JP2011106010A - 有機溶媒を用いたインジウムとスズの分離方法等 - Google Patents
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Abstract
【課題】インジウムとスズを含む溶液から有機溶媒を用いてインジウムとスズを分離性良く抽出する分離方法ないし分離回収方法を提供する。
【解決手段】インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下、好ましくはORPを+0.15V、pHマイナス0.3以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させてスズイオンを有機溶媒に選択的に抽出させ、水相のインジウムイオンと分離することを特徴とするインジウムとスズの分離方法、およびインジウムとスズを分離した有機溶媒ないし水溶液からインジウムとスズをおのおの回収する方法。
【選択図】図1
【解決手段】インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下、好ましくはORPを+0.15V、pHマイナス0.3以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させてスズイオンを有機溶媒に選択的に抽出させ、水相のインジウムイオンと分離することを特徴とするインジウムとスズの分離方法、およびインジウムとスズを分離した有機溶媒ないし水溶液からインジウムとスズをおのおの回収する方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、インジウムとスズを含む溶液から有機溶媒を用いてインジウムとスズを分離する方法ないしその回収方法に関する。
液晶や太陽電池のガラス基板などにはインジウム錫酸化物(ITO)からなる透明電極が用いられており、これらの電極はITOターゲット材を用いたプラズマ蒸着などによって製造されている。この使用済みITOターゲット材は酸溶解してインジウムとスズの混合溶液にし、これからインジウムやスズを回収してリサイクルされている。
インジウムとスズの混合溶液からインジウムとスズを分離して回収する場合、インジウムやスズを硫化物や水酸化物として沈澱させる方法、酸化還元反応を利用した方法などが知られているが、これらの方法は他の金属と十分に分離することができず、工程も煩雑になると云う欠点がある。
一方、有機溶媒を用いてインジウムとスズを抽出分離する方法も知られているが(特許文献1)、インジウムイオンとスズイオンは電気化学的な性質が似ており、分配比(In/Sn比)が非常に小さいため、一般的な抽出方法ではインジウムとスズを分離性よく抽出することが難しい。また、水相と有機相の境界にエマルジョン状のスラッジが生じて抽出効果が低下すると云う問題もある。
この対策として、有機溶媒を用いたインジウムの抽出方法において、インジウム含有液に予め還元剤とフッ素化合物を加えてスラッジの生成を抑制する抽出方法が提案されている(特許文献2)。この方法は予め還元剤によって他のイオンを浮遊スライムにし、これを濾過分離し、残ったインジウムイオンを溶媒抽出する方法であり、抽出時のスラッジの発生は抑制されるが、抽出工程におけるインジウムとスズの分離性は必ずしも良くない。
本発明は、有機溶媒を用いた従来の抽出分離における上記問題を解決するものであり、インジウムとスズを含む溶液から有機溶媒を用いてインジウムとスズを分離性良く抽出する分離方法ないしその回収方法を提供する。
本発明は以下の構成によって上記問題を解決したインジウムとスズの分離方法に関する。
〔1〕インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させてスズイオンを有機溶媒に選択的に抽出させ、水相のインジウムイオンと分離することを特徴とするインジウムとスズの分離方法。
〔2〕インジウムとスズを含有する水溶液を、酸化還元電位+0.15V以上、pHマイナス0.3以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させる上記[1]に記載するインジウムとスズの分離方法。
〔3〕インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させることによってスズイオンを選択的に抽出する一方、(イ)スズイオン抽出後の水溶液にインジウムイオンを還元する金属を添加して金属インジウムを析出させてインジウムを回収し、あるいは、(ロ)スズイオン抽出後の水溶液のpHを2.5以上に調整してインジウム水酸化物を沈澱させ、これを固液分離してインジウムを回収し、(ハ)あるいはスズイオン抽出後の水溶液から電解採取によってインジウムを回収する上記[1]または上記[2]に記載するインジウムとスズの分離回収方法。
