JP2011093730A - 酸化物焼結体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化インジウムを成分とする高密度酸化物焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化インジウムを成分とする酸化物焼結体にスズを適切濃度添加することで、酸化粒焼結体の密度を高くすることができることを見出し、添加元素としてスズを含有するIn焼結体であって、スズの原子数が、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率として0.01〜0.2%添加することにより、相対密度が98%以上となることを特徴とするスズ含有In焼結体。
【選択図】なし

Description

本発明は酸化インジウム系酸化物焼結体及びその製造方法に関する。
酸化インジウムを成分とする酸化物焼結体には各種のものが有るが、その中でもインジウム−スズ−酸素からなるITO(Indium tin oxide)は、液晶表示装置等の各種のフラットパネルディスプレイ装置に最も広く使用されている透明導電体である。
透明導電体の用途は、フラットパネルディスプレイ以外にも各種有るが、その中でも、近年は太陽電池の光入射面側の窓層電極材料としての需要が高まってきている。ITOを太陽電池の窓層電極材料に使用すると、ITOは低抵抗率である利点の反面、キャリア濃度が高いために、波長1200nm付近以上の長波長領域における透過率が劣り、太陽光の長波長領域を有効に利用できないので、太陽電池の変換効率が悪くなってしまう問題がある。
そこで、最近はITOに代わる太陽電池窓層の材料として、インジウム−酸素(In、Indium oxide)に水素を添加したもの(非特許文献1)、インジウム−ジルコニウム−酸素(In:Zr)からなるもの(非特許文献2)等が提案されている。これらの材料は、抵抗率はITOとほぼ同等であるが、電子移動度が高いために、キャリア濃度を低く抑えることができるので、長波長領域における透過率の低下を抑制することができる利点を有している。
しかしながら、これらの先行技術文献には材料の光学的、電気的特性に関する記載はあるものの、産業上の使用にあたっては、大面積に均一に成膜することができるスパッタリング法での製造方法が適切であり、そのためにはこれらの材料の焼結体が、スパッタリングターゲットとして必要な特性を有することが重要であるが、ターゲット特性に関しては一切記載がない。
スパッタリングターゲットとして必要な特性には各種のものが有るが、その中でも焼結体の密度は重要である。密度が低いとスパッタ成膜当初は、特に問題が無い場合であっても、スパッタを長時間し続けていくと、ターゲット表面に黒色の突起物であるノジュールが生成されるようになり、ノジュール部分は高抵抗であるために、その部分を起点として、異常放電が起こり、スパッタを継続できなくなったり、作製された膜にパーティクルが付着したりして良好な膜を得ることができなくなったりする。
ITOの高密度化については、これまで色々な報告があり(特許文献1)、高密度化がなされてきているが、上記のインジウム−酸素からなるターゲット及びインジウム−ジルコニウム−酸素からなるターゲットについては、高密度の焼結体が得られていないのが現状である。
また、近年酸化インジウムを成分とする酸化物焼結体の中で、インジウム−ガリウム−亜鉛−酸素(In−ZnO−Ga:IGZO)が、透明半導体用材料として注目を集めている(非特許文献3)。
この材料はアモルファスシリコンより移動度が高いという他に、室温での成膜が可能であり、非晶質であることから表面平坦性に優れる等の利点を有している。この材料はターゲットのスパッタ成膜によって薄膜を得ることができるので、ターゲットの密度が高いことが重要であるが、これまで高密度のターゲットを得ることはできなかった。
本発明に関連する従来技術としては、ITOに銅等を添加するもの(特許文献1)、インジウム−亜鉛−酸素(In−ZnO:IZO)にスズを添加するもの(特許文献1)、IGZO(インジウム−ガリウム−亜鉛−酸素)にスズを添加するもの(特許文献3、4)、酸化インジウム含有水酸化物中に錫が含有されたもの(特許文献5)等が知られているが、これらに開示されている発明と本発明との差異については後述する。
