JP2011076824A - 電気化学素子用電極の製造方法及び製造装置並びに電気化学素子 - Google Patents

電気化学素子用電極の製造方法及び製造装置並びに電気化学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた特性を有する電気化学素子用電極を高効率的に製造する。
【解決手段】孔開き集電体1を所定の搬送経路に沿って順次搬送する工程と、前記搬送経路中に設けられた塗工部3から供給されるスラリー2を孔開き集電体1の一方の面に塗工する工程と、前記スラリーが塗工された前記孔開き集電体の他方の面に、少なくともその一部が順次当接して該孔開き集電体1とともに移動するように、撥液部材27を周回させる工程とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、電気化学素子に用いられる電極の製造方法及び製造装置、並びに該製造方法を用いて製造された電気化学素子用電極を用いる電気化学素子に関する。
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能な特性を活かして、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタをはじめとするハイブリッドキャパシタ、及びキャパシタハイブリッド型鉛蓄電池等の電気化学素子は、その需要を急速に拡大している。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が比較的大きいことから、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等の分野で利用されている。電気二重層キャパシタは自己放電が少ないことから、パーソナルコンピュータ等のメモリバックアップ用の小型電源として利用されている。また、電気二重層キャパシタは電気自動車用の大型電源としての応用が期待されている。
リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの長所を生かしたハイブリッドキャパシタは、エネルギー密度、出力密度ともに高いことから注目を集めている。キャパシタハイブリッド型鉛蓄電池は、特に電気自動車やハイブリッド自動車用のバッテリーとして期待されている。これらの電気化学素子には、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、高容量化、機械的特性の向上等、より一層の改善が求められている。
ハイブリッドキャパシタは、正極に分極性電極、負極に非分極性電極を備え、有機系電解液を用いることで作動電圧を高め、エネルギー密度を高めることができる。ハイブリッドキャパシタでは、リチウムイオンを吸蔵、脱離しうる材料に、予め化学的方法又は電気化学的方法でリチウムイオンを吸蔵させた材料を負極に用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
自動車用電源等大型セルを対象とした場合において、予めリチウムを負極に担持させる方法としては、正極集電体及び負極集電体がそれぞれ表裏に貫通する孔を備え、負極活物質がリチウムを可逆的に担持可能であり、負極由来のリチウムが負極あるいは正極と対向して配置されたリチウムと電気化学的接触により担持される有機電解質電池が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3においては、集電体に表裏面を貫通する孔を設け、この孔開き集電体の表裏面に電極組成物層を形成している。このような構成により、静電容量が向上し、またリチウムイオンが集電体に遮断されることなく電極の表裏間を移動できるため、積層枚数の多いセル構成の蓄電装置においても、当該貫通孔を通じて、リチウム近傍に配置された負極だけでなくリチウムから離れて配置された負極にもリチウムを電気化学的に担持させることが可能となる。また、貫通孔を通じてリチウムイオンが自由に各極間を移動できるため、充放電がスムーズに進行する。
電極組成物層は、例えば、電極活物質、導電材及び結着剤を含むスラリーを、孔開き集電体の両面又は片面に塗布し、乾燥させることにより形成される。集電体の表裏面に同時に電極活物質層を形成する技術としては、垂直方向に走行する集電体の搬送路の両側に一対のダイを配し、この一対のダイの上方に一対のブレードを設けて、ダイから吐出されたスラリーをブレードで掻き落として塗工厚みを制御するツインブレード法が提案されている。
しかし、集電体が複数の表裏貫通孔を有する孔開き集電体の場合には、孔開き集電体の両面にスラリーを均一な厚みに塗工することが困難であり、得られる電極における電極活物質層の厚み及び電極活物質層中の電極活物質量が一定せず、電極性能にばらつきが生じる。また、この方法では、集電体の両面からスラリーを塗布するため、必ず2台のダイを必要とし、さらに、塗料タンクや供給ポンプ、フィルタ、配管等がそれぞれ2セット必要であり、設備が複雑化し、コストの増大を招く。また、塗工厚さや電極の表面状態を制御するためには、2台のダイのクリアランスやスラリーの吐出量、ダイリップ部のクリアランス等を厳密に調整する必要がある。
集電体の片面にスラリーを塗工する技術としては、コンマコーター(株式会社ヒラノテクノシード社の登録商法)やダイコーター等による横型の塗工機が知られている。このような片面塗工機では、孔開き集電体を搬送すする搬送ローラに、貫通孔を通過してスラリーが転写してしまい、スラリーを均一に孔開き集電体上に塗工することが困難であるとともに、搬送ローラを汚染してしまうという問題があった。
スラリーが孔開き集電体の孔を通過して反対側に移動又は洩れることを防ぐための技術としては、孔の無いホイル(金属薄膜ホイル)からなるバリアーを孔開き集電体の反対側にあてがうとする技術が特許文献4に開示されている。
特開平3−233860号公報 特開平5−325965号公報 国際公開第98/33227号公報 特開2002−367601号公報
しかしながら、特許文献4に記載の技術では、孔開き集電体を搬送するロール等へのスラリーの付着による汚染は防止しうるものの、孔の無いホイルを孔開き集電体から剥離する際に、孔内のスラリーの一部が孔の無いホイル側に付着して、目付量(単位面積(厳密には体積)あたりの重量)を均一にすることができず、優れた特性を有する電極を製造できない場合があるという問題があった。また、孔の無いホイルには、スラリーの一部が残着しているため、これを再利用することができず、あるいは再利用するためには残着しているスラリーを除去する必要があり、高効率的な生産ができない場合があるという問題があった。
したがって、本発明の目的は、優れた特性を有する電気化学素子用電極を高効率的に製造できる製造方法及び製造装置、並びに該製造方法を用いて製造された電気化学素子用電極を用いる電気化学素子を提供することにある。
本発明の第1の観点に係る電気化学素子用電極の製造方法は、孔開き集電体を所定の搬送経路に沿って順次搬送する工程と、前記搬送経路中に設けられた塗工部から供給されるスラリーを前記孔開き集電体の一方の面に塗工する工程と、前記スラリーが塗工された前記孔開き集電体の他方の面に、少なくともその一部が順次当接して該孔開き集電体とともに移動するように、撥液部材を周回させる工程とを備えて構成されている。
