(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る断線検知装置1の回路構成を示す図である。本実施形態に係る断線検知装置1は、誤差アンプ101と、制御部102と、電源103と、上段スイッチング素子104と、下段スイッチング素子105と、インダクタンス素子106と、キャパシタ107と、ダイオード108と、抵抗素子109と、負荷110と、電流検知部111と、電圧検知部112と、処理部113とを備える。
誤差アンプ101は、図示しない目標電圧生成部によって生成される目標電圧VTと、後述する負荷110の端子TLの電圧V(以下、端子電圧Vと称する)との差の電圧を予め定められた増幅率で増幅した電圧(以下、誤差電圧VDと称する)を有する信号を逐次生成する。
制御部102は、誤差アンプ101によって生成される信号を逐次取得する。そして、制御部102は、取得した信号の誤差電圧VDに基づいて、負荷110の端子電圧Vが目標電圧VTとなって誤差電圧VDがゼロとなるように、従来周知の技術を用いて、後述する上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105の開閉状態をそれぞれ制御する。制御部102が、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105の開閉状態をそれぞれ制御するときの従来周知の技術の一例としては、PWM(Pulse Width Modulation)制御が挙げられる。
電源103は、直流電力を供給する電源であり、後述する上段スイッチング素子104の一端に接続されている。電源103は、予め定められた電圧VB(以下、電源電圧VBと称する)の直流電力を供給する。
上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105とは、図1に示すように直列に接続されている。そして、上段スイッチング素子104は電源103と接続されており、下段スイッチング素子105は接地されている。また、上段スイッチング素子104と下段スイッチング素子105との接続点PLには、インダクタンス素子106の一端が接続されている。上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれは、制御部102から与えられる指示に応じて回路の開閉状態を切り替えることによって、上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力をインダクタンス素子106に蓄積、及び放出させる。
本実施形態に係る上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105としてそれぞれ用いることのできる具体的なスイッチング素子の一例としては、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ、及び絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどが挙げられる。しかしながら、本実施形態に係る上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105として用いることのできるスイッチング素子は、制御部102から与えられる指示に応じて上述したように開閉状態を切り替えることができるスイッチング素子であればどのような素子を用いてもよい。
インダクタンス素子106は、その一端が前述の接続点PLと接続され、他端は後述する抵抗素子109に接続されている。インダクタンス素子106は、上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力を、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれの開閉状態に応じて、蓄積、及び放出する。
キャパシタ107は、その一端がインダクタンス素子106と抵抗素子109とを接続する配線に接続され、他端が接地されている。キャパシタ107は、インダクタンス素子106から流れる直流電力の電圧を平滑化する。
本実施形態に係る断線検知装置1は、誤差アンプ101、制御部102、上段スイッチング素子104、下段スイッチング素子105、インダクタンス素子106、及びキャパシタ107のそれぞれを用いて、電源103から供給される直流電力の電圧を目標電圧VTに制御して負荷110に供給する。すなわち、本実施形態では、誤差アンプ101、制御部102、上段スイッチング素子104、下段スイッチング素子105、インダクタンス素子106、及びキャパシタ107を用いて所謂DC−DCコンバータを構成している。
ダイオード108は、下段スイッチング素子105の接地側の配線から、インダクタンス素子106と前述の接続点PLとを結ぶ配線に向かって順方向に接続されている。
抵抗素子109は、電流検知部111がインダクタンス素子106から負荷110に供給される直流電力の電流VAを検知するためにインダクタンス素子106と負荷110との間に挿入される抵抗素子である。抵抗素子109は、電流検知部111が電流VAを検知できる程度に極めて小さい抵抗値を有する所謂シャント抵抗である。
負荷110は、一方の端子TLが抵抗素子109を介してインダクタンス素子106と接続され、インダクタンス素子106から抵抗素子109を介して直流電力の供給を受けて動作する負荷である。負荷110の他方の端子は接地するものとする。尚、本実施形態では、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明をする。
電流検知部111は、直流電動機(負荷110)に供給される直流電力の電流VAを逐次検知する。より具体的には、電流検知部111は抵抗素子109の両端にそれぞれ接続され、抵抗素子109の一端の電圧と他端の電圧との差の電圧に基づいて従来周知の手法を用いて電流VAを逐次検知し、検知した電流VAに比例する電圧を有する信号を、検知した電流VAを示す信号として逐次生成する所謂電流検出アンプである。尚、抵抗素子109は、上述したように電流検知部111が電流VAを検知するために挿入されるので、電流検知部111が他の手法を用いて電流VAを検知できるのであれば必ずしも備えられていなくてもよい。
電圧検知部112は、直流電動機(負荷110)に供給される直流電力の電圧として前述の端子電圧Vを逐次検知する。電圧検知部112は、端子電圧Vを逐次検知し、検知した端子電圧Vに比例する電圧を有する信号を、当該端子電圧Vを示す信号として逐次生成する。
処理部113は、電流検知部111によって生成される信号、及び電圧検知部112によってそれぞれ生成される信号を取得する。そして、処理部113は、電流検知部111から取得した信号によって示される電流VA、及び電圧検知部112から取得した信号によって示される端子電圧Vに基づき、制御部102に指示を与えると共に、直流電動機(負荷110)の状態を判断する。処理部113の詳細な説明は後述する。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置1の回路構成の説明である。次に、上述したように構成された断線検知装置1において直流電動機(負荷110)の状態を処理部113が判断する手法について、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS101において、処理部113は、電流検知部111から信号を取得し、取得した信号によって示される電流VAが予め定められたしきい値th1以下であるか否かを判断する。処理部113は、ステップS101において、電流VAがしきい値th1以下であると判断したとき、ステップS102へ処理を進める。一方、処理部113は、ステップS101において、電流VAがしきい値th1以下でないと判断したとき、ステップS106へ処理を進める。
処理部113は、ステップS101の処理をすることによって、直流電動機の回転子が通常回転をしているか否かを判断することができる。より詳細に説明すると、直流電動機が回転子を回転させるときの回転トルクは、供給される直流電力の電流VAに比例する。このため、直流電動機の回転子にかかる負荷トルクがなく、当該回転子が空転しているときには、回転トルクが減少するので、直流電動機に供給される直流電力の電流VAも減少する。また、直流電動機の中の配線(負荷110の中の配線)が断線しているときには、直流電動機には電流VAが流れないため、直流電動機に流れる電流VAは略ゼロとなる。
つまり、電流VAが前述のしきい値th1以下であるときとは、直流電動機の回転子が空転している場合、及び直流電動機の中の配線が断線している場合のいずれか一方の場合であると考えることができる。ここで、本実施形態に係る直流電動機の回転子の通常回転とは、上述した直流電動機の回転子が空転をしていないとき、及び直流電動機の中の配線が断線していないときのことであって、回転子に適度な負荷トルクが生じており、端子電圧Vに応じた回転速度で回転子が回転しているときのことであるものとする。
したがって、処理部113がステップS101において電流VAが前述のしきい値th1以下であるか否かを判断することによって、直流電動機の回転子が通常回転をしているか否かを判断することができる。
ステップS102において、処理部113は、制御部102に対して下段スイッチング素子105を常に開状態にさせる指示を与える。処理部113は、ステップS102の処理を完了すると、ステップS103へ処理を進める。
ステップS103において、処理部113は、電圧検知部112から信号を取得し、取得した信号によって示される直流電動機の端子電圧Vが、電源電圧VBと略等しいか否かを判断する。処理部113は、ステップS103において、端子電圧Vが電源電圧VBと略等しいと判断したとき、ステップS104に処理を進める。一方、処理部113は、ステップS103において、端子電圧Vが電源電圧VBと略等しくないと判断したとき、ステップS105へ処理を進める。尚、処理部113が電圧検知部112から取得した端子電圧Vと比較するために用いる電源電圧VBは、電源103から取得してもよいし、電源電圧VBと等しい値を電圧しきい値として予め記憶させた図示しない記憶部から取得してもよい。
