JP2011074496A - 合金微粒子の製造方法とそれによって製造される合金微粒子および金属コロイド溶液 - Google Patents

合金微粒子の製造方法とそれによって製造される合金微粒子および金属コロイド溶液 Download PDF

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Abstract

【課題】所定の合金組成を有する合金微粒子を、ロスなく、効率よく製造することができる合金微粒子の製造方法と、当該製造方法によって製造される合金微粒子、および、導電性インク等として使用可能な金属コロイド溶液を提供する。
【解決手段】合金微粒子の製造方法は、2種以上の金属のイオンを、活性基としてカルボキシル基を有し、かつ、分子量が4000〜30000である高分子分散剤の存在下、液相の反応系中で、還元剤の作用によって還元して、上記2種以上の金属の合金からなる合金微粒子として析出させる。合金微粒子は、上記の製造方法によって製造され、一次粒子径が200nm以下である。金属コロイド溶液は、上記の合金微粒子を含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、微細な合金微粒子を製造するための製造方法と、それによって製造される合金微粒子と、導電性インク等として使用可能な金属コロイド溶液とに関するものである。
燃料電池や排ガス浄化用の触媒などとしては白金、パラジウムなどの貴金属が使用される。しかし、貴金属元素は、地球上に限られた量しか存在しないため、その使用量をできるだけ少なくすることが求められる。そこで、貴金属を用いた触媒としては、例えば、カーボンや無機化合物等からなる担体粒子の表面に、貴金属の微粒子を担持させたものなどが一般的に用いられる。また、触媒作用は、主に貴金属の表面において発揮されることから、上記構造の触媒において、良好な触媒作用を維持しつつ貴金属の使用量をできるだけ少なくするためには、担体粒子の表面に担持させる貴金属の微粒子を、できるだけ一次粒子径が小さく、かつ比表面積の大きいものとすることが有効である。
また近年、例えば、インクジェットプリンタを用いて導電性の印刷などを行うべく、導電性インクとして、水や、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒等に、導電性フィラーとしての金属微粒子、特に、金や銀などの貴金属の微粒子を分散させたものを用いることが検討されている。かかる用途に用いる貴金属の微粒子には、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まりを防止すると共に、印刷の精度を向上し、印刷のより一層の微細化を可能とし、さらには、導電性インクを用いて形成される導体配線や導電膜の構造や導電性を均一化するために、上記触媒用ほどではないものの、これまでよりも一次粒子径が小さく、しかも粒度分布がシャープである上、その形状が球状ないし粒状であることが求められる。
これらの微細な金属微粒子を製造する方法としては、含浸法と呼ばれる高温処理法や、液相還元法、気相法などがあるが、近年、特に、製造設備の簡易化が容易な液相還元法、すなわち、液相の反応系中で、析出対象である金属のイオンを、還元剤の作用によって還元して金属微粒子を析出させる方法が広く普及しつつある。また、液相還元法で製造される金属微粒子は、その形状が球状ないし粒状で揃っていると共に、粒度分布がシャープで、しかも、一次粒子径が小さいため、特に、前記インクジェットプリンタ用の導電性インクの導電性フィラーとして適しているという利点もある。
2種以上の金属の合金からなる合金微粒子を、上記の液相還元法によって製造するためには、反応系中に、合金のもとになる2種以上の金属のイオンを混在させた状態で、両イオンを、還元剤の作用によって還元して、合金微粒子として析出させることが考えられる(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2001−224969号公報(特許請求の範囲、第0012欄〜第0013欄、第0016欄〜第0018欄) 特開2002−248350号公報(特許請求の範囲、第0014欄〜第0016欄、第0018欄〜第0020欄)
しかし、従来の液相還元法による合金微粒子の製造方法では、製造される合金微粒子の組成比が、反応系中に加える2種以上の金属のイオンの配合比率と一致しないという問題がある。すなわち、金属種が違うと酸化還元電位が異なるため、同一の反応系中に、2種以上の金属のイオンを混在させた状態で、還元剤の作用によって、同時に還元して析出させても、それぞれの金属の析出率が異なるため、反応系中に加えた2種以上の金属のイオンの配合比率と一致する合金組成を有する合金微粒子を製造することができないのである。
そこで、合金微粒子を形成する各金属の酸化還元電位と、それに伴う析出率とを考慮に入れて、反応系中に加える2種以上の金属のイオンの配合比率を調整して、所望の合金組成を有する合金微粒子を製造することが考えられる。しかし、この場合には、必ず、未反応の、余剰の金属のイオンが発生することになるため、ロスが多いという問題がある。また、少しでもロスを少なくするため、合金微粒子を析出させた後の反応系中に残留する余剰の金属のイオンを回収して再利用することも検討されるが、回収した金属を、液相還元法の原料として再使用できる程度まで高純度に精製するためには、非常な手間と時間とがかかることから、合金微粒子の製造コストが著しく高くつくという新たな問題を生じる。
本発明の目的は、所定の合金組成を有する合金微粒子を、ロスなく、効率よく製造することができる合金微粒子の製造方法と、当該製造方法によって製造される合金微粒子、および、導電性インク等として使用可能な金属コロイド溶液を提供することにある。