本発明の第1の観点に係る電気化学素子用電極の製造方法において、前記撥液部材としては、前記搬送経路の一部を構成する搬送ロールの少なくとも表面に配置されたもの、又は前記搬送経路の一部を構成する搬送ロールに巻回されたシートの少なくとも表面に配置されたものを用いることができる。前記撥液部材の接触角は90度以上に設定することが好ましい。また、前記撥液部材としては、フッ素樹脂から形成されたもの、又は基材上にフッ素樹脂をコーティングし若しくは含浸したものからなるものを用いることができる。前記孔開き集電体の開孔率を10〜90%とし、前記孔開き集電体の開孔径をφ0.1〜1mmとすることができる。前記スラリーの粘度としては、100〜100,000mPa・sとすることができる。
本発明の第2の観点に係る電気化学素子は、本発明の第1の観点に係る製造方法により得られる電気化学素子用電極を備えて構成される。
本発明の第3の観点に係る電気化学素子用電極の製造装置は、孔開き集電体の一方の面に塗工部を介してスラリーを供給する塗工手段と、前記スラリーが塗工された前記孔開き集電体の他方の面に、少なくともその一部が順次当接して周回するように設けられた撥液部材を有する搬送手段とを備えて構成される。
本発明によると、撥液部材はその一部が孔開き集電体の他方の面に当接しながら周回しているので、塗工部から孔開き集電体に塗工されたスラリーの一部が孔を介して反対側に流出することが防止されるとともに、撥液部材の撥液性によってスラリーが該撥液部材に転写されることが抑制され、その汚染が防止される。スラリーが塗工された孔開き集電体に当接されていた部分は該孔開き集電体から分離され、周回して順次孔開き集電体に繰り返し再当接されるが、このとき撥液部材へのスラリーの残着は少ないので、これによって孔開き集電体が汚染されることもない。従って、目付量を均一にすることができるとともに、スラリーによる汚染も少ないので、優れた電気化学素子用電極を高効率的に製造することができる。また、サイクル特性等の特性に優れた電気化学素子を製造することもできる。
本発明の実施形態に係る電気化学素子用電極の製造装置の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る電気化学素子用電極の製造装置の他の例を示す図である。
本発明に係る電気化学素子用電極の製造方法は、孔開き集電体を所定の搬送経路に沿って順次搬送する工程と、前記搬送経路中に設けられた塗工部から供給されるスラリー(電極スラリー)を前記孔開き集電体の一方の面に塗工する工程と、前記スラリーが塗工された前記孔開き集電体の他方の面に、少なくともその一部が順次当接して該孔開き集電体とともに移動するように、撥液部材を周回させる工程とを概略備えて構成されている。これらの各工程は、後述する電気化学素子用電極の製造装置によって同時並行的に実行される。
ここで、電気化学素子とは、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、キャパシタハイブリッド型鉛蓄電池等が含まれ、本発明が適用されて製造された電気化学素子用電極は、これらの電気化学素子に用いることができる。
〔孔開き集電体〕
孔開き集電体とは、複数の貫通孔を有する導電性電極基材をいい、貫通孔としては、電極基材の表裏に渡って直線的に貫通する孔のみならず、表裏に渡って連絡されているものであればよい。孔開き集電体の母材としては、金属、炭素、導電性高分子等を用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から、銅、アルミニウム又はアルミニウム合金を使用することが好ましい。
孔開き集電体としては、例えば、金属シートに複数の切れ目を入れて上下及び/又は左右に引っ張って塑性変形させてなるエキスパンドメタル、金属シートに複数の孔をパンチング形成してなるパンチングメタル、金属繊維を網状に織り込んだ金属網、発泡体、エッチングにより貫通孔を付与したエッヂング箔、又はエンボスロールを用いて突起及び貫通孔を付与したもの等を用いることができる。このような孔開き集電体を用いると、得られる電極の体積あたりの容量を高くすることができるとともに、当該電極を用いて製造された電気化学素子の充放電特性を向上することができる。
孔開き集電体の貫通孔の開孔部の形状は特に限定はされないが、開孔径は好ましくはφ0.05〜1mm、より好ましくはφ0.1〜1mm、さらに好ましくはφ0.1〜0.5mmである。この範囲に開孔径を設定しておくことで、スラリーが孔開き集電体から流出することを抑制することができる。
孔開き集電体の開孔率は、好ましくは10%〜90%であり、さらに好ましくは20%〜60%、特に好ましくは40%〜60%の範囲である。開孔率は、孔開き集電体の平面観察により求められる。具体的には、孔開き集電体を平面観察し、単位面積当たりの貫通孔の面積を算出することで、開孔率を求める。孔開き集電体の開孔率を上記範囲とすることで、電気化学素子を作製した際のロット間の容量バラツキを抑えることができる。孔開き集電体の開口率や開孔径は、電池の構造(積層タイプや捲回タイプ等) や生産性を考慮し、上述の範囲で適宜選定することが望ましい。
孔開き集電体はこの実施形態では長尺の帯状であり、厚さは特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択されるが、厚さ5〜50μmが好適であり、厚さ10〜40μmがより好適である。集電体の厚みがこの範囲にあると、電子の移動抵抗を低減でき、内部抵抗を低減することができる。また、幅も特に限定されないが、約100〜1000mm、さらには約200〜500mmが好適である。
〔電極スラリー〕
電極スラリーには、電極活物質スラリー及び導電性接着剤スラリーが含まれる。なお、本願においては、電極スラリーを単にスラリーと言うことがある。以下、これらを詳細に説明する。
<電極活物質スラリー>
電極活物質スラリーは、電極活物質、電極活物質用結着剤及び分散媒を必須成分として含み、必要に応じて導電材、分散剤、分散媒以外の有機溶媒、界面活性剤等が含まれる。
(電極活物質)
電極活物質は、電気化学素子用電極内で電子の受け渡しをする物質である。電極活物質には、主としてリチウムイオン二次電池用活物質、電気二重層キャパシタ用活物質やリチウムイオンキャパシタ用活物質がある。
リチウムイオン二次電池用活物質には、正極用、負極用がある。リチウムイオン二次電池用電極の正極に用いる電極活物質としては、具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVO等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO・P、MoO、V、V13等の遷移金属酸化物が例示される。さらに、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子が挙げられる。好ましくは、リチウム含有複合金属酸化物である。
リチウムイオン二次電池用電極の負極に用いる電極活物質としては、具体的には、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、及びピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性高分子等が挙げられる。好ましくは、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の結晶性炭素質材料である。
リチウムイオン二次電池用電極に用いる電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。
リチウムイオン二次電池用電極に用いる電極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。
リチウムイオン二次電池用電極に用いる電極活物質のタップ密度は、特に制限されないが、正極では2g/cm以上、負極では0.6g/cm以上のものが好適に用いられる。
