JP2011038426A - 筒内直噴式内燃機関の始動制御装置及び方法 - Google Patents

筒内直噴式内燃機関の始動制御装置及び方法 Download PDF

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幸信 姉崎
Masatoshi Umasaki
政俊 馬▲崎▼
Eriko Matsumura
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Abstract

【課題】燃料の気化を促進させ、機関始動を容易に行わせる技術を提供する。
【解決手段】内燃機関がクランキングされる気筒の初爆直前サイクルでは、当該気筒が吸気行程の時期に吸気弁を吸気弁可変動弁機構で閉弁し(S108)、当該気筒内に燃料噴射手段で燃料を噴射し(S109)、当該気筒内への点火手段での点火を禁止し、当該気筒が排気行程の時期に排気弁を排気弁可変動弁機構で閉弁状態に維持し(S110)、当該気筒の初爆サイクルでは、当該気筒内への燃料噴射手段からの燃料噴射を禁止する。
【選択図】図3

Description

本発明は、筒内直噴式内燃機関の始動制御装置及び筒内直噴式内燃機関の始動制御方法に関する。
低温での機関始動時に、排気弁の可変動弁機構を用いて排気行程で、燃料噴射した筒内ガスを閉じ込め、当該筒内ガスを次サイクルに持ち越すことで、燃料量の増大及び燃料の気化促進を図る技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−009004号公報 特開2007−077954号公報
ところで、近年では、燃料にガソリンだけでなくアルコールも含有するアルコール混合燃料が用いられる。アルコール混合燃料は、気化特性が悪く、発熱量が低いため、低温での機関始動を困難にさせる。このようなアルコール混合燃料を用いる場合に上記技術を適用しても、次サイクルで供給された燃料がやはり気化し難く、低温での機関始動は改善されない。
本発明は上記問題点に鑑みたものであり、その目的は、燃料の気化を促進させ、機関始動を容易に行わせる技術を提供することにある。
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
内燃機関をクランキングするクランキング手段と、
前記内燃機関の気筒の吸気弁の作動を変更可能な吸気弁可変動弁機構と、
前記内燃機関の気筒の排気弁の作動を変更可能な排気弁可変動弁機構と、
前記内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記内燃機関の気筒内で点火を行う点火手段と、
前記内燃機関が前記クランキング手段によってクランキングされる気筒の初爆直前サイクルでは、当該気筒が吸気行程の時期に前記吸気弁を前記吸気弁可変動弁機構で閉弁し、当該気筒内に前記燃料噴射手段で燃料を噴射し、当該気筒内への前記点火手段での点火を禁止し、当該気筒が排気行程の時期に前記排気弁を前記排気弁可変動弁機構で閉弁状態に維持し、当該気筒の初爆サイクルでは、当該気筒内への前記燃料噴射手段からの燃料噴射を禁止する始動制御手段と、
を備えたことを特徴とする筒内直噴式内燃機関の始動制御装置である。
本発明によると、初爆サイクルで初爆される燃料が1つ前のサイクルである初爆直前サイクルで気筒内に噴射される。ここで、気筒の初爆直前サイクルでは、気筒が吸気行程の時期に吸気弁を閉弁しており、気筒が排気行程の時期に排気弁を閉弁状態に維持しているので、気筒内に吸入されたガス量が少なく排出もされない。そしてクランキングされてピストンが作動し、初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも下方に位置する気筒の容積が大きい時期に燃料が噴射されると、筒内ガス体積が大きくなり負圧となった気筒内に噴射された燃料の沸騰が生じるので、燃料の気化が促進で
きる。一方、初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも上方に位置する気筒の容積が小さい時期に燃料が噴射されると、筒内ガスが断熱圧縮されて温められた気筒内に燃料を噴射するので、燃料の気化が促進できる。また、初爆直前サイクルで燃料が噴射されると、初爆サイクルの点火までの時間が稼げるので、燃料の気化が促進できる。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
前記始動制御手段は、当該気筒の初爆サイクルでは、当該気筒が吸気行程の時期に前記吸気弁を前記吸気弁可変動弁機構で小作動リフト化するとよい。