特開平7−54132号公報 特許第3721080号公報 特開2008−214697号公報 特開2008−163442号公報 特開2008−137825号公報
Japanese Journal of Applied Physics Vol.46, No.28, 2007, pp.L685-L687 Journal of Applied Physics, 101, 063705 (2007) Nature, Vol.432, 25, November 2004, 488
本発明は、酸化インジウムを成分とする高密度酸化物焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究した結果、酸化インジウムを成分とする酸化物焼結体にスズを適切濃度添加することで、酸化粒焼結体の密度を高くすることができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の酸化物焼結体及びこれらの製造方法が提供できる。
1.添加元素としてスズを含有するIn焼結体であって、スズの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率が0.01〜0.2%であり、相対密度が98%以上であることを特徴とするIn焼結体、
2.上記添加元素に加えて、ジルコニウムを含有するIn焼結体であって、ジルコニウムの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率が0.5〜8%であり、相対密度が98%以上であることを特徴とする上記1に記載のIn焼結体、
3.添加元素としてスズを含有するIn−ZnO−Ga焼結体であって、スズの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率が0.01〜0.2%であり、相対密度が98%以上であることを特徴とするIn−ZnO−Ga焼結体、
4.上記焼結体をInGaZnと表した時に、0.2≦x/(x+y)≦0.8、0.1≦z/(x+y+z)≦0.5、a=(3/2)x+(3/2)y+zの範囲にあることを特徴とする上記3に記載のIn−ZnO−Ga焼結体
5.上記焼結体を、酸素雰囲気中、焼結温度1400〜1500℃で焼結して製造することを特徴とする上記1〜5のいずれか一に記載の焼結体の製造方法。
本発明によれば、高密度の酸化物焼結体が提供できるので、これらの焼結体をスパッタリングターゲットとして使用した際に、長時間のスパッタ後においても、ターゲット表面のノジュールの発生を抑制することができ、スパッタ時の異常放電や膜へのパーティクル発生等の防止効果があるという優れた効果を有する。
酸化物焼結体中における添加元素の含有量は、添加元素の原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率で規定する。
例えば、インジウム−酸素からなる酸化物焼結体にスズを添加した場合には、焼結体中に含まれる全金属元素はインジウムとスズになるので、インジウムの原子数をIn、スズの原子数をSnで表すと、{Sn/(In+Sn)×100}が、スズの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率となる。
同様に、インジウム−酸素からなる酸化物焼結体にスズに加えてジルコニウムを添加した場合には、焼結体中に含まれる全金属元素はインジウムとスズとジルコニウムになるので、インジウムの原子数をIn、スズの原子数をSn、ジルコニウムの原子数をZrで表すと、{Zr/(In+Sn+Zr)×100}が、ジルコニウムの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率となる。
また、インンジウム−ガリウム−亜鉛−酸素からなる酸化物焼結体にスズを添加した場合には、焼結体中に含まれる全金属元素はインジウム、ガリウム、亜鉛、スズになるので、インジウムの原子数をIn、ガリウムの原子数をGa、亜鉛の原子数をZn、スズの原子数をSnで表すと、{Sn/(In+Ga+Zn+Sn)×100}が、スズの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率となる。
