイドローラと、伝動部材を挟んでガイドローラに対向するようにケーシングに固定された固定ガイド片とを備えた無段変速機が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
また、伝動部材を挿通させるガイドレールを、ケーシングによって固定された固定ピンによって、旋回可能に且つ伝動部材の走行方向とは直交する弦振動方向に移動可能に支持した無段変速機が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
特開平11−344089号公報 特開2000−304115号公報
特許文献1では、弦振動方向に関する位置が固定された2部材(ガイドローラと固定ガイド片)によって、弦領域の振動を、弦領域の走行方向の一部の領域(ガイドローラに対する接触点近傍の領域)で局所的に抑制する効果はあるが、ガイドローラに対する接触点を挟んだ、伝動部材の走行方向の前後の弦領域での弦振動を抑制することができない。
特許文献2では、弦振動は低減するが、ガイドレールに固定されたU字状部の内周が、上記のボスに常時接触しているので、弦振動に伴う音の周波数域はあまり変化せず、したがって、耳障りな音が残るため、騒音特性が悪いという問題がある。また、ガイドレールをボスに嵌め込む作業が必要であるため、組立性が悪く、製造コストが高くなるという問題もある。
さらに、特許文献2では、変速に伴ってガイドレールが姿勢変化するときの遠心力により、ガイドレールが弦振動方向の外方へ振られる場合がある。そのガイドレールの、弦振動方向の外方への移動が規制されていないので、弦振動を抑制することができない。
本発明は、かかる背景のもとになされたものであり、騒音特性が良く、組立性に優れた安価なスタビライザ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、ケーシング(5)によって支持された第1および第2のプーリ(2,3)間に巻き掛けられた伝動部材(4)の弦領域(4b)の振動を抑制するスタビライザ装置(6,6A,6B)において、上記伝動部材の弦領域に沿って延びる長尺の案内面(26)を有して上記弦領域によって支持され、上記弦領域の走行方向(X)への移動に伴って上記走行方向へ移動可能なスタビライザ(7;7A)と、上記伝動部材の内周(41)に対向するように上記ケーシングに固定された内規制部材(8)と、上記伝動部材の外周(42)に対向するように上記ケーシングに固定された外規制部材(9;9B)と、を備え、上記内規制部材および上記外規制部材の何れか一方は、スタビライザに設けられた被規制部(71,72)と当接することにより、上記走行方向への上記スタビライザの移動範囲を規制し、上記外規制部材は、上記伝動部材の上記外周または上記スタビライザと接触することにより、上記走行方向とは交差する弦振動方向(Y)への、上記弦領域の移動範囲を規制することを特徴とするスタビライザ装置を提供するものである。
本発明では、スタビライザが弦領域に沿って延びる長尺の案内面を有しているので、弦領域の広い範囲にわたって弦振動の発生を抑制することができる。また、弦振動方向の外方へのスタビライザないし伝動部材の移動範囲を規制することができるので、弦振動の発生をより確実に抑制することができる。さらに、スタビライザは弦領域によって支持され、ケーシングには支持されないので、弦領域の固有振動数を高くすることができる。したがって、仮に可聴域ではあっても耳障りな音ではない周波数域(例えば8000Hz以上)に固有振動数を設定することも可能となり、不快感のない騒音特性に向上することができる。また、スタビライザが弦領域によって支持されるので、ケーシング等への組み付け作業が不要となり、組立性が向上し、製造コストを安くすることができる。
また、上記スタビライザは、上記伝動部材の上記内周または上記外周に対向し上記案内面を有する対向壁(21)と、上記対向壁に設けられ、上記内規制部材および上記外規制部材の何れか一方を挟んで上記走行方向に離隔する上記被規制部としての一対の突起(71,72)を含む場合がある(請求項2)。この場合、内規制部材および外規制部材の何れか一方と一対の突起とによって、上記走行方向へのスタビライザの移動範囲を規制することができる。