上記課題を解決するため、発明者は、反応系中に加える種々の成分について検討を行った。その結果、液相の反応系中に析出した合金微粒子のさらなる成長や凝集を抑制したり、合金微粒子の凝集や沈殿を防止して分散性を向上したりするために、反応系中に添加される分散剤として、活性基としてカルボキシル基を有し、かつ、分子量が4000〜30000である高分子分散剤を使用すればよいことを見出した。
すなわち、上記の高分子分散剤は、反応前の反応系中において、活性基としてのカルボキシル基の部分で、同じ反応系中に含まれる金属のイオンと結合して錯体を形成することで、高分子の主鎖による立体障害によって、2種以上の金属の、金属種の違いによる酸化還元電位の差に基づく、それぞれの金属の析出率の差をなくする働きをする。そのため、上記の錯体が形成された状態で、還元剤による、2種以上の金属のイオンの還元、析出反応を行わせると、反応系中に加えた2種以上の金属のイオンが、ほぼ同じ析出率で析出して、それぞれの金属のイオンの配合比率どおりの合金組成を有する合金微粒子が形成されるため、所定の合金組成を有する合金微粒子を、これまでよりもロスなく、効率よく製造することが可能となる。
したがって、請求項1記載の発明は、2種以上の金属のイオンを、液相の反応系中で、還元剤の作用によって還元して、上記2種以上の金属の合金からなる合金微粒子として析出させる合金微粒子の製造方法であって、活性基としてカルボキシル基を有し、かつ、分子量が4000〜30000である高分子分散剤の存在下で、上記還元、析出反応を行うことを特徴とする合金微粒子の製造方法である。
また、反応系のpHは、高分子分散剤と金属のイオンとが錯体を形成しやすい状態として、反応系中に、合金微粒子の析出の起点となる錯体を、より多数、生成させて、形成される個々の合金微粒子の一次粒子径を、pHが7未満である場合に比べてより一層、小さくすることを考慮すると、7〜13の範囲に調整するのが好ましい。したがって、請求項2記載の発明は、反応系のpHを7〜13に調整して還元、析出反応を行う請求項1記載の合金微粒子の製造方法である。
反応系のpHを、上記のように7〜13に調整するためのpH調整剤としては、製造される合金微粒子中に不純物として残存するため、例えば、当該合金微粒子を、導電性インクの導電性フィラーとして使用して形成する導体配線や導電膜、あるいはこれらの近傍に配置した電子部品等を劣化させるおそれのあるアルカリ金属やアルカリ土類金属等を含まず、また、合金微粒子の析出時に核成長の起点となって異常な核成長を生じさせたり、あるいは、上記と同様に、導体配線や導電膜、電子部品等を劣化させたりするおそれのある、塩素等のハロゲン元素や、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素をも含まない、アンモニアを用いるのが好ましい。したがって、請求項3記載の発明は、反応系のpHを調整するpH調整剤として、アンモニアを用いる請求項2記載の合金微粒子の製造方法である。
また、高分子分散剤としては、1つの繰り返し単位中に2つのカルボキシル基を有し、金属のイオンと錯体を形成しやすいため、反応系中に、合金微粒子の析出の起点となる錯体を、より多数、生成させて、形成される個々の合金微粒子の一次粒子径を、より一層、小さくすることができる、マレイン酸(無水マレイン酸を含む)から誘導される繰り返し単位を含む高分子分散剤を使用するのが好ましい。したがって、請求項4記載の発明は、マレイン酸から誘導される繰り返し単位を含む高分子分散剤を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の合金微粒子の製造方法である。
製造された合金微粒子を、特に、導電性インクの導電性フィラーとして、インクジェットプリンタに使用して、導体回路や導電膜を形成する場合には、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まりを防止すると共に、印刷の精度を向上し、印刷のより一層の微細化を可能とし、さらには、導電性インクを用いて形成される導体配線や導電膜の構造や導電性を均一化することを考慮して、その一次粒子径を、200nm以下とすればよい。したがって、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって製造され、一次粒子径が200nm以下であることを特徴とする合金微粒子である。
また、導体配線や導電膜の導電性を向上することを考慮すると、当該合金微粒子は、導電性に優れる銀を含んでいるのが好ましく、また、銀の性質を維持することができるように、その含有割合を50原子%以上とするのが好ましい。したがって、請求項6記載の発明は、銀の含有割合が50原子%以上である請求項5記載の合金微粒子である。
また、銀と共に上記の合金微粒子を形成する他の金属としては、酸化しにくいため良好な導電性を維持できる貴金属や、導電性に優れた銅が好ましい。したがって、請求項7記載の発明は、銀と、銀以外の他の貴金属元素および銅のうちの少なくとも1種との合金からなる請求項5または6記載の合金微粒子である。
また、インクジェットプリンタ用の導電性インク等に使用される金属コロイド溶液は、上記請求項5〜7のいずれかに記載された、一次粒子径が200nm以下である合金微粒子を含むことを特徴とするものである。すなわち、請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれかに記載の合金微粒子を含むことを特徴とする金属コロイド溶液である。
上記の金属コロイド溶液は、合金微粒子の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止して、液相還元法によって形成される合金微粒子の、形状が球状ないし粒状で揃っていると共に、粒度分布がシャープで、しかも、一次粒子径が小さいという特徴をそのまま維持するために、液相還元法によって合金微粒子を析出させた後の、液相の反応系から、析出した合金微粒子を完全に分離する工程を経ることなしに、製造するのが好ましい。したがって、請求項9記載の発明は、合金微粒子を、析出させた液相から完全に分離する工程を経ることなしに製造される請求項8記載の金属コロイド溶液である。
