しかしながら、上記第1の固定方法においては、搬送振動体の底部中央を振動盤にボルトによって軸線方向に締付固定しているだけであるので、搬送振動体の外周部が振動盤の外周部に直接固定されていないため、搬送振動体の変形により外周部に不要振動が生じて効率的な搬送態様や部品の整列姿勢を阻害するとともに、回転方向の応力に対する固定力が中心部における摩擦力のみに依存しているため、振動周波数が高くなると、回転振動機の振動盤とこれに固定されている搬送振動体が軸線周りに回転ずれを生じることから、振動盤と搬送振動体の接触面間の擦れにより騒音が生じたり接触面にすり傷が生じて固定状態が変化したりするという問題点がある。特に、圧電体に対する駆動電圧を高めることなどにより回転振動の振幅を増加させた場合には、上記の騒音がひどくなるとともに、搬送振動体上の部品が暴れて効率的な搬送ができなくなる上に部品の整列姿勢にも悪影響を与えるという問題点があった。
上記の問題点は軸線方向の締付固定力により振動盤と搬送振動体を回転振動の軸線付近のみで固定していることに起因するものであるために、締付固定力を大きくしても根本的な解決にはならない。また、変形を低減するために搬送振動体の剛性を高めると、必然的に搬送振動体の軽量化が難しくなるという別の問題点も生ずる。この搬送振動体の軽量化は、近年の搬送速度の向上の要請に応えるために回転振動数を高めようとする場合には極めて重要な課題である。特に、小型の部品搬送装置の場合には近年において圧電振動体を用いた回転振動機が多くなってきていることから、搬送振動体の重量が大きい場合には、圧電振動体の剛性を高めるためにコストが上昇したり、圧電振動体の耐久性が低下したりするという問題を生じやすい。
一方、第2の固定方法や第3の固定方法においては、搬送振動体の外周底部を振動盤に固定していることから上記のような各種の問題点は生じないが、搬送振動体を振動盤に対し半径方向に直接に締付固定していることにより軸線方向の固定力や固定精度が不十分で、回転振動を搬送振動体に充分に精度良く伝達することができないことから、微細な電子部品を効率的かつ高精度に搬送することができないという問題点がある。また、このような固定方法を採用する搬送振動体は金属板を溶接等により接合して構成したものが多いため、部品の搬送速度を高めるために振動周波数を高くすると各部の金属板がそれぞれ厚み方向に振動するなどの不要振動が発生しやすくなるので、搬送振動体自体の構造によっても搬送部品の微細化や搬送速度の高速化に支障が出るという問題点がある。また、搬送振動体と振動盤をボルトによる直接固定が可能な構造とする必要があるので、微細な電子部品を搬送するための高精度な形状を備えた一体成形品(削り出し一体品を含む。)で形成されてなる搬送振動体では加工作業や剛性の確保が難しいという問題点がある。
また、第4の固定方法では、搬送振動体を振動盤に対し軸線方向に締付固定していることから、特に軸線と直交する面に沿った水平方向の位置ずれを回避することが困難であるため、上記と同様に効率的かつ高精度の回転振動の伝達が難しいという問題点がある。また、振動盤の外周に大きく張り出した外周張出部を設ける必要があるので、回転振動に対する負荷重量が大きくなるとともにコンパクト化が困難であり、しかも、搬送振動体の底部に外周に張り出す面を備えた取付部を形成する必要があるので、溶接等による板金加工により形成した搬送振動体ではともかく、微細な電子部品を搬送するための高精度な形状を備えた一体成形品(削り出し一体品を含む。)で形成されてなる搬送振動体では加工作業や剛性の確保が難しいという問題点がある。
さらに、上記第2乃至第4の固定方向においてはいずれもボルトによる螺合構造により搬送振動体を振動盤に対し半径方向若しくは軸線方向に直接固定したり、締付板や取付ブロックで挟持しているので、複数箇所で締付固定した場合、全ての箇所でボルトを外したり締め付けたりしないと搬送振動体を振動盤より取り外したり取り付けたりすることができないため、着脱作業が煩雑であるという問題点もある。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、回転振動機で発生する回転振動を搬送振動体に対して効率的かつ高精度に伝達することができるように構成することにより、微細な搬送部品を高精度に整列搬送させることができ、高速搬送も容易に行える振動式部品搬送装置を実現することにある。
斯かる実情に鑑み、本発明の振動式部品搬送装置は、振動盤を軸線周りに振動させる回転振動機と、前記振動盤上に載置されるとともに前記軸線周りに設けられた螺旋状の搬送路を備えた搬送振動体と、を具備する振動式部品搬送装置において、前記搬送振動体は、内底部と、該内底部の半径方向外側に環状に構成され前記搬送路が設けられた外周部とを有し、前記外周部の底部に前記振動盤の表面上に密接して載置される外側載置面が形成され、前記外側載置面の外側で前記搬送振動体の外周部が前記振動盤の外周部と前記軸線周りの複数箇所でクランプ構造により固定され、前記クランプ構造は、前記振動盤と前記搬送振動体のうちの一方の外周部に取り付けられたクランプ部材と、前記振動盤と前記搬送振動体のうちの他方の外周部に形成され前記クランプ部材と軸線方向に係合する傾斜係合面とを有し、前記傾斜係合面は前記軸線方向に対して傾斜して前記一方の外周部とは反対側に向くとともに前記軸線と直交する面内においては複数の前記クランプ構造の少なくとも二つの間で相互に異なる向きに設定され、前記クランプ部材に設けられたクランプ面が前記傾斜係合面に密接して押し付けられることで前記搬送振動体が前記振動盤上に固定され、前記クランプ構造は前記軸線周りの三箇所以上に設けられるとともに、該三箇所以上の前記クランプ構造において前記クランプ部材は前記他方の外周部に対する締付固定力が調整可能となる態様でそれぞれ個別に前記一方の外周部に対して取付固定され、少なくとも一つの前記クランプ構造を除く、前記他方の外周部に対して取り外し可能に構成された一部の前記クランプ構造の操作のみで、前記振動盤に対し前記搬送振動体が着脱可能となるように構成されていることを特徴とする。
