JP2011049391A - 軟磁性圧粉磁芯、及び、その製造方法 - Google Patents

軟磁性圧粉磁芯、及び、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高密度化されているとともに、1T磁界及びコアロスが小さく、さらにはコア抵抗が格別に高められた、高性能な軟磁性圧粉磁芯、及び、そのような軟磁性圧粉磁芯を簡易且つ低コストで製造し得る、生産性及び経済性に優れる製造方法を提供する。
【解決手段】金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び潤滑剤を少なくとも含有する軟磁性圧粉磁芯の製造方法であって、金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び50〜170℃の融点を有する潤滑剤を少なくとも含有する混合物を温間成形する工程と、前記温間成形後に得られる成形体を酸素含有雰囲気下で熱処理する工程と、を少なくとも有する軟磁性圧粉磁芯の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、軟磁性圧粉磁芯、及び、その製造方法に関する。
従来、インダクタンス素子等の電磁気デバイスに備えられる磁芯として、軟磁性圧粉磁芯が用いられている。この種の軟磁性圧粉磁芯の性能を評価する項目としては、主に、密度(g/cm)と、絶縁性を示すコア抵抗(mΩ)と、磁束密度Bが1Tとなる際の磁界Hである1T磁界(A/m)と、磁芯の損失を示すコアロス(W/kg)がある。通常、密度及び絶縁性が高く、コアロス及び1T磁界が低い軟磁性圧粉磁芯ほど、性能が良いとされている。
かかる軟磁性圧粉磁芯は、一般に、高密度化を図るとともに絶縁性の向上及び1T磁界の低減のために、リン酸処理などにより絶縁膜が形成された鉄を主成分とする複合磁性粒子(粉末)を温間成形することにより製造されている。また、温間成形後において、温間成形時の圧縮歪を解放してコア抵抗を高めるとともにコアロスを低減させるために、不活性雰囲気下にて十分に高い温度で熱処理(アニール処理)することが、一般的に行われている。
一方、温間成形時における変形を促進してさらなる高密度化を図る目的で、潤滑剤として金属石鹸を添加する試みが為されている。軟磁性圧粉磁芯の製造において用いられる金属石鹸としては、例えば、特許文献1に示すように、ステアリン酸リチウムが一般的である。
また、潤滑剤は、軟磁性材料に添加する場合のみならず、軟磁性圧粉磁芯を製造する金型に用いられる場合がある。例えば、特許文献2に示すように、軟磁性圧粉磁芯の金型からの離型性を向上させる目的で、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸リチウムを予め金型に塗布することが知られている。
一方、特許文献3には、ガスアトマイズ法又は高速急冷法により製造されたFe−Al−Si系合金粉末に絶縁剤としてシリコーン樹脂を混合圧縮してコアを成形した後、不活性雰囲気下及び酸素を含有する酸化性雰囲気下でそのコアを順次熱処理することにより、コアロスの小さい圧粉コアが得られると記載されている。
また、特許文献4には、ガスアトマイズ法により製造されたFe−Al−Si系合金粉末に結着剤としてシリコーン樹脂を混合圧縮してコアを成形した後、酸素を含有する酸化性雰囲気下でそのコアを熱処理することにより、コアロスの小さい圧粉コアが得られると記載されている。
特開2006−183121号公報 特開2005−072112号公報 特開2001−011563号公報 特開平9−074011号公報
現在、軟磁性圧粉磁芯においては、さらなる高密度化、コアロスの低減、1T磁界の低減、高コア抵抗への要望があり、従来の軟磁性圧粉磁芯の性能を超える軟磁性圧粉磁芯が要望されている。
しかしながら、上記特許文献3及び4に記載の軟磁性圧粉磁芯は、ビッカース硬さが高いFe−Al−Si系合金粉末を用いているので、成形性が悪く、その結果、密度が上がらず、1T磁界が大きくなってしまうという問題があった。しかも、上記特許文献3及び4に記載の軟磁性圧粉磁芯は、合金粉末の製造が煩雑なため、生産性及び経済性に劣るものであった。
本発明は、かかる実情に鑑みて為されたものであり、その目的は、高密度化されているとともに、1T磁界及びコアロスが小さく、さらにはコア抵抗が格別に高められた、高性能な軟磁性圧粉磁芯、及び、そのような軟磁性圧粉磁芯を簡易且つ低コストで製造し得る、生産性及び経済性に優れる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、金属磁性粉末の表面に絶縁膜を有する複合磁性粒子を特定の潤滑剤とともに温間成形した後に酸素含有雰囲気下にて熱処理(アニール処理)することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の軟磁性圧粉磁芯の製造方法は、金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び潤滑剤を少なくとも含有する軟磁性圧粉磁芯の製造方法であって、金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び50〜170℃の融点を有する潤滑剤を少なくとも含有する混合物を温間成形する工程と、前記温間成形後に得られる成形体を酸素含有雰囲気下で熱処理する工程と、を少なくとも有するものである。