ステップS104において、処理部113は、直流電動機の中の配線が断線していると判断して、直流電動機の中の配線が断線していることを示す断線情報を生成する。処理部113は、ステップS104の処理を完了すると、ステップS101へ処理を戻す。
ここで、処理部113がステップS104において直流電動機の中の配線が断線していると判断できる理由について説明する。そのためにまず制御部102のPWM制御についてより詳細に説明する。
直流電動機が通常回転しているとき、すなわち、電流VAがしきい値th1を超えているときにおける制御部102のPWM制御では、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれの開閉状態が互いに切り替えられる。より詳細には、本実施形態に係る制御部102は、直流電動機が通常回転しているとき、上段スイッチング素子104を閉状態にすると共に下段スイッチング素子105を開状態にする。上段スイッチング素子104が閉状態であり、且つ下段スイッチング素子105が開状態となっているときには、インダクタンス素子106は、上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力を蓄積しながら当該直流電力を直流電動機に向かって流す。次に、制御部102は、下段スイッチング素子105を閉状態にすると共に上段スイッチング素子104を開状態にする。このとき、インダクタンス素子106には電源103から直流電力が供給されずに、インダクタンス素子106に蓄積された直流電力が、レンツの法則に従って直流電動機(負荷110)に向かって流れる。そして、直流電動機が通常回転しているときは、インダクタンス素子106から直流電動機に直流電力が流れることによって、当該直流電力は当該直流電動機で消費される。インダクタンス素子106に蓄積されている直流電力が直流電動機で消費されると、当該直流電力の電圧、すなわち、直流電動機の端子電圧Vが降下していく。そして、制御部102が再び上段スイッチング素子104を閉状態にすると共に下段スイッチング素子105を開状態にすると、インダクタンス素子106は、上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力を蓄積しながら当該直流電力を直流電動機に向かって流す。これにより、降下した直流電動機の端子電圧Vが上昇する。
つまり、電流VAがしきい値th1を超えているときにおける制御部102のPWM制御では、制御部102が、上段スイッチング素子104と、下段スイッチング素子105との開閉状態を互いに切り替えることによって端子電圧Vを上昇、及び降下させて目標電圧VTになるように制御する。また、端子電圧Vの上昇量、及び降下量は、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれのスイッチング素子が開状態となっている期間と閉状態となっている期間との比である所謂デューティ比に応じて定まる。したがって、電流VAがしきい値th1を超えているとき、本実施形態に係る制御部102は、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれのデューティ比を誤差電圧VDに基づいて変化させるPWM制御をすることによって端子電圧Vを目標電圧VTにする。
そして、電流VAがしきい値th1以下であるとき、すなわち、直流電動機が通常回転していないとき、処理部113は、上述したように、ステップS102の処理をすることにより、制御部102に対して下段スイッチング素子105を常に開状態にする指示を与える。制御部102は、電流VAがしきい値th1以下となっているときを通じて、下段スイッチング素子105を常に開状態にする。したがって、電流VAがしきい値th1以下となっているときにおける制御部102のPWM制御では、下段スイッチング素子105は常に開状態にされ、上段スイッチング素子104の開閉状態のみが制御される。この場合、制御部102が、上段スイッチング素子104を閉状態にすると、インダクタンス素子106は、上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力を蓄積しながら当該直流電力を直流電動機に向かって流す。次に、制御部102が、上段スイッチング素子104を開状態にすると、上段スイッチング素子104が閉状態であるときにインダクタンス素子106が蓄積した直流電力は、レンツの法則に従って直流電動機に向かって流れる。そして、直流電動機がしきい値th1以下の電流VAの直流電力で回転子を回転させているときは、インダクタンス素子106から直流電動機に直流電力が流れることによって、当該直流電力は当該直流電動機で消費される。インダクタンス素子106に蓄積されている直流電力が直流電動機で消費されると、当該直流電力の電圧、すなわち、直流電動機の端子電圧Vが降下していく。そして、制御部102が再び上段スイッチング素子104を閉状態にすると、インダクタンス素子106は、上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力を蓄積しながら当該直流電力を直流電動機に向かって流す。これにより、降下した直流電動機の端子電圧Vが上昇する。
つまり、本実施形態に係る制御部102は、電流VAがしきい値th1以下であるときは、下段スイッチング素子105を常に開状態にしながら上段スイッチング素子104のみの開閉状態を切り替えることによって端子電圧Vを上昇、及び降下させて目標電圧VTになるように制御する。また、電流VAがしきい値th1以下であるときにおける端子電圧Vの上昇量、及び降下量は、上段スイッチング素子104のみのデューティ比に応じて定まる。したがって、電流VAがしきい値th1以下であるときは、制御部102は、上段スイッチング素子104のみのデューティ比を誤差電圧VDに基づいて変化させるPWM制御をすることによって端子電圧Vを目標電圧VTにする。
ここで、電流VAがしきい値th1以下であるときにおいて、直流電動機の中の配線が断線していない場合は、上述したように制御部102が上段スイッチング素子104のみの開閉状態を制御することによって端子電圧Vが目標電圧VTになるように制御できる。
これに対して、電流VAがしきい値th1以下であるときにおいて、直流電動機の中の配線が断線している場合は、制御部102が上段スイッチング素子104を開状態にしたときに、インダクタンス素子106に蓄積された直流電力が直流電動機に流れないので、当該直流電力は当該直流電動機で消費されない。そして、インダクタンス素子106に蓄積されている直流電力が直流電動機で消費されないと、当該直流電力の電圧、すなわち、直流電動機の端子電圧Vは降下しない。そして、直流電動機の端子電圧Vが降下しないまま、次に上段スイッチング素子104が閉状態にされると、インダクタンス素子106は、上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力を蓄積しながら当該直流電力を直流電動機に向かって流す。ただし、インダクタンス素子106から流れる直流電力は直流電動機で消費されないため、直流電動機の端子電圧Vは上昇して、やがて、電源電圧VBと略等しくなる。
そこで、本実施形態に係る処理部113は、ステップS103において、電圧検知部112によって生成された信号で示される端子電圧Vが、電源電圧VBと略等しいと判断したときに、直流電動機の中の配線が断線していると判断できる。そして、本実施形態に係る処理部113は、ステップS104の処理で負荷110が断線していると判断して前述の断線情報を生成する。
尚、電流VAがしきい値th1以下であるときに、制御部102が、上段スイッチング素子104を開状態にすると、下段スイッチング素子105は常に開状態にされているため、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれが開状態となる。上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれが開状態となっているのにも拘わらず、インダクタンス素子106に蓄積された直流電力が、レンツの法則に従って直流電動機に向かって流れるのは、上述したようにダイオード108が下段スイッチング素子105の接地側の配線からインダクタンス素子106と前述の接続点PLとを結ぶ配線に向かって順方向に接続されているからである。
一方、処理部113は、ステップS103において、電圧検知部112によって生成された信号によって示される端子電圧Vが、電源電圧VBと略等しくないと判断したとき、上述したように、ステップS105へ処理を進める。
ステップS105において、処理部113は、直流電動機の回転子が空転していると判断して、負荷110が空転していることを示す空転情報を生成する。処理部113は、ステップS105の処理を完了すると、ステップS101へ処理を戻す。
処理部113が、ステップS105において直流電動機の回転子が空転していると判断する理由について説明する。この理由について説明すると、処理部113が、ステップS105の処理をするのは、ステップS101において、直流電動機に供給される直流電力の電流VAがしきい値th1以下であると判断し、さらに、ステップS103において、直流電動機の端子電圧Vが電源103から供給される直流電力の電圧VBと略等しくないと判断したときである。すなわち、処理部113がステップS105の処理をするときは、直流電動機の回転子にかかる負荷トルクが低減しており、さらに、当該直流電動機の中の配線が断線していないと考えられるときである。換言すれば、処理部113がステップS105の処理をするときは、直流電動機の回転子にかかる負荷トルクがなく、且つ、当該直流電動機の中の配線が断線しておらずに回転子が回転しているときである。したがって、処理部113は、ステップS105において直流電動機の回転子が空転していると判断できる。
ステップS106において、処理部113は、直流電動機の回転子に適度な負荷トルクがかかっており、当該回転子が通常回転をしていると判断して、制御部102に対して上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105の開閉状態をそれぞれ制御する指示を与える。処理部113がステップS106の処理をすることによって、下段スイッチング素子105が一度常に開状態にされた後、常に開状態にされたままになることがなくなる。処理部113は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS101へ処理を戻す。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置1の説明である。本実施形態に係る断線検知装置1によれば、直流電動機(負荷110)の状態として、直流電動機(負荷110)の空転と断線とを区別してより正確に判断することができる。