〔4〕スズイオンを吸着した有機溶媒にスズイオンを還元する金属を添加して金属スズを析出させ、該金属スズを固液分離して回収した後に、該有機溶媒を酸洗浄して残留する上記添加金属を洗浄除去して該有機溶媒を再使用する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するインジウムとスズの分離回収方法。
〔1〕インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させてスズイオンを有機溶媒に選択的に抽出させ、水相のインジウムイオンと分離することを特徴とするインジウムとスズの分離方法。
〔2〕インジウムとスズを含有する水溶液を、酸化還元電位+0.15V以上、pHマイナス0.3以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させる上記[1]に記載するインジウムとスズの分離方法。
〔3〕インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させることによってスズイオンを選択的に抽出する一方、(イ)スズイオン抽出後の水溶液にインジウムイオンを還元する金属を添加して金属インジウムを析出させてインジウムを回収し、あるいは、(ロ)スズイオン抽出後の水溶液のpHを2.5以上に調整してインジウム水酸化物を沈澱させ、これを固液分離してインジウムを回収し、(ハ)あるいはスズイオン抽出後の水溶液から電解採取によってインジウムを回収する上記[1]または上記[2]に記載するインジウムとスズの分離回収方法。
〔4〕スズイオンを吸着した有機溶媒にスズイオンを還元する金属を添加して金属スズを析出させ、該金属スズを固液分離して回収した後に、該有機溶媒を酸洗浄して残留する上記添加金属を洗浄除去して該有機溶媒を再使用する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するインジウムとスズの分離回収方法。
本発明の分離方法は、インジウムとスズを含有する水溶液について、この水溶液を酸化状態(酸化還元電位プラス)に保った状態で、pHゼロ以下の強酸性にすると、液中の2価スズイオン(第1スズイオン:Sn2+)が酸化されて4価スズイオン(第2スズイオン:Sn4+)になり、スズイオン(Sn4+)とインジウムイオン(In3+)の分離比が大きくなるので、スズを選択的に有機溶媒に抽出することができ、水溶液に残るインジウムと効果的に分離することができる。
水溶液に残留したインジウムは、インジウムよりもイオン化傾向の大きい金属、例えば、亜鉛、アルミニウム、鉄などを添加して液中のインジウムイオンを金属インジウムに還元して析出沈澱させ、あるいは上記水溶液のpHをアルカリ性に調整してインジウム水酸化物を沈澱させ、これを固液分離して容易にインジウムを回収することができる。また、有機溶媒に抽出されたスズイオンはスズイオンを還元する金属、例えば、亜鉛やアルミニウムなどを添加して金属スズを析出させ、固液分離して容易に金属スズを回収することができる。さらに、金属スズを分離した有機溶媒は酸洗浄して残留金属を除去し、再利用することができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。図1に本発明の分離方法の処理工程を図1に示す。
本発明の分離方法は、図1に示すように、インジウムとスズを含有する水溶液について、該水溶液の酸化還元電位(ORP)をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下(pH≦0)の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させることによってスズイオンを選択的に抽出することを特徴とするインジウムとスズの分離方法である。
本発明の分離方法は、好ましくは、上記スズ抽出工程の後に、水溶液からインジウムを沈澱させて回収する工程、有機溶媒から金属スズを析出させて回収する工程を含む。
本発明の分離方法は、図1に示すように、インジウムとスズを含有する水溶液について、該水溶液の酸化還元電位(ORP)をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下(pH≦0)の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させることによってスズイオンを選択的に抽出することを特徴とするインジウムとスズの分離方法である。
本発明の分離方法は、好ましくは、上記スズ抽出工程の後に、水溶液からインジウムを沈澱させて回収する工程、有機溶媒から金属スズを析出させて回収する工程を含む。