電気二重層キャパシタ用電極に用いる電極活物質としては、通常、炭素の同素体が用いられる。炭素の同素体の具体例としては、活性炭、ポリアセン、カーボンウィスカ及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末又は繊維を使用することができる。好ましい電極活物質は活性炭であり、具体的にはフェノール樹脂、レーヨン、アクリロニトリル樹脂、ピッチ、及びヤシ殻等を原料とする活性炭を挙げることができる。
電気二重層キャパシタ用電極に用いる電極活物質の体積平均粒子径は、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは5〜20μmである。
電気二重層キャパシタ用電極に用いる電極活物質の比表面積は、30m/g以上、好ましくは500〜5,000m/g、より好ましくは1,000〜3,000m/gである。電極活物質の比表面積が大きいほど得られる電極活物質層の密度は小さくなる傾向があるので、電極活物質を適宜選択することで、所望の密度を有する電極活物質層を得ることができる。
リチウムイオンキャパシタ用電極に用いる電極活物質には、正極用と負極用がある。リチウムイオンキャパシタ用電極の正極に用いる電極活物質としては、リチウムイオンと、例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンとを可逆的に担持できるものであれば良い。具体的には、通常、炭素の同素体が用いられ、電気二重層キャパシタで用いられる電極活物質が広く使用できる。炭素の同素体を組み合わせて使用する場合は、平均粒径又は粒径分布の異なる二種類以上の炭素の同素体を組み合わせて使用してもよい。また、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって、水素原子/炭素原子の原子比が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)も好適に使用できる。好ましくは、電気二重層キャパシタ用電極に用いる電極活物質である。
リチウムイオンキャパシタ用電極の負極に用いる電極活物質は、リチウムイオンを可逆的に担持できる物質である。具体的には、リチウムイオン二次電池の負極で用いられる電極活物質が広く使用できる。好ましくは、黒鉛、難黒鉛化炭素等の結晶性炭素材料、上記正極活物質としても記載したポリアセン系物質(PAS)等を挙げることができる。これらの炭素材料及びPASは、フェノール樹脂等を炭化させ、必要に応じて賦活され、次いで粉砕したものが用いられる。
リチウムイオンキャパシタ用電極に用いる電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。
リチウムイオンキャパシタ用電極に用いる電極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。これらの電極活物質は、それぞれ単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
(電極活物質用結着材)
電極活物質用結着材は、電極活物質及び導電材を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。好適な結着材は、溶媒に分散する性質のある分散型結着材である。分散型結着材として、例えば、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン系重合体等の高分子化合物が挙げられ、フッ素系重合体、ジエン系重合体又はアクリレート系重合体が好ましく、ジエン系重合体又はアクリレート系重合体が、耐電圧を高くでき、かつ電気化学素子のエネルギー密度を高くすることができる点でより好ましい。
ジエン系重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、又はそれらの水素添加物である。前記単量体混合物における共役ジエンの割合は通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレン等の共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)等の芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)等のシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
アクリレート系重合体は、一般式(1):CH=CR−COOR(式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rはアルキル基又はシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位を含む重合体である。一般式(1)で表される化合物の具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等のアクリレート;メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、アクリレートが好ましく、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが、得られる電極の強度を向上できる点で、特に好ましい。アクリレート系重合体中の前記一般式(1)で表される化合物由来の単量体単位の割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。前記一般式(1)で表される化合物由来の単量体単位の割合が前記範囲であるアクリレート系重合体を用いると、耐熱性が高く、かつ得られる電気化学素子用電極の内部抵抗を小さくできる。
前記アクリレート系重合体は、一般式(1)で表される化合物の他に、共重合可能なカルボン酸基含有単量体を用いることができ、具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基酸含有単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の二塩基酸含有単量体が挙げられる。なかでも、二塩基酸含有単量体が好ましく、集電体との結着性を高め、電極強度を向上できる点で、イタコン酸が特に好ましい。これらの一塩基酸含有単量体、二塩基酸含有単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。共重合の際のカルボン酸基含有単量体の量は、一般式(1)で表される化合物100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。カルボン酸基含有単量体の量がこの範囲であると、集電体との結着性に優れ、得られる電極の強度が向上する。
前記アクリレート系重合体は、一般式(1)で表される化合物の他に、共重合可能なニトリル基含有単量体を用いることができる。ニトリル基含有単量体の具体例としては、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等が挙げられ、中でもアクリロニトリルが、集電体との結着性が高まり、電極強度が向上できる点で好ましい。アクリロニトリルの量は、一般式(1)で表される化合物100重量部に対して、通常は0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部の範囲である。アクリロニトリルの量がこの範囲であると、集電体との結着性に優れ、得られる電極の強度が向上する。