本発明によると、初爆サイクルでは吸気弁があまり開弁されず、気筒内に吸入されるガスは流速が増す。これにより、気筒内では気流が増加し、筒内ガスと燃料とがよく混ざるようになる。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
前記始動制御手段は、当該気筒内への前記燃料噴射手段での燃料噴射を、当該気筒の前記初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも下方に位置する当該気筒の容積が大きい時期に行うとよい。
本発明によると、初爆直前サイクルでの筒内ガス量が少ないにもかかわらず、筒内ガス体積が大きくなり負圧となった気筒内に燃料が噴射される。噴射される燃料は液体であるが、負圧の雰囲気に噴射されると、燃料の沸騰が生じる。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
前記始動制御手段は、当該気筒内への前記燃料噴射手段での燃料噴射を、当該気筒の前記初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも上方に位置する当該気筒の容積が小さい時期に行うとよい。
本発明によると、クランキングされてピストンが作動し、筒内ガスが断熱圧縮されて温められた気筒内に燃料が噴射される。筒内ガスが温かい程、燃料は気化し易い。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
内燃機関の温度を検知する機関温度検知手段と、燃料のアルコール濃度を検知するアルコール濃度検知手段と、を備え、前記始動制御手段は、前記機関温度検知手段で検知する機関温度が、機関始動が困難になる所定温度以下、又は、前記アルコール濃度検知手段で検知するアルコール濃度が、機関始動が困難になる所定濃度以上の場合に、制御を実行するとよい。
ここで、所定温度とは、内燃機関の温度がそれ以下の温度であると、低温下のために機関始動が困難になる閾値の温度であり、予め実験や検証等で求めることができる。また、所定濃度とは、燃料のアルコール濃度がそれ以上の濃度であると、アルコール濃度が高濃度のために機関始動が困難になる閾値の温度であり、予め実験や検証等で求めることができる。
本発明によると、低温下や燃料のアルコール濃度が高濃度のために内燃機関の機関始動が困難な場合に、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
前記内燃機関の気筒内の圧力を検知する筒内圧検知手段を備え、前記始動制御手段は、前記点火手段での点火後に前記筒内圧検知手段で検知した筒内圧が当該気筒内の爆発で機関始動する場合に生じる所定圧よりも小さいときは、当該気筒の前記初爆直前サイクルにおける当該気筒内に前記燃料噴射手段で燃料を噴射する処理から制御を繰り返すとよい。
ここで、所定圧とは、気筒内の爆発で機関始動する場合に生じる圧力であり、気筒内の圧力がそれよりも小さいと、気筒内の爆発で機関始動できなかったことになる圧力であり、予め実験や検証等で求めることができる。
本発明によると、初爆サイクルで内燃機関の機関始動ができなかった場合に、制御を繰り返すので、機関始動が容易に行える。
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
内燃機関をクランキングするクランキング手段と、
前記内燃機関の気筒の吸気弁の作動を変更可能な吸気弁可変動弁機構と、
前記内燃機関の気筒の排気弁の作動を変更可能な排気弁可変動弁機構と、
前記内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記内燃機関の気筒内で点火を行う点火手段と、
を備える筒内直噴式内燃機関の始動制御方法であって、
前記内燃機関が前記クランキング手段によってクランキングされる気筒の初爆直前サイクルでは、当該気筒が吸気行程の時期に前記吸気弁を前記吸気弁可変動弁機構で閉弁し、当該気筒内に前記燃料噴射手段で燃料を噴射し、当該気筒内への前記点火手段での点火を禁止し、当該気筒が排気行程の時期に前記排気弁を前記排気弁可変動弁機構で閉弁状態に維持し、
当該気筒の初爆サイクルでは、当該気筒内への前記燃料噴射手段からの燃料噴射を禁止することを特徴とする筒内直噴式内燃機関の始動制御方法である。
