JP2013082997A - 転炉製鋼方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 転炉製鋼方法において、カーボンニュートラルであるバイオマス由来の炭材を、コークスや石炭などの化石燃料由来の炭材に替わる熱源として利用することで温室効果ガス発生量を削減する。
【解決手段】 転炉内の溶銑12を酸素吹錬して溶鋼を溶製する転炉製鋼方法において、酸素吹錬中に熱源として使用する、コークス、石炭、黒鉛などの化石燃料由来の炭材の一部または全部をバイオマス由来の炭材に置き換え、温室効果ガスの発生量を削減する。この場合に、前記バイオマス由来の炭材の硫黄含有量を0.10質量%以下とすること、前記バイオマス由来の炭材は、植物系バイオマスを炭化して製造される炭化物にバインダー及び水分を加えて成型した成型体であること、及び、前記バイオマス由来の炭材として、パームヤシ殻由来のバイオマス炭、パームヤシ空果房由来のバイオマス炭、パームヤシ幹由来のバイオマス炭のうちの何れか1種または2種以上を使用することが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、転炉内の溶銑を酸素吹錬して溶鋼を溶製する転炉製鋼方法に関し、詳しくは、溶鋼の温度調整のために酸素吹錬中に使用する熱源を起源として発生する温室効果ガスの発生量を軽減することのできる転炉製鋼方法に関する。
酸素吹錬により溶銑を脱炭精錬して溶鋼を溶製する転炉製鋼方法では、鉄源である主原料を溶銑と鉄スクラップなどの冷鉄源とし、この溶銑の有する顕熱と溶銑中に含まれる炭素や珪素の酸化による発熱とを熱源として、次工程の要求する溶鋼温度を確保している。そして、主原料中の溶銑の比率(溶銑配合率という)を、生産量の変動や鉄スクラップ価格の変動などから常時最適条件となるように変動させている。但し、溶銑配合率を低くすると転炉脱炭精錬における熱源が減少する。そこで、溶銑配合率を低くした結果、次工程の要求する溶鋼温度の確保が困難となる場合には、熱源としてFe−Si合金やコークスなどの炭材を炉内に追加装入し、熱源の不足を補っている。
しかし、Fe−Si合金の追加装入は、スラグ中のSiO2量を増加させる。このSiO2の増加分に対応してスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))を所定値に調整する必要が発生し、生石灰やドロマイトなどのフラックスの装入量が増大する。その結果、炉内スラグ量の増加を招き、鉄歩留りの低下などが発生する。一方、コークスや黒鉛などの炭材の追加装入は、これらの炭材中に含有される硫黄の溶鋼への汚染があり、対象鋼種や使用量が制限される。
このような制限によって熱源不足が補えない場合は、止む無く溶銑配合率を高め、生産量の確保は断念した操業が行われてきた。また、近年は地球環境対策への取り組みも重要であり、コークスや黒鉛などの化石燃料由来の炭材の使用は、化石燃料由来のCO2ガスの大気中への排出を増加させることになり、地球温暖化防止の観点からも使用量の削減が要求されている。
上記の炭材使用による溶鋼への硫黄汚染を防止することを目的として、特許文献1には、プラスチックは炭素と水素を主成分とし硫黄を含有していないことに着目し、Fe−Si合金やコークスなどの炭材に替わる熱源としてプラスチックを転炉脱炭精錬で利用する方法が開示されている。
しかしながら、プラスチックが化石燃料由来の場合には、コークスや黒鉛などと同様にプラスチックも温室効果ガスであるCO2ガスを大気中に排出することになり、プラスチックの利用も地球温暖化防止の観点からは十分とはいえない。
