JP2013061447A - 光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】接合膜を介して第1の透光性基板、偏光層、第2の透光性基板が接合された、耐光性及び寸法精度が高く、かつ光透過率の高い光学素子を提供する。
【解決手段】本発明の光学素子1は、偏光層からなる偏光板と第1の透光性基板と第2の透光性基板と前記偏光層の一方の面に第1の透光性基板を貼り合わせ、また前記偏光層の他方の面に第2の透光性基板を貼り合わせる接合膜とを備え、前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基とを含み、プラズマ重合によって形成された接合膜であって、少なくとも一部の領域にプラズマエネルギーを付与することにより、前記接合膜の少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、前記接合膜に発現した接着性によって、前記偏光層、前記第1の透光性基板および前記第2の透光性基板が接合されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学素子に関する。
光学機器に用いられる偏光板として、ポリビニルアルコール(PVA)からなる偏光層の片面又は両面に、機械的強度等を確保するためのトリアセチルセルロース(TAC)からなる支持層が積層された2層構造又は3層構造の偏光板が知られている(例えば、特許文献1参照。)。TACからなる支持層は、透明性、均一性、平面性等に優れ、分子配向による異方性が非常に小さいことから、偏光層を支持するための支持層として好適に使用されている。
ところで、従来の偏光板においては、偏光層を通過しない光は内部で吸収されるため、多量の熱が発生して偏光板の温度上昇を招くことになる。このため、偏光板が劣化して偏光板の偏光特性が低下してしまうという課題があった。
そこで、このような課題を解決するための光学素子として、偏光板の両面(偏光板における支持層のさらに外側)に熱伝導性の透光性基板を貼り付けた構造を有する光学素子が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この光学素子によれば、偏光板で発生した熱は、熱伝導性の透光性基板を介して系外に放散されるようになるため、偏光板の温度上昇を抑止することが可能になる。このため、偏光板が劣化して偏光板の偏光特性が低下してしまうのを抑制することが可能になる。
しかしながら、偏光板の支持層は、通常透光性基板に比べて熱伝導性が小さい。このため、偏光板の両面に熱伝導性の透光性基板が貼り付けてあったとしても、偏光層で発生した熱は、支持層が存在することにより、透光性基板に伝わりにくくなってしまう。
このような課題を解決するための光学素子として、支持層を有しない、偏光層のみからなる偏光板の両面に熱伝導性の透光性基板に貼り付けた構造を有する光学素子が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この光学素子によれば、偏光層と透光性基板との間に支持層が存在しないので、偏光層で発生した熱は透光性基板に直接伝えられ、偏光板の温度上昇を効果的に抑止することが可能になる。
特開平7−20317号公報 特開2000−112022号公報 特開2007−256898号公報
しかしながら、上述の光学素子においては、偏光板と透光性基板とを貼り合わせる接着剤を選択するにあたり、偏光層を構成するポリビニルアルコール(PVA)等のベース部材と接着剤との相性、接着剤に求められる光学的特性、機械的特性等を考慮すると、使用できる接着剤の種類が限定されるという課題がある。さらに、光学素子を薄膜化するためには透光性基板の薄膜化が有効であるが、透光性基板を薄膜化すると接着剤の硬化時の収縮が原因で透光性基板に反りが生じることから、透光性基板を薄膜化には限界があった。
さらに、近年の光学機器においては、光源の高輝度化、高光密度化が進み、ランプから照射される光により、偏光板と透光性基板とを貼り合わせる接着剤が経時的に劣化し、変質が起こり易くなっている。かかる接着剤の変質により、接着剤の接着力が徐々に低下して光学素子の寸法精度が低下したり、あるいは接着剤が変色し、透過率が低下したりするという課題が発生することがある。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、偏光板と透光性基板とを貼り合わせる接着剤が、偏光層を形成するベース材料との相性がよく、初期の光学的特性、機械的特性を満足するとともに、透光性基板を薄膜化しても透光性基板に反りが生じない光学素子を提供すること、また接着剤が変質することに起因する不具合、具体的には接着剤の変質に伴う、光学素子の寸法精度の低下、光の透過率の低下等の課題を抑制することが可能で、さらに従来の光学素子よりも放熱特性に優れる光学素子を提供することを目的とする。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
[1]本発明の光学素子は、偏光層からなる偏光板と、第1の透光性基板と、第2の透光性基板と、前記偏光板の偏光層における一方の面と第1の透光性基板とを貼り合わせる第1の接着層と、前記偏光板の偏光層における他方の面と第2の透光性基板とを貼り合わせる第2の接着層と、を備え、前記第2の接着層は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基とを含み、プラズマ重合によって形成された接合膜であって、少なくとも一部の領域にプラズマエネルギーを付与することにより、前記接合膜の少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、前記接合膜に発現した接着性によって、前記偏光層と前記第2の透光性基板とが接合されていることを特徴とする。
これにより、接合膜を介して偏光層からなる偏光板と第1の透光性基板と第2の透光性基板とが接合してなる、耐光性および寸法精度が高く、かつ光透過率の高い光学素子とすることができる。
[2]本発明の光学素子では、前記第1の光学素子、および前記第2の光学素子はサファイア、水晶、石英ガラス、硬質ガラス、透明ガラスからなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。
これらの材料からなる透光性基板は熱伝導性、光透過性に優れているため、偏光層で発生した熱を効率よく系外に放散させることができ、偏光層の温度上昇を効果的に抑制することができる。
[3]本発明の光学素子では、前記光学素子を通過する光の波長は、200nm以上、830nm以下であることが好ましい。
かかる範囲の波長を有する光を透過させた際に、本発明の光学素子は、高い光透過率を維持するものとなる。
[4]本発明の光学素子では、当該光学素子を透過させる光の密度は、35W/mm2以下であることが好ましい。
これにより、接合膜の光透過率が、より確実に95%以上を維持するようになる。
[5]本発明の光学素子では、当該光学素子を透過させる際の前記接合膜の温度は、0℃以上であることが好ましい。
これにより、接合膜の光透過率が、より確実に95%以上を維持するようになる。
[6]本発明の光学素子では、当該光学素子に光を透過させた後の光透過率は、95%以上であることが好ましい。
このような光学素子は、高い光透過率を維持した光学素子と言うことができる。
[7]本発明の光学素子では、当該光学素子に光を透過させる時間は、100時間以上であることが好ましい。
このような透過時間において、前記透過率の値が95%以上に維持される効果が顕著に認められる。
[8]本発明の光学素子では、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
このようなポリオルガノシロキサンで構成された接合膜は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜は、基材に対して特に強固に被着するとともに、他の被着体に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、基材と他の被着体とを強固に接合することができる。
