JP2011086859A - 光電変換装置 - Google Patents

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勇 田中
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Abstract

【課題】リーク電流を抑制した光電変換効率の高い光電変換装置を提供すること。
【解決手段】光電変換装置10は、I-III-VI化合物半導体を含み、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比が他方主面側よりも一方主面側において小さい部分を有する光吸収層3と、前記一方主面上に設けられたバッファ層4と、を具備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、I-III-VI化合物半導体を具備する光電変換装置に関するものである。
太陽電池として、CIGS等のカルコパライト系のI-III-VI族化合物半導体から成る光吸収層を具備する光電変換装置を用いたものがある。この光電変換装置は、例えば、ソーダライムガラスからなる基板上に裏面電極となる、例えば、Moからなる第1の電極層が形成され、この第1の電極層上にI-III-VI族化合物半導体からなる光吸収層が形成されている。さらに、その光吸収層上には、ZnS、CdSなどからなるバッファ層を介して、ZnOなどからなる透明の第2の電極層が形成されている。
このような光電変換装置の光電変換効率を高めるために、光吸収層を構成するCu、In、Seの組成を層内で均一化する技術が開示されている。
特開2000−156517号公報
しかしながら、特許文献1のように光吸収層の組成を均一化したとしても、光吸収層の形成時に光吸収層表面にセレン化銅のようなI-B族元素とVI-B族元素との化合物が生成し、このセレン化銅によってリーク電流が生じるため、光電変換効率を高めることが困難であるという問題点がある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、リーク電流を抑制した光電変換効率の高い光電変換装置を提供することである。
本発明の一実施形態に係る光電変換装置は、I-III-VI化合物半導体を含み、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比が他方主面側よりも一方主面側において小さい部分を有する光吸収層と、前記一方主面上に設けられたバッファ層と、を具備することを特徴とする。
ここで光吸収層の一方主面側とは、光吸収層の厚み方向の中央からバッファ層側の表面までの領域をいい、光吸収層の残部を他方主面側という。
また、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比は、I-III-VI化合物半導体を構成する元素のうち、すべてのI-B族元素の合計モル数をM1とし、すべてのIII-B族元素の合計モル数をM2としたときに、M1/M2で表される。
また、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比が他方主面側よりも一方主面側において小さい部分を有するというのは、光吸収層の他方主面側の領域におけるモル比(M1/M2)の平均値よりも小さいモル比(M1/M2)を有する部分が一方主面側に存在することをいう。
このような構成により、光吸収層のバッファ層側表面においてI-B族元素とVI-B族元素との化合物が形成されるのを抑制でき、リーク電流を有効に抑制することができる。
上記光電変換装置において好ましくは、前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の前記モル比が、前記光吸収層の厚み方向における中央から前記他方主面までの領域における前記モル比の平均値に対して0.9倍以下である。
上記光電変換装置において好ましくは、前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の前記モル比が、前記光吸収層の厚み方向における中央から前記他方主面までの領域における前記モル比の平均値に対して0.4倍乃至0.9倍である。
上記光電変換装置において好ましくは、前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の厚みは50nm以上である。
上記光電変換装置において好ましくは、前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の厚みは前記光吸収層の膜厚の0.4倍以下である。
本発明の光電変換装置によれば、リーク電流を抑制した光電変換効率の高い光電変換装置を提供することができる。
本発明の光電変換装置の実施の形態の一例を示す断面図である。 本発明の光電変換装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。 図2の光電変換装置の斜視図である。 本発明の光電変換装置の実施の形態の一例における光吸収層の各元素の分布を示すグラフである。