結着材の形状は、特に制限はないが、集電体との結着性が良く、また、作成した電極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができるため、粒子状であることが好ましい。粒子状の結着材としては、例えば、ラテックスのごとき結着材の粒子が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粉末状のものが挙げられる。
結着材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは−40〜0℃である。結着材のガラス転移温度(Tg)がこの範囲にあると、少量の使用量で結着性に優れ、電極強度が強く、柔軟性に富み、電極形成時のプレス工程により電極密度を容易に高めることができる。
結着材の数平均粒子径は、格別な限定はないが、通常は0.0001〜100μm、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜1μmである。結着材の数平均粒子径がこの範囲であるときは、少量の使用でも優れた結着力を電極活物質層に与えることができる。ここで、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ結着材粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。粒子の形状は球形、異形、どちらでもかまわない。これらの結着材は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。結着材の量は、電極活物質100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。結着材の量がこの範囲にあると、得られる電極活物質層と集電体との密着性が充分に確保でき、電気化学素子の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
(分散媒)
分散媒としては、水、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられるが、スラリー状の電極形成材料の乾燥の容易さと環境への負荷に優れる点から水が好ましい。
電極活物質スラリーには、前記電極活物質、結着材の他に、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、導電材、界面活性剤、沸点が50〜150℃にある有機溶剤、分散剤が挙げられる。
(導電材)
導電材は、導電性を有し、電気二重層を形成し得る細孔を有さない粒子状の炭素の同素体からなり、具体的には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)等の導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラック及びファーネスブラックが好ましい。
導電材の体積平均粒子径は、電極活物質の体積平均粒子径よりも小さいものが好ましく、その範囲は通常0.001〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.01〜1μmである。導電材の体積平均粒子径がこの範囲にあると、より少ない使用量で高い導電性が得られる。これらの導電材は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。導電材の量は、電極活物質100重量部に対して通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。導電材の量がこの範囲にあると、得られる電極を使用した電池の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
電極活物質スラリーには、界面活性剤及び/又は沸点が50〜150℃にある有機溶剤が含まれていることが好ましい。界面活性剤及び有機溶剤は、いずれか一方が含まれていてもよく、また両者が含まれていてもよい。
(界面活性剤)
界面活性剤は、電極活物質、導電材及び結着材を良分散し、またスラリーの表面張力を低下させ、塗工性を向上させる。界面活性剤としては、具体的には、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;アルキルアミンオキサイド、アルキルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられ、陰イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく、電気化学素子の耐久性に優れる点で陰イオン性界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤を使用する場合、その配合量は、電極活物質100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲であり、1.0〜10重量部が好ましく、2.0〜5重量部が特に好ましい。界面活性剤の配合量がこの範囲であると、電気化学素子の耐久性に優れる。
(有機溶剤)
本発明において、有機溶剤を使用することで、スラリーの塗工性が向上する。また、沸点(常圧)が50〜150℃の有機溶剤を使用すると、水系スラリーを塗布して形成した電極組成物の層を乾燥する際に、水の揮発とともに同時に有機溶媒が揮発するため、乾燥工程を簡素化できる。また、乾燥後の電極活物質層に有機溶剤が残存することもなく、電極の耐久性が向上する。有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、好ましくはアルコール類、アルキルエステル類が挙げられ、電気化学素子の耐久性に優れる点でアルコール類が特に好ましい。
有機溶剤を使用する場合、その配合量は、電極活物質100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲であり、1.0〜10重量部が好ましく、2.0〜5重量部が特に好ましい。有機溶剤の配合量がこの範囲であると、得られる電気化学素子の耐久性に優れる。
また、上記の界面活性剤と有機溶剤とを併用することが特に好ましい。界面活性剤と有機溶剤とを併用することにより、電極組成物スラリーの表面張力をより低下させ、生産性が向上する。この場合、界面活性剤と有機溶剤との合計量は、電極活物質100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲であり、1.0〜10重量部が好ましく、2.0〜5重量部が特に好ましい。
(分散剤)
分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体等が挙げられる。これらの中でもセルロース誘導体が特に好ましい。
セルロース誘導体は、セルロースの水酸基の少なくとも一部をエーテル化又はエステル化した化合物であり、水溶性のものが好ましい。セルロース誘導体は、通常、ガラス転移点を有さない。具体的には、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。また、これらのアンモニウム塩及びアルカリ金属塩が挙げられる。中でも、カルボキシメチルセルロースの塩が好ましく、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩が特に好ましい。セルロース誘導体のエーテル化度は、好ましくは0.5〜2、より好ましくは0.5〜1.5である。なお、ここでエーテル化度とは、セルロースのグルコース単位あたりに3個含まれる水酸基が、平均で何個エーテル化されているかを表す値である。エーテル化度がこの範囲であると、電極組成物を含むスラリーの安定性が高く、固形分の沈降や凝集が生じにくい。さらに、セルロース誘導体を用いることにより、塗料の塗工性や流動性が向上する。