本発明の酸化物焼結体において、焼結体中におけるスズの原子数の比率は0.01〜0.2%であることが望ましい。スズの比率が0.01%未満では、焼結体密度向上効果が小さくなるからである。一方、スズの比率が0.2%を超えると、焼結体密度向上効果が飽和するだけでなく、添加されたスズが電気的なドーパントの役割をしていることから、In焼結体やIn:Zr焼結体への添加の場合には、スズから供給される電子が多くなり、キャリア濃度の増加によって長波長領域の透過率が低減することになる。また、IGZOへの添加の場合にも、キャリア濃度の増加によって、半導体的特性が導電体的特性となり、作製されたトランジスタのon/off比を悪化させることがある。
さらに、このような特性をより良好なものとするためには、スズの比率は、好ましくは0.05〜0.2%、更に好ましくは0.08〜0.2%とする。
本発明の酸化物焼結体において、焼結体中におけるジルコニウムの比率は0.5〜8%であることが好ましい。ジルコニウムの比率が0.5%未満では、ジルコニウムから放出される電子数が少なく、導電性が良くならないからである。一方、ジルコニウムの比率が8%を超えると、ジルコニウムからの放出電子が飽和して、ジルコニウムが中性不純物散乱要因として働くようになり、電子移動度を低下させて、導電性を低下させてしまうからである。
IGZOの組成範囲は、InGaZnとした時、0.2≦x/(x+y)≦0.8、0.1≦z/(x+y+z)≦0.5、a=(3/2)x+(3/2)y+zであることが好ましい。インジウムの比率がこの範囲より高いと、スパッタ膜のキャリア濃度が増加して素子特性であるon/off比が悪くなる。一方、インジウムの比率がこの範囲より低いと、スパッタ膜の移動度が低下し、素子特性を悪くする。
なお、酸素の原子数比を上式のようにa=(3/2)x+(3/2)y+zと規定しているが、実際は、酸素欠損のためこれより若干小さいものとなる。しかし、その厳密な定量化は困難であるため、本願発明ではこのような規定としているが、これは通常の製造方法で製造された通常含む程度の酸素欠陥を有する場合も包含することは言うまでもない。
亜鉛の比率がこの範囲より高いと、膜の安定性や耐湿性が劣化する。一方、亜鉛の比率がこの範囲より低いと、スパッタ膜の非晶質性が悪くなり、結晶化してしまって素子特性が劣化する。
酸化インジウムを主成分等とする酸化物焼結体に微量金属元素を添加する技術に関してはいくつかの報告があるが、本発明との技術的相違について以下に説明する。
特許文献1には、ITOに亜鉛等の金属元素を添加することで、高密度のITO焼結体が得られることが示されている。しかしながら、この技術はあくまで、酸化インジウムと酸化スズの重量比が約90:10と、スズが酸化物焼結体中に構成要素元素と言える程度まで高濃度に添加されているITOについての焼結密度の向上に関する技術であり、本発明は、これとは異なり、ITOの様にスズが構成元素として含有されていないInやIn:ZrやIGZOの高密度化のために、スズを微量に添加する点で、明らかに異なる発明である。
特許文献2には、IZOに微量のスズを添加することで、IZOスパッタリングターゲットのバルク抵抗を低下させる技術が示されている。しかしながら、この技術はスズを電気的ドーパントとして作用させる効果を利用したものであり、実施例の試料No.101〜No.103の結果からは、確かにスズの添加濃度が増加するにつれて、バルク抵抗が低下していくことが示されているが、焼結体の密度に関しては、逆にスズの添加濃度が増加するにつれて小さくなっている。
つまり、IZOに関しては、スズ添加は焼結体の密度向上には逆効果であることが示されているのであって、単に酸化インジウムを主成分等とする酸化物焼結体にスズを添加すれば、焼結体密度向上効果が得られるのではなく、酸化インジウムのみならず、他の構成元素の種類や濃度によっては、スズ添加の効果は色々であり、本発明において、初めてある特定の酸化インジウムを主成分等とする酸化物焼結体にスズを添加することで、酸化物焼結体の密度向上効果が得られることが見出されたのであり、またその様な効果が得られることは、先行技術から示唆されることはなく、逆に単にスズを添加するのみでは、焼結体密度を低下させることが有ることが示されているため、着想の阻害要因となっていたのである。
特許文献3には、IGZOにスズ等の正四価以上の金属を所定濃度添加することで、スパッタリングターゲットのバルク抵抗が低減できる技術が示されている。
