JP2011045986A - 数値制御式工作機械の熱変位補正方法及びその熱変位補正装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ボールネジシャフトの全長を複数分割した複数区間に発生する発熱量を、X軸モータの回転速度と制御データとに基づいて50ms毎に求めると共に、ベアリングホルダの温度上昇を50ms毎に検知する。次に、複数区間の発熱量を6400ms分累積した合計発熱量と、ボールネジシャフト端部の温度上昇の代わりにベアリングホルダの温度上昇を用いた非定常熱伝導方程式とに基づいて、複数区間の温度分布を6400ms毎に演算する。最後に、温度分布からボールネジシャフトの複数区間の熱変位量を6400ms毎に演算し、複数区間の熱変位量に基づいて、ボールネジシャフトのナット移動範囲を複数分割した複数の補正区間毎に制御データを夫々補正する補正量を6400ms毎に演算する。
【選択図】図12
Description
次に、複数区間の発熱量を所定期間分累積した合計発熱量と、シャフトのモータ側端部の温度上昇の代わりにベアリングホルダの温度上昇を用いた非定常熱伝導方程式とに基づいて、複数区間の温度分布を前記所定期間毎に演算する。温度分布からシャフトの複数区間の熱変位量を所定期間毎に演算する。最後に、複数区間の熱変位量に基づいて、シャフトのナット移動範囲を複数分割した複数の補正区間毎に制御データを夫々補正する補正量を所定期間毎に演算する。
複数区間の発熱量を所定期間分累積した合計発熱量と、シャフトのモータ側端部の温度上昇の代わりにベアリングホルダの温度上昇を用いた非定常熱伝導方程式とに基づいて、温度分布演算手段が複数区間の温度分布を所定期間毎に演算する。熱変位量演算手段が温度分布からシャフトの複数区間の熱変位量を所定期間毎に演算する。最後に、補正量演算手段が複数区間の熱変位量に基づいて、シャフトのナット移動範囲を複数分割した複数の補正区間毎に制御データを夫々補正する補正量を所定期間毎に演算する。これにより、請求項1と同様の作用を奏する。
工作機械Mは、ワークと工具6とをXYZ直交座標系における各軸方向へ独立に相対移動させることによって、ワークに所望の機械加工(例えば、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施すことができる。図1に示すように、工作機械Mは、ベース1と、ベース1の上部に設けて、ワークの切削加工を行う機械本体2と、ベース1の上部に固定した、機械本体2とベース1の上部を覆う箱状の図示しないスプラッシュカバーとを主体に構成してある。ベース1はY軸方向(図1において右下が工作機械Mの前方であり、Y軸方向は、工作機械Mの前後方向である)に長い略直方体状の鋳造品である。
機械本体2は、ベース1の後部上のコラム座部3に固定され且つ鉛直上方に延びるコラム4と、このコラム4に沿って昇降可能な主軸ヘッド5と、この主軸ヘッド5の内部に回転可能に支持した主軸5Aと、主軸ヘッド5の右側に設け且つ主軸5Aの先端に工具6の工具ホルダを取り付けて交換する工具交換装置(ATC)7と、ベース1の上部に設け且つワークを着脱可能に固定するテーブル8とを主体に構成してある。コラム4の背面側には、箱状の制御ボックス9を設け、この制御ボックス9の内側には、工作機械Mの動作を制御する数値制御装置50(図4参照)を設けてある。
図1、図4に示すように、サーボモータからなるX軸モータ71は、X軸方向(図1の機械本体2の左右方向)にテーブル8を移動駆動する。サーボモータからなるY軸モータ72は、Y軸方向にテーブル8を移動駆動する。この移動機構は以下の構成からなる。テーブル8の下側には直方体状の支持台10を設けてある。その支持台10にはX軸方向に沿って延びる1対のX軸送りガイドを設け、1対のX軸送りガイド上にテーブル8を移動可能に支持している。