電極活物質スラリーは、電極活物質、電極活物質用結着材、及び導電材、必要に応じ添加される分散剤、界面活性剤、有機溶剤を、水又はN−メチル−2−ピロリドンやテトラヒドロフラン等の有機溶媒中で混練することにより製造することができる。電極活物質スラリーは、電極活物質層の乾燥の容易さと環境への負荷に優れる点から水を分散媒とした水系スラリーが好ましい。
水系スラリーの製造方法としては、水及び前記の各成分を、混合機を用いて混合して製造できる。混合機としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、及びホバートミキサー等を用いることができる。また、電極活物質と導電材とを擂潰機、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、及びオムニミキサー等の混合機を用いて先ず混合し、次いでバインダーを添加して均一に混合する方法も好ましい。この方法を採ることにより、容易に均一なスラリーを得ることができる。
電極活物質スラリーの粘度は、塗工機の種類や塗工ラインの形状によっても異なるが、通常100〜100,000mPa・s、好ましくは、1,000〜50,000mPa・s、より好ましくは5,000〜20,000mPa・sである。
電極活物質層の厚さは、特に制限されないが、通常は5〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは30〜300μmである。
<導電性接着剤スラリー>
導電性接着剤スラリーは、主として導電性粒子、導電性接着剤用結着材及び分散媒を含み、必要に応じて導電材、分散剤、有機溶媒、界面活性剤等が含まれる。
(導電性粒子)
導電性接着剤スラリーに用いる導電性粒子としては、導電性を有する粒子であれば特に制限されないが、炭素粒子が好ましい。炭素粒子としては、非局在化したπ電子の存在によって高い導電性を有する黒鉛(具体的には天然黒鉛、人造黒鉛等);黒鉛質の炭素微結晶が数層集まって乱層構造を形成した球状集合体であるカーボンブラック(具体的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、その他のファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等);炭素繊維やカーボンウィスカー等が挙げられる。これらの中でも、導電性接着剤層の炭素粒子が高密度に充填し、電子移動抵抗を低減でき、さらに電気化学素子の内部抵抗を低減できる点で、黒鉛又はカーボンブラックが、特に好ましい。
炭素粒子は、上記で挙げたものを単独で用いてもよいが、二種類を組み合わせて用いることが特に好ましい。具体的な組み合わせとしては、黒鉛とカーボンブラック、黒鉛と炭素繊維、黒鉛とカーボンウィスカー、カーボンブラックと炭素繊維、カーボンブラックとカーボンウィスカー等が挙げられ、黒鉛とカーボンブラック、黒鉛と炭素繊維、カーボンブラックと炭素繊維の組み合わせが好ましく、黒鉛とカーボンブラック、黒鉛と炭素繊維の組み合わせが特に好ましい。炭素粒子を上記組み合わせで用いると、導電性接着剤層の炭素粒子が高密度に充填するため、電子移動抵抗が低減され、電気化学素子の内部抵抗が低減する。
炭素粒子の電気抵抗率は、好ましくは0.0001〜1Ω・cmであり、より好ましくは0.0005〜0.5Ω・cm、特に好ましくは0.001〜0.1Ω・cmである。炭素粒子の電気抵抗率がこの範囲にあると、導電性接着剤層の電子移動抵抗を低減し、内部抵抗を低減することができる。ここで、電気抵抗率は、粉体抵抗測定システム(MCP−PD51型;ダイアインスツルメンツ社製)を用いて、炭素粒子に圧力をかけ続けながら抵抗値を測定し、圧力に対して収束した抵抗値R(Ω)と、圧縮された炭素粒子層の面積S(cm)と厚みd(cm)から電気抵抗率ρ(Ω・cm)=R×(S/d)を算出する。
炭素粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.05〜15μm、特に好ましくは0.1〜10μmである。炭素粒子の体積平均粒子径がこの範囲であると、導電性接着剤層の炭素粒子が高密度に充填するため、電子移動抵抗が低減され、電気化学素子の内部抵抗が低減する。ここで体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−3100;島津製作所製)にて測定し、算出される体積平均粒子径である。
導電性接着剤スラリーに好適に用いる炭素粒子の体積平均粒子径分布はマルチモーダルであることが好ましい。ここで、マルチモーダルとは、粒径に対して、当該粒径を有する粒子の存在頻度をプロットした際に、複数のピークが出現する状態である。炭素粒子の体積平均粒子径分布は、好ましくは2つのピークを有するバイモーダルである。具体的には、炭素粒子が、体積平均粒子径が0.01μm以上1μm未満、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である炭素粒子(A)と体積平均粒子径が1μm以上10μm以下、好ましくは1μm以上5μm以下である炭素粒子(B)とを含むものであることが好ましい。炭素粒子の体積平均粒子径分布がバイモーダルであると、導電性接着剤層の炭素粒子が高密度に充填するため、電子移動抵抗が低減され、内部抵抗が低減する。ここで体積平均粒子径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−3100;島津製作所製)にて測定し、算出される体積平均粒子径分布である。
二種類の炭素粒子(A)と炭素粒子(B)との重量比は、(A)/(B)の比で0.05〜1であり、0.1〜0.8が好ましく、0.2〜0.5が特に好ましい。二種類の炭素粒子の重量比がこの範囲であると、導電性接着剤層の炭素粒子が高密度に充填するため、電子移動抵抗が低減され、電気化学素子の内部抵抗が低減する。
(導電性接着剤用結着剤)
導電性接着剤スラリーに用いる導電性接着剤用結着材としては、電極活物質スラリーにおいて用いる電極活物質用結着材として例示したものを用いることができる。具体的には、溶媒に分散する性質のある分散型バインダーである。分散型バインダーとして、例えば、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン系重合体等の高分子化合物が挙げられ、フッ素系重合体、ジエン系重合体又はアクリレート系重合体が好ましく、ジエン系重合体又はアクリレート系重合体が、耐電圧を高くでき、かつ電気化学素子のエネルギー密度を高くすることができる点でより好ましい。
導電性接着剤スラリー中の結着材の含有量は、導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは2〜10重量部である。
(分散媒)
分散媒としては、水、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられるが、スラリー状の電極形成材料の乾燥の容易さと環境への負荷に優れる点から水が好ましい。
(他の成分)
導電性接着剤スラリーには、前記導電性粒子、結着材及び分散媒の他に、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、界面活性剤、沸点が50〜150℃にある有機溶剤、分散剤が挙げられる。