また、上記内規制部材および上記外規制部材は、変速に拘らず位置が概ね変化しない上記伝動部材の領域(P2)を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている場合がある(請求項3)。この場合、ケーシングに固定される内規制部材および外規制部材が、変速に伴う伝動部材やスタビライザの姿勢変化を許容することができる。
また、上記スタビライザは、上記弦領域を挿通させる挿通路(25)を区画するように筒状をなし、上記外規制部材は、上記スタビライザを介して上記弦振動方向への、上記伝動部材の移動範囲を規制する場合がある(請求項4)。この場合、筒状のスタビライザが弦領域の周囲を取り囲むので、弦振動の抑制効果を高くすることができる。また、外規制部材が、弦領域の弦振動をスタビライザを介して間接的に受けるので、衝突音を低減しつつ弦振動を効果的に抑制することでき、騒音を確実に低減することができる。
また、上記スタビライザは、上記伝動部材の上記内周に対向する平板状をなしており、上記外規制部材は、上記伝動部材の上記外周に接触することにより、上記弦振動方向への、上記伝動部材の移動範囲を規制する場合がある(請求項5)。この場合、スタビライザの構造を簡素化でき、製造コストを安くすることができる。また、スタビライザを軽量化でき、スタビライザが伝動部材とともに姿勢変化するときの慣性を低減でき、この点からも、弦振動の抑制に寄与することができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
本発明の一実施の形態のスタビライザ装置を含む、動力伝達装置としての無段変速機の概略構成を示す模式的正面図である。 図1の無段変速機の一部破断模式的下面図である。 スタビライザ装置の概略断面図である。 図3のIV−IV線に沿う概略断面図である。 チェーンの模式的な側面図である。 無段変速機の要部の模式的側面図であり、(a)はオーバードライブ時で且つ増速比が最大のときを示し、(b)アンダードライブ時で且つ減速比が最大のときを示している。 本発明の別の実施の形態のスタビライザ装置を含む、動力伝達装置としての無段変速機の概略構成を示す模式的正面図である。 本発明のさらに別の実施の形態のスタビライザ装置を含む、動力伝達装置としての無段変速機の概略構成を示す模式的正面図である。
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスタビライザ装置を含む、動力伝達装置としての無段変速機の概略構成を示す模式的正面図である。また、図2は、無段変速機1の一部破断模式的下面図である。
図1および図2を参照して、無段変速機1は、自動車等の車両に搭載されるものであり、第1のプーリ2(プライマリープーリ)と、第2のプーリ3(センカダリープーリ)と、両プーリ2,3間に巻き掛けられた無端状の伝動部材としての例えば金属製のチェーン4と、両プーリ2,3およびチェーン4を収容したケーシング5と、チェーン4の弦振動を抑制するためのスタビライザ装置6とを備えている。チェーン4は、直線領域として、例えば上側となる張り側の弦領域4aと、例えば下側となる弛み側の弦領域4bとを備えている。
スタビライザ装置6は、弛み側の弦領域4bを挿通させた筒状のスタビライザ本体70を有するスタビライザ7と、スタビライザ7のスタビライザ本体70に設けられた被規制部としての一対の被規制突起71,72に係合することにより、弦領域4bの走行方向Xへのスタビライザ7の移動範囲を規制する内規制部材8と、上記走行方向Xとは直交する弦振動方向Yの外方へのスタビライザ7の移動範囲を規制する外規制部材9とを備えている。内規制部材8は、例えば円柱状その他の棒状をなし、チェーン4の内周41に対向し、外規制部材9は、例えば円柱状その他の棒状をなし、チェーン9の外周42に対向している。
本実施の形態では、スタビライザ7が、弛み側の弦領域4bに取り付けられる場合に則して説明するが、上記のスタビライザ7を、上記のスタビライザ7を、張り側の弦領域4aおよび弛み側の弦領域4bの双方に取り付けるようにしてもよいし、張り側の弦領域4aのみに取り付けるようにしてもよい。