〔In−Sn含有水溶液〕
インジウムとスズを含有する水溶液(In-Sn含有水溶液)としては、ITOターゲット廃材を酸溶解したインジウムとスズの混合溶液、あるいは亜鉛製錬などの製錬残渣(赤滓)の酸浸出液などを用いることができる。
インジウムとスズを含有する水溶液(In-Sn含有水溶液)としては、ITOターゲット廃材を酸溶解したインジウムとスズの混合溶液、あるいは亜鉛製錬などの製錬残渣(赤滓)の酸浸出液などを用いることができる。
〔Sn溶媒抽出工程〕
In−Sn含有水溶液の酸化還元電位(ORP)をプラス(酸化状態)に保ち、好ましくは、ORPを+0.15V以上に保ち、pHゼロ以下(pH≦0)の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させる。
In−Sn含有水溶液の酸化還元電位(ORP)をプラス(酸化状態)に保ち、好ましくは、ORPを+0.15V以上に保ち、pHゼロ以下(pH≦0)の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させる。
In−Sn含有水溶液の酸化還元電位が低い場合には、次亜塩素酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素などの酸化剤を添加し、ORPをプラス、好ましくは+0.15V以上に調整すればよい。また、In−Sn含有水溶液のpHが高い場合には、塩酸などを添加してpHをゼロ以下(塩酸濃度1モル/L以上)に調整すればよい。
In−Sn含有水溶液を、ORPをプラスに保ち、pHゼロ以下、好ましくはpHマイナス0.3以下の強酸性にすると、液中の2価スズイオン(第1スズイオン:Sn2+)が酸化されて4価スズイオン(第2スズイオン:Sn4+)になり、スズイオン(Sn4+)とインジウムイオン(In3+)の分離比が大きくなる。
ORPおよびpHを上記のように調整しない場合の一般的なスズイオンとインジウムイオンの分離比(Ld=In/Sn)は概ね0.5〜10であるが、ORPをプラスに保ち、pHをゼロ以下の強酸性に調整すると、上記分離比(Ld=In/Sn)は概ね500〜2000に拡大するので、液中のスズイオンを選択的にほぼ全て有機溶媒に抽出することができる。一方、液中のインジウムイオンは強酸性下では抽出されず、インジウムイオンは水溶液中に残る。この結果、インジウムとスズをほぼ完全に分離することができる。
In−Sn含有水溶液のORPがマイナスの還元状態であると、液中の2価スズイオンの酸化が不十分になり、2価スズイオンが液中に残留するので、インジウムイオンとスズイオンの分離比が十分に大きくならない。また、水溶液のpHがゼロより高い(0<pH)場合にも、インジウムイオンとスズイオンの分離比が十分に大きくならない。このためスズと共にインジウムが抽出され、スズとインジウムの分離性が低下する。
使用する有機溶媒は、イオン交換型の有機溶媒であり、D2EHPA(ジ−2−エチルヘキシルリン酸)やPC88A(2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルホスホン酸)などの有機溶媒を用いることができる。あるいは、これらの有機溶媒をシェルゾル、ケロシン等のオイルで希釈したものを用いることができる。有機溶媒の使用量は上記In−Sn含有水溶液と同量程度であればよい。
In−Sn含有水溶液のORPとpHを上記範囲に調整して有機溶媒に混合し、攪拌して十分に混合させた後に静置する。有機溶媒にスズイオンが選択的に抽出されるので、水相(水溶液層)の上側に分離した有機相(有機溶媒層)を取り出し、この有機溶媒からスズを回収することができる。また水溶液からインジウムを回収することができる。上記溶媒抽出を複数回繰り返すことによってスズとインジウムの分離効果を高めることができ、高純度のスズとインジウムを回収することができる。
〔In回収工程〕
有機溶媒と分離した水溶液中のインジウムを回収するには、(イ)液中のインジウムイオンを還元する金属を水溶液に添加し、液中のインジウムイオンを還元して金属インジウムを析出沈澱させる。インジウムイオンを還元する金属としては、インジウムよりもイオン化傾向の大きい亜鉛や、アルミニウム、鉄などを用いることができる。例えば、これらの金属板を上記水溶液に浸漬すると金属板表面に金属インジウムが析出するので、これを剥離して回収する。また、(ロ)有機溶媒と分離した水溶液のpHを2.5以上、好ましくはpH3以上に調整してインジウム水酸化物を沈澱させ、これらの沈殿物を固液分離してインジウムを回収することができる。さらに、(ハ)上記水溶液から電解採取によってインジウムを回収することができる。