以下に本発明の光電変換装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の光電変換装置の実施の形態の一例を示す断面図である。光電変換装置10は、基板1と、第1の電極層2と、光吸収層3と、バッファ層4と、第2の電極層5とを含んで構成される。
図1において、光電変換装置10は複数並べて形成されている。そして、光電変換装置10は、光吸収層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、光吸収層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。この第3の電極層6は、隣接する光電変換装置10の第1の電極層2と一体化されている。この構成により、隣接する光電変換装置10同士が直列接続されている。なお、一つの光電変換装置10内において、接続導体7は光吸収層3およびバッファ層4を分断するように設けられており、第1の電極層2と第2の電極層5とで挟まれた光吸収層3とバッファ層4とで光電変換が行なわれる。
基板1は、光電変換装置10を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。
第1の電極層2および第3の電極層6は、Mo、Al、TiまたはAu等の導電体が用いられ、基板1上にスパッタリング法または蒸着法等で形成される。
光吸収層3は、I-III-VI化合物半導体を含んでおり、例えば、1.5〜2.0μmの厚みである。I-III-VI化合物半導体とは、I-B族元素(11族元素ともいう)とIII-B族元素(13族元素ともいう)とVI-B族元素(16族元素ともいう)との化合物半導体であり、カルコパイライト構造を有し、カルコパイライト系化合物半導体と呼ばれる(CIS系化合物半導体ともいう)。I-III-VI化合物半導体としては、例えば、Cu(In,Ga)Se(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)(CIGSSともいう)、およびCuInS(CISともいう)が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Seとは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)とは、CuとInとGaとSeとSとから主に構成された化合物をいう。
光吸収層3は、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比が、他方主面側よりも一方主面側において小さい部分を有する。なお、第1の電極層2側の領域とは、光吸収層3の厚み方向の中央から第1の電極層2側の領域をいう。バッファ層4側の領域とは、光吸収層3の厚み方向の中央からバッファ層4側の領域をいう。また、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比は、I-III-VI化合物半導体を構成する元素のうち、すべてのI-B族元素の合計モル数をM1とし、すべてのIII-B族元素の合計モル数をM2としたときに、M1/M2で表される。すなわち、光吸収層3がCu(In,Ga)Seから成る場合、M1はCuのモル数であり、M2はInのモル数とGaのモル数の合計である。また、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比が、他方主面側よりも一方主面側において小さい部分を有するというのは、他方主面側の領域におけるモル比(M1/M2)の平均値よりも小さいモル比(M1/M2)を有する部分が、一方主面側に存在することをいう。
好ましくは、光吸収層3の厚み方向における中央からバッファ層4までの領域においてモル比(M1/M2)が小さくなっている部分のモル比(M1/M2)が、光吸収層3の厚み方向における中央から第1の電極層2までの領域におけるモル比(M1/M2)の平均値に対して0.9倍以下となっているのがよい。このような構成により、リーク電流をより抑制することができる。
光吸収層3全体としての光電変換に寄与する部位を十分に確保するとともにリーク電流の抑制を良好に行なうという観点からは、光吸収層3の厚み方向における中央からバッファ層4までの領域においてモル比(M1/M2)が小さくなっている部分のモル比(M1/M2)が、光吸収層3の厚み方向における中央から第1の電極層2までの領域におけるモル比(M1/M2)の平均値に対して0.4倍乃至0.9倍であるのがよい。
また、リーク電流の抑制とともに電荷移動を向上させるという観点からは、光吸収層3の一方主面側の領域におけるモル比(M1/M2)の平均値が、他方主面側の領域におけるモル比(M1/M2)の平均値よりも小さくなっていることが好ましい。
また、前記モル比(M1/M2)が小さくなっている部分の厚さは、リーク電流の抑制を良好に行なうという観点からは50nm以上であることが望ましい。また、光電変換に寄与する部位を十分に確保するという観点からは、前記モル比(M1/M2)が小さくなっている部分の厚さは、前記光吸収層3の膜厚の0.4倍以下であることが望ましい。
