しかしながら、上記従来の図4の給電装置73にあっては、車両の側突(側面衝突)時の衝撃を緩和させる側突パッド(緩衝パッド)77をスライドドア内に配設する関係で、給電装置73のプロテクタ74と側突パッド77との配設位置が例えば高さ方向にラップして(図4における側突パッド77の設置高さ範囲を符号hで示す)、互いのスペースの取り合いになって、給電装置73の設置範囲に制約を生じてしまうという問題があった。また、車両の側突時の衝撃を緩和させる側突パッド77を例えば合成樹脂製のドアトリム(図示せず)に溶着等で固定するために、ドア71への側突パッド77と給電装置73との両方の組付に多くの工数を必要とするという問題があった。
本発明は、上記した点に鑑み、ドアへのプロテクタと側突パッドとの設置スペースを確保することができ、しかもドアへの側突パッドの組付工数を低減させることのできる衝突対応給電装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る衝突対応給電装置は、プロテクタ内にワイヤハーネスを移動自在に収容し、該ワイヤハーネスの一方を車両の電源側に接続し、他方をドア内の補機等に接続し、該プロテクタを該ドア内に搭載して構成される給電装置において、プロテクタ内にワイヤハーネスを移動自在に収容し、該プロテクタをドア内に搭載し、該ワイヤハーネスの一方を該ドア側に配索し、他方を車両ボディ側に配索する構造の給電装置において、該プロテクタに衝撃吸収用の衝突パッドをプロテクタ厚み方向とは直交する方向に併設したことを特徴とする。
上記構成により、プロテクタと衝突パッドとがプロテクタ厚み直交方向(例えばプロテクタの上側や前側と言ったプロテクタ幅広方向)に接してないし一体化して並んで配置され、プロテクタはハーネス収容空間を有して中空で補助的に衝突パッド(サブパッド)の役目をするから、プロテクタと衝突パッドとを一体化した給電装置によってドア内の占有スペースが縮小され、且つ衝撃吸収性が高まり、しかもドア内にプロテクタを取り付けることで、衝突パッドも同時に装着されることになる。
請求項2に係る衝突対応給電装置は、請求項1記載の衝突対応給電装置において、プロテクタベースとプロテクタカバーとで成る前記プロテクタを用い、該プロテクタベースを延長してベース延長部を形成し、該ベース延長部に前記衝突パッドを設けたことを特徴とする。
上記構成により、プロテクタカバーよりも広い面積のプロテクタベースに幅広のベース延長部が形成され、幅広のベース延長部に幅広の衝突パッドが設けられる。プロテクタベースへのプロテクタカバーの装着性も良好に確保される。ベース延長部への衝突パッドの固定方法は接着でも溶着でもねじ締めでも一体樹脂成形でもよい。プロテクタベースとベース延長部はドアインナパネル側に位置し、衝突パッドはドアトリム側(車室寄り)に位置するから、乗員に対する衝撃吸収性が高まる。
請求項3に係る衝突対応給電装置は、請求項2記載の衝突対応給電装置において、前記ベース延長部に前記衝突パッドを接着したことを特徴とする。
上記構成により、ベース延長部に例えば両面接着テープで衝突パッドが作業性良く簡単に固定される。
請求項4に係る衝突対応給電装置は、請求項2記載の衝突対応給電装置において、前記ベース延長部に複数のピンを突設し、該ピンを前記衝突パッド内に挿入嵌合させたことを特徴とする。
上記構成により、衝突パッドが複数のピンでベース延長部に固定される。ピンは軟質の衝突パッドに突き刺すことが好ましい。ピンの形状は、衝突時に乗員に危害を及ぼさないように、合成樹脂製の細径な円柱状等が好ましいが、先端に抜け止め用の返しを有するものであってもよい。ピンの長さを衝突パッドの厚みの半分程度に短く設定すれば、衝突時に乗員に危害を及ぼす心配はない。
