JP2011072890A - 脱酸素剤、脱酸素剤の製造方法及び脱酸素剤包装体 - Google Patents

脱酸素剤、脱酸素剤の製造方法及び脱酸素剤包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】既存の自動充填包装機等の設備を使用しながら、製造時の自動充填包装を円滑に行え、且つ、酸素吸収性能を向上させることができる脱酸素剤を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、鉄粉と、アルカリ金属塩と、保水材と、活性炭とを含み、一定の水分を含む粉体状の脱酸素剤であって、当該活性炭として、飽和量の水分を含む活性炭を用いることを特徴とする脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法を採用した。
【選択図】なし

Description

本件発明は、脱酸素剤に関し、特に、酸素吸収性能に優れると共に、取り扱い性に優れた脱酸素剤に関する。
食品、薬品、電子機器、電気器具等の商品を包装材内に封入して保存する際、保存雰囲気に含まれる酸素が、これらの保存品を酸化させたり、カビの発生を誘発し、品質の低下を招くおそれがある。そこで、従来、酸化防止、カビ等の発生防止のために無酸素状態での保管が好ましい食品や薬剤等において、脱酸素剤がそれらの包装品内に同封されて利用されている。
脱酸素剤は、無機系材料や有機系材料からなり、酸化還元反応を利用して雰囲気中に存在する酸素を吸収することにより、当該雰囲気中の酸素を除去するものである。脱酸素剤は、例えば、有機系材料や鉄粉系等の無機系材料からなり、粉体、錠剤、樹脂等の形態で使用され、所定の酸素透過性を備える包装材に封入された脱酸素剤包装体として利用されている。そのなかでも、鉄粉等の無機系材料を主成分とする粉体の脱酸素剤を包装材に封入した脱酸素剤包装体は、酸素吸収性能、経済性の点で優れ、広く使用されている。
粉体状の脱酸素剤包装体は、特許文献1等に開示されているように、自動充填包装機を用いて、包装材に粉体を封入して量産されている。自動充填包装機を用いて粉体状の脱酸素剤を包装材に充填する際、脱酸素剤が飛散することにより、その後の封入時に包装材のシール部に脱酸素剤の粉末が挟み込まれてしまい、外観を損ねたり、シール性を低下させて不良品が発生する等の事態が生じる。また、飛散した脱酸素剤が自動充填包装機の各種部品に付着するので、メンテナンスコストが掛かっていた。
このような課題に対し、特許文献2では、鉄系脱酸素剤用組成物の漏洩を視覚認識装置を使用して画像処理し、あらかじめ記憶させた正常な画像と比較して包装の不良を検出するという脱酸素剤の包装不良を検出する方法が提案されている。
特開2001−225877号公報 特開平8−40422号公報
上述のような自動充填包装機を使用した脱酸素剤包装体の生産において、粉体の飛散を防いで製造効率を向上させるに際し、特許文献2に開示されるような製造装置による課題解決方法ではなく、既存の自動充填包装機等の設備を使用しながら、脱酸素剤の充填包装時における粉末飛散を防止し、自動充填包装が円滑に行える技術が望まれていた。
このような課題に対し、特許文献1の鉄粉系脱酸素剤包装体では、還元鉄粉を自動充填包装時の脱酸素剤の飛散を抑えるために、200メッシュ標準篩をパスする微粉状還元鉄粉の還元鉄粉全量に対する占有率を5重量%以下とする方法を採用しているが、還元鉄粉の選別を行うコストが掛かるうえに、還元鉄粉以外の脱酸素剤の構成材料の飛散を防止することはできない。また、脱酸素剤の小型化や、酸素吸収量の向上等、脱酸素剤の酸素吸収能力の更なる向上が望まれていた。
そこで、本件発明は、既存の自動充填包装機等の設備を使用しながら、製造時の自動充填包装を円滑に行え、且つ、酸素吸収能力を向上させることができる脱酸素剤を提供することを目的とする。
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の脱酸素剤、脱酸素剤包装体及び脱酸素剤の製造方法を採用することで上記課題を達成するに到った。