分散剤としては、電極活物質スラリーで例示した分散剤を用いることができる。中でも、セルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースの塩がより好ましく、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩やナトリウム塩が特に好ましい。
これらの分散剤の使用量は、格別な限定はないが、導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは0.8〜5重量部の範囲である。
界面活性剤としては、電極活物質スラリーで例示した界面活性剤を用いることができる。中でも、陰イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく、電気化学素子の耐久性に優れる点で陰イオン性界面活性剤が特に好ましい。
沸点(常圧)が50〜150℃の有機溶剤としては、電極活物質スラリーで例示したものを用いることができる。中でも、アルコール類、アルキルエステル類が好ましく、電気化学素子の耐久性に優れる点でアルコール類が特に好ましい。
有機溶剤を使用する場合、その配合量は、導電性粒子100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲であり、1〜10重量部が好ましく、2〜5重量部が特に好ましい。有機溶剤の配合量がこの範囲であると、得られる電気化学素子の耐久性に優れる。
また、上記の界面活性剤と有機溶剤とを併用することが特に好ましい。界面活性剤と有機溶剤とを併用することにより、導電性接着剤スラリーの表面張力をより低下させ、生産性が向上する。この場合、界面活性剤と有機溶剤との合計量は、電極活物質100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲であり、1〜10重量部が好ましく、2〜5重量部が特に好ましい。
また、上記の界面活性剤と有機溶剤とを併用することが特に好ましい。界面活性剤と有機溶剤とを併用することにより、導電性接着剤スラリーの表面張力をより低下させ、生産性が向上する。この場合、界面活性剤と有機溶剤との合計量は、導電性粒子100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲であり、1〜10重量部が好ましく、2〜5重量部が特に好ましい。
導電性接着剤スラリーは、結着材及び導電性粒子、並びに、必要に応じ添加される分散剤、界面活性剤、分散媒以外の有機溶剤を、分散媒中で混練することにより製造することができる。
導電性接着剤スラリーの製造方法としては、分散媒及び前記の各成分を、混合機を用いて混合して製造できる。混合機としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、及びホバートミキサー等を用いることができる。また、電極活物質と必要に応じて加えられる導電剤とを擂潰機、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、及びオムニミキサー等の混合機を用いて先ず混合し、次いでバインダーを添加して均一に混合する方法も好ましい。この方法を採ることにより、容易に均一なスラリーを得ることができる。
〔電極製造装置〕
次に、上述した電気化学素子用電極の製造方法を実施するための製造装置について説明する。この製造装置は、孔開き集電体に電極スラリーを塗布し、乾燥させて、孔開き集電体上に電極組成物層を有する電極を製造する装置である。
この製造装置は、孔開き集電体を所定の搬送経路に沿って順次搬送する工程を実施する搬送装置(搬送手段)と、前記搬送経路中に設けられた塗工部から供給されるスラリーを前記孔開き集電体の一方の面に塗工する工程を実施する塗工装置(塗工手段)と、孔開き集電体に塗工されたスラリーを乾燥させて電極組成物層として定着させる乾燥装置とを備えている。搬送装置は、スラリーが塗工された孔開き集電体の他方の面に、少なくともその一部が順次当接して該孔開き集電体とともに移動するように、撥液部材を周回させる工程も併せて行う。
図1は上述した電気化学素子用電極の製造方法を実施するための製造装置の一例を示す図である。図1においては、搬送装置は、複数の搬送ロール11〜15を備えて構成されている。これらの搬送ロール11〜15のうちの少なくとも一つは、図外のモータによって回転駆動されることにより、孔開き集電体1が順次搬送(走行)される。長尺シート状の孔開き集電体1がこの製造装置の入口側から順次供給され、各搬送ロール11〜15によって形成される所定の搬送経路に沿って、図中に複数の実線矢印で示すように順次搬送され、この製造装置の出口側へ順次排出されるようになっている。
図1においては、搬送ロール11〜13は撥液ロールとなっている。同図では、孔開き集電体1は、下から上に向かって供給されて、搬送ロール11に至り、搬送ロール11で略90度横向きにされて、搬送ロール12〜14に沿って略水平に直線的に搬送され、搬送ロール15によって略90度下向きにされて、上から下へ向かって排出される。
塗工装置は、図外のスラリー供給装置とこのスラリー供給装置から供給されるスラリー2を、搬送装置により順次搬送される孔開き集電体1の一方の面(表面)に塗工(塗布)する塗工部3を備えている。この実施形態では、この塗工装置はダイコーターであり、塗工部3は、ダイ先端のスラリー吐出部が搬送ロール11に対して、孔開き集電体1を介して所定の間隔で僅かに離間して対峙するように配置されており、塗工部3からスラリー2が吐出されつつ、孔開き集電体1が移動(搬送)されることによって、孔開き集電体1の表面にスラリー2が塗工される。
搬送装置による搬送経路中の搬送ロール12〜14の部分(その近傍を含む)には、乾燥装置(乾燥炉)が配置されている。乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線等の照射による乾燥法が挙げられる。中でも、遠赤外線の照射による乾燥法が好ましい。この乾燥装置における乾燥温度と乾燥時間は、集電体に塗布したスラリー中の溶媒を完全に除去できる温度と時間が好ましく、乾燥温度としては100〜300℃、好ましくは120〜250℃である。
なお、図示は省略しているが、この製造装置の前段にはロール状に巻回された未塗工の孔開き集電体1を順次繰り出す繰出装置が、後段には電極組成物層が形成された孔開き集電体を順次巻き取る巻取装置や製造された電極を必要な長さで切断する裁断装置等が、一例として配置される。
図2は上述した電気化学素子用電極の製造方法を実施するための製造装置の他の例を示す図である。図2においては、搬送装置は、複数の搬送ロール21〜26を備えて構成されている。これらの搬送ロール21〜26のうちの少なくとも一つは、図外のモータによって回転駆動されることにより、孔開き集電体1が順次搬送(走行)される。搬送ロール21〜23,26には、無端状の搬送シート(搬送ベルト)27が巻回されている。長尺シート状の孔開き集電体1がこの製造装置の入口側から順次供給され、各搬送ロール21〜23,26に巻回された搬送シート27及び搬送ロール24,25によって形成される所定の搬送経路に沿って孔開き集電体1が、図中に複数の実線矢印で示すように順次搬送され、この製造装置の出口側へ順次排出されるようになっている。
