JP2011086636A - 二次電池用集電体形成用のペースト、二次電池用集電体およびその製造方法、二次電池用電極、二次電池 - Google Patents

二次電池用集電体形成用のペースト、二次電池用集電体およびその製造方法、二次電池用電極、二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高い電流値による急速充放電が可能で、初期電池容量維持率の高いリチウム二次電池用の集電体及び二次電池を製造する。
【解決手段】二次電池用集電体形成用のペーストは、(a)多糖類高分子ポリマーと架橋剤とからなる皮膜形成用の化合物、(b)炭素微粒子、及び(c)溶剤を含んでいる。
【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池用集電体形成用のペースト、二次電池用集電体およびその製造方法、二次電池用電極、二次電池に関するものであり、急速充放電特性の優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる高性能な材料に関する。
リチウムイオン二次電池は、高性能な二次電池であり、そのエネルギー密度の高さから現在、携帯電話やノートパソコン、さらにビデオカメラ等の用途に用いられ大きく市場を伸ばしている。これらのリチウムイオン電池のうち小型のものは、正極活物質にコバルト酸リチウム、あるいはマンガン酸リチウム、負極にグラファイトを用いているのが一般的である。さらに、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質シートであるセパレーター、電解液として6フッ化リン酸リチウム(LiPF)のエチレンカーボネート系溶液などの、リチウム塩が溶解した有機溶液から構成されている。
さらに詳しく述べると、一般的なリチウムイオン二次電池の正極は、正極活物質であるコバルト酸リチウムあるいはマンガン酸リチウムと、ここから(ここに)電子を運搬するための電子伝導性を有する炭素微粒子とを集電効果のある金属箔上に固定化することで成り立っている。この際、用いられる金属箔としては、アルミニウムが一般的であり、正極活物質と炭素微粒子とを固定化するのに用いるバインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが用いられている。
近年は、こうした高性能二次電池を自動車などのパワーを必要とする分野に応用しようとする動きが活発となってきている。そのため、従来のような、小型電池では予想もされなかった問題も発生してきている。
その1つが、急速充放電特性である。パワーを必要とするためには、多くの電流が必要となる。そのため、電池の容量がすぐになくなるので新たに充電をする必要が生じる。充電時間は長く設定していては、その間電池が使えないので出来るだけ大きな電流で早く充電を完了しなければならない。こうした大電流値における放電性能と充電性能とを、急速充放電特性と称し、二次電池の重要な性能指標となっている。
急速充放電を行うには、上述したように電流値を大きくすることが必須である。しかしながら、現状のリチウムイオン二次電池では大きな電流で充放電を行うと、充放電を繰り返した際の容量の低下(初期電池容量維持率)が極端に低下すると言う不具合を生じてしまう。すなわち大きな電流で充放電を繰り返すと、パワーが下がってしまう。より詳細には、1C(電池容量を1時間で充放電できる電流値)での充放電は可能でも、20C(電池容量を1時間で充放電できる電流値の20倍の電流値)ではほぼ不可能と言うのが現状であり、こうした不具合を改善するために次の文献のように多くの試みがなされている。
特開2001−266850号公報 特公平7−123053号公報 特許第1989293号 第45回電池討論会(平成16年) 3C18
しかし、上記各文献に記載された技術は、いずれも前記不具合を改善するには十分ではなかった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、急速充放電を可能とし、高レート(高い電流値)における初期電池容量維持率の高いリチウム二次電池用の二次電池用集電体形成用のペースト、二次電池用集電体およびその製造方法、二次電池用電極、二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特に正極構造において、リチウムイオンの導電を特定の化合物に分担させ、電子導電を電子導電性の炭素微粒子に分担させる正極集電体構造にすることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は以下に関する。
(1)(a)多糖類高分子ポリマーと架橋剤とからなる皮膜形成用の化合物、
(b)炭素微粒子、及び