光吸収層3は、例えば、Cu(In,Ga)Seの一例として図4に示すように、バッファ層4側の領域においてCuのモル比が小さくなっている部分を有する。なお、図4は、光吸収層3のバッファ層4側の表面からの深さにおける各元素のIII-B族元素(InとGaとの合計)に対するモル比をX線光電子分光法(XPS)を用いて測定した結果を示すグラフである。
光吸収層3がCu(In,Ga)Seから成る場合、好ましくは、厚み方向における中央からバッファ層4までの領域においてモル比(M1/M2)が小さい部分におけるモル比(M1/M2)が1より小さいことが好ましい。このような構成により、リーク電流をより効果的に抑制することができる。
このような光吸収層3は、例えば、I-B族元素の比率が異なる複数層のI-III-VI化合物半導体を形成することにより形成できる。I-III-VI化合物半導体の形成は、原料をスパッタや塗布により成膜し、加熱処理することにより形成できる。
また、光吸収層3は、CuなどのI-B族元素を有機化合物中に溶解した原料溶液を用いて被膜状に形成した前駆体を、100℃〜400℃程度の低温で加熱することによっても形成できる。有機化合物中に溶解した原料溶液に対して、このような方法を用いると、加熱処理時にI-B族元素が電極側に偏析し、一方主面側でI-B族元素の比率が少ない光吸収層3を容易に作製できる。このようなI-B族元素の偏析については、詳細はわからないが、I-B族元素と有機化合物との錯体がその他III-B族元素に比較して析出しやすく、沈殿したためではないかと考えられる。
このようなI-B族元素を溶解するための有機化合物としては、含カルコゲン元素含有有機化合物と、ルイス塩基性有機溶剤とを含んだものが好ましい(以下、含カルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機溶剤とを含む溶媒を混合溶媒Sという)。含カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物である。カルコゲン元素とは、VI-B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン元素がSである場合、含カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェン、スルホキシド、スルホン、チオケトン、スルホン酸、スルホン酸エステルおよびスルホン酸アミド等が挙げられる。好ましくは、金属と錯体を形成して金属溶液を良好に作製できるという観点からは、チオール、スルフィド、ジスルフィド等が良い。特に塗布性を高めるという観点からは、フェニル基を有するものが好ましい。このようなフェニル基を有するものとしては、例えば、チオフェノール、ジフェニルスルフィド等およびこれらの誘導体が挙げられる。
カルコゲン元素がSeである場合、含カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、セレノール、セレニド、ジセレニド、セレノキシド、セレノン等が挙げられる。好ましくは、金属と錯体を形成して金属溶液を良好に作製できるという観点からは、セレール、セレニド、ジセレニド等が良い。特に塗布性を高めるという観点からは、フェニル基を有するものが好ましい。このようなフェニル基を有するものとしては、例えば、フェニルセレノール、フェニルセレナイド、ジフェニルジセレナイド等およびこれらの誘導体が挙げられる。
カルコゲン元素がTeである場合、含カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、テルロール、テルリド、ジテルリド、等が挙げられる。
ルイス塩基性有機溶剤とは、ルイス塩基となり得る有機溶剤である。ルイス塩基性有機溶剤としては、ピリジン、アニリン、トリフェニルフォスフィン等およびこれらの誘導体が挙げられる。特に塗布性を高めるという観点からは、沸点が100℃以上であるものが好ましい。
上記混合溶媒Sは、取り扱い性の観点からは、室温で液状となるような組み合わせであることが好ましい。含カルコゲン元素含有有機化合物は、ルイス塩基性有機溶剤に対して0.1〜10倍であるのがよい。これにより、高濃度のI-B族元素の溶液を得ることができ、光吸収層3の前駆体を塗布により良好に形成できるとともに、表面近傍でのI-B族元素の比率の小さい光吸収層3を良好に形成できる。
混合溶媒Sに、I-B族元素を溶解させて溶液を作製する方法としては、上記混合溶媒SにI-B族の金属またはI-B族の金属塩を直接溶解させればよい。光吸収層3にI-III-VI化合物半導体の成分以外の不純物が残るのを抑制するという観点からは、I-B族の金属を混合溶媒Sに直接溶解させることが好ましい。なお、I-B族の金属を混合溶媒Sに直接溶解させるというのは、I-B族の単体金属の地金または合金の地金を直接、混合溶媒Sに混入し、溶解させることをいう。これにより、単体金属の地金または合金の地金を、一旦、他の化合物(例えば塩化物などの金属塩)に変化させた後に溶媒に溶解させるという余計な工程は必要なく、工程が簡略化できるとともに、光吸収層3を構成する元素以外の元素が含まれるのを抑制することができ、光吸収層3の純度を高めることができる。
