JP2011080047A - イソブチレン系重合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規なイソブチレン系重合体を提供する。
【解決手段】下記式(1−a)で表される構造単位及び/又は下記式(1−b)で表される構造単位、並びに、イソブチレン構造単位を有するイソブチレン系重合体。
Figure 2011080047

[式中、nは0又は1を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。但し、Rの炭素数とRの炭素数との合計は、1又は2である。]
【選択図】なし

Description

本発明は、イソブチレン系重合体に関する。
近年、ゴムの改質を目的として、ゴム組成物中にポリイソブチレン骨格を導入する検討が行われている。
例えば、タイヤ用のウェットグリップ性を向上させる方法として、タイヤ用のゴム材料にポリイソブチレン骨格を有するエラストマーを配合させる方法が知られており、このような方法としては、酸無水物変性ポリブテンを含むゴム組成物(特許文献1参照)、アルコキシシリル基を有するポリイソブチレン系化合物を含むゴム組成物(特許文献2及び3参照)、安定なフリーラジカルを分子中に有するイソブチレン系重合体を含むゴム組成物(特許文献4参照)、ジエン系化合物の単独重合体又は共重合体とポリブテンとのブロック共重合体を含むゴム組成物(特許文献5及び6参照)、ポリイソブチレン/p−メチルスチレン共重合体の臭素化物とゴム成分を含むタイヤトレッド用ゴム組成物(特許文献7参照)、ゴム成分にスチレン−イソブチレン共重合体を含有するゴム組成物(特許文献8及び9参照)、メルカプト基等を有するポリイソブチレンを配合したゴム組成物(特許文献10参照)、少なくとも一部にジスルフィド結合を有するポリイソブチレン(特許文献11参照)等を用いる方法が提案されている。
特開平11−35735号公報 特開平11−91310号公報 特開平12−169523号公報 特開平12−143732号公報 特開平11−80364号公報 特開平13−131289号公報 特開平11−80433号公報 特開平11−315171号公報 特開2001−247722号公報 特開平10−251221号公報 特開2005−54016号公報
本発明は、新規なイソブチレン系重合体を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、下記式(1−a)で表される構造単位及び/又は下記式(1−b)で表される構造単位、並びに、下記式(I)で表される構造単位を含有するイソブチレン系重合体を提供する。
Figure 2011080047

[式中、nは0又は1を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。但し、Rの炭素数とRの炭素数との合計は、1又は2である。]
Figure 2011080047
上記イソブチレン系重合体は、重合度が2〜10000であることが好ましく、重量平均分子量が400〜1000000であることが好ましい。
本発明によれば、新規なイソブチレン系重合体が提供される。本発明のイソブチレン系重合体は、十分な架橋硬化性を有し、ポリイソブチレン骨格をゴム組成物に導入する上で有用である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態に係るイソブチレン系重合体は、式(1−a)で表される構造単位及び/又は式(1−b)で表される構造単位、並びに、式(I)で表される構造単位を含有する。
Figure 2011080047
Figure 2011080047
式中、nは0又は1を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。但し、Rの炭素数とRの炭素数との合計は、1又は2である。
なお、nが0とは、式中の酸素原子とノルボルナン骨格とが直接結合することを示す。すなわち、nが0である場合、上記構造単位は、下記式(2−a)及び/又は下記式(2−b)で表される。式中、R及びRは上記と同義である。
Figure 2011080047
式(1−a)で表される構造単位としては、下記式(A)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位A」と称する)及び下記式(B)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位B」と称する)が挙げられる。また、式(1−b)で表される構造単位としては、下記式(C)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位C」と称する)及び下記式(D)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位D」と称する)が挙げられる。
Figure 2011080047
本実施形態に係るイソブチレン系重合体は、構造単位A、構造単位B、構造単位C、構造単位D及び式(I)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位E」と称する。)を、どのような含有割合で有していてもよい。
本実施形態に係るイソブチレン系重合体としては、例えば、下記式(4)で表される重合体が挙げられる。
Figure 2011080047
式中、p、q、r及びsはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、tは1以上の整数を示す。但し、p+q+r+sは1以上である。
本実施形態に係るイソブチレン系重合体は、重合度が2〜10000であることが好ましい。なお、式(4)で表される重合体において、重合度が2〜10000であるとは、p+q+r+s+tが2〜10000であることと同義である。
本実施形態に係るイソブチレン系重合体は、例えば、下記式(3−a)及び/又は下記式(3−b)で表されるビニルエーテル化合物と、イソブチレンとを単量体として用いた共重合反応により製造することができる。
Figure 2011080047
式中、R、R及びnは上記と同義である。なお、nが0である場合、上記ビニルエーテル化合物は、下記式(3−c)又下記式(3−d)で表される。
Figure 2011080047
上記ビニルエーテル化合物には、下記式(4−a−1)、下記式(4−a−2)、下記式(4−b−1)、下記式(4−b−2)で表される異性体が存在し、いずれの異性体を単量体として用いても、上述の効果が奏される。上記共重合反応においては、これらの異性体を単独で又は複数混合して用いることができる。この異性体の混合比を適宜変更することにより、ビニルエーテル重合体における構造単位A、構造単位B、構造単位C、構造単位D及び構造単位Eの含有割合を調整することができる。