特開平10−140223号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、カーボンニュートラルであるバイオマス由来の炭材を、コークスや石炭などの化石燃料由来の炭材に替わる、転炉脱炭精錬における熱源として有効利用することによって、温室効果ガス発生量を削減することのできる転炉製鋼方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]転炉内の溶銑を酸素吹錬して溶鋼を溶製する転炉製鋼方法において、酸素吹錬中に熱源として使用する、コークス、石炭、黒鉛などの化石燃料由来の炭材の一部または全部をバイオマス由来の炭材に置き換え、温室効果ガスの発生量を削減することを特徴とする転炉製鋼方法。
[2]前記バイオマス由来の炭材の硫黄含有量が0.10質量%以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の転炉製鋼方法。
[3]前記バイオマス由来の炭材は、植物系バイオマスを炭化して製造される炭化物にバインダー及び水分を加えて成型した成型体であることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の転炉製鋼方法。
[4]前記バイオマス由来の炭材が、パームヤシ殻由来のバイオマス炭、パームヤシ空果房由来のバイオマス炭、パームヤシ幹由来のバイオマス炭のうちの何れか1種または2種以上であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[3]の何れか1項に記載の転炉製鋼方法。
[5]前記転炉製鋼方法は、鉄源として溶銑及び冷鉄源を転炉内に装入した後に酸素吹錬を開始する転炉製鋼方法であって、前記バイオマス由来の炭材の総添加量をX(kg-炭材/t-溶鋼)、該炭材の硫黄含有量をa(質量%)、酸素吹錬前の溶銑及び冷鉄源の硫黄含有量の加重平均値をb(質量%)、吹錬終了時の溶鋼の許容最大硫黄含有量をc(質量%)としたとき、前記炭材の総添加量Xを下記の(1)式で求められる値とし、この炭材の総添加量X、並びに、前記溶銑の温度及び成分組成に基づいて前記冷鉄源の装入量を決定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[4]の何れか1項に記載の転炉製鋼方法。
X=[(c−b)/a]×1000 …(1)
[6]酸素吹錬中に、鉄鉱石、鉄鉱石の焼結鉱、ミルスケール、製鉄ダスト、磁選屑、鋼の切削屑のうちの何れか1種または2種以上を冷却材として炉上から転炉内に投入することを特徴とする、上記[1]ないし上記[5]の何れか1項に記載の転炉製鋼方法。
本発明によれば、転炉脱炭精錬における熱源としてカーボンニュートラルであるバイオマス由来の炭材を、化石燃料由来の炭材の一部または全部と切り替えて使用するので、バイオマス由来の炭材の使用比率に応じて、熱源の燃焼による温室効果ガスの発生量を削減することが実現される。また、硫黄含有量が0.10質量%以下のバイオマス由来の炭材を使用した場合には、炭材から溶鋼への硫黄の混入を抑制することができ、大量のバイオマス由来の炭材の使用が可能となり、硫黄混入に起因する熱源不足が解消され、溶銑配合比率を高めることができ、溶鋼生産量を増加させることが可能となる。
本発明を適用した上底吹き型の転炉設備の縦断面の概要図である。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は本発明を適用した上底吹き型の転炉設備の縦断面の概要図である。
転炉設備1は、溶銑12を収容して脱炭精錬する転炉本体2と、転炉本体2の上部の炉口3を通って転炉本体2の内部空間への上下移動が可能な上吹き酸素ランス4と、炉口3を覆うダクト8を介して転炉本体2から発生する脱炭精錬の排ガス(主にCOガス)を回収するガス回収装置(図示せず)と、ホッパー9、9a、切り出し装置10、10a及びシュート11がその一部分を構成する原料装入装置と、から構成されている。転炉本体2には、その炉底を貫通する底吹き羽口5と、その側壁を貫通する出鋼口7とが設置されている。底吹き羽口5はガス導入管6と連通しており、底吹き羽口5からは、ガス導入管6を介して供給される、Arガスや窒素ガスなどの攪拌用ガス或いは精錬用酸素ガスが、底吹きガスとして吹き込まれるように構成されている。また、シュート11はダクト8を貫通して炉口3の直上に至り、シュート11を介して炉口3から原料が炉内に装入されるように構成されている。
