JP2011039366A - 光アイソレータ用積層体と光アイソレータ及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、ビスマス置換鉄ガーネット結晶からなるファラデー素子と、該ファラデー素子の光透過面の両側に接着層を介して光透過面で貼り合わされた偏光ガラスからなる積層体であって、前記接着層が、光硬化性ではなく室温で硬化する接着剤からなるものであることを特徴とする光アイソレータ用積層体。
【選択図】図1
Description
ここで、積層体はファラデー素子の片側に接着剤で偏光ガラスを貼り合わせ、その後ファラデー素子と偏光ガラスからなる貼り合わせ品に別の偏光ガラスを消光比が最大になるように角度を調整して貼り付けることで作製される。
例えば、熱硬化型の接着剤は接着剤を100℃程度に加熱して硬化させる。しかし、ファラデー素子と偏光ガラスは熱膨張係数が異なるため、接着剤が硬化する100℃では反りがなくても、室温に戻すときに反りが生じる。そして、反りが生じたファラデー素子と偏光ガラスからなる貼り合わせ品に、別の偏光ガラスを貼り付けようとすると、接着剤の厚さのバラツキが生ずることになり、貼り合わせ不良が発生した。
また、紫外線硬化型の接着剤は室温で仮硬化できるという利点があるが、反応硬化剤に塩を用いるため、硬化後の接着剤が耐湿性に劣るという欠点がある。
従って、従来用いられていた熱硬化型の接着剤、例えば熱硬化型のエポキシ樹脂でファラデー素子と偏光ガラスを約100℃のオーブン中で貼り付けると、ファラデー素子と偏光ガラスの熱膨張係数が各々9.5×10−6、6.5×10−6と異なることに起因して、貼り合わせ品を室温に戻すと反りが発生する。そしてこの反りがある貼り合わせ品に別の偏光ガラスを貼り合わせると接着剤の厚さがばらつき、気泡等が混入することを防止できない。
また、紫外線硬化型の接着剤は室温で仮硬化できるが、反応硬化剤に塩が用いられるため、耐湿性が劣る。
これによって、ファラデー素子に偏光ガラスを貼り付ける際に十分小さな反りに仕上げたファラデー素子を用いると、幾分かは変形するものの、このファラデー素子の形状に沿うように偏光ガラスに大きな反りが生じず、最初の貼り合わせを終えたものとすることができる。従って、次に逆側の光透過面に別の偏光ガラスが貼り付けられる際に、ファラデー素子側の反りが抑えられたものであるため、接着層の厚さバラツキが小さなものとなり、また気泡状の介在物が全くない積層体が得られる。
そして光硬化性の接着剤は用いられていないため、反応硬化剤として塩は使用されず、大気中の湿度に対しても高い耐性を有するものとなっている。
このように、接着層が、耐久性に優れたエポキシ樹脂であれば、積層体の耐久性も良好なものとすることができる。また、二液混合型のエポキシ樹脂が硬化したものであれば、容易に室温で硬化させたものとして非常に都合が良く、安価なものとすることができる。
上述のような、ファラデー素子と偏光ガラスとで構成された光アイソレータ用積層体は、接着層の厚さバラツキや気泡状の介在物をほとんど含まないものであるため、これを切断したものを用いて作製された光アイソレータは、耐湿特性に優れており、また光学特性が良好でバラツキが少ないものとなっている。
これによって、接着剤を硬化させる際に加熱する必要を無くすことができる。すなわち、従来のように熱硬化型の接着剤を用いる場合では抑制できなかったファラデー素子と偏光ガラスの熱膨張率の差に起因する反りが発生することを抑制でき、反りの小さな貼り合わせ品(ファラデー素子の光透過面の片側のみに偏光ガラスが貼り合わされたもの)に別の偏光ガラスを貼り付けることができる。よって、接着剤の厚さのバラツキや接着剤中に気泡が混入することを防止することができ、光学特性が良好で安定した光アイソレータ用積層体を製造することができる。また、光硬化型ではなく室温硬化型の接着剤を用いるため、塩を用いた接着剤を使用せずに接着することができ、湿度に対する耐性の高い積層体を得ることができる。