(c)溶剤
を含む二次電池用集電体形成用のペースト。
(2)前記多糖類高分子ポリマーがキトサンまたはキチンである前項1に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
(3)前記架橋剤が酸無水物である前項1または2のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
(4)前記酸無水物が無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸である前項3に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
(5)前記炭素微粒子が、針状あるいは棒状の炭素微粒子を含む前項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
(6)アルミニウム箔または銅箔の上に、前項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペーストからなる皮膜を形成する工程及び、
該皮膜の溶剤を飛散させる工程
を含む二次電池用集電体の製造方法。
(7)前項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペーストを用いて製造された二次電池用集電体。
(8)前項7に記載の集電体と、活物質を含む皮膜とを有する二次電池用電極。
(9)前項8に記載の電極を有する二次電池。
本発明に係る二次電池用集電体形成用のペーストを用いて製造した二次電池用集電体、二次電池用電極、二次電池は、高レートでの初期容量維持率の向上が大幅に改善しているものであるから、急速充放電特性が優れている二次電池に好適に用いることができる。
本発明の実施例1の下層に係る集電体断面構造を示す概略図である。 本発明の実施例2に係る正極断面構造を示す概略図である。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。なお、本明細書においてアルミニウムは、アルミニウム及びアルミニウム合金を意味する。また、銅は純銅および銅合金を意味する。
本発明で用いることの出来るアルミニウム箔としては、特に限定されたものではなく純アルミ系であるA1085材や、A3003材など種々のものが使用できる。また、その厚さは概ね5μm〜100μmが好ましい。また、銅箔としても同様であり、圧延銅箔や電解銅箔が好んで用いられる。本発明において、アルミニウム箔は正極側、銅箔は負極側に用いる。
アルミニウム箔ならびに銅箔の厚さが5μm以下であると、強度不足で集電層を形成する塗工工程で箔の破断が生じる恐れがあり、一方、100μmを越えると電池1個の所定体積中に箔の占める割合が増大して、電池容量の低下を招くので好ましくない。
本発明に用いる正極活物質としては、特に限定されるものではなく、リチウム(イオン)が吸蔵・脱離することができる物質であれば良い。具体的には、従来用いられているコバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMnO4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、さらには、Co、Mn、Niの3元系リチウム化合物(Li(CoxMnyNiz)O)、イオウ系(TiS)、オリビン系(LiFePO)などが好適である。
また、これら正極活物質の粒子径としては、1〜50μmが好ましい。粒子径が50μm以上になると、粒子の内部と外部でのリチウムの吸蔵・脱離に不均一性が出るので好ましくない。一方、1μm以下になると結晶性が低下し、粒子構造が乱れてしまうので性能低下が起こり好ましくない。
負極に用いる負極活物質としては、公知ものを使用することができる。グラファイト等の黒鉛系、非晶質黒鉛系、酸化物系など特に制限がない。
本発明に用いることのできるイオン透過性化合物、有機溶媒に対して膨潤性のない化合物、有機溶媒による剥離試験において剥がれのない化合物、テープ剥離において剥離のない化合物(以下、これらをまとめて皮膜形成用の化合物と記す)としては以下に挙げるものを使用することができる。
イオン透過性化合物としては、単にイオンが透過できる性能を有する材料(化合物を含む)であれば良く、例えばセルロースとアクリルアミドの架橋重合体とセルロースとキトサンピロリドンカルボン酸塩の架橋重合体などが適している。これ以外にも多糖類高分子ポリマーであるキトサン、キチン等を架橋剤で架橋したもの等を用いることが出来る。用いることのできる架橋剤としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、キトサンピロリドンカルボン酸塩、ヒドロキシプロピルキトサン、または無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物、などが適している。