図1,図2に示すように、コラム4は、上下方向に延びるZ軸ボールネジシャフトを支持している。主軸ヘッド5は、Z軸ボールネジシャフトに螺合したナット部に支持されている。Z軸モータ73(図4参照)がZ軸ボールネジシャフトを正逆方向に回転駆動することで、主軸ヘッド5がZ軸方向(図1の機械本体2の上下方向)に昇降駆動する。従って、数値制御装置50のCPU51(図4参照)からの制御信号に基づいて、軸制御部63a(図4参照)によりZ軸モータ73が主軸ヘッド5を昇降駆動するようになっている。
図4に示すように、数値制御装置50は、マイクロコンピュータを含んで構成してあり、入出力インタフェース54と、CPU51と、ROM52と、RAM53と、軸制御部61a〜64a,75aと、サーボアンプ61〜64と、微分器71b〜74bなどを備えている。軸制御部61a〜64aは、夫々サーボアンプ61〜64に接続している。サーボアンプ61〜64は、夫々X軸モータ71、Y軸モータ72、Z軸モータ73、主軸モータ74に接続している。軸制御部75aはマガジンモータ75に接続している。
本実施例では、X軸ボールネジシャフト81の熱変位を補正する例について説明するが、Y軸のボールネジ機構、Z軸のボールネジ機構についても基本的に同様である。
このピッチ誤差を補正するためのピッチ誤差補正量は、出荷前の調整段階において、ナット部8aを位置X0から位置X300までX軸方向へ20mm間隔にて補正区間毎に移動させる。このときの指令値に対する誤差、つまり(目標値−実移動量)である誤差を精密に測定し、ピッチ誤差補正量のテーブルを作成し、そのテーブルをRAM53に予め格納して出荷する。Y軸、Z軸方向についても同様にしてピッチ誤差補正量のテーブルを作成してRAM53に予め格納して出荷する。
上記の所定時間毎に、加工プログラムのX軸送りデータ(制御データ)に基づいて、ナット部8aがどの演算区間に位置しているかを判別し、エンコーダ71aの検出信号から求めるX軸モータ71によるテーブル送り速度Fから発熱量を次の(1)式により求める。その発熱量はRAM53のデータエリアに格納する。
ここで、Q:発熱量、F:テーブル8の送り速度、K1 ,T:所定の定数である。
以下に示す合計発熱量QT の分配方法においては、ナット部移動範囲81b、前側軸部81a、後側軸部81cにおいて互いに他の部分への熱伝導が生じず、熱的には近似的に独立しているとみなす。合計発熱量QT に対する発熱部(軸受18,19とナット部8a)の比率は送り速度の如何に関わらずほぼ一定であるとする。
QB=ηB ×QT
ここで比率ηN ,ηBは前記知見により一定であり、実機によりQN ,QBを測定し、比率ηN ,ηBを予め求めておくものとする。
次に、ナット部移動範囲81bの分配発熱量QNをベアリングホルダ20と4つの演算区間区切り位置(図5のθ2〜θ5に対応する位置)に分配する。前記データエリアに格納されている4つの演算区間の合計発熱量Q1〜Q4と、QTに基づいて、次式から分配発熱量QNを4つの演算区間1〜4に分配する分配比率X1〜X4 を求める。
:
X4 =演算区間4の合計発熱量Q4/ QT
こうして、4つの演算区間の分配比率X1〜X4 とナット部移動範囲81bの分配発熱量QNとから、次式により4つの演算区間1〜4についての分配発熱量QN1〜QN4を求める。
:
QN4=X4 ×QN
上記の結果を用いて、ベアリングホルダ20と4つの演算区間区切り位置の分配発熱量を図7のように表すことができる。
以上のようにしてベアリングホルダ20と4つの演算区間区切り位置の分配発熱量を求めた後、この分配発熱量から上昇した温度分布を算出する。温度分布は次の非定常熱伝導方程式を、初期条件{θ}t=0 ={θa}の下に解けば求めることができる。尚、θaは初期温度である。
ここで、[C]:熱容量マトリックス、[H]:熱伝導マトリックス、{θ}:温度分布、{Q}:発熱量、t:時間である。尚、熱伝導マトリックスに乗算される温度分布を温度上昇マトリックスと呼ぶことにする。
温度分布{θ}と発熱量{Q}は、夫々次式のように表すことができる。
上記の式を式(2)に代入すると非定常熱伝導方程式は次のようになる。