尚、本実施形態に係る処理部113は、ステップS106の処理において、直流電動機が通常回転していることを示す情報を生成する処理をさらにしてもよい。
また、本実施形態に係る処理部113は、端子電圧Vが電源電圧VBと略等しいか否かを判断するとき、予め定められた期間を通じて端子電圧Vが電源電圧VBと略等しいか否かを判断してもよい。また、本実施形態に係る処理部113は、端子電圧Vが電源電圧VBと略等しいか否かを判断するときに、予め定められた期間を通じて端子電圧Vと電源電圧VBとの差が予め定められたしきい値以内であるか否かを判断してもよい。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る断線検知装置2の回路構成を示すブロック図である。本実施形態に係る断線検知装置2は、第1の実施形態に係る断線検知装置1と比較して、目標電圧抑制部114をさらに備える点が相違する。したがって、本実施形態に係る断線検知装置2の構成要素の中で第1の実施形態に係る断線検知装置1の構成要素と同一の構成要素については同一の参照符号を付し、説明を省略する。尚、本実施形態の説明においても、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明をする。
目標電圧抑制部114は、処理部113から目標電圧VTを抑制する指示を受けたとき、図示しない目標電圧生成部によって生成される目標電圧VTを電源電圧VB未満に抑制する。目標電圧抑制部114が目標電圧VTを抑制するときの抑制量は予め定められているものとする。
本実施形態に係る処理部113は、第1の実施形態で説明したように電流検知部111から取得した信号によって示される電流VA、及び電圧検知部112から取得した信号によって示される端子電圧Vに基づき、制御部102に指示を与えると共に、直流電動機の状態を判断する。さらに、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下となったときに、目標電圧VTを電源電圧VB未満に抑制する指示を抑制指示として目標電圧抑制部114に与える。
本実施形態に係る処理部113が、電流VAがしきい値th1以下となったときに抑制指示を与えるのは、目標電圧VTが電源電圧VBと略等しいときにも第1の実施形態に係る処理部113と同様に直流電動機(負荷110)の状態を判断できるようにするためである。より詳細には、第1の実施形態に係る断線検知装置1では、目標電圧VTが電源電圧VBと略等しい場合には、制御部102は、端子電圧Vが電源電圧VBとなるようにPWM制御をする。したがって、第1の実施形態に係る処理部113が端子電圧Vと電源電圧VBとが略等しいと判断したとしても、目標電圧VTが電源電圧VBと略等しい場合には、直流電動機の中の配線が断線しているために端子電圧Vが電源電圧VBと略等しくなっているのか、又は端子電圧Vが目標電圧VTになるように制御されているために端子電圧Vが電源電圧VBと略等しくなっているのかを区別することができない。
そこで、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下になったときに目標電圧抑制部114に抑制指示を与えることによって目標電圧VTを電源電圧VB未満に抑制させる。これにより、電流VAがしきい値th1以下となったときには、端子電圧Vが目標電圧VTになるように制御されているために電源電圧VBと略等しくなることがなくなる。したがって、本実施形態に係る処理部113が端子電圧Vが電源電圧VBと略等しいと判断したときには、直流電動機の中の配線が断線しているために端子電圧Vが電源電圧VBとなっていると判断できる。
以下、本実施形態に係る処理部113の処理を図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、図4のフローチャートに示す処理の内、第1の実施形態に係る処理部113の処理と同一の処理については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る処理部113は、ステップS102の処理を完了するとステップS201へ処理を進める。
ステップS201において、処理部113は、目標電圧抑制部114に対して上述した抑制指示を与える。本実施形態に係る処理部113は、ステップS201の処理を完了すると、ステップS103へ処理を進める。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置2の説明である。本実施形態に係る断線検知装置2によれば、目標電圧VTが電源電圧VBと略等しいときでも、第1の実施形態に係る断線検知装置1と同様に、直流電動機(負荷110)の状態をより正確に判断できる。
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る断線検知装置3の回路構成を示すブロック図である。本実施形態に係る断線検知装置3は、第1の実施形態に係る断線検知装置1と比較すると、電圧検知部112に代えて電圧検知部115を備える点が相違する。したがって、本実施形態に係る断線検知装置3において、第1の実施形態に係る断線検知装置1と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。尚、本実施形態の説明においても、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明する。
電圧検知部115は、直流電動機(負荷110)に供給される直流電力の電圧として前述の接続点PLにおける接続点電圧VPLを逐次検知する。電圧検知部112は、接続点電圧VPLを逐次検知し、検知した接続点電圧VPLに比例する電圧を有する信号を、当該接続点電圧VPLを示す信号として逐次生成する。
本実施形態に係る処理部113は、電流検知部111から取得した信号によって示される電流VA、及び電圧検知部115から取得した信号によって示される接続点電圧VPLに基づき、制御部102に指示を与えると共に、直流電動機(負荷110)の状態を判断する。
以下、本実施形態に係る処理部113の処理を図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS301において、処理部113は、電圧検知部115から信号を取得し、取得した電圧によって示される接続点電圧VPLが0V以下になるか否かを判断する。この理由について、図7A〜図7Cを参照しながら説明する。図7Aは、上段スイッチング素子104の開状態と閉状態とが切り替わるタイミングの一例を示すタイミングチャートである。また、図7Bは、下段スイッチング素子105の開状態と閉状態とが切り替わるタイミングの一例を示すタイミングチャートである。また、図7Cは、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105がそれぞれ図7A、及び図7Bに示すタイミングで開閉状態を切り替えられたときの接続点PLにおける接続点電圧VPLの推移を示す図である。
制御部102は、図7A、及び図7Bにそれぞれ示すように、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105のそれぞれの開閉状態を切り替えるとき、両方のスイッチング素子が同時に閉状態となって回路が短絡しないように、両方のスイッチング素子を一度開状態にする。そして、制御部102は、両方のスイッチング素子を予め定められた期間DT(所謂デッドタイム)を通じて一度開状態にした後、次に閉状態にするべきスイッチング素子を閉状態にする。
ここで、直流電動機の中の配線が断線していない場合の期間DTにおける接続点電圧VPLの推移について説明する。期間DTでは、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105の両方のスイッチング素子が開状態となっている。したがって、期間DTでは、第1の実施形態で説明したようにインダクタンス素子106から直流電動機に向かって直流電力が流れる。そして、本実施形態に係るダイオード108は、第1の実施形態で説明したように下段スイッチング素子105の接地側の配線からインダクタンス素子106と接続点PLとを結ぶ配線に向かって順方向に接続されている。このため、期間DTでは、インダクタンス素子106から流れる直流電力の向きと、ダイオード108の順方向とが一致する。したがって、期間DTでは、インダクタンス素子106はダイオード108を介して接地されている状態となる。しかしながら、ダイオード108は流れる直流電力の電圧を順方向降下電圧VFだけ降下させる。このため、期間DTにおける接続点PLの電圧は、接地電圧、すなわち、0Vよりも順方向降下電圧VFだけ降下する。つまり、直流電動機の中の配線が断線していない場合、期間DTでは、図7Cに示すように接続点電圧VPLが0Vよりもダイオード108の順方向降下電圧VFだけ降下する。
次に、直流電動機の中の配線が断線している場合の期間DTにおける接続点PLの接続点電圧VPLの推移について説明する。直流電動機の中の配線が断線している場合、期間DTにおいて、インダクタンス素子106は直流電動機に向かって直流電力を流すことができない。このため、直流電動機の中の配線が断線している場合、期間DTでは、ダイオード108の順方向に向かって電流が流れることもない。したがって、直流電動機の中の配線が断線している場合、期間DTにおいて、接続点PLの接続点電圧VPLは、ダイオード108の順方向降下電圧VFだけ降下することなく0Vとなる。
このため、本実施形態に係る処理部113は、接続点電圧VPLが0V以下になるか否かを判断することによって、直流電動機の中の配線が断線しているか否かを判断することができる。そして、本実施形態に係る処理部113は、ステップS301において、接続点電圧VPLが0V以下になると判断したとき、ステップS301の処理を繰り返す。一方、処理部113は、ステップS301において、接続点電圧VPLが0V以下にならないと判断したとき、ステップS302へ処理を進める。
