JP2011114242A - 半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の厚みの半導体層を容易にかつ良好に作製することが可能な半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体層の製造方法は、金属元素と、カルコゲン元素含有有機化合物と、第1のルイス塩基性有機化合物と、前記第1のルイス塩基性有機化合物とは異なる構造の第2のルイス塩基性有機化合物と、を具備する半導体層形成用溶液を基板の表面に塗布して前駆体層を作製する工程と、前記前駆体層を熱処理して半導体層3を作製する工程と、を具備する。
【選択図】図1
【解決手段】半導体層の製造方法は、金属元素と、カルコゲン元素含有有機化合物と、第1のルイス塩基性有機化合物と、前記第1のルイス塩基性有機化合物とは異なる構造の第2のルイス塩基性有機化合物と、を具備する半導体層形成用溶液を基板の表面に塗布して前駆体層を作製する工程と、前記前駆体層を熱処理して半導体層3を作製する工程と、を具備する。
【選択図】図1
Description
本発明は、半導体層の製造方法およびそれを用いた光電変換装置の製造方法に関するものである。
太陽電池として、CIGS等のカルコパライト系のI-III-VI族化合物半導体から成る光吸収層を具備する光電変換装置を用いたものがある。この光電変換装置は、例えば、ソーダライムガラスからなる基板上に裏面電極となる、例えば、Moからなる第1の電極層が形成され、この第1の電極層上にI-III-VI族化合物半導体からなる光吸収層が形成されている。さらに、その光吸収層上には、ZnS、CdSなどからなるバッファ層を介して、ZnOなどからなる透明の第2の電極層が形成されている。
このような光吸収層を構成する半導体層を形成するための製法としては、従来用いられていたスパッタ法など真空系の装置を用いる高コストの製法に代わり、低コスト化を目的とした種々の製法の開発が行われている。
例えば、特許文献1には、Cu2S等の金属カルコゲナイドをヒドラジン(N2H4)に溶解させて金属ヒドラジニウム系の前駆体の溶液を形成した後、この溶液を、電極層を有する基板のその電極上に塗布して前駆体層を形成し、次いで、この前駆体層を熱処理することにより金属カルコゲナイド膜(化合物半導体層)を得ることのできる技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1に示すような金属ヒドラジニウム系の前駆体の溶液は、原料の溶解濃度が1wt%程度で限界となり、低粘度であるため、ブレード法のような簡便な方法で基板上に数μm程度の厚みの前駆体層を良好に形成することが困難である。そのため、所望の厚みの半導体層を得るためには何度も原料溶液を塗布する必要があり、工程が複雑になるとともに、何度も塗布するため、各層間での熱処理状態が異なり、応力が生じてクラックが生じるという問題がある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、所望の厚みの半導体層を容易にかつ良好に作製することが可能な半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態に係る半導体層の製造方法は、金属元素と、カルコゲン元素含有有機化合物と、第1のルイス塩基性有機化合物と、前記第1のルイス塩基性有機化合物とは異なる構造の第2のルイス塩基性有機化合物と、を具備する半導体層形成用溶液を基板の表面に塗布して前駆体層を作製する工程と、前記前駆体層を熱処理して半導体層を作製する工程と、を具備することを特徴とする。
このような製造方法によれば、ルイス塩基性有機化合物とカルコゲン元素含有有機化合物との混合溶媒を用いることによって、半導体層を構成する金属元素と混合溶媒との強い結合力によりこれらの金属元素を良好に溶解することができ、塗布に適した粘度を有する高濃度の半導体層形成用溶液とすることができる。さらに、このルイス塩基性有機化合物を、互いに構造が異なる複数のルイス塩基性有機化合物の混合体とすることで、それぞれのルイス塩基性有機化合物の熱分解挙動を異なるものとし、前駆体を熱処理する際、一度にルイス塩基性有機化合物が熱分解せずに一方のルイス塩基性有機化合物が金属元素と結合を維持しながら金属元素の半導体化が進行することとなる。よって、急速に半導体化反応が生じて欠陥が生じるのを抑制し、半導体化を良好に進行させることができる。
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記第1のルイス塩基性有機化合物がアミンを含み、前記第2のルイス塩基性有機化合物がケトンを含む。
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記第2のルイス塩基性有機化合物が1,3−ジケトン型の化合物を含む。
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記第1のルイス塩基性有機化合物がアニリンまたはピリジンを含む。
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記金属元素はI-B族金属およびIII-B族金属を含み、前記半導体層はI-III-VI族化合物半導体を含む。