このときに使用する室温硬化型の接着剤としては、耐久性に優れたエポキシ樹脂が好ましく、また室温で硬化させるためには主材と硬化剤が別々となっている二液性のエポキシ樹脂が好ましい。
上述のように、本発明の光アイソレータ用積層体の製造方法によって製造された積層体は、接着層の厚さバラツキが非常に小さく、また性能の低下の原因となる気泡などの介在物を殆ど含まないものとすることができる。そしてこのような積層体を用いることによって、耐湿性に優れ、光学特性のバラツキが少なく高品質の光アイソレータを製造することができる。
前述のように、安定した特性を示す光アイソレータの開発が待たれていた。
そこで、本発明者は、光アイソレータの性能を劣化させる接着層の問題について、ファラデー素子と偏光ガラスの形状に影響を及ぼす接着剤に関して調査を行った。
この反りについては、ファラデー素子と偏光ガラスとの熱膨張率の差に基づく本質的なものであり、接着剤が高温で反応し、ファラデー素子と偏光ガラスを接合する限り避けることは出来ないものである。
また、貼り合わせ品の周辺部は接着層の厚さが1μmあるいはそれ以下と極端に薄くなり、わずかな衝撃で積層体が接着層から剥離することが判った。そして、このような接着層の厚さバラツキがある積層体から得られたチップ状素子を用いた光アイソレータでは、光学特性のバラツキが大きく、耐久性が乏しくなることが分かった。
図1に示す様に、本発明の光アイソレータ用積層体10は、少なくとも、ビスマス置換鉄ガーネット結晶からなるファラデー素子12と、該ファラデー素子12の光透過面の両側に、光硬化性ではなく室温で硬化する接着剤からなる接着層13を介して光透過面で貼り合わされた偏光ガラス11とからなるものである。
また、光硬化型の接着剤は使用されていないものであるため、接着層中に塩などの水分との親和性の強い物質が含有されていないものとなり、湿分に対する耐性を高いものとすることができる。
このように、接着層が耐久性に優れたエポキシ樹脂からなるものであれば、積層体の耐久性も良好なものとなる。また、二液混合型のエポキシ樹脂であれば、容易に室温で硬化させたものとなり、好適である。
前述のように、本発明の光アイソレータ用積層体は接着層の厚さバラツキや気泡状の介在物をほとんど含まず、かつ耐湿性に優れたものである。すなわち、このような光アイソレータ用積層体を切断したものを用いて作製された光アイソレータも、同様に光アイソレータ特性が非常に良好かつ安定し、耐湿性が良好なものとすることができる。
まず、少なくとも偏光ガラス11を2枚、ファラデー素子12を1つ準備する。
このように厚さを調整した偏光ガラスを、研磨による歪みによって発生した反りを解消するために、より望ましくは、水素を含む雰囲気で、350〜400℃で50〜100時間加熱処理を行う。
そして、ファラデー素子12の別の光透過面にもう一枚の偏光ガラス11を同じように光透過面で、室温硬化型のエポキシ樹脂からなる接着層13を介して貼り付けることで、光アイソレータ用積層体10を作製する。
テスク社製C−1037A/Bを100:30の比で混合し、ファラデー素子の光透過面の表面上にたらすと、混合物が低粘度であるため自然に広がり、この上に偏光ガラスを載せて、わずかな力で押し付けることで余分な接着剤を取り除くことができ、また室温で一日放置することでファラデー素子と偏光ガラスからなる貼り合わせ品が得られる。
そして、この貼り合わせ品のファラデー素子面にC−1037A/Bの混合物をたらし、別の偏光ガラスを載せて消光比が最大になるように偏光ガラスを回転させた後、わずかに力を加えて偏光ガラスを押し付けた状態で一日放置することで、光アイソレータ用積層体10が得られる。
尚、室温硬化型の接着剤を用いるため、作業時間は従来と比較して長くなる。しかし光学特性や耐久性、歩留りを従来に比較して大幅に向上させることができ、作業時間の長時間化の不利益を上回る。