このように構成される転炉設備1を用い、以下のようにして本発明を実施する。
先ず、転炉本体2に主原料(=鉄源)として、溶銑12と鉄スクラップなどの冷鉄源とを装入する。冷鉄源の配合比率(冷鉄源の配合比率=冷鉄源装入量×100/(溶銑装入量+冷鉄源装入量))は、使用する溶銑12の温度、溶銑12の炭素含有量及び珪素含有量、並びに、炭材などの熱源の炉内添加量に基づいて決定する。これは、冷鉄源が、溶銑12の潜熱、溶銑中の炭素及び珪素の酸化熱、並びに、炉内に添加される熱源の酸化熱によって溶解することによる。溶銑12の温度、炭素含有量及び珪素含有量が高いほど、また、熱源の添加量が多いほど、冷鉄源の配合比率は高くなる。使用する溶銑12には、必要に応じて脱硫、脱珪、脱燐の予備処理を実施し、また、冷鉄源としては、鉄スクラップのほかに、直接還元鉄、冷銑などを使用することができる。
溶銑12の温度条件及び成分組成(炭素、珪素)条件、並びに、バイオマス由来の炭材の添加量に基づいて設定した配合比率に沿って冷鉄源を炉内に装入し、次いで、前記配合比率に沿って溶銑12を炉内に装入する。その後、ホッパー9に収納される、ブリケット状に成型したバイオマス由来の炭材を切り出し装置10により所定量切り出し、シュート11を介して炉口3より炉内に熱源として装入する。更に、炉内に精錬用の溶融スラグ13を形成させるべく、生石灰、蛍石、ドロマイトなどの造滓材を原料装入装置(図示せず)を介して転炉本体2の内部に装入する。また更に、溶銑12の条件及び炭材の添加量から算出される発熱量と、造滓剤の添加量及び出鋼時の溶鋼温度の目標値などとを対比した熱計算において熱余裕が有る場合には、この熱余裕に応じた量の冷却材をホッパー9aから切り出し装置10aによって切り出し、シュート11を介して炉内に装入する。
その後、底吹き羽口5から底吹きガスを吹き込みながら、上吹き酸素ランス4から酸素ガスを炉内の溶銑12に吹き付けて酸素吹錬を開始する。そして、酸素吹錬中においても、炭材と、この炭材の添加量に応じた量の冷却材とを、シュート11を介して炉口3より適宜炉内に装入する。
ホッパー9に収納され、炉上から投入するバイオマス由来の炭材としては、例えば、外形が40〜50mm角で、厚みが25〜35mmにブリケット成型したものを使用することが好ましい。成型方法としてはロール成型の他、型に入れた炭材を加圧成型して直方体や円柱状のブリケットとしてもよい。ブリケットの生産性や成型コストを考慮すると、ロール成型するのがより好ましく、更に好ましくは、ロール成型の型をマセック型とするのがよい。バイオマス由来の炭材をブリケット化することで、炭材の転炉への投入時に、炉内からの吹き上げや炉内湯面到達前の燃焼を防止することができ、炭材の歩留りを向上させることができる。
バイオマス由来の炭材のブリケット化は、次の方法で行うことができる。即ち、炭化装置を用いて、パームヤシ殻などの植物系バイオマスを原料にして炭化物を製造し、得られた炭化物を篩い分けして3mm以下の粒径に調整する。次いで、粒径が3mm以下の炭化物の質量の例えば4質量%に相当する澱粉(アルファー化処理されたもの)をバインダーとして加え、更に、3mm以下の粒径の炭化物の質量の例えば14質量%に相当する水分を加えてミキサーで攪拌・混合し、44mm角のマセック型の成型体が得られるロール式成型機を用いてブリケットを成型する。この成型後に、乾燥炉にて100℃以上の温度、例えば105℃の温度で、水分がブリケット質量の1質量%以下となるまで乾燥することで、バイオマス由来の炭材の成型体を製造することができる。