[9]本発明の光学素子では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜は、接着性に特に優れるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
[10]本発明の光学素子では、前記プラズマ重合において、プラズマを発生させる際の高周波電力の出力は、100W以上、400W以下である請求項1ないし9のいずれかに記載の光学素子。
前記出力をかかる範囲内とすることにより、高周波の出力が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、原材料の重合反応を進行させて、適切な範囲内でSi骨格の網目構造が形成された主骨格とすることができ、適度な結晶化度を有する接合膜を形成することができる。
[11]本発明の光学素子では、接合膜は、このものを構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上、90原子%以下のものであることが好ましい。
Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜はSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体が強固なものとなる。
[12]本発明の光学素子では、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上、7:3以下であることが好ましい。
Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜の安定性が高くなり、他の被着体に対してより強固に接合することができるようになる。
[13]本発明の光学素子では、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は、ランダムな原子構造を含むものとなり、接合膜がより非晶質的な特性を示す。このため、Si骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
[14]本発明の光学素子では、前記接合膜は、Si−H結合を含んでいることが好ましい。
Si−H結合は、プラズマ重合法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、結晶化度の低いSi骨格を効率よく形成することができる。
[15]本発明の光学素子では、前記接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001以上、0.2以下であることが好ましい。
Si−H結合のシロキサン結合に対する割合が前記範囲内であることにより、接合膜中の原子構造は、相対的に最もランダムなもの、すなわち接合膜の結晶化度が最適化されたものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対して前記範囲内にある場合、接合膜は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
[16]本発明の光学素子では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
[17]本発明の光学素子では、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接合膜の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、接合体の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間での接合が可能となる。
[18]本発明の光学素子では、前記接合膜の屈折率は、1.35〜1.6であることが好ましい。
このような接合膜は、その屈折率が、水晶や石英ガラスの屈折率に近いため、接合膜を光路が貫通する本発明の光学素子に好適に用いられる。
本発明の光学素子を説明するための図である。 本発明の光学素子が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 本発明の光学素子が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 本発明の光学素子の製造方法を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法を説明するための図である。 光透過率と光の照射時間との関係を示す図である。
以下、本発明の光学素子および光学素子の製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
<光学素子>
まず、実施形態1に係る光学素子1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態1に係る光学素子1を模式的に示す図である。
実施形態1に係る光学素子1は、図1に示すように、偏光板10と、偏光板10における一方の表面に貼り合わされた第1の透光性基板20と、偏光板10における他方の表面に貼り合わされた第2の透光性基板40とを備えた光学素子である。
偏光板10は、偏光層12からなる。偏光層12としては、例えば、H型(ヨウ素)偏光子や染料偏光子、固有偏光子(K型偏光子)を使用することができる。
H型偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)等のベース材料(高分子フィルム)をヨウ素または染料等の二色性発色団となる材料を吸着させ、一軸延伸して、該染料分子を一方向に配列させた偏光子であるが、環境に対する安定性がやや低いという課題がある。K型偏光子はベース材料の固有の化学構造により偏光する偏光子であり、H型偏光子や染料偏光子に比べて、温度や湿度に対して長期間優れた耐性を有する。さらに、K型偏光子に対して、温度や湿度に対する耐性が改善されたKE偏光子も知られている。光学素子1が高温、高湿、高光密度、長時間という過酷な条件下で高性能な偏光特性が要求される場合には、偏光層12としてK型偏光子やKE型偏光子を使用することが望ましい。
第1の透光性基板20および第2の透光性基板40は、例えばサファイアからなる。サファイアからなるからなる第1の透光性基板20および第2の透光性基板40は、熱伝導率が約40W/(m・K)と比較的高い上、硬度も高く、熱膨張率は小さく、傷がつきにくく透明度が高い。なお、中程度の輝度として安価性を重視する場合には、第1の透光性基板20および第2の透光性基板40として、約10W/(m・K)の熱伝導率を有する水晶からなる透光性基板を用いてもよい。第1の透光性基板20および第2の透光性基板40の厚さは、熱伝導性の観点からいえば0.2mm以上であることが好ましく、光学素子の薄膜化の観点からいえば2.0mm以下であることが好ましい。
第1の透光性基板20および第2の透光性基板40は、ともに所定の光学軸を有している。
第1の透光性基板20および第2の透光性基板40として、石英ガラス、硬質ガラスその他の透明ガラスを好適に使用することもできる。石英ガラス、硬質ガラスその他の透明ガラスからなる第1の透光性基板20および第2の透光性基板40は、複屈折が小さいため、透光性基板を通過する光束の品質低下を抑制することができ、偏光層に入射する光束または偏光層から射出される光束の品質低下を抑制することができる。また、これらの材料からなる透光性基板は熱膨張率が小さいため、熱による伸び、変形が大きいという性質を有する偏光層をこのような熱膨張率の小さな材料からなる第1の透光性基板20および第2の透光性基板40で接合することにより、偏光層自体の変形を抑えることができる。
図1に示すように、偏光層12と第1の透光性基板20とは第1の接着層である粘着剤層50を介して貼り合わされており、偏光層12と第2の透光性基板40とは接合膜30を介して貼り合わされている。これにより、各部材間の界面における表面反射の発生が抑制され、光透過率を高めることが可能になる。また、偏光層12、第1の透光性基板20および第2の透光性基板40の線膨張係数がそれぞれ異なる場合であっても、各部材間の接合面における剥離が起こりにくくなり、長期信頼性の低下を抑制することが可能になる。