本件発明に係る脱酸素剤は、鉄粉と、アルカリ金属塩と、保水材と、活性炭とを含み、一定の水分を含む粉体状の脱酸素剤であって、当該活性炭として、飽和量の水分を含む活性炭を用いることを特徴とする。
本件発明に係る脱酸素剤は、前記鉄粉を100重量部としたとき、前記飽和量の水分を含む活性炭を1重量部〜6重量部含むことがより好ましい。
本件発明に係る脱酸素剤は、前記活性炭は、レーザー回折式粒度分布測定法により得られる50%粒子径が100μm以下であることがより好ましい。
本件発明に係る脱酸素剤は、前記アルカリ金属塩は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムであることがより好ましい。
本件発明に係る脱酸素剤は、前記鉄粉100重量部に対して水を15重量部〜35重量部含ませるものであることがより好ましい。
本件発明に係る脱酸素剤は、より好ましくは、25℃における120時間後の当該脱酸素剤の単位重量あたりの酸素吸収量が90cm/g〜120cm/gである。
本件発明に係る脱酸素剤の製造方法は、上述の脱酸素剤の製造方法であって、鉄粉と、保水材と、飽和量の水分を含ませた活性炭と、アルカリ金属塩とを混合した後、水を添加し、混合して脱酸素剤を得ることを特徴とする。
本件発明に係る脱酸素剤包装体は、上述の脱酸素剤を、酸素透過性の包装材により包装したことを特徴とする。
本件発明に係る脱酸素剤は、アルカリ金属塩と、保水材と、活性炭とを含み、一定の水分を含む粉体状の鉄系の脱酸素剤であり、当該活性炭として、飽和量の水分を含む活性炭を用いることにより、十分な含水量を有して酸素吸収性能を向上できる。また、本件発明に係る脱酸素剤は、自動充填包装時の当該脱酸素剤の飛散を顕著に抑制できる。さらに、本件発明に係る脱酸素剤は、自動充填包装機を用いて脱酸素剤包装体を製造する際に、粉体としての流動性を自動充填包装可能なレベルに保つことができ、且つ、脱酸素剤の飛散に伴う不良品の発生を抑えるとともに、製造装置や製造環境のメンテナンスコストを抑えることができる。そして、本件発明に係る脱酸素剤の製造方法は、脱酸素剤が自動充填包装可能なレベルの流動性を備えながら、その飛散を顕著に抑制するので、製造ロスを抑制し、酸素吸収能力及び外観に優れた高品質の脱酸素剤を効率よく製造することができる。
以下、本発明に係る脱酸素剤の好ましい実施の形態を説明する。
本件発明に係る脱酸素剤: 本件発明に係る脱酸素剤は、鉄粉と、アルカリ金属塩と、保水材と、活性炭とを含み、一定の水分を含む粉体状の脱酸素剤である。そして、当該活性炭として、飽和量の水分を含む活性炭を用いることを特徴とするものである。以下、本件発明に係る脱酸素剤に含まれる材料について説明する。
鉄粉は、脱酸素剤の主材料であり、その酸化作用を利用して雰囲気中の酸素を吸収するものである。この鉄粉は公知の鉄粉でよく、例えば、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等が挙げられるが、酸素吸収能力の点で、還元鉄粉が最も好ましく用いられる。
アルカリ金属塩は、鉄の酸化反応を生じさせるために添加するものであり、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられる。
活性炭は、鉄とアルカリ金属塩との酸化反応を促進させるために用いるものである。そして、本件発明に係る脱酸素剤では、飽和量の水分を含有する活性炭を用いる。ここでいう飽和量の水分を含有する活性炭とは、活性炭が粉体としての形態を維持した範囲で、最大限の水を含んだ状態を言う。活性炭の含水量が飽和量を上まわると、流動性が低下して、粉体とは言えず、他の成分と混合して粉状の脱酸素剤を得るのに適さない。一方、活性炭の含水量が飽和量を下回ると、脱酸素剤の調整時及び自動充填包装時の発塵性が問題となる。なお、活性炭の飽和含水量は、活性炭の種類によって異なるので明記できないが、目安として活性炭の乾燥減量を示しておく。乾燥減量は、JIS K1474に示される測定方法によって測定した値であり、乾燥減量が40%〜65%となる含水量の活性炭を用いることが好ましい。より好ましくは、乾燥減量で、45%〜62%となる含水量の活性炭を用いるとより好ましい。