I-B族元素はCuやAgなどである。I-B族元素は1種の元素であってもよく、2種以上の元素であってもよい。2種以上の元素である場合、混合溶媒Sに、I-B族の金属を溶解させて溶液を作製する方法としては、上記混合溶媒Sに2種以上のI-B族の金属の混合物を一度に溶解させてもよい。あるいは、各元素のI-B族の金属をそれぞれ上記混合溶媒Sに溶解させた後、これらを混合してもよい。
混合溶媒SにI-B族元素を溶解させた上記の原料溶液には、光吸収層3の他の原料であるGaやInなどのIII-B族元素も溶解させることが好ましい。
上記の原料溶液を用いて光吸収層3を形成する方法としては、上記原料溶液を第1の電極層2を有する基板1の表面に塗布して被膜状の前駆体を形成し、この前駆体を熱処理して、I-B族金属とIII-B族金属と含カルコゲン元素含有有機化合物のカルコゲン元素とを反応させてI-B族金属とIII-B族金属とカルコゲン元素との化合物から成る半導体層(例えばCIGS等)を形成することができる。なお、含カルコゲン元素含有有機化合物は、ルイス塩基性有機溶剤と混合して混合溶媒Sを構成し、この混合溶媒Sの一成分としてI-B族金属およびIII-B族金属を溶解する機能を有するが、熱処理によってI-B族金属およびIII-B族金属と反応して化合物半導体を構成する機能も有する。この含カルコゲン元素含有有機化合物に含まれるカルコゲン元素は、熱処理の際、気化などによって減少することもある。また、I-III-VI化合物半導体の所望の組成比を得るためにカルコゲン元素を多く供給することもある。そのようなカルコゲン元素を補うための方法としては、原料溶液にカルコゲン元素を別途溶解させておいたり、あるいは、熱処理時に硫化水素、セレン化水素またはSe蒸気等の気体として供給してもよい。
原料溶液は、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレーまたはダイコータなどを用いて塗布され、乾燥されて被膜状の前駆体となる。乾燥は、還元雰囲気下で行うことが望ましい。乾燥時の温度は、例えば、50〜300℃で行う。そして、上記前駆体を熱処理して、1.0〜2.5μmの光吸収層3を作製する。
光電変換装置10は、上記半導体層を光吸収層3として用い、この光吸収層3上にバッファ層4が形成される。バッファ層4とは、光吸収層3に対してヘテロ接合を行う層をいう。光吸収層3とバッファ層4とは異なる導電型であることが好ましく、例えば、光吸収層3がp型半導体である場合、バッファ層4はn型半導体である。好ましくはリーク電流を低減するという観点からは、バッファ層は、抵抗率が1Ω・cm以上の層であるのがよい。バッファ層4としては、CdS、ZnS、ZnO、InSe、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が挙げられ、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。なお、In(OH,S)とは、InとOHとSとから主に構成された化合物をいう。(Zn,In)(Se,OH)は、ZnとInとSeとOHとから主に構成された化合物をいう。(Zn,Mg)Oは、ZnとMgとOとから主に構成された化合物をいう。バッファ層4は光吸収層3の吸収効率を高めるため、光吸収層3が吸収する光の波長領域に対して光透過性を有するものが好ましい。
好ましくは、バッファ層4はインジウムを含み、第2の電極層5が酸化インジウムを含むことが好ましい。第2の電極層5が酸化インジウムを含むことで、透明性が高いとともに高い導電率を有することができる。さらにバッファ層4にインジウムを含むことで、バッファ層4と第2の電極層5が同じ元素を含み、層間の元素の相互拡散による導電率の変化を抑制することができる。より好ましくは、光吸収層3はインジウムを含むカルコパイライト系の材料であり、バッファ層4はインジウムを含み、第2の電極層5が酸化インジウムを含むことが好ましい。これにより、光吸収層3、バッファ層4、第2の電極層5がすべてインジウムを含むことにより、層間の元素の相互拡散による導電率やキャリア濃度の変化を抑制することができる。
光電変換装置10の耐湿性を向上するという観点からは、バッファ層4はIII-VI族化合物を主成分として含むことが好ましい。なお、III-VI族化合物とは、III-B族元素とVI-B族元素との化合物である。また、III-VI族化合物を主成分として含むというのは、バッファ層4を構成する化合物のうち、III-VI族化合物が50モル%以上、より好ましくは80モル%以上であることをいう。さらに光電変換装置10の耐湿性を向上するという観点からは、バッファ層4を構成する金属元素のうち、Zn元素が50 atomic%以下、より好ましくは20 atomic%以下であるのがよい。