本実施例においては、電流検出器61bにより検出されるX軸モータ71の駆動電流と、エンコーダ71aの検出信号から求まるX軸モータ71の回転速度からベアリングホルダ20の温度上昇θ0(t)を求める。図8に示すように、演算周期をt=Δt(例えば、Δt=50ms)として、ベアリングホルダ20の温度上昇θ0(t)を次式から算出する。
θ0(Δt)=θ0(0)+k1×ω(Δt)+k2×(i(Δt))2−k3×θ0(0)
θ0(2Δt)=θ0(Δt)+k1×ω(2Δt)+k2×(i(2Δt))2−k3×θ0(Δt)
θ0(3Δt)=θ0(2Δt)+k1×ω(3Δt)+k2×(i(3Δt))2−k3×θ0(2Δt)
θ0(4Δt)=θ0(3Δt)+k1×ω(4Δt)+k2×(i(4Δt))2−k3×θ0(3Δt)
:
θ0(nΔt)=θ0((n−1)Δt)+k1×ω(nΔt)+k2×(i(nΔt))2−k3×θ0((n−1)Δt)
ここで、k1,k2,k3は実験から求める値(X軸サーボモータ71とベアリングホルダ20を系とした固有の定数)、ω(nΔt)はt=0〜nΔtにおけるX軸モータ71の平均速度、i(nΔt)はt=0〜nΔtにおけるX軸モータ71の駆動電流の平均値、θ0(0)はt=0におけるベアリングホルダ20の初期温度上昇である。
この傾きから次式(7)を得ることができ、この式からt=Δtにおけるボールネジシャフト端部81eと4つの演算区間区切り位置の温度上昇を求めることができる。
θi(Δt)=θi(0)+dθi(0)/dt×Δt ・・・(7)
ここで、i=1〜5、θi(0)はt=0における初期温度上昇である。
ボールネジシャフト端部81eと4つの演算区間区切り位置の温度θ1〜θ5を求めてから、これらの温度θ1〜θ5に基づいて、ボールネジシャフト端部81eと4つの演算区間区切り位置の熱変位量を算出する。ボールネジシャフト端部81eと4つの演算区間区切り位置の熱変位量は、次式から求めることができる。
ここで、ΔL:熱変位量、β:ボールネジシャフト材料の線膨張係数である。
積分記号は0〜Lの範囲についての積分を示し、Lは4つの演算区間区切り位置までの長さを示す。具体的には、0〜120、0〜240、0〜360、・・・等の範囲についての積分を示す。
ボールネジシャフト81の4つの演算区間区切り位置の熱変位量を求めてから、15個の補正区間のピッチ誤差補正量を夫々補正する補正量を算出する。尚、本実施例では、ナットの移動範囲がX0〜X300(300mmの範囲)であり、各補正区間の長さが20mmであるため、15個の補正区間がある。15個の補正区間の補正量は、図11と後述する[補正量演算式]から求めることができる。
ここで、DF1は演算区間1における熱変位量、
DF2は演算区間1と演算区間2における熱変位量の合計、
:
DF4は演算区間1〜演算区間4における熱変位量の合計である。
[補正量演算式]
X0の補正量=演算区間1の熱変位量×{(演算区間1の左区切り位置とX0間の長さ)/演算区間1の長さ}
X20の補正量=演算区間1の熱変位量×{(演算区間1の左区切り位置とX20間の長さ)/演算区間1の長さ}−X0の補正量
X40の補正量=演算区間1の熱変位量+演算区間2の熱変位量×{(演算区間2の左区切り位置とX40間の長さ)/演算区間2の長さ}−X20の補正量
X60の補正量=演算区間1の熱変位量+演算区間2の熱変位量×{(演算区間2の左区切り位置とX60間の長さ)/演算区間2の長さ}−X40の補正量
X80の補正量=演算区間1の熱変位量+演算区間2の熱変位量×{(演算区間2の左区切り位置とX80間の長さ)/演算区間2の長さ}−X60の補正量
:
X300の補正量=演算区間1の熱変位量+演算区間2の熱変位量+演算区間3の熱変位量+演算区間4の熱変位量×{(演算区間4の左区切り位置とX300間の長さ)/演算区間4の長さ}−X280の補正量
この熱変位補正制御と並行的に実際のワークに対する数値制御による機械加工が実行されているものとする。
ここで、DF:位置Xnよりも固定側の演算区間で発生した熱変位量の合計、