この発明によれば、クランプ部材のクランプ面が傾斜係合面に係合することで、振動盤の外周部と、その表面上に密接して載置された搬送振動体の外周部とがクランプ構造により固定されることにより、搬送振動体の外周部に直接に回転振動が与えられるので、搬送振動体の搬送路までの間の変形や歪が低減され、結果として振動盤で発生する回転振動を効率的かつ高精度に部品に伝えることが可能になる。また、複数のクランプ構造間で異なる向きに設定され軸線方向に対して傾斜した傾斜係合面とクランプ面の密接により、搬送振動体を軸線方向と水平方向にそれぞれ固定できるとともに、軸線方向と水平方向のいずれか一方の固定作用を摩擦力に依存した従来の固定方法に比べて、両方向に与えられる固定力の偏りが低減されるので、振動盤から搬送振動体へ向けて回転振動を効率的かつ高精度に伝達することができる。したがって、微細な搬送部品を高精度に整列搬送させることができるとともに、部品搬送の速度の向上を図ることができる。また、各クランプ構造においては傾斜係合面にクランプ面を密接させるように傾斜した向きに押し当てるだけの構造とした上で、このような複数のクランプ構造を傾斜係合面が水平面内で相互に異なる向きに設定して設けることで搬送振動体を振動盤に対して固定できるため、従来構造のように複数の固定部分において搬送振動体と振動盤を直接固定したり挟持したりしている構成において全ての固定部分を着脱させる必要があることと比べると、少なくとも一つのクランプ構造を除く一部のクランプ構造のみを操作するだけで着脱作業が可能になるという利点もある。
本発明の一の態様においては、前記傾斜係合面は前記軸線と直交する面内で半径方向に向くように構成され、前記クランプ部材は前記一方の外周部に対して半径方向に移動可能に構成される。これによれば、複数のクランプ構造において共に半径方向に向いた傾斜係合面を形成するとともにクランプ部材を半径方向に移動可能に構成することにより、クランプ部材を半径方向に移動させることでクランプ面と傾斜係合面の間の密接力を制御したり、振動盤に対して搬送振動体を容易に着脱することが可能になる。特に、傾斜係合面を上記面内で半径方向外側に向くように構成することで、クランプ面が半径方向外側から内側へ傾斜案内面に押し付けられた状態で搬送振動体が振動盤に固定されるので、クランプ構造の簡易化を図ることができるとともに、さらに着脱作業を容易化できる。例えば、後述する実施形態で示すように、傾斜係合面を軸線と直交する面内で半径方向外側に向くように構成し、前記一方の外周部に形成されたネジ穴にボルトを螺合させて前記クランプ部材を取り付け、前記一方の外周部に対し半径方向内側に締め付けることでクランプ面を傾斜係合面に押し付けて、搬送振動体を振動盤に固定することができるが、複数のクランプ構造のうちの一部のクランプ構造においてクランプ部材を半径方向に移動させるだけで、全ての傾斜係合面とクランプ面の密接状態を形成したり解除したりして着脱作業を行うことが可能になる。
本発明の他の態様においては、前記クランプ構造は前記軸線周りの三箇所に設けられ、該三箇所の前記クランプ構造のうち少なくとも一箇所の前記クランプ構造における一つの前記クランプ部材は前記一方の外周部に対して半径方向に移動可能に取り付けられ、前記一つの前記クランプ部材を前記半径方向に移動させることで他の二箇所の前記クランプ部材を移動させずに前記振動盤に対し前記搬送振動体を着脱できるように構成される。この場合、上記他の二箇所のクランプ構造においては、前記クランプ部材が半径方向に移動可能に構成されていてもよく、そうでなくてもよい。
本発明のさらに他の態様においては、前記クランプ部材は、前記一方の外周部に対して係合することで前記他方の外周部の側への移動を規制する係合爪を有する。これによれば、前記クランプ部材の前記他方の外周部の側への移動が規制されるので、クランプ面が傾斜係合面に係合することで振動盤に対して搬送振動体が固定された状態で、クランプ部材の軸線方向の位置ずれを確実に防止することができるため、搬送振動体の固定状態を安定させることができる。この係合爪は、例えば、一方の外周部における他方の外周部とは反対側の角部に係合するように構成できる。
本発明の別の態様においては、前記傾斜係合面は前記軸線と直交する面内で半径方向外側に向くように構成され、前記クランプ部材は、前記一方の外周部に対し半径方向内側に押し付けられる。これによれば、クランプ部材の一方の外周部に対する取付構造を簡易に構成できるとともに、クランプ部材の取付け作業及び取外し作業を容易化することができる。