活性炭の種類は特に限定を要しないが、例えば、石炭、おが屑、やし殻等を原料として製造された公知の活性炭が使用できる。また、活性炭は、レーザー回折式粒度分布測定法により得られる50%粒子径が100μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒径が100μm以下の微粉の活性炭を使えば、鉄粉の周囲に活性炭が付着しやすくなり、酸素吸収反応性が向上する。そして、微粉の活性炭は、飛散しやすいが、飽和量の水分を含ませた活性炭を使用することにより、飛散を抑制し、取り扱い性に優れ、微粉の活性炭が使用可能となる。なお、活性炭の平均粒径は5μm〜50μmがより好ましい。
この活性炭に予め飽和量の水分を含有させたものを脱酸素剤の他の材料と混合することにより、脱酸素剤の飛散を防止することができる。すなわち、水分を含まない活性炭あるいは飽和量に達しない活性炭を、アルカリ金属塩等の構成材料とともに混合した後、必要な水分を添加すると脱酸素剤の流動性が損なわれる。しかし、予め、飽和量の水分を含ませた活性炭を用いることにより、得られる脱酸素剤全体に含まれる水分量を増量しても、脱酸素剤の流動性が低下しにくい。また、予め飽和量の水分を含有する活性炭を用いることにより、他の脱酸素剤構成材料との混合時における発塵性が抑えられるという効果を奏するのである。
なお、活性炭の含有量は、鉄粉を100重量部としたとき、飽和量の水分を含む活性炭を1重量部〜6重量部含むものが好ましい。飽和量の水分を含む活性炭の含有量が、1重量部より少ない場合、酸素吸収能力が低下する。一方、飽和量の水分を含む活性炭の含有量が、6重量部を超える量を添加すると、酸化反応が速すぎて実用的に好ましい範囲の酸素吸収能力は得られない。なお、飽和量の水分を含む活性炭の含有量のより好ましい範囲は、鉄粉を100重量部としたとき、2重量部〜5重量部である。
鉄粉を用いる脱酸素剤において、酸素吸収能力を向上させるためには、水を十分に含ませることが重要であるが、脱酸素剤の構成材料として水を添加する量を増やすと、脱酸素剤包装体外部に水分が流出して実用に耐えない他、脱酸素剤の流動性が低下し、自動充填包装機による充填包装が困難となる。そこで、保水材を用いる。
保水材は、脱酸素剤の酸素吸収反応に必要な水を担持するものである。脱酸素剤の酸素吸収反応には水が重要であり、脱酸素剤の構成材料として水を含むものの他、食品等の保存品に含まれる水分を利用する場合がある。本件発明に係る脱酸素剤は、一定の水分を含むものであり、当該脱酸素剤に含まれる水分を保水材で保水することにより、酸素吸収反応に必要な水分量を確保することができる。また、保水材を用いることにより粉体状の脱酸素剤とすることができる。
保水材としては、ゼオライト、バーミキュライト等が挙げられる。本件発明に係る脱酸素剤は、使い捨てカイロにも適用可能な技術であり、使い捨てカイロに適用する場合の保水材は、バーミキュライトが好ましい。
そして、脱酸素剤は、活性炭に含ませた水分以外に、さらに水を含む。すなわち、活性炭に含ませた水分以外に、鉄粉100重量部に対して水を15重量部〜35重量部含ませるのが好ましい。鉄粉100重量部に対する水の量をこの範囲にすると、酸素吸収速度、酸素吸収能力の持続性等と脱酸素剤の流動性とのバランスが良い。
以上に説明した鉄粉、アルカリ金属塩、活性炭、保水材とを含む脱酸素剤を採用することにより、酸素吸収性能が向上するとともに、脱酸素剤包装体の自動充填包装時の脱酸素剤の飛散を防ぐことができる。
この脱酸素剤の酸素吸収能力の指標として、単位重量あたりの酸素吸収量を示すことができる。本件発明に係る脱酸素剤は、25℃、120時間後における当該脱酸素剤の単位重量あたりの酸素吸収量が90ml/g〜120ml/gである。単位重量あたりの酸素吸収量がこのような範囲であると、酸素吸収性に優れ、高品質な脱酸素剤が提供できる。本件発明者は、飽和量の水分を含む活性炭を使用することにより、製造過程における発塵性を抑えられるだけでなく、単位重量あたりの酸素吸収量が格段に向上することを見出したのである。
