JP2011084752A - 低窒素鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶銑に熱余裕がない場合であっても、転炉での脱炭吹錬末期における大気の転炉内への侵入を確実に防止し、転炉内溶融鉄の窒素濃度の上昇を抑えて低窒素鋼を安定して製造する。
【解決手段】 本発明の低窒素鋼の製造方法は、プラスチックを20〜70質量%含有し、残部を金属または金属酸化物とする成形体を、転炉における溶銑の脱炭吹錬の末期に転炉内に投入し、前記プラスチックから生じるガスと前記脱炭吹錬で生じるガスとの総量を転炉内の溶鋼トンあたり400Nm3/hr以上に確保して大気の転炉内への侵入を防止する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、転炉での脱炭吹錬末期における大気の炉内侵入を防止することによって低窒素鋼を製造する方法に関する。
酸素ガスを上吹きするまたは底吹きして溶銑中の炭素を酸化除去する、転炉における溶銑の脱炭吹錬では、酸素吹錬の末期、炉内溶融鉄中の炭素濃度の低下に伴って、転炉からの排ガスの発生量が低下する。これにより、転炉内圧力が大気圧に対して負圧になるタイミングが発生し、そのとき外部の大気が転炉内に侵入して炉内の溶融鉄と接触し、大気中の窒素ガスが溶融鉄に吸収され、溶製される溶鋼の窒素濃度が上昇する。尚、転炉における溶銑の脱炭吹錬では、転炉内に装入された溶銑は脱炭精錬されて次第に溶鋼となるが、脱炭精錬の途中過程で溶銑と溶鋼とを区別して表現することは困難であるので、本発明では両者をまとめて溶融鉄と表示している。
この吹錬末期の溶融鉄の窒素濃度の上昇を抑えるために、多数の提案がなされている。例えば、特許文献1には、吹錬末期に転炉内のスラグをフォーミング(泡立たせる)させ、大気と炉内溶融鉄とが直接接触しないようにして吹錬する方法が提案されている。特許文献1では、スラグをフォーミングさせるためのガス発生物質の例として石灰石(CaCO3)を挙げているが、スケールなどの酸化鉄も溶融鉄中に溶解する際に溶融鉄中の炭素と反応してCOガスを発生することから、ガス発生物質として使用されている。
また、特許文献2には、吹錬末期にガス発生物質を炉内に添加し、転炉炉口のガス圧力を正圧に保持することで、大気の炉内侵入を防止する方法が提案されている。特許文献2では、ガス発生物質として、製紙スラジを主成分とする有機物質である鎮静剤を挙げているが、これに限定されないとしている。
一方、特許文献3には、溶融鉄の窒素濃度の上昇を防止する目的ではないものの、排ガスの発生量が少ない精錬であっても熱的に有効な排ガスを回収することを目的として、精錬炉内にプラスチック或いはプラスチックと製鉄ダストなどとの混合物やブリケットを投入し、精錬反応により生じるガスを、プラスチックから生じるガスとともに回収する精錬方法が提案されている。但し、特許文献3では、ガス回収が目的であることから、反応末期の熱的に有効なガスの発生量が少なくなる時期はガス回収が困難であるため、吹錬末期にはプラスチックの投入を停止している。
特開昭59−208009号公報 特開昭61−157609号公報 特開2002−339012号公報
しかしながら、上記の従来技術には以下の問題点がある。
すなわち、特許文献1では、スラグをフォーミングさせるためにガス発生物質を添加しており、ガス発生物質が石灰石であってもまた酸化鉄であっても、何れも吸熱反応によってガスが発生することから、ガス発生物質を添加することにより転炉終点の溶鋼温度が低下する。そのために、溶融鉄に熱余裕がない場合にはガス発生物質を添加することができず、窒素のピックアップが発生する。
特許文献2では、ガス発生物質として製紙スラジを用いており、製紙スラジは高温に加熱されるとCO2ガス、H2ガス及び炭化水素ガスを発生するが、当然、これらのガスの発生量が少ない場合には転炉炉口圧力を正圧に保持することはできず、転炉内に大気が侵入して溶鋼の窒素ピックアップが発生する。特許文献2は、どの程度のガスが発生すれば窒素のピックアップが防止できるかを開示していない。また、製紙スラジは、石炭やコークスと同様に灰分を含み、ガス発生物質としては最適ではない。