電池の性能の観点からはイオン導電率の大きいものが好ましい。特に、リチウムイオンの導電率の大きいものが好ましく、リチウムイオンの導電率としては1×10-2 S/cm以上を有する化合物が好適である。あるいはフッ素イオンの導電率が1×10-2 S/cm以上を有する化合物でも好適である。
あるいは皮膜形成用化合物としては上記化合物のうち、有機溶媒に耐性を有して金属箔に強固に密着するものが好ましい。その理由として、リチウムイオン電池には、通常電解液として有機系の電解液が用いられているので、形成した皮膜がこの電解液に溶解してしまうためである。
一般に、耐有機溶媒性を有する化合物としてはポリアミド、ポリアミドイミド等が公知であるが、これらは非常に高価であり実用的ではない。さらに、これらの平均分子量が50000程度と小さく、金属箔に対する密着性が十分でない。一方、平均分子量が50000以上では前述したPVDF、PTFE等があり、金属箔に密着性は十分であるが、これらは有機溶媒中では膨潤してしまい、有機溶媒への耐性は非常に弱いものである。従って、平均分子量が50000以下で金属箔への密着性が高く、有機溶媒への耐性が非常に高いものが好適となる。
これらの性能を測定する尺度として、溶剤に対する膨潤性、溶剤を浸漬した布での剥離試験(こすり試験)、テープ剥離試験(JIS D0202−1988)で判断することが出来る。
上記特性を示す材料としては、多糖類高分子ポリマーをアクリル系添加剤や酸無水物で架橋したものや、キトサン系誘導体をベースにしたものが挙げられる。
本発明に用いることの出来る電子導電性の炭素微粒子としては、特に制約は無いが、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相法炭素繊維、グラファイト(黒鉛)などが好適である。特に粉体での電気抵抗が、100%の圧粉体で1×10-1 Ω・cm以下のものが好ましく、必要に応じて上記のものを組み合わせて使用できる。
上記、電子導電性炭素微粒子において、その粒子サイズに特に制限はないが、概ね10〜100nmが好ましい。さらに、その形状が球状ではなく、針状もしくは、棒状のような異方性を有していれば尚好ましい。その理由を以下に述べる。電子導電性の炭素微粒子はリチウムイオン二次電池で電子の移動を分担している。充電時は、外部から供給される電子をアルミニウム箔を通じて正極活物質にまで到達させる必要があるので、アルミニウム箔と正極活物資間の接触面積を大きくしたい。そのためには、質量あたりの表面積が大きい微粒子のほうが有利である。しかも、電池容量確保のため出来るだけ少ない量で達成しなければならない。従って、形状に異方性を有する電子導電性炭素微粒子が好適となる。
本発明において、皮膜形成用化合物と炭素微粒子とを含む皮膜の作成には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、キャスト法、バーコーター法、ディップ法、印刷法などである。これらの方法の内、皮膜の厚さを制御しやすい点からバーコーター法、キャスト法などが好適である。アルミニウム箔あるいは銅箔に上記の方法により、炭素微粒子含有皮膜を形成させることで集電体(正極用あるいは負極用)とすることができる。さらに、その厚さとしては0.1μm以上10μm以下が好ましい。厚みが0.1μm以下であると所望の効果が得られないので好ましくない。一方、厚みが10μm以上になると二次電池1個の所定の体積中に占める活物質の比率が相対的に低下するので好ましくない。
一方、正極活物質あるいは負極活物質を含んだ皮膜を形成させる場合も同様の手法で製造することが出来る。また、その膜厚は10μm以上500μm以下が好ましい。膜厚が10μm以下であると電池1個の所定体積中の活物質の割合が少なくなり電池容量が小さくなるので好ましくない。一方、500μm以上であると箔からの脱離や電池の内部抵抗が増大するので好ましくない。
以下、正極活物質を含んだ皮膜を形成させる場合についてさらに詳しく述べる。負極活物質を含んだ皮膜の場合は、以下の記述中においてアルミニウム箔を銅箔、正極活物質を負極活物質に置き換えて同様に実施することが出来る。
皮膜の組成比は皮膜を形成させるペーストの段階で調整する。具体的には、皮膜形成用化合物、炭素微粒子、正極活物質等を混練機等で混合し、粘度調整にさらに溶剤を加えることで調製される。また、溶剤は後工程により飛散させるので、皮膜中には固形分(皮膜形成用化合物、炭素微粒子、正極活物質)のみが残存することになる。これらの比率は質量比で概ね、皮膜形成用化合物が1質量%〜30質量%、炭素微粒子が1質量%〜30質量%、正極活物質が65質量%以上が好ましい。