本発明によれば、所定の合金組成を有する合金微粒子を、ロスなく、効率よく製造することができる合金微粒子の製造方法と、当該製造方法によって製造される合金微粒子、および、導電性インク等として使用可能な金属コロイド溶液を提供することができる。
(合金微粒子の製造方法)
本発明の合金微粒子の製造方法は、活性基としてカルボキシル基を有し、かつ、分子量が4000〜30000である高分子分散剤の存在下、液相の反応系中で、2種以上の金属のイオンを、還元剤の作用によって還元して、上記2種以上の金属の合金からなる合金微粒子として析出させることを特徴とするものである。
高分子分散剤の分子量が4000〜30000に限定されるのは、以下の理由による。すなわち、分子量が4000未満である高分子分散剤は小さすぎるため、金属のイオンと錯体を形成した際に、その主鎖による立体障害によって、2種以上の金属の析出率の差をなくする効果が得られない。そのため、それぞれの金属が、酸化還元電位の相違に基づく異なる析出率でもって析出して、製造される合金微粒子の組成比が、反応系中に加える2種以上の金属のイオンの配合比率と一致しなくなる。また、そのために、所定の合金組成を有する合金微粒子を、ロスなく、効率よく製造することができなくなる。
一方、分子量が30000を超える高分子量の高分子分散剤では、析出した合金微粒子を、反応系中、および反応終了後の反応液を出発原料として製造される金属コロイド溶液中で、安定に分散させる効果が得られない。また、かかる高分子量の高分子分散剤は、例えば、合金微粒子を、導電性インクの導電性フィラーとして使用して、導体回路や導電膜を形成した際に、合金微粒子の間に介在して、その導電性を妨げるおそれもある。これらの問題を解消して、特性に優れた合金微粒子や金属コロイド溶液を製造し、導体回路や導電膜を形成するためには、前記のように、高分子分散剤の分子量は、4000〜30000である必要がある。また、合金微粒子等の特性をより一層、向上するためには、高分子分散剤の分子量は、上記の範囲内でも、特に、5000〜15000であるのが好ましい。
高分子分散剤は、活性基としてカルボキシル基を含有している必要がある。その含有量は、特に限定されないが、高分子分散剤1g中に含まれるカルボキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を示す酸価で表して、50〜900mgKOH/gであるのが好ましい。酸価がこの範囲未満では、高分子分散剤中のカルボキシル基の含有量が少なすぎるため、反応系中で、金属のイオンと錯体を形成する機能が低下する傾向がある。そのため、反応系中に、合金微粒子の析出の起点となる錯体を多数、生成させて、形成される個々の合金微粒子の一次粒子径を小さくする効果が得られず、合金微粒子の一次粒子径が大きくなる傾向を示す。また、酸価がこの範囲を超える場合には、高分子分散剤中のカルボキシル基の含有量が多すぎるため、錯体形成時の金属イオン同士の距離が近すぎて、合金微粒子の析出時に金属同士が凝集しやすくなる結果、製造される合金微粒子が粗大化するおそれがある。
なお、高分子分散剤が、金属のイオンと錯体を形成する機能は、上記酸価によって定義される、カルボキシル基の含有量のみによって規定されるものではない。先に説明したように、高分子分散剤として、無水マレイン酸を含むマレイン酸から誘導される繰り返し単位を含む高分子分散剤を使用する場合には、当該高分子分散剤が、マレイン酸から誘導される1つの繰り返し単位中に2つのカルボキシル基を有しており、このカルボキシル基の配置によって、金属のイオンと錯体を形成する機能に優れている。
そのため、例えば、ポリアクリル酸等の、1つの繰り返し単位に1つのカルボキシル基しか有しない高分子分散剤に比べて、全体でのカルボキシル基の含有量を少なくして、なおかつ、より多数のカルボキシル基を有するポリアクリル酸等とほぼ同等の、またはそれ以上の、金属のイオンと錯体を形成する機能を得ることができる。つまり、マレイン酸から誘導される繰り返し単位を含む高分子分散剤においては、カルボキシル基の含有量を、上記の範囲内でも、できるだけ少なくすることができる。その具体的な範囲は、特に限定されないが、酸価で表して、50〜200mgKOH/gであるのが好ましい。
上記の、マレイン酸から誘導される繰り返し単位を含む高分子分散剤の具体的な化合物としては、例えば、中京油脂(株)製のセルナD−735(分子量:15000、酸価:80mgKOH/g)、日本化成(株)製のクロバックス(登録商標)400−21S(分子量:9000、酸価:100〜200mgKOH/g)、クロバックス400−23S(分子量:20000、酸価:150〜180mgKOH/g)等が挙げられる。
ただし、高分子分散剤としては、ポリアクリル酸等の、1つの繰り返し単位に1つのカルボキシル基を有する高分子分散剤を使用することもできる。かかる高分子分散剤における、金属のイオンと錯体を形成する機能を、上記の、マレイン酸から誘導される繰り返し単位を含む高分子分散剤とほぼ同等程度まで向上するためには、カルボキシル基の含有量を多くすればよい。その具体的な範囲は、特に限定されないが、酸価で表して、700〜900mgKOH/gであるのが好ましい。
高分子分散剤の、液相の反応系への添加量は特に限定されないが、添加量を多くするほど、反応系中に、合金微粒子の析出の起点となる錯体を、より多数、生成させると共に、反応系の粘度を上昇させて、2種以上の金属のイオンの移動速度を遅くすることで、還元、析出速度を遅くして、形成される個々の合金微粒子の一次粒子径を小さくできる傾向があることから、目的とする一次粒子径の範囲等に応じて、好適な添加量の範囲を設定するのが好ましい。