ステップS302において、処理部113は、直流電動機の中の配線が断線していると判断して、第1の実施形態で説明した断線情報を生成する。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置3の説明である。本実施形態に係る断線検知装置3によれば、接続点電圧VPLに基づいて直流電動機(負荷110)が断線しているか否かを直流電動機(負荷110)の状態としてより正確に判断できる。
尚、本実施形態に係る処理部113が、ステップS301の処理において、接続点PLの接続点電圧VPLが0V以下になるか否かを判断するときには、0Vとダイオード108の順方向電圧VFだけ0Vから低い電圧との間の電圧となるようにしきい値th2を予め定めておいてもよい。そして、処理部113は、接続点電圧VPLがしきい値th2以下となる期間が生じるか否かを、予め定められた期間(例えば、いずれか一方のスイッチング素子が開状態、及び閉状態を繰り返すときの周期と等しい期間など)において判断するようにしてもよい。
(第3の実施形態の変形例)
第3の実施形態は、処理部113が、直流電動機(負荷110)が断線しているか否かのみを判断する実施形態である。しかしながら、第3の実施形態に係る処理部113は、第1の実施形態に係る処理部113と同様に直流電動機(負荷110)の空転と断線とを判断することもできる。
図8は、本変形例に係る処理部113の処理を示すフローチャートである。図8のフローチャートから明らかなように、本変形例に係る処理部113は、ステップS102の処理を完了すると、第1の実施形態に係る処理部113のステップS103の処理に代えて、第3の実施形態に係る処理部113のステップS301の処理をする。すなわち、本変形例に係る処理部113は、下段スイッチング素子105を常に開状態にする指示を与えてから、接続点電圧VPLが0V以下になるか否かを判断する。そして、本変形例に係る処理部113は、図8に示すように、ステップS301において、接続点電圧VPLが0V以下にならないと判断したとき、ステップS104で直流電動機の中の配線が断線していると判断する。一方、本変形例に係る処理部113は、図8に示すように、ステップS301において、接続点電圧VPLが0V以下になると判断したとき、ステップS105で直流電動機の回転子が空転していると判断する。
ここで、本変形例に係る処理部113が、接続点電圧VPLに基づいて直流電動機の断線を判断できる理由、すなわち、第3の実施形態と異なり、下段スイッチング素子105を常に開状態にしているときでも第3の実施形態と同様に直流電動機の中の配線が断線しているか否かを判断できる理由について説明する。この理由は、下段スイッチング素子105を常に開状態にしているときでも、上段スイッチング素子104の開閉状態を切り替えるときには、第3の実施形態で説明した期間DT(所謂デッドタイム)が生じるためである。換言すれば、下段スイッチング素子105を常に開状態にしているときでも、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105の両方のスイッチング素子が開状態となる期間が生じるからである。このため、本変形例に係る処理部113は、ステップS102において制御部102に対して下段スイッチング素子105を常に開状態にさせた後、ステップS301において上述したように接続点電圧VPLが0V以下となるか否かを判断することによって、直流電動機の中の配線が断線しているか否かを判断できる。
次に、本変形例に係る処理部113が、接続点電圧VPLが0V以下となると判断したときに、ステップS105において直流電動機の回転子が空転していると判断できる理由について説明する。この理由について説明すると、本変形例に係る処理部113がステップS301で接続点電圧VPLが0V以下になると判断するときは、第3の実施形態で説明したように直流電動機の中の配線が断線していないときである。つまり、本変形例に係る処理部113が、ステップS105の処理をするときは、直流電動機の回転子にかかる負荷トルクがなく、且つ、当該直流電動機の中の配線が断線しておらずに回転子が回転しているときである。したがって、本変形例に係る処理部113は、ステップS105において、第1の実施形態で説明した理由と同様の理由で直流電動機の回転子が空転していると判断できる。
以上が、第3の実施形態の変形例に係る断線検知装置3の説明である。本変形例に係る断線検知装置3によれば、電流VAと接続点PLの接続点電圧VPLとに基づいて直流電動機(負荷110)の状態として、空転と断線とを区別してより正確に判断できる。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る断線検知装置4の回路構成を示すブロック図である。本実施形態に係る断線検知装置4は、第1の実施形態に係る断線検知装置1と比較すると、電圧検知部112に代えて電圧検知部116を備える点が相違する。したがって、本実施形態に係る断線検知装置4において、第1の実施形態に係る断線検知装置1と同一の構成要素には同一の参照符号を付し説明を省略する。尚、本実施形態の説明においても、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明する。
電圧検知部116は、誤差アンプ101によって生成される信号の誤差電圧VDを逐次検知する。電圧検知部112は、誤差電圧VDを逐次検知し、検知した誤差電圧VDに比例する電圧を有する信号を、当該誤差電圧VDを示す信号として逐次生成する。
第1の実施形態に係る処理部113が電流VAと端子電圧Vとに基づいて処理をしていたのに対して、本実施形態に係る処理部113は、誤差電圧VDと電流VAとに基づいて処理をする点が相違する。以下、図10に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る処理部113の処理を説明する。尚、図10のフローチャートに示す処理の内、第1の実施形態に係る処理部113の処理と同一の処理については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る処理部113は、ステップS102の処理を完了すると、ステップS401へ処理を進める。
ステップS401において、処理部113は、電圧検知部116から電圧を取得し、取得した電圧によって示される誤差電圧VDが、予め定められた期間Tを通じて予め定められた正の電圧VLと略等しいか否かを判断する。この理由について説明すると、誤差アンプ101によって生成される誤差電圧VDは、端子電圧Vと目標電圧VTとの差に比例する電圧である。このため、誤差電圧VDは、予め定められた電圧を基準とした正負の符号を有する電圧となる。そして、直流電動機の中の配線が断線しているときは、第1の実施形態で説明したように端子電圧Vが電源電圧VBと略等しい一定の電圧となる。端子電圧Vが電源電圧VBと略等しい一定の電圧になると、誤差アンプ101によって生成される誤差電圧VDも電源電圧VBと目標電圧VTとの差の電圧に比例した一定の正の電圧となる。このときの誤差電圧VDは、制御部102に対して、下段スイッチング素子105が閉状態となっている期間を相対的に長くさせる電圧となる。
そこで、本実施形態に係る処理部113は、ステップS401において、誤差電圧VDが、前述の期間Tを通じて前述の電圧VLと略等しいか否かを判断する。これにより、本実施形態に係る処理部113は、直流電動機の中の配線が断線しているか否かを判断できる。処理部113は、ステップS401において、誤差電圧VDが前述の期間Tを通じて電圧VLと略等しいと判断したとき、ステップS104へ処理を進める。一方、処理部113は、ステップS401において、誤差電圧VDが期間Tを通じて電圧VLと略等しくないと判断したとき、ステップS105へ処理を進める。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置4の説明である。本実施形態に係る断線検知装置4によれば、電流VAと誤差アンプ101によって生成される誤差電圧VDに基づいて直流電動機(負荷110)の状態として、空転と断線とを判断することができる。
尚、予め定められた電圧VLとは、誤差アンプ101の飽和電圧であってもよい。
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態に係る断線検知装置5の回路構成を示すブロック図である。本実施形態に係る断線検知装置5は、第1の実施形態に係る断線検知装置1と比較して、電圧検知部112に代えて電圧検知部117を備える点が相違する。したがって、本実施形態に係る断線検知装置5の構成の内、第1の実施形態に係る断線検知装置1の構成と同一の構成については同一の参照符号を付し説明を省略する。尚、本実施形態の説明においても、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明する。
電圧検知部117は、インダクタンス素子106の一端の電圧と他端の電圧との差の電圧を逐次検知して増幅し、増幅した電圧VGを有する信号を生成する所謂差動増幅器である。
本実施形態に係る処理部113は、電流検知部111によって生成される信号、及び電圧検知部117によって生成される信号をそれぞれ取得する。そして、処理部113は、電流検知部111から取得した信号によって示される電流VA、及び電圧検知部117から取得した信号によって示される電圧VGに基づき、制御部102に指示を与えると共に、直流電動機(負荷110)の状態を判断する。以下、本実施形態に係る処理部113の処理を図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、図12のフローチャートに示す処理の内、第1の実施形態に係る処理部113の処理と同一の処理については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る処理部113は、ステップS102の処理を完了すると、ステップS501へ処理を進める。本実施形態に係る処理部113は、ステップS501において、電圧検知部117から取得した信号の電圧VGが予め定められたしきい値th3を超えるか否かを判断する。