また、植物系バイオマスから製造される炭化物に石炭及び/またはコークスを配合し、これに、バインダー及び水分を上記と同等量添加しても、ブリケットを成型することができる。この場合、成型体の硫黄含有量の観点から、石炭及びコークスの合計配合量は50質量%以下、好ましくは5〜15質量%とすることが望ましい。
バインダーとしては、上記の澱粉以外に、澱粉と同様に硫黄分を含まないことから、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチなどが好適である。また、ベントナイトなどの無機系のバインダーを使用することも可能である。上記ではバインダーの添加量を4質量%としているが、バインダーの添加量は、炭化物の形状、粒度によって適切な量は異なるものの、炭化物の質量に対して1質量%以上、15質量%以下であることが望ましい。バインダーの添加量が1質量%未満の場合には、ブリケット成型体の強度が50kgf/個を下回り、ハンドリングが難しくなる。一方、バインダーの添加量が15質量%を超えた場合には、成型用のロールから成型体の型離れが悪くなり、生産性が低下する。
また、上記では水分の添加量を14質量%としているが、炭化物の質量に対して9〜19質量%とすることが好ましい。9質量%未満では、成型しにくく且つ成型直後のブリケットが壊れ易い。一方、19質量%を超えると、後の乾燥工程に必要な時間が長くなり生産性が低下するので、好ましくない。尚、炭化物の種類によっては、粒度、形状の違いから成型に最適な水分量が変わる可能性があるので、炭化物の種類に応じて調整することがより好ましい。
炉上から投入する冷却材としては、鉄鉱石、鉄鉱石の焼結鉱、ミルスケール、製鉄ダスト、磁選屑、及び機械工場で発生する鋼の切削屑の何れか1種または2種以上を適宜選択して使用する。尚、冷却材中にFeOやFe23が含まれる場合も炉内で溶銑中及び炭材中の炭素によって還元され鉄となるので、資源の有効活用がなされる。ここで、磁選屑とは、転炉スラグなどに混入する地金分を、破砕したスラグから磁力選別によって回収したものである。
転炉脱炭精錬では、吹錬の途中で炉内にサブランスを投入して溶湯(溶銑または溶鋼)の温度及び成分を確認し、このサブランスによるデータに基づき、精錬終了時点の溶鋼温度及び溶鋼中炭素濃度が目標値となるように精錬を制御している。このサブランスによる溶湯の温度が目標の温度よりも低下している場合には、バイオマス由来の炭材のみを炉内に投入して溶湯の温度を上昇させ、一方、サブランスによる測温結果が目標値よりも高い場合には、冷却材のみを添加して溶湯の温度を低下させ、また、サブランスによる測温結果が目標値と同等であったなら、バイオマス由来の炭材とこの炭材の添加量に応じた量の冷却材とを炉内に投入するなどして、酸素吹錬を継続する。
所定量の酸素ガスが供給され、酸素吹錬が終了したなら、必要に応じて図示せぬ原料装入装置からFe−Mn合金やSi−Mn合金などを炉内に装入し、その後、図示せぬ傾動装置にて転炉本体2を傾動させ、出鋼口7から取鍋(図示せずに)溶鋼を排出して転炉脱炭精錬を終了する。
ところで、バイオマス由来の炭材も、化石燃料由来の炭材と同様に、不純物として硫黄を含有している。上記の説明では、バイオマス由来の炭材の添加量を規定しておらず、バイオマス由来の炭材の添加量が多くなれば、溶製される溶鋼の硫黄濃度が目標値を超える虞がある。溶製される溶鋼へのバイオマス由来の炭材による硫黄の汚染を未然に防止するためには、以下の方法を採用することが好ましい。
即ち、バイオマス由来の炭材の1チャージあたりの総添加量をX(kg-炭材/t-溶鋼)、この炭材の硫黄含有量をa(質量%)、酸素吹錬前の溶銑及び冷鉄源の硫黄含有量の加重平均値をb(質量%)、吹錬終了時の溶鋼の許容最大硫黄含有量をc(質量%)とすると、炭材の総添加量Xの最大値は下記の(1)式により算出される。
X=[(c−b)/a]×1000 …(1)
熱源としてバイオマス由来の炭材のみを添加する条件で、バイオマス由来の炭材の添加量が、(1)式で算出される総添加量X以下の添加量であるならば、炭材添加による硫黄濃度の上昇を、製造対象とする鋼種の上限値以下に抑えることができる。