すなわち、後述する通り、本件発明者は、予め飽和量の水分を含ませた活性炭を使用することにより、脱酸素剤包装体の製造過程における脱酸素剤の飛散を防止することを見出したが、さらに、予め飽和量の水分を含ませた活性炭を使用することにより、脱酸素剤全体の水の添加量を増やしても脱酸素剤の流動性が低下することが無いという効果も同時に得られることを見出したのである。従来、鉄系の脱酸素剤では、酸素吸収性能を高めるためには、含水率を高めることが有効であることは認識されていたが、その一方で、含水率を高めると、脱酸素剤包装体を得るための自動充填包装機を使用不可能なレベルに脱酸素剤の流動性が低下し、量産化が出来なかった。そのため、従来の脱酸素剤は、酸素吸収性能と、自動充填包装が可能なレベルの流動性とのバランスを考慮して含水率を抑えていた。しかし、本件発明に係る脱酸素剤では、予め飽和量の水分を含ませた活性炭を使用することにより、流動性の低下を抑えて含水率を上げることができ、酸素吸収性能を向上させることを実現したのである。
また、予め飽和量の水分を含ませた活性炭を使用することにより、鉄の酸化反応を促進することができたと考えられる。すなわち、活性炭は、予め飽和量の水分を含ませたものであり、脱酸素剤の製造過程でさらに添加される水は、主に保水材に保持される。そして、アルカリ金属塩を溶解させた水が、鉄の表面に十分に存在して鉄イオンの発生が促進され、鉄粉を陽極、活性炭を陰極とする局部電池により、酸化反応が促進されることが考えられる。
さらに、予め飽和量の水分を含ませた活性炭を使用することにより、含水率を向上させることができるので、脱酸素剤の耐乾燥性を向上させることができる。脱酸素剤包装体は、内部の湿度が低下した場合に、脱酸素剤包装体の外部の水分を利用して、酸素吸収性能を維持する場合があるが、乾燥保存が望まれる保存品の場合、外部の水分を利用することが困難である。このような場合に、本件発明に係る脱酸素剤は、含水率を向上させることができるので、乾燥環境においても酸素吸収性能を実用可能なレベルに保つことができる。
脱酸素剤の製造方法: 本件発明に係る脱酸素剤の製造方法は、鉄粉と、保水材と、飽和量の水分を含ませた活性炭と、アルカリ金属塩とを混合した後、水を添加し、混合して脱酸素剤を得ることを特徴とする。
まず、鉄粉、保水材、飽和量の水分を含む活性炭及びアルカリ金属塩を所定量用意し、これらを混合して混合物を得る。次に、この混合物に、水を添加する。水以外の材料が十分に混ざり合った状態で、当該混合物に水を添加、混合することにより、構成材料の偏在を防いで、良質な脱酸素剤を得ることができる。また、水を添加する前に、飽和量の水分を含む活性炭及びアルカリ金属塩とが混合されるので、活性炭に含ませた水にアルカリ金属塩がある程度溶解した状態となる。その後、水が添加されると、アルカリ金属塩の水溶液が保水材に担持されて、アルカリ金属塩水溶液を脱酸素剤全体に分散させることができる。その結果、脱酸素剤における酸素吸収反応を均質化させることができるとともに、調湿作用により、長期間酸素吸収能力を発揮できると考えられる。
この混合物に水を添加する際、混合物に含まれる活性炭が、飽和量の水分を含有させたものであると、水を添加したときの発塵が顕著に抑えられる。この理由として、まず、水分量の少ない活性炭を使用していると、その分、活性炭の比重が小さくなるため活性炭が飛散しやすいが、活性炭に予め飽和量の水分を含ませていることにより、活性炭の比重が大きくなり、活性炭自体の飛散が抑えられることが考えられる。さらに、水分量の少ない活性炭を使用すると、水を添加したときに、活性炭が保持する空気が気泡として発生し、これに伴い微粉が飛散することが考えられる。これに対し、活性炭に予め飽和量の水分を含ませたものを用いることにより、活性炭における空気の保持が極端に少なくなるので、水を添加した際の気泡の発生が抑えられる可能性があると考えられる。
脱酸素剤包装体: 本件発明に係る脱酸素剤包装体は、上述の脱酸素剤を、酸素透過性の包装材により包装したものである。脱酸素剤は、上述のような構成材料からなるので、直接保存品である食品等と接触すると、保存品の外観を損ね、品質に影響を及ぼすおそれがある。また、粉体状の形態であるので、酸素透過性の包装材により脱酸素剤を包装することが実用上は必要である。