ここで、本実施形態に係る処理部113が、ステップS501において、前述の電圧VGが前述のしきい値th3を超えるか否かを判断する理由について説明する。本実施形態に係る処理部113が、ステップS102の処理をすることによって、下段スイッチング素子105を常に開状態にした後、直流電動機には、第1の実施形態の説明から明らかなように、インダクタンス素子106に蓄積された直流電力、或いはインダクタンス素子106が上段スイッチング素子104を介して電源103から供給される直流電力が直流電動機に流れる。しかしながら、下段スイッチング素子105を常に開状態にしても、直流電動機の中の配線が断線している場合には、第1の実施形態の説明から明らかなように、直流電動機には直流電力が流れない。つまり、直流電動機の中の配線が断線しているときには、直流電力がインダクタンス素子106を流れないため、インダクタンス素子106の両端の電圧は略等しくなる。上述したように、本実施形態に係る電圧検知部117は、インダクタンス素子106の一端の電圧と他端の電圧との差の電圧を増幅するので、直流電動機の中の配線が断線しているときは、電圧検知部117から取得した信号の電圧VGは略0Vとなる。一方、直流電動機の中の配線が断線していないときは、インダクタンス素子106を直流電力が流れるため、インダクタンス素子106の両端において、流れる直流電力に応じた差の電圧が生じる。このため、直流電動機の中の配線が断線していないときは、電圧検知部117から取得した信号の電圧VGはインダクタンス素子106の両端の電圧の差に比例する電圧となる。
したがって、本実施形態に係る処理部113は、ステップS501において、電圧検知部117から取得した信号の電圧VGが前述のしきい値th3を超えないと判断したときに、ステップS104へ処理を進めて、直流電動機の中の配線が断線していると判断できる。
一方、本実施形態に係る処理部113は、ステップS501において、電圧検知部117から取得した信号の電圧VGが前述のしきい値th3を超えると判断したとき、ステップS105へ処理を進めて、直流電動機の回転子が空転していると判断する。
以上が、本発明の第5の実施形態に係る断線検知装置5の説明である。本実施形態に係る断線検知装置5によれば、差動増幅器を用いて直流電動機(負荷110)の状態として、空転と断線とをより正確に判断することができる。
(第6の実施形態)
図13は、本発明の第6の実施形態に係る断線検知装置6の回路構成を示すブロック図である。本実施形態に係る断線検知装置6は、第1の実施形態に係る断線検知装置1と比較して、電圧検知部112を備えない点と、BPF(Band Path Filter:バンドパスフィルタ)118を備える点と、処理部113に代えて処理部119を備える点とが相違する。したがって、本実施形態に係る断線検知装置6の構成の内、第1の実施形態に係る断線検知装置1と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。尚、本実施形態の説明においても、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明する。
BPF118は、電流検知部111によって生成される信号を逐次取得し、取得した信号の周波数成分の中から、予め定められた通過周波数帯域の信号のみを通過させる。BPF118の通過周波数帯域は、直流電動機の上限から下限の回転数に応じた脈動電流の周波数となるように予め定められているものとする。ここで、脈動電流について説明する。直流電動機は、回転子が回転することによって、接触するブラシと整流子とが相の切り替え時に切り替わって内部抵抗が変化するのに伴い、流れる電流が変化する。このように、直流電動機の回転子が回転することによって変化する電流が、脈動電流である。脈動電流は、直流電動機の回転子の回転に応じて生じるため、回転子の回転数に応じた正弦波の電流となる。
直流電動機で生じた脈動電流は、電流検知部111によって検知される電流VAに含まれる。したがって、電流検知部111によって検知される電流VAには、直流電動機の回転子の回転数に応じた正弦波を有する脈動電流成分が含まれる。BPF118は、電流検知部111から取得した信号の中から、前述の通過周波数帯域の信号のみを通過させることによって、電流検知部111で検知される脈動電流に応じて変化する電圧の信号のみを通過させることができる。
本実施形態に係る処理部119は、BPF118を通過した信号に基づいて、直流電動機が断線しているか否かを判断する。以下、図14に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る処理部119の処理を詳細に説明する。
ステップS601において、処理部119は、ステップS601においてBPF118を通過した信号を取得する。処理部119は、BPF118から信号を取得すると、取得した信号に正弦波信号が含まれているか否かを判断する。処理部119は、ステップS601において、正弦波信号が含まれていると判断したとき、ステップS601の処理を繰り返す。一方、処理部119は、ステップS601において正弦波信号が含まれていないと判断したとき、ステップS602へ処理を進める。処理部119は、ダイオード、コンデンサ、及び抵抗素子からなる半波整流回路を用いてBPF118から取得する信号を整流し、整流した信号を予め定められた基準電圧と比較して、取得した信号に正弦波信号が含まれているか否かを判断してもよい。この場合、処理部119は、BPF118から取得して検波した信号の電圧が、予め定められた基準電圧以上であるとき、取得した信号に正弦波信号が含まれていると判断できる。
ステップS602において、処理部119は、直流電動機の中の配線が断線していると判断して、直流電動機の中の配線が断線していることを示す断線情報を生成する。処理部119が、ステップS602において、直流電動機の中の配線が断線していると判断できる理由について説明する。直流電動機の回転子が回転しているときには、上述したように、回転子の回転数に応じた脈動電流が電流検知部111によって検知され、脈動電流成分を含む信号が生成される。したがって、直流電動機の回転子が回転しているときには、BPF118を通過した信号には、脈動電流成分が正弦波の信号として含まれる。これに対して、直流電動機の中の配線が断線して回転子が回転していないときには、BPF118を通過した信号には、脈動電流成分が含まれない。したがって、ステップS601において、BPF118から取得した信号に正弦波信号が含まれていないと判断した処理部119は、ステップS602において直流電動機の中の配線が断線していると判断することができる。
以上が、本発明の第6の実施形態に係る断線検知装置6の説明である。本実施形態に係る断線検知装置6によれば、直流電動機に流れる電流VAをしきい値th1と比較することなく、電流VAに含まれる脈動電流に基づいて、直流電動機(負荷110)の状態として、直流電動機の中の配線が断線しているか否かをより正確に判断することができる。
尚、本実施形態に係る処理部119は、ステップS601の処理において正弦波信号が含まれていると判断したとき、直流電動機が通常回転していることを示す信号を生成してもよい。
(第7の実施形態)
図15は、本発明の第7の実施形態に係る断線検知装置7の回路構成を示すブロック図である。本実施形態に係る断線検知装置7は、第1の実施形態に係る断線検知装置1と比較して、負荷110の一方の端子TLを抵抗素子109を介してインダクタンス素子106と接続している点は相違ないが、他方の端子を電源103と上段スイッチング素子104とを結ぶ配線に接続している点が相違する。すなわち、本実施形態に係る断線検知装置7では、負荷110を接地する代わりに電源103に接続している点が相違する。さらに、本実施形態に係る断線検知装置7は、第1の実施形態に係る断線検知装置1と比較して、インダクタンス素子106と前述の接続点PLとを結ぶ配線から、負荷110と電源103とを結ぶ配線に向かって順方向にダイオード108を接続している点が相違する。したがって、本実施形態に係る断線検知装置7の構成要素については、第1の実施形態に係る断線検知装置1の構成要素との相違点のみを説明し、重複する説明を省略する。尚、本実施形態の説明においても、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明する。
本実施形態では、上段スイッチング素子104が開状態であって、下段スイッチング素子105が閉状態であるとき、電源103から供給される直流電力の電流は、直流電動機(負荷110)、抵抗素子109、インダクタンス素子106、及び下段スイッチング素子105の順番に流れる。一方、本実施形態では、上段スイッチング素子104が閉状態であって、下段スイッチング素子105が開状態であるとき、インダクタンス素子106に蓄積された直流電力の電流が、ダイオード108、直流電動機、抵抗素子109、及びインダクタンス素子106の順番に流れる。したがって、本実施形態に係る電流検知部111は、直流電動機の端子TLからインダクタンス素子106に向かって流れる直流電力の電流を前述の電流VAとして逐次検知する。また、本実施形態に係る電圧検知部112は、直流電動機の端子TLからインダクタンス素子106に向かって流れる直流電力の電圧を前述の端子電圧Vとして逐次検知する。
第1の実施形態に係る制御部102は、電流VAがしきい値th1を超えているときは、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105をそれぞれPWM制御することによって端子電圧Vを目標電圧VTになるように制御していた。そして、本実施形態に係る制御部102も電流VAがしきい値th1を超えているときは、第1の実施形態に係る制御部102と同様に、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105をそれぞれPWM制御することによって端子電圧Vを目標電圧VTになるように制御する。尚、上述したように負荷110を接地する代わりに電源103に接続した構成において、制御部102が、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105をそれぞれPWM制御することによって、端子電圧Vを目標電圧VTになるように制御できるのは従来周知である。