本発明者らが、上記の製法により得られる軟磁性圧粉磁芯の特性を測定したところ、その軟磁性圧粉磁芯は、従来のものに比して、高密度化され且つ高い透磁率を有するのみならず、高い絶縁性を有しコアロスが小さいことが判明した。かかる効果が奏される作用機構の詳細は、未だ明らかではないものの、例えば、以下のとおり推定される。
すなわち、上記の製法においては、50〜170℃の融点を有する潤滑剤、換言すれば、従来に比して比較的に融点が低い潤滑剤を用いているため、温間成形時の際の軟磁性材料の流動性が向上し、また、圧力印加の際の軟磁性材料の変形が促進される。しかも、温間成形時に軟磁性材料間に十分に且つ容易に入り込む程度に潤滑剤が溶融或いは十分に軟化し得るので、温間成形時に軟磁性材料の周囲が潤滑剤によって十分に被覆される。また、絶縁性を有する潤滑剤を使用する場合には、その潤滑剤自身が軟磁性材料間に介在する絶縁層として機能するので、軟磁性材料間の絶縁性を向上させ得る。そのため、かかる潤滑剤の使用により、成形性が高められて高密度化が図られるとともに、高い絶縁性をも付与できるので、コアロスが格別に低下する。その上さらに、上記の製法においては、酸素含有雰囲気下で熱処理するので、絶縁膜によって被覆されずに露出した金属磁性粉末表面が複合磁性粒子に存在していても、金属磁性粉末表面が酸化されることによって、或いは、金属磁性粉末表面及び/又は絶縁膜上に潤滑剤が被覆することによって、高度な絶縁性を付与(回復)し得る。かかる熱処理時に潤滑剤が熱分解する際には、絶縁膜に存在する酸素の引き抜きが生じ得るが、熱処理を酸素含有雰囲気下で行うことにより、かかる酸素の引き抜きをも抑制し得るので、絶縁膜の破損が抑制される。これらの作用が相まった結果、50〜170℃の融点を有する潤滑剤を用いて酸素含有雰囲気下で熱処理することにより、高密度化のみならず、高度の絶縁性が付与(回復)された結果、渦電流損失の低下が図られ、1T磁界及びコアロスが格別に低下した軟磁性圧粉磁芯が得られたものと推察される。但し、作用は、これらに限定されない。
一方、従来の軟磁性圧粉磁芯の製造において潤滑剤として一般的に用いられるステアリン酸リチウムは、融点が220℃と高いので、130℃程度の一般的な温間成形条件下では溶融又は十分に軟化しない。そのため、上記のような融点の高い潤滑剤を使用しても、温間成形時における軟磁性材料の流動性の向上及び圧力印加の際の軟磁性材料の変形の促進が不十分となり、高密度化を十分に図ることができない。しかも、上記のような融点の高い潤滑剤は、温間成形時に軟磁性材料間に十分に入り込み難いので、軟磁性材料間に潤滑剤を十分に介在させることができず、軟磁性材料の周囲が潤滑剤によって十分に被覆され難い。また、不活性雰囲気下のみによる熱処理では、絶縁膜及び/又は潤滑剤の劣化が生じ易いものと考えられる。これらが相まった結果、従来においては、高密度化及び電気抵抗を実現できず、その結果、渦電流損失の低下、並びに、1T磁界及びコアロスの低下を図ることができなかったものと推察される。
ここで、前記酸素含有雰囲気は、酸素濃度が7.0%以上13.9%以下の雰囲気であることが好ましい。かかる範囲内に調整することにより、コア抵抗が格別に高められ、コアロスが著しく低下した軟磁性圧粉磁芯を得ることができる。本発明者らの知見によれば、酸素分圧が7.0%を下回る或いは13.9%を上回ると、潤滑剤が熱分解する際に絶縁酸化膜から酸素を引き抜く等して絶縁酸化膜の破損が生じ易くなり得る、或いは、潤滑剤が熱分解して絶縁層として機能し難くなり得ると推察される。但し、作用は、これらに限定されない。
さらに、前記潤滑剤は、金属石鹸であることが好ましい。かかる金属石鹸は、温間成形時に軟磁性材料の周囲に潤滑剤の均一な被膜を形成し易く、また、絶縁性にも優れるので、上記の製造方法に使用する潤滑剤として、特に好適に用いられる。金属石鹸の好ましい具体例としては、例えば、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸銅等が挙げられ、より好ましくはオレイン酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛であり、さらに好ましくはオレイン酸亜鉛である。