この場合に、前記クランプ部材を締め付けるためのボルトが設けられ、前記クランプ部材には前記ボルトが挿通する固定孔が設けられ、前記一方の外周部には前記ボルトが螺合するネジ穴が設けられることが好ましい。これによれば、簡易で安価な構造にも拘わらずクランプ部材を確実に締付できる。この場合にはさらに、前記ボルトは、雄ネジ部と、該雄ネジ部とは軸線方向の異なる位置に形成された円筒状の位置決め部とを有し、前記ネジ穴は、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と、前記位置決め部をガイドするガイド部とを有することが望ましい。これによれば、位置決め部とガイド部の嵌合により、螺合構造とは別に一方の外周部に対するボルトの位置を精密に設定することができるので、一方の外周部に対して精密に位置決めされたボルトによりクランプ部材を精密に位置決めすることができるから、クランプ面が傾斜係合面に係合することで振動盤に対して搬送振動体が固定された状態で、クランプ部材の位置ずれを確実に防止することができるため、搬送振動体の固定状態を安定させることができる。
本発明によれば、搬送振動体の外周部を振動盤の外周部に対して軸線方向と水平方向の双方に、いずれか一方への偏りを低減した態様でより確実に固定することができるため、回転振動を効率的かつ高精度に伝達することができることから、微細な搬送部品を高精度に整列搬送させることができるとともに、搬送速度の向上を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図4を参照して本発明に係る第1実施形態の部品搬送装置について説明する。
第1実施形態の部品搬送装置10は、回転振動機11と、この回転振動機11上に固定された搬送振動体12とを備えている。回転振動機11は、設置板13と、この設置板13上に防振用のゴム(例えば防振リングなど)やばね(例えばコイルばねなど)からなる防振材14を介して支持された基台15と、この基台15の上方に配置された振動盤(トッププレート、上板)16とを有している。基台15と振動盤16との間には、基台15の内部に配置された内部構造(図1では図示を省略してある。)17が介在し、この内部構造17を介して基台15上に振動盤16が水平に支持されている。
内部構造17は、図7及び図8に示すように、部品搬送装置10の軸線10xを中心として半径方向に延在する軸線22yに沿って設置され、板状の圧電駆動体22と板ばね23との直列接続構造を備える複数の加振機構20を有している。図示例の場合、加振機構20は軸線10xの回りに等角度間隔で3組設置されている。この加振機構20は、基台15と振動盤16の間に接続されることで、基台15に対して振動盤16に上記軸線10x周りの回転振動を与えるものである。基台15の内面15a(後述する傾斜角θで斜め上方を向いた面)には半径方向の軸線22yと並行して延びる固定部材21の固定部21sの底面が密接した状態で固定され、この固定部材21の上記固定部21sの端部から軸線10x周りの回転方向に突出した内端部21aに圧電駆動体22の内端部が接続固定されている。
圧電駆動体22は特に限定されるものではないが、弾性板の片面若しくは両面に圧電体層が積層された構造(ユニモルフ若しくはバイモルフ構造)を有している。圧電駆動体22は全体として軸線22y上を半径方向に延びるとともに、垂直面(軸線10xと軸線22yを共に含む面)に対して傾斜角θ(図9参照)で回転方向の一方側(図7では反時計回り)の斜め上方を向くように設置されている。この傾斜角θは、搬送振動体12内の搬送路上の部品の搬送態様に応じて適宜に設定されるが、通常5〜15度程度である。板ばね23も基本的には圧電駆動体22と同様に半径方向に延びるとともに上記垂直面に対して同じ傾斜角θで斜め上方を向くように圧電駆動体22の外端部に接続されている。
ただし、図示例では、圧電駆動体22の半径方向に延在する軸線22y上に板ばね23の外端部が配置されるように、板ばね23を半径方向の内側から外側に向けて途中で回転方向の他方側(図7では時計回り)に湾曲させている。これによって、軸線10xを通過する中心点と板ばね23の外端部を結ぶ半径方向に圧電駆動体22の軸線22yが配置されるので、図示しない電圧印加経路によって生ずる圧電駆動体22の撓み変形により、板ばね23の外端部が振動盤12に回転振動を与えるときの動作軌跡を軸線10xを中心とした円弧に近い態様とすることができることから、振動盤16を効率的かつ高精度に回転振動させることが可能になる。また、板ばね23は幅方向の両端縁が凹曲線状に形成され、中間部が括れた形状を備えている。これは、振動盤16や搬送振動体12の重量により板ばね23に加わる負荷が幅方向に偏ることにより生ずる捩じれ方向の応力を中間部に集中させることで、板ばね23の長さ方向両端部の接続部分に亀裂が生ずることを防止するためである。
上記加振機構20の外端部(すなわち、板ばね23の外端部)は、振動盤12の外周部において下方に突出する態様で設けられた振動盤16の接続部16aに接続固定されている。この接続部16aは図示例では等角度間隔で上記加振機構20に対応する三箇所に設けられている。なお、接続部16aに対応して基台15の外周部には凹部15bが形成され、接続部16aが凹部15b内に張り出すように構成されることで、基台15と振動盤16とが内部構造17(加振機構20)を介在させている部分以外では接触しないように構成される。