コークスなどの従来の化石燃料由来の炭材を併用する場合には、化石燃料由来の炭材に含有される硫黄による硫黄濃度の上昇分を考慮してバイオマス由来の炭材の最大添加量を決める必要がある。つまり、化石燃料由来の炭材によって持ち込まれる硫黄分と、バイオマス由来の炭材によって持ち込まれる硫黄分との合計量が、溶鋼の許容最大硫黄含有量cを超えないようにする必要がある。
また、熱源としてバイオマス由来の炭材のみを添加するとし、バイオマス由来の炭材の添加量を(1)式で算出される総添加量Xとした条件で冷鉄源の配合比率を求めれば、求められる冷鉄源の配合比率は最大値となる。つまり、総添加量Xの炭材によって溶解可能な最大量の冷鉄源と、溶銑12の有する熱量によって溶解可能な最大量の冷鉄源とを合計した量の冷鉄源を配合することになる。
但し、バイオマス由来の炭材の添加量を最大値とし、且つ、冷鉄源の配合比率も最大値とした場合は、炭材の添加によって吹錬終了時の溶鋼の硫黄濃度が許容上限値となり、それ以上の炭材の添加は、溶鋼の硫黄濃度が許容上限値以上になることを意味している。従って、この場合には、吹錬の途中で炭材を投入すること及び冷却材を投入することは原則的にはできず、また、サブランスによる測温結果が目標値よりも低い場合も、バイオマス由来の炭材を投入することはできず、Fe−Si合金、金属Alなどの硫黄をほとんど含有しない金属系の熱源を使用する必要が生じることになる。
このように、硫黄濃度規制から算出される炭材の最大総添加量Xから求めた最大配合比率に沿って冷鉄源の配合量を設定すると、転炉脱炭精錬操業に調整の余裕が無くなって操業が難しくなるので、(A):炭材の最大総添加量Xから求めた冷鉄源の配合比率から求められる冷鉄源配合量の0.7〜0.9倍の配合量の冷鉄源を使用する、(B):(1)式で算出される総添加量Xの0.7〜0.9倍の炭材を添加すると仮定し、その条件で冷鉄源の配合比率を決める、などすることが好ましい。
上記(A)の場合には、炉内では発熱量のほうが多く、冷却材を添加する余裕があるので、精錬終了時の溶鋼の温度調整が容易であり、上記(B)の場合には、炭材を更に添加する余裕があり、炭材のみを添加して溶鋼温度を上昇させることができるのみならず、炭材と冷却材とを同時に添加することも可能であり、精錬終了時の溶鋼の温度調整がより一層容易になる。
使用する炭材は、バイオマス由来であればカーボンニュートラルであり、温室効果ガスは発生しないので、温室効果ガス発生の観点からは特に特定する必要はない。但し、バイオマス由来の炭材も上記のように硫黄を含有しており、大量の添加は溶鋼の硫黄濃度が上昇するという問題が生じる。種々検討した結果、炭材の硫黄含有量が0.10質量%以下であれば、炭材添加による溶鋼中硫黄濃度の上昇は少なく、大量の炭材を熱源として使用できることが分った。つまり、使用するバイオマス由来の炭材としては、硫黄含有量が0.10質量%以下の炭材であることが好ましい。
この観点から、バイオマス由来の炭材としては、パームヤシ殻由来のバイオマス炭(硫黄含有量≒0.05質量%)、パームヤシ空果房由来のバイオマス炭(硫黄含有量≒0.07質量%)、パームヤシ幹由来のバイオマス炭(硫黄含有量≒0.10質量%)のうちの何れか1種または2種以上を使用することが好ましい。
例えば、酸素吹錬前の溶銑及び冷鉄源の硫黄含有量の加重平均値と、製造対象の鋼種から決定される酸素吹錬終了時の溶鋼の許容最大硫黄含有量との差、つまり、酸素吹錬中に炭材から混入する硫黄の濃度上昇の許容される上限値が0.001質量%である場合に、炭材として硫黄含有量が0.5質量%の一般的なコークスを利用した場合には、硫黄濃度の規制から炭材原単位として最大2kg-炭材/t-溶鋼のコークスを添加するだけであるが、硫黄含有量が0.10質量%のバイオマス炭を利用した場合は、硫黄濃度がコークスと比較して5分の1であることから、5倍の添加量である10kg-炭材/t-溶鋼のバイオマス炭を添加することができ、添加する熱源の増加によって多くの鉄スクラップや冷却材を配合することが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、転炉脱炭精錬における熱源としてカーボンニュートラルであるバイオマス由来の炭材を、化石燃料由来の炭材の一部または全部と切り替えて使用するので、バイオマス由来の炭材の使用比率に応じて、熱源の燃焼による温室効果ガスの発生量を削減することが実現される。