本発明によると、初爆サイクルで初爆される燃料が1つ前のサイクルである初爆直前サイクルで気筒内に噴射される。ここで、気筒の初爆直前サイクルでは、気筒が吸気行程の時期に吸気弁を閉弁しており、気筒が排気行程の時期に排気弁を閉弁状態に維持しているので、気筒内に吸入されたガス量が少なく排出もされない。そしてクランキングされてピストンが作動し、初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも下方に位置する気筒の容積が大きい時期に燃料が噴射されると、筒内ガス体積が大きくなり負圧となった気筒内に噴射された燃料の沸騰が生じるので、燃料の気化が促進できる。一方、初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも上方に位置する気筒の容積が小さい時期に燃料が噴射されると、筒内ガスが断熱圧縮されて温められた気筒内に燃料を噴射するので、燃料の気化が促進できる。また、初爆直前サイクルで燃料が噴射されると、初爆サイクルの点火までの時間が稼げるので、燃料の気化が促進できる。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
本発明によると、燃料の気化を促進させることができ、機関始動を容易に行わせることができる。
実施例1に係る筒内直噴式内燃機関の概略構成を示す図である。 実施例1に係る特殊機関始動制御を示すタイミングチャートである。 実施例1に係る始動制御ルーチンを示すフローチャートである。
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
<実施例1>
図1は、本実施例に係る筒内直噴式内燃機関(以下、単に内燃機関という)の始動制御装置を適用する内燃機関の概略構成を示している。図1に示す内燃機関1は、車両に搭載
された4つの気筒を有する水冷式の4ストロークサイクル・ガソリンエンジンである。内燃機関1は、気筒2内に燃料を噴射し、火花点火を行う。なお、本実施例では、燃料にガソリンだけでなくエタノール等のアルコールも含有するアルコール混合燃料を用いる機関について説明する。しかし、本発明はこれに限られず、燃料にガソリンだけを用いる機関について適用してもよい。
内燃機関1の気筒2内には、ピストン3が摺動自在に設けられている。気筒2内上部の燃焼室4には、吸気ポート5及び排気ポート6が接続されている。内燃機関1の気筒2の上部側方には、気筒2内の燃焼室4に燃料を噴射する燃料噴射弁7が設けられている。燃料噴射弁7が本発明の燃料噴射手段に相当する。内燃機関1の気筒2の上方には、気筒2内の燃焼室4の混合気に点火を行う点火プラグ8が設けられている。点火プラグ8が本発明の点火手段に相当する。
吸気ポート5の燃焼室4への開口部は吸気弁9によって開閉され、排気ポート6の燃焼室4への開口部は排気弁10によって開閉される。吸気ポート5は吸気通路11に接続され、排気ポート6は排気通路12に接続されている。
ここで、吸気弁9は、吸気弁9の作動タイミング、すなわち吸気弁9の開閉特性である開閉時期(バルブタイミング)やリフト量を変更可能とする吸気弁可変動弁機構(以下、吸気弁VVTという)13を有している。一方、排気弁10は、排気弁10の作動タイミング、すなわち排気弁10の開閉特性である開閉時期(バルブタイミング)やリフト量を変更可能とする排気弁可変動弁機構(以下、排気弁VVTという)14を有している。排気弁VVT14は、少なくとも排気弁10の開閉時期を変更できるものであればよい。吸気弁VVT13や排気弁VVT14は、電磁駆動式の機構等が用いられる。
内燃機関1の下方には、クランク軸からクランク角信号を取り出すクランク角センサ15が設けられている。内燃機関1の気筒2には、気筒2内の圧力を検知する筒内圧センサ16が設けられている。筒内圧センサ16が本発明の筒内圧検知手段に相当する。内燃機関1には、機関冷却水温を検知する水温センサ17が設けられている。水温センサ17が本発明の機関温度検知手段に相当する。機関温度検知手段としては、水温センサ17以外にも油温センサ等を用いることもできる。内燃機関1の燃料配管には、燃料のアルコール濃度を検知するアルコール濃度センサ18が設けられている。アルコール濃度センサ18が本発明のアルコール濃度検知手段に相当する。
内燃機関1には、当該内燃機関1をクランキングするスタータ19が設けられている。スタータ19は、不図示のバッテリの電力で駆動され、内燃機関1をクランキングする。スタータ19が本発明のクランキング手段に相当する。
以上述べたように構成された内燃機関1には、内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU20が併設されている。ECU20は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。ECU20には、図示した各種センサが電気配線を介して接続され、これらの出力信号がECU20に入力される。一方、ECU20には、燃料噴射弁7、点火プラグ8、吸気弁VVT13、排気弁VVT14及びスタータ19が電気配線を介して接続されており、ECU20によりこれらの機器が制御される。