有機溶媒と分離した水溶液中のインジウムを回収するには、(イ)液中のインジウムイオンを還元する金属を水溶液に添加し、液中のインジウムイオンを還元して金属インジウムを析出沈澱させる。インジウムイオンを還元する金属としては、インジウムよりもイオン化傾向の大きい亜鉛や、アルミニウム、鉄などを用いることができる。例えば、これらの金属板を上記水溶液に浸漬すると金属板表面に金属インジウムが析出するので、これを剥離して回収する。また、(ロ)有機溶媒と分離した水溶液のpHを2.5以上、好ましくはpH3以上に調整してインジウム水酸化物を沈澱させ、これらの沈殿物を固液分離してインジウムを回収することができる。さらに、(ハ)上記水溶液から電解採取によってインジウムを回収することができる。
〔Sn回収工程〕
有機溶媒に吸着されているスズを回収するには、有機溶媒にスズイオンを還元する金属(スズイオンよりもイオン化傾向の大きい金属)を添加して4価スズイオンを2価スズイオンに還元し、さらに金属スズに還元して析出させることによって回収することができる。
有機溶媒に吸着されているスズを回収するには、有機溶媒にスズイオンを還元する金属(スズイオンよりもイオン化傾向の大きい金属)を添加して4価スズイオンを2価スズイオンに還元し、さらに金属スズに還元して析出させることによって回収することができる。
有機溶媒は通電性がないので、有機溶媒に金属粉末を添加して吸着されているスズを還元析出させることはできないと一般的には考えられているが、このような通念とは異なり、有機溶媒にスズイオンを還元する金属を添加することによって溶媒中のスズを還元析出させることができる。この添加金属はスズよりもイオン化傾向の大きな金属、例えば、亜鉛粉末を用いると良く、亜鉛粉末に代えて鉄粉、アルミニウム粉を用いても良い。析出した金属スズは固液分離して回収する。
亜鉛粉末の添加量は、有機溶媒の(希釈率×力価)に対して2〜10倍モル当量の亜鉛を用いると良い。例えば、希釈率30%、力価2.9の抽出溶媒に添加する亜鉛粉末量はZn=30%×2.9×亜鉛モル数(65/2価)×(2〜10)によって算出される量が適当である。亜鉛粉末の添加量がこれより少ないとスズの還元析出が不十分になり、添加量がこれより多過ぎると次工程の脱亜鉛処理(酸洗浄)の負担が増す。なお、亜鉛の添加量は粒径によっても異なるので、上記添加量は100メッシュ〜200メッシュの亜鉛粉末についての一例である。
亜鉛粉末の粒度はなるべく微細なものが良い。亜鉛粉末の表面にスズが析出すると、亜鉛粉末表面が被覆されて還元反応が妨げられるので、比表面積が大きくなるように微細な亜鉛粉末が好ましい。微細な粉末であれば添加量も少なくてすむ。
有機溶媒に適量の亜鉛粉末を加えて数時間攪拌する。なお、有機溶媒での還元反応であるので、一般的な水溶液での反応よりも攪拌時間を長く要する。例えばスズが十分に析出する攪拌時間は概ね10時間〜20時間である。亜鉛粉末の粒度が小さいほど反応が進み、また攪拌強度が強いほど表面に析出したスズが剥がされるので、攪拌時間は短くてすむ。具体的には、例えば、亜鉛粉末の粒度が200メッシュ以下のときには10時間程度の攪拌でよく、亜鉛粉末がこれより大きいときには24時間程度攪拌するとよい。
液温は室温で良い。液温が高ければ反応が速くなるが、液温が高過ぎると溶媒が揮発するようになるので対策が必要になる。
亜鉛粉末は数回に分けて加えるとよい。亜鉛粉末の全量を一度に投入すると、大部分の亜鉛粉末表面にスズが析出して還元反応が進まない。亜鉛粉末を数回に分けて加えれば、還元反応が段階的に進み、反応効率がよい。亜鉛粉末を添加して攪拌するときに、水または濃度の薄い酸を同時に添加してもよい。水や酸の触媒的作用によって反応速度が向上し、通常の半分程度の反応時間ですむ。あるいは、予め有機溶媒を酸で洗浄しておいても同様の効果を発揮する。
〔酸洗浄〕
上記Sn回収工程の後に、有機溶媒を酸洗浄して溶媒に残る亜鉛粉末や生成した亜鉛イオンを洗浄除去する。残留しているスズの一部も洗浄される。酸は塩酸、蓚酸などを用いることができる。なお、塩酸が洗浄効果が良く使用しやすい。
上記Sn回収工程の後に、有機溶媒を酸洗浄して溶媒に残る亜鉛粉末や生成した亜鉛イオンを洗浄除去する。残留しているスズの一部も洗浄される。酸は塩酸、蓚酸などを用いることができる。なお、塩酸が洗浄効果が良く使用しやすい。
塩酸濃度は高いほうがよく、通常は2〜6規定濃度が好ましい。塩酸添加量は有機溶媒に混合しやすい最少量がよく、概ね溶媒量と同量が適当である。洗浄時間は30分程度であればよい。
〔繰り返し処理〕
必要に応じてSn回収工程、および酸洗浄工程を数回繰り返して処理効果を高めることができる。具体的には、例えば、有機溶媒に吸着されているスズを、一回の処理によって約60wt%〜約80wt%回収することができ、二回の処理で吸着スズの約90%以上を回収することができる。