ΔDn:位置Xnを含む演算区間で発生した熱変位量、
XF:位置Xnを含む演算区間の左区切り位置、
Ln:位置Xnを含む演算区間の長さである。
但し、ΔM0を求める場合に用いるΔM-20を0とする。
補正量ΔM300を求めてから(S21)、S22においてn=320となり、S23の判定がYesとなるため、この処理を終了して、図12のS14へ移行する。
1]前記実施例においては、ベアリングホルダ20の温度上昇を算出する際にX軸モータ71の駆動電流と、X軸モータ71の回転速度とを使用したが、X軸モータ71の駆動電流のみを使用して算出してもよいし、X軸モータ71の回転速度のみを使用して算出してもよい。また、ベアリングホルダ20に温度センサを取り付けておき、温度センサによりベアリングホルダ20の温度上昇を検知してもよい。
8a ナット部
18 固定軸受
20 ベアリングホルダ
50 数値制御装置
51 CPU
71 X軸モータ
71a エンコーダ
81 ボールネジシャフト
81b ナット部移動範囲
81e ボールネジシャフト端部
Claims (4)
- 送り駆動用ボールネジ機構と、このボールネジ機構のナットが螺合したシャフトを回転駆動するサーボモータと、このサーボモータを制御データに基づき制御する制御手段とを有する数値制御式工作機械の熱変位補正方法において、
前記シャフトの全長を複数分割した複数区間に発生する発熱量を、前記サーボモータの回転速度と制御データとに基づいて所定時間毎に求めると共に、軸受を介してシャフトのモータ側を回転自在に支持するベアリングホルダの温度上昇を前記所定時間毎に検知する第1ステップと、
前記複数区間の発熱量を所定期間分累積した合計発熱量と、前記シャフトのモータ側端部の温度上昇の代わりに前記ベアリングホルダの温度上昇を用いた非定常熱伝導方程式とに基づいて、複数区間の温度分布を前記所定期間毎に演算する第2ステップと、
前記温度分布から前記シャフトの複数区間の熱変位量を前記所定期間毎に演算する第3ステップと、
前記複数区間の熱変位量に基づいて、前記シャフトのナット移動範囲を複数分割した複数の補正区間毎に前記制御データを夫々補正する補正量を前記所定期間毎に演算する第4ステップと、
を備えたことを特徴とする数値制御式工作機械の熱変位補正方法。 - 前記ベアリングホルダの温度上昇は、前記サーボモータの回転速度と駆動電流値とに基づいて検知されることを特徴とする請求項1に記載の数値制御式工作機械の熱変位補正方法。
- 送り駆動用ボールネジ機構と、このボールネジ機構のナットが螺合したシャフトを回転駆動するサーボモータと、このサーボモータを制御データに基づき制御する制御手段とを有する数値制御式工作機械の熱変位補正装置において、
前記サーボモータの回転速度を検出する速度検出手段と、
前記シャフトの全長を複数分割した複数区間に発生する発熱量を、前記サーボモータの回転速度と制御データとに基づいて所定時間毎に求める発熱量演算手段と、
軸受を介して前記シャフトのモータ側を回転自在に支持するベアリングホルダの温度上昇を前記所定時間毎に検知する温度検知手段と、
前記複数区間の発熱量を所定期間分累積した合計発熱量と、前記シャフトのモータ側端部の温度上昇の代わりに前記ベアリングホルダの温度上昇を用いた非定常熱伝導方程式とに基づいて、複数区間の温度分布を前記所定期間毎に演算する温度分布演算手段と、
前記温度分布から前記シャフトの複数区間の熱変位量を前記所定期間毎に演算する熱変位量演算手段と、
前記複数区間の熱変位量に基づいて、前記シャフトのナット移動範囲を複数分割した複数の補正区間毎に前記制御データを夫々補正する補正量を前記所定期間毎に演算する補正量演算手段と、
を備えたことを特徴とする数値制御式工作機械の熱変位補正装置。 - 前記温度検知手段は、前記サーボモータの回転速度と駆動電流値とに基づいて前記ベアリングホルダの温度上昇を検知することを特徴とする請求項3に記載の数値制御式工作機械の熱変位補正装置。
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