請求項5に係る衝突対応給電装置は、請求項2〜4の何れかに記載の衝突対応給電装置において、前記プロテクタカバーを延長してカバー延長部を形成し、前記ベース延長部と該カバー延長部との間に前記衝突パッドを保持したことを特徴とする。
上記構成により、衝突パッドがカバー延長部とベース延長部との間で保持ないし挟持されて衝突パッドの固定力が高まる。カバー延長部は衝突パッドに軽く接している程度でもよく、カバー延長部が衝突パッドを厚み方向に支えて、衝突パッドの倒れを阻止する。
請求項6に係る衝突対応給電装置は、請求項2記載の衝突対応給電装置において、前記ベース延長部に複数のピンを突設し、該ピンを前記衝突パッド内に挿入嵌合させ、前記プロテクタカバーを延長してカバー延長部を形成し、該カバー延長部を該ピンの上から該衝突パッドに被せたことを特徴とする。
上記構成により、車両衝突時にピンが衝突パッドを貫通してもカバー延長部で受け止められて、万一車室側に突出する危険が防止される。ピンの長さは衝突パッドの厚みと同程度でよく、長いピンで衝突パッドの固定力が高まる。衝突パッドはベース延長部とカバー延長部との間に安定に保持され、カバー延長部で衝突パッドの倒れが防止される。
請求項7に係る衝突対応給電装置は、請求項1記載の衝突対応給電装置において、プロテクタベースとプロテクタカバーとで成る前記プロテクタを用い、該プロテクタベースに前記衝突パッドを一体樹脂成形したことを特徴とする。
上記構成により、プロテクタカバーよりも広い面積のプロテクタベースに幅広の衝突パッドが一体に設けられ、衝突パッドで衝撃吸収性が高まる。プロテクタベースへのプロテクタカバーの装着性も良好に確保される。プロテクタベースはドアインナパネルに固定され、衝突パッドはドアインナパネルから厚み方向にドアトリム側(車室寄り)に位置するから、乗員に対する衝撃吸収性が高まる。衝突パッドは格子状や網目状のリブで成ることが好ましく、プロテクタベースと同じ材質でもよく、あるいはプロテクタベースよりも柔らかい材質とすることも可能である。
請求項8に係る衝突対応給電装置は、請求項2〜7の何れかに記載の衝突対応給電装置において、前記衝突パッドの端面で前記プロテクタカバーの外壁の一部を兼用したことを特徴とする。
上記構成により、衝突パッドの厚み直交方向(幅方向)の端面がプロテクタカバーの端部の開口を塞いでプロテクタカバーの外壁の代用となり、プロテクタカバー内のワイヤハーネス等を外部との干渉や埃の浸入等から保護する。プロテクタカバーの外壁の一部が不要となるので、プロテクタ構造が簡素化・軽量化される。
請求項9に係る衝突対応給電装置は、請求項1〜8の何れかに記載の衝突対応給電装置において、前記プロテクタ内に回動自在に設けたアームで前記ワイヤハーネスを支持し、該プロテクタの下部側の開口から該ワイヤハーネスを車両ボディ側に導出させ、該プロテクタの上部に前記衝突パッドを配設したことを特徴とする。
上記構成により、ワイヤハーネスを回動支持させるアームを用いることで、従来の板ばねでワイヤハーネスを上向きに付勢する給電装置に較べてプロテクタが低背化され、プロテクタ上部が省スペース化され、そこに衝突パッドが配置されて、スペースが効率的に活用される。プロテクタと衝突パッドとの配設位置のラップが防止され、衝撃が効率的に吸収される。
請求項1記載の発明によれば、ドア内に中空のプロテクタと衝突パッドとをプロテクタ幅広方向に接してないし一体化して並べて配置することで、ドア内のスペースを有効に使用してプロテクタと衝突パッドとの設置スペースを確保することができ、しかも、ドア内にプロテクタを組み付ける作業で衝突パッドの組付も同時に行われるので、ドアへの衝突パッドの組付工数を削減することができる。また、従来のように衝突パッドとプロテクタとを離して配置した場合に較べて、プロテクタと衝突パッドとの一体構造で車両衝突時の衝撃吸収性を高めることができる。