必要に応じてSn回収工程、および酸洗浄工程を数回繰り返して処理効果を高めることができる。具体的には、例えば、有機溶媒に吸着されているスズを、一回の処理によって約60wt%〜約80wt%回収することができ、二回の処理で吸着スズの約90%以上を回収することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。
〔実施例1〕
ITOターゲット廃材を粉砕して濃塩酸に溶解した元液〔In濃度:84.6g/L、Sn濃度:7.84g/L、pH=−0.09〕100ccに、過酸化水素を加えて酸化還元電位をORP=+0.15Vに調整し、また濃塩酸を加えてpHを−0.3に調整した。なお、pHマイナス域はpHによる測定が難しいので酸濃度の分析値によって定めた。これを有機溶媒(D2EHPA:濃度100%)100ccに混合して30分攪拌した後に静置して水相と有機相に分離させた。この有機相を抜き出した。残った水相中のインジウム残存92.9%、スズの残存率は0.5%であった。この水相に亜鉛板を入れて液中のインジウムを亜鉛板の表面に析出させ、これを剥離して金属インジウム7.9gを回収した。
一方、抜き出した有機溶媒に亜鉛粉末を添加して溶媒中のスズを沈澱させて固液分離する処理を2回繰り返して金属スズ7.7gを回収した。この結果を表1に示した。この有機溶媒は金属スズ沈澱を固液分離した後に酸洗浄を繰り返して再生し、再利用した。
〔実施例1〕
ITOターゲット廃材を粉砕して濃塩酸に溶解した元液〔In濃度:84.6g/L、Sn濃度:7.84g/L、pH=−0.09〕100ccに、過酸化水素を加えて酸化還元電位をORP=+0.15Vに調整し、また濃塩酸を加えてpHを−0.3に調整した。なお、pHマイナス域はpHによる測定が難しいので酸濃度の分析値によって定めた。これを有機溶媒(D2EHPA:濃度100%)100ccに混合して30分攪拌した後に静置して水相と有機相に分離させた。この有機相を抜き出した。残った水相中のインジウム残存92.9%、スズの残存率は0.5%であった。この水相に亜鉛板を入れて液中のインジウムを亜鉛板の表面に析出させ、これを剥離して金属インジウム7.9gを回収した。
一方、抜き出した有機溶媒に亜鉛粉末を添加して溶媒中のスズを沈澱させて固液分離する処理を2回繰り返して金属スズ7.7gを回収した。この結果を表1に示した。この有機溶媒は金属スズ沈澱を固液分離した後に酸洗浄を繰り返して再生し、再利用した。
〔実施例2〜3〕
実施例1と同様の元液について、酸化還元電位およびpHを表1に示すように調整した他は実施例1と同様にして水溶液から金属インジウムを回収し、有機溶媒から金属スズを回収した。この結果を表1に示した。
実施例1と同様の元液について、酸化還元電位およびpHを表1に示すように調整した他は実施例1と同様にして水溶液から金属インジウムを回収し、有機溶媒から金属スズを回収した。この結果を表1に示した。
〔実施例4〕
Sn電解液から回収した塩酸溶解液〔In濃度:23.4g/L、Sn濃度:21.7g/L、pH=−0.6〕1000ccを用い、これに過酸化水素を加えて酸化還元電位をORP=+0.2Vに調整し、また濃塩酸を加えてpHを−0.4に調整した。これを有機溶媒(D2EHPA:濃度100%)1000ccに混合して20分攪拌した後に静置して水相と有機相に分離させた。この有機相を抜き出した。残った水相中のインジウム残存97.6%、スズの残存率は2.1%であった。この水相に亜鉛板を入れてその表面に液中のインジウムを析出させ、これを剥離して金属インジウム22.8gを回収した。
一方、抜き出した有機溶媒に亜鉛粉末を添加して溶媒中のスズを沈澱させて固液分離する処理を3回繰り返して金属スズ21gを回収した。
Sn電解液から回収した塩酸溶解液〔In濃度:23.4g/L、Sn濃度:21.7g/L、pH=−0.6〕1000ccを用い、これに過酸化水素を加えて酸化還元電位をORP=+0.2Vに調整し、また濃塩酸を加えてpHを−0.4に調整した。これを有機溶媒(D2EHPA:濃度100%)1000ccに混合して20分攪拌した後に静置して水相と有機相に分離させた。この有機相を抜き出した。残った水相中のインジウム残存97.6%、スズの残存率は2.1%であった。この水相に亜鉛板を入れてその表面に液中のインジウムを析出させ、これを剥離して金属インジウム22.8gを回収した。
一方、抜き出した有機溶媒に亜鉛粉末を添加して溶媒中のスズを沈澱させて固液分離する処理を3回繰り返して金属スズ21gを回収した。
〔比較例1〜2〕