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記半導体層形成用溶液は、前記I-B族金属が単体の状態または合金の状態で直接、前記カルコゲン元素含有有機化合物と前記第1のルイス塩基性有機化合物と前記第2のルイス塩基性有機化合物との混合溶媒に溶解されることによって形成される。
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記半導体層形成用溶液は、前記III-B族金属が単体の状態または合金の状態で直接、前記カルコゲン元素含有有機化合物と前記第1のルイス塩基性有機化合物と前記第2のルイス塩基性有機化合物との混合溶媒に溶解されることによって形成される。
本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法は、第1の電極層上に、上記のいずれかの半導体層の製造方法により第1の半導体層を形成する工程と、前記第1の半導体層上に、該第1の半導体層と異なる組成の第2の半導体層を形成する工程と、前記第2の半導体層上に第2の電極層を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
このような製造方法によれば、第1の半導体層を良好に結晶化させることにより、第1の半導体層の表面を平滑にすることができ、この平滑な第1の半導体層上に第2の半導体層を良好にヘテロ接合させることができる。その結果、光電変換効率の高い光電変換装置とすることができる。
本発明によれば、所望の厚みの半導体層を容易にかつ良好に作製することができる。
図1は、本発明の半導体層の製造方法を用いて作製した光電変換装置の実施の形態の一例を示す斜視図であり、図2はその断面図である。光電変換装置10は、基板1と、第1の電極層2と、第1の半導体層3と、第2の半導体層4と、第2の電極層5とを含んで構成される。本実施例においては、第1の半導体層3が光吸収層であり、第2の半導体層4が第1の半導体層3に接合されたバッファ層である例を示すがこれに限定されず、第2の半導体層4が光吸収層であってもよい。
図1、図2において、光電変換装置10は複数並べて形成されている。そして、光電変換装置10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。この第3の電極層6は、隣接する光電変換装置10の第1の電極層2と一体化されている。この構成により、隣接する光電変換装置10同士が直列接続されている。なお、一つの光電変換装置10内において、接続導体7は第1の半導体層3および第2の半導体層4を貫通するように設けられており、第1の電極層2と第2の電極層5とで挟まれた第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光電変換が行なわれる。
基板1は、光電変換装置10を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。
第1の電極層2および第3の電極層6は、Mo、Al、TiまたはAu等の導電体が用いられ、基板1上にスパッタリング法または蒸着法等で形成される。
第1の半導体層3は、光電変換可能な半導体であればよく、特に限定されない。例えば、第1の半導体層3としてI-III-VI族化合物半導体やII-VI族化合物半導体が挙げられる。
I-III-VI族化合物半導体とは、I-B族元素(11族元素ともいう)とIII-B族元素(13族元素ともいう)とVI-B族元素(16族元素ともいう)との化合物半導体であり、カルコパイライト構造を有し、カルコパイライト系化合物半導体と呼ばれる(CIS系化合物半導体ともいう)。I-III-VI族化合物半導体としては、例えば、Cu(In,Ga)Se2(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)2(CIGSSともいう)、およびCuInS2(CISともいう)が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Se2とは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)2とは、CuとInとGaとSeとSとから主に構成された化合物をいう。10μm以下の薄層でも光電変換効率を高めることができるという観点からは、第1の半導体層3はこのようなI-III-VI族化合物半導体であることが好ましい。
また、II-VI族化合物半導体とは、II-B族元素(12族元素ともいう)とVI-B族元素との化合物半導体である。II-VI族化合物半導体としては、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS,CdSe、CdTe等が挙げられる。
このような第1の半導体層3は、次のようにして作製される。先ず、第1の電極層2を有する基板1上に、金属元素(例えばI-B族元素、III-B族元素、またはII-B族元素)を溶解させた半導体層形成用溶液を塗布することにより前駆体層を形成する。これらの前駆体層にはVI-B族元素を含ませておいても良い。また、これらの前駆体層は、異なる組成の複数の積層体であってもよい。