図2においては、搬送シート27は撥液シート(撥液ベルト)となっている。この撥液シート27は、搬送ロール21〜23,26によって形成される軌道上を、図中に点線矢印で示すように周回される。孔開き集電体1は、下から上に向かって供給されて、搬送ベルト27(搬送ロール21)に至り、略90度横向きにされて、撥液シート27,搬送ロール24に沿って略水平に直線的に搬送され、搬送ロール25によって略90度下向きにされて、上から下へ向かって排出される。撥液シート27は、搬送ロール21に対応する部分で孔開き集電体1の裏面に当接し、この当接部分は孔開き集電体1と一体的に移動して、搬送ロール23に対応する部分で孔開き集電体1から離脱され、搬送ロール26を介して、搬送ロール21の部分で再度孔開き集電体1の裏面に当接され、以後順次これを繰り返す。
図2において、塗工装置及び乾燥装置の構成は、図1と同様であるので、その説明は省略する。
(撥液部材)
上述した通り、図1においては、搬送ロール11〜13は撥液ロールとなっている。撥液ロール11〜13は、ロール状の基材の表面に撥液部材を配置して構成されている。また、図2においては、搬送シート27は撥液シートとなっている。撥液シート27は、無端状のシート状の基材の表面(外側を構成する面)に撥液部材を配置して構成されている。
撥液部材は、対象となる電極組成物を含むスラリーをはじく(濡れない)性質を有している部材をいい、具体的にはフッ素樹脂、シリコーン樹脂やアルキッド樹脂等の撥液性の樹脂材質からなる部材が好ましい。基材の表面に撥液部材を配置する方法としては、基材の表面にこれら撥液性の樹脂をコーティングし、又は含浸させる方法を用いることができる。なお、撥液ロール又は撥液シートとしては、その全体がロール状又はシート状の撥液部材から形成されたものであってもよい。
撥液部材の接触角(水との接触角とする)は、90°以上で、できるだけ大きいことが好ましい。但し、一般には、接触角は、150〜160°程度が上限となる。接触角を90°以上に設定することで、孔開き集電体の貫通孔から裏抜けしようとするスラリーを弾き、スラリーの裏抜けを防止でき、孔開き集電体の片側に均一にスラリーを塗工することができる。
撥液部材の材質は、水との接触角が90°以上となるものであれば特に限定はされないが、フッ素樹脂が耐薬品性や機械的特性から好ましい。また、基材に撥液処理を施す場合には、特にフッ素樹脂、シリコーン樹脂やアルキッド樹脂を基材表面にコーティングしたものが好ましい。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(EDTFE)が挙げられる。
なお、図1では撥液ロールを、図2では撥液シートを配置したものを例示しているが、撥液部材が配置される基材の形状は、特に限定されない。撥液ロールと撥液シートとを組み合わせて用いてもよい。撥液ロールを用いる場合には、塗工部に対向して配置される撥液ロールは、スラリーの裏抜けを防止しつつ乾燥装置まで搬送するという観点から、塗工部に対して十分大きい径のロールを使うことが好ましい。孔開き集電体との当接部分を十分に確保するためである。
搬送シートの厚さは特に限定されないが、10〜400μmが好ましく、20〜300μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。搬送シートの厚さが、前記範囲にあることにより、その強度やコスト、再利用を考慮した上で最も好ましい。幅も特に限定されないが100〜1000mm、さらには100〜500mmが好適である。
搬送シートの引っ張り強度は特に限定されないが、30〜500MPaが好適であり、30〜300MPaがより好適である。搬送シートの引っ張り強度が、前記範囲であることにより、塗工時の搬送シートの破断を防ぐことができる。
撥液シートは無端状シートであり、周回しながら繰り返し使用されるので、電極の生産コストを安くできる。
なお、電極スラリーの粘度は、塗工装置の種類や塗工ラインの形状によっても異なるが、通常100〜100,000mPa・s、好ましくは、1,000〜50,000mPa・s、より好ましくは5,000〜20,000mPa・sである。電極スラリーの粘度は、B型粘度計を用いて、温度25℃、回転数60rpmの条件で測定した値である。
スラリーの表面張力は、好ましくは20℃で通常、20〜60mN/m以下、好ましくは、20〜50mN/m程度に調整することが好ましい。この範囲に表面張力を設定しておくことで、孔開き集電体に塗工する際、塗工むらの発生を防止でき、例えば両測縁近傍の耳立ち(盛り上がり)を防止でき、孔開き集電体の貫通孔からのスラリーの裏抜けを、さらに抑制することができる。
スラリーの孔開き集電体表面上への塗工方法は上記に限定されず、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法等の方法が挙げられる。スラリーの塗布厚は、目的とする電極組成物層の厚みに応じて適宜に設定される。
なお、上記では、孔開き集電体の一方の面(片面)のみに電極組成物層を形成してなる電極(片面塗工電極)の製造について説明したが、上記のようにして製造した片面塗工電極の表裏を裏返して、図1又は図2に示したような製造装置で、他方の面(残余の面)にも電極組成物層を形成して、両面塗工電極を製造することができる。この場合には、スラリーの裏抜けは起こらないため、撥液部材(撥液ロール又は撥液シート)は、必ずしも必要ではないが、そのような撥液部材を用いても特に問題となることはないので、同じ製造装置を用いることにより、コストの低減を図ることができる。
〔電気化学素子〕
本発明の電気化学素子は、本発明の製造方法で得られる電気化学素子用電極を備える。電気化学素子としては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ等が挙げられるが、電気二重層キャパシタが好適である。以下、一例として、本発明の製造方法で得られる電気化学素子用電極を電気二重層キャパシタ用電極に用いた場合について説明する。
電気二重層キャパシタは、電極、セパレータ及び電解液で構成され、前記電極として、本発明の製造方法で得られた電気化学素子用電極を用いる。
セパレータは、電気二重層キャパシタ用電極の間を絶縁でき、陽イオン及び陰イオンを通過させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、レーヨン、アラミド、若しくはガラス繊維製の微孔膜又は不織布、一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜等を用いることができる。セパレータは、一対の電気二重層キャパシタ用電極の間に配置され、素子が得られる。セパレータの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜60μmである。
電解液は、通常電解質と溶媒で構成される。電解質は、カチオンとしては、以下に示すような(1)イミダゾリウム、(2)第四級アンモニウム、(3)第四級ホスホニウム、(4)リチウム等を用いることができる。
(1)イミダゾリウム
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチルー3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチル−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム等
(2)第四級アンモニウム
テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム等
(3)第四級ホスホニウム
テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム等
(4)リチウム