また、皮膜の厚さとしては0.1μm以上500μm以下が好ましい。厚さが0.1μm以下であると所望の効果が得られなくなる。一方、500μm以上になると、皮膜の割れ、アルミニウム箔からの脱落などが発生する恐れがあるので好ましくない。
本発明において、アルミニウム箔に下層と上層の二層の皮膜を供えた集電体としても良い。このとき、皮膜形成用化合物と炭素微粒子とを含む皮膜を下層とし、バインダー、炭素微粒子及び正極活物質を含む皮膜を上層とする。上層に含まれるバインダーは、粒子を固定できる効果があれば良く、皮膜形成用化合物、例えば多糖類高分子ポリマーをアクリル系添加剤で架橋したものを含んでも、あるいは通常用いられる化合物、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含んでも良い。
本発明の二次電池用集電体の電池評価には、当該集電体を電極化して、公知なセパレータ、有機電解液を備えた二次電池を構成して行うことが出来る。
さらに、本発明による二次電池を移動体(自動車、自転車などの車両)あるいはパワー電動工具(電動ドリル、インパクトレンチなど)に搭載してその性能を評価することが出来る。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
A1085材の厚さ30μmであるアルミニウム箔を用意した。次に、イオン透過性を有する化合物として多糖類高分子ポリマーであるキトサンを無水ピロメリット酸で架橋したものを用意した。この分子量はGPC測定により35000であった。これを用いて、電子導電性を有する炭素微粒子(アセチレンブラック:粒子径40nm)との混合ペーストを作成した。溶媒は水とし、イオン透過性化合物と炭素微粒子と水との質量比率を35:15:50とした。次に、アプリケーター(隙間:10μm)を用いて、キャスト法によりアルミニウム箔上にこのペーストを塗工し、その後、空気中で180℃にて3分間乾燥し、熱硬化させて、イオン透過性を有する化合物と炭素微粒子を含む皮膜を備えたアルミニウム箔を得た。
乾燥後この皮膜の厚さを測定したところ厚さは5μmであり、皮膜中における電子導電性を有する炭素微粒子の含有率は30質量%であった。
次に、正極活物質、電子導電性炭素微粒子、バインダー、及び溶剤からなる正極ペーストを用いて厚さ200μmの電極層を形成させリチウムイオン二次電池用正極とした。この際、正極活物質はコバルト酸リチウム、導電性炭素微粒子としてアセチレンブラック、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。各成分の組成比は正極活物質:炭素微粒子:バインダー=95:2:3(質量比)として、溶剤は正極活物質質量の10質量%とした。
さらに、セパレーター、銅箔上に形成された負極を組み込み、これらに有機電解液を含侵させ、リチウムイオン二次電池を得た。
上記で得られた、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を測定した。結果を表1に示した。測定機は北斗電工株式会社製電池充放電装置HJ−2010型機を用い、電流レートを0.1C、2C、20Cと変えて100サイクル後の初期容量維持率を百分率で表示した。表から明らかなように、電流レートが小さい時には大きな差が認められなかったが、本発明による集電体を用いることで特に、高レート側での初期容量維持率の向上が大幅に改善していることが分かる。すなわち急速充放電特性が優れていることを示している。
また、上記2次電池の内部抵抗を測定した。測定はHIOKI3551バッテリーテスターを用いACインピーダンス法で、測定周波数1kHzにて測定した。測定結果を表2に示した。測定値が小さいほど、急速充放電持性が優れていることを示している。
(実施例2)
A1085材の厚さ30μmであるアルミニウム箔を用意した。次に、イオン透過性を有する化合物として多糖類高分子ポリマーであるキチンを無水マレイン酸で架橋したものを用意した。この分子量はGPC測定により30000であった。これを用いて電子導電性を有する炭素微粒子(アセチレンブラック:粒子径40nm)さらには、正極活物質として、マンガン酸リチウム(LiMn24)及び、溶剤(NMP)からなるペーストを作成した。ペースト中のイオン透過性化合物、炭素微粒子、正極活物質の組成比はそれぞれ2質量%、3質量%、95質量%とし、溶剤は正極活物質の10質量%とした。次に、実施例1と同様にアプリケーター(隙間:250μm)を用いて、アルミニウム箔上にこのペーストを塗工し、その後、空気中で180℃にて3分間乾燥し、熱硬化させて、イオン透過性を有する化合物と炭素微粒子及び正極活物質を含む皮膜を備えたアルミニウム箔を得た。