また、バッファ層4は、その厚みが10〜200nmであり、好ましくは100nm以上であるのがよい。これにより、高温高湿条件化における光電変換効率の低下を特に効果的に抑制することができる。
第2の電極層5は、ITO、ZnO等の0.05〜3.0μmの透明導電膜である。第2の電極層5は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成される。第2の電極層5は、バッファ層4よりも抵抗率の低い層であり、光吸収層3で生じた電荷を取り出すためのものである。電荷を良好に取り出すという観点からは、第2の電極層5の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であるのがよい。
第2の電極層5は光吸収層3の吸収効率を高めるため、光吸収層3の吸収光に対して光透過性を有するものが好ましい。光透過性を高めると同時に光反射ロス防止効果および光散乱効果を高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から、第2の電極層5は0.05〜0.5μmの厚さとするのが好ましい。また、第2の電極層5とバッファ層4との界面での光反射ロスを防止する観点からは、第2の電極層5とバッファ層4の屈折率は等しいのが好ましい。
光電変換装置10の耐湿性を向上するという観点からは、第2の電極層5はIII-VI族化合物を主成分として含むことが好ましい。なお、III-VI族化合物を主成分として含むというのは、第2の電極層5を構成する化合物のうち、III-VI族化合物(複数種のIII-VI族化合物がある場合、その合計)が50モル%以上、より好ましくは80モル%以上であることをいう。さらに光電変換セル10の耐湿性を向上するという観点からは、第2の電極層5を構成する金属元素のうち、Zn元素が50 atomic%以下、より好ましくは20 atomic%以下であるのがよい。
光電変換装置10において、好ましくは、バッファ層4と第2の電極層5とを合わせた部分、すなわち、光吸収層3と集電電極8とで挟まれる部分において、III-VI族化合物を主成分として含むことが好ましい。なお、III-VI族化合物を主成分として含むというのは、このバッファ層4と第2の電極層5とを合わせた部分を構成する化合物のうち、III-VI族化合物(複数種のIII-VI族化合物がある場合、その合計)が50モル%以上、より好ましくは80モル%以上であることをいう。さらに光電変換セル20の耐湿性を向上するという観点からは、このバッファ層4と第2の電極層5とを合わせた部分を構成する金属元素のうち、Zn元素が50 atomic%以下、より好ましくは20 atomic%以下であるのがよい。
光電変換装置10は、複数個を並べてこれらを電気的に接続し、光電変換モジュール11とすることができる。隣接する光電変換装置10同士を容易に直列接続するために、図1に示すように、光電変換装置10は、光吸収層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、光吸収層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。
接続導体7は、第2の電極層5を形成する際に同時形成して一体化することが好ましい。これにより、工程を簡略化できるとともに第2の電極層5との電気的な接続信頼性を高めることができる。
接続導体7は、第2の電極層5と第3の電極層6とを接続するとともに、隣接する光電変換装置10の各光吸収層3も分断するように形成されている。このような構成により、隣接する光吸収層3でそれぞれ光電変換を良好に行い、直列接続で電流を取り出すことができる。
次に本発明の光電変換装置の実施の形態の他の例を図2、図3に基づき説明する。図2は他の実施形態である光電変換装置20の断面図であり、図3は光電変換装置20の斜視図である。図2、図3は、第2の電極層5上に集電電極8が形成されている点で図1の光電変換装置10と異なっている。図2、図3において、図1と同じ構成のものには、同じ符号を付しており、図1と同様、光電変換装置20が複数接続されて光電変換モジュール21を構成している。集電電極8は、第2の電極層5の電気抵抗を小さくするためのものである。光透過性を高めるという観点からは、第2の電極層5の厚さはできるだけ薄いことが好ましいが、薄いと導電性が低下してしまう。しかしながら、第2の電極層5上に集電電極8が設けられていることにより、光吸収層3で発生した電流を効率よく取り出すことができる。その結果、光電変換装置20の発電効率を高めることができる。
集電電極8は、例えば、図3に示すように、光電変換装置20の一端から接続導体7にわたって線状に形成されている。これにより、光吸収層3の光電変換により生じた電荷を第2の電極層5を介して集電電極8に集電し、これを接続導体7を介して隣接する光電変換装置20に良好に導電することができる。よって、集電電極8が設けられていることにより、第2電極層5を薄くしても光吸収層3で発生した電流を効率よく取り出すことができる。その結果、発電効率を高めることができる。