図2に示すように、第1のプーリ2は、車両の駆動源10に動力伝達可能に連なる入力軸11(第1のプーリ2の中心軸に相当)に同行回転可能に取り付けられている。第1のプーリ2は、シーブ面12aを有する固定シーブ12と、シーブ面13aを有する可動シーブ13とを備えている。一対のシーブ面12a,13aは互いに対向している。これらシーブ面12a,13a間に溝G1が形成されている。チェーン4は、この溝G1内において、一対のシーブ面12a,13a間に強圧に挟まれて保持されている。
可動シーブ13には、溝幅(溝G1の幅)を変更するための第1の油圧アクチュエータA1が接続されている。第1の油圧アクチュエータA1は、入力軸11の軸方向に可動シーブ13を移動させて、溝幅を変化させることができる。溝幅を変化させることで、入力軸11の径方向にチェーン4を移動させて、第1のプーリ2のチェーン4に関する有効半径(以下、「第1のプーリ2の有効半径」ともいう。)を変更させることができる。
一方、第2のプーリ3は、駆動輪( 図示せず)に動力伝達可能に連なる出力軸14(第2のプーリ3の中心軸に相当)に同行回転可能に取り付けられている。第2のプーリ3は、シーブ面15aを有する固定シーブ15と、シーブ面16aを有する可動シーブ16とを備えている。一対のシーブ面15a,16aは互いに対向している。これらシーブ面15a,16a間に溝G2が形成されている。チェーン4は、この溝G2内において、一対のシーブ面15a,16a間に強圧に挟まれて保持されている。
第2のプーリ3の可動シーブ16には、第2の油圧アクチュエータA2が接続されている。第2の油圧アクチュエータA2は、溝幅(溝G2の幅)を変化させることで、出力軸14の径方向にチェーン4を移動させて、第2のプーリ3のチェーン4に関する有効半径(以下、「第2のプーリ3の有効半径」ともいう。)を変更させることができる。
駆動源10から入力軸11に回転駆動力が入力されると、入力軸11および第1のプーリ2が同行回転する。そして、この第1のプーリ2の回転は、チェーン4を介して、第2のプーリ3に伝達される。無段変速機1は、第1のプーリ2の有効半径および第2のプーリ3の有効半径を変更させることにより、変速比(第2のプーリ3の回転速度/第1のプーリ2の回転速度)を連続的に変化させることができる。
また、無段変速機1は、第1のプーリ2の回転速度を検出する第1の回転速度センサ17と、第2のプーリ3の回転速度を検出する第2の回転速度センサ18と、第1および第2の回転速度センサ17,18からの信号に基づいて、各プーリ2,3のクランプ力を制御する制御部19とを備えている。
図3および図3のIV−IV線に沿う断面図である図4を参照して、スタビライザ7は、チェーン4の弦領域4bが若干の遊びを有して挿通可能なように、チェーン4の弦領域4bに沿って延びる例えば断面方形の長尺の筒状のスタビライザ本体70を有している。スタビライザ7は、例えば2つ割り形状とされて、両プーリ2,3間に巻き掛けられた後のチェーン4に取り付けられる。スタビライザ7の材質は金属でもよいし、合成樹脂でもよい。2つ割り形状を一体化するには、嵌め合わせでもよいし、溶接または融着でもよいし、ねじ止めとしてもよい。
スタビライザ7は、チェーン4の内周に対向する内対向壁21と、チェーン4の外周に対向する外対向壁22と、内対向壁21および外対向壁22の対向端部間をそれぞれ連結する一対の側壁23,24とを有している。これら内対向壁21、外対向壁22および一対の側壁23,24によって、チェーン4の弦領域4bを挿通させる挿通路25を区画する筒状のスタビライザ本体70が構成されている。挿通路25の内面が弦領域4bの走行を案内する案内面26となる。すなわち、案内面26は、内対向壁21、外対向壁22および一対の側壁23,24の内面により構成されている。
また、スタビライザ7は、チェーン4の走行方向Xへの移動に伴ってその移動方向に移動可能とされているとともに、走行方向Xおよびその反対方向に関して、所定量以上の移動が上記の内規制部材8により規制されている。具体的には、内規制部材8は、内対向壁21に対向するようにケーシング5に固定されており、スタビライザ7の内対向壁21には、内規制部材8を挟んで走行方向Xに離隔する被規制部としての上記の一対の被規制突起71,72が設けられている。