また、硫黄含有量が0.10質量%以下のバイオマス由来の炭材を使用した場合には、炭材から溶鋼への硫黄の混入を抑制することができ、大量のバイオマス由来の炭材の使用が可能となり、硫黄混入に起因する熱源不足が解消され、溶銑配合比率を高めることができ、溶鋼生産量を増加させることが可能となる。
図1に示す転炉設備における本発明の実施例を以下に説明する。
使用した上底吹き型転炉は、転炉容量が1チャージ(以下、「ch」と記す)約250トンで、底吹きガスは攪拌用ガスとしてArガスを用いた。本実施例における転炉操業条件及び代表的な溶銑成分の例を表1に示す。溶銑には機械攪拌式脱硫装置を用いて脱硫処理を施してあり、冷鉄源としては、製鉄所で発生する鉄スクラップ(鋳片や鋼板のクロップ屑など)を使用した。
Figure 2013082997
尚、本発明の効果を理解し易くするために、転炉操業条件のうち表1に示すように、装入溶銑温度を1330℃、出鋼溶鋼温度を1640℃の一定の条件とし、更に、造滓材装入量も一定の条件とした。
使用したバイオマス炭は、パームヤシ殻から製造した炭化物に澱粉及び水分を添加して40〜50mm角で、厚みが25〜35mmの成型体にブリケット成型した、硫黄含有量が0.05質量%であるパームヤシ殻由来のバイオマス炭(以下、「バイオマス炭A」と記す)と、パームヤシ空果房から製造した炭化物に澱粉及び水分を添加して40〜50mm角で、厚みが25〜35mmの成型体にブリケット成型した、硫黄含有量が0.07質量%であるパームヤシ空果房由来のバイオマス炭(以下、「バイオマス炭B」と記す)と、パームヤシ幹から製造した炭化物に澱粉及び水分を添加して40〜50mm角で、厚みが25〜35mmの成型体にブリケット成型した、硫黄含有量が0.10質量%であるパームヤシ幹由来のバイオマス炭(以下、「バイオマス炭C」と記す)との3種類を用いた。また、一部の本発明例では平均粒径が40mm未満の小塊のコークス(硫黄含有量=0.50質量%)も併用した。
バイオマス炭を含めて、炭材の炉内への添加タイミングは、2トンの添加量までは送酸前に添加し、2トンを超えた以降は、溶銑中珪素濃度と送酸速度とから決定される脱珪反応終了後に、炭材供給速度1t/minでホッパー9から切り出し装置10によって切り出し、シュート11を介して炉内に装入した。
溶銑及び鉄スクラップの硫黄濃度の加重平均値と、製造対象の鋼種から決定される酸素吹錬終了時の溶鋼の最大硫黄濃度との差、即ち、酸素吹錬中に炭材投入により上昇しても許容できる硫黄量の最大値に基づいて炭材の添加量を決定した。そして、この炭材添加量に応じて鉄スクラップの配合量を決定した。つまり、鉄スクラップの配合量を炭材添加量から定まる最大値に設定した。これは、比較例1も同様である。
但し、本発明例1では、硫黄濃度から求められる炭材添加の上限値とは関係なく、炭材の添加量を比較例1の使用量に一致させた。因みに、比較例1は、炭材として平均粒径が40mm未満の小塊のコークス(硫黄含有量=0.50質量%)を500kg/ch添加し、この炭材添加量と溶銑条件とによって、40トンの鉄スクラップを配合した操業である(鉄スクラップ配合比率=16質量%)。表2に、本発明例1〜10及び比較例1の操業条件及び操業結果を示す。
Figure 2013082997
炭材の燃焼によるCO2発生量は、下記の(2)式の化学反応式を用いて算出した。
C+O2=CO2 …(2)