そして、本実施形態に係る制御部102は、電流VAがしきい値th1以下であるときには、第1の実施形態で説明した制御とは異なる制御をする。より詳細には、第1の実施形態に係る制御部102は、電流VAがしきい値th1以下となっているときは、下段スイッチング素子105を常に開状態にし、上段スイッチング素子104の開閉状態のみを誤差電圧VDに基づいてPWM制御して端子電圧Vを目標電圧VTとなるように制御する。これに対して、本実施形態に係る制御部102は、電流VAがしきい値th1以下となっているときは、上段スイッチング素子104を常に開状態にする指示を処理部113から与えられる。そして、本実施形態に係る制御部102は、電流VAがしきい値th1以下となっているときには、上段スイッチング素子104を常に開状態にしながら、下段スイッチング素子105の開閉状態のみを誤差電圧VDに基づいて、端子電圧Vを目標電圧VTとなるようにPWM制御する。
上段スイッチング素子104が常に開状態にされ、下段スイッチング素子105の開閉状態のみを制御する場合、制御部102が、下段スイッチング素子105を閉状態にすると、上述したように、負荷110、抵抗素子109、インダクタンス素子106、及び下段スイッチング素子105の順番に電源103から直流電力が流れる。このとき、インダクタンス素子106には、負荷110、及び抵抗素子109でそれぞれ消費された残りの直流電力が蓄積される。次に、制御部102が、下段スイッチング素子105を開状態にすると、上述したように、インダクタンス素子106によって蓄積された直流電力が、レンツの法則に従ってインダクタンス素子106からダイオード108を介して直流電動機(負荷110)に流れる。ここで、直流電動機の中の配線が断線していないときは、インダクタンス素子106から直流電動機に流れた電流が、抵抗素子109を介してインダクタンス素子106に向かって流れる。そして、制御部102が再び下段スイッチング素子105を閉状態にすると、インダクタンス素子106は、負荷110、及び抵抗素子109を介して電源103から供給される直流電力を蓄積しながら当該直流電力を下段スイッチング素子105に向かって流す。
このように、電流VAがしきい値th1以下であるときにおいて、直流電動機の中の配線が断線していない場合は、上述したように制御部102が下段スイッチング素子105のみの開閉状態をPWM制御することによって端子電圧Vが目標電圧VTになるように制御できる。
これに対して、電流VAがしきい値th1以下であるときにおいて、直流電動機の中の配線が断線している場合は、制御部102が下段スイッチング素子105を開状態にしたときに、インダクタンス素子106から流れた電流が直流電動機で遮断されてしまう。このため、直流電動機の中の配線が断線しているときは、端子TLの端子電圧Vが略ゼロとなる。そこで、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であるときにおいて、電圧検知部112によって生成された信号で示される端子電圧Vが略ゼロになると判断したときに、直流電動機の中の配線が断線していると判断できる。
また、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であるときにおいて、電圧検知部112によって生成された信号によって示される端子電圧Vが、略ゼロにならないと判断したとき、直流電動機の回転子が空転していると判断できる。この理由について説明すると、電流VAがしきい値th1以下であると言うことは、第1の実施形態で説明したように、直流電動機の回転子にかかる負荷トルクが低減していると言うことである。さらに、端子電圧Vが略ゼロでないと言うことは、上述の説明から明らかなように、インダクタンス素子106から流れる直流電力が直流電動機で遮断されることなく、抵抗素子109を介してインダクタンス素子106に流れていると言うことである。すなわち、電流VAがしきい値th1以下であって、端子電圧Vが略ゼロでないと言うことは、直流電動機の中の配線が断線せずに回転子が低い負荷トルクで回転していると言うことである。したがって、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であって、端子電圧Vが略ゼロでないと判断したときに、直流電動機の回転子が空転していると判断できる。
以上より、本実施形態に係る処理部113は、上述したように直流電動機(負荷110)を接地する代わりに電源103に接続した回路構成でも、第1の実施形態に係る処理部113と同様に、端子電圧Vに基づいて当該直流電動機の回転子が通常回転しているか、空転しているか、又は当該直流電動機の中の配線が断線しているかを判断できる。
尚、本実施形態に係る処理部113は、端子電圧Vが略ゼロであるか否かを判断するとき、予め定められた期間を通じて端子電圧Vが略ゼロであるか否かを判断してもよい。
また、本実施形態に係る処理部113は、端子電圧Vが略ゼロであるか否かを判断するときに、予め定められた期間を通じて端子電圧Vが予め定められたしきい値以内であるか否かを判断してもよい。このときのしきい値は、端子電圧Vが略ゼロであるか否かを判断できるように略ゼロに相対的に近くなるように予め定めるものとする。
(第8の実施形態)
第2の実施形態では、処理部113が端子電圧Vと電源電圧VBとが略等しいと判断したときに、直流電動機の中の配線が断線していることに起因するのか、端子電圧Vが電源電圧VBと略等しい目標電圧VTになるように制御されていることに起因するのかを区別するために目標電圧抑制部114を備えるものとした。
そして、これと同様の目的で、目標電圧VTを上昇させる目標電圧上昇部を第7の実施形態に係る断線検知装置7に追加して、第8の実施形態に係る断線検知装置8を構成してもよい。目標電圧上昇部を追加する理由は、図示しない目標電圧生成部によって略ゼロの目標電圧VTが生成され、処理部113によって端子電圧Vが略ゼロであると判断されたときに、直流電動機の中の配線が断線していることに起因するのか、端子電圧Vが略ゼロである目標電圧VTになるように制御されていることに起因するのかを区別するためである。つまり、直流電動機(負荷110)の他端を接地する代わりに電源103に接続した回路構成にも、第2の実施形態で目標電圧抑制部114を備える目的と同様の目的で目標電圧上昇部を追加してもよい。
目標電圧上昇部は、処理部113から目標電圧VTを上昇させる指示を受けたとき、図示しない目標電圧生成部によって生成される目標電圧VTを略ゼロとならないように上昇させる。目標電圧上昇部が目標電圧VTを上昇させるときの上昇量は予め定められているものとする。尚、本実施形態に係る断線検知装置8において目標電圧上昇部を設ける箇所は、第2の実施形態に係る目標電圧抑制部114と同様の箇所、すなわち、図示しない目標電圧生成部と誤差アンプ101との間であるものとする。
本実施形態に係る処理部113は、第8の実施形態で説明したように電流VA、及び端子電圧Vに基づき、制御部102に指示を与えると共に、直流電動機の状態を判断する。さらに、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下となったときに、目標電圧VTを上昇させる指示を上昇指示として目標電圧上昇部に与える。
以上より、本実施形態では、電流VAがしきい値th1以下となったときには、端子電圧Vが目標電圧VTになるように制御されているために略ゼロとなることがなくなる。したがって、本実施形態に係る処理部113が目標電圧VTが略ゼロであると判断したときには、直流電動機の中の配線が断線しているために端子電圧Vが略ゼロとなっていると確実に判断できる。尚、本実施形態の説明では、それぞれの構成要素について、第7の実施形態に係る断線検知装置7、及び第2の実施形態に係る断線検知装置2の構成要素との相違点のみを説明し、重複する説明は省略した。
(第9の実施形態)
図16は、本発明の第9の実施形態に係る断線検知装置9の回路構成を示すブロック図である。本実施形態に係る断線検知装置9を第7の実施形態に係る断線検知装置7と比較すると、第7の実施形態では端子TLの端子電圧Vを電圧検知部112で逐次検知していたのに対して、本実施形態では第3の実施形態と同様に、前述の接続点PLにおける接続点電圧VPLを電圧検知部115で逐次検知する点が相違する。したがって、本実施形態に係る断線検知装置9において、他の実施形態に係る断線検知装置と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。尚、本実施形態の説明においても、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明する。
本実施形態に係る処理部113は、図16に示す回路構成であっても、第3の実施形態で説明したように接続点電圧VPLに基づいて直流電動機の中の配線が断線しているか否かを判断することができる。ただし、本実施形態では、図17A〜図17Cにそれぞれ示すように、接続点PLにおける接続点電圧VPLの推移が図7Cを参照しながら第3の実施形態で説明した推移と異なる。
図17Aは、上段スイッチング素子104の開状態と閉状態とが切り替わるタイミングの一例を示すタイミングチャートである。また、図17Bは、下段スイッチング素子105の開状態と閉状態とが切り替わるタイミングの一例を示すタイミングチャートである。また、図17Cは、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105がそれぞれ図17A、及び図17Bに示すタイミングで開閉状態を切り替えられたときの接続点PLにおける接続点電圧VPLの推移を示す図である。
図17Cに示すように、本実施形態に係る断線検知装置9の回路構成では、デッドタイム(期間DT)における端子電圧VPLが第3の実施形態と異なる。すなわち、図5に示す第3の実施形態に係る断線検知装置3の回路構成のように下段スイッチング素子105と並列にダイオード108を接続した場合には、図7Cを参照して説明したように、デッドタイム(期間DT)における接続点電圧VPLが、接地電圧、すなわち、0Vよりも順方向降下電圧VFだけ降下する。これに対して、図16に示す本実施形態に係る断線検知装置9の回路構成のように上段スイッチング素子104と並列にダイオード108を接続した場合には、図17Cに示すように、デッドタイム(期間DT)における接続点電圧VPLが、電源電圧VBよりも順方向降下電圧VFだけ上昇する。