請求項2記載の発明によれば、プロテクタカバーよりも幅広なプロテクタベースのベース延長部に衝突パッドを幅広に配置し、且つ衝突パッドを乗員寄りに配置したことで、衝撃吸収性を高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、ベース延長部に例えば両面接着テープで衝突パッドを作業性良く簡単に且つ低コストで固定することができる。
請求項4記載の発明によれば、衝突パッドをベース延長部に押し付けることで、ピンを衝突パッドに挿入嵌合させて、衝突パッドを簡単に固定することができる。
請求項5記載の発明によれば、ベース延長部との間で衝突パッドをカバー延長部で厚み方向に支えることで、ベース延長部への衝突パッドの固定力を高めることができる。
請求項6記載の発明によれば、車両衝突時に万一ピンが衝突パッドを貫通して車室側に突出することをカバー延長部で阻止して、乗員の安全性を高めることができる。
請求項7記載の発明によれば、プロテクタベースに衝撃パッドを一体樹脂成形することで、プロテクタベースへの衝撃パッドの組付工数を削減することができると共に、プロテクタベースに衝撃パッドを外れ等の心配なく強固に固定することができる。
請求項8記載の発明によれば、プロテクタカバーの外壁の一部を衝突パッドの端面で兼ねて、プロテクタカバーの構造を簡素化・軽量化することで、給電装置をコンパクト化・低コスト化することができる。
請求項9記載の発明によれば、従来の板ばねでワイヤハーネスを上向きに付勢する給電装置に較べて、プロテクタを低背化することができ、プロテクタ上部のスペースに衝突パッドを大きく配置して衝撃を効率的に吸収させることができる。
図1(a)(b)は、本発明に係る衝突対応給電装置の第一の実施形態を示すものである。
この衝突対応給電装置1は、合成樹脂製のプロテクタベース2とプロテクタカバー3とで成るプロテクタ(ケース)4と、プロテクタ4内に回動自在に設けられたアーム5と、アーム5の先端に回動自在に設けられたハーネス保持用のサブアーム6と、アーム5を上向き(時計回り)すなわちハーネス弛み吸収方向に付勢する捩り巻きばね(図示しないばね部材)とを備えたものにおいて、プロテクタベース2をプロテクタカバー3よりも上方に延長して板状のベース延長部7を形成し、ベース延長部7の表面に側突パッド(緩衝パッド)8を固着して設けたことを特徴とするものである。
プロテクタ4は自動車のスライドドア(図示せず)の金属製のドアパネルに縦置き(垂直)に配置されてボルト等(図示せず)で固定される。プロテクタカバー3の垂直な基板部9の裾部9aはプロテクタベース2の垂直な基板部10の裾部10aよりも短く形成され、プロテクタベース2の裾部10a側の表面は外部に露出している。各裾部9a,10aは後半の湾曲部(傾斜)と前半の水平な真直部とで成り、プロテクタカバー3の裾部9aとプロテクタベース2の基板部10との間にハーネス導出用の横長の開口(符号9aで代用)が形成されている。
図1(a)の如くプロテクタカバー3の基板部9の上端9bはやや後下がりに傾斜し、図1(b)の如く、プロテクタベース2の基板部10が上方に延長されてベース延長部7となり、ベース延長部7の表面に側突パッド8が好ましくは両面接着テープ11又は接着剤で固定されている。
プロテクタカバー3の基板部9の上端9bとほぼ同一面に側突パッド8の下端面(端面)8aが位置し、側突パッド8の下端面8aは基板部9の上端9bに沿ってやや後下がりに傾斜し、アーム5やワイヤハーネス12の電線部分12aの上向きの移動に対するストッパ面として作用する。
従来の図4のプロテクタではプロテクタカバーの上壁とプロテクタベースの上壁とが上下に重なって、ワイヤハーネスの上向きの移動に対するストッパ壁として作用するが、側突パッド8の下端面8aがプロテクタ4の上壁の役目をすることで、プロテクタ4の上壁が不要となり、プロテクタ4の構造が簡素化されている。