しかしながら、この技術もスズの電気的ドーパント効果を利用したものである。実施例1及び比較例1には焼結体密度がそれぞれ6.12g/cm、5.98g/cmであったことが記載されているが、その他の実施例や比較例では、焼結体密度についての記載が全くないので、スズ添加によって焼結体密度が本当に増加するのかどうかについては全く不明である。
更に、上記の焼結体密度はInGaZnOの理論結密度は6.379g/cmであることから、相対密度としては、それぞれ95.9%、93.7%とスパッタリングターゲットとしてはさほど高密度とはいえないものである。
これは、後述するようにこの技術でのターゲット作製プロセス条件が、本発明のプロセス条件とは異なっているためであり、本発明のプロセス条件及びスズの適切添加濃度によって、焼結体の相対密度が98%以上と非常に高密度のIGZO焼結体が、初めて得られるようになったのである。
特許文献4には、特許文献3と同様に、IGZOにスズ等の正四価以上の金属を所定濃度添加することで、スパッタリングターゲットのバルク抵抗が低減できる技術が示されている。
しかしながら、この技術もスズの電気的ドーパント効果を利用したものである。実施例1及び比較例1には焼結体密度がそれぞれ6.06g/cm、5.85g/cmであったことが記載されているが、その他の実施例や比較例では、焼結体密度についての記載が全くないので、スズ添加によって焼結体密度が本当に増加するのかどうかについては全く不明である。
特許文献5には、インジウム含有水酸化物中の錫濃度を50質量ppm以下とすることが示されている。しかしながら、この技術はインジウム含有水溶液中に、鉛や錫などの金属が不純物として含まれている場合に、これらの不純物金属を析出させ、残渣として回収することにより、インジウム含有水酸化物における錫の残留量を少なくするというもので、焼結体密度の向上を図るために積極的にスズを添加するというものではない。
本発明の酸化物焼結体は、各種原料粉の混合、粉砕、焼結等のプロセスによって作製することができる。例えば、IGZO焼結体の場合は、以下の様にして作製できる。
原料粉としては、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化スズ(SnO)であって、比表面積が約10m/g程度のものを使用するのが好ましい。比表面積が小さいと、粒径が大きいということであり、焼結体の密度が充分に高くならない。
また、一般的には比表面積が大きい方が、焼結体密度は高くなる傾向はあるが、これ以上更に大きくすることのみでは、焼結性の向上効果は飽和するとともに、原料粉自体の価格も高くなり、経済的ではない。
原料粉間の比表面積の差は、必ずしも同じである必要はなく、逆に、多少の差が有る方が焼結体密度増加の効果がある場合もある。比表面積が同じ方が効率的な混合等に有利である場合もあるが、仮焼を実施する場合は、比表面積に差がある程度あったほうが、より良く仮焼が進む場合もあり、比表面積差が5m/g程度までは何ら問題がない。
原料粉を所望の組成比となるように秤量後、混合を行う。混合が不充分であると、製造したターゲット中に各成分が偏析して、高抵抗率領域と低抵抗率領域が存在することになり、スパッタ成膜時に高抵抗率領域での帯電等によるアーキングなどの異常放電の原因となってしまうので、充分な混合が必要である。
そのためには例えば、スーパーミキサーで、大気中、回転数2000〜4000rpm、回転時間3〜5分混合する。原料紛は酸化物であるために雰囲気ガスは、特に原料の酸化を防止する必要がないので、アルゴン等の高価なガスを使用する必要は無く、大気でかまわない。混合方法としては他にボールミルによる長時間混合等の方法でも良く、その他の方法でも原料の均一混合という趣旨を実現できる方法であればかまわない。
次に、混合粉を電気炉にて、大気雰囲気中で、900〜1100℃の温度範囲で、4〜6時間程度保持することで、混合粉の仮焼を行う。仮焼は高温で揮発し易い酸化亜鉛を酸化ガリウムと反応させて、揮発し難いスピネル等に変化させて、焼結体密度を向上させる効果がある。
但し、焼結条件を含めたターゲット製造プロセス条件の適正化によっては必ずしも、仮焼を行わなくても、高密度焼結体を得ることができる場合もあるので、仮焼の工程は必須ではない。