この理由は、本実施形態に係る回路構成では、デッドタイム、すなわち、上段スイッチング素子104、及び下段スイッチング素子105がそれぞれ開状態であるときは、インダクタンス素子106に蓄積された直流電力がレンツの法則に従ってダイオード108の順方向に流れることに起因する。より詳細には、ダイオード108の電源103側の接続点における電圧は電源電圧VBであって、ダイオード108のインダクタンス素子106側の接続点における電圧は、ダイオード108の順方向降下電圧VFだけ電源電圧VBよりも相対的に高くなるからである。
これに対して、本実施形態に係る回路構成において、直流電動機(負荷110)の中の配線が断線しているときは、インダクタンス素子106は、ダイオード108を介して直流電動機(負荷110)に直流電力を流すことができない。このため、本実施形態に係る回路構成において、直流電動機(負荷110)の中の配線が断線しているときは、第3の実施形態と同様に、接続点PLの接続点電圧VPLは略ゼロとなる。
したがって、本実施形態に係る処理部113は、接続点電圧VPLがゼロを超えているか否かを逐次判断することによって、直流電動機の中の配線が断線しているか否かを判断することができる。そして、本実施形態に係る処理部113は、接続点電圧VPLがゼロを超えていないと判断したとき、直流電動機の中の配線が断線していると判断して、第1の実施形態で説明した断線情報を生成する。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置9の説明である。本実施形態に係る断線検知装置9によれば、上述したように直流電動機(負荷110)を接地する代わりに電源103に接続した回路構成でも、接続点電圧VPLに基づいて直流電動機(負荷110)が断線しているか否かを直流電動機(負荷110)の状態としてより正確に判断できる。
尚、本実施形態に係る処理部113が、接続点PLの接続点電圧VPLがゼロを超えているか否かを判断するために、ゼロから、電源電圧VBよりもダイオード108の順方向電圧VFだけ高い電圧との間の任意の電圧を示すしきい値th4を予め定めておいてもよい。そして、処理部113は、接続点電圧VPLがしきい値th4を超える期間が生じるか否かを、予め定められた期間(例えば、いずれか一方のスイッチング素子が開状態、及び閉状態を繰り返すときの周期と等しい期間など)において判断するようにしてもよい。
また、本実施形態の説明では、それぞれの構成要素について、第7の実施形態に係る断線検知装置7、及び第3の実施形態に係る断線検知装置3の構成要素との相違点のみを説明し、重複する説明は省略した。
(第9の実施形態の変形例)
第3の実施形態は、処理部113が、直流電動機(負荷110)が断線しているか否かのみを判断する実施形態である。そして、第3の実施形態の変形例では、直流電動機(負荷110)の中の配線が断線しているか否かだけでなく、直流電動機の空転と断線とを判断できるように第3の実施形態に係る断線検知装置3を変形した変形例について説明した。このように第3の実施形態を変形するのと同様に、第9の実施形態を変形することも可能である。すなわち、第9の実施形態に係る断線検知装置9を変形することによって、直流電動機の空転と断線とを判断することができる。
より詳細には、本変形例に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下になったときに、上段スイッチング素子104を常に開状態にする指示を制御部102に与える。そして、上段スイッチング素子104を常に開状態にしてから、本変形例に係る処理部113は、第9の実施形態で説明したように接続点電圧VPLがゼロを超えるか否かを判断する。本変形例に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であるときに、接続点電圧VPLがゼロを超えるように予め定められたしきい値th5を超えると判断したとき、直流電動機の回転子が空転していると判断する。一方、本変形例に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であるときに、接続点電圧VPLがしきい値th5を超えないときに、直流電動機が断線していると判断する。
ここで、電流VAがしきい値th1以下であり、接続点電圧VPLがしきい値th5を超えないときに、本変形例に係る処理部113が、直流電動機の中の配線が断線していると判断できるのは、上段スイッチング素子104が常に開状態であり、且つ直流電動機の中の配線が断線すると、電源103から直流電力が流れないからである。
一方、電流VAがしきい値th1以下であり、接続点電圧VPLがしきい値th5を超えるときに、本変形例に係る処理部113が、直流電動機の回転子が空転していると判断できるのは、電流VAがしきい値th1以下であって、直流電動機の回転子にかかる負荷トルクが低いと判断できるからである。さらに、上段スイッチング素子104が常に開状態であるときに、接続点電圧VPLがしきい値th5を超えるのは、直流電動機の中の配線が断線しておらず、回転子が回転しており、電源103から供給される直流電力が、直流電動機、抵抗素子109、インダクタンス素子106、及び下段スイッチング素子105に流れているからである。したがって、本変形例に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であり、接続点電圧VPLがしきい値th5を超えるときに、直流電動機の回転子が空転していると判断できる。
以上が、本変形例の説明である。本変形例に係る断線検知装置によれば、直流電動機(負荷110)の他端の端子を接地する代わりに電源103に接続した回路構成でも、第3の実施形態の変形例と同様に、直流電動機(負荷110)の状態として、空転と断線とを区別してより正確に判断できる。
尚、本実施形態の説明では、それぞれの構成要素について、第7の実施形態に係る断線検知装置7、及び第3の実施形態の変形例に係る断線検知装置の構成要素との相違点のみを説明し、重複する説明は省略した。
(第10の実施形態)
第4の実施形態では、誤差電圧VDに基づいて直流電動機の空転と断線とを判断するために、第1の実施形態に係る電圧検知部112に代えて電圧検知部116を備えるものとした。そして、これと同様に、第7の実施形態に係る断線検知装置7の電圧検知部112に代えて電圧検知部116を備え、第10の実施形態に係る断線検知装置10を構成してもよい。これにより、本実施形態に係る断線検知装置10は、直流電動機(負荷110)の空転と断線とを、第4の実施形態に係る断線検知装置4と同様に判断できる。
より詳細には、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であるときに上段スイッチング素子104を常に開状態にする指示を制御部102に与える。上段スイッチング素子104を常に開状態にした後、本実施形態に係る処理部113は、誤差電圧VDが予め定められた期間Dを通じて予め定められた正の電圧VMと略等しいか否かを判断する。この理由は、本実施形態では、直流電動機の中の配線が断線しているときは、第7の実施形態で説明したように端子電圧Vが略ゼロの一定の電圧となる。そして、端子電圧Vが略ゼロの一定の電圧となると、第4の実施形態で説明したように、誤差アンプ101によって生成される誤差電圧VDも、略ゼロの端子電圧Vと目標電圧VTとの差に比例した正の電圧となる。
そこで、本実施形態に係る処理部113は、第4の実施形態に係る処理部113と同様に、電流VAがしきい値th1以下であるときに、前述の期間Dを通じて前述の電圧VMと誤差電圧VDとが略等しいか否かを判断する。これにより、本実施形態に係る処理部113は、第4の実施形態に係る処理部113と同様に、直流電動機の中の配線が断線しているか否かを判断できる。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置10の説明である。尚、予め定められた電圧VMとは、誤差アンプ101の飽和電圧であってもよい。
尚、本実施形態の説明では、それぞれの構成要素について、第7の実施形態に係る断線検知装置7、及び第4の実施形態に係る断線検知装置4の構成要素との相違点のみを説明し、重複する説明は省略した。
(第11の実施形態)
第5の実施形態では、インダクタンス素子106の両端における差の電圧に基づいて直流電動機の空転と断線とを判断するために、第1の実施形態に係る電圧検知部112に代えて電圧検知部117を備えるものとした。そして、これと同様に、第7の実施形態に係る断線検知装置7の電圧検知部112に代えて電圧検知部117、すなわち、差動増幅器を備え、第11の実施形態に係る断線検知装置11を構成してもよい。これにより、本実施形態に係る断線検知装置11は、直流電動機(負荷110)の空転と断線とを、第5の実施形態に係る断線検知装置5と同様に判断できる。
より詳細には、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下となったときに、まず、下段スイッチング素子105を常に開状態にさせる指示を制御部102に与える。次に、本実施形態に係る処理部113は、電圧検知部117から取得した信号の電圧VGが前述のしきい値th3を超えていないとき、直流電動機の中の配線が断線していると判断する。一方、本実施形態に係る処理部113は、電圧検知部117から取得した信号の電圧VGがしきい値th3を超えているとき、直流電動機の回転子が空転していると判断する。
本実施形態に係る処理部113が、電流VAがしきい値th1以下であって、電圧VGがしきい値th3を超えていないときに、直流電動機の中の配線が断線していると判断できる理由について説明する。この理由は、第5の実施形態で説明した理由と同様に、上段スイッチング素子104を常に開状態にし、下段スイッチング素子105のみの開閉状態をPWM制御したとしても、電源103から供給される直流電力が、抵抗素子109、及びインダクタンス素子106などに流れない。このため、直流電動機の中の配線が断線しているときは、インダクタンス素子106の両端の差の電圧が略ゼロとなる。したがって、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であって、電圧VGがしきい値th3を超えていないときに、直流電動機の中の配線が断線していると判断できる。