ところで、本実施例の内燃機関1の燃料には、アルコール混合燃料を用いている。アルコール混合燃料は、気化特性が悪く、発熱量が低いため、低温やアルコール濃度が高い場合の機関始動を困難にさせる。このため、クランキングして、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を行う通常の1サイクルで初爆を行わせる通常の機関始動制御を行っても
機関始動できない場合がある。
そこで、機関冷却水温Twが所定温度A以下、又は、燃料のアルコール濃度Xが所定濃度B以上の場合に機関始動させるときは、通常の機関始動制御とは異なる特殊機関始動制御を行うようにした。特殊機関始動制御は、内燃機関がスタータ19によってクランキングされる気筒2の初爆直前サイクルでは、この気筒2が吸気行程の時期に吸気弁9を吸気弁VVT13で閉弁し、この気筒2内に燃料噴射弁7で燃料を噴射し、この気筒2内への点火プラグ8での点火を禁止し、この気筒2が排気行程の時期に排気弁10を排気弁VVT14で閉弁状態に維持し、この気筒2の初爆サイクルでは、この気筒2内への燃料噴射弁7からの燃料噴射を禁止するものである。
なおここで、本実施例での特殊機関始動制御では、この気筒2内への燃料噴射弁7での燃料噴射を、この気筒2の初爆直前サイクルにおける、ピストン3の頂部が上死点と下死点との中間位置よりも下方に位置する膨張行程後半のこの気筒2の容積が大きい時期に行う。
また、本実施例での特殊機関始動制御では、当該気筒2の初爆サイクルでは、この気筒2が吸気行程の時期に吸気弁9を吸気弁VVT13で小作動リフト化する。
ここで、水温センサ17で検知する機関冷却水温Twの所定温度Aとは、内燃機関1を流れる機関冷却水の温度がそれ以下の温度であると、低温下のために機関始動が困難になる閾値の温度であり、予め実験や検証等で求まる。なお、本実施例では、水温センサ17で検知する機関冷却水温を例に挙げるが、これ以外の油温等の他の内燃機関1の温度を検知して、低温下のために機関始動が困難になる閾値の温度を所定温度と定めてもよい。また、アルコール濃度センサ18で検知するアルコール濃度Xの所定濃度Bとは、燃料のアルコール濃度がそれ以上の濃度であると、アルコール濃度が高濃度のために機関始動が困難になる閾値の温度であり、予め実験や検証等で求まる。
またここで、初爆サイクルとは、機関始動前のクランキングされている内燃機関1の気筒2において混合気に点火が行われる、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を有する1サイクルである。初爆直前サイクルとは、機関始動前のクランキングされている内燃機関1の気筒2において初爆サイクルの1つ前のサイクルであって、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を有する1サイクルである。
特殊機関始動制御によると、初爆サイクルで初爆される燃料が1つ前のサイクルである初爆直前サイクルで気筒2内に噴射される。ここで、初爆直前サイクルでは、気筒2が吸気行程の時期に吸気弁9を閉弁しており、気筒2が排気行程の時期に排気弁10を閉弁状態に維持しているので、気筒2内に吸入されたガス量が少なく排出もされない。そしてクランキングされてピストンが作動し、初爆直前サイクルにおける膨張行程後半の気筒2の容積が大きい時期に燃料が噴射されるので、筒内ガス体積が大きくなり負圧となった気筒2内に噴射された燃料の沸騰が生じるので、燃料の気化が促進できる。また、初爆直前サイクルにおける膨張行程後半の時期に燃料が噴射されると、初爆サイクルの点火までの時間が稼げるので、燃料の気化が促進できる。また、初爆サイクルにおける吸気行程で吸気弁9が小作動リフト化されると、吸気弁9があまり開弁されず、流速が増したガスが気筒2内に吸入されて気筒2内で気流が増加し、筒内ガスと燃料とがよく混ざり、燃料の気化が促進できる。よって、機関冷却水温Twが所定温度A以下、又は、燃料のアルコール濃度Xが所定濃度B以上の場合の内燃機関1の機関始動が困難な場合に、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
また、特殊機関始動制御は、点火プラグ8での点火後に筒内圧センサ16で検知した筒
内圧Pが当該気筒2内の爆発で機関始動する場合に生じる所定圧Cよりも小さいときは、当該気筒2の初爆直前サイクルにおける当該気筒2内に燃料噴射弁7で燃料を噴射する処理から制御を繰り返す。
ここで、筒内圧センサ16で検知する筒内圧Pが所定圧Cとは、気筒2内の爆発で機関始動する場合に生じる圧力であり、気筒2内の圧力がそれよりも小さいと、気筒2内の爆発で機関始動できなかったことになる圧力であり、予め実験や検証等で求まる。