本発明の合金微粒子の製造方法は、分散剤として、上記の高分子分散剤を使用すること以外は、従来と同様に実施することができる。すなわち、合金微粒子のもとになる2種以上の金属のイオンと、上記高分子分散剤とが錯体を形成している液相の反応系中で、上記2種以上の金属のイオンを、還元剤の作用によって還元させることで、合金微粒子が製造される。その際、本発明によれば、金属のイオンと錯体を形成する高分子分散剤の作用によって、合金微粒子のもとになる2種以上の金属のイオンの析出率をほぼ等しくして、製造される合金微粒子の組成比を、反応系中に加える2種以上の金属のイオンの配合比率と一致させることができるため、所定の合金組成を有する合金微粒子を、ロスなく、効率よく製造することができる。
析出させる2種以上の金属は限定されないが、製造される合金微粒子を、例えば、導電性インクの導電性フィラーとして使用して、導体配線や導電膜を形成する場合には、当該合金微粒子が、導電性に優れる銀を含んでいるのが好ましく、また、銀の性質を維持することができるように、その含有割合を50原子%以上とするのが好ましい。また、銀と共に合金微粒子を形成する他の金属としては、酸化しにくいため良好な導電性を維持できる、銀以外の他の貴金属、すなわち、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、およびオスミウム等や、導電性に優れた銅が好ましい。
液相の反応系は、2種以上の金属のイオン源となる、それぞれの金属を含む金属化合物と、前記の高分子分散剤と、還元剤とを、各成分に共通の溶媒、特に水に溶解して調製される。そのため、金属のイオン源となる金属化合物としては、水等の溶媒に可溶性の種々の金属化合物が、いずれも使用可能である。ただし、金属化合物は、可能であれば、合金微粒子の析出時に核成長の起点となって異常な核成長を生じさせたり、あるいは、導体配線や導電膜、電子部品等を劣化させたりするおそれのある、塩素等のハロゲン元素や、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まないのが好ましい。これにより、その形状がより一層、球状ないし粒状で揃っていると共に、粒度分布がシャープで、しかも、一次粒子径が小さい合金微粒子を製造することができる。また、合金微粒子を用いて、長期に亘って良好な導電性を維持できると共に、電子部品等を劣化させない胴体配線や導電膜を形成することができる。
金属のイオン源として好適な金属化合物としては、これに限定されないが、例えば、銀の場合は、硝酸銀(I)〔AgNO〕やメタンスルホン酸銀〔CHSOAg〕等が挙げられ、特に硝酸銀(I)が好ましい。また、白金の場合は、ジニトロジアンミン白金(II)〔Pt(NO(NH〕やヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物〔H(PtCl)・6HO〕等が挙げられ、特にジニトロジアンミン白金(II)が好ましい。金の場合は、テトラクロロ金(III)酸四水和物〔HAuCl・4HO〕等が挙げられる。パラジウムの場合は、硝酸パラジウム(II)硝酸溶液〔Pd(NO)/HO〕や塩化パラジウム(II)溶液〔PdCl〕等が挙げられ、特に硝酸パラジウム(II)硝酸溶液が好ましい。イリジウムの場合は、ヘキサクロロイリジウム(III)酸六水和物〔2(IrCl)・6HO〕、ロジウムの場合は、塩化ロジウム(III)溶液〔RhCl・3HO〕、ルテニウムの場合は、硝酸ルテニウム(III)溶液〔Ru(NO)〕等が挙げられる。さらに、銅の場合は、硝酸銅(II)〔Cu(NO)〕、硫酸銅(II)五水和物〔CuSO・5HO〕等が挙げられ、特に硝酸銅(II)が好ましい。
還元剤としては、液相の反応系中で、2種以上の金属のイオンを還元することで、合金微粒子として析出させることができる種々の還元剤が、いずれも使用可能である。かかる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、遷移金属元素のイオン(三価のチタンイオン、二価のコバルトイオン等)が挙げられる。ただし、析出させる合金微粒子を、例えば、インクジェットプリンタ用の導電性インクの導電性フィラー等として使用するべく、その一次粒子径をできるだけ小さくするためには、2種以上の金属のイオンの還元、析出速度を遅くするのが有効であり、還元、析出速度を遅くするためには、できるだけ還元力の弱い還元剤を選択して使用することが好ましい。
還元力の弱い還元剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールや、あるいはアスコルビン酸等を挙げることができる他、エチレングリコール、グルタチオン、有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)、還元性糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオース等)、および糖アルコール類(ソルビトール等)等を挙げることができ、中でも、還元性糖類や、その誘導体としての糖アルコール類が好ましい。
還元剤の、液相の反応系中での濃度は特に限定されないが、一般に、還元剤の濃度が低いほど、2種以上の金属のイオンの還元、析出速度を遅くして、形成される個々の合金微粒子の一次粒子径を小さくできる傾向があることから、目的とする一次粒子径の範囲等に応じて、好適な濃度の範囲を設定するのが好ましい。また、液相の反応系のpHは、できるだけ一次粒子径の小さい合金微粒子を製造することを考慮すると、先に説明したように、7〜13であるのが好ましい。反応系のpHを上記の範囲に調整するためのpH調整剤としては、これも先に説明したように、アルカリ金属やアルカリ土類金属、塩素等のハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まないアンモニアが好ましい。