半導体層形成用溶液は、金属元素と、カルコゲン元素含有有機化合物と、第1のルイス塩基性有機化合物と、この第1のルイス塩基性有機化合物とは異なる構造の第2のルイス塩基性有機化合物と、を具備している。金属元素は、第1の半導体層3を構成する金属元素であり、例えば、第1の半導体層3がI-III-VI族化合物半導体である場合、I-B族元素およびIII-B族元素である。また、第1の半導体層3がII-VI族化合物半導体である場合、金属元素は、II-B族元素である。
カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物である。カルコゲン元素とは、VI-B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン元素がSである場合、カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェン、スルホキシド、スルホン、チオケトン、スルホン酸、スルホン酸エステルおよびスルホン酸アミド等が挙げられる。好ましくは、金属と錯体を形成して金属溶液を良好に作製できるという観点からは、チオール、スルフィド、ジスルフィド等が良い。特に塗布性を高めるという観点からは、フェニル基を有するものが好ましい。このようなフェニル基を有するものとしては、例えば、チオフェノール、ジフェニルスルフィド等およびこれらの誘導体が挙げられる。
カルコゲン元素がSeである場合、カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、セレノール、セレニド、ジセレニド、セレノキシド、セレノン等が挙げられる。好ましくは、金属と錯体を形成して金属溶液を良好に作製できるという観点からは、セレール、セレニド、ジセレニド等が良い。特に塗布性を高めるという観点からは、フェニル基を有するものが好ましい。このようなフェニル基を有するものとしては、例えば、フェニルセレノール、フェニルセレナイド、ジフェニルジセレナイド等およびこれらの誘導体が挙げられる。
カルコゲン元素がTeである場合、カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、テルロール、テルリド、ジテルリド、等が挙げられる。
ルイス塩基性有機化合物(第1のルイス塩基性有機化合物および第2のルイス塩基性有機化合物を総称してルイス塩基性有機化合物という)とは、ルイス塩基となり得る官能基を有する有機化合物である。ルイス塩基となり得る官能基としては、非共有電子対を有するV-B族元素(15族元素ともいう)を具備した官能基や非共有電子対を有するVI-B族元素を具備した官能基が好ましく、例えば、アミノ基(1級アミン〜3級アミンのいずれでもよい)、カルボニル基、シアノ基等が挙げられる。ルイス塩基性有機化合物の具体例としては、ピリジン、アニリン、トリフェニルフォスフィン、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アセトニトリル、ベンジル、ベンゾイン等およびこれらの誘導体が挙げられる。特に塗布性を高めるという観点からは、沸点が100℃以上であるものが好ましい。
半導体層形成用溶液は、2種類以上の互いに異なる構造のルイス塩基性有機化合物(第1のルイス塩基性有機化合物および第2のルイス塩基性有機化合物)を有している。これによって、クラック等の欠陥の少ない良好な半導体層を形成できる。すなわち、前駆体層を加熱して有機成分を熱分解しながら金属元素の半導体化を行なう際、それぞれのルイス塩基性有機化合物の熱分解挙動が異なるため、一度にルイス塩基性有機化合物が熱分解せずに一方のルイス塩基性有機化合物が金属元素と結合を維持しながら金属元素の半導体化が進行することとなる。よって、急速に半導体化反応が生じて欠陥が生じるのを抑制し、半導体化を良好に進行させることができる。
第1のルイス塩基性有機化合物と第2のルイス塩基性有機化合物との混合比については、一方のルイス塩基性有機化合物に対して他方のルイス塩基性有機化合物が0.1mol%以上であるとよい。特に結晶化を良好に促進するという観点からは、一方のルイス塩基性有機化合物に対して他方のルイス塩基性有機化合物が0.1〜10mol%であるとよい。
好ましくは、第1のルイス塩基性有機化合物のルイス塩基性の官能基と第2のルイス塩基性有機化合物のルイス塩基性の官能基とが異なる構造であるのがよい。このようにルイス塩基性の官能基が異なると、金属元素に対する結合力の差が生じ、それぞれのルイス塩基性有機化合物の熱分解挙動をより異ならせることができる。よって、半導体化をより良好に進行させることが可能となる。なお、第1のルイス塩基性有機化合物のルイス塩基性の官能基と第2のルイス塩基性有機化合物のルイス塩基性の官能基とが異なる構造であるというのは、少なくとも一方のルイス塩基性有機化合物に含まれるルイス塩基性の官能基と同じ構造の官能基が、他方のルイス塩基性有機化合物には存在しないことをいう。
好ましくは、第1のルイス塩基性有機化合物がアミンを含み、第2のルイス塩基性有機化合物がケトンを含むのがよい。アミンおよびケトンは金属元素と配位結合等によって良好に結合を行なうことができるとともに金属元素との結合状態の違いによって半導体化をより良好に進行させることができる。