Figure 2011080047
上記ビニルエーテル化合物は、例えば、以下の方法により製造することができる。
(1)nが0であるビニルエーテル化合物の製造方法
nが0であるビニルエーテル化合物(式(3−c)及び/又は式(3−d)で表されるビニルエーテル化合物)は、例えば、下記第一の工程と下記第二の工程とを備える製造方法により、製造することができる。
(1−1)第一の工程
第一の工程では、下記式(5)で表されるノルボルネン化合物と下記式(6)で表されるカルボン酸との酸触媒存在下における反応により得られる化合物を加水分解して、下記式(7−a)又は下記式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物を得る。式中、R及びRは上記と同義であり、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示す。
Figure 2011080047
Figure 2011080047
Figure 2011080047
第一工程は、例えば以下のように行うことができる。まず、下記スキーム1に示すように、式(5)で表されるノルボルネン化合物と式(6)で表されるカルボン酸とを、酸触媒存在下で反応させ、式(5−a)で表される化合物及び/又は式(5−b)で表されるエステル化合物を得る。
Figure 2011080047
ここで、式(6)で表されるカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、ピバル酸、カプロン酸等が挙げられ、これらのうち、付加反応の際の立体障害、臭気、価格等の観点から、ギ酸又は酢酸が好ましい。すなわち、Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基が挙げられ、これらのうち水素原子もしくはメチル基が好ましい。
スキーム1に示す反応において、式(6)で表されるカルボン酸の使用量は、反応原料である式(5)で表されるノルボルネン化合物1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、2〜5モルであることがより好ましい。
酸触媒としては、硫酸、ギ酸、リン酸、トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素−エーテル錯体、三フッ化ホウ素水和物、酸性樹脂、等が挙げられ、これらのうち、酸性度や価格等の観点から、硫酸が好ましい。
スキーム1に示す反応における酸触媒の使用量は、反応混合物全体に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。
スキーム1に示す反応は、溶媒存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、デカン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。これらのうち、沸点および酸触媒や反応基質の溶解度の観点から、トルエン、ベンゼンが好ましい。なお、これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
スキーム1に示す反応の反応温度は、20℃〜150℃であることが好ましく、50℃〜120℃であることがより好ましい。また、スキーム1に示す反応の反応時間は、30分〜12時間であることが好ましく、2時間〜5時間であることがより好ましい。
スキーム1に示す反応に次いで、下記スキーム2に示すように、式(5−a)及び/又は式(5−b)で表されるエステル化合物を加水分解して、下記式(7−a)及び/又は下記式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物を得る。なお、下記スキーム2に示すように式(5−a)で表されるエステル化合物と式(5−b)で表されるエステル化合物とを同時に加水分解に供してもよく、それぞれ独立に加水分解に供してもよい。
Figure 2011080047
ここで、加水分解は、公知の種々の方法により行うことができる。加水分解としては、塩基存在下による加水分解が好ましい。塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化バリウム等が挙げられる。加水分解における塩基の使用量は、式(5−a)及び/又は式(5−b)で表される化合物1.0モルに対して、1.0〜5.0モルであることが好ましく、2.0〜4.0モルであることがより好ましい。
加水分解は、通常溶媒存在下で行う。溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、沸点、生成物との分離、塩基の溶解度の観点から、メタノール、エタノールが好ましい。
加水分解の反応条件としては、反応温度が0℃〜100℃であることが好ましく、50℃〜90℃であることがより好ましい。また、反応時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜4時間である。
なお、第一の工程は、スキーム1に示す反応とスキーム2に示す反応とを、それぞれ独立に行ってもよい。また、スキーム1に示す反応を行った後、式(5−a)及び/又は式(5−b)で表されるエステル化合物を反応溶液中から単離せず、当該反応溶液に塩基及び溶媒を添加する等の方法により加水分解を行ってもよい。
(1−2)第二の工程
第二の工程では、式(7−a)及び/又は式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物のヒドロキシル基をビニル化して、式(3−c)及び/又は式(3−d)で表されるビニルエーテル化合物を得る。
第二の工程は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、スキーム3に示すように、式(7−a)及び/又は式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物と式(8)で表されるビニルエステル化合物とを、Ir触媒存在下で反応させ、式(3−c)及び/又は式(3−d)で表されるビニルエーテル化合物を得る。なお、下記スキーム3に示すように式(7−a)で表されるノルボルナノール化合物と式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物とを同時にビニル化反応に供してもよく、それぞれ独立にビニル化反応に供してもよい。
Figure 2011080047
式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基である。Rとしては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、これらのうち、メチル基が好ましい。