また、前記金属磁性粉末は、鉄を99%以上含有することが好ましい。鉄を99%以上含有する金属磁性粉末は、上記従来のFe−Al−Si系合金粉末や純度99%未満の鉄系の金属磁性粉末に比して、粒子のビッカース硬さが低く、成形性に優れる傾向にある。したがって、鉄を99%以上含有する金属磁性粉末を用いることにより、より一層の高密度化が図られ、1T磁界の低下が図られる。
一方、本発明の軟磁性圧粉磁芯は、上記本発明の軟磁性圧粉磁芯の製造方法によって有効に得られるものであって、金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び50〜170℃の融点を有する潤滑剤を温間成形した後に熱処理してなる軟磁性圧粉磁芯であって、破断面のSEM−EDS分析における600μm×400μm角領域の強度比C/Feが0.034以上であるものである。
ここで、強度比C/Feが0.034以上であって高性能な軟磁性圧粉磁芯を再現性良く実現する観点から、上記の軟磁性圧粉磁芯は、前記熱処理を酸素含有雰囲気下で行ったものであることが好ましい。
また、上記と同様に理由により、上記の軟磁性圧粉磁芯における前記潤滑剤は、金属石鹸であることが好ましい。
さらに、上記と同様に理由により、上記の軟磁性圧粉磁芯における前記金属磁性粉末は、鉄を99%以上含有するものが好ましい。
本発明によれば、高密度化されているとともに、1T磁界及びコアロスが小さく、さらにはコア抵抗が格別に高められた、高性能な軟磁性圧粉磁芯、並びに、そのような軟磁性圧粉磁芯を簡易且つ低コストで製造し得る、生産性及び経済性に優れる製造方法が実現される。
本実施形態の軟磁性圧粉磁芯の製造方法を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。
本実施形態の軟磁性圧粉磁芯は、金属磁性粉末の表面に絶縁膜が形成された複合磁性粒子(軟磁性材料)と、50〜170℃の融点を有する潤滑剤と、を含有するものであり、これら複合磁性粒子及び潤滑剤を温間成形した後に熱処理してなるものである。
複合磁性粒子を構成する金属磁性粉末は、鉄(純鉄および不可避的不純物を含む鉄が含まれる)を主成分とする鉄基粉(粒子、粉末)である。金属磁性粉末の具体例としては、例えば、鉄のみ、鉄に他の元素(例えば、Si、P、Co、Ni、Cr、Al、Mo、Mn、Cu、Sn、Zn、B,V、Snなど)を少量添加した組成物、パーマロイ或いはセンダスト等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。好ましい金属磁性粉末としては、特に限定されないが、鉄を99wt%以上含むものが挙げられる。鉄を99%以上含有する金属磁性粉末は、上記従来のFe−Al−Si系合金粉末や純度99%未満の鉄系の金属磁性粉末に比して、粒子のビッカース硬さが低く、成形性に優れる傾向にあるので、これを用いることで、より一層の高密度化が図られ、1T磁界の低下が図られる。とりわけ、0.5wt%以下のP、0.1wt%以下のMn、0.03wt%以下のAl、V、Cu、As、Mo、残部が鉄の組成を有するものが、より好ましい。
金属磁性粉末の粒径は、特に限定されず、所望の性能に応じて適宜設定すればよい。なお、金属磁性粉末の粒径は、形成される軟磁性圧粉磁芯の密度及び1T磁界に影響を与え、粒径が過度に小さいと温間成形時の圧力により軟磁性材料が変形し難くなる傾向にある。そのため、金属磁性粉末の粒径は、例えば、平均粒径200μm程度が好ましい。
金属磁性粉末は、公知の方法により製造することができ、その製法は特に限定されない。例えば、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、回転アトマイズ法、鋳造粉裁法等の公知の製法を用いて、任意の組成及び任意の粒径の金属磁性粉末を得ることができる。
絶縁膜は、金属磁性粉末の表面に形成され、金属磁性粉末に絶縁性を付与している。絶縁膜の具体例としては、金属磁性粉末の表面に絶縁性を付与するものであれば特に限定されないが、例えば、リン酸鉄、ホウ酸鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄、炭酸鉄、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、酸化クロム、酸化亜鉛等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。耐熱性の観点から、好ましい絶縁膜としては、リン酸鉄、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、酸化クロム、酸化亜鉛等が挙げられ、より好ましくはリン酸鉄である。
50〜170℃の融点を有する潤滑剤は、温間成形時の際の軟磁性材料の流動性を向上させ、圧力印加の際の軟磁性材料の変形を促進するとともに、複合磁性粒子間に介在する保護膜として機能する。