振動盤16は平面視円形状で、その表面(上面)16sは平坦に構成される。この表面16s上には上記搬送振動体12が載置される。搬送振動体12は全体としてボウル状に構成されたアルミニウム又はその合金、ステンレス鋼などで形成された一体成形品(削り出しにより形成された一体品を含む。)である。搬送振動体12は、内面12sが円錐状に構成された内底部12aと、この内底部12aの半径方向外側に環状に構成された外周部12bとを有し、この外周部12bの内面12tは逆円錐状に傾斜した傾斜面となっている。この内面12t上には、上記内底部12aの内面12sの外周部分(最も低い部分)から螺旋状に外側へ向けて徐々に立ち上がるように形成された搬送路12w(図2参照)が形成される。この搬送路12wの断面形状などの詳細構造は図示を省略するが、内面12tにおいて例えば断面L字状の溝を形成したものである。振動搬送体12の中心には中心孔12gが形成され、この中心孔12gを中心として回転方向に重量バランスが得られるように調整されている。内面12sの上記外周部分(最下部)は部品溜まりとして用いられ、ここに溜められた部品は搬送振動体12に回転振動が与えられることで上記搬送路12w上を徐々に上方へ向けて搬送されていくようになっている。なお、本実施形態では内面12t上に螺旋状の搬送路12wが形成されているが、外周底部に部品溜まりを設けることで外周面上に螺旋状の搬送路を形成することも可能である。
内底部12aは搬送振動体12の重量を低減するために内面12sとは反対側(底面側)が凹状に形成されることで薄く構成されている。搬送振動体12の重量軽減は、搬送振動体12の回転振動の周波数を高めて搬送速度を向上させる上で重要である。これは、回転振動機11による搬送振動体12の駆動を共振点近くで行うことで効率的に振動させることができるが、このときの共振周波数を高める上でも搬送振動体12の軽量化が要求されるからである。一方、外周部12bの肉厚を確保して剛性を高めることにより、搬送路12w上の部品を整然と効率的に搬送することを可能にしている。外周部12bの剛性は微細な部品を搬送する場合には部品の暴れを防止する上で極めて重要である。回転振動機11から伝達された回転振動に従って搬送路12wも精密に回転振動すれば部品は暴れることなく姿勢を保ちつつスムーズかつ効率的に搬送されるが、外周部12bの剛性が低く搬送路12wが上記回転振動とは異なる態様で振動したり搬送路12wに到達する前に上記回転振動が吸収されたりすれば、部品が暴れたり、効率的な部品搬送ができなくなったりする。
搬送振動体12の外周部12bは、上記内面12tの断面形状により、全体として底部側が半径方向に厚く、上部側が半径方向に薄くなる断面を有している。また、外周部12bの底部12cには、下方に突出した位置に設けられ、上記振動盤16の外周部の表面16s上に密接して載置される平坦な底面12d(上記の外側載置面に相当する。)が形成されている。この底面12dは軸線10xを中心とする円環帯状に構成され、振動盤16の外周部の表面16sに密接するように構成される。本実施形態では、底部12cに設けられた底面12dは外周部12bにのみ形成され、底面12dよりも内側にある領域は、内底部12aの底面形状が凹状に構成されることにより、振動盤16に接触しないようになっている。このため、振動盤16の回転振動は外周に設けられた底面12dからのみ搬送振動体12の外周部12bへと伝達されるから、効率的に振動を外周部12bに形成された搬送路12wへ伝達することができる。なお、図示例では、搬送振動体12の底部12cの外縁は振動盤16の外周部よりも外側に張り出しているので、平坦な底面12dの外側の一部が振動盤16の表面16sと接触していないが、後述するように、平坦な底面12dの全体が表面16sと密接することが好ましい。ただし、この図示例から、振動盤16と搬送振動体12の寸法関係が多少変化しても、当該寸法関係に適合した形状のクランプ部材18を用いることで両者の外周部を支障なく固定できることがわかる。
図4に示すように、搬送振動体12の底部12cの外縁、すなわち、底部外周縁には凹溝12eが形成されている。この凹溝12eは下方(振動盤16)側に傾斜係合面12fを備えた段部を含む。凹溝12e及び傾斜係合面12fは図示例の場合には軸線10x回りに環状に形成されている。これにより搬送振動体12の振動盤16に対する取付角度位置が自由となるが、その必要性がなければ後述するクランプ構造に対応した角度位置にのみ形成されていてもよい。この場合に、凹溝12e及び傾斜係合面12fは軸線10x周りの回転方向に見たときに平面視で軸線10xを中心とする円弧状に伸びるように形成される。
上記の傾斜係合面12fは半径方向外側に向くとともに斜め上方を向く面として構成される。すなわち、傾斜係合面12fは軸線10xの方向に対して傾斜して振動盤16とは反対側に向くとともに、軸線10xと直交する面(水平面)内においては三箇所のクランプ構造間でそれぞれ相互に異なる方向を向いた面となっている。図示例では三箇所のクランプ構造における各傾斜係合面12fは上記水平面内でいずれも半径方向外側に向いているが、各クランプ構造の角度位置における半径方向外側は水平面内において相互に異なる向きであるので、結果として各傾斜係合面12fの水平面内における向きは各クランプ構造間でいずれも異なるものとなる。なお、一般的には、複数のクランプ構造のうち少なくとも二つの傾斜係合面12fについて水平面内における傾斜の向きが異なっていればよい。