Ir触媒としては、ジ−μ−クロロビス[(η−シクロオクタ−1,5−ジエン)イリジウム(I)]触媒(以下[IrCl(cod)]触媒と略記する。なおcodはシクロオクタ−1,5−ジエンを示す)、[Ir(cod)]BF、[Ir(cod)(CHCN)]BF、IrCl(CO)(PPh(Phはフェニル基を示す。)等の有機金属錯体や、金属イリジウム、酸化イリジウム、水酸化イリジウム、フッ化イリジウム等の無機イリジウム化合物が挙げられ、これらのうち、反応性および安定性の観点から、[IrCl(cod)]が好ましい。
スキーム3に示す反応は、溶媒存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
スキーム3に示す反応では、反応速度を増大させるために塩基を添加することが好ましい。ここで、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属有機酸塩(特に、アルカリ金属酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属有機酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン等のアミン類(第3級アミンなど);ピリジン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物;等が挙げられる。上記の塩基の中でもナトリウムを含む塩基が好ましい。
塩基の使用量は、反応原料である式(7−a)及び/又は式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物1モルに対して、0.001〜3モルであることが好ましく、0.005〜2モルであることがより好ましい。
スキーム3に示す反応の反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択できるが、20℃〜170℃であることが好ましく、70℃〜120℃であることがより好ましい。また、スキーム3に示す反応の反応時間は、反応成分や触媒の種類あるいは反応温度により適宜選択できるが、好ましくは2時間〜24時間、より好ましくは5時間〜15時間である。
スキーム3に示す反応は、常圧で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は、反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法でも行うことができる。
スキーム3に示す反応において、反応原料である式(8)で表される化合物の使用量は、式(7−a)又は式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物1モルに対して、好ましくは1モル〜5モル、更に好ましくは2〜3モルである。
また、第二の工程は、以下の方法で行うこともできる。すなわち、下記スキーム4に示すように、式(7−a)及び/又は式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物とアセチレンとを、塩基存在下、反応させて、該ノルボルナノール化合物のヒドロキシル基をビニル化することにより、式(3−c)及び/又は式(3−d)で表されるビニルエーテル化合物を得ることもできる。なお、下記スキーム4に示すように式(7−a)で表されるノルボルナノール化合物と式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物とは、同時にビニル化反応に供してもよく、それぞれ独立にビニル化反応に供してもよい。
Figure 2011080047
スキーム4に示す反応は、溶媒存在下で、又は無溶媒で、行うことができる。ここで溶媒としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等の非プロトン性溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
非プロトン性溶媒の使用量は、式(7−a)及び/又は式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物1モルに対して、1〜20モルであることが好ましく、3〜13モルであることがより好ましい。
スキーム4に示す反応において、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられ、これらのうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。
塩基の使用量は、式(7−a)及び/又は式(7−b)で表されるノルボルナノール化合物1モルに対して、0.05〜1モルであることが好ましく、0.1〜0.5モルであることが反応速度及び経済的な観点からより好ましい。
スキーム4で用いるアセチレンは、反応速度及び収率の観点から、ゲージ圧が0.01MPa以上となるように反応容器に導入されることが好ましく、ゲージ圧が0.15MPa以上となるように反応容器に導入されることがより好ましい。
スキーム4に示す反応の反応温度は、80〜180℃が好ましく、100〜140℃がより好ましい。
(2)nが1であるビニルエーテル化合物の製造方法
nが1であるビニルエーテル化合物は、例えば、下記第一の工程と、下記第二の工程と、下記第三の工程と、を備える製造方法により、製造することができる。
(2−1)第一の工程
第一の工程では、式(5)で表されるノルボルネン化合物から、下記式(9−a)及び/又は下記式(9−b)で表されるアルデヒド化合物を得る。式中、R及びRは上記と同義である。
Figure 2011080047
第一の工程は、例えば以下のように行うことができる。まず、下記スキーム5に示すように、式(5)で表されるノルボルネン化合物を、一酸化炭素及び水素を含む混合気体雰囲気下、金属触媒存在下で反応させて、式(9−a)及び/又は式(9−b)で表されるアルデヒド化合物を得る。
Figure 2011080047
ここで、金属触媒としては遷移金属化合物が用いられ、特に周期表中の第8族元素、第9族元素、第10族元素の化合物が有用である。なかでも、コバルト化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、白金化合物等が有用である。
金属錯体としては、コバルト又はロジウムのハロゲン化物、酸化物、カルボン酸塩、硝酸塩、あるいはオレフィン、水素、一酸化炭素、第3級アミン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスフィンなど、またそれらがキレートした多座配位子を持つ錯体が好ましい。これら遷移金属化合物は、単独で、あるいは他の金属化合物を助触媒として加えて、利用しうる。