これは、光アイソレータに加工した後では、偏光ガラスやファラデー素子が小さな形状に分割されるため、熱膨張係数の差による応力を格段に小さくすることができる。よって、熱膨張率の差に起因する反り等の問題を抑制できると共に、光学特性の向上を図ることができるのである。
(実施例1,2、比較例1,2,3)
まず、偏波方向が45°異なる2種類の金属分散型偏光ガラス基材(第1の偏光ガラス、第2の偏光ガラス)を複数枚用意した。偏光ガラスの大きさは15×15mmであり、その厚さと反りは表1に示すとおりに研磨により仕上げたものである。
基準面となるシリコンウェハー上に、予め厚みが既知の金属片を置き、顕微鏡付随のダイアルを校正した後、金属分散型偏光ガラスをシリコンウェハー上にセットして、a1:シリコンウェハー上面の位置、a2:偏光ガラス上面の位置、を測定し、a2−a1=Aを求める。
次に、偏光ガラスを裏返して、同様に、b1:シリコンウェハー上面の位置、b2:偏光ガラス上面の位置を測定し、b2−b1=Bを求める。
そして、A−Bの値を計算した。この値が反りの値となる。
実施例1と2及び比較例1と比較例2,3とで厚さが異なる理由は、ファラデー素子を構成するビスマス鉄ガーネット結晶の組成が異なるためである。
準備したファラデー素子についても上記した方法で反りを測定した。
この脱泡したエポキシ樹脂をファラデー素子の光透過面上にたらし、その上に1枚目の偏光ガラスを載せて軽く押さえることで余分な接着剤を取り除いた。その後、室温で一昼夜放置して硬化させ、その後この貼り合わせ品について厚さと反りの測定を行った。
この積層体に関しても反り測定を行うとともに2枚目の偏光ガラス側から接着層を観察した。
そして作製した光アイソレータの、光挿入損失と消光性能を評価し、特性が一番悪いものの値を表1に示した。
これに対し、熱硬化型の接着剤を用いた比較例1や比較例2の積層体は、厚さバラツキやソリが大きく、また挿入損失最大値が大きく、消光比の最小値も小さい等、光学特性が実施例に比べて劣ることが判った。比較例3の積層体は厚さバラツキや反りが小さく、光学特性も実施例と比較して遜色がなかった。
その結果、実施例2の光アイソレータは、挿入損失と消光比の変化は見られなかったが、比較例3で作製した光アイソレータでは挿入損失が平均で0.43dBとなり、試験前に比べて大幅に増加した。また消光比の最小値も35dBに低下し、光学特性の劣化が見られた。このことから、光硬化型の接着剤を用いると、耐湿性が劣ることが判った。
Claims (6)
- 少なくとも、ビスマス置換鉄ガーネット結晶からなるファラデー素子と、該ファラデー素子の光透過面の両側に接着層を介して光透過面で貼り合わされた偏光ガラスからなる積層体であって、
前記接着層が、光硬化性ではなく室温で硬化する接着剤からなるものであることを特徴とする光アイソレータ用積層体。 - 前記接着層が、二液混合型のエポキシ樹脂が硬化したものであることを特徴とする請求項1に記載の光アイソレータ用積層体。
- 請求項1または請求項2に記載の光アイソレータ用積層体を切断したものを用いて作製されたものであることを特徴とする光アイソレータ。
- 少なくとも、ビスマス置換鉄ガーネット結晶からなるファラデー素子の光透過面の両側に接着剤を用いて偏光ガラスを貼り合わせる積層体の製造方法であって、
前記接着剤として、光硬化性ではなく、室温で硬化する接着剤を用いることを特徴とする光アイソレータ用積層体の製造方法。 - 前記接着剤として、二液混合型のエポキシ樹脂を用いることを特徴とする請求項4に記載の光アイソレータ用積層体の製造方法。
- 請求項4または請求項5に記載の光アイソレータ用積層体の製造方法によって製造された光アイソレータ用積層体から光アイソレータを製造することを特徴とする光アイソレータの製造方法。
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