集電電極8は光吸収層3への光を遮るのを抑制するとともに良好な導電性を有するという観点からは、50〜400μmの幅を有するのが好ましい。また、集電電極8は、枝分かれした複数の分岐部を有していてもよい。
集電電極8は、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散させた金属ペーストをパターン状に印刷し、これを硬化することによって形成することができる。
好ましくは、集電電極8は、半田を含むことが好ましい。これにより、曲げ応力に対する耐性を高めることができるとともに、抵抗をより低下させることができる。より好ましくは、融点の異なる金属を2種以上含み、少なくとも1種の金属を溶融させ、他の少なくとも1種の金属は溶融しない温度で加熱して硬化したものがよい。これにより、低い融点の金属が溶融して集電電極8を緻密化し、抵抗を下げることができるとともに、加熱して硬化させる際に溶融した金属が広がろうとするのを高い融点の金属によって抑制することができる。
集電電極8は、平面視して光吸収層3の外周端部まで達するように設けられていることが好ましい。このような構成により、集電電極8が光吸収層3の外周部を保護し、光吸収層3の外周部での欠けを抑制して光吸収層3の外周部においても光電変換を良好に行うことができる。また、この光吸収層3の外周部で発生した電流を外周端部まで達する集電電極8によって効率よく取り出すことができる。その結果、発電効率を高めることができる。
このように光吸収層3の外周端部に達する集電電極8によって光吸収層3の外周部を保護することができるため、第1の電極層2と集電電極8との間に設けられた部材の合計厚みを小さくすることができる。よって、部材の削減をすることができるとともにこれらの作製工程も短縮化することができる。好ましくは、第1の電極層2と集電電極8との間に設けられた部材の合計厚み(図3の例では、光吸収層3とバッファ層4と第2の電極層5との合計厚み)を1.56〜2.7μmと薄くするのがよい。具体的には、図3の例では、光吸収層3の厚みを1.5〜2.0μm、バッファ層4の厚みを0.01〜0.2μm、第2の電極層5の厚みを0.05〜0.5μmとすればよい。
また、好ましくは、集電電極8が達している光吸収層3の外周端部において、集電電極8の端面、第2の電極層5の端面および光吸収層3の端面が面一になっていることが好ましい。これにより、光吸収層3の外周端部で光電変換した電流を良好に取り出すことができる。なお、集電電極8が平面視して光吸収層3の外周端部まで達しているというのは、集電電極8が完全に光吸収層3の最も外側の外周端部まで達していることが好ましいが、それに限定されない。すなわち、光吸収層3の外周端部を基点として欠けが進行するのを有効に抑制して、欠けを抑制するという観点からは、光吸収層3の最も外側の外周端部と集電電極8の端部との距離が1000μm以下の場合も含む。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
1:基板
2:第1の電極層
3:光吸収層
4:バッファ層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10、20:光電変換装置
11、21:光電変換モジュール

Claims (5)

  1. I-III-VI化合物半導体を含み、I-B族元素のIII-B族元素に対するモル比が他方主面側よりも一方主面側において小さい部分を有する光吸収層と、
    前記一方主面上に設けられたバッファ層と、
    を具備することを特徴とする光電変換装置。
  2. 前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の前記モル比が、前記光吸収層の厚み方向における中央から前記他方主面までの領域における前記モル比の平均値に対して0.9倍以下であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
  3. 前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の前記モル比が、前記光吸収層の厚み方向における中央から前記他方主面までの領域における前記モル比の平均値に対して0.4倍乃至0.9倍であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
  4. 前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の厚みは50nm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光電変換装置。
  5. 前記光吸収層の前記モル比が小さい部分の厚みは前記光吸収層の膜厚の0.4倍以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光電変換装置。
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