スキーム5に示す反応における金属触媒の使用量は、式(5)で表されるノルボルネン化合物1モルに対して、好ましくは0.00001〜0.1モルであり、より好ましくは0.0001〜0.01モルである。スキーム5に示す反応においては、配位子を触媒1モルに対して1000〜10000倍モル加えると、触媒の分圧抑制、反応圧の低下、選択性の向上などの利点を付与することができる。
スキーム5に示す反応の反応温度は、30〜300℃であることが好ましく、50〜250℃であることがさらに好ましい。スキーム5に示す反応の反応圧力は、20〜250気圧であることが好ましく、使用する混合気体中の一酸化炭素と水素との混合比(一酸化炭素の体積/水素の体積)は、0.5〜2.0が好ましく、さらに好ましくは0.8〜1.2である。
また、スキーム5に示す反応は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、飽和炭化水素系溶媒、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、スルホラン、水、等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。また、スキーム5に示す反応においては、反応原料や反応生成物を溶媒とすることもできる。
(2−2)第二の工程
第二の工程では、式(9−a)及び/又は式(9−b)で表されるアルデヒド化合物のカルボニル基を還元して、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物を得る。
Figure 2011080047
第二の工程は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、スキーム6に示すように、式(9−a)及び/又は式(9−b)で表されるアルデヒド化合物と金属水素化物とを反応させて、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物を得る。なお、下記スキーム6に示すように式(9−a)で表されるアルデヒド化合物と式(9−b)で表されるアルデヒド化合物とを同時に還元反応に供してもよく、それぞれ独立に還元反応に供してもよい。
Figure 2011080047
式(9−a)及び/又は式(9−b)で表されるアルデヒド化合物の還元反応としては、公知の種々の方法を使用することができるが、金属水素化物を用いる方法が好ましい。金属水素化物としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等が挙げられる。
スキーム6に示す反応における金属水素化物の使用量は、反応原料である式(9−a)及び/又は式(9−b)で表される化合物1モルに対して、好ましくは0.25〜3モルであり、より好ましくは1〜2モルである。
スキーム6に示す反応は、通常、溶媒存在下で行う。溶媒は、用いる金属水素化物に応じて適宜選択することができる。例えば、金属水素化物として水素化アルミニウムリチウムを用いた場合は、水素化アルミニウムリチウムの溶解度の観点から、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましい。
スキーム6に示す反応の反応温度は、0℃〜70℃が好ましく、20℃〜70℃がさらに好ましい。また、反応時間は、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは1時間〜5時間である。
(2−3)第三の工程
第三の工程では、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物のヒドロキシル基をビニル化して、式(3−e)及び/又は式(3−f)で表されるビニルエーテル化合物を得る。
Figure 2011080047
第三の工程は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、下記スキーム7に示すように、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物と、式(8)で表されるビニルエステル化合物とを、Ir触媒存在下で反応させ、式(3−e)及び/又は式(3−f)で表されるビニルエーテル化合物を得る。なお、下記スキーム7に示すように式(10−a)で表されるアルコール化合物と式(10−b)で表されるアルコール化合物とを同時にビニル化反応に供してもよく、それぞれ独立にビニル化反応に供してもよい。
Figure 2011080047
スキーム7に示す反応は、上記スキーム3に示す反応と同様の条件で行うことができる。すなわち、式(7)中のRは炭素数1〜20のアルキル基であり、該アルキル基としてはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、これらのうち、メチル基が好ましい。
Ir触媒としては、ジ−μ−クロロビス[(η−シクロオクタ−1,5−ジエン)イリジウム(I)]触媒(以下[IrCl(cod)]触媒と略記する。なおcodはシクロオクタ−1,5−ジエンを示す)、[Ir(cod)]BF、[Ir(cod)(CHCN)]BF、IrCl(CO)(PPh(Phはフェニル基を示す。)等の有機金属錯体や、金属イリジウム、酸化イリジウム、水酸化イリジウム、フッ化イリジウム等の無機イリジウム化合物が挙げられ、これらのうち、反応性および安定性の観点から、[IrCl(cod)]が好ましい。
スキーム7に示す反応は、溶媒存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
スキーム7に示す反応では、反応速度を増大させるために塩基を添加することが好ましい。ここで、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属有機酸塩(特に、アルカリ金属酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属有機酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン等のアミン類(第3級アミンなど);ピリジン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物;等が挙げられる。上記の塩基の中でもナトリウムを含む塩基が好ましい。
塩基の使用量は、反応原料である式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物1モルに対して、0.001〜3モルであることが好ましく、0.005〜2モルであることがより好ましい。