次に、微粉砕を行う。これは原料紛の各組成のターゲット中での均一分散化するためである。充分に微粉砕が行われないと、粒径の大きい原料粉が存在することになり、場所により組成むらが生じてしまい、スパッタ成膜時の異常放電の原因となる。仮焼粉をアトライターにジルコニアビーズと共に投入し、回転数200〜400rpm、回転時間2〜4時間微粉砕を行う。
微粉砕は原料紛の粒径が、平均粒径(D50)1μm以下、好ましくは0.6μm以下となるまで行うことが望ましい。
次に、造粒を行う。これは、原料紛の流動性を良くして、プレス成型時の充填状況を充分良好なものにするためである。微粉砕した原料を固形分40〜60%のスラリーとなるように水分量を調整して造粒を行う。この際、入口温度は180〜220℃、出口温度は110〜130℃に設定する。
次に、プレス成型を行う。造粒粉を400〜800kgf/cmの面圧、1〜3分保持の条件でプレス成形する。面圧力400kgf/cm未満であると、充分な密度の成形体を得ることができず、面圧力800kgf/cm超にする必要も無く、無駄なコストやエネルギーを要するので生産上好ましくない。
次に、静水圧加圧装置(CIP)で1700〜1900kgf/cmの面圧、1〜3分保持の条件で成形する。そして、電気炉にて酸素雰囲気中、昇温速度0.5〜2.0℃/minで700〜900℃まで昇温後、4〜6時間保持、その後、昇温速度0.5〜5.0℃/minで1400〜1500℃まで昇温後、10〜30時間保持、その後、炉冷または降温速度2.0〜5.0℃/minで降温する。この場合、焼結温度が1400℃より低いと、焼結体が高密度とならないが、一方、1500℃を超えると、酸化亜鉛の揮発等が起こり、焼結密度の低下や組成ずれが生じてしまう。また、炉ヒーター寿命が低下してしまうというコスト的問題もある。
焼結温度における保持時間が10時間より短いと、原料紛間の反応が充分進まず、焼結体の密度が充分高くならなかったり、焼結体が反ってしまったりする。焼結時間が30時間を越えても、不必要なエネルギーと時間を要する無駄が生じて生産上好ましくない。
昇温速度が0.5℃/分より小さいと、所定温度になるまでに不必要に時間を要してしまい、昇温速度が5.0℃/分より大きいと、炉内の温度分布が均一に上昇せずに、むらが生じたり、焼結体が割れてしまったりする。この様にして得られた焼結体は、高密度が達成可能となる。
実施例1〜8及び比較例1〜4は酸化インジウムにスズの比率を色々に変化させた場合である。これらの結果をまとめて表1に示す。なお、表1には代表的な特性を評価として掲載する。
まず、平均粒径約2.0μmのIn粉とSnO粉とを、表1に示すような各所定割合を秤量後、スーパーミキサー3000rpmで3分間充分に混合させた後、ジルコニアビーズで3時間微粉砕する。造粒後、600kgf/cmの面圧で2分間プレス、静水圧加圧装置(CIP)で1800kgf/cmの面圧で2分間保持して成形する。電気炉にて、酸素雰囲気中1450℃で20時間焼結することで、酸化物焼結体を得る。焼結体の密度はアルキメデス法で、焼結体のバルク抵抗は四端子法でそれぞれ測定した。
焼結体を直径6インチ厚さ6mmに加工したものをスパッタリングターゲットとして、インジウムメタルを介して、銅製のバッキングプレートに貼り付け、アルゴンガスを0.5Paの圧力として、DC500Wのスパッタパワーで、20kWhスパッタ後のターゲット表面のノジュール数を数えた。
また、スパッタ中に異常放電が認められた場合は、表1の異常放電の欄に「あり」、認められなかった場合は、「なし」と記載した。
これらの結果をまとめて、表1に示す。なお、インジウムの比率は、全金属元素の総和(100%)からインジウムを除く各金属元素の総和を除いた比率である。
実施例9〜16及び比較例5〜8は酸化インジウムと所定量のジルコニウムに対して、スズの比率を色々に変化させた場合である。ジルコニウムの比率は、2%に固定した。
まず、平均粒径約2.0μmのIn粉とZrO粉とSnO粉とを表1に示すような各所定割合を秤量後、実施例1と同様条件でスパッタリングターゲットを作製し、長時間スパッタ後も行い、ターゲットの諸特性を評価した。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
Figure 2011093730
実施例17〜24及び比較例9〜12は、IGZOの組成In:Ga:Zn=1:1:1に対して、スズの比率を色々に変化させた場合である。実施例25〜32及び比較例13〜18は、IGZOの組成In:Ga:Zn=2:2:1に対して、スズの比率を色々に変化させた場合、及び焼結温度を変化させた場合である。