アミンを含むルイス塩基性有機化合物としては、ピリジン、アニリン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等がある。アミンとは、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環アミンを含む。
ケトンを含むルイス塩基性有機化合物としては、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、ベンジル、ベンゾイン等がある。好ましくは、1,3−ジケトン型の化合物を含むのがよい。1,3−ジケトン型の化合物とは、炭素鎖の1番目と3番目がカルボニル基であるものに限らず、炭素鎖のn番目とn+2番目がカルボニル基であるものを意味する。例えば、2,4−ペンタンジオンや3−メチル−2,4−ペンタンジオン等が挙げられる。このような1,3−ジケトン型の化合物を用いると、金属元素と安定な錯体を形成し、前駆体を加熱して半導体化する際に有機成分の熱分解と金属元素の結晶化とをバランスよく進行させ、より欠陥の少ない半導体層を形成することができる。
また、第1のルイス塩基性有機化合物および第2のルイス塩基性有機化合物の少なくとも一方が、室温で液状の芳香族アミンまたは複素環アミンを含むことが好ましい。なお、芳香族アミンとは、芳香族環に直結して芳香族環と共鳴したアミノ基を具備する化合物であり、例えば、アニリン等が挙げられる。また、複素環アミンとは、芳香族複素環のヘテロ原子が窒素のものをいい、ピリジン等が挙げられる。このようなアミンは共鳴により安定化されるため、半導体層形成用溶液の溶媒として適したものとなる。第1のルイス塩基性有機化合物が芳香族アミンまたは複素環アミンを含む場合、第1のルイス塩基性有機化合物に対する第2のルイス塩基性有機化合物のモル比は、0.1〜10mol%であるのがよい。
本発明においては、カルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機化合物(第1および第2のルイス塩基性有機化合物)とを含む溶媒(以下、カルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機化合物とを含む溶媒を混合溶媒Sともいう)を用いることによって、原料となる金属元素を良好に溶解させて2wt%以上の半導体層形成用溶液を作製できる。このような混合溶媒Sを用いることにより、カルコゲン元素含有有機化合物のみ、またはルイス塩基性有機化合物のみで金属元素の溶液を作製した場合に比べ、非常に高濃度の溶液を得ることができる。よって、この半導体層形成用溶液を用いて前駆体層を形成することにより、一度の塗布でも比較的厚い良好な前駆体層を得ることができ、その結果、所望の厚みの半導体層を容易にかつ良好に作製することができる。
混合溶媒Sは、取り扱い性の観点からは、室温で液状となるような組み合わせであることが好ましい。カルコゲン元素含有有機化合物は、ルイス塩基性有機化合物に対して1〜250mol%であるのがよい。これにより、金属元素とカルコゲン元素含有有機化合物との化学結合およびカルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機化合物との化学結合を良好に形成することができ、高濃度の金属元素の溶液を得ることができる。
半導体層形成用溶液を作製する方法としては、上記混合溶媒Sに原料となる金属を、単体の状態、合金の状態、または金属塩の状態で溶解させればよい。第1の半導体層3に半導体成分以外の不純物が残るのを抑制するという観点からは、原料金属を混合溶媒Sに単体の状態あるいは原料金属同士の合金の状態で直接溶解させることが好ましい。これにより、第1の半導体層3を構成する元素以外の元素が第1の半導体層3に含まれるのを抑制することができ、第1の半導体層3の純度を高めることができる。
第1の半導体層3がI-III-VI族化合物半導体の場合、上記半導体層形成用溶液は、I-B族金属が単体の状態または合金の状態で直接、カルコゲン元素含有有機化合物と第1のルイス塩基性有機化合物と第2のルイス塩基性有機化合物との混合溶媒に溶解されることによって形成されるのがよい。合金の状態というのは、第1の半導体層3を構成する金属元素同士の合金をいう。これにより、第1の半導体層3を構成する元素以外の元素が第1の半導体層3に含まれるのを抑制することができ、第1の半導体層3の純度を高めることができる。
また同様に、第1の半導体層3がI-III-VI族化合物半導体の場合、半導体層形成用溶液は、III-B族金属が単体の状態または合金の状態で直接、カルコゲン元素含有有機化合物と第1のルイス塩基性有機化合物と第2のルイス塩基性有機化合物との混合溶媒に溶解されることによって形成されるのがよい。
上記の半導体層形成用溶液は、第1の電極2を有する基板1の表面に、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレーまたはダイコータなどを用いて塗布され、乾燥されて前駆体層となる。乾燥は、還元雰囲気下で行うことが望ましい。乾燥時の温度は、例えば、50〜300℃で行う。