特許文献3では、ガス発生物質としてプラスチックを利用しており、プラスチックは一般的には灰分を含有せず、高温下ではほとんどがガス化することから、優れたガス発生物質であるが、特許文献3では、精錬末期にはプラスチックの投入を中止しており、溶鋼の窒素ピックアップ防止の効果はない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶銑に熱余裕がない場合であっても、転炉での脱炭吹錬末期における大気の転炉内への侵入を確実に防止し、転炉内溶融鉄の窒素濃度の上昇を抑え、低窒素鋼を安定して製造する方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る低窒素鋼の製造方法は、プラスチックを20〜70質量%含有し、残部を金属または金属酸化物とする成形体を、転炉における溶銑の脱炭吹錬の末期に転炉内に投入し、前記プラスチックから生じるガスと前記脱炭吹錬で生じるガスとの総量を転炉内の溶鋼トンあたり400Nm3/hr以上に確保して大気の転炉内への侵入を防止することを特徴とする。
第2の発明に係る低窒素鋼の製造方法は、第1の発明において、前記成形体を、脱炭吹錬で生じるガスの発生量が転炉内の溶鋼トンあたり600Nm3/hr以下で且つ400Nm3/hr以上の時点で炉内に投入することを特徴とする。
本発明によれば、転炉における溶銑の脱炭精錬の末期に、プラスチックを20〜70質量%含有し、残部を金属または金属酸化物とする成形体を転炉内に投入し、プラスチックから生じるガスと脱炭吹錬で生じるガスとの総量を転炉内の溶鋼トンあたり400Nm3/hr以上に確保するので、転炉内への大気の侵入が妨げられ、これにより、大気中の窒素による炉内溶鋼の窒素ピックアップが防止され、低窒素鋼を安定して製造することが実現される。プラスチックは高発熱物質であるので、溶銑に熱余裕がない場合でも問題とならない。
吹錬開始から吹錬終了までの炉内の溶融鉄の窒素濃度及び転炉からの排ガス流量を調査した結果を示す図である。 転炉で製造された溶鋼中の窒素濃度を本発明例と比較例とで対比して示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、転炉での脱炭吹錬末期における大気の転炉内への侵入に起因する溶鋼中窒素のピックアップを防止するために、上吹き酸素ガスの吹錬開始から吹錬終了までの炉内の溶融鉄の窒素濃度及び転炉からの排ガス流量について調査した。図1に調査結果を示す。図1は、炉容量が300トンの転炉において、上吹きランスから酸素ガスを供給し、炉底の底吹きノズルからArガスを攪拌用ガスとして吹き込んで脱炭吹錬したときの結果である。尚、攪拌用のArガスの吹き込み量は、溶鋼トンあたり6.0Nm3/hr(以下、「Nm3/(hr・t)」と記す)程度であり、転炉からの排ガス流量に比較して極めて少なく、底吹きArガスは排ガス流量に影響を与えていないことが分かる。
図1に示すように、酸素吹錬を開始すると同時に排ガス流量は増加するが、吹錬初期は溶銑中の珪素の酸化が優先し、排ガス流量は400〜600Nm3/(hr・t)程度である。吹錬が進行し、溶銑中の珪素が酸化除去された後は、供給される酸素ガスの全量が溶銑中炭素の酸化のために費やされ、排ガス流量は800Nm3/(hr・t)程度に達する。その後、吹錬開始から12分間程度経過し、脱炭反応によって炉内溶融鉄中の炭素濃度が低下すると、脱炭反応は、酸素ガスの供給律速から溶融鉄中の炭素の移動律速へと変化し、これに伴って排ガス流量は低下する。これは、脱炭反応が炭素の移動律速の領域になると、反応界面で余剰となった酸素は、必然的に溶融鉄を構成する鉄やマンガンなどの成分元素と反応し、これら成分の酸化に費やされ、排ガス量が低減するからである。そして、脱炭吹錬の末期には200Nm3/(hr・t)程度にまで低下する。尚、脱炭反応の反応律速が酸素ガスの供給律速から溶融鉄中の炭素の移動律速へと変化する時点は、溶融鉄中の炭素濃度が0.6質量%程度の時点であり、更に具体的に表現すれば、脱炭吹錬終点よりも2分ないしは3分程度前の時点である。
一方、溶融鉄中の窒素濃度(N濃度)は、吹錬開始後、雰囲気ガス中に窒素ガスが存在しない条件下で強攪拌されるので脱窒反応が起こり徐々に低下して、吹錬開始から12分間程度経過した時点では10ppm程度まで減少する。しかし、その後、上昇し始めて吹錬終了時には20ppm程度まで上昇する。