また、同様に電解質は、アニオンとしては、PF 、BF 、AsF 、SbF 、N(RfSO2−、C(RfSO3−、RfSO (Rfはそれぞれ炭素数1〜12のフルオロアルキル基)、F、ClO 、AlCl 、AlF 等を用いることができる。これらの電解質は単独又は二種類以上として使用することができる。
電解液の溶媒は、一般に電解液の溶媒として用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、プロピレンカーボート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;スルホラン類;アセトニトリル等のニトリル類;が挙げられる。これらは単独又は二種以上の混合溶媒として使用することができる。中でも、カーボネート類が好ましい。
上記のキャパシタ素子に電解液を含浸させて、電気二重層キャパシタが得られる。具体的には、キャパシタ素子を必要に応じ捲回、積層又は折る等して容器に入れ、容器に電解液を注入して封口して製造できる。また、キャパシタ素子に予め電解液を含浸させたものを容器に収納してもよい。容器としては、コイン型、円筒型、角型等の公知のものをいずれも用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の説明における部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
(スラリーの製造)
電極スラリーとして、電極活物質スラリーを以下のようにして製造した。エーテル化度が0.6で1%水溶液の粘度が30mPa・sであるカルボキシメチルセルロースアンモニウム塩3.3部をイオン交換水213.2部に溶解し、導電性付与剤として体積平均粒径0.035μmのアセチレンブラック(デンカブラック粉状:電気化学工業社製)50部を添加し、プラネタリーミキサーを用いて混合分散して固形分濃度20%の導電性付与剤分散液を得た。
得られた導電性付与剤分散液26部、電極活物質として平均粒径5μmで比表面積が2000m/gの活性炭粉末100部、アクリレート重合体の固形分濃度40%の水分散液7.5部及びエーテル化度が0.6で1%水溶液の粘度が900mPa・sであるカルボキシメチルセルロースアンモニウム塩1部に適当量の水を加え、プラネタリーミキサーを用いて混合分散し、粘度が5,000〜20,000mPa・sの間に入る電極活物質スラリー(電極組成物)を得た。なお、アクリレート重合体としては、アクリル酸2−エチルヘキシル76部、アクリロニトリル20部及びイタコン酸4部を乳化重合して得られる、Tgが−20℃の共重合体を用いた。
(電極の製造)
上述した図2に示した製造装置を用いて、上記のように製造した電極スラリーを孔開き集電体上に塗工し、該孔開き集電体上に電極組成物層が一体形成された電極を製造した。孔開き集電体としては、厚さ30μmのアルミニウム製パンチングメタル(開口率50%、開孔径0.35mm、福田金属箔粉工業社製)を用いた。
塗工装置としてダイコーターを用い、搬送装置による搬送速度を8m/minに設定して、孔開き集電体上にスラリーを塗工し、次いで乾燥装置で乾燥し、孔開き集電体上に厚さ110μmの電極組成物層を形成した。
撥液シートと孔開き集電体との当接長さは、5mとした。乾燥装置の長さ(孔開き集電体の走行方向の長さ)は、10mとした。
図2における撥液シートとしては、以下の3種類を準備した。
<実施例1>ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるもの(厚さ300μm、引っ張り強度440N/cm、接触角120度)
<実施例2>PETシートの表面にアルキッド樹脂をコーティングしたもの(厚さ100μm、引っ張り強度70N/cm、接触角97度)
<比較例>ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるもの(厚さ100μm、引っ張り強度70N/cm、接触角75度)
(評価方法)
上記の3種類の撥液シートを適宜に取り替えつつ、図2の製造装置で製造された電極を、φ15.75mmで打ち抜いたものを10枚準備し、10枚の目付量をそれぞれ測定し、その平均値及び標準偏差を求めた。その結果を、表1に示す。
Figure 2011076824
(評価)
表1からわかるように、接触角が90度以上である実施例1及び実施例2では、接触角が90度未満である比較例と比較して、標準偏差が十分小さく、目付量のばらつきが小さいことがわかる。従って、接触角が大きい実施例1及び実施例2では、孔開き集電体上に電極組成物層がより均一に形成されており、優れた特性を有する電極を製造することができることがわかる。
なお、以上説明した実施形態及び実施例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態及び実施例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
1…孔開き集電体
2…電極スラリー
3…塗工部(塗工装置)
4…乾燥装置
11〜13…撥液ロール
27…撥液シート

Claims (10)

  1. 孔開き集電体を所定の搬送経路に沿って順次搬送する工程と、
    前記搬送経路中に設けられた塗工部から供給されるスラリーを前記孔開き集電体の一方の面に塗工する工程と、
    前記スラリーが塗工された前記孔開き集電体の他方の面に、少なくともその一部が順次当接して該孔開き集電体とともに移動するように、撥液部材を周回させる工程と
    を備えることを特徴とする電気化学素子用電極の製造方法。
  2. 前記撥液部材は、前記搬送経路の一部を構成する搬送ロールの少なくとも表面に配置された請求項1に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
  3. 前記撥液部材は、前記搬送経路の一部を構成する搬送ロールに巻回されたシートの少なくとも表面に配置された請求項1に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
  4. 前記撥液部材の接触角を90度以上に設定した請求項1〜3の何れか一項に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
  5. 前記撥液部材は、フッ素樹脂から形成されたもの、又は基材上にフッ素樹脂をコーティングし若しくは含浸したものからなる請求項1〜4の何れか一項に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
  6. 前記孔開き集電体の開孔率は、10〜90%である請求項1〜5の何れか一項に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
  7. 前記孔開き集電体の開孔径は、φ0.1〜1mmである請求項1〜6の何れか一項に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
  8. 前記スラリーの粘度は、100〜100,000mPa・sである請求項1〜7の何れか一項に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載の製造方法により得られる電気化学素子用電極を備える電気化学素子。
  10. 孔開き集電体の一方の面に塗工部を介してスラリーを供給する塗工手段と、
    前記スラリーが塗工された前記孔開き集電体の他方の面に、少なくともその一部が順次当接して周回するように設けられた撥液部材を有する搬送手段と
    を備えることを特徴とする電気化学素子用電極の製造装置。
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