特殊機関始動制御を繰り返すことにより、1回目の初爆サイクルで内燃機関1の機関始動ができなかった場合に、特殊機関始動制御を繰り返すので、機関始動が容易に行える。
次に特殊機関始動制御を行う機関始動制御ルーチンについて、図2に示すタイミングチャートと図3に示すフローチャートに基づいて説明する。図2は、特殊機関始動制御を示すタイミングチャートである。図3は、機関始動制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU20によって実行される。
ステップS101では、スタータ19を始動させるスタータスイッチがONになったか否かを判別する。ステップS101において肯定判定された場合には、ステップS102へ移行する。ステップS101において否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。
ステップS102では、機関停止時における各気筒2の行程状態を検知する。機関停止時における各気筒2の行程状態を検知する手法は、クランク角センサ15を用い、例えば特許第3186524号公報に記載された手法等により行う。これにより、どの気筒2が吸気行程で停止しているか等が検知できる。図2では、第1気筒が吸気行程、第3気筒が排気行程、第4気筒が膨張行程、第2気筒が圧縮行程で機関停止している。
ステップS103では、水温センサ17で内燃機関1の機関冷却水温Twを検知する。
ステップS104では、アルコール濃度センサ18で燃料のアルコール濃度Xを検知する。
ステップS105では、内燃機関1のクランキングをスタータ19で開始する。
ステップS106では、機関冷却水温Twが所定温度A以下、又は、燃料のアルコール濃度Xが所定濃度B以上か否かを判別する。ステップS106において機関冷却水温Twが所定温度A以下、又は、燃料のアルコール濃度Xが所定濃度B以上であると肯定判定された場合には、ステップS108へ移行する。ステップS106において機関冷却水温Twが所定温度A以下、又は、燃料のアルコール濃度Xが所定濃度B以上のどちらにも該当しないと否定判定された場合には、ステップS107へ移行する。
ステップS107では、特殊機関始動制御は不要であるので、通常の機関始動制御を行う。通常の機関始動制御は、クランキング開始後に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を行う通常の1サイクルで初爆を行わせる制御である。
一方、ステップS108では、特殊機関始動制御に移行し、吸気弁VVT13により吸気行程で吸気弁9を閉弁する。ここでの吸気行程とは、初爆直前サイクルの吸気行程である。図2の第1気筒のように、機関停止時に吸気行程であった気筒2では、その吸気行程において吸気弁VVT13により開弁していた吸気弁9が閉弁されることになる。図2の第3気筒、第4気筒、第2気筒のように、機関停止時に吸気行程以外であった気筒2では
、内燃機関1のクランキング開始後に初めに来る吸気行程において、その吸気行程の初めから吸気弁VVT13により吸気弁9は閉弁状態に維持されることになる。これにより、低温の外気が気筒2内へ吸入されることを防止すると共に、筒内圧上昇を防止する。
ステップS109では、図2の各気筒2のように、膨張行程の後半の時期に燃料噴射弁7から燃料を噴射する。ここでの膨張行程とは、初爆直前サイクルの膨張行程である。初爆直前サイクルの膨張行程後半に燃料を噴射することで、気筒2内の負圧による燃料の気化促進と、初爆直前サイクルの1つ後の初爆サイクルの点火までの時間を長く稼ぐことによる燃料の気化促進とを図る。
ステップS110では、図2の各気筒2のように、排気弁VVT14により排気行程で排気弁10を閉弁状態(全閉状態)に維持する。ここでの排気行程とは、初爆直前サイクルの排気行程である。初爆直前サイクルの排気行程では、気筒2内の燃料が排気されてしまうことを防止すると共に、断熱圧縮により気筒2内のガスを昇温させて更なる燃料の気化促進を図る。
なおこれにより初爆直前サイクルが終了する。初爆直前サイクルでは、初爆させないために、気筒2内への点火プラグ8での点火を禁止している。
ステップS111では、図2の各気筒2のように、吸気弁VVT13により吸気行程で吸気弁9を小作動リフト化する。小作動リフト化とは、通常時の開弁量よりも開弁量を少なくするものである。ここでの吸気行程とは、初爆サイクルの吸気行程である。小作動リフト化することで、吸入されるガス量が減り、始動要求燃料量が低減できると共に、気筒2内に流入する気流を増加させ、筒内ガスと燃料とのミキシングを向上し、更なる燃料の気化促進を図る。