これらの現象を詳細に解析した結果、転炉からの排ガス流量が400Nm3/(hr・t)未満になると、溶融鉄の窒素ピックアップが発生することが分かった。これは、排ガス流量が400Nm3/(hr・t)未満になると、炉内圧力が大気圧よりも低くなる場合が発生し、大気が炉内に侵入して大気中の窒素ガスが溶融鉄に吸収されることによる。
従って、吹錬末期の転炉からの排ガス流量を400Nm3/(hr・t)以上、望ましくは500Nm3/(hr・t)以上に確保すれば、溶融鉄の大気による窒素ピックアップが防止されることを見出した。つまり、転炉内にガス発生物質を投入してガスを発生させ、脱炭反応で生成するガスとガス発生物質から発生するガスとの総量が400Nm3/(hr・t)以上、望ましくは500Nm3/(hr・t)以上になれば、転炉の炉内圧力は大気圧よりも高く保持され、大気の転炉内への侵入が妨げられ、大気による溶融鉄の窒素ピックアップを防止できることが分かった。
次に、炉内に投入するガス発生物質について検討した。その結果、灰分を含有せず、大部分がガス化し、燃焼する際には分解熱以上の発熱量を有することから、ガス発生物質としてはプラスチックが最適であることが分かった。また、プラスチックのなかでも硫黄を含有しない、ポリプロピレンやポリエチレンなどのプラスチックが最適であることが分かった。硫黄を含有するプラスチックを使用した場合には、溶鋼中の硫黄濃度が上昇することから好ましくない。
つまり、使用するプラスチックは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの硫黄を含有しないプラスチックであれば特に制限はなく、廃物回収されたプラスチック(廃プラスチック)であっても何ら支障はないことが分かった。また、硫黄以外にも、燐、窒素などを多量に含む場合には溶鋼汚染源となり好ましくなく、珪素、アルミニウムなどを多量に含む場合にもスラグの増大につながるため好ましくない。従って、使用するプラスチックとしては、これら成分の少ないものを選択する必要がある。
プラスチックは、〔C〕、〔H〕、〔O〕から構成されるものが主であり、分解反応によって、炭素、COガス、H2ガス及び炭化水素ガスなどが発生する。これらの分解物は、燃料や還元剤としても機能することから、転炉内に投入されたプラスチックは、ガス発生物質として機能するのみならず、熱源や還元剤としても利用することができる。
但し、これらのプラスチックは比重が0.9〜1.0であり、そのまま転炉内に投入すると、転炉炉口での排ガスの流速は速く、排ガスのガス流によって炉外に排出してしまう恐れがある。そこで、本発明においては、プラスチックを、金属または金属酸化物との成形体に加工し、見掛け比重を高めることとした。つまり、成形体を構成する金属及び金属酸化物は、成形体の比重調整用としての機能を担うことになる。
この場合に、成形体中のプラスチックの含有量は、20〜70質量%であることが必要となる。成形体中のプラスチックの含有量が20質量%未満では、ガス発生量が少なく、成形体の投入量が増加するので、好ましくない。また、成形体中のプラスチックの含有量が20質量%未満では、プラスチックによる発熱量が少なく、成形体残部の金属または金属酸化物による冷却効果の方が大きくなり、溶融鉄の熱余裕が不足する場合には、使用できず好ましくない。一方、成形体中のプラスチックの含有量が70質量%を超えると、成形体の比重が小さくなり、安定した炉内への投入が損なわれることから好ましくない。
成形体を構成する金属としては、転炉スラグを磁力選別して回収した磁選地金、機械工場で発生する鋼の切削屑、チョッパー屑のような小型の鉄スクラップが好適であるが、成分調整用の各種合金鉄などであっても構わない。また、成形体を構成する金属酸化物としては、鉄鉱石、ミルスケール、製鉄ダスト、Mn鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石などが好適である。
プラスチックと、金属または金属酸化物とから成形体を成形する方法としては、これらを混合して強い押出し力で多孔ダイスあるいは金網などから押出して成形する押出し成形方法、これらを混合して一定の容器内で強く圧縮して成形する圧縮成形方法、これらの混合物を加熱してプラスチックを溶融して成形する溶融成形方法などがあり、どの方法を用いて成形しても構わないが、熱可塑性のプラスチックの場合には、比較的容易に成形できることから、押出し成形方法が好適である。