スキーム7に示す反応の反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択できるが、20℃〜170℃であることが好ましく、70℃〜120℃であることがより好ましい。また、スキーム7に示す反応の反応時間は、反応成分や触媒の種類あるいは反応温度により適宜選択できるが、好ましくは2時間〜24時間、より好ましくは5時間〜15時間である。
スキーム7に示す反応は、常圧で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は、反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法でも行うことができる。
スキーム7に示す反応において、反応原料である式(8)で表される化合物の使用量は、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物1モルに対して、好ましくは1モル〜5モル、更に好ましくは2〜3モルである。
また、第三の工程は
また、第三の工程は、上記スキーム4に示す反応と同様の条件で行うことができる。すなわち、下記スキーム8に示すように、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるノルボルナノール化合物とアセチレンとを、塩基存在下、反応させて、該アルコール化合物のヒドロキシル基をビニル化することにより、式(3−e)及び/又は式(3−f)で表されるビニルエーテル化合物を得ることもできる。なお、下記スキーム8に示すように式(10−a)で表されるアルコール化合物と式(10−b)で表されるアルコール化合物とは、同時にビニル化反応に供してもよく、それぞれ独立にビニル化反応に供してもよい。
Figure 2011080047
スキーム8に示す反応は、溶媒存在下で、又は無溶媒で、行うことができる。ここで溶媒としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等の非プロトン性溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
非プロトン性溶媒の使用量は、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物1モルに対して、1〜20モルであることが好ましく、3〜13モルであることがより好ましい。
スキーム8に示す反応において、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられ、これらのうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。
塩基の使用量は、式(10−a)及び/又は式(10−b)で表されるアルコール化合物1モルに対して、0.05〜1モルであることが好ましく、0.1〜0.5モルであることが反応速度及び経済的な観点からより好ましい。
スキーム8で用いるアセチレンは、反応速度及び収率の観点から、ゲージ圧が0.01MPa以上となるように反応容器に導入されることが好ましく、ゲージ圧が0.15MPa以上となるように反応容器に導入されることがより好ましい。
スキーム8に示す反応の反応温度は、80〜180℃が好ましく、100〜140℃がより好ましい。
(重合反応)
上記ビニルエーテル化合物とイソブチレンとを、例えば、ルイス酸(重合触媒)の存在下でカチオン重合することにより、イソブチレン系重合体が得られる。このようにして得られるイソブチレン系重合体は、十分な架橋硬化性を有し、ポリイソブチレン骨格をゴム組成物に導入する上で有用である。
上記ルイス酸としては、カチオン重合に使用可能な公知のものの中から幅広く使用できる。例えば、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体やメタノール錯体等のハロゲン化ホウ素化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等のハロゲン化チタン化合物;四塩化スズ、四臭化スズ、四ヨウ化スズ等のハロゲン化スズ化合物;三塩化アルミニウム、アルキルジクロロアルミニウム、ジアルキルクロロアルミニウム等のハロゲン化アルミニウム化合物;五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン等のハロゲン化アンチモン化合物;五塩化タングステン等のハロゲン化タングステン化合物;五塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン化合物;五塩化タンタル等のハロゲン化タンタル化合物;テトラアルコキシチタン等の金属アルコキシドなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。これらのルイス酸のうち、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、四塩化スズ、四塩化チタンなどが好ましい。ルイス酸の使用量は、原料のビニルエーテル化合物1モルに対して、0.01〜1000ミリモル当量使用することができ、好ましくは0.05〜500ミリモル当量の範囲である。
さらに必要に応じて、リビングカチオン重合させる場合には電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果および/または系中のプロトンをトラップする効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって分子量分布の狭い構造が制御された重合体が生成する。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されず、そのドナー数が15〜60のものであれば、従来公知のものを広く利用できる。例えば、α−ピコリン、ジ−t−ブチルピリジンなどのピリジン類、トリエチルアミンなどのアミン類、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、エステル類、リン系化合物またはテトライソプロポキシチタンなどの金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