(合金微粒子)
上記の製造方法で製造される合金微粒子を、特に、導電性インクの導電性フィラーとして、インクジェットプリンタに使用して、導体回路や導電膜を形成する場合には、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まりを防止すると共に、印刷の精度を向上し、印刷のより一層の微細化を可能とし、さらには、導電性インクを用いて形成される導体配線や導電膜の構造や導電性を均一化することを考慮して、その一次粒子径を、200nm以下とすればよい。また、合金微粒子の一次粒子径の下限値については、特に限定されず、理論上、金属としての導電性を有しうる最小の粒径のものまで使用可能であるが、実用上は、1nm以上であるのが好ましい。一次粒子径を上記の範囲に調整するためには、先に説明したように、液相の反応系のpHその他の製造条件を調整すればよい。
また、合金微粒子は、導体配線や導電膜の導電性を向上することを考慮すると、導電性に優れる銀を含んでいるのが好ましく、また、銀の性質を維持することができるように、その含有割合を50原子%以上とするのが好ましい。また、銀と共に合金微粒子を形成する他の金属としては、酸化しにくいため良好な導電性を維持できる貴金属や、導電性に優れた銅が好ましい。また、合金微粒子の組成比を、上記のように調整するためには、先に説明したように、本発明の製造方法を実施する際に、反応系中に加える2種以上の金属のイオンの配合比率を、合金微粒子の組成比と一致させておけばよい。
本発明の製造方法により、液相の反応系中に析出させた、本発明の合金微粒子は、その後、従来同様に、ロ別、洗浄、乾燥、解砕等の各工程を経て粉末状として、例えば導電性インクや導電性ペースト等の製造に、導電性フィラーとして使用することができる。そして、導電性インクを、インクジェットプリンタ等に使用したり、導電性ペーストを、スクリーン印刷等に使用したりして、導体配線や導電膜を形成することができる。
(金属コロイド溶液)
インクジェットプリンタ用の導電性インクとして使用可能な、本発明の金属コロイド溶液は、上記の、一次粒子径が200nm以下である合金微粒子を含むことを特徴とするものである。かかる本発明の金属コロイド溶液を使用すれば、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まりを防止すると共に、印刷の精度を向上し、印刷のより一層の微細化を可能とし、さらには、導電性インクを用いて形成される導体配線や導電膜の構造や導電性を均一化することが可能となる。また、合金微粒子の一次粒子径の下限値については、特に限定されず、理論上、金属としての導電性を有しうる最小の粒径のものまで使用可能であるが、実用上は、1nm以上であるのが好ましい。
また、合金微粒子は、本発明の金属コロイド溶液を用いて形成する導体配線や導電膜の導電性を向上することを考慮すると、導電性に優れる銀を含んでいるのが好ましく、また、銀の性質を維持することができるように、その含有割合を50原子%以上とするのが好ましい。また、銀と共に合金微粒子を形成する他の金属としては、酸化しにくいため良好な導電性を維持できる貴金属や、導電性に優れた銅が好ましい。また、合金微粒子の組成比を、上記のように調整するためには、先に説明したように、本発明の製造方法を実施する際に、反応系中に加える2種以上の金属のイオンの配合比率を、合金微粒子の組成比と一致させておけばよい。
本発明の金属コロイド溶液は、本発明の製造方法で製造した、上記の特性を有する合金微粒子を、分散媒としての、水、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒等に分散させたものである。後述するように、本発明の金属コロイド溶液が、合金微粒子を、析出させた液相から完全に分離する工程を経ることなしに製造される場合は、液相中に、合金微粒子の製造時に使用した、活性基としてカルボキシル基を有し、かつ、分子量が4000〜30000である高分子分散剤が含まれているため、殆ど必要ないが、合金微粒子を、従来同様に、一旦、ロ別、洗浄、乾燥、解砕等の各工程を経て粉末状とした後、分散媒中に分散させて金属コロイド溶液を製造する場合は、上記の高分子分散剤の少なくとも一部が、洗浄工程で失われることもあるので、その場合には、必要に応じて、失われた分の高分子分散剤に代わって、合金微粒子の分散剤、および金属コロイド溶液の粘度調整剤として機能する第2の分散剤を、補充の意味で、金属コロイド溶液に添加してもよい。
かかる第2の分散剤としては、水や混合溶媒に対して良好な溶解性を有すると共に、上記のように、合金微粒子の分散剤、および金属コロイド溶液の粘度調整剤として機能しうる、種々の分散剤が、いずれも使用可能であり、特に、分子量が200〜30000である分散剤が好適に使用される。分子量がこの範囲内にある第2の分散剤は、いわゆる、ループ−トレイン−テイル構造をとりやすいため、合金微粒子の分散性を向上する効果に優れる上、金属コロイド溶液を用いて形成した導体配線や導電膜において、合金微粒子間に介在して導電性を妨げるおそれもない。
また、第2の分散剤としては、導体配線や導電膜、あるいは、これらの近傍に配置された電子部品等が劣化するのを防止することを考慮すると、塩素等のハロゲン元素や、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まない有機化合物であるのが好ましい。これらの条件を満足する、好適な第2の分散剤としては、たとえば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤や、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の、分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、あるいは、1分子中に、ポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体(以下「PEI−PO共重合体」とする)等の、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤は、金属コロイド溶液の粘度調整剤としても機能しうる。