本発明はこれらの検討結果に基づきなされたものであり、すなわち、本発明では、プラスチックを20〜70質量%含有し、残部を金属または金属酸化物とする成形体を、転炉における溶銑の脱炭吹錬の末期に転炉内に投入し、前記プラスチックから生じるガスと前記脱炭吹錬で生じるガスとの総量を転炉内の溶鋼トンあたり400Nm3/hr以上に確保し、これにより脱炭吹錬末期の大気の転炉内への侵入を防止する。
本発明において、成形体の投入開始時期は、脱炭反応の反応律速が酸素ガスの供給律速から溶融鉄中の炭素の移動律速へと変化した時点よりも吹錬後半の時期とし、脱炭吹錬によって発生するガスの発生量が600Nm3/(hr・t)以下となった以降で且つ400Nm3/(hr・t)以上の時点とすることが好ましい。また、一回の投入で、排ガス流量を400Nm3/(hr・t)以上、望ましくは500Nm3/(hr・t)以上に確保するために必要な投入量の全量を投入してもよいが、プラスチックの分解反応は迅速であり、しかも、少なくとも1分間程度は継続してガスを発生させることが効果的であることから、成形体の必要投入量を分割して断続的に投入する或いは吹錬終了の直前まで連続的に投入することが好ましい。転炉からの排ガス流量は、転炉上方の排ガスダクトに設けた流量計などによって直接求めることができる。
以上説明したように、本発明によれば、転炉における溶銑の脱炭精錬の末期に、プラスチックを20〜70質量%含有し、残部を金属または金属酸化物とする成形体を転炉内に投入し、プラスチックから生じるガスと脱炭吹錬で生じるガスとの総量を転炉内の溶鋼トンあたり400Nm3/hr以上に確保するので、転炉内への大気の侵入が妨げられ、これにより、大気中の窒素による炉内溶鋼の窒素ピックアップが防止され、低窒素鋼を安定して製造することが実現される。
上吹きランスから酸素ガスを供給し、炉底の底吹きノズルからArガスを攪拌用ガスとして供給する、炉容量が300トンの転炉での溶銑の脱炭吹錬に本発明を適用した。
ポリプロピレン及びポリエチレンを主体とする廃プラスチックと製鉄ダストとを6:4の配合比率で混合し、これを押し出し成形して円柱状の成形体を作成した。成形体の1個の質量は30〜40g、比重は約1.2であった。溶銑の脱炭吹錬中に、転炉からの排ガス流量を排気ダクトに設置した流量計で測定し、排ガス流量が600Nm3/(hr・t)となった時点で、溶鋼トン当たり1.0kgの前記成形体を炉内に一括投入した。この成形体の投入により、排ガス流量は吹錬終了まで400Nm3/(hr・t)以上が確保された。
脱炭吹錬終了後、溶鋼を未脱酸の状態で転炉から取鍋に出鋼し、出鋼直後、取鍋内溶鋼から分析用試料を採取して窒素濃度を調査した。図2に調査結果を示す。図2には、成形体を添加しないで精錬したときの溶鋼中窒素濃度を比較例として併せて示している。尚、図2の横軸のインプット炭素量とは、転炉に装入する際の溶銑の炭素濃度と、転炉内に供給した炭材(コークス、石炭)の全量が溶融鉄中に溶解したとして求めた炭素濃度との和である。
図2に示すように、全体の傾向として、インプット炭素量が増加するに伴って溶鋼中窒素濃度が低下する傾向であるが、本発明例では比較例に対して窒素濃度が8ppm程度低下することが確認できた。すなわち、本発明により、大気による炉内溶融鉄の窒素ピックアップが防止され、安定して低窒素鋼を製造できることが確認できた。

Claims (2)

  1. プラスチックを20〜70質量%含有し、残部を金属または金属酸化物とする成形体を、転炉における溶銑の脱炭吹錬の末期に転炉内に投入し、前記プラスチックから生じるガスと前記脱炭吹錬で生じるガスとの総量を転炉内の溶鋼トンあたり400Nm3/hr以上に確保して大気の転炉内への侵入を防止することを特徴とする、低窒素鋼の製造方法。
  2. 前記成形体を、脱炭吹錬で生じるガスの発生量が転炉内の溶鋼トンあたり600Nm3/hr以下で且つ400Nm3/hr以上の時点で炉内に投入することを特徴とする、請求項1に記載の低窒素鋼の製造方法。
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