そこで、脱酸素剤を、酸素透過性の包装材に封入して用いている。以下、脱酸素剤包装体に用いる包装材について説明する。包装材としては、その厚さ方向での通気性を備え、その他に、耐水性、耐油性等を備えるものが好ましい。また、脱酸素剤が包装材の外部に流出することを防ぐために、シール性に優れた包装材が求められる。
包装材は、例えば、紙とポリエチレンシートとを貼り合わせたもの、微多孔膜または合成樹脂製不織布、外層材と内層材を積層した複合フィルム等が考えられる。特に、脱酸素剤用の包装材として、酸素透過性等を調整可能な複合フィルムが好ましい。また、複合フィルムは、特に、外層材と内層材とがラミネート加工により積層されたものが好ましい。以下、複合フィルムの各層の構成材について説明する。
内層材は、厚さ方向に貫通する微細貫通孔が形成されることにより酸素透過性を備えるフィルムである。加えて、ラミネート加工により外層材と接着可能であるものが好ましい。このような性質をもつフィルムの材質として、ポリエチレン(PE)が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく用いられる。
外層材は、ラミネート加工により内層材と接着可能であり、且つ接着後に酸素透過性を備えるものが好ましい。例えば、紙、織布、不織布、微多孔膜等が挙げられる。紙の例としては、クラフト紙、撥油紙、撥水紙等が挙げられる。織布ならびに不織布としては、ポリエステル、ポリアミド等の材質を用いたものが挙げられる。
さらに、当該外層材には、厚さ方向に貫通する微細貫通孔を複数有するフィルムからなる最外層フィルムを備えるものとしても良い。この最外層フィルムは、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂フィルムを用いることができる。最外層フィルムに備える微細貫通孔は、ラミネート加工の前もしくは後に形成されたもののいずれを用いても良い。しかし、より確実な通気性を得るためには、ラミネート加工前に微細貫通孔を形成したものが好ましい。なお、微細貫通孔の形状は円形とは限らず、有孔加工法によって、様々な形状となる。
例えば、外層材は、紙に、最外層フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記す。)等のフィルムを積層させても良い。すなわち、ポリエステルフィルムに、ポリエチレンを塗工した最外層フィルムを用い、この最外層フィルムのポリエチレンを塗工した面を、外層材としての紙と接触させて熱圧着すればラミネート加工が容易となるので好ましい。このような最外層フィルムを備える外層材を用いる場合、最外層フィルムにも微細な貫通孔を複数形成することによって、空気透気度を、より精度良く調整することができる。
こうして得られた外層材と内層材とは、内層材のフィルムと外層材の紙とを熱圧着加工により積層させて複合フィルムとする例が挙げられる。なお、各層をラミネートする際の加工法は、熱圧着加工、ドライラミネート加工を採用することができる。
以上、外層材、内層材の材質等を例示したが、複合フィルムとしては、各層の材質等の組み合わせは特に限定されるものではなく、少なくとも、酸素透過性を備えるとともに、外層材と内層材とがラミネート加工により積層される構成を取り得るものであれば良い。
以下、実施例及び比較例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に制限されるものではない。
実施例における脱酸素剤は、アルカリ金属塩として塩化ナトリウムを用い、保水材としてゼオライトを用いた例である。最初に、鉄粉250kgと、飽和量の水分を含有させた平均粒径10μmの木質系粉末活性炭9kgと、塩化ナトリウム30kgと、ゼオライト200gとをミキサーに投入した。そして、ミキサーでこれらを3分間混合して混合物を得た。
この実施例で用いた活性炭は、JIS K1474に示される乾燥減量の測定方法によって測定した乾燥減量が54%のものを用いた。この乾燥減量に基づき算出した活性炭の水分量は4.9kgとなる。