かかる潤滑剤は、複合磁性粒子(金属磁性粉末)間に介在する絶縁層としても機能させる観点から、絶縁性を有するものが好ましい。かかる潤滑剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、融点が78℃のオレイン酸亜鉛(以下、単に「Ore−Zn」と称する場合がある。)、融点が125℃のステアリン酸銅(以下、単に「St−Cu」と称する場合がある。)、融点が127℃のステアリン酸亜鉛(以下、単に「St−Zn」と称する場合がある。)、融点が150℃のステアリン酸カルシウム(以下、単に「St−Ca」と称する場合がある。)、及び、融点が160℃のステアリン酸アルミニウム(以下、単に「St−Al」と称する場合がある。)等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。上記の金属石鹸の中でも、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸銅及びステアリン酸亜鉛が好ましく、より好ましくはオレイン酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛、特に好ましくはオレイン酸亜鉛である。
ここで、温間成形時における複合磁性粒子と潤滑剤との関係について説明する。後述するように、温間成形時には、潤滑剤が添加された複合磁性粒子は、一般的には130℃程度に加熱されつつ加圧される。かかる温間成形時において、複合磁性粒子に添加された潤滑剤は、周辺温度が潤滑剤の融点に近づくため形態が変化する。具体的には、融点よりも−50℃以下では潤滑剤は層状の規則正しい結晶構造を保持しているが、融点よりも−30℃以上になると潤滑剤は層状の規則正しい結晶構造にゆるみが生じて限られた大きさの円盤状に変化し、融点以上になると潤滑剤は最終的に液相状態に変化すると考えられる。つまり、潤滑剤は、融点に向かって温度が上昇するに伴い、固相状態から固相と液相との中間状態(軟化状態)へ、さらには溶融状態へと変化し、かかる状態変化に伴って流動性が向上し、複合磁性粒子間に入り込み易くなると考えられる。
そして、本実施形態では、従来に比して融点の低い潤滑剤を用いているので、温間成形時の成形温度(潤滑剤が添加された複合磁性粒子が充填される成形金型の温度)と潤滑剤の融点との温度差が、従来に比して比較的に小さく、それ故、温間成形時に潤滑剤が固相状態から中間状態或いは液相状態に十分に変化する。すなわち、潤滑剤が添加された複合磁性粒子は、特に温間成形時の初期段階、つまり任意の形状に成形される前に、固相状態から中間状態或いは液相状態に変化し、流動性が向上し且つ圧力印加の際の変形し易い状態となる。そのため、温間成形時の初期段階において、印加される圧力により複合磁性粒子同士が良好に滑ることにより粒子間の隙間が小さくなるとともに、印加される圧力により変形し易くなるのでその粒子間の隙間に潤滑剤が十分に入り込んだものとなる。その結果、軟磁性圧粉磁芯の密度は、複合磁性粒子(金属磁性粉末)の理論密度、すなわち真密度に近づいたものとなり、よって、高密度化が図られ、これにより、磁束密度Bが1Tとなる際の磁界Hである1T磁界(A/m)が十分に低減される。
しかも、本実施形態では、従来に比して融点の低い潤滑剤を用いているので、温間成形の初期段階に複合磁性粒子の流動性が向上し且つ圧力印加の際の変形が促進されるので、複合磁性粒子(金属磁性粉末)の周囲を潤滑剤が十分に且つ均一に被覆したものが得られる。そして、この複合磁性粒子(金属磁性粉末)間に介在する潤滑剤が絶縁層としても機能することができるので、得られる軟磁性圧粉磁芯のコア抵抗が格別に高められ、その結果、コアロス(軟磁性圧粉磁芯の場合は、磁芯の損失)の低減が図られる。
例えば、上記の複合磁性粒子は、絶縁膜を有することで絶縁性が付与されているものの、温間成形時に印加される圧力により、絶縁膜が破壊したり、複合磁性粒子が割れて金属磁性粉末が露出したりする等、その絶縁性が損なわれ得る。しかしながら、本実施形態においては、潤滑剤により複合磁性粒子(金属磁性粉末)の周囲が十分に且つ均一に被覆され易いものとなっているので、この潤滑剤が絶縁層として機能することで、複合磁性粒子の絶縁膜単独で得られる絶縁性を遥かに超える絶縁性を担保できる。したがって、軟磁性圧粉磁芯のコア抵抗が格別に高められ、コアロス(軟磁性圧粉磁芯の場合は、磁芯の損失)の低減が図られる。
一方、融点が170℃よりも高い従来の潤滑剤を用いる場合は、温間成形時の成形温度と潤滑剤の融点との温度差が比較的に大きいので、温間成形時に潤滑剤が固相状態から中間状態に十分に変化することができない。すなわち、従来の融点が比較的に高い潤滑剤が添加された複合磁性粒子においては、温間成形時における潤滑剤の流動性の向上及び圧力印加の際の変形促進が不十分であったために、複合磁性粒子間に潤滑剤が十分に入り込むことができず、その結果、複合磁性粒子の周囲を十分に被覆した状態になっていなかったと考えられる。