内規制部材8は、変速に拘らずその位置が概ね変化しないチェーン4の領域(具体的には、後述する図5の中間点P2に相当)に対向するように配置されている。内規制部材8は、上記のように走行方向Xに関するスタビライザ7の移動量を規制する機能の他、走行方向X(図3参照)およびチェーン4の幅方向W(図4参照)の双方と交差(直交)する弦振動方向Yの一方(内方)へのスタビライザ7の移動量を規制している。
図3および図4を参照して、チェーン4は、複数のリンク35と、これらのリンク35を互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材36とを備えている。各リンク35は、概ね矩形状に形成された例えば鋼板製の板状の部材である。図3に示すように、各リンク35には、走行方向Xの前後に並ぶ前貫通孔37および後貫通孔38が形成されている。
リンク35は、互いに平行とされた状態でチェーン4の幅方向Wに並べられている。リンク35は、複数の列を形成している。これらの列は、走行方向Xに並んで配置されている。走行方向Xに隣接するリンク35を幅方向Wから見ると、後方側のリンク35の前貫通孔37と前方側のリンク35の後貫通孔38とは、互いに重なり合っている。各連結部材36は、幅方向Wに重なり合う複数の前貫通孔37および後貫通孔38に嵌合されている。走行方向Xに隣接するリンク35は、連結部材36によって、互いに屈曲可能に連結されている。
各連結部材36は、第1の動力伝達部材としての第1のピン39と、この第1のピン39と対をなす第2の動力伝達部材としての第2のピン40とを含む。第1および第2のピン39,40は、それぞれ、幅方向Wに延びる長尺(板状)の部材である。第1および第2のピン39,40は、例えば、軸受用鋼(SUJ)等の高強度耐摩耗材料で形成されている。対をなす第1および第2のピン39,40は、対応するリンク35間の屈曲に伴い、互いに転がり摺動接触するようになっている。転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触状態をいう。
図4に示すように、第1のピン39は、第2のピン40よりも長くされている。第1のピン39の一対の端面39a,39bは、それぞれ、第2のピン40の一対の端面40a,40bよりもチェーン4の幅方向Wの外側に突出している。
図2を参照して、第1のピン39は、一対のシーブ面(シーブ面12aとシーブ面13a、または、シーブ面15aとシーブ面16a)間に挟持される。第2のピン40の一対の端面40a,40bは、図示していないが、各プーリ2,3の対応するシーブ面12a,13a,15a,16aに潤滑油膜を介して摩擦接触(係合)する。
図5は、チェーン4の模式的な側面図であり、第1のプーリ2の中心軸線C1(第1のプーリ2の中心軸としての入力軸11の中心軸線に相当)および第2のプーリ3の中心軸線C2(第2のプーリ3の中心軸としての出力軸14の中心軸線に相当)に平行な方向に沿ってチェーン4を見た概略図である。
図5において、実線で示されたチェーン4は、無段変速機1の変速比が1であるとき(等速時)のチェーン4の位置を示している。また、二点鎖線で示されたチェーン4は、アンダードライブ時で且つ無段変速機1の減速比が最も高いときのチェーン4の位置を示している。また、破線で示されたチェーン4は、オーバードライブ時で且つ無段変速機1の増速比が最も高いときのチェーン4の位置を示している。
図5の破線および図6(a)に示されるオーバードライブ時で且つ増速比が最大のときには、第1のプーリ2の有効半径R1が最大とされ、第2のプーリ3の有効半径R2が最小とされる。各弦領域4a,4bにおけるチェーン4の傾斜角は、増速比の変化に伴って変化していき、オーバードライブ時において、増速比が最大のときに最大値となる。
図5の一点鎖線および図6(b)に示されるアンダードライブ時で且つ減速比が最大のときには、第1のプーリ2の有効半径R1が最小とされ、第2のプーリ3の有効半径R2が最大とされる。各弦領域4a,4bにおけるチェーン4の傾斜角は、減速比の変化に伴って変化していき、アンダードライブ時において、減速比が最大のときに最大値となる。