一方、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であって、電圧VGがしきい値th3を超えているときに、直流電動機の回転子が空転していると判断できる。この理由は、電流VAがしきい値th1以下であるときとは、直流電動機の回転子にかかる負荷トルクが相対的に低いからである。また、電圧VGがしきい値th3を超えているときとは、上段スイッチング素子104を常に開状態にして、下段スイッチング素子105のみの開閉状態をPWM制御しているときに、インダクタンス素子106の両端にしきい値th3を超える差の電圧が生じており、直流電動機の中の配線が断線せずに回転子が回転しており、インダクタンス素子106に電流が流れていると考えられるからである。したがって、本実施形態に係る処理部113は、電流VAがしきい値th1以下であって、電圧VGがしきい値th3を超えているときに、直流電動機の回転子が空転していると判断できる。
以上が、本実施形態に係る断線検知装置11の説明である。本実施形態に係る断線検知装置11によれば、直流電動機(負荷110)の他端の端子を接地する代わりに電源103に接続した回路構成でも、第5の実施形態と同様に、直流電動機(負荷110)の状態として、空転と断線とを区別してより正確に判断できる。
尚、本実施形態の説明では、それぞれの構成要素について、第7の実施形態に係る断線検知装置7、及び第5の実施形態に係る断線検知装置5の構成要素との相違点のみを説明し、重複する説明は省略した。
第1の実施形態、及び第2の実施形態の説明では、直流電動機の中の配線が断線しているときには、インダクタンス素子106から直流電動機に電流が流れずに、端子電圧Vが電源103から供給される直流電力の電圧VBと略等しくなると説明した。しかしながら、第1の実施形態、及び第2の実施形態では、上述したように、直流電動機には抵抗素子109が接続されており、電流検知部111は、抵抗素子109の両端に接続されている。そして、電流検知部111の中には内部抵抗を有するものがある。内部抵抗を有する電流検知部111を用いると、直流電動機の中の配線が断線しているときでも、直流電力がインダクタンス素子106から電流検知部111に流れる。このため、直流電動機の中の配線が断線しているときでも、電流検知部111で直流電力が消費され、直流電動機の端子電圧Vは、電流検知部111で消費される直流電力の分だけ降下する。
つまり、電流検知部111の内部抵抗を考慮すると、直流電動機の中の配線が断線しているときでも端子電圧Vが電源電圧VBと略等しくならない場合がある。この場合でも、第1の実施形態、及び第2の実施形態に係る処理部113のそれぞれが、端子電圧Vが電源電圧VBと略等しいか否かを正確に判断するためには、図18に示すように、抵抗素子120を備えるとよい。
抵抗素子120は、電源103と直流電動機(負荷110)の端子TLとの間に接続され、直流電動機の中の配線が断線しており、電源103から供給される直流電力が流れないときに、端子電圧TLを電源電圧VBに引き上げる所謂プルアップ抵抗である。第1の実施形態に係る断線検知装置1が、図18に示すように、抵抗素子120を備えることにより、電流検知部111が内部抵抗を有していたとしても、処理部113は、直流電動機の中の配線が断線している場合には、直流電動機(負荷110)の中の配線が断線していることを正確に判断することができる。尚、図18には、一例として、第1の実施形態に係る断線検知装置1が抵抗素子120をさらに備える場合のブロック図を示したが、第2の実施形態に係る断線検知装置2においても、電源103と直流電動機(負荷110)との間に抵抗素子120を備えることによって、同様の効果を得ることができる。尚、抵抗素子120は、負荷110の内部抵抗よりも十分に大きな抵抗値を有するものとする。
また、第7の実施形態に係る断線検知装置7において電流検知部111の内部抵抗を上述したように考慮する場合には、図19に示すように抵抗素子120を接続するとよい。すなわち、第7の実施形態に係る断線検知装置7のように負荷110の他方の端子を接地する代わりに電源103に接続する回路構成で電流検知部111の内部抵抗を上述したように考慮する場合には、図19に断線検知装置12として示すように抵抗素子109と端子TLとを接続する配線に抵抗素子120の一端を接続し、他端を接地するとよい。この理由は、電流検知部111が内部抵抗を有していると、その内部抵抗に応じた起電力が抵抗素子109の両端に生じる場合があるからである。そして、電流検知部111の内部抵抗により抵抗素子109の両端に生じると、直流電動機(負荷110)の中の配線が断線しているにも拘わらず、端子TLの端子電圧Vが略ゼロにならない場合があるからである。これにより、直流電動機の他方の端子を電源103と上段スイッチング素子104とを結ぶ配線に接続している回路構成で電流検知部111が内部抵抗を有していたとしても、端子電圧Vが略ゼロとなるときには、図19に示すように接続した抵抗素子120で端子電圧Vが略ゼロの接地電圧となるため、上述したように直流電動機(負荷110)の中の配線が断線していることを正確に判断することができる。
また、上述した全ての実施形態、及び変形例では、下段スイッチング素子105、及びダイオード108がそれぞれ個別の構成要素である場合を説明した。しかしながら、下段スイッチング素子105として、MOSトランジスタなど、ダイオード108と順方向が同じ寄生ダイオードを有するスイッチング素子を用いる場合には、ダイオード108は必ずしも備えられていなくてもよい。
また、上述した全ての実施形態、及び変形例では、下段スイッチング素子105、及びダイオード108を並列に接続する構成を説明した。しかしながら、上述した全ての実施形態、及び変形例では、ダイオード108のみを用いた構成でも、それぞれの実施形態、及び変形例に係る処理部113、又は処理部119の処理を変更することなく、同様の効果を得ることができる。この理由について説明すると、例えば、第1の実施形態では、上述したように、ダイオード108を下段スイッチング素子105の接地側の配線から接続点PLとインダクタンス素子106とを接続する配線に向かって順方向に接続しているため、下段スイッチング素子105を常に開状態にしたときに、インダクタンス素子106に蓄積された直流電力が直流電動機(負荷110)に流れて、端子電圧Vが降下する。
これに対して、下段スイッチング素子105を備えない構成(ダイオード108を備える構成)では、直流電動機に流れるときの直流電力の電流VAがしきい値th1を超えるときであっても、制御部102が、下段スイッチング素子105を常に開状態にしているときと同様に上段スイッチング素子104のみの開閉状態を切り替えることによって、第1の実施形態で説明した電流VAがしきい値th1以下であるときと同様に、端子電圧Vが目標電圧VTになるように制御することができる。しかしながら、直流電動機の中の配線が断線しているときには、制御部102が、上段スイッチング素子104のみの開閉状態を、下段スイッチング素子105を常に開状態にしているときと同様に切り替えたとしても、第1の実施形態で説明したように端子電圧Vは、電源電圧VBと略等しくなる。したがって、上述した全ての実施形態、及び変形例において、下段スイッチング素子105を取り除いたとしても、電流VAに拘わらずに、上段スイッチング素子104の開閉状態を直流電動機の回転子が通常回転しているときと同様に切り替えることによって、処理部113、又は処理部119の処理を変更することなく、下段スイッチング素子105を備える場合と同様の効果を得ることができる。以上が、上述した全ての実施形態、及び変形例では、ダイオード108のみを用いた構成でも、それぞれの実施形態、及び変形例に係る処理部113、又は処理部119の処理を変更することなく、同様の効果を得ることができる理由の説明である。
また、上述した全ての実施形態、及び変形例では、負荷110が直流電動機である場合を一例として説明した。しかしながら、それぞれの実施形態、及び変形例に係る負荷110は、直流電動機に限られるものではなく、直流電力で動作する負荷であればどのような負荷であってもよい。ただし、直流電動機の回転子のように直流電力で回転体を駆動する負荷でない負荷、すなわち、回転子の空転が生じない負荷を負荷110として用いる場合には、一例として、空転情報を生成する代わりに、負荷110に供給される直流電力の電流VAが低下していることを示す電流低下情報を生成するようにしてもよい。
また、上述した全ての実施形態、及び変形例における処理部113、又は処理部119は、それぞれの実施形態、及び変形例で説明したフローチャートの処理を実行するLSI(Large Scale Integration)、マイクロコンピュータ、及びCPU(Central Processing Unit)などで実現されてもよいし、それぞれの実施形態、及び変形例で説明したフローチャートの処理を実行した場合と同一の作用を及ぼす電気回路(例えば、コンパレータなどを用いた電気回路)で実現されてもよい。
また、上述した全ての実施形態、及び変形例における処理部113は、電圧検知部を用いることなく、電圧を直接検知できるように構成されていてもよい。
ここで、全ての実施形態、及び変形例における図示しない目標電圧生成部について説明する。上述した全ての実施形態、及び変形例に係る断線検知装置は、一例として、自動車などの移動体に搭載される燃料ポンプを駆動する直流電動機の状態を判断するために用いることができる。この場合、図示しない目標電圧生成部は、自動車のエンジンの状態に応じて、直流電動機の回転子の回転数を制御するための目標電圧を生成して、燃料ポンプの燃料の供給量を増減させるエンジンECU(Electric Control Unit)に相当する。
そして、上述した全ての実施形態、及び変形例に係る断線検知装置のそれぞれが、自動車などの移動体に搭載される燃料ポンプを駆動する直流電動機の状態を判断するために用いられる場合、処理部113、又は処理部119によって生成される空転情報、及び断線情報は、直流電動機の空転、又は断線を燃料ポンプに生じた異常として前述のエンジンECUに通知するための情報に相当する。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。