傾斜係合面12fの水平面を基準とした傾斜角φは20〜70度の範囲内が好ましく、さらに30〜60度の範囲内であることがさらに好ましい。この傾斜角φは、搬送振動体12が振動盤16に固定された状態、すなわち、傾斜係合面12fが後述するクランプ部材18のクランプ爪18bに設けられるクランプ面18dと密接した状態での傾斜角であり、したがってこの状態におけるクランプ面18dの傾斜角でもあって、この傾斜角φによりクランプ爪18bによる固定力の方向が決定される。傾斜角φが上記角度範囲を逸脱した場合でも従来構造に比べると或る程度の効果が得られるが、当該固定力の向きが軸線方向(搬送振動体12を振動盤16に押し付ける方向)と半径方向のいずれかに偏るので、複数のクランプ構造間の向きの違いによって与えられる水平方向の固定力と、各クランプ構造において与えられる軸線方向(搬送振動体12を振動盤16に押し付ける方向)の固定力のうちいずれか一方が不十分になるか、或いは、これを回避するためにクランプ部材の締付トルクが過大になりやすい。
このとき、振動盤16から搬送振動体12へと与えられる回転振動は、部品搬送力を生じさせるために、軸線10xを中心として回転する側に向けて斜め上方へ向かう振動方向を有する。このため、水平方向と軸線方向のうち一方の固定力が不足すると、振動盤と搬送振動体が当該一方の方向にずれやすくなるので、振動変位の搬送振動体への伝達効率が低下し、搬送効率が悪化するとともに、上記ずれによって不要振動が発生して部品が暴れやすくなる。特に、搬送速度を高めるために振動周波数を上昇させると、従来構造において用いられる各固定方向と直交する方向(半径方向の締付固定部では軸線方向、軸線方向の締付固定部では水平方向)の摩擦力に起因する固定作用はほとんど期待できなくなるため、振動の伝達ロスが大きくなって高速搬送が困難になるとともに不要な振動が発生して部品姿勢が安定しなくなる。
振動盤16の外周面には水平で半径方向に延びる軸線を備えたネジ穴16bが形成され、このネジ穴16bに螺合したボルト19によりクランプ部材18が振動盤16の外周面上に締め付け固定されている。これらのネジ穴16b、クランプ部材18及びボルト19は、上記凹溝12e(段部)とともに本発明のクランプ構造を構成する。このクランプ構造は軸線10x周りの複数個所に設けられる。特に、水平方向に確実に固定するためには三箇所以上にクランプ構造を設けることが好ましい。図示例では、クランプ構造は軸線10x周りに等角度間隔で三箇所に設けられている。
クランプ部材18は、上記ボルト19を挿通する段付き孔構造を備えた固定孔18aを有し、この固定孔18aは半径方向の軸線を備えてクランプ部材18を貫通している。固定孔18aの途中には半径方向外側に向いた段差部が設けられ、この段差部にボルト19の頭部が係合することでボルト19を振動盤16のネジ穴16bに螺合させて締め付けたときクランプ部材18のクランプ面18dが傾斜係合面12fに押し付けられる。
クランプ部材18の上部(搬送振動体12側の部分)には半径方向内側に突出するクランプ爪18bが設けられ、このクランプ爪18bには、上記凹溝12eの傾斜係合面12fと密接する前述のクランプ面18dを備えた段部が形成されている。クランプ爪18b及びクランプ面18dは、前述の凹溝12e及び傾斜係合面12fに整合するように、軸線10x周りの回転方向に見たときに平面視で軸線10xを中心とする逆円弧状に形成されている。
クランプ部材18の下部(搬送振動体12とは反対側の部分)には半径方向内側に突出する係合爪18cが設けられ、この係合爪18cは振動盤12の外周面と下面との間の角部に係合し、クランプ部材18の搬送振動体12の側の位置を規制している。すなわち、クランプ部材18がボルト19により振動盤16の側に押し付けられた状態で係合爪18cが振動盤16に係合することによりクランプ部材18の振動盤16に対する搬送振動体12の側(図示上方)への移動が規制される。なお、本実施形態では、クランプ構造は、振動盤16において下方に突出する接続部16aを避けた角度位置(図示例では回転方向に複数設けられた接続部16a間の角度の二等分線上の位置)に設けられている。これによって、上記係合爪18cを接続部16aに妨げられずに振動盤16の外周面の下側の角部に係合させることができる。
上記の構成により、クランプ部材18はボルト19によって振動盤16の外周部に対して半径方向に移動可能に取り付けられる。これによって、クランプ部材18を搬送振動体12の底部外周縁に対して容易に係合させたり取り外したりすることができるとともに、搬送振動体12に対する締付固定力を調整することも可能である。例えば、クランプ部材18の固定孔18aにボルト19を挿通させてボルト19をネジ穴16bに螺合させていくことで、ボルト19でクランプ部材18を締め付け、クランプ部材18のクランプ爪18bが凹溝12eに係合し、クランプ面18dを傾斜係合面12fに密接させることができる。この場合に、振動盤16の外周部とクランプ部材18の間隔は、クランプ爪18bが凹溝12eに充分に押し付けられることで搬送振動体12が半径方向内側に固定力を受けて確実に位置決めされるとともに下方に固定力を受けて振動盤12に確実に押し付けられた状態にすることができるように設定される。なお、当該状態になったときに、図示のようにクランプ部材18の内周面が振動盤12の外周面に当接するように構成されることが、クランプ構造の取付安定性を高める上で好ましい。