なお、従来の図4のプロテクタのように、プロテクタカバー2とプロテクタベース3との上壁(図示せず)を上下に重ね(上壁同士は係止手段で相互に係止される)、あるいはプロテクタベース2の上壁(例えば図1(b)の符号13の部分)のみを設けて、これら上壁13で側壁パッド8の下端面8aを支持することも可能であるが、図1の例に較べてプロテクタ構造が複雑化・重量化する。プロテクタベース2とプロテクタカバー3とは、それぞれの前壁14,15と前端壁16,17との各係止手段(係止爪と係合枠片等)18と、アーム5の軸部19(図1(b))の内側のボルト(図示せず)とで相互に固定される。
プロテクタカバー3の上端9bの前部から下向きに短い前壁(周壁)15が垂直に設けられ、前壁15の内側にプロテクタベース2の前壁14が重なって位置し、前壁14は、電線部分12aとばね等との干渉を防ぐ湾曲状のハーネスガイド壁20に続き、前壁14,15の前方下側にプロテクタベース2とプロテクタカバー3との前端壁(周壁)16,17とが前後に重なって位置し、前壁15と前端壁16との間にハーネス挿通路21が設けられ、ハーネス挿通路21内で電線部分12aがバンド締め等で固定部(図示せず)に固定され、電線部分12aはハーネス挿通路21から例えば側突パッド8の前端下部の水平方向の切欠孔(図示せず)等を経て外部(スライドドア側)に導出され、スライドドア内の電装品や補機等(図示せず)に接続される。
図1(b)の例では、プロテクタカバー3の基板部9から円形の中空ボス22が内向きに突設されてプロテクタベース2の基板部10に当接し、中空ボス22の外周面に沿ってプロテクタベース2の基板部10から環状壁23が突設されてプロテクタカバー3の基板部9に当接し、中空ボス22の底孔とプロテクタベース2の基板部10の孔24とにボルト(図示せず)が貫通して、スライドドアパネル(図示せず)にプロテクタ4がねじ締め固定される。
環状壁23の外周面に沿ってアーム5の中空の軸部19が回動自在に係合し、アーム5はプロテクタベース2の基板部10に近接し、アーム5の支持リブ5aがプロテクタベース2の基板部10に近接して位置している。プロテクタ4内でアーム5の裏面側を横断してワイヤハーネス12の電線部分12aが配索される。軸部19や環状壁23や中空ボス22は中空で軸方向に潰れやすいので、プロテクタ4の衝突衝撃性を高める。なお、中空の軸部19に代えてアーム5ないしプロテクタ4の好ましくは細径な中実の軸部(図示せず)を用い、中空ボス22や環状壁23を排除することも可能ではある。
軸部19の周囲に捩り巻きばね(図示せず)が配設され、捩り巻きばねの一端の杆部がアーム5のフック部25に係合し、他端の杆部がプロテクタベース2のフック部26に係合して、アーム5が上向きに付勢されている。なお、捩り巻きばね等のばね部材を排除して、ワイヤハーネス12の合成樹脂製のコルゲートチューブ12bの剛性(曲がりに対する反発力)等でアーム5を上向きに付勢することも可能である。
アーム5の先端側に軸部27でサブアーム6が連結され、サブアーム6にハーネス保持部28が一体に設けられ、ハーネス保持部28にコルゲートチューブ12bの基端部が固定され、基端部から電線部分12aがプロテクタベース2に沿ってプロテクタカバー3内に導出されている。なお、サブアーム6やハーネス保持部28をアーム5に一体(回動不能)に形成することも可能である。
アーム5を用いた給電構造によってプロテクタ4が低背化され、これにより、プロテクタ4の上部に大きな側突パッド8を配設することが可能になっている。例えば、従来の図4のプロテクタにおいては、側突パッドの位置がプロテクタの上部にラップしてしまうので、図4のプロテクタの上部に側突パッドを設けても、側突パッドの全高が短いものとなり、衝撃吸収性が低下してしまう。図1の実施形態により、プロテクタ4の上部に十分な高さの側突パッド8を設けることができる。