実施例1と同様の元液について、酸化還元電位およびpHを表1に示すように調整した他は実施例1と同様にして有機溶媒(D2EHPA:濃度100%)に接触させた。この結果を表1に示した。比較例1は元液の酸化還元電位がマイナス(還元状態)であり、また比較例2は元液のpHがプラスであるため、何れの場合もインジウムとスズの分離比が小さく、インジウムとスズを十分に分離することができない。具体的には、表1に示すように、比較例1はスズが有機相に殆ど移行せずに水相に残留し、一方、比較例2はスズと共にインジウムも有機相に移行し、何れもスズとインジウムを分離することができない。
実施例1と同様の元液について、酸化還元電位およびpHを表1に示すように調整した他は実施例1と同様にして有機溶媒(D2EHPA:濃度100%)に接触させた。この結果を表1に示した。比較例1は元液の酸化還元電位がマイナス(還元状態)であり、また比較例2は元液のpHがプラスであるため、何れの場合もインジウムとスズの分離比が小さく、インジウムとスズを十分に分離することができない。具体的には、表1に示すように、比較例1はスズが有機相に殆ど移行せずに水相に残留し、一方、比較例2はスズと共にインジウムも有機相に移行し、何れもスズとインジウムを分離することができない。
一方、本発明の実施例1〜3は何れも元液の酸化還元電位がプラス(酸化状態)であり、またpHがゼロ以下であるため液中の2価スズが十分に酸化されて4価スズイオンになるので、インジウムとスズの分離比が大きく、従って水相中のスズ残存率が小さく、インジウムとスズの分離性が良い。
Claims (4)
- インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させてスズイオンを有機溶媒に選択的に抽出させ、水相のインジウムイオンと分離することを特徴とするインジウムとスズの分離方法。
- インジウムとスズを含有する水溶液を、酸化還元電位+0.15V以上、pHマイナス0.3以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させる請求項1に記載するインジウムとスズの分離方法。
- インジウムとスズを含有する水溶液の酸化還元電位をプラス(酸化状態)に保ち、pHゼロ以下の強酸性下でイオン交換型有機溶媒に接触させることによってスズイオンを選択的に抽出する一方、(イ)スズイオン抽出後の水溶液にインジウムイオンを還元する金属を添加して金属インジウムを析出させてインジウムを回収し、あるいは、(ロ)スズイオン抽出後の水溶液のpHを2.5以上に調整してインジウム水酸化物を沈澱させ、これを固液分離してインジウムを回収し、(ハ)あるいはスズイオン抽出後の水溶液から電解採取によってインジウムを回収する請求項1または請求項2に記載するインジウムとスズの分離回収方法。
- スズイオンを吸着した有機溶媒にスズイオンを還元する金属を添加して金属スズを析出させ、該金属スズを固液分離して回収した後に、該有機溶媒を酸洗浄して残留する上記添加金属を洗浄除去して該有機溶媒を再使用する請求項1〜請求項3の何れかに記載するインジウムとスズの分離回収方法。
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JP2009264809A Withdrawn JP2011106010A (ja) | 2009-11-20 | 2009-11-20 | 有機溶媒を用いたインジウムとスズの分離方法等 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011106010A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015075798A1 (ja) * | 2013-11-21 | 2015-05-28 | 株式会社日立製作所 | 元素の分離方法及び分離システム |
JP2015205231A (ja) * | 2014-04-17 | 2015-11-19 | Dowaエコシステム株式会社 | 水処理方法 |
JP2018188722A (ja) * | 2016-11-24 | 2018-11-29 | 住友金属鉱山株式会社 | スカンジウムの精製方法 |
-
2009
- 2009-11-20 JP JP2009264809A patent/JP2011106010A/ja not_active Withdrawn
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WO2015075798A1 (ja) * | 2013-11-21 | 2015-05-28 | 株式会社日立製作所 | 元素の分離方法及び分離システム |
JP2015205231A (ja) * | 2014-04-17 | 2015-11-19 | Dowaエコシステム株式会社 | 水処理方法 |
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