第2の分散剤の配合割合は、合金微粒子100重量部あたり、2〜30重量部であるのが好ましい。配合割合が2重量部未満では、第2の分散剤を添加したことによる、合金微粒子を、金属コロイド溶液中に、均一に分散させる効果が十分に得られないおそれがあり、逆に、30重量部を超える場合には、粘度が高くなりすぎて、各種の印刷方法や塗布方法用として適した金属コロイド溶液が得られないおそれがある。また、過剰の第2の分散剤が、金属コロイド溶液を用いて形成した導体配線や導電膜中で、合金微粒子の間に介在して、その導電性を妨げるおそれもある。
なお、第2の分散剤の分子量や配合割合は、本発明の金属コロイド溶液を用いて、導体配線や導電膜を形成する際に採用する印刷方法、塗布方法に適した、最適な物性を有するように、上記の範囲内から、それぞれの印刷方法、塗布方法に適したより好適な範囲を選択するのが好ましい。また、第2の分散剤の種類も、本発明の金属コロイド溶液を用いて、導体配線や導電膜を形成する際に採用する印刷方法、塗布方法に適した、最適な物性を有するように、各種の分散剤の中から、好適なものを選択して使用するのが好ましい。
水溶性有機溶媒としては、種々の、水溶性を有する有機溶媒が、いずれも使用可能である。水溶性有機溶媒は、20℃での誘電率が3以上であるのが好ましい。かかる水溶性有機溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−エトキシエタノール、グリセリン、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等の水溶性の含窒素有機化合物類;および酢酸エチル等が挙げられる。水溶性有機溶媒は、それぞれ1種単独で使用できる他、2種以上を併用することもできる。
本発明では、金属コロイド溶液を用いて、導体配線や導電膜を形成するための、印刷方法、塗布方法に最適な物性を有するように、分散媒として、水と、水溶性有機溶媒とを用い、その配合割合や、水溶性有機溶媒の種類、あるいは、2種以上の水溶性有機溶媒を併用する場合は、その組み合わせ等が適宜、選択される。たとえば、スピンコート塗布法による導電膜の形成においては、金属コロイド溶液が、低粘度であることが求められ、逆に、スクリーン印刷法やディスペンサー塗布法による導体配線の製造では、金属コロイド溶液が、高粘度であることが求められる。また、スクリーン印刷法では、簡単に乾燥しないように、金属コロイド溶液の蒸気圧が低いことが求められる。
そこで、これらの物性を満足するために、水と、水溶性有機溶媒との配合割合や、水溶性有機溶媒の種類、2種以上の水溶性有機溶媒を併用する場合の組み合わせ等が選択される。また、それとともに、先に述べた、合金微粒子の一次粒径や配合割合、分散剤の分子量や配合割合、分散剤の種類等も、選択される。
本発明の金属コロイド溶液は、従来同様に、合金微粒子を、ロ別、洗浄、乾燥、解砕等の各工程を経て粉末状とした後、前記のように、必要に応じて、第2の分散剤と共に、分散媒中に分散させて製造することができる。しかし、本発明の金属コロイド溶液は、水中で、2種以上の金属のイオンを還元して合金微粒子を析出させた後の、液相の反応系から、析出させた合金微粒子を完全に分離する工程を経ることなしに、製造するのがより好ましい。
具体的には、合金微粒子を析出させた後の、液相の反応系を遠心分離して、合金微粒子より軽い不純物を除去したり、水洗して水溶性の不純物を除去したりし、次いで、例えば、ロータリーエバポレータを用いたり、加熱したり、あるいは、再び遠心分離して上澄み液を除去したりすることで、所定の濃度に濃縮した後、所定量の水溶性有機溶媒を加えることによって、本発明の金属コロイド溶液が製造される。この際、先に説明したように、反応系中には、合金微粒子の製造に使用した、活性基としてカルボキシル基を有し、かつ、分子量が4000〜30000である高分子分散剤が含まれているため、通常は必要ないが、場合によっては、かかる高分子分散剤の機能を補助するために、前記第2の分散剤を併用してもよい。
上記の工程を経て製造される金属コロイド溶液は、合金微粒子の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止して、液相還元法によって形成される合金微粒子の、形状が球状ないし粒状で揃っていると共に、粒度分布がシャープで、しかも、一次粒子径が小さいという特徴をそのまま維持することができる。したがって、上記の金属コロイド溶液は、特に、長期間に亘って、合金微粒子を安定に分散させることができる。また、例えば、インクジェットプリンタ用の導電性インクとして使用した際に、インクジェットプリンタのノズルでの目詰まりを防止すると共に、印刷の精度を向上し、印刷のより一層の微細化を可能とし、さらには、導電性インクを用いて形成される導体配線や導電膜の構造や導電性を均一化することができる。
〈実施例1〉
2種の金属化合物としての、硝酸銀(I)と硝酸パラジウム(II)硝酸溶液とを純水に溶解させ、アンモニア水を加えて液のpHを10に調整し、次いで、高分子分散剤としてのポリアクリル酸〔和光純薬工業(株)製、分子量:5000、酸価:750mgKOH/g〕を加えて完全に溶解させた後、還元剤としてのアスコルビン酸〔和光純薬工業(株)製〕を純水に溶解した溶液を添加して、液相の反応系を調製した。反応系における、上記各成分の濃度は、硝酸銀 (I):25g/リットル、硝酸パラジウム(II):3.8g/リットル、ポリアクリル酸:40g/リットル、アスコルビン酸:26g/リットルとした。また、銀イオンとパラジウムイオンとの配合比率(原子数比)は90:10であった。