粘着剤層50は、例えばアクリル系樹脂の薄膜であり、粘着テープ(両面テープ)として市販されているものを好適に使用することができる。
ところで、偏光層12と第2の透光性基板40とは、接合膜30により第2の透光性基板40に強固に接合される。このため、第1の透光性基板20と偏光層12とは剥離しない程度に接着していれば十分である。粘着剤層を選択する際は、接着強度より、耐光性、具体的には高輝度、高光密度の光に長期間曝されても、変質・劣化しない性質、を重視してもよい。
接合膜30は、シロキサン(Si−O)結合302を含む原子結合を有するSi骨格301と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基303とを含む、プラズマ重合により形成されたものである。さらに、接合膜30は、膜表面にプラズマを付与することにより、接合膜30に存在する脱離基がSi骨格301から脱離し、この脱離基の脱離によって、接合膜30のプラズマを付与した領域に接着性が発現するというものである。
かかる特徴を有する接合膜30は、耐光性、耐候性に優れたものであるため、高輝度、高光密度の光に長期間曝されても、変質・劣化に伴う透過率の低下を防止することが可能となる。
接合膜30の構成は、後述する。
第1の透光性基板20における偏光層12とは反対側の面および第2の透光性基板40における偏光層12とは反対側の面には、必要に応じ、図示しない反射防止層が形成されている。
また、第1の透光性基板20、第2の透光性基板40の端面はUV接着剤、または樹脂でモールドされており、水分、埃等が第1の透光性基板20、第2の透光性基板40の隙間に侵入することを防止している。これにより、偏光層12の劣化が防止され、信頼性の高い光学素子を実現することができる。
以下、接合膜30の構成について詳細に説明する。
接合膜30は、前述したように、その少なくとも一部の領域にプラズマを付与することにより、その領域の表面付近から脱離基303が脱離することに起因して、かかる領域に接着性が発現し、この接着性に基づいて、偏光層12と第1の透光性基板20、および偏光層12と第2の透光性基板40とを接合する機能を有するものである。
このような接合膜30は、例えば、図2に示すように、プラズマ重合により偏光層12上に形成されたものであり、シロキサン(Si−O)結合302を含む原子構造(アモルファス構造)を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合し、有機基からなる脱離基303とを有するものである。
かかる接合膜30は、シロキサン結合302を含む原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格301の結晶性が低くなる(非晶質化する)ため、結晶粒界における転移やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、接合膜30自体が接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度が高いものとなり、光学素子1において、接合強度、耐薬品性、耐光性および寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜30にプラズマを付与すると、有機基で構成される脱離基303がSi骨格301から脱離し、図3に示すように、接合膜30の表面に活性手304が生じる。そして、これにより、接合膜30表面に接着性が発現することから、かかる接着性に基づいて、偏光層12と第2の透光性基板40とが、接合膜30を介して接合される。
なお、脱離基303とSi骨格301との結合エネルギーは、Si骨格301中のシロキサン結合302の結合エネルギーよりも小さい。このため、接合膜30は、このものがプラズマに曝された際に、Si骨格301が破壊されるのを防止しつつ、脱離基303とSi骨格301との結合を選択的に切断し、脱離基303を脱離させることができる。
また、このような接合膜30は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、接着層(接合膜30)の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、光学素子1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間での接合が可能になる。
なお、接合膜30においては、特に接合膜30を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上90原子%以下程度であるのが好ましく、20原子%以上80原子%以下程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜30はSi原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜30自体が強固なものとなる。また、かかる接合膜30は、プラズマを付与した際に、第2の透光性基板40に対して特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜30中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜30の安定性が高くなり、第2の透過性基板40に対してより強固に接合したものになる。
また、プラズマ重合法により形成された接合膜30中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は、ランダムな原子構造を含むものとなり、接合膜30がより非晶質的な特性を示す。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜30の寸法精度および接着性が優れたものとなる。
なお、Si骨格301の結晶化度は、一般的な結晶化度測定方法により測定することができ、具体的には、結晶部分における散乱X線の強度に基づいて測定する方法(X線法)、赤外線吸収の結晶化バンドの強度から求める方法(赤外線法)、核磁気共鳴吸収の微分曲線の下の面積に基づいて求める方法(核磁気共鳴吸収法)、結晶部分には化学試薬が浸透し難いことを利用した科学的方法等により測定することができる。
このうち、簡便性等の観点からX線法が好ましく用いられる。
また、Si骨格301の結晶化度を測定する際には、接合膜30に対して上述の測定方法を適用すればよいが、あらかじめ接合膜30に前処理を施しておくのが好ましい。この前処理としては、接合膜30全体にエネルギーを付与する処理(例えば、接合膜に紫外線を照射する処理)があげられる。このようなエネルギーの付与により、接合膜30中の脱離基303が脱離し、Si骨格301の結晶化度をより正確に測定することが可能になる。
また、接合膜30は、その構造中にSi−H結合を含んでいるのが好ましい。このSi−H結合は、プラズマ重合法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格301の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、結晶化度の低いSi骨格301が効率よく形成される。
一方、プラズマに曝す前の接合膜30中のSi−H結合の含有率が多ければ多いほど結晶化度が低くなるわけではない。具体的には、接合膜30の赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合(Si−O−Si結合)に帰属するピークの強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピークの強度は、0.001以上0.2以下程度であるのが好ましく、0.002以上0.05以下程度であるのがより好ましく、0.005以上0.02以下程度であるのがさらに好ましい。Si−H結合のシロキサン結合に対する割合が前記範囲内であることにより、接合膜30中の原子構造は、相対的に最もランダムなもの、すなわち接合膜30の結晶化度が最適化されたものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対して前記範囲内にある場合、接合膜30は、接合強度、耐薬品性および寸法精度において特に優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、有機基で構成され、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜30に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、プラズマを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、プラズマが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