また、上記カチオン重合に際し、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる単独溶媒、または、それらの混合溶媒が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、1−クロロプロパン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルブタン、1−クロロ−3−メチルブタン、1−クロロ−2,2−ジメチルブタン、1−クロロ−3,3−ジメチルブタン、1−クロロ−2,3−ジメチルブタン、1−クロロペンタン、1−クロロ−2−メチルペンタン、1−クロロ−3−メチルペンタン、1−クロロ−4−メチルペンタン、1−クロロヘキサン、1−クロロ−2−メチルヘキサン、1−クロロ−3−メチルヘキサン、1−クロロ−4−メチルヘキサン、1−クロロ−5−メチルヘキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、2−クロロプロパン、2−クロロブタン、2−クロロペンタン、2−クロロヘキサン、2−クロロヘプタン、2−クロロオクタン、クロロベンゼン等が使用でき、これらの中から選ばれる溶媒は単独であっても、2種以上の成分からなるものであってもよい。
脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが好ましく、これらの中から選ばれる溶媒は単独であっても、2種以上の成分からなるものであってもよい。
芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく、これらの中から選ばれる溶媒は単独であっても、2種以上の成分からなるものであってもよい。
上記カチオン重合において、反応溶媒を使用する場合には、得られる重合体の溶解度、溶液の粘度や除熱の容易さを考慮し、重合体の濃度が0.1〜80質量%となるよう溶媒を使用することが好ましく、生産効率および操作性の観点からは1〜50質量%となるよう使用することがより好ましい。また重合時のモノマー濃度としては、0.1〜8モル/リットル程度が好ましく、0.5〜5モル/リットル程度がより好ましい。また、重合時の有機溶媒の使用量は、使用するモノマーに対して0.5〜100倍量であることが、適当な粘度、発熱のコントロールの点で好ましい。
上記カチオン重合で用いられる各種原料には、工業的もしくは実験的に入手できるものを使用することができるが、水やアルコール、塩酸など活性な水素を有する物質や、開始剤以外の3級炭素に結合した塩素原子を有する化合物が原料中に含まれているとこれらは不純物として副反応を発生させる原因となるため、あらかじめ極力低濃度に精製する必要がある。また、反応操作中に外部からこれらの不純物が進入するのを防ぐ必要がある。目的とする重合体を効率よく得るためには不純物の総モル数を開始剤の重合開始点総数を基準にして1倍以下に抑制することが好ましく、0.5倍以下に抑制することがより好ましい。
上記カチオン重合は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。重合時の圧力については、モノマーの種類、有機溶媒の種類、重合温度等を考慮して、常圧、加圧等の任意の条件を採用することができる。また、重合系が均一になるように十分な攪拌条件下に重合を行うことが好ましい。上記カチオン重合は、例えば、1つの反応容器に重合溶媒、モノマー、触媒、必要に応じて開始剤兼連鎖移動剤等を順次仕込んでいくバッチ式または半バッチ式で行うことができる。あるいは、重合溶媒、モノマー、触媒、必要に応じて開始剤兼連鎖移動剤等をある系内に連続的に仕込みながら反応させ、更に取出される連続法でもよい。重合開始時点および重合中の重合触媒の濃度を制御し易い点などからバッチ式が好ましい。
重合温度は、得られるイソブチレン系重合体の平均分子量に影響するので、目的とする平均分子量に応じて、採用する重合温度を適宜選択すればよいが、重合温度としては−80℃〜20℃程度が好ましく、更に好ましくは−70〜0℃程度とするのがよく、重合時間は、通常0.5〜180分程度、好ましくは20〜150分程度である。
上記カチオン重合において、後の取り扱い易さからメタノール等のアルコール類の添加により重合反応を停止させるのが好ましいが、特にこれに限定されるものではなく、従来の慣用手段のいずれも適用でき、また、特に停止反応を改めて行なう必要もない。
上記カチオン重合で用いられる反応器の形態は特に限定しないが、攪拌槽型反応器が好ましい。その構造については特に制限を受けるものではないが、たとえばジャケット部での冷却が可能な構造を有し、モノマーおよび逐次的に供給される触媒、電子供与剤を均一に混合・反応させることのできる構造であることが好ましい。内部冷却コイルやリフラックスコンデンサー等の付帯設備を設けて冷却能力を向上させたり、邪魔板を設けて混合状態を良好にできる構造であっても良い。攪拌槽型反応器に用いられる攪拌翼としては、特に制限を受けるものではないが、反応液の上下方向の循環、混合性能が高いものが好ましく、重合・反応液粘度が数センチポイズ程度の比較的低粘度領域においては(多段)傾斜パドル翼、タービン翼などの攪拌翼、数10センチポイズから数100ポイズの中粘性領域ではマックスブレンド翼、フルゾーン翼、サンメラー翼、Hi−Fミキサー翼、特開平10−24230に記載されているものなど大型のボトムパドルを有する大型翼、数100ポイズ以上の高粘性領域では、アンカー翼、(ダブル)ヘリカルリボン翼、ログボーン翼などが好適に使用される。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[合成例1]
(エチリデンノルボルナノールの製造)
合成装置として、回転数可変式の攪拌機、反応温度指示計、反応滴下口、還流管およびガス注入口を備えた、内容積5000mLの4つ口セパラブルフラスコを温度調節が可能な熱媒浴内に設置した。そのフラスコ内に5−エチリデン−2−ノルボルネン(新日本石油(株)製)228.5g(1.9mol)、トルエン(特級試薬、和光純薬(株)製)2000mLおよび酢酸(特級試薬、関東化学(株)製)342g(5.7mol)を順に加え、液温度90℃に維持した。
仕込んだ混合物を攪拌しながら、反応滴下口に備えた滴下漏斗から硫酸(特級試薬、和光純薬(株)製)49g(0.5mol)を5分で滴下し、液温度107℃で90分間攪拌した。ガスクロマトグラフ分析によって5−エチリデン−2−ノルボルネンの消失を確認した上で、反応混合物を50℃まで冷却した後に、水酸化カリウム(特級試薬、関東化学(株)製)427g(7.6mol)およびエタノール(95%、関東化学(株)製)800mLを徐々に加え、液温度90℃にて1時間攪拌した。
その反応液を室温まで冷却した後に、2500mLの飽和食塩水の入った5000mLのビーカー内に反応液を流し込んだ。次いで、分離した有機層を分液ロートに移し、再び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。桐山ろ紙を備えた桐山ロートを用いて硫酸マグネシウムをろ過し、そのろ液の溶媒をエバポレーターにて除去することで5−エチリデン−2−ノルボルナノール及び5−エチリデン−3−ノルボルナノールの粗生成物を得た。