次に、この反応系を、かく拌速度500rpmでかく拌しながら、40℃で120分間、反応させて、合金微粒子をコロイド状に析出させ、遠心分離して合金微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、次いで純水を加えて洗浄することで、水溶性の不純物を除去した後、合金微粒子の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製のナノトラック(登録商標)粒度分布測定装置UPA−EX150〕を用いて測定したところ、26nmの位置に鋭いピークが見られた。
次に、上記の反応系を、高温槽中で100℃に加熱して乾燥させて、合金微粒子を得、この合金微粒子を、誘導結合高周波プラズマ発光分析装置〔(株)リガク製のCIROS−120〕を用いて分析したところ、銀とパラジウムを原子数比で90:10の割合で含む合金からなることが判った。そして、このことから、実施例1では、反応系中に加えた銀イオンおよびパラジウムイオンの配合比率と一致する合金組成を有する合金微粒子を製造できることが確認された。
〈実施例2〜5〉
表1に示すように、高分子分散剤としてのポリアクリル酸の濃度を20g/リットルとするか、反応系のpHを6.5または9としたこと以外は実施例1と同様にして、液相の反応系中に、合金微粒子をコロイド状に析出させた。そして、実施例1と同様にして、合金微粒子の粒度分布を測定すると共に、組成を分析したところ、表1にみるように、いずれの実施例においても、反応系中に加えた銀イオンおよびパラジウムイオンの配合比率と一致する合金組成を有する合金微粒子を製造できることが確認された。また、ポリアクリル酸の濃度が同じ実施例1、3、5を比較すると、pHを7〜13とすることで、合金微粒子の一次粒子径を200nm以下の範囲にできることが判った。
〈比較例1〉
ポリアクリル酸に代えて、活性基としてカルボキシル基を有するものの、低分子量化合物であるクエン酸〔分子量210〕を分散剤として使用したこと以外は実施例1と同様にして、液相の反応系中に、合金微粒子をコロイド状に析出させた。そして、実施例1と同様にして、合金微粒子の粒度分布を測定すると共に、組成を分析したところ、表1にみるように、合金微粒子の合金組成は、反応系中に加えた銀イオンおよびパラジウムイオンの配合比率からずれてしまった。また、合金微粒子の一次粒子径は2500nmという著しく大きいものとなってしまった。以上の結果を表1にまとめた。
Figure 2011074496
〈実施例6、7〉
2種の金属化合物としての、硝酸銀(I)と硝酸パラジウム(II)硝酸溶液とを純水に溶解させ、アンモニア水を加えて液のpHを10に調整し、次いで、高分子分散剤としてのマレイン酸共重合体〔中京油脂(株)製のセルナD−735、分子量:15000、酸価:80mgKOH/g〕を加えて完全に溶解させた後、還元剤としてのガラクトース〔和光純薬工業(株)製〕を純水に溶解した溶液を添加して、液相の反応系を調製した。反応系における、上記各成分の濃度は、硝酸銀(I):25g/リットル、硝酸パラジウム(II):1.9g/リットル、マレイン酸共重合体:20g/リットル(実施例6)、5g/リットル(実施例7)、ガラクトース:50g/リットルとした。また、銀イオンとパラジウムイオンとの配合比率(原子数比)は95:5であった。
次に、この反応系を、かく拌速度500rpmでかく拌しながら、80℃で20分間、反応させて、合金微粒子をコロイド状に析出させ、遠心分離して合金微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、次いで純水を加えて洗浄することで、水溶性の不純物を除去した後、合金微粒子の粒度分布を、前記の粒度分布測定装置を用いて測定したところ、実施例6は23nmの位置に、また、実施例7は6nmの位置に、それぞれ鋭いピークが見られた。
次に、上記の反応系を、高温槽中で100℃に加熱して乾燥させて、合金微粒子を得、この合金微粒子を、前記の誘導結合高周波プラズマ発光分析装置を用いて分析したところ、実施例6、7共に、銀とパラジウムを原子数比で95:5の割合で含む合金からなることが判った。そして、このことから、実施例6、7では、反応系中に加えた銀イオンおよびパラジウムイオンの配合比率と一致する合金組成を有する合金微粒子を製造できることが確認された。
〈実施例8、9〉
マレイン酸共重合体として、日本化成(株)製のクロバックス400−21S(分子量:9000、酸価:100〜200mgKOH/g)を使用すると共に、その濃度を20g/リットル(実施例8)、または10g/リットル(実施例9)とし、かつ液のpHを9としたこと以外は実施例6、7と同様にして、液相の反応系中に、合金微粒子をコロイド状に析出させた。そして、実施例6、7と同様にして、合金微粒子の粒度分布を測定したところ、実施例8は24nmの位置に、また、実施例9は180nmの位置に、それぞれ鋭いピークが見られた。
また、実施例6、7と同様にして、合金微粒子の組成を分析したところ、実施例8、9共に、銀とパラジウムを原子数比で95:5の割合で含む合金からなることが判った。そして、このことから、実施例8、9においても、反応系中に加えた銀イオンおよびパラジウムイオンの配合比率と一致する合金組成を有する合金微粒子を製造できることが確認された。以上の結果を表2にまとめた。
Figure 2011074496
〈実施例10、11〉