ステップS112では、図2の各気筒2のように、圧縮行程と膨張行程との間の上死点近傍の時期に点火プラグ8で点火を行う。ここでの圧縮行程と膨張行程との間とは、初爆サイクルの圧縮行程と膨張行程との間である。なお、点火時期は、本実施例のタイミングに限られず、初爆サイクル中において変更してもよい。
ステップS113では、筒内圧センサ16で気筒2内の筒内圧Pが所定圧C以上か否かを判別する。ステップS113において肯定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。ステップS113において否定判定された場合には、ステップS109へ移行し、初爆直前サイクルにおける気筒2内に燃料噴射弁7で燃料を噴射する処理から制御を繰り返す。
なおこれにより初爆サイクルが終了する。初爆サイクルでは、新たな気化し難い燃料が供給されてしまうことを回避するため、気筒2内への燃料噴射弁7からの燃料噴射を禁止している。
なお、本ルーチンにおけるステップS108〜S113を実行するECU19が本発明の始動制御手段に相当する。
以上説明した本ルーチンによれば、特殊機関始動制御を行うことで、燃料の気化を促進させることができ、機関始動を容易に行わせることができる。
なお、本実施例では、特殊機関始動制御における気筒2内への燃料噴射弁7での燃料噴射を、初爆直前サイクルにおける膨張行程後半の気筒2の容積が大きい時期に行うようにしていた。これにより、初爆直前サイクルでの気筒2内のガス量が少ないにもかかわらず
、筒内ガス体積が大きくなり負圧となった気筒2内に燃料が噴射される。噴射される燃料は液体であるが、負圧の雰囲気に噴射されると、燃料の沸騰が生じる。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。しかしながら、本発明はこれに限られない、初爆直前サイクルにおけるピストン3の頂部が上死点と下死点との中間位置よりも下方に位置する気筒2の容積が大きい時期であれば、例えば、吸気行程後半、圧縮行程前半、排気行程前半の時期であっても同様の効果を得ることができる。また特にこの効果を顕著に得られるのは、初爆直前サイクルにおけるピストン3の頂部が下死点近傍にある時期である。
また、特殊機関始動制御における気筒2内への燃料噴射手段での燃料噴射を、初爆直前サイクルにおけるピストン3の頂部が上死点と下死点との中間位置よりも上方に位置する気筒2の容積が小さい時期に行うものでもよい。この時期としては、例えば、吸気行程前半、圧縮行程後半、膨張行程前半、排気行程後半の時期である。これによると、クランキングされてピストン3が作動し、筒内ガスが断熱圧縮されて温められた気筒2内に燃料が噴射される。筒内ガスが温かい程、燃料は気化し易い。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。また特にこの効果を顕著に得られるのは、初爆直前サイクルにおけるピストン3の頂部が上死点近傍にある時期である。
なお、本実施例では、特殊機関始動制御における気筒2内への燃料噴射弁7での燃料噴射を、初爆直前サイクルにおける膨張行程後半の時期に行うようにしていた。しかしこれに限られず、特殊機関始動制御における気筒2内への燃料噴射弁7での燃料噴射を、初爆直前サイクルにおけるより早い時期に行うことも好ましい。これによると、初爆直前サイクルにおけるより早い時期に燃料が噴射され、初爆サイクルの点火までの時間が長く稼げる。点火までの時間が長い程、燃料は気化し易い。よって、燃料の気化が促進され、機関始動が容易に行える。
なお、本実施例では、特殊機関始動制御における初爆サイクルでは、気筒2が吸気行程の時期に吸気弁9を吸気弁VVT13で小作動リフト化した。しかしこれに限られない。本発明としては、初爆サイクルにおける吸気行程で通常通り吸気弁9を開弁してもよい。
なお、本実施例では、特殊機関始動制御を、機関冷却水温Twが所定温度A以下、又は、燃料のアルコール濃度Xが所定濃度B以上の場合に機関始動させる場合に限っていた。しかしこれに限られず、機関始動させる場合は全て特殊機関始動制御を行ってもよい。
なお、本実施例では、特殊機関始動制御は、点火プラグ8での点火後に筒内圧センサ16で検知した筒内圧Pが当該気筒2内の爆発で機関始動する場合に生じる所定圧Cよりも小さいときに制御を繰り返すようにしていた。しかしこれに限られず、内燃機関1の機関回転数上昇度合いから当該制御を繰り返すか否かを判別してもよい。また、特殊機関始動制御を一度だけ行い繰り返さないようにしてもよい。
本発明に係る筒内直噴式内燃機関の始動制御装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
1 内燃機関
2 気筒
3 ピストン
4 燃焼室