まず、平均粒径が約1.6〜4.6μmの酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)の各原料粉末を所定の各金属元素の組成比となるように秤量し、スーパーミキサーで、大気中、回転数3000rpm、回転時間4分混合した。
この混合粉を電気炉にて、大気雰囲気中で、1000℃で、5時間程度保持することで仮焼した。仮焼粉をアトライターにジルコニアビーズと共に投入し、回転数300rpm、回転時間3時間微粉砕を行った。微粉砕後の原料紛の平均粒径(D50)は0.59μmとなった。
微粉砕した原料粉を固形分50%のスラリーとなるように水分量を調整し、入口温度を200℃、出口温度を120℃に設定し、造粒を行った。造粒粉を400kgf/cmの面圧、1分保持の条件でプレス成形した後、静水圧加圧装置(CIP)で1800kgf/cmの面圧で、1分保持の条件で成形した。
次に、電気炉にて酸素雰囲気中、昇温速度1.0℃/minで800℃まで昇温後、5時間保持、その後、昇温速度1.0℃/minで1450℃まで昇温後、20時間保持、その後、炉冷で降温した。
焼結体の密度、バルク抵抗測定後、スパッタリングターゲットに加工して、長時間スパッタ後のノジュール数を評価した。これらの結果をまとめて、表1に示す。
この表1に示すように、本願発明の実施例については、いずれも相対密度が高く、98%以上を達成していることが分かる。この結果、本願発明の実施例は、いずれもスパッタリング時のノジュールの発生量が少なく、また異常放電も発生しない。またバルク抵抗値も適切な範囲を維持しているのが確認できる。
これに対して、本願発明から逸脱する比較例については、相対密度が低くなり、ノジュールの発生量が多く、場合によっては異常放電が発生するという問題を生じた。スズの比率が本願発明から逸脱する比較例については、長波長領域の透過率が低減し、また、所望の半導体特性が得られないという問題を生じた。
以上の実施例及び比較例から、本願発明の焼結体は優れた特性を有することが分かる。
本発明の酸化インジウム焼結体は高密度であることから、スパッタリングターゲットとして使用した場合に、その表面にノジュールが発生することを抑制し、スパッタリング時の異常放電を防止することができる。また、本発明の酸化インジウム焼結体はバルク抵抗率が低いので、スパッタリングによって形成される膜の抵抗率を低くすることができ、透明導電膜形成用として有用である。
さらに、本発明の酸化インジウム透明導電膜は可視光領域及び赤外線領域において透過率が高く、また、電子移動度が高く膜の抵抗率が低いので、太陽電池用透明導電膜として極めて有用である。

Claims (5)

  1. 添加元素としてスズを含有するIn焼結体であって、スズの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率が0.01〜0.2%であり、相対密度が98%以上であることを特徴とするIn焼結体。
  2. 上記添加元素に加えて、ジルコニウムを含有するIn焼結体であって、ジルコニウムの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率が0.5〜8%であり、相対密度が98%以上であることを特徴とする請求項1に記載のIn焼結体。
  3. 添加元素としてスズを含有するIn−ZnO−Ga焼結体であって、スズの原子数の、焼結体中の全金属元素の原子数の総和に対する比率が0.01〜0.2%であり、相対密度が98%以上であることを特徴とするIn−ZnO−Ga焼結体。
  4. 上記焼結体をInGaZnと表した時に、0.2≦x/(x+y)≦0.8、0.1≦z/(x+y+z)≦0.5、a=(3/2)x+(3/2)y+zの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載のIn−ZnO−Ga焼結体。
  5. 上記焼結体を、酸素雰囲気中、焼結温度1400〜1500℃で焼結して製造することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の焼結体の製造方法。
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