乾燥後この皮膜の厚さを測定したところ厚さは200μmであり、皮膜中における電子導電性を有する炭素微粒子と正極活物質の含有率はそれぞれ3質量%、95質量%であった。
以下、実施例1と同様の工程により、セパレーター、銅箔上に形成された負極集電体を組み込みこれらに有機電解液を含侵させ、リチウムイオン二次電池を得た。
同様に初期容量維持率、内部抵抗を測定して、結果を表1、表2にそれぞれに示した。
(実施例3)
実施例2において、アルミニウム箔の材料をA1085材からA3003材に変更しイオン透過性を有する化合物の代わりに有機溶媒による剥離試験において剥がれのない化合物として多糖類高分子ポリマーであるキトサンをアクリロニトリルで架橋したものを用意した。この化合物を0.5μmの厚さに成膜して有機溶剤であるエチルアルコールで剥離試験を行ったところ剥離は認められないものであった。また、この分子量はGPC測定により31000であった。また、炭素微粒子として気相法炭素繊維(昭和電工製、商標登録名VGCF)とした。また、正極活物質をオリビン系(LiFePO4)に変更した。
さらに、炭素微粒子の添加量を変更し、ペースト中の有機溶媒による剥離試験において剥がれのない化合物、炭素微粒子、正極活物質の組成比はそれぞれ2質量%、1質量%、97質量%とした。
これ以外には、実施例2と同様にしてリチウムイオン二次電池を得た。同様に初期容量維持率、内部抵抗を測定して、結果を表1に示した。
(実施例4)
実施例1において、イオン透過性を有する化合物の代わりにNMPに対して膨潤しない化合物として、多糖類高分子ポリマーであるキトサンを無水トリメリット酸で架橋し、さらに溶媒をNMPとしたものを用意した。この分子量はGPC測定により22000であった。
これを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を得た。同様に初期容量維持率、内部抵抗を測定して、結果を表1、表2にそれぞれ示した。
(実施例5)
電解銅箔の厚さ9μmである銅箔を用意した。次に、イオン透過性を有する化合物として多糖類高分子ポリマーであるセルロースをキトサンピロリドンカルボン酸塩で架橋したものを用意した。この分子量はGPC測定により40000であった。これを用いて、電子導電性を有する炭素微粒子(アセチレンブラック:粒子径40nm)との混合ペーストを作成した。溶媒はNMPとし、イオン透過性化合物と炭素微粒子と溶媒との質量比率を35:15:50とした。次に、グラビアロール(#200)を用いたグラビア法により銅箔上にこのペーストを塗工し、その後、空気中で180℃にて3分間乾燥し、熱硬化させて、イオン透過性を有する化合物と炭素微粒子を含む皮膜を備えた銅箔(集電体)を得た。
乾燥後この皮膜の厚さを測定したところ厚さは0.2μmであり、皮膜中における電子導電性を有する炭素微粒子の含有率は30質量%であった。
次に、負極活物質、電子導電性炭素微粒子、バインダー、及び溶剤からなる負極ペーストを用いて厚さ250μmの電極層を形成させリチウムイオン二次電池用負極とした。この際、負極活物質はグラファイト、導電性炭素微粒子としてアセチレンブラック、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。各成分の組成比は負極活物質:炭素微粒子:バインダー=92:5:3(質量比)として、溶剤は負極活物質質量の10質量%とした。
以下、実施例1と同様の工程により、セパレーター、実施例1で用いたアルミニウム箔上に形成された正極を組み込みこれらに有機電解液を含浸させ、リチウムイオン二次電池を得た。同様に初期容量維持率、内部抵抗を測定して、結果を表1、表2にそれぞれ示した。
(実施例6)
実施例5においてイオン透過性を有する化合物の代わりにテープ剥離試験において剥がれのない化合物として多糖類高分子ポリマーであるキトサンをアクリロニトリルで架橋したものを用意した。この化合物を0.5μmの厚さにして成膜してテープ剥離試験を行ったところ100/100であり剥離は認められないものであった。また、この分子量はGPC測定により26000であった。また、炭素微粒子として気相法炭素繊維(昭和電工製、商標登録名VGCF)とした。これ以外には、実施例5と同様にしてリチウムイオン二次電池を得た。同様に初期容量維持率、内部抵抗を測定して、結果を表1、2にそれぞれ示した。
(比較例1)
実施例1において、A1085材上にイオン透過性を有する化合物と電子導電性を有する炭素微粒子からなる複合皮膜を形成させずに、実施例1に示した正極活物質(コバルト酸リチウム)、電子導電性炭素微粒子(アセチレンブラック)、バインダー(PVDF)、溶剤(NMP)からなる集電層を200μm形成させ、正極集電体を得た。以下、同様にしてリチウムイオン二次電池を作成し、初期容量維持率、内部抵抗を実施例1と同じ条件にて測定して表1、表2にそれぞれ示した。