なお、図4の形態のプロテクタにおいても、スライドドアのスライドストロークが短く、ワイヤハーネスの余長(弛み)吸収量が小さい場合には、プロテクタの全高を低く抑えて、プロテクタの上部に側突パッドを一体に設けることは可能である。
側突パッド8は、例えばスライドドア用の既存の側突パッドと同様にウレタン等の比較的軟質(柔軟)な合成樹脂材を用いて形成されるが、プロテクタベース2に固定されているので、プロテクタ4をスライドドアに装着することで、側突パッド8が同時にスライドドア内に配設され、それにより、従来の側突パッドの組付に要する工数が削減される。
本例の側突パッド8は、低い前半部分8bと高い後半部分8cとで成り、上部が段差状に形成され、底部はプロテクタカバー3の上端9bに沿ってやや後下がりに傾斜し、前端下部8dはプロテクタカバー3の前壁15に沿って細長に形成配置され、垂直な前端面8eはプロテクタカバー3の前端壁17の上部と略同一面に位置し、後端面8fはプロテクタベース2の後端と略同一面に位置している。
プロテクタベース2のベース延長部7も側突パッド8と同様に上部が段差状に形成され、側突パッド8の裏面にベース延長部7が接合して位置している。プロテクタベース2は金属製のドアインナパネル(図示せず)に接して固定され、側突パッド8は車室側の合成樹脂製のドアトリム(図示せず)の内面に隙間を存して対向して又は接して位置する。
プロテクタ4はプロテクタベース2とプロテクタカバー3との間にワイヤハーネス12やアーム5等を収容する空間を有しているから、プロテクタ4自体も補助的に衝突パッドの役割をする。プロテクタカバー3の基板部9は表面に補強用の格子状の小さなリブ29を有している。本例では、プロテクタ4の前半側にプロテクタカバー3が位置し、後半側にプロテクタベース2の基板部10が露出して位置するので、プロテクタカバー3のある前半側が衝撃吸収作用をする。それに伴って側突パッド8の前半側8bを小さく、後半側8cを大きく形成して、プロテクタ4と側突パッド8とで成る側突パッド付きプロテクタすなわち給電装置1全体で効率的に衝撃を吸収可能となっている。なお、側突パッド8の形状等はプロテクタ4の形状や車種等に応じて適宜設定される。
図1(a)はスライドドアを車両前方に閉じた又はほぼ閉じた状態を示しており、ワイヤハーネス12のコルゲートチューブ部分12bの先端部は車両ボディ側のハーネス固定具(図示せず)に保持され、電線部分12aが車両ボディ側のワイヤハーネス(図示せず)を経て電源等に接続されている。スライドドアを車両後方に開けるに伴って、アーム5がサブアーム6と共に反時計回りに前方に回動し、ワイヤハーネス12が前後に揺動する。アーム5やワイヤハーネス12の動きは図5の従来例と同様である。
図2(a)(b)は、本発明に係る衝突対応給電装置の第二の実施形態を示すものである。
この衝突対応給電装置31は、基本的に図1の衝突対応給電装置1と同じであるが、合成樹脂製のプロテクタ4’への側突パッド(衝突パッド)8の固定手段を接着に代えて複数のピン(細いボス)32で行うことを特徴としている。なお、図1と同じ構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
プロテクタ4’はプロテクタカバー3’が図1のものよりも上方に少し延長されて上端9bの位置が高くなっている。プロテクタベース2の上方への板状のベース延長部7に複数(本例で三本)の断面円形で細径の水平なピン32がプロテクタカバー3’の上部延長部(カバー延長部)33に向けて一体に突設されている。各ピン32は側突パッド8に突き刺さって嵌合していることが好ましい。