なお、本発明のように、プラズマ重合法による接合膜30の成膜の際には、原料ガスの成分が重合して、接合膜30中に、シロキサン結合を含むSi骨格301と、それに結合した残基とが生成するが、例えばこの残基が脱離基303を構成する。
上記のことを満足する脱離基303すなわち有機基は、C原子を必須成分とし、その他、H原子、N原子、O原子、S原子、B原子、P原子およびハロゲン系原子のうちの少なくとも1種の原子を含有する原子団で構成されるものである。
このような有機基で構成される脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜30は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
上記のような特徴を有する接合膜30としては、例えば、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されるもの、すなわち、シロキサン結合を含む原子構造を有するSi骨格の網目構造を主骨格とし、このSi骨格に結合する有機基で構成される脱離基303を備えるものが挙げられる。
このようなポリオルガノシロキサンで構成された接合膜30は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜30は、偏光層12に対して特に強固に被着するとともに、第2の透過性基板40に対して特に強い被着力を示し、その結果として、偏光層12と第2の透過性基板40とが強固に接合された光学素子1とすることができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、プラズマ(エネルギー)を付与されることにより、有機基で構成される脱離基303を容易に脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれる有機基(例えばアルキル基)による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜30は、これにプラズマを付与することにより、表面35に接着性が発現するとともに、表面35以外の部分においては、前述した有機基による作用・効果が得られるという利点も有する。したがって、このような接合膜30は、耐光性および耐薬品性に優れたものとなり、例えば、薬品類等に長期にわたって曝されるような光学素子1の組み立てに際して、有効に用いられるものとなる。この結果、かかる構成の接合膜30は、光を長期間透過させたとしても、その変質・劣化が的確に低減または防止され、光透過率の低下が抑制されたものとなる。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。すなわち、接合膜30が、オクタメチルトリシロキサンを原材料とするプラズマ重合法を用いて形成されたものであり、主骨格としてシロキサン結合を含む原子構造を有するSi骨格の網目構造を有し、脱離基303としてメチル基を有するものであるのが好ましい。
オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜30は、接着性に特に優れるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
さらに、オクタメチルトリシロキサンを原材料とするプラズマ重合法を用いて形成された接合膜30は、特に優れた耐光性および耐薬品性を有するものとなるため、前述した効果をより顕著に発揮するものとなる。
さて、以上のような接合膜30は、偏光層12と第2の透光性基板40とを強固に接合する一方で、従来からある接着剤で偏光板と透光性基板を貼り合わせた場合に生じる課題、すなわち透光性基板が反るという課題は、本発明においてはほとんど生じない。
本発明に係る接合膜において、第2の透光性基板40の反りが生じない理由として、偏光層12と第2の透光性基板40とを接合する接合膜30が、接合前後でほとんど収縮しないことが挙げられる。接合膜30を構成するポリオルガノシロキサンのSi骨格は、網目構造を有し、それ自体が優れた機械的特性を有する。このため、本発明においては透光性基板の反りが生じないか、生じても最小限に抑制することが可能になる。
また、2つ目の理由として、偏光層12と第2の透光性基板40との貼り合わせを常温、若しくは加熱するとしても100度以下の低い温度で実施できることが挙げられる。このため、熱膨張係数の違いに起因するストレスを最小限に抑えることが可能となり、第2の透光性基板40の反りを抑制することが可能となる。
なお、上述の光学素子1の実施形態1においては、第1の透光性基板20と偏光層12との貼り合わせを粘着剤層50を介して行っているが、第2の透光性基板40と偏光層12とを貼り合わせるために使用している接合膜30により接合することも可能である。第1の透光性基板20と偏光層12とを接合膜30により接合することにより、第1の透光性基板20と偏光層12とを粘着剤層により貼り合わせた場合に比べ、耐光性が向上することから、高輝度、高光密度の光に長期間曝されても、変質・劣化に伴う透過率の低下を防止することが可能となる。また、接合膜30は、接合強度、耐薬品性および寸法精度に優れているが、この効果は第1の透光性基板20と偏光層12との接合に接合膜30を採用した場合にも当然発揮される。
<光学素子の製造方法>
以上のような光学素子1は、第1の透光性基板20の一方の面に、偏光層12の一方の面を粘着剤層50を介して貼り付けた後、偏光層12のもう一方の面(第1の透光性基板220に貼り付けていない面)と第2の透光性基板40の一方の面の少なくとも一方に接合膜30を形成し、この接合膜30にエネルギーを付与することで接着性を発現させた後、接合膜30を介して偏光層12および第2の透光性基板40とを接合することで得ることができる。
まず、偏光層12の一方の面に粘着剤層50を設け、第1の透光性基板20に貼り付ける。ここでいう粘着剤層50は、いわゆる両面テープとして市販されているものを好適に使用することができる。
続いて、プラズマ重合を用いて、偏光層12のもう一方の面上に接合膜30を成膜する。
このような接合膜30は、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を偏光層12上に堆積させることにより得ることができる。以下、かかる方法について詳述する。
まず、上述した偏光層12を用意し、次いで、偏光層12を、プラズマ重合装置が備えるチャンバー内に収納して封止状態とした後、チャンバー内を減圧状態とする。
次に、チャンバー内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給することにより、チャンバー内に混合ガスを充填する。
次に、チャンバー内に設けられた一対の電極間に、高周波電圧を印加することにより、プラズマを発生させる。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、この重合物が偏光層12上に付着・堆積する。これにより、プラズマ重合膜からなる接合膜30が偏光層12に形成される。
また、プラズマの作用により、偏光層12の表面が活性化・清浄化される。このため、原料ガスの重合物が偏光層12の表面に堆積し易くなり、接合膜30の安定した成膜が可能になる。このようにプラズマ重合法によれば、偏光層12の構成材料によらず、偏光層12に接合膜30が確実に成膜される。