2種の金属化合物としての、硝酸銀(I)とテトラクロロ金(III)酸四水和物とを純水に溶解させ、アンモニア水を加えて液のpHを8(実施例10)、または10(実施例11)に調整し、次いで、高分子分散剤としてのポリアクリル酸〔和光純薬工業(株)製、分子量:12000、酸価:750mgKOH/g〕を加えて完全に溶解させた後、還元剤としてのエチレングリコール〔和光純薬工業(株)製〕を純水に溶解した溶液を添加して、液相の反応系を調製した。反応系における、上記各成分の濃度は、硝酸銀(I):50g/リットル、テトラクロロ金(III)酸:54g/リットル、ポリアクリル酸:15g/リットル、エチレングリコール:15g/リットルとした。また、銀イオンと金イオンとの配合比率(原子数比)は70:30であった。
次に、この反応系を、かく拌速度300rpmでかく拌しながら、60℃で180分間、反応させて、合金微粒子をコロイド状に析出させ、遠心分離して合金微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、次いで純水を加えて洗浄することで、水溶性の不純物を除去した後、合金微粒子の粒度分布を、前記の粒度分布測定装置を用いて測定したところ、実施例10は4nmの位置に、また、実施例11は65nmの位置に、それぞれ鋭いピークが見られた。
次に、上記の反応系を、高温槽中で100℃に加熱して乾燥させて、合金微粒子を得、この合金微粒子を、前記の誘導結合高周波プラズマ発光分析装置を用いて分析したところ、実施例10、11共に、銀と金を原子数比で70:30の割合で含む合金からなることが判った。そして、このことから、実施例10、11では、反応系中に加えた銀イオンおよび金イオンの配合比率と一致する合金組成を有する合金微粒子を製造できることが確認された。以上の結果を表3にまとめた。
Figure 2011074496
〈実施例12、13〉
2種の金属化合物としての、硝酸銀(I)と硝酸銅(II)とを純水に溶解させ、アンモニア水を加えて液のpHを7(実施例12)、または12(実施例13)に調整し、次いで、高分子分散剤としてのポリアクリル酸〔和光純薬工業(株)製、分子量:8000、酸価:750mgKOH/g〕を加えて完全に溶解させた後、還元剤としてのヒドラジン〔和光純薬工業(株)製〕を純水に溶解した溶液を添加して、液相の反応系を調製した。反応系における、上記各成分の濃度は、硝酸銀(I):13g/リットル、硝酸銅(II):16g/リットル、ポリアクリル酸:5g/リットル、ヒドラジン:5g/リットルとした。また、銀イオンと銅イオンとの配合比率(原子数比)は55:45であった。
次に、この反応系を、かく拌速度300rpmでかく拌しながら、10℃で10分間、反応させて、合金微粒子をコロイド状に析出させ、遠心分離して合金微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、次いで純水を加えて洗浄することで、水溶性の不純物を除去した後、合金微粒子の粒度分布を、前記の粒度分布測定装置を用いて測定したところ、実施例10は12nmの位置に、また、実施例11は150nmの位置に、それぞれ鋭いピークが見られた。
次に、上記の反応系を、高温槽中で100℃に加熱して乾燥させて、合金微粒子を得、この合金微粒子を、前記の誘導結合高周波プラズマ発光分析装置を用いて分析したところ、実施例12、13共に、銀と銅を原子数比で55:45の割合で含む合金からなることが判った。そして、このことから、実施例12、13では、反応系中に加えた銀イオンおよび銅イオンの配合比率と一致する合金組成を有する合金微粒子を製造できることが確認された。
〈比較例2〉
ポリアクリル酸に代えて、活性基としてカルボキシル基を有しない高分子であるポリビニルアルコール〔分子量2000〕を分散剤として使用すると共に、水酸化ナトリウムを加えて液のpHを7に調整したこと以外は実施例12、13と同様にして、液相の反応系中に、合金微粒子をコロイド状に析出させた。そして、実施例12、13と同様にして、合金微粒子の粒度分布を測定すると共に、組成を分析したところ、表4にみるように、合金微粒子の合金組成は、反応系中に加えた銀イオンおよび銅イオンの配合比率からずれてしまった。以上の結果を表4にまとめた。
Figure 2011074496

Claims (9)

  1. 2種以上の金属のイオンを、液相の反応系中で、還元剤の作用によって還元して、上記2種以上の金属の合金からなる合金微粒子として析出させる合金微粒子の製造方法であって、活性基としてカルボキシル基を有し、かつ、分子量が4000〜30000である高分子分散剤の存在下で、上記還元、析出反応を行うことを特徴とする合金微粒子の製造方法。
  2. 反応系のpHを7〜13に調整して還元、析出反応を行う請求項1記載の合金微粒子の製造方法。
  3. 反応系のpHを調整するpH調整剤として、アンモニアを用いる請求項2記載の合金微粒子の製造方法。
  4. マレイン酸から誘導される繰り返し単位を含む高分子分散剤を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の合金微粒子の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって製造され、一次粒子径が200nm以下であることを特徴とする合金微粒子。
  6. 銀の含有割合が50原子%以上である請求項5記載の合金微粒子。
  7. 銀と、銀以外の他の貴金属元素および銅のうちの少なくとも1種との合金からなる請求項5または6記載の合金微粒子。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の合金微粒子を含むことを特徴とする金属コロイド溶液。
  9. 合金微粒子を、析出させた液相から完全に分離する工程を経ることなしに製造される請求項8記載の金属コロイド溶液。
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