側突パッド8への各ピン32の挿入嵌合後にプロテクタカバー3’が各ピン32の上からプロテクタベース2に被着され、図2(b)の如く各ピン32の先端32aがプロテクタカバー3’の上部延長部(カバー延長部)33の裏面で受け止められる。カバー延長部33の裏面は側突パッド8の表面に密着する。なお、側突パッド8がピン32を刺しにくい材質である場合は、側突パッド8に小径のピン嵌合孔(圧入孔)を設けておく。側突パッド8の材質は一般的に軟質のポリウレタン等である。
ベース延長部7のピン32が側突パッド8内に挿入嵌合すると同時に、ベース延長部7の表面が側突パッド8の裏面に当接し、プロテクタカバー3’をプロテクタベース2に組み付ける(装着する)と同時に、カバー延長部33がピン32の先端32aの上から(ピン32の先端32aを覆って)側突パッド8の表面に当接し、側突パッド8がベース延長部7とカバー延長部33とで挟まれて安定に支持されると共に、車両の衝突時にピン32が万一乗員側に突出して乗員に危害を与えることが防止される。
ピン32の嵌合作用と、ベース延長部7とカバー延長部33との挟持作用とで側突パッド8が確実にプロテクタ4’に固定される。従って、側突パッド8とベース延長部7とは両面接着テープや接着剤で固定する必要がない。補助的に接着剤等を併用してもよいが、組付工数やコストがアップすることは否めない。
側突パッド8のやや後下がりに傾斜した下端面8aは、各ピン32の少し下側に位置し、各ピン32の少し上側にカバー延長部33のやや後下がりに傾斜した上端9bが位置し、下端面8aと上端9bとは平行に位置し、各ピン32は漸次後下がりに配置され、下端面8aと上端9bとの中間に各ピン32が位置している。
側突パッド8の下端面8aは、プロテクタカバー3’やプロテクタベース2の各上壁(本例では設けられていない)の役割をして、アーム5の上昇端位置を規制する。これにより、各上壁が不要となっている。図2(a)では(図1(a)でも同様であるが)、プロテクタ4’内のアーム5の上側に少しの上昇スペースを存している。
側突パッド8の下端面8aは前端側の下向きの縦長な細幅部8dの内面に続き、細幅部8dの内面はプロテクタカバー3’の前壁15に接し、細幅部8dの下端面8d’はプロテクタベース2のハーネス挿通路21の上部開口端に接し、本例では開口端から前向きにワイヤハーネス12の電線部分12aが外部に導出されている。側突パッド8の大きさ形状は図1のものと同様である。
図2の例のベース延長部7は側突パッド8の下半部(段差8gよりも下側の部分)を支持するものであるが、図1の例と同様に図2(b)の鎖線7の如くベース延長部を側突パッド8の上部8cまで延長することも可能である。
図2で、符号6はサブアーム、28はハーネス保持部、19,27は各軸部、9,10はプロテクタカバー3’とプロテクタベース2との各基板部、14,15は同じく前壁、16,17は同じく各前端壁、29は基板部表面の補強リブをそれぞれ示している。
なお、図2の実施形態において、複数のピン32をカバー延長部33の裏面側ではなくカバー延長部33よりも上方に配置して側突パッド8内に挿入嵌合することも可能である。この場合も、カバー延長部33はベース延長部7との間で側突パッド8の下部8hをしっかりと支持(挟持)する。また、カバー延長部33とベース延長部7とで側突パッド8を挟持するのではなく、カバー延長部33を側突パッド8の表面に軽く接触させて、側突パッド8を表面側(プロテクタカバー3’側)への倒れなく支持することも可能である。
また、図2の実施形態のカバー延長部33を図1の実施形態のプロテクタカバー3に形成し、図1において側突パッド8をベース延長部7に両面接着テープ11で固定した後に、プロテクタカバー3を被せてカバー延長部33で側突パッド8の下部を支えて補強することも可能である。
図3(a)(b)は、本発明に係る衝突対応給電装置の第三の実施形態を示すものである。