原料ガス(原材料を含有するガス)としては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられ、これらのうち、特に、オクタメチルトリシロキサンであるのが好ましい。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜30は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
さらに、オルガノシロキサンを原材料とするプラズマ重合法を用いて形成された接合膜30では、脱離基303が脱離することにより生じる活性手の量が特に適切な量に設定される。その結果、かかる構成の接合膜30を備える光学素子1において、接合膜30は偏光層12に対してより優れた接着性をもって接合したものとなる。
なお、プラズマ重合の際、一対の電極間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz以上100MHz以下程度であるのが好ましく、10MHz以上60MHz以下程度であるのがより好ましい。
また、高周波電力の出力は、特に限定されないが、100W以上400W以下程度であるのが好ましく、200W以上300W以下程度であるのがより好ましい。前記出力をかかる範囲内とすることにより、高周波の出力が高過ぎて原料ガスに必要以上のプラズマエネルギーが付加されるのを防止しつつ、原材料の重合反応を進行させて、適切な範囲内でSi骨格301の網目構造が形成された主骨格とすることができ、適度な結晶化度を有する接合膜3を形成することができる。
すなわち、高周波電力の出力が前記下限値を下回った場合、原料ガス中の分子に重合反応を生じさせることができず、偏光層12上に接合膜30を形成することができないおそれがある。一方、高周波電力の出力が前記上限値を上回った場合、原料ガスが分解する等して、脱離基303となり得る構造がSi骨格301から分離してしまい、得られる接合膜30において脱離基303の含有率が低くなったり、Si骨格301のランダム性が低下くなったりする(規則性が高くなる)おそれがある。その結果、得られた接合膜30は、第1の透光性基板20に対して、優れた接着性を発揮し得ないものとなるおそれがある。
また、成膜時のチャンバー内の圧力は、133.3×10-5Pa以上1333Pa以下(1×10-5Torr以上10Torr以下)程度であるのが好ましく、133.3×10-4Pa以上133.3Pa以下(1×10-4Torr以上1Torr以下)程度であるのがより好ましい。
原料ガスのチャンバー内への流量は、0.5sccm以上200sccm以下程度であるのが好ましく、1sccm以上100sccm以下程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5sccm以上750sccm以下程度であるのが好ましく、10sccm以上500sccm以下程度であるのがより好ましい。
処理時間(成膜時間)は、1分以上10分以下程度であるのが好ましく、2分以上7分以下程度であるのがより好ましい。
また、接合膜30の成膜時における偏光層12の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25℃以上100℃以下程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、偏光層12上に接合膜30が形成される。
このプラズマ重合により形成された接合膜3は、比較的高い透光性を有したものとなる。そして、接合膜30の形成条件(プラズマ重合の際の条件や原料ガスの組成等)を適宜設定することにより、接合膜30の屈折率を調整することができる。具体的には、プラズマ重合の際の高周波電力の出力を高めることにより、接合膜30の屈折率を高めることができ、反対に、プラズマ重合の際の高周波電力の出力を低くすることにより、接合膜30の屈折率を低くすることができる。
具体的には、上述したように、オルガノシロキサンを含有するガスを原料ガスとするプラズマ重合法を用いた場合、屈折率の範囲が1.35以上1.6以下程度の接合膜30が得られる。このような接合膜30は、その屈折率が、水晶や石英ガラスの屈折率に近いため、本発明の光学素子に好適に適用される。また、接合膜30の屈折率を調整することができるので、所望の屈折率の接合膜30を作製することができる。
また、接合膜30は、水晶や石英ガラスの熱膨張率に近いため、接合膜30と第1の透光性基板20、第2の透光性基板40との熱膨張率差が小さくなり、光学素子1の接合後の変形を抑制することができる。
次いで、上述したような接合膜30が形成された偏光層12を用いた光学素子1の製造方法について説明する。
(第1実施形態)
まず、接合膜30が形成された偏光層12を用いた光学素子1の製造方法の第1実施形態について説明する。
図4および図5は、接合膜が形成された偏光層12を用いた光学素子の製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4および図5の上側を「上」、下側を「下」という。
本実施形態にかかる接合方法は、偏光層12が貼り付けられ前記偏光層12に接合膜31を形成された第1の透光性基板20を用意する工程と、接合膜30にエネルギーを付与して、接合膜30中から脱離基を脱離させることにより、接合膜を活性化させる工程と、第2の透光性基板40を用意し、接合膜30と第2の透光性基板40とが密着するように、これらを貼り合わせる工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、上述したような偏光層12が貼り付けられ前記偏光層12に接合膜31を形成された第1の透光性基板20を用意する(図4(a)参照)。
[2]次いで、図4(b)に示すように、接合膜30の表面35にエネルギーを付与する。
エネルギーを付与すると、接合膜30の表面では、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には活性手が生じるため、接合膜30に、第2の透光性基板40との安定した接着性が発現する。その結果、接合膜30は、化学的結合に基づいて第2の透光性基板40と安定して強固に接合可能なものとなる。
ここで、エネルギーを付与する前の接合膜30は、図2に示すように、Si骨格301と脱離基303とを有している。かかる接合膜30にエネルギーが付与されると、特に表面付近の脱離基303(本実施形態では、メチル基)がSi骨格301から脱離する。これにより、図2に示すように、接合膜30の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜30の表面に接着性が発現する。
なお、接合膜30を「活性化させる」とは、接合膜30の表面35および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304によれば、第1の透光性基板20に対して、特に強固な接合が可能となる。
本発明においては、接合膜30にエネルギーを付与する方法として、接合膜30をプラズマに曝す方法を採用する。接合膜30をプラズマに曝す方法によれば、接合膜3の表面35付近に選択的にエネルギーを付与することができるので、接合膜30から脱離基303が脱離することが防止される。これにより、接合膜30の表面35には、接着性が確実に発現するとともに、内部では脱離基303の脱離に伴って接合膜30の組成や物性、特に接合膜30の屈折率が変化してしまうのを防止することができる。
この場合、接合膜30を曝すプラズマとして大気圧プラズマを用いるのが好ましい。大気圧プラズマによれば、減圧手段等の高価な設備を用いることなく、容易にプラズマ処理を行うことができる。また、このプラズマ処理には、接合膜30の近傍でプラズマを発生させるダイレクトプラズマ方式の他、被処理物とプラズマ発生部とが離間したリモートプラズマ方式またはダウンフロープラズマ方式による処理も好ましく用いられる。ダイレクトプラズマ方式によれば、接合膜30の近傍でプラズマを発生させるため、プラズマ処理を効率よくかつ均一に行うことができる。また、被処理物とプラズマ発生部とが離間している場合、被処理物とプラズマ発生部とが干渉しないため、被処理物をイオン損傷から避けることができる。