本実施形態では、図2(a)及び(b)に示すように三箇所に形成されたクランプ構造が全て同一構造(回転対称性を有する構造)を有するものとなっている。そして、これらのクランプ構造が軸線10x回りに等角度(120度)間隔で設けられている。各クランプ構造においてはボルト19を回転させることでクランプ部材18が振動盤16に対して半径方向に移動可能に構成されるが、そのうちの一つのクランプ構造のみにおいてボルト19を緩めてクランプ部材18を半径方向に移動させることで、他の二つのクランプ構造ではボルト19を操作することなく搬送振動体12を振動盤16上から取り外すことができる。また、予め二つのクランプ構造において振動盤16に対するボルト19の螺合深さが設定されてあれば、残り一つのクランプ構造においてボルト19が緩められた状態で残りの二つのクランプ部材18のクランプ爪18bに嵌合させる態様で搬送振動体12を振動盤12上に載置した後、当該一つのクランプ構造のボルト19を締め付けるだけで搬送振動体12を振動盤16上に固定することが可能になる。これは、各クランプ構造はクランプ面18dで傾斜係合面12fを傾斜した向きに押さえ付けているだけであり、従来構造のように直接の締付固定構造や挟持した固定構造を用いて固定しているわけではないので、一部のクランプ構造の操作のみで全てのクランプ構造の固定状態の設定と解除を行うことができるからである。一般的には少なくとも一つのクランプ構造のクランプ部材を移動させずに着脱作業を行うことができる。ただし、本実施形態のように一つのクランプ構造の操作のみで残りの二つ以上のクランプ構造を操作しなくても着脱作業ができるように構成することは容易である。なお、この場合に、移動操作(螺合操作)を要するクランプ部材を有するクランプ構造を除いた残りのクランプ構造においてはボルトを操作する必要がないことから、クランプ部材18を振動盤16に対して移動できない構造(固定位置にのみ取付できる構造)で取り付けてもよい。
以上説明した本実施形態では、搬送振動体12の外周部12bに設けられた底部12cが振動盤16の外周部の表面16s上に載置されるとともに、底部12cに形成された凹溝12eにクランプ部材18のクランプ爪18bが係合し、傾斜係合面12fとクランプ面18dが密接することで、搬送振動体12が振動盤16上に固定される。したがって、クランプ作用による固定力は搬送振動体12を振動盤16に対して軸線(垂直)方向に押し付けるだけでなく半径方向内側に向けても加わるため、三箇所のクランプ構造における水平方向の固定力が相互に異なる向きに与えられることになる。このため、搬送振動体12は水平方向と軸線方向の双方に固定されることとなるから、水平方向と軸線方向の少なくともいずれか一方を摩擦力に頼っていた従来構造に比べると、振動盤16の回転振動を効率的かつ高精度に搬送振動体12に伝達させることができ、また、搬送振動体12に不要な振動が発生することも防止でき、騒音も低減できる。
より詳細に述べると、本実施形態の部品搬送装置10においては、回転振動機11によって水平面(軸線10xと直交する面)に対して斜め方向の回転振動が発生し、この回転振動を搬送振動体12に与えるようになっているが、従来の外周部による固定方法のうち、搬送振動体を振動盤に対して軸線方向の締付により固定する場合には、軸線(垂直)方向の振動成分を効率的に伝達することはできるものの、両者間に水平方向のずれが生ずる可能性があり、このために効率的な搬送が困難になり搬送速度を高めることができなくなり、部品の暴れや騒音が発生する虞もある。また、搬送振動体を振動盤に対して半径方向の締付により固定する場合には、軸線方向にずれが生ずる可能性があり、このためにやはり効率的に振動を伝達することができず搬送速度を高めることが難しく、部品の暴れや騒音が発生する虞もある。
これに対して本実施形態のクランプ構造では、複数のクランプ構造において水平面内において相互に異なる向きに設定されるとともに軸線方向に対して傾斜した方向に締付力を与えることにより、搬送振動体12を振動盤16に対して水平方向と軸線方向に共に確実に固定することができるため、回転振動を振動盤16から確実かつ高精度に搬送振動体12に伝達することができるので、特に高周波数で部品を高速搬送する場合に効率的な搬送態様を実現でき、搬送速度の高速化や部品の暴れ防止を図ることができ、なおかつ騒音も低減できる。また、前述のように、各クランプ構造においては傾斜係合面12fにクランプ面18dが密接した状態となるように軸線10xの方向に対し斜めの向きに押し当てるだけでよく、水平面内で相互に異なる向きに設定された傾斜係合面12fを有する複数のクランプ構造を設けることにより搬送振動体12を振動盤16に固定しているので、ボルトによる螺合構造で半径方向若しくは軸線方向に直接固定する従来方法に比べると、着脱作業が容易になるという利点もある。特に、クランプ部材18により搬送振動体12に対して半径方向内側に締付応力を与える構造とすることによって、クランプ構造も簡易になり、着脱作業もさらに容易になる。また、軸線方向と水平方向の固定作用を同一箇所で与えることができることから、搬送振動体12内に生ずる不要振動を抑制できるという効果も得られる。さらに、クランプ部材18を用いることで搬送振動体12と振動盤16の固定構造部分の自由度が高くなり、しかも傾斜係合面12fを用いることで軸線10x方向の締付固定に用いる水平面を形成する場合よりも面近傍部分の剛性を高めることが容易になるため、固定部分の構造の簡易化や剛性の確保、加工コストの低減などを図ることが可能になるという有利な点がある。