他方、融点が50℃よりも低い潤滑剤を用いる場合は、常温時に固相状態から中間状態に変化するおそれがあり、また、複合磁性粒子に添加する際に、かかる潤滑剤が複合磁性粒子間に均一に行き渡らない虞がある。さらには、かかる潤滑剤が温間成形時に成形金型へ付着しやすくなる傾向にあり、抜き圧(成形金型から温間成形後の軟磁性圧粉磁芯を離間させるために必要とされる圧力)が増加し、成形性を損なう虞がある。
上記の軟磁性圧粉磁芯は、金属磁性粉末の表面に絶縁膜が形成された複合磁性粒子及び50〜170℃の融点を有する潤滑剤を少なくとも含有する混合物を温間成形し、この温間成形後に得られる成形体を酸素含有雰囲気下で熱処理を施すことにより、製造することができる。以下、本実施形態の軟磁性圧粉磁芯の好ましい製法につき、詳述する。
好ましい製法としては、金属磁性粉末の表面に絶縁膜が形成された複合磁性粒子(軟磁性材料)を準備する工程(S1)と、複合磁性粒子に50〜170℃の融点を有する潤滑剤を添加する工程(S2)と、この混合物、すなわち複合磁性粒子及び潤滑剤を少なくとも含有するものを混練する工程(S3)と、かくして得られる混練物(混合物)を温間成形する工程(S4)と、この温間成形後に得られる成形体を酸素含有雰囲気下で熱処理する工程(S5)と、を経て軟磁性圧粉磁芯を得る方法が挙げられる。
複合磁性粒子を準備する工程(S1)では、金属磁性粉末の表面を絶縁処理して絶縁膜を形成する(S1a)ことにより、複合磁性粒子を得る。金属磁性粉末の絶縁処理方法は、上記で例示した組成の絶縁膜を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、リン酸及びリン酸塩を含有する水溶液を用いて金属磁性粉末を処理してリン酸被膜を形成した後にホットプレート等により70℃程度で乾燥する等、公知の手法を適宜採用できる。なお、金属磁性粉末の表面に絶縁膜が形成された複合磁性粒子の市販品を予め入手することにより、上記S1a工程を省略することができる。
複合磁性粒子に潤滑剤を添加する工程(S2)では、複合磁性粒子に対して所定量の潤滑剤を添加する。ここでは、上述したように、50〜170℃の融点を有する潤滑剤が添加される。潤滑剤の添加量は、使用する潤滑剤の性状によって異なり、特に限定されないが、複合磁性粒子及び潤滑剤の総質量に対して、好ましくは0.02wt%以上0.2wt%以下であり、より好ましくは0.05wt%以上0.15wt%以下である。潤滑剤の添加量が0.02wt%未満であると、複合磁性粒子に対する潤滑剤の量が少なすぎ、潤滑剤が複合磁性粒子の周囲に均一に行き渡り難くなる傾向にある。一方、潤滑剤の添加量が0.2wt%を超えると、複合磁性粒子に対する潤滑剤の量が多すぎ、潤滑剤の添加効果が飽和する傾向にあるとともに、複合磁性粒子の含有率が低下して高密度化及び1T磁界の低減を図り難くなる傾向にある。
複合磁性粒子及び潤滑剤を少なくとも含有する混合物を混練する工程(S3)では、添加した潤滑剤を複合磁性粒子に均一に行き渡らせるために、かかる混合物を混練する。混練は、公知の方法により行えばよく、特に限定されないが、混合機(例えば、アタライタ、振動ミル、ボールミル、Vミキサー等)や増粒機(例えば、流動増粒機、転動増粒機等)等を用いて行うことが好ましい。
温間成形する工程(S4)では、上記のようにして得られる複合磁性粒子及び潤滑剤の混錬物に、熱及び圧力を印加しながら任意の形状に成形する。かかる温間成形は、公知の方法により行えばよく、特に限定されないが、所望する形状のキャビティを有する成形金型を用い、そのキャビティ内に混錬物を充填し、所定の成形温度及び所定の成形圧力で混錬物を圧縮成形することが好ましい。
温間成形時の成形温度は、使用する潤滑剤の融点を考慮して設定すればよく、特に限定されないが、使用する潤滑剤の融点−30℃以上で行うことが好ましく、使用する潤滑剤の融点以上がより好ましい。使用する潤滑剤の融点−30℃以上で温間成形を行なうことにより、潤滑剤が複合磁性粒子間の隙間に十分に入り込み易くなり、潤滑剤を複合磁性粒子の周囲に十分に且つ均一に被覆させ易くなる傾向にある。温間成形時の成形温度は、通常、80度以上200℃以下であり、好ましくは100℃以上160℃以下、より好ましくは120℃以上140℃以下である。使用する潤滑剤の融点により異なるが、温間成形時の成形温度が80℃を下回ると、潤滑剤の状態変化が不十分になり易い傾向にある。一方、温間成形時の成形温度が200℃を超えると、複合磁性粒子或いは金属磁性粉末の酸化が促進されて、得られる軟磁性圧粉磁芯の性能が劣化する傾向にあり、また、製造コストが増加して生産性及び経済性が損なわれ得る。