また、プラズマを発生させるガスとしては、Ar、He、H2、N2、O2等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いることもできる。このうち、接合膜30の酸化等を考慮した場合には、Ar、He等の不活性ガスが好ましく用いられる。
電極間に印加する電圧の周波数は、特に限定されないが、好ましくは10〜50MHz程度とされ、より好ましくは10〜40MHz程度とされる。
[3]次に、第2の透光性基板40を用意し、図4(c)に示すように、活性化させた接合膜30と第2の透光性基板40とが接触するように、接合膜30を介して偏光層12と第2の透光性基板40とを重ね合わせる。これにより、接合膜30の表面35に発現した接着性に基づいて、接合膜30と第2の透光性基板40とが接合し、図5(d)に示すような光学素子(本発明の光学素子)1が得られる。
なお、第2の透光性基板40として光学軸を有する材料からなる透光性基板を使用した場合には、接合膜30を介して偏光層12と第2の透光性基板40とを重ね合わせたのち、偏光層12が貼り付けられた第1の透光性基板20、第2の透光性基板40のいずれか一方、または両方を回転させ、偏光層12の偏光軸と第2の透光性基板40の光学軸とが所望の相対位置関係となるよう調整することが好ましい。偏光層12と第2の透光性基板40とを貼り合わせる前に、偏光層12の偏光軸と第2の透光性基板40の光学軸の相対位置を調整することにより、光学素子1をプロジェクターに使用した場合に、偏光面の乱れによる投影画像の画像低下を防止することが可能になる。
本発明によれば、Si骨格301を有する接合膜30を用いて接合を行っているため、数分以上の比較的長時間にわたって活性状態を維持することができる。このため、偏光層12と第2の透光性基板40とを重ね合わせた後、偏光層12の偏光軸と第2の透光性基板40の光学軸の相対位置を調整するための作業に要する時間を十分に確保することができる。
また、このような第2の透光性基板40の接合膜30との接合に供される領域には、第2の透光性基板40の構成材料に応じて、接合を行う前に、あらかじめ、第2の透光性基板40と接合膜30との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接合膜30と第2の透光性基板40との接合強度をより高めることができる。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、第2の透光性基板40の表面を清浄化するとともに、活性化させることができる。その結果、接合膜30の第2の透光性基板40に対する密着強度を確実に高めることができる。
以上、偏光層12の一方の面に接合膜30を形成し、この接合膜30にエネルギーを付与することで接着性を発現させた後、接合膜30aを介して偏光層12および第1の透光性基板20を接合する方法について説明した。
同様の方法で偏光層12の他方の面に接合膜30bを形成し、この接合膜30にエネルギーを付与することで接着性を発現させ、接合膜30bを介して偏光層12および第2の透光性基板40を接合し、光学素子1を得ることができる。
このようにして得られた光学素子1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、接合膜30で偏光層12と第2の透光性基板40とが接合されている。このため、光学素子1は短時間で形成することができ、かつ、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
ここで、本工程において、接合膜30と第2の透光性基板40とが接合されるメカニズムについて説明する。
例えば、第2の透光性基板40の接合膜30との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜30と第2の透光性基板40とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜30の表面35に存在する水酸基と、第2の透光性基板40の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜30と第2の透光性基板40とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、接合膜30と第2の透光性基板40との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、接合膜30と第2の透光性基板40とがより強固に接合されると推察される。
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜30の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜30の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜30と第2の透光性基板40とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
換言すれば、活性化させる前の接合膜30は、Si骨格301を有する接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜30は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、偏光層12が貼り付けられ前記偏光層12に接合膜31を形成されている第1の透光性基板20を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[2]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、光学素子1の製造効率の観点から有効である。
以上のようにして、図5(d)に示す光学素子(本発明の光学素子)1を得ることができる。
このようにして得られた光学素子1は、接合膜30を介した偏光層12、第2の透光性基板40との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm2)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm2)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する光学素子1は、その剥離を十分に防止し得るものとなり、耐久性に優れた光学素子ということができる。また、本発明の光学素子1によれば、偏光層12と、第2の透光性基板40とが上記のような大きな接合強度で接合された光学素子1を効率よく作製することができる。
なお、偏光層12、および第2の透光性基板40を接合して光学素子1を得た後、この光学素子1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([4A]および[4B])のうちの少なくとも1つの工程(光学素子5の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、光学素子1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
[4A]図5(e)に示すように、得られた光学素子1を、第1の透光性基板20と第2の透光性基板40とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、偏光層12の表面および第2の透光性基板40の表面に、それぞれ接合膜30の表面がより近接し、これにより、未結合の活性手が第2の透光性基板40との間において化学結合を形成することから、光学素子1における接合強度をより高めることができる。