そして、上記前駆体層を熱処理して、1.0〜2.5μmの半導体層を作製する。熱処理は、酸化を防止して良好な半導体層とするために、還元雰囲気で熱処理することが好ましい。熱処理における還元雰囲気としては、特には、窒素雰囲気、フォーミングガス雰囲気および水素雰囲気のうちいずれかであることが望ましい。熱処理温度は、例えば、400℃〜600℃とする。
前駆体層には、第1の半導体層3を構成する元素をすべて含ませておいてもよく、一部の元素を気体として前駆体に供給しながら熱処理してもよい。例えば、第1の半導体層3がI-III-VI族化合物半導体の場合、Cu等のI-B族元素と、GaおよびIn等のIII-B族元素と、Se等のVI-B族元素とを前駆体に含ませておき、これを熱処理することにより、I-III-VI族化合物半導体とすることができる。あるいは、Cu等のI-B族元素と、GaやIn等のIII-B族元素とを前駆体に含ませておき、これをSe等のVI-B族元素を含む気体雰囲気下で熱処理することにより、I-III-VI族化合物半導体としてもよい。
光電変換装置10は、上記第1の半導体層3を光吸収層として用い、この第1の半導体層3上にバッファ層としての第2の半導体層4が10〜200nmの厚みで形成される。なお、第2の半導体層4を形成せず、第1の半導体層3上に第2の電極層5を形成してもよい。
第2の半導体層4は、光吸収層3に対してヘテロ接合を行う半導体層をいう。第1の半導体層3と第2の半導体層4とは異なる導電型であることが好ましく、例えば、第1の半導体層3がp型半導体である場合、第2の半導体層4はn型半導体である。好ましくはリーク電流を低減するという観点からは、第2の半導体層は、抵抗率が1Ω・cm以上の層であるのがよい。第2の半導体層4としては、CdS、ZnS、ZnO、In2Se3、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が挙げられ、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。なお、In(OH,S)とは、InとOHとSとから主に構成された化合物をいう。(Zn,In)(Se,OH)は、ZnとInとSeとOHとから主に構成された化合物をいう。(Zn,Mg)Oは、ZnとMgとOとから主に構成された化合物をいう。第2の半導体層4は第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3が吸収する光の波長領域に対して光透過性を有するものが好ましい。
第2の電極層5は、ITO、ZnO等の0.05〜3.0μmの透明導電膜である。第2の電極層5は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成される。第2の電極層5は、第2の半導体層4よりも抵抗率の低い層であり、第1の半導体層3で生じた電荷を取り出すためのものである。電荷を良好に取り出すという観点からは、第2の電極層5の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であるのがよい。
第2の電極層5は第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3の吸収光に対して光透過性を有するものが好ましい。光透過性を高めると同時に光反射ロス防止効果および光散乱効果を高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から、第2の電極層5は0.05〜0.5μmの厚さとするのが好ましい。また、第2の電極層5と第2の半導体層4との界面での光反射ロスを防止する観点からは、第2の電極層5と第2の半導体層4の屈折率は等しいのが好ましい。
光電変換装置10は、複数個を並べてこれらを電気的に接続し、光電変換モジュールとすることができる。隣接する光電変換装置10同士を容易に直列接続するために、図1、図2に示すように、光電変換装置10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。
接続導体7は、第2の電極層5を形成する際に同時形成して一体化することが好ましい。これにより、工程を簡略化できるとともに第2の電極層5との電気的な接続信頼性を高めることができる。
接続導体7は、第2の電極層5と第3の電極層6とを接続するとともに、隣接する光電変換装置10の各第1の半導体層3を貫通するように形成されている。このような構成により、隣接する光吸収層3でそれぞれ光電変換を良好に行い、直列接続で電流を取り出すことができる。
図1、図2に示すように、第2の電極層5上に集電電極8が形成されていてもよい。集電電極8は、第2の電極層5の電気抵抗を小さくするためのものである。光透過性を高めるという観点からは、第2の電極層5の厚さはできるだけ薄いことが好ましいが、薄いと導電性が低下してしまう。しかしながら、第2の電極層5上に集電電極8が設けられていることにより、第1の半導体層3で発生した電流を効率よく取り出すことができる。その結果、光電変換装置10の発電効率を高めることができる。