一方、本実施形態の部品搬送装置10を図10に示す固定方法と比較した場合には、以下のような点で有利な効果が得られる。図10に示す固定方法では、搬送振動体2の中心部をボルト3により固定しているだけであるので、振動盤1aから受ける回転振動によって搬送振動体2の変形により搬送振動体2の外周部に不要な振動モードが発生し、これによって効率的な部品搬送ができなかったり、部品が搬送中に暴れたり、騒音が発生したりするなどの不具合が生ずる。また、搬送振動体2は振動盤1aに対して回転方向には中心部における摩擦力のみで固定されているので、振動周波数が高くなると回転方向の振動成分が固定部分で吸収されやすくなり、振動の伝達効率が著しく低下する。これに対して、本実施形態では、搬送振動体12の底部外側に振動盤16の表面16s上に載置される外側載置面(底面12d)を設けるとともに振動盤16の外周部を搬送振動体12の外周部12bにクランプ構造によって固定しているので、回転振動が振動盤16の外周部からこれに接触する底部12cを備えた外周部12bに形成される搬送路12wへと軸線方向に伝達されるため、搬送路12wの振動態様が振動盤16の振動態様に近くなり、振動伝達を効率的かつ高精度に行うことができる。したがって、部品を高速かつ安定して搬送することができ、部品に与えられる搬送力が不足したり、部品が搬送路12w上で暴れたりすることを防止でき、騒音が生ずることも防止できる。また、振動盤16の外周部が搬送振動体12の外周部12bに固定されることで、搬送振動体12の内周部の軽量化が可能となるために高速搬送がさらに容易になる。
また、本実施形態では、クランプ部材18に係合爪18bが設けられ、この係合爪18bが振動盤16の表面16sとは反対側の角部に係合することにより、クランプ部材18の移動が振動盤16に対して搬送振動体12の側に規制されるため、クランプ部材18によるクランプ状態を確実かつ安定的に(再現性良く)実現することができる。
さらに、本実施形態では、回転振動機11において回転方向に三つの加振機構20が等角度間隔で設置され、これらの加振機構20が回転方向に等角度間隔で設けられた三箇所で振動盤16を駆動して回転振動を発生させるとともに、振動盤16と搬送振動体12が回転方向に等角度間隔で設けられる三箇所でクランプ構造により固定されるので、各クランプ構造に加わる回転振動に伴う応力を均等に負担することができ、回転振動の伝達態様を安定させることができる。
次に、図5を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態では、図5に示すクランプ構造及びその近傍の構成のみが上記第1実施形態と異なるだけであり、他の構成は第1実施形態と同様であるので、同様の部分については説明を省略する。
本実施形態では、振動盤16の外周部に形成されたネジ穴16bにボルト19′を螺合させてクランプ部材18′を取り付けるとともに、クランプ部材18′のクランプ爪18b′により搬送振動体12の外周部12bを固定している点で第1実施形態と同様であるが、クランプ部材18′自体の構造が異なる。クランプ部材18′には第1実施形態の係合爪18cは設けられていない。これによってクランプ部材18′は上記接続部16a上の角度位置にも取り付けることができるようになっている。
また、本実施形態では、上記ネジ穴16bの雌ネジが形成されている部分とは軸線方向に異なる位置である開口側に、雌ネジの設けられていない円筒内面を備えたガイド孔部16b′(上記ガイド部に相当する。)が形成されている。一方、ボルト19′には、ネジ穴16bの雌ネジに対応する雄ネジ19a′が設けられている部分とは軸線方向の異なる位置である頭部19b′側に、雄ネジの設けられていない円筒外面を備えた位置決め軸部19c′(上記位置決め部に相当する。)が形成されている。ボルト19′をネジ穴16bに螺合させると、上記のガイド孔部16b′に位置決め軸部19c′が導入され、ボルト19′と振動盤16とが必要な位置決め精度で位置決めされるようになっている。また、位置決め軸部19c′はクランプ部材18′に設けられた固定孔18aに挿通されるが、このとき、位置決め軸部19cによってボルト19′とクランプ部材18′とが必要な位置決め精度で位置決めされるようになっている。したがって、クランプ部材18′は、上記位置決め軸部19cを介して振動盤16に対して必要な位置精度で軸線方向に保持される。これによって、クランプ爪18b′の凹溝12eに対する軸線方向の位置精度を容易に確保できるので、搬送振動体12を確実にかつ安定して(再現性良く)振動盤16に固定できる。