この衝突対応給電装置41は、図1の実施形態における側突パッド8がプロテクタ4とは別体に(別材料で)形成されたものであるのに対し、側突パッド(衝突パッド)42を合成樹脂製のプロテクタベース2に一体成形で形成したことを特徴とするものである。側突パッド42はプロテクタベース2と同じ材質(樹脂材料)であることがコストや生産性の面から好ましい。プロテクタカバー3やアーム5等は基本的に図1の実施形態と同じであるので、同じ構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
プロテクタベース2の垂直な基板部10が上方に延長されて板状のベース延長部7を成し、ベース延長部7の表側に複数のリブ43が縦横方向に格子状や網目状等に一体に樹脂形成され、各リブ43の間には空間44が形成され、複数のリブ43の表側に垂直な表面板45が一体に樹脂形成され、ベース延長部(裏面板)7と表面板45との間に複数のリブ43を挟んだ形状によって、車両衝突(側突)時に各リブ43が潰れて衝撃を効率良く吸収可能となっている。各リブ43と表面板45とで側突パッド42が構成される。あるいはベース延長部7と各リブ43と表面板45とで側突パッド42が構成される。
図3(b)の如く、側突パッド42の底部に、ベース延長部7から表面板45にかけて断面略クランク状の隔壁(底壁)46が一体に設けられ、側突パッド42の隔壁46によってプロテクタカバー3の上部開口が封止(閉塞)され、隔壁46がプロテクタ4の上壁を兼ねることで、プロテクタカバー3の構造が簡素化され、且つプロテクタカバー3内のアーム5やワイヤハーネス12の電線部分12aが外部との干渉や埃等の侵入から保護されている。図1,図2の実施形態においては、別体の側突パッド8の下端面8aで同様の作用効果が奏されている。図3の側突パッド42の下端面は隔壁46の下面46aである。図3(b)の例で、プロテクタカバー3の基板部9は表面板45よりも少し車室側に突出しているが、基板部9と表面板45とを同一面に配置することも可能である。
図3(a)の例で、側突パッド42の下端面46aは、プロテクタカバー3のやや後下がりに傾斜した上端9bに沿ってやや後下がりに傾斜して位置し、プロテクタカバー3の裾部9aの後端を過ぎてプロテクタベース2の基板部10の露出面に沿って水平に位置している。この水平な下端面46bを図1の例の下端面8aのように後下がりに傾斜させることも可能である。
側突パッド42の形状は図1の実施形態におけると同様に、プロテクタカバー3に対応した低い前半側の部分42bと、プロテクタベース2の露出した基板部10に対応した高い後半部分42cと、前端側の細幅部分42dとで構成される。細幅部分42dの下端面がハーネス挿通路21の上部開口に当接し、例えば細幅部分42dに設けた切欠孔(図示せず)から電線部分12aが外部に導出されている。
図3で、符号5はアーム、6はサブアーム、28はハーネス保持部、19,27は各軸部、12はワイヤハーネス、12aはその電線部分、9,10はプロテクタカバー3とプロテクタベース2との各基板部、14,15は同じく前壁、16,17は同じく各前端壁、29は基板部表面の補強リブ、をそれぞれ示している。
図3の実施形態によれば、プロテクタベース2に側突パッド42を組み付ける手間が不要となり、製造工数を低減することができると共に、プロテクタ41と側突パッド42とが同色で形成されて、給電装置41の見栄えが向上する。
なお、図3の実施形態においては、ベース延長部7を板状に形成したが、ベース延長部7を設けずに、例えば、図3(b)のプロテクタベース2の上部の隔壁46に複数のリブ43を格子状ないし網目状に一体に樹脂形成することも可能である。この場合、表面板45は設けても設けなくてもよい。要は、プロテクタベース2に側突パッド42を一体に樹脂成形すればよい。また、プロテクタベース2と異なる(硬質でなく軟質な)樹脂材料やゴム材料等を用いて側突パッド42を二色成形等でプロテクタベース2に一体形成することも可能である。