(2)式によれば、コークス(炭素分=86質量%)1kgあたり3.15kgのCO2が発生し、比較例1では約1577kg/chのCO2が添加したコークスから発生した。
本発明例1は、比較例1での小塊のコークスをバイオマス炭Aに全量置き換えて試験を実施した。従って、本発明例1では、コークスをバイオマス炭Aに全量置き換えることで、炭材燃焼による化石燃料由来のCO2排出量はゼロとなり、温室効果ガスの発生量を削減することができ、また、炭材からの硫黄の混入は全く問題にならなかった。但し、本発明例1は比較例1と炭材の添加量が同一であり、鉄スクラップの使用量は同一であった。
本発明例2〜7では、使用したバイオマス炭の硫黄含有量がコークスよりも低くなった分、許容硫黄濃度の上限までバイオマス炭の添加量を増加させ、それに伴って鉄スクラップの使用量も上限まで増加させた。
0.001質量%の許容硫黄濃度上昇の上限に対して、本発明例2では、バイオマス炭Aを5000kg/ch添加し、比較例1と比較して鉄スクラップ使用量を8.0t/ch増加させることができ、本発明例3では、バイオマス炭Bを3571kg/ch添加し、比較例1と比較して鉄スクラップ使用量を5.7t/ch増加させることができ、本発明例4では、バイオマス炭Cを2500kg/ch添加し、比較例1と比較して鉄スクラップ使用量を4.0t/ch増加させることができた。
また、0.002質量%の許容硫黄濃度上昇の上限に対して、本発明例5では、バイオマス炭Aを10000kg/ch添加し、比較例1と比較して鉄スクラップ使用量を16.0t/ch増加させることができ、本発明例6では、バイオマス炭Bを7143kg/ch添加し、比較例1と比較して鉄スクラップ使用量を11.4t/ch増加させることができ、本発明例7では、バイオマス炭Cを5000kg/ch添加し、比較例1と比較して鉄スクラップ使用量を8.0t/ch増加させることができた。
本発明例2〜7では、コークスをバイオマス炭に全量置き換えることで、炭材燃焼による化石燃料由来のCO2排出量はゼロとなり、温暖化防止の効果が発揮されるとともに、鉄スクラップ使用量の増加により生産量を増加させることができた。
本発明例8〜10では、コークスの一部をバイオマス炭に置き換えて試験を実施した。本発明例8〜10では、小塊コークス用のホッパーとブリケット化したバイオマス炭用のホッパーの2つのホッパーを使用し、バイオマス炭とコークスとの投入順序の規定は特に設定しなかった。切り出し装置10の能力や添加量に応じて、片方を優先的に投入しても、また、交互に投入しても、何れも問題はなかった。コークスとバイオマス炭との使用比率は、溶鋼の硫黄濃度規制、在庫、環境対策などにより変動させることができる。尚、本発明例2〜10においては、炭材添加量の増加に伴い、上吹き酸素量を炭材添加量1kgあたり約470Nm3増加させて脱炭精錬した。
本発明例8では、コークス250kg/ch、バイオマス炭Aを2500kg/ch添加し、比較例1と比較して炭材による化石燃料由来のCO2排出量を半分にすることができ、更に、鉄スクラップ使用量を4.0t/ch増加させることができた。本発明例9では、コークス250kg/ch、バイオマス炭Bを1786kg/ch添加し、比較例1と比較して炭材による化石燃料由来のCO2排出量を半分にすることができ、更に、鉄スクラップ使用量を2.9t/ch増加させることができた。本発明例10では、コークス250kg/ch、バイオマス炭Cを1250kg/ch添加し、比較例1と比較して炭材による化石燃料由来のCO2排出量を半分にすることができ、更に、鉄スクラップ使用量を2.0t/ch増加させることができた。
実施例1における本発明例2の条件において、バイオマス炭Aの添加量を2500kg/chとしたまま、鉄スクラップの使用増加量を8.0t/chから6.0t/chに変更し、余剰の熱源に対して炉上から冷却材を投入し、本発明例11〜15を行った。冷却材としては、製鉄ダストの1種である転炉集塵ダスト(「OGダスト」ともいう)、鉄鉱石、鉄鉱石の焼結鉱紛、ミルスケール及び機械工場で発生する鋼の切削屑を使用した。