(比較例2)
実施例5において、イオン透過性を有する化合物の代わりに、上記PVDFバインダー(有機溶媒による剥離試験において剥がれのある化合物)を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作成し、初期容量維持率、内部抵抗を実施例1と同じ条件にて測定して表1、表2にそれぞれ示した。2次電池にまで加工することは可能であったが、炭素微粒子を含有する皮膜を備えた集電体の段階で、NMPを浸漬させた布で集電体表面をこすると大きく剥離を生じた。初期の特性がたとえ良好であっても、長期間の使用には耐えられない二次電池であることが測定できる。
(比較例3)
実施例1において、イオン透過性を有する化合物の代わりに、PVA(ポリビニルアルコール)バインダー(テープ剥離試験において剥がれのある化合物)を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作成し、初期容量維持率、内部抵抗を実施例1と同じ条件にて測定して表1、表2にそれぞれ示した。2次電池にまで加工することは可能であったが、炭素微粒子を含有する皮膜を備えた集電体の段階で、テープ剥離試験を実施したところ集電体表面が大きく剥離した。初期の特性がたとえ良好であっても、長期間の使用には耐えられない二次電池であることが測定できる。
表1によれば、比較例は低レートにおける初期容量維持率は本発明における実施例に比べ遜色はないが、高レートになると初期容量維持率が大幅に低下した。
すなわち、急速充放電が困難であることが分かる。
また、表2からも内部抵抗が小さく、急速充放電に向いている二次電池であることが分かる。
本発明が急速充放電特性に優れているのは、イオンの移動と電池の移動をそれぞれイオン透過性バインダーと電子導電性の炭素微粒子とが分担して受け持っているため、金属箔と炭素微粒子含有皮膜、電極皮膜とが強固に密着しているためと推察される。
Figure 2011086636
Figure 2011086636
本発明は、二次電池用集電体形成用のペースト、このペーストを用いた二次電池用集電体およびその製造方法、二次電池用電極、二次電池を提供する。特に、多糖類高分子ポリマーと架橋剤とからなる皮膜形成用の化合物と炭素微粒子と溶剤とを含む特定のペースト、およびこのペーストを用いた二次電池用集電体および関連発明は、二次電池を構成した時に、高レートでの初期容量維持率の向上が極めて改善することができ、急速充放電特性が優れていることから、二次電池を搭載している通信機器やデジタル家電等において好適に用いることができる。この特性により二次電池を搭載する機器の用途が広がり産業上の利用範囲が予想以上に拡大することができる。
1…アルミニウム箔、
2…イオン透過性化合物、
3…炭素微粒子、
4…複合皮膜、
5…正極活物質、

Claims (9)

  1. (a)多糖類高分子ポリマーと架橋剤とからなる皮膜形成用の化合物、
    (b)炭素微粒子、及び
    (c)溶剤
    を含む二次電池用集電体形成用のペースト。
  2. 前記多糖類高分子ポリマーがキトサンまたはキチンである請求項1に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
  3. 前記架橋剤が酸無水物である請求項1または2のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
  4. 前記酸無水物が無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸である請求項3に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
  5. 前記炭素微粒子が、針状あるいは棒状の炭素微粒子を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペースト。
  6. アルミニウム箔または銅箔の上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペーストからなる皮膜を形成する工程及び、
    該皮膜の溶剤を飛散させる工程
    を含む二次電池用集電体の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用集電体形成用のペーストを用いて製造された二次電池用集電体。
  8. 請求項7に記載の集電体と、活物質を含む皮膜とを有する二次電池用電極。
  9. 請求項8に記載の電極を有する二次電池。
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