なお、本実施形態では、搬送振動体12の底面12dの全面が振動盤16の表面16s上に接触しているので、搬送振動体12が振動盤16上により安定した状態で載置される。そして、この構造に対応させて、クランプ部材18′のクランプ爪18b′の半径方向内側への突出量を大きくし、クランプ爪18b′が凹溝12eに到達するように構成している。ただし、図示点線で示すように、搬送振動体12の底部外周縁を振動盤16より外周側に張り出させ、これに対応するクランプ爪と係合するように構成しても構わない。
次に、図6を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態でも、図6に示すクランプ構造及びその近傍の構成のみが上記第1実施形態と異なるだけであり、他の構成は第1実施形態と同様であるので、同様の部分については説明を省略する。
本実施形態では、搬送振動体12の振動盤16′上に載置される底面12dよりも外周側に底部外周縁を張り出させ、ここに凹溝12eを形成している。そして、搬送振動体12の凹溝12eの形成された底部外周縁の形状に合わせて、クランプ爪18b″を振動盤16′から外周側に離間した位置に備えたクランプ部材18″を設けている。このように、組み合わされる振動盤16′と搬送振動体12の形状に応じてクランプ部材を形成することで、種々の組み合わせに容易に対応することができる。なお、本実施形態のクランプ部材18″には第1実施形態と同様に係合爪18c″が形成され、この係合爪18c″は振動盤16′の下方の角部に係合している。この係合爪18c″を設けることで、搬送振動体12の外周縁が振動盤16の外周面より外側に張り出していても安定したクランプ状態を実現できる。
ところで、上記実施形態では図2(b)に示すように傾斜係合面12f及びクランプ面18dが水平面内で軸線10xを中心とした回転方向Rに沿って形成されているが、図2(c)又は(d)に示すように傾斜係合面12f及びクランプ面18dを当該回転方向Rと交差する態様で形成してもよい。ここで、図2(c)に示す構成は、水平面内における傾斜係合面12f及びクランプ面18dが軸線10xを向いてはいるものの平坦に構成されることで円弧状の回転方向Rと交差している例である。また、図2(d)に示す構成は、水平面内における傾斜係合面12f及びクランプ面18dが軸線10xとは異なる方位を向くことで回転方向Rと交差している例(図示例では水平面内で平坦な面となっているが円弧状の面であってもよい。)である。これらの場合に、複数のクランプ構造のうち少なくとも一つのクランプ構造において、水平面内における傾斜係合面12f及びクランプ面18dが上記回転方向Rに対して交差するように構成することで、搬送振動体12が振動盤16に対し回転方向Rに対しても少なくとも斜めに向いた面の密接により固定されるので、回転方向Rに対する固定力をさらに増強することができるから、本発明の効果をさらに高めることが可能である。なお、この場合には、少なくとも二つのクランプ構造間で交差角その他の回転方向Rに対する交差態様が異なるように構成することがさらに好ましい。また、以上の説明は傾斜係合面12fが水平面内で半径方向外側に向き、クランプ面18dが水平面内で半径方向内側に向く例を示すものであるが、逆に傾斜係合面12fが半径方向内側に向き、クランプ面18dが半径方向外側に向くように構成することも可能である。
なお、発明者が図10に示される従来の部品搬送装置と上記第1実施形態の部品搬送装置10とを同じ振動周波数で駆動したところ、全体として部品搬送装置10の方が高い搬送速度を示すとともに搬送姿勢も保たれることが確認された。特に、圧電駆動体22に対する駆動電圧を高めて回転振動の振幅を大きくすると、従来の部品搬送装置では騒音が大きくなるとともに搬送路上の部品が暴れて整列させにくくなるとともに効率的に移動しなくなるという問題点が生じたが、部品搬送装置10では騒音はほとんど発生しないとともに部品が暴れることもなく、搬送速度がさらに高くなることがわかった。比較した両部品搬送装置は縦横高さがそれぞれ0.2〜1.5mm程度の微細な部品(例えばLEDチップなど)を搬送するための小型の装置である。また、部品搬送装置10は従来の装置に比べて搬送速度を1.5〜2倍程度にまで高めることが可能であり、駆動電圧を従来の装置より低くしても良好な搬送速度を得ることができた。
尚、本発明の部品搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、振動盤16の外周部にボルト19等でクランプ部材18を取り付けるとともに、搬送振動体12の外周底部にクランプ部材18のクランプ面18dが係合する傾斜係合面12fを形成しているが、これとは逆に、搬送振動体12の外周底部にボルト等でクランプ部材を取り付けるとともに振動盤16の外周部にクランプ面が係合する傾斜係合面を形成してもよい。また、上記実施形態では傾斜係合面12fはいずれも水平面内において半径方向外側に向いているが、複数のクランプ構造の少なくとも二つのクランプ部材間で傾斜係合面12fが相互に異なる向きとなっていればよく、したがって、個々の傾斜係合面12fについては水平面内において半径方向内側に向いていても、或いは、その他の方向を向いていてもよい。