また、光学素子1を加圧することにより、光学素子1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、光学素子1における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、光学素子1を加圧する際の圧力は、光学素子1が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して光学素子1における接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、第1の透光性基板20、第2の透光性基板40、および偏光層12の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の透光性基板20、第2の透光性基板40、および偏光層12の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、光学素子1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の透光性基板20、第2の透光性基板40、および偏光層12の各構成材料によっては、損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、光学素子1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[4B]図5(e)に示すように、得られた光学素子1を加熱する。
これにより、未結合の活性手が第2の透光性基板40との間において化学結合を形成することから、光学素子1における接合強度をより高めることができる。
このとき、光学素子1を加熱する際の温度は、室温より高く、光学素子1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、光学素子1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、前記工程[4A]、[4B]は、本実施形態では、光学素子1を得た後、すなわち前記工程[3]の後に行うこととしたが、前記工程[3]とほぼ同時に行うようにしてもよい。換言すれば、前記工程[3]おける接合膜30を介した偏光層12と第2の透光性基板40との貼り合わせを、加圧および加熱のうちの少なくとも一方の処理を施しつつ行うようにしてもよい。
さらに、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図5(e)に示すように、光学素子1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、光学素子1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、光学素子1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
(第2実施形態)
次いで、接合膜31を有する光学素子1の製造方法の第2実施形態について説明する。
図6および図7は、接合膜が形成された第1の光学部品を用いた光学素子の製造方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6および図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第2実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる製造方法では、第2の透光性基板40にも偏光層12と同様に接合膜を形成するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、偏光層12が貼り付けられ前記偏光層12に接合膜31を形成された第1の透光性基板20と、接合膜32が形成された第2の透光性基板40とを用意する工程と、それぞれの透光性基板20、40に形成された各接合膜31、32にエネルギーを付与して、各接合膜31、32を活性化させる工程と、各接合膜31、32同士が密着するように、これらを介して2つの透光性基板20、40を貼り合わせ、光学素子1を得る工程とを有する。
以下、本実施形態にかかる製造方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、偏光層12が貼り付けられ前記偏光層12に接合膜31を形成された第1の透光性基板20と、接合膜32が形成された第2の透光性基板40とを用意する(図6(a)参照)。
このように、本実施形態では、偏光層12に接合膜31を形成するばかりでなく、第2の透光性基板40にも接合膜32を形成する。
[2]次に、図6(b)に示すように、偏光層12、第2の透光性基板40に設けられた各接合膜31、32にエネルギーを付与する。各接合膜31、32にエネルギーを付与すると、各接合膜31、32では、図2に示す脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、図3に示すように、各接合膜31、32の表面35および内部に活性手304が生じ、各接合膜31、32が活性化される。これにより、各接合膜31、32にそれぞれ接着性が発現する。
このような状態の偏光層12、第2の透光性基板40は、それぞれ接合膜31、32を介して互いに接着可能なものとなる。
なお、各接合膜31、32にエネルギーを付与する方法としては、前記第1実施形態と同様、接合膜31、32をプラズマに曝す方法による。
ここで、接合膜31、32を「活性化させる」とは、前述したように、各接合膜31、32の表面351、352および内部の脱離基303が脱離して、Si骨格301に終端化されていない結合手(未結合手)が生じた状態や、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。
したがって、活性手304とは、未結合手または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。
[3]次に、図6(c)に示すように、接着性が発現した各接合膜31、32同士が密着するように、接合膜31、32を介して、偏光層12と第2の透光性基板40とを貼り合わせ、光学素子(本発明の光学素子)1を得る。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.偏光素子(光学素子)の製造
<1>第1の透光性基板として、縦23mm×横28mm×平均厚さ0.7mmの水晶基板を用意し、第2の透光性基板として、縦20mm×横26mm×平均厚さ0.7mmの水晶基板を用意し、偏光板(偏光層)として、縦17mm×横23mm×平均厚さ0.04mmのKE偏光子を用意した。なお、これらの石英基板は、いずれも光学研磨を施したものである。また、偏光板は、ポリビニルアルコールフィルムを主体に構成され、クロス透過率0.06%以下のものである。
<2>まず、第1の透光性基板に粘着剤層を介して偏光板を接着した。続いて、偏光板、および第2の透光性基板の双方に酸素プラズマによる表面処理を施した後、プラズマ重合法を用いて、偏光板、および第2の透光性基板の双方の面上に、平均厚さ300nmのプラズマ重合膜を成膜した。なお、プラズマ重合法に用いたプラズマ重合装置における成膜条件は以下に示す通りである。
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
・原料ガスの流量 :50sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:100sccm
・高周波電力の出力 :100W
・高周波出力密度 :25W/cm2
・チャンバー内圧力 :1Pa(低真空)
・処理時間 :3分
・基板温度 :50℃
このようにして成膜されたプラズマ重合膜は、オクタメチルトリシロキサン(原料ガス)の重合物で構成されており、シロキサン結合を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格と、アルキル基(脱離基)とを含むものである。また、プラズマ重合膜の結晶化度を赤外線吸収法により測定した。その結果、プラズマ重合膜の結晶化度は、測定箇所によって若干バラツキがあるものの、30%以下であった。
<3>次に、得られたプラズマ重合膜に対してプラズマ処理を施した。これにより、プラズマ重合膜(接合膜)を活性化させて、その表面に活性手を生成させることにより接着性を発現させた。なお、プラズマ処理は、前記工程<2>で用いたプラズマ重合装置を用いて行い、以下に示す条件とした。
<プラズマ処理条件>
・処理ガス :酸素ガス
・ガス供給速度:20sccm
・高周波電力の出力 :50W
・チャンバー内圧力 :4Pa(低真空)
・チャンバー内温度 :60℃