温間成形時の成形圧力は、特に限定されないが、通常、6ton/cm以上12ton/cm以下とされる。温間成形時の成形圧力が6ton/cmを下回ると、温間成形による高密度化及び1T磁界の低減を図り難くなる傾向にある。一方、温間成形時の成形圧力が12ton/cmを上回ると、圧力印加効果が飽和する傾向にあるとともに、製造コストが増加して生産性及び経済性が損なわれ得る傾向にあり、また、成形金型が劣化し易くなり耐久性が低下する傾向にある。
温間成形後に得られる成形体を酸素含有雰囲気下で熱処理する工程(S5)では、温間成形時において発生する圧縮歪を解放してコア抵抗を高めるとともにコアロス(特に、ヒステリシス損失)を低減させる。熱処理は、公知の方法により行えばよく、特に限定されないが、一般的には、温間成形により任意の形状に成形された軟磁性材料の成形体を、アニール炉を用いて所定の温度で熱処理することにより行うことが好ましい。
熱処理時の処理温度は、特に限定されないが、通常、400〜600℃程度が好ましい。熱処理時の処理温度が600℃を超えると、絶縁膜の分解が促進されて絶縁性が損なわれ、電気抵抗が小さくなる傾向にあり、熱処理時の処理温度が400℃を下回ると、絶縁膜の分解が抑制されて電気抵抗が大きくなる傾向にある。
本実施形態においては、上記の熱処理を酸素含有雰囲気下にて行うことが必要とされる。ここで、酸素含有雰囲気とは、酸素が含まれる雰囲気である限り、特に限定されない。具体的には、例えば、大気雰囲気(通常、20.95%の酸素を含む)、含酸素ガス雰囲気(例えば、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気、水素ガス雰囲気又は炭酸ガス雰囲気等であって、所定量の酸素を含むもの)、真空度の高い雰囲気(所定量の酸素を含むもの)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。酸素含有雰囲気は、酸素濃度が7.0%以上13.9%以下の雰囲気であることが好ましい。かかる範囲内で温間成形された成形体を熱処理することにより、コア抵抗を格別に高めることができるとともに、コアロスを著しく低下させることできる。なお、酸素含有雰囲気の酸素濃度(酸素分圧)の調整は、任意の手法により行うことができ、例えば、大気と不活性ガスとの混合、酸素と水素ガス又は炭酸ガスとの混合、アニール炉内の真空度の調整等により、容易に且つ安価に行うことができる。また、所定量の酸素が含まれる含酸素ガスの市販品を用いることもできる。
かくして得られる軟磁性圧粉磁芯は、破断面のSEM−EDS分析における600μm×400μm角領域の強度比C/Feが0.034以上であることが好ましい。強度比C/Feが0.034以上に制御された軟磁性圧粉磁芯は、高密度化されているとともに、1T磁界及び1kHzコアロスが小さく、さらには、コア抵抗が格別に高められたものである蓋然性が極めて高いことが、本発明者らの知見によって見出されている。すなわち、この破断面のSEM−EDS分析における600μm×400μm角領域の強度比C/Feは、複合磁性粒子と潤滑剤の分布状態を表す指標であり、潤滑剤の添加量を同一とした場合、この値が小さいほど、複合磁性粒子の周囲における潤滑剤の存在量が少ないことを意味し、この値が大きいほど、複合磁性粒子の周囲における潤滑剤の存在量が多いことを意味する。この強度比C/Feが0.034未満であると、潤滑剤が複合磁性粒子上に均一且つ十分に被膜しておらず、それ故に、絶縁性が低く、電気抵抗が小さく、且つ、コアロスが大きくなり、高性能な軟磁性圧粉磁芯が実現されない傾向にある。なお、強度比C/Feの上限は、特に限定されないが、過大に大きな数値の場合には密度の低下及びこれに伴う性能劣化が生じ得るので、0.135以下であることが好ましい。
本明細書において、強度比C/Feは、以下の測定条件で算出される値を意味する。すなわち、走査電子顕微鏡(SEM‐EDS、日本電子株式会社製、型式:JSM‐7001F)を用い、加速電圧3kV、照射電流1.62nA、計測時間200秒、測定視野x100のRapidの条件下にて、軟磁性圧粉磁芯のトロイダルコア破断面の600μm×400μm角領域をサンプリングし、得られたサンプリングデータからノイズ成分を除去するためのバックグラウンド補正を行ない、これによって得られるCのピーク強度をFeのピーク強度で除した値を、強度比C/Fe値とする。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、複合磁性粉末である軟磁性材料(ヘガネス社製、商品名:Somaloy 700 )に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.1wt%添加し、潤滑剤が添加された軟磁性材料を混合機(筒井理化学器械製、商品名:Vミキサー)に入れ、回転数12rpmで10分間混錬した。次に、混錬された軟磁性材料を、成形温度130℃及び成形圧力980Mpa(10ton/cm)の条件で温間成形した。次いで、温間成形された軟磁性材料を、酸素濃度が3.5wt%の窒素雰囲気下にて5℃/minで550℃まで昇温し、その後さらに550℃で1時間保持した。