この混合物を混合しながら、さらに、水を57kg投入して7分間混合して脱酸素剤を得た。この際、混合物の飛散は極めて少なかった。
この実施例1で得られた脱酸素剤の流動性を評価した。脱酸素剤の流動性の評価は、ホソカワミクロン社製パウダテスタにより安息角を測定して行った。この結果を表1に示す。
そして、実施例に用いる脱酸素剤の包装材は、厚さ12μmの有孔ポリエステルフィルムからなる外層材と、50g/mの耐水耐油紙からなる中層材と、厚さ25μmの有孔ポリエチレンフィルムからなる内層材とからなり、熱ラミネート加工して得た酸素透過性の複合フィルムであり、ガーレー式透気度が1500秒/100ml空気のものを用いた。
得られた脱酸素剤と、上記の包装材とを、それぞれ自動充填包装機にセットし、毎分350個の速さで自動充填包装して、脱酸素剤包装体を製造した。具体的には、自動充填包装機により、複合フィルムの内層材側が内側となるように折り曲げて、一辺が開口するように残してヒートシールされ、外寸50mm×40mmの袋状に形成し、その袋状の複合フィルムの中に粉状の脱酸素剤3gが充填され、当該複合フィルムの開口をヒートシールして脱酸素剤包装体を得た。なお、この自動充填包装時の脱酸素剤の飛散は極めて少なく、自動充填包装機等の設備への付着も少なかった。
得られた脱酸素剤包装体の酸素吸収量を測定した。酸素吸収量の測定方法は、空気1500mlを封入した脱酸素剤包装体入りの密封袋を室温(25℃)に保持し、120時間後の袋内の酸素濃度(%)を東レエンジニアリング株式会社製ジルコニア式酸素濃度計LC−700Fを用いて測定し、脱酸素剤の単位重量あたりの酸素吸収量(ml/g)を評価した。さらに、同様に空気500mlを封入した脱酸素剤包装体入りの密封袋を作成したものについては、室温(25℃)に保持して酸素濃度を測定し、当該密封袋内の酸素濃度が0.1%となるまでに要する時間を計測して、酸素吸収速度を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2011072890
[比較例1]
比較例1として、活性炭の水分量が飽和量に達しないものを用いた脱酸素剤を示す。すなわち比較例の脱酸素剤は、実施例に比べて含水量の少ない平均粒径10μmの木質系粉末活性炭を用いた。比較例1で用いた活性炭は、実施例と同様に測定した結果、乾燥減量が31%であり、この乾燥減量から算出した結果、2.8kgの水分を含むものを用いた。その他、脱酸素剤の構成材料の調製条件は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
得られた脱酸素剤の流動性について評価した。そして、実施例と同様に脱酸素剤包装体を作製し、酸素吸収量、酸素吸収速度を評価した。それらの結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例2は、比較例1と同じ活性炭を用い、脱酸素剤の調製過程で添加する水分量を増量して、実施例1の脱酸素剤全体の水分量と同じ含水率とした例を示す。すなわち、比較例1と同じ31%含水活性炭9kgと、塩化ナトリウム30kgと、ゼオライト200gとをミキサーに投入した。そして、ミキサーでこれらを3分間混合して混合物Bを得た。この混合物Bを混合しながら、さらに、水59.7kgを投入して7分間混合した。その後、鉄粉(ヘガネス社製 RDH−3M)を250kg投入し、8分間混合して脱酸素剤を得た。
比較例2で得られた脱酸素剤は、水分を多く含むため流動性が低下した。流動性を測定したところ、安息角が50度となり、自動充填包装機を用いた製造に支障を来すレベルにあった。そのため、脱酸素剤包装体は作製せず、評価も行わなかった。したがって、脱酸素剤の調製過程で添加する水の量を増加させて脱酸素剤全体の水分量を実施例1と同じ量にしただけでは、本件発明の脱酸素剤のように、流動性を保ちながら水分量を増加させることは出来ないと言える。