また、上記各実施形態においては、プロテクタ1,31,41の上部に側突パッド8,42を配置したが、それ以外にプロテクタ1,31,41の前部にも側突パッド(図示せず)を配置することが可能である。すなわち、プロテクタ1,31,41の前端壁16,17よりも前方にプロテクタベース2の基板部10を延長し、このベース延長部(図示せず)に側突パッド(図示せず)を別体ないし一体に設ける。側突パッドで前端壁16,17を兼ねることも可能である(但しプロテクタベース2とプロテクタカバー3,3’との係止は必要である)。
プロテクタ1,31,41の上部や前部に側突パッドを設けるということは、プロテクタ1,31,41に側突パッドをプロテクタの厚み方向とは直交する方向の外側(上方や前方)に張り出すように併設するということである。プロテクタの厚み方向とはプロテクタベース2とプロテクタカバー3,3’との各基板部9,10の並び方向である。
また、図1〜図3の実施形態の側突パッド8,42を図4の従来例に適用する場合は、図4のプロテクタを低背に形成し(プロテクタ上部は水平方向に平坦であることが好ましい)、プロテクタベースを上方に延長してベース延長部を形成し、ベース延長部に別体の側突パッドを接着等で固定したり、ベース延長部に複数のリブと表面板とで成る側突パッドを一体に樹脂形成することで、対応することができる。
また、上記各実施形態においては、スライドドア用の給電装置1,31,41に側突パッド8,42を適用したが、例えば自動車のヒンジ回動式のフロントドア等に搭載される給電装置(図示せず)に上記側突パッドを適用することも可能である。この場合、給電装置として、例えばハーネス巻取式のものを用い、そのプロテクタのプロテクタベースを延長して成るベース延長部に側突パッドを別体又は一体に配設する。
ハーネス巻取式とは、略円形ないし矩形状のプロテクタ内にハーネスを巻き取るリールを設け、ばねの力でリールを巻き戻してハーネスを巻き取るものであり、ワイヤハーネスの巻取基部側はプロテクタに固定されつつ外部に導出されて電源側に接続され、ワイヤハーネスの引き出し側がドア内の電装品や補機等に接続される。
それ以外の給電装置としては、プロテクタ(ケース)内でフラットハーネスをガイド部材に沿ってUターンさせ、ガイド部材をコイルばねの力でハーネス伸び方向に付勢し、フラットハーネスの一方をプロテクタから外部に引き出し自在に導出させて電装品や補機等に接続し、他方をプロテクタに固定しつつ電源側に接続した巻掛け式のものを用い、そのプロテクタのプロテクタベースを延長して成るベース延長部に側突パッドを別体又は一体に配設することも可能である。
また、車両のほぼ垂直なバックドアに給電装置を搭載する場合は、側突ではなく追突となるが、給電装置として例えば巻取式や巻掛け式のものを用い、そのプロテクタのプロテクタベースを延長して成るベース延長部に側突パッドを別体又は一体に配設することで対応可能である。
また、上記各実施形態においては、プロテクタベース2の延長部7に側突パッド8,42を設けたが、プロテクタベース2ではなくプロテクタカバー3,3’を上方等に延長して(例えば図2の例であればプロテクタカバー3’の上部のカバー延長部33をさらに上方まで延長して)、カバー延長部33の裏面に側突パッド8,42を接着や一体成形で設けることも可能である。但し、各例のプロテクタカバー3,3’はプロテクタベース2に較べて小さいので、小さな側突パッドを設ける場合に対応可能である。
一般にプロテクタベース2は、ワイヤハーネス12やアーム5やばね部材等の構成部品を組み付けるためのものであり、プロテクタカバー3,3’は、各構成部品を組付済みのプロテクタベース組立体に被着させて各構成部品を覆って保護するためのものである。