・処理時間 :0.5分
・電極間距離 :40mm
<4>次に、プラズマ処理を施してから1分後に、偏光板に設けられたプラズマ重合膜と第2の透光性基板とが互いに接触するようにして積層体とし、この状態で積層体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持することで、波長板を得た。
(比較例)
第1の透光性基板に接着された偏光板と第2の透光性基板とを接合するための平均厚さ300nmの接合膜を、光(UV)硬化性樹脂(サンライズMSI(株)社製、「型番PHOTOBOND100」)を用いて形成したこと以外は、前記実施例と同様にして光学素子を得た。
以上のような実施例および比較例の偏光素子を、以下に示す評価に応じて複数個作製した。
2.偏光素子の反りの測定
実施例の光学素子、および比較例の光学素子について、第2の透光性基板の偏光層を貼り付けていない面(いわゆる外側の面)のPV(Peak‐Valley)値を測定した。
2.1 偏光素子の反りの測定結果
以下に、実施例の光学素子、および比較例の光学素子、それぞれ40サンプルの測定値の平均値を示す。
実施例 0.416(μm)
比較例 2.012(μm)
UV硬化性樹脂で偏光板と第2の透光性基板とを貼り付けた比較例の光学素子では、PV値が2.012(μm)であるのに対し、本発明の光学素子はPV値が0.416(μm)と5分の1に抑えられている。
本発明の光学素子は、接合膜の熱収縮が有効に抑制されており、UV硬化性樹脂で接着した場合(比較例)と比べ、第2の透光性基板の反りを抑制することができたものと考える。
3.偏光素子の透過率の測定
実施例の光学素子に、420nm−500nmの広帯域の光を照射し、この照射による光透過率の経時変化を観察した。
なお、光透過率の経時変化は、光学素子に光を照射する照射部と、光が照射された後の光学素子の光透過率を測定する測定部とを有する測定装置を用いて行った。
3.1 偏光素子の透過率の測定結果
図7に、実施例の光学素子の光透過率の経時変化を示す。同時に、比較例1として、偏光板が2枚の透光性基板に挟まれたいわゆるサンドイッチ構造にはなっておらず、偏光層の一面のみが本発明に係る接合膜を介して透光性基板に貼り付けられている光学素子のデータを、比較例2として、偏光層の一面のみをUV硬化性接着剤を介して透光性基板に貼り付けられている光学素子のデータを、それぞれ示す。
偏光層が2枚の透光性基板に挟まれたいわゆるサンドイッチ構造の本発明に係る光学素子は、偏光層で発生した熱の放熱が、偏光層の両側に配置された透光性基板を通じて有効に行われ、光透過率の経時的な低下はほとんど認められないことがわかる。
一方、偏光層の一面のみを接合膜を介して透光性基板に貼り付けた比較例1は、比較例2に比べると透光性基板への放熱は有効に行われているものの、その効果は限定的であり、積算光量1500(W/cm2)・h付近を境に光透過率の低下が認められる。
以上より、本発明に係る光学素子は、熱伝導性に優れる接合膜を介して偏光層と第2の透光性基板とを貼り付け、さらに偏光層の両側に第1の透光性基板、第2の透光性基板を配置するという構成を採用した結果、偏光層で発生した熱が偏光層の両側に配置された透光性基板を通じて有効に行われ、光透過率の経時的な低下を抑制することができることが確認された。
1…光学素子 10…偏光板 12…偏光層 20…第1の透光性基板 30、30a、30b…接合膜 40…第2の透光性基板 301…Si骨格 302…シロキサン結合 303…脱離基 304…活性手 35…表面。

Claims (18)

  1. 偏光層からなる偏光板と、
    第1の透光性基板と、
    第2の透光性基板と、
    前記偏光板の偏光層における一方の面と第1の透光性基板とを貼り合わせる第1の接着層と、
    前記偏光板の偏光層における他方の面と第2の透光性基板とを貼り合わせる第2の接着層と、を備え、
    前記第2の接着層は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合し、有機基からなる脱離基とを含み、プラズマ重合によって形成された接合膜であって、少なくとも一部の領域にプラズマエネルギーを付与することにより、前記接合膜の少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、前記接合膜に発現した接着性によって、前記偏光層と前記第2の透光性基板とが接合されていることを特徴とする光学素子。
  2. 前記第1の光学素子、および前記第2の光学素子はサファイア、水晶、石英ガラス、硬質ガラス、透明ガラスからなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記光学素子を通過する光の波長は、200nm以上、830nm以下である請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 当該光学素子を透過させる光の密度は、35W/mm2以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学素子。
  5. 当該光学素子を透過させる際の前記接合膜の温度は、0℃以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の光学素子。
  6. 当該光学素子に光を透過させた後の光透過率は、95%以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の光学素子。
  7. 当該光学素子に光を透過させる時間は、100時間以上である請求項1ないし6のいずれかに記載の光学素子。
  8. 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の光学素子。
  9. 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項8に記載の光学素子。
  10. 前記プラズマ重合において、プラズマを発生させる際の高周波電力の出力は、100W以上、400W以下である請求項1ないし9のいずれかに記載の光学素子。
  11. 前記接合膜は、このものを構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10原子%以上、90原子%以下のものである請求項1ないし10のいずれかに記載の光学素子。
  12. 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7以上、7:3以下である請求項1ないし11のいずれかに記載の光学素子。
  13. 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし12のいずれかに記載の光学素子。
  14. 前記接合膜は、Si−H結合を含んでいる請求項1ないし13のいずれかに記載の光学素子。
  15. 前記接合膜についての赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピーク強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピーク強度が0.001以上、0.2以下である請求項14に記載の光学素子。
  16. 前記脱離基は、アルキル基である請求項1ないし15のいずれかに記載の光学素子。
  17. 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし16のいずれかに記載の光学素子。
  18. 前記接合膜の屈折率は、1.35〜1.6である請求項1ないし17のいずれかに記載の光学素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2015033610A1 (ja) * 2013-09-09 2017-03-02 日本化薬株式会社 光学部材の製造方法及びそれに用いる紫外線硬化型樹脂組成物
WO2019225536A1 (ja) * 2018-05-21 2019-11-28 株式会社ポラテクノ 表示装置及び偏光部材

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