図5に示すように、張り側の弦領域4aが、無段変速機1の変速比の変化に伴って、当該弦領域4aの中間点P1を回動中心として回動する。また、弛み側の弦領域4bが、無段変速機1の変速比の変化に伴って、当該弦領域4bの中間点P2を回動中心として回動する。
中間点P1,P2は、各プーリ2,3の中心軸線C1,C2と平行な方向に沿ってみた場合に、変速に拘らず位置が概ね変化しない位置となっている。スタビライザ7の走行方向Xへの移動を規制する内規制部材8、およびスタビライザ7の弦振動方向Yの外方への移動を規制する外規制部材9は、図6(a)に示すオーバードライブで且つ増速比が最大のときと図6(b)に示すアンダードライブで減速比が最大のときとの間で、位置が概ね変化しない、弦領域4bの中間点P2を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。
図2を参照して、第1のピン39は、一対のシーブ面(シーブ面12aとシーブ面13a、または、シーブ面15aとシーブ面16a)間に挟持される。図示していないが、第2のピン40の一対の端面40a,40bは、各プーリ2,3の対応するシーブ面12a,13a,15a,16aに潤滑油膜を介して摩擦接触(係合)する。
駆動源10から第1のプーリ2に入力された駆動力は、第1のピン39の一対の端面39a,39bを介して、チェーン4に伝達される。また、チェーン4に伝達された駆動力は、第1のピン39の一対の端面39a,39bを介して、第2のプーリ3に伝達される。
本実施の形態によれば、スタビライザ7が、弦領域4bに沿って延びチェーン4の走行を案内する長尺の案内面26を有しているので、走行方向Xに関して弦領域4bの広い範囲にわたって弦振動の発生を抑制することができる。
また、内規制部材8および外規制部材9によって、それぞれ、弦振動方向Yの内方および外方へのスタビライザ7の移動範囲を規制することができるので、弦振動の発生をより確実に抑制することができる。
さらに、スタビライザ7は弦領域4bによって支持され、ケーシング5には支持されないので、弦領域4bの固有振動数を高くすることができる。したがって、仮に可聴域ではあっても耳障りな音ではない周波数域(例えば8000Hz以上)に固有振動数を設定することも可能となり、不快感のない騒音特性に向上することができる。また、スタビライザ7が弦領域によって支持されるので、ケーシング5等への組み付け作業が不要となり、組立性が向上し、製造コストを安くすることができる。
また、スタビライザ7が、内規制部材8を挟んで走行方向Xに離隔する被規制部としての一対の突起71,72を有しているので、内規制部材8と一対の突起71,72の働きで、走行方向Xへのスタビライザ7の移動範囲を規制することができる。
また、内規制部材8および外規制部材9が、変速に拘らず位置が概ね変化しないチェーン4の領域に相当する中間点P2を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されているので、ケーシング5に固定される内規制部材8および外規制部材9が、変速に伴うチェーン4やスタビライザ7の姿勢変化を許容することができる。
また、スタビライザ7は、弦領域4bを挿通させる挿通路25を区画する筒状のスタビライザ本体70を含み、外規制部材9が、スタビライザ7のスタビライザ本体70を介して弦振動方向Yへの、チェーン4の移動範囲を規制するようにしている。この場合、スタビライザ7が弦領域4bの周囲を取り囲むので、弦振動の抑制効果を高くすることができる。また、外規制部材9が、弦領域4bの弦振動をスタビライザ7を介して間接的に受けるので、衝突音を低減しつつ弦振動を効果的に抑制することでき、騒音を確実に低減することができる。
次いで、図7は本発明の別の実施の形態を示している。図7を参照して、本実施の形態が図7の実施の形態と異なるのは、スタビライザ装置6Aのスタビライザ7Aが、チェーン4の弦領域4bの内周41に対向して走行方向Xに長尺に延びる平板状のスタビライザ本体70Aを含み、外規制部材9が、チェーン4の外周42に接触することにより、弦振動方向Yの外方への、チェーン4の移動範囲を規制するようにした点である。
本実施の形態では、スタビライザ7Aの構造を簡素化でき、材料費の低減を通じて製造コストを安くすることができる。また、スタビライザ7Aを軽量化でき、スタビライザ7Aがチェーン4とともに姿勢変化するときの慣性を低減でき、この点からも、弦振動の抑制に寄与することができる。