続いて、実施例と比較例を対比する。まず、脱酸素剤について対比すると、実施例と比較例1では含水率は、実施例が13%であるのに対し、比較例は12%であり、実施例の方が高い。しかし、流動性については同等のレベルであり、実施例の脱酸素剤は、含水率が上昇しても、自動充填包装機で製造可能な流動性が得られていると言える。一方、比較例2の脱酸素剤は、流動性が著しく低下した。
また、自動充填包装機を用いた脱酸素剤包装体の製造過程では、比較例1の脱酸素剤は、発塵が多く見られ、製造された脱酸素剤包装体において、脱酸素剤が、包装材のシール部に挟み込まれた製品が多く見られた。一方、実施例の脱酸素剤は、比較例1に比べて発塵が顕著に抑えられ、製造された脱酸素剤包装体における、包装材のシール部に脱酸素剤が挟み込まれた製品は顕著に減少した。
さらに、脱酸素剤包装体の製造過程における発塵性は、特に、冬等の大気が乾燥する季節に問題となる。そこで、実施例及び比較例1に示した製造過程を、湿度30%、気温20°の条件で行い、乾燥した環境における脱酸素剤の発塵性を評価した。その結果、比較例1の脱酸素剤は、包装材のシール部へのかみこみが多数発生した。また、脱酸素剤が、静電気に起因して、包装材や自動充填包装機等の設備に多数付着した。これに対し、実施例の脱酸素剤は、比較例1に比べて、包装材のシール部へのかみこみも少なく、また、静電気による、脱酸素剤の包装材や自動充填包装機等の設備への付着も少なかった。
次に、脱酸素剤包装体について、実施例と比較例1とを対比する。酸素吸収速度は、実施例の脱酸素剤包装体の方が、比較例1の脱酸素剤包装体に比べて1時間早くなった。また、酸素吸収量については、実施例の脱酸素剤包装体の方が顕著に高い値を示した。
本件発明に係る脱酸素剤は、含水率を上昇させて酸素吸収量の向上を図ることができるとともに、脱酸素剤の流動性の低下を防ぎ、且つ、発塵性を抑えられる。そのため、酸素吸収能力に優れた脱酸素剤包装体を効率良く製造できる。そして、製造過程における脱酸素剤の飛散による損失や、自動充填包装時の包装材のシール部等、望まない部分への脱酸素剤の付着を抑えて、不良品の発生を抑えられるので、製造ロスを低減して、製造効率を高めることができる。また、本件発明に係る脱酸素剤の製造方法は、高品質な脱酸素剤包装体を低コストで製造する技術として利用できるとともに、酸素吸収効率の高い脱酸素剤を提供可能となる。さらに、脱酸素剤の他、使い捨てカイロの製造においても適用可能であり、発塵性を抑えて、反応効率を高めることが可能である。

Claims (8)

  1. 鉄粉と、アルカリ金属塩と、保水材と、活性炭とを含み、一定の水分を含む粉体状の脱酸素剤であって、
    当該活性炭として、飽和量の水分を含む活性炭を用いることを特徴とする脱酸素剤。
  2. 前記鉄粉を100重量部としたとき、前記飽和量の水分を含む活性炭を1重量部〜6重量部含む請求項1に記載の脱酸素剤。
  3. 前記活性炭は、レーザー回折式粒度分布測定法により得られる50%粒子径が100μm以下である請求項1又は請求項2に記載の脱酸素剤。
  4. 前記アルカリ金属塩は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の脱酸素剤。
  5. 前記鉄粉100重量部に対して水を15重量部〜35重量部含ませるものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱酸素剤。
  6. 25℃、120時間後における当該脱酸素剤の単位重量あたりの酸素吸収量が90ml/g〜120ml/gである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の脱酸素剤。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の脱酸素剤の製造方法であって、
    鉄粉と、保水材と、飽和量の水分を含ませた活性炭と、アルカリ金属塩とを混合した後、水を添加し、混合して脱酸素剤を得ることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の脱酸素剤を、酸素透過性の包装材により包装した脱酸素剤包装体。
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