表3に、本発明例11〜15の操業条件及び操業結果を示す。尚、表3に示す鉄歩留り向上とは、冷却材を添加しない場合に比較して、炉上から添加した冷却材が還元され、鉄となった量を示したものである。
Figure 2013082997
鋼の切削屑を添加した本発明例15では、切削屑は還元する必要がなく、高い鉄歩留りの向上が得られた。また、鉄酸化物が主体である冷却材を使用した本発明例11〜14においても鉄歩留りの向上が得られた。つまり、鉄酸化物が主体である冷却材であっても、鉄歩留り向上の効果があり、生産量を増加させることが確認できた。
本発明においては、カーボンニュートラルであるバイオマス炭を化石燃料からなる従来の炭材の一部または全部と置き換え使用することで、温室効果ガスの発生量を削減することができ、更に、従来の炭材よりも硫黄含有量が低いバイオマス炭を使用することで、溶鋼の硫黄濃度規制に起因する熱源不足を解消し、従来よりも多くの冷鉄源や炉上からの冷却材を使用することができ、生産量を増加させることができた。尚、従来技術である比較例1では、炭材としてコークスを用いているが、無煙炭、黒鉛などの転炉で使用されている炭材をバイオマス炭に置き換えても何ら問題はない。
1 転炉設備
2 転炉本体
3 炉口
4 上吹き酸素ランス
5 底吹き羽口
6 ガス導入管
7 出鋼口
8 ダクト
9 ホッパー
10 切り出し装置
11 シュート
12 溶銑
13 溶融スラグ

Claims (6)

  1. 転炉内の溶銑を酸素吹錬して溶鋼を溶製する転炉製鋼方法において、酸素吹錬中に熱源として使用する、コークス、石炭、黒鉛などの化石燃料由来の炭材の一部または全部をバイオマス由来の炭材に置き換え、温室効果ガスの発生量を削減することを特徴とする転炉製鋼方法。
  2. 前記バイオマス由来の炭材の硫黄含有量が0.10質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の転炉製鋼方法。
  3. 前記バイオマス由来の炭材は、植物系バイオマスを炭化して製造される炭化物にバインダー及び水分を加えて成型した成型体であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の転炉製鋼方法。
  4. 前記バイオマス由来の炭材が、パームヤシ殻由来のバイオマス炭、パームヤシ空果房由来のバイオマス炭、パームヤシ幹由来のバイオマス炭のうちの何れか1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の転炉製鋼方法。
  5. 前記転炉製鋼方法は、鉄源として溶銑及び冷鉄源を転炉内に装入した後に酸素吹錬を開始する転炉製鋼方法であって、前記バイオマス由来の炭材の総添加量をX(kg-炭材/t-溶鋼)、該炭材の硫黄含有量をa(質量%)、酸素吹錬前の溶銑及び冷鉄源の硫黄含有量の加重平均値をb(質量%)、吹錬終了時の溶鋼の許容最大硫黄含有量をc(質量%)としたとき、前記炭材の総添加量Xを下記の(1)式で求められる値とし、この炭材の総添加量X、並びに、前記溶銑の温度及び成分組成に基づいて前記冷鉄源の装入量を決定することを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の転炉製鋼方法。
    X=[(c−b)/a]×1000 …(1)
  6. 酸素吹錬中に、鉄鉱石、鉄鉱石の焼結鉱、ミルスケール、製鉄ダスト、磁選屑、鋼の切削屑のうちの何れか1種または2種以上を冷却材として炉上から転炉内に投入することを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の転炉製鋼方法。
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