図7の実施の形態では、円柱状等の棒状の外規制部材9を用いたが、図8に示すように、両プーリ2,3の中心軸線C1,C2(すなわち入力軸11および出力軸14の中心軸線)を含む平面に平行に延びる平板状の外規制部材9Bを用いてスタビライザ装置6Bを構成してもよい。
なお、内規制部材8を挟んで対向するように内対向壁21に設けられた一対の突起に代えて、外規制部材9を挟んで対向する一対の突起(図示せず)をスタビライザ7(具体的には、例えば図3における外対向壁22)に設け、外規制部材9によって、走行方向Xへのスタビライザ7の移動範囲を規制するようにしてもよい。
また、上記各実施の形態では、上側の弦領域が張り側の弦領域4aであり、下側の弦領域が弛み側の弦領域4bであったが、第1および第2のプーリ2,3が図1の回転方向とは逆方向に回転する場合には、上側の弦領域が弛み側の弦領域4bとなり、下側の弦領域が張り側の弦領域4aとなる。
さらに、伝動部材として、チェーンに代えて、ベルトを用いるようにしてもよい。その他、本発明は、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
1…無段変速機(動力伝達装置)、2…第1のプーリ、3…第2のプーリ、4…チェーン(伝動部材)、4a…(張り側の)弦領域、4b…(弛み側の)弦領域、5…ケーシング、6,6A,6B…スタビライザ装置、7,7A…スタビライザ、8…内規制部材、9,9B…外規制部材、11…入力軸、12…固定シーブ、13…可動シーブ、14…出力軸、15…固定シーブ、16…可動シーブ、21…内対向壁、22…外対向壁、23,24…側壁、25…挿通路、70,70A…スタビライザ本体、71,72…被規制突起(被規制部)、W…幅方向、X…(弦領域の)走行方向、Y…弦振動方向

Claims (5)

  1. ケーシングによって支持された第1および第2のプーリ間に巻き掛けられた伝動部材の弦領域の振動を抑制するスタビライザ装置において、
    上記伝動部材の弦領域に沿って延びる長尺の案内面を有して上記弦領域によって支持され、上記弦領域の走行方向への移動に伴って上記走行方向へ移動可能なスタビライザと、 上記伝動部材の内周に対向するように上記ケーシングに固定された内規制部材と、
    上記伝動部材の外周に対向するように上記ケーシングに固定された外規制部材と、を備え、
    上記内規制部材および上記外規制部材の何れか一方は、スタビライザに設けられた被規制部と当接することにより、上記走行方向への上記スタビライザの移動範囲を規制し、
    上記外規制部材は、上記伝動部材の上記外周または上記スタビライザと接触することにより、上記走行方向とは交差する弦振動方向への、上記弦領域の移動範囲を規制することを特徴とするスタビライザ装置。
  2. 請求項1において、上記スタビライザは、上記伝動部材の上記内周または上記外周に対向する対向壁と、上記対向壁に設けられ、上記内規制部材および上記外規制部材の何れか一方を挟んで上記走行方向に離隔する上記被規制部としての一対の突起を含むことを特徴とするスタビライザ装置。
  3. 請求項1または2において、上記内規制部材および上記外規制部材は、変速に拘らず位置が概ね変化しない上記伝動部材の領域を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されていることを特徴とするスタビライザ装置。
  4. 請求項1から3の何れか1項において、上記スタビライザは、上記弦領域を挿通させる挿通路を区画するように筒状をなし、
    上記外規制部材は、上記スタビライザを介して上記弦振動方向への、上記伝動部材の移動範囲を規制することを特徴とするスタビライザ装置。
  5. 請求項1から3の何れか1項において、上記スタビライザは、上記伝動部材の上記内周に対向する平板状をなしており、
    上記外規制部材は、上記伝動部材の上記外周に接触することにより、上記弦振動方向への、上記伝動部材の移動範囲を規制することを特徴とするスタビライザ装置。
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