次いで、得られた粗生成物について減圧蒸留を行い、減圧度2mmHg、温度84−85℃の留分を採取することで、5−エチリデン−2−ノルボルナノール及び5−エチリデン−3−ノルボルナノールの混合物(以下、「エチリデンノルボルナノールの混合物」と称する。)59.1gを無色透明な液体として得た。
Figure 2011080047
得られたエチリデンノルボルナノールの混合物について、ガスクロマトグラフ−質量スペクトル(GC−MS)、IR分析、およびNMR分析によって構造解析を行い、上記式(a−1)から式(a−4)で表されるエチリデンノルボルナノールの異性体の混合物が生成していることを確認した。以下に、分析結果を示す。
(分析結果)
GC−MS測定[M/Z]:138
IR測定 検出波数(cm−1):3328、2960
H−NMR測定[499.75MHz、CDCl、内部0基準TMS]:化学シフト(PPM)、分裂パターン、プロトン数を測定したところ、式(a−1)から式(a−4)で表されるエチリデンノルボルナノール異性体に対応するシグナルが観測され、そのうち2種類が主として観測された。得られた結果を表1に示す。
Figure 2011080047
13C−NMR測定[125.66MHz、CDCl、内部0基準:TMS]:化学シフト(PPM)、炭素級数を測定したところ、式(a−1)から式(a−4)で表されるエチリデンノルボルナノール異性体に対応するシグナルが観測され、そのうち2種類が主として観測された。得られた結果を表2に示す。なお、炭素級数は、DEPT測定法でのNMR分析により決定した。S、D、T、Qは、それぞれ1級、2級、3級、4級の炭素を示す。
Figure 2011080047
(エチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの製造)
上記エチリデンノルボルナノールの混合物を用いて、エチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの製造を行った。
まず、合成装置として、回転数可変式の攪拌機、反応温度指示計、反応滴下口、還流管およびガス注入口を備えた、内容積2000mLの4つ口フラスコを温度調節が可能な熱媒浴内に設置した。
そのフラスコ内に炭酸ナトリウム(特級試薬、和光純薬(株)製)66.9g(631mmol)、トルエン(脱水試薬、関東化学(株)製)500mLを入れ、液温度90℃に加熱した。そのフラスコ内に酢酸ビニル(東京化成(株)製)108.65g(1262mmol)を添加し、さらにプロピオン酸(東京化成(株)製)9.4mL(126mmol)を5分間かけて滴下した。その滴下後に、[IrCl(cod)]触媒(和光純薬(株)製)8.0g(11.90mmol)を添加し、さらに1,4−ジオキサン(脱水試薬、関東化学(株)製)500mLに溶解したエチリデンノルボルナノールの混合物87.2g(631mmol)を1時間かけて滴下し、8時間攪拌した。
その後、反応液を室温まで冷却し、水の入ったビーカーに流しこみ、酢酸エチル((株)ゴードー製)で3回抽出した。次いで、得られた有機相を水で2回洗浄し、硫酸ナトリウム(試薬特級、ナカライテスク(株)製)で乾燥後、桐山ろ紙を備えた桐山ロートを用いて硫酸ナトリウムをろ過し、そのろ液の溶媒をエバポレーターにて除去することで黒褐色のオイル状の粗生成物120.12gを得た。得られた粗生成物について減圧蒸留を行い、減圧度100Pa、温度43〜45℃の留分を採取することで、目的とするエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの混合物を無色透明な液体として78.36g得た。
Figure 2011080047
この生成物について、ガスクロマトグラフ−質量スペクトル(GC−MS)、IR分析、元素分析およびNMR分析によって構造解析を行い、上記式(b−1)から式(b−4)で表されるエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの異性体が生成していることを確認した。以下に分析結果を示す。
(分析結果)
GC−MS測定[M/Z]:164
IR測定 検出波数(cm−1):2965
元素分析:測定値 C 80.0,H 9.7(理論値 C 80.4, H 9.8)
H−NMR測定[499.75MHz、CDCl、内部0基準TMS]:化学シフト(PPM)、分裂パターン、プロトン数を測定したところ、式(b−1)から式(b−4)で表されるエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの異性体に対応するシグナルが観測され、そのうち2種類が主として観測された。得られた結果を表3に示す。
Figure 2011080047
13C−NMR測定[125.66MHz、CDCl、内部0基準TMS]:化学シフト(PPM)、炭素級数を測定したところ、式(b−1)から式(b−4)で表されるエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの異性体に対応するシグナルが観測され、そのうち2種類が主として観測された。得られた結果を表4に示す。なお、炭素級数は、DEPT測定法でのNMR分析により決定した。S、D、T、Qは、それぞれ1級、2級、3級、4級の炭素を示す。
Figure 2011080047
[実施例1]
合成例1で得られたエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの混合物とイソブチレンとを用いて、イソブチレン系重合体の製造を行った。
100mLの3口フラスコにセプタムキャップ、真空ラインを繋げた還流管、温度管を取り付け、スターラーバーを入れ、真空ライン(シュレンク管付き)を用いて、系内の脱気−窒素置換を2回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。そのフラスコ内に、水素化カルシウムにて乾燥−蒸留した所定量のトルエン溶媒を、シリンジを用いてセプタムキャップから注入した。
次にシリンジを用いて、下記表5記載の所定モル量のエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの混合物を注入した。フラスコを所定温度の低温槽(塩化カルシウム−水−氷浴)に浸漬させ、系内の液温が表5記載の所定温度になったことを確認した後、表5記載の所定モル量を秤量したイソブチレンを反応系に移した。
系内の液温が十分に表5記載の所定温度となった時点で、窒素雰囲気下のグローブボックス内、1.06mol/Lエチルアルミニウムジクロライド(以下、場合により「EADC」と称する)n−ヘキサン溶液を精製ヘキサンにて10倍希釈した調製触媒液をシリンジにて秤量し、反応器に注入した。