(実施例2)
酸素濃度が7.0wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例3)
酸素濃度が10.5wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例3の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例4)
酸素濃度が13.9wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例2の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例5)
酸素濃度が17.4wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例3の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例6)
酸素濃度が20.9wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例4の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(比較例1)
酸素濃度が0wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例1の軟磁性圧粉磁芯を得た。
表1に、実施例1〜6及び比較例1の軟磁性圧粉磁芯について、1T磁界(A/m)、1kHzコアロス(W/g、測定装置:ヒューレットパッカード社製、商品名E5060A)、密度(g/cm)、コア抵抗(mΩ)の測定を行った結果を示す。
Figure 2011049391
表1に示す通り、50〜170℃の融点を有する潤滑剤を用い、酸素含有雰囲気下で熱処理を行った実施例1〜6の軟磁性圧粉磁芯は、いずれも、7.650(g/cm)を超える程度まで高密度化されるとともに1T磁界が1250(A/m)を下回る程度まで磁気特性が高められているのみならず、酸素非含有雰囲気下で熱処理を行った比較例1の軟磁性圧粉磁芯に比して、コア抵抗が格別に高められて良好な絶縁性を呈し、しかも、1kHzコアロスが有意に低減されていることが確認された。とりわけ、酸素濃度が7.0%以上13.9%以下の雰囲気下で熱処理を行った実施例2〜4の軟磁性圧粉磁芯は、すべての項目において、極めて優れた性能を有することが確認された。
(実施例7)
まず、複合磁性粉末である軟磁性材料(ヘガネス社製、商品名:Somaloy 700 )に、潤滑剤としてオレイン酸亜鉛を0.1wt%添加し、潤滑剤が添加された軟磁性材料を混合機(筒井理化学器械製、商品名:Vミキサー)に入れ、回転数12rpmで10分間混錬した。次に、混錬された軟磁性材料を、成形温度130℃及び成形圧力980Mpa(10ton/cm)の条件で温間成形した。次いで、温間成形された軟磁性材料を、酸素濃度が3.5wt%の窒素雰囲気下にて5℃/minで450℃まで昇温し、その後さらに450℃で1時間保持することにより、実施例1の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例8)
酸素濃度が7.0wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例9)
酸素濃度が10.5wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例3の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例10)
酸素濃度が13.9wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例2の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例11)
酸素濃度が17.4wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例3の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(実施例12)
酸素濃度が20.9wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例4の軟磁性圧粉磁芯を得た。
(比較例2)
酸素濃度が0wt%の窒素雰囲気下で熱処理すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例1の軟磁性圧粉磁芯を得た。
表2に、実施例7〜12及び比較例2の軟磁性圧粉磁芯について、1T磁界(A/m)、1kHzコアロス(W/g)、密度(g/cm)、コア抵抗(mΩ)の測定を行った結果を示す。