集電電極8は、例えば、図1に示すように、光電変換装置10の一端から接続導体7にかけて線状に形成されている。これにより、第1の半導体層3の光電変換により生じた電流を第2の電極層5を介して集電電極8に集電し、これを接続導体7を介して隣接する光電変換装置10に良好に導電することができる。よって、集電電極8が設けられていることにより、第2電極層5を薄くしても第1の半導体層3で発生した電流を効率よく取り出すことができる。その結果、発電効率を高めることができる。
集電電極8は第1の半導体層3への光を遮るのを抑制するとともに良好な導電性を有するという観点からは、50〜400μmの幅を有するのが好ましい。また、集電電極8は、枝分かれした複数の分岐部を有していてもよい。
集電電極8は、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散させた金属ペーストをパターン状に印刷し、これを硬化することによって形成することができる。
好ましくは、集電電極8は、半田を含むことが好ましい。これにより、曲げ応力に対する耐性を高めることができるとともに、抵抗をより低下させることができる。より好ましくは、融点の異なる金属を2種以上含み、少なくとも1種の金属を溶融させ、他の少なくとも1種の金属は溶融しない温度で加熱して硬化したものがよい。これにより、低い融点の金属が溶融して集電電極8を緻密化し、抵抗を下げることができるとともに、加熱して硬化させる際に溶融した金属が広がろうとするのを高い融点の金属によって抑制することができる。
集電電極8は、平面視して光吸収層3の外周端部まで達するように設けられていることが好ましい。このような構成により、集電電極8が光吸収層3の外周部を保護し、光吸収層3の外周部での欠けを抑制して光吸収層3の外周部においても光電変換を良好に行うことができる。また、この光吸収層3の外周部で発生した電流を外周端部まで達する集電電極8によって効率よく取り出すことができる。その結果、発電効率を高めることができる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
1:基板
2:第1の電極層
3:第1の半導体層
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10:光電変換装置
2:第1の電極層
3:第1の半導体層
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10:光電変換装置
Claims (7)
- 金属元素と、カルコゲン元素含有有機化合物と、第1のルイス塩基性有機化合物と、前記第1のルイス塩基性有機化合物とは異なる構造の第2のルイス塩基性有機化合物と、を具備する半導体層形成用溶液を基板の表面に塗布して前駆体層を作製する工程と、
前記前駆体層を熱処理して半導体層を作製する工程と、を具備することを特徴とする半導体層の製造方法。 - 前記第1のルイス塩基性有機化合物がアミンを含み、前記第2のルイス塩基性有機化合物がケトンを含む請求項1に記載の半導体層の製造方法。
- 前記第2のルイス塩基性有機化合物が1,3−ジケトン型の化合物を含む請求項1または2に記載の半導体層の製造方法。
- 前記金属元素はI-B族金属およびIII-B族金属を含み、前記半導体層はI-III-VI族化合物半導体を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体層の製造方法。
- 前記半導体層形成用溶液は、前記I-B族金属が単体の状態または合金の状態で直接、前記カルコゲン元素含有有機化合物と前記第1のルイス塩基性有機化合物と前記第2のルイス塩基性有機化合物との混合溶媒に溶解されることによって形成される請求項4に記載の半導体層の製造方法。
- 前記半導体層形成用溶液は、前記III-B族金属が単体の状態または合金の状態で直接、前記カルコゲン元素含有有機化合物と前記第1のルイス塩基性有機化合物と前記第2のルイス塩基性有機化合物との混合溶媒に溶解されることによって形成される請求項4または5に記載の半導体層の製造方法。
- 第1の電極層上に、請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体層の製造方法により第1の半導体層を形成する工程と、
前記第1の半導体層上に、該第1の半導体層と異なる組成の第2の半導体層を形成する工程と、
前記第2の半導体層上に第2の電極層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
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JP2009270875A JP2011114242A (ja) | 2009-11-28 | 2009-11-28 | 半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法 |
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- 2009-11-28 JP JP2009270875A patent/JP2011114242A/ja active Pending
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