触媒液注入から2時間後、フラスコから低温槽をはずし、室温まで放置させた。反応混合液を1N水酸化ナトリウム水溶液にて抽出操作を行い(2回)、得られた油相を純水にて抽出操作を行った。水相側のpHが中性になったことを確認した後、エバポレータにて溶媒を留去させ、残渣を減圧乾燥機にて1mmHg、12時間、60℃にて乾燥させ、目的とするイソブチレンとの共重合体を得た。
Figure 2011080047
得られた共重合体について、核磁気共鳴分光法(NMR)によって構造解析を行い、上記式(d−1)で表されるイソブチレン系重合体が得られていることを確認した。H−NMR測定では、エチリデンノルボルニル−ビニルエーテルにおけるビニルエーテル由来のシグナル(6.23−6.37ppm)が消失し、5.00−5.35ppmにエチリデン基のシグナルが観測され、3.50ppmにエーテル酸素α位のプロトンが観測された。なお、H−NMR測定の条件は、499.75MHz、CDCl、内部0基準TMSである。13C−NMR測定では、78.9ppmにエーテル酸素α位の炭素に由来するシグナルが観測され、111.3−115.0ppmにエチリデン基の3級炭素に由来するシグナルが観測され、141.2−145.1ppmにエチリデン基の4級炭素に由来するシグナルが観測された。なお、13C−NMR測定の条件は、125.66MHz、CDCl、内部0基準TMSである。
得られたイソブチレン系重合体について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって重量平均分子量を測定し、H−NMR測定の結果から共重合導入比を算出した。また、得られたイソブチレン系重合体のガラス転移温度を測定した。測定結果は、表5に示したとおりであった。
[実施例2〜4]
イソブチレンとビニルエーテルの仕込み比、EADC触媒量、反応温度及び収率を、それぞれ表5に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてイソブチレン系重合体を得た。得られたそれぞれのイソブチレン系重合体について、核磁気共鳴分光法(NMR)によって構造解析を行い、目的の重合体が得られていることを確認した。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量の測定、H−NMR測定の結果の分析による共重合導入比の算出及びガラス転移温度の測定を行った。ガラス転移温度の測定は、パーキンエルマー社製Diamond DSCを用いて、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で、−100〜230℃の温度範囲について2回繰返し測定を行い、その2回目の検出温度を対象サンプルのガラス転移温度とした。測定結果は、表5に示したとおりであった。
Figure 2011080047
[実施例5]
合成例1で得られたエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの混合物とイソブチレンとを用いて、イソブチレン系重合体の製造を行い、その硫黄架橋性を試験した。
100mLの3口フラスコにセプタムキャップ、真空ラインを繋げた還流管、温度管を取り付け、スターラーバーを入れ、真空ライン(シュレンク管付き)を用いて、系内の脱気−窒素置換を2回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。そのフラスコ内に、水素化カルシウムにて乾燥−蒸留した所定量のトルエン溶媒を、シリンジを用いてセプタムキャップから注入した。
次にシリンジを用いて、下記表6記載の所定モル量のエチリデンノルボルニル−ビニルエーテルの混合物を注入した。フラスコを所定温度の低温槽(塩化カルシウム−水−氷浴)に浸漬させ、系内の液温が表6記載の所定温度になったことを確認した後、表6記載の所定モル量を秤量したイソブチレンを反応系に移した。
系内の液温が十分に表6記載の所定温度となった時点で、三フッ化ホウ素メタノール錯体(BFの含有量が67質量%、以下、場合により「BF・MeOH」と称する)を表6記載の所定量秤量し、反応器に注入した。
触媒液注入から2時間後、フラスコから低温槽をはずし、室温まで放置させた。反応混合液を1N水酸化ナトリウム水溶液にて抽出操作を行い(2回)、得られた油相を純水にて抽出操作を行った。水相側のpHが中性になったことを確認した後、エバポレータにて溶媒を留去させ、残渣を減圧乾燥機にて1mmHg、12時間、60℃にて乾燥させ、目的とするイソブチレンとの共重合体を得た。
得られた共重合体について、核磁気共鳴分光法(NMR)によって構造解析を行い、目的のイソブチレン系重合体が得られていることを確認した。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量の測定、1H−NMR測定の結果の分析による共重合導入比の算出を行った。
(硫黄架橋性試験)
イソブチレンホモ重合体(比較例1、新日本石油(株)製、テトラックス3T)及び実施例5のイソブチレン系重合体について、一定温度における動的粘弾性測定による粘度変化に基づき、硫黄架橋性を評価した。動的粘弾性測定は、REOLOGICA INSTRUMENTS AB社製のDAR−50装置を用いて行った。当該測定機に、イソブチレンホモ重合体又はイソブチレン系重合体1gと、加硫剤としての硫黄0.04gと、加硫促進剤としてのノクセラーCZ−G(大内新興化学工業(株)製)0.01gと、加硫促進助剤としての酸化亜鉛0.03gと、ステアリン酸0.02gと、の混合物を設置し、その混合物について100℃から160℃まで2℃/分で昇温し、160℃に到達した後に30分保持しながら、各温度でのずり粘度挙動を追跡した。なお、ずり粘度は周波数1Hz、歪み10%の条件で付与させた。
比較例1のイソブチレンホモ重合体の場合は、測定温度域で粘度上昇がみられなかった。一方、実施例5のイソブチレン系重合体の場合、所定温度で粘度が急に上昇する現象が見られ、硫黄架橋性が確認された。粘度上昇開始温度を表6に示す。
Figure 2011080047
本発明のイソブチレン系重合体は、十分な架橋硬化性を有し、ポリイソブチレン骨格をゴム組成物に導入する上で有用である。

Claims (2)

  1. 下記式(1−a)で表される構造単位及び/又は下記式(1−b)で表される構造単位、並びに、下記式(I)で表される構造単位を有するイソブチレン系重合体。
    Figure 2011080047

    [式中、nは0又は1を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示す。但し、Rの炭素数とRの炭素数との合計は、1又は2である。]
    Figure 2011080047
  2. 重合度が2〜10000であり、重量平均分子量が400〜1000000である請求項1記載のイソブチレン系重合体。
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