Figure 2011049391
表2に示す通り、50〜170℃の融点を有する潤滑剤を用い、酸素含有雰囲気下で熱処理を行った実施例7〜12の軟磁性圧粉磁芯は、いずれも、7.650(g/cm)を超える程度まで高密度化されるとともに1T磁界が1250(A/m)を下回る程度まで磁気特性が高められているのみならず、酸素非含有雰囲気下で熱処理を行った比較例1の軟磁性圧粉磁芯に比して、コア抵抗が格別に高められて良好な絶縁性を呈し、しかも、1kHzコアロスが有意に低減されていることが確認された。とりわけ、酸素濃度が7.0%以上13.9%以下の雰囲気下で熱処理を行った実施例8〜10の軟磁性圧粉磁芯は、すべての項目において、極めて優れた性能を有することが確認された。
(実施例13〜17及び比較例3)
まず、複合磁性粉末である軟磁性材料(ヘガネス社製、商品名:Somaloy 700 )に、潤滑剤としてオレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸銅、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムを各々0.1wt%添加し、潤滑剤が添加された軟磁性材料を混合機(筒井理化学器械製、商品名:Vミキサー)に入れ、回転数12rpmで10分間混錬した。次に、混錬された軟磁性材料を、成形温度130℃及び成形圧力980Mpa(10ton/cm)の条件で温間成形した。次いで、温間成形された軟磁性材料を、酸素濃度が13.9wt%の窒素雰囲気下にて5℃/minで550℃まで昇温し、その後さらに550℃で1時間保持することにより、実施例13〜17及び比較例3の軟磁性圧粉磁芯を得た。
表3に、実施例13〜17及び比較例3の軟磁性圧粉磁芯について、強度比C/Fe、1T磁界(A/m)、1kHzコアロス(W/g)、密度(g/cm)、コア抵抗(mΩ)の測定を行った結果を示す。
Figure 2011049391
表3に示す通り、50〜170℃の融点を有する潤滑剤を用いた実施例13〜17の軟磁性圧粉磁芯は、高融点潤滑剤を用いた比較例3の軟磁性圧粉磁芯に比して、強度比C/Feが大きいことが確認された。このことから、強度比C/Feは、使用する潤滑剤の融点が小さいほど大きくなることが確認された。そして、強度比C/Feが0.034を超える実施例13〜17の軟磁性圧粉磁芯は、比較例3の軟磁性圧粉磁芯に比して、高密度化されているとともに、1T磁界及び1kHzコアロスが低減し、さらに、コア抵抗が格別に高められていることが確認された。
なお、上述したとおり、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。
以上説明した通り、本発明の軟磁性圧粉磁芯及びその製造方法は、電気・磁気デバイス、及びそれらを備える各種機器、設備、システム等に広く且つ有効に利用可能である。

Claims (8)

  1. 金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び潤滑剤を少なくとも含有する軟磁性圧粉磁芯の製造方法であって、
    金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び50〜170℃の融点を有する潤滑剤を少なくとも含有する混合物を温間成形する工程と、
    前記温間成形後に得られる成形体を酸素含有雰囲気下で熱処理する工程と、を少なくとも有する
    軟磁性圧粉磁芯の製造方法。
  2. 前記酸素含有雰囲気は、酸素濃度が7.0%以上13.9%以下の雰囲気である、
    請求項1に記載の軟磁性圧粉磁芯の製造方法。
  3. 前記潤滑剤は、金属石鹸である、
    請求項1又は2に記載の軟磁性圧粉磁芯の製造方法。
  4. 前記金属磁性粉末は、鉄を99%以上含有する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の軟磁性圧粉磁芯の製造方法。
  5. 金属磁性粉末と該金属磁性粉末の表面に形成された絶縁膜とを有する複合磁性粒子及び50〜170℃の融点を有する潤滑剤を温間成形した後に熱処理してなる軟磁性圧粉磁芯であって、
    破断面のSEM−EDS分析における600μm×400μm角領域の強度比C/Feが0.034以上である、
    軟磁性圧粉磁芯。
  6. 前記熱処理は、酸素含有雰囲気下で行われる、
    請求項5に記載の軟磁性圧粉磁芯。
  7. 前記潤滑剤は、金属石鹸である、
    請求項5又は6に記載の軟磁性圧粉磁芯。
  8. 前記金属磁性粉末は、鉄を99%以上含有する、
    請求項5〜7のいずれか一項に記載の軟磁性圧粉磁芯。
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