5 吸気ポート
6 排気ポート
7 燃料噴射弁
8 点火プラグ
9 吸気弁
10 排気弁
11 吸気通路
12 排気通路
13 吸気弁VVT
14 排気弁VVT
15 クランク角センサ
16 筒内圧センサ
17 水温センサ
18 アルコール濃度センサ
19 スタータ
20 ECU

Claims (7)

  1. 内燃機関をクランキングするクランキング手段と、
    前記内燃機関の気筒の吸気弁の作動を変更可能な吸気弁可変動弁機構と、
    前記内燃機関の気筒の排気弁の作動を変更可能な排気弁可変動弁機構と、
    前記内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
    前記内燃機関の気筒内で点火を行う点火手段と、
    前記内燃機関が前記クランキング手段によってクランキングされる気筒の初爆直前サイクルでは、当該気筒が吸気行程の時期に前記吸気弁を前記吸気弁可変動弁機構で閉弁し、当該気筒内に前記燃料噴射手段で燃料を噴射し、当該気筒内への前記点火手段での点火を禁止し、当該気筒が排気行程の時期に前記排気弁を前記排気弁可変動弁機構で閉弁状態に維持し、当該気筒の初爆サイクルでは、当該気筒内への前記燃料噴射手段からの燃料噴射を禁止する始動制御手段と、
    を備えたことを特徴とする筒内直噴式内燃機関の始動制御装置。
  2. 前記始動制御手段は、当該気筒の初爆サイクルでは、当該気筒が吸気行程の時期に前記吸気弁を前記吸気弁可変動弁機構で小作動リフト化することを特徴とする請求項1に記載の筒内直噴式内燃機関の始動制御装置。
  3. 前記始動制御手段は、当該気筒内への前記燃料噴射手段での燃料噴射を、当該気筒の前記初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも下方に位置する当該気筒の容積が大きい時期に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の筒内直噴式内燃機関の始動制御装置。
  4. 前記始動制御手段は、当該気筒内への前記燃料噴射手段での燃料噴射を、当該気筒の前記初爆直前サイクルにおけるピストン頂部が上死点と下死点との中間位置よりも上方に位置する当該気筒の容積が小さい時期に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の筒内直噴式内燃機関の始動制御装置。
  5. 内燃機関の温度を検知する機関温度検知手段と、
    燃料のアルコール濃度を検知するアルコール濃度検知手段と、
    を備え、
    前記始動制御手段は、前記機関温度検知手段で検知する機関温度が、機関始動が困難になる所定温度以下、又は、前記アルコール濃度検知手段で検知するアルコール濃度が、機関始動が困難になる所定濃度以上の場合に、制御を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の筒内直噴式内燃機関の始動制御装置。
  6. 前記内燃機関の気筒内の圧力を検知する筒内圧検知手段を備え、
    前記始動制御手段は、前記点火手段での点火後に前記筒内圧検知手段で検知した筒内圧が当該気筒内の爆発で機関始動する場合に生じる所定圧よりも小さいときは、当該気筒の前記初爆直前サイクルにおける当該気筒内に前記燃料噴射手段で燃料を噴射する処理から制御を繰り返すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒内直噴式内燃機関の始動制御装置。
  7. 内燃機関をクランキングするクランキング手段と、
    前記内燃機関の気筒の吸気弁の作動を変更可能な吸気弁可変動弁機構と、
    前記内燃機関の気筒の排気弁の作動を変更可能な排気弁可変動弁機構と、
    前記内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
    前記内燃機関の気筒内で点火を行う点火手段と、
    を備える筒内直噴式内燃機関の始動制御方法であって、
    前記内燃機関が前記クランキング手段によってクランキングされる気筒の初爆直前サイクルでは、当該気筒が吸気行程の時期に前記吸気弁を前記吸気弁可変動弁機構で閉弁し、当該気筒内に前記燃料噴射手段で燃料を噴射し、当該気筒内への前記点火手段での点火を禁止し、当該気筒が排気行程の時期に前記排気弁を前記排気弁可変動弁機構で閉弁状態に維持し、
    当該気筒の初爆サイクルでは、当該気筒内への前記燃料噴射手段からの燃料噴射を禁止することを特徴とする筒内直噴式内燃機関の始動制御方法。
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