JP2011038082A - 高分子重合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明はイオン性基の金属塩を含有するモノマーを脱塩重縮合する高分子重合方法において、イオン性基の金属塩を含有するモノマーユニットの導入率を仕込み量論値に近づけ、高分子量化し、さらにはポリマーの分解を抑制する。
【解決手段】イオン性基の金属塩を含有するモノマーを脱塩重縮合する際に、環状金属捕捉剤を添加することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子電解質型燃料電池等に用いられる高分子電解質材料となるイオン性基を有するポリマーの重合方法に関するものである。
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも高分子電解質型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
高分子電解質型燃料電池においては、水素ガスを燃料とする従来の高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCと記載する)に加えて、メタノールを直接供給するダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCと記載する)も注目されている。DMFCは燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり一充填あたりの携帯機器の使用時間が長時間になるという利点がある。
燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。高分子電解質膜は高分子電解質材料を主として構成される。高分子電解質材料は電極触媒層のバインダー等にも用いられる。
高分子電解質膜の要求特性としては、第一に高いプロトン伝導性が挙げられる。そのため高分子電解質材料にはイオン性基が導入される。また、高分子電解質膜は、燃料と酸素の直接反応を防止するバリアとしての機能を担うため、燃料の低透過性が要求される。特に、メタノールなどの有機溶媒を燃料とするDMFC用高分子電解質膜においては、メタノール透過はメタノールクロスオーバー(以降、MCOと略称することがある。)と呼ばれ、電池出力およびエネルギー効率の低下という問題を引き起こす。その他の要求特性としては、燃料電池運転中の強い酸化雰囲気に耐えるための化学的安定性、薄膜化や膨潤乾燥の繰り返しに耐えうる機械強度などを挙げることができる。
上記高分子電解質型燃料電池等に用いられる高分子電解質材料となるイオン性基を有するポリマーを重合する際、脱塩重縮合反応では反応の進行に伴い金属塩が析出する。この析出した金属塩が重合阻害となったり、長時間の重合反応によるイオン性基の熱分解を促進させる恐れがあった。また、高分子電解質材料が高いプロトン伝導性を得るためには、スルホン酸基などのイオン性基の末端がプロトン型である必要があり、アルカリ金属塩存在下ではイオン性基の金属塩を形成するが、このイオン性基の金属塩の末端は凝集が起こりやすいといった問題もあった。
このように、従来技術による高分子電解質材料の重合は困難であり、産業上有用な燃料電池用高分子電解質材料としては課題があった。
この課題に対し、特許文献1では高分子電解質材料の重合時にクラウンエーテル類が存在する場合が示されている。しかし、このクラウンエーテルは共重合のモノマー構造に含まれて使用されているので、重合反応が進むとポリマー鎖に取り込まれ、同様にポリマー鎖に取り込まれたイオン性基の金属塩の捕捉剤としては機能しなくなり、長時間の重合によるイオン性基の熱分解を抑制する効果が生じない。また、かえってイオン性基の金属塩の末端が凝集するのを促進してしまうおそれもある。
また、特許文献2においては、重合時に反応促進剤としてクラウンエーテルを添加するとの記述がある。しかし、この場合の重合方法はラジカル重合であり、本発明の様な脱塩重縮合ではないため、析出した金属塩による重合阻害やイオン性基の熱分解、またイオン性基の金属塩末端の凝集を抑制するものではない。
特開平10−120914号公報 特開2004−75855号公報
本発明はイオン性基の金属塩を含有するモノマーを脱塩重縮合する際に、析出した金属塩による重合阻害や長時間の重合反応によるイオン性基の熱分解およびイオン性基の金属塩末端の凝集を抑制するものである。
上記目的を達成するための本発明は、次のような手段を採用するものである。すなわち、
イオン性基の金属塩を含有するモノマーを脱塩重縮合する際に、環状金属捕捉剤を添加することを特徴とする高分子重合方法である。
本発明によれば、イオン性基の金属塩を含有するモノマーを脱塩重縮合する際に、析出した金属塩による重合阻害や長時間の重合反応によるイオン性基の熱分解およびイオン性基の金属塩末端の凝集を抑制することが可能となる。
クラウンエーテル非添加、添加した電解質高分子の構造を示す図である。 スルホン酸基中の硫黄原子同士の動径分布関数、配位数を示す図である。 実施例1で得られたポリマーの重量平均分子量およびスルホン酸基密度の重合時間による変化を示した図である。 比較例1で得られたポリマーの重量平均分子量およびスルホン酸基密度の重合 時間による変化を示した図である。 実施例2で得られたポリマーの重量平均分子量およびスルホン酸基密度の重合時間による変化を示した図である。 比較例2で得られたポリマーの重量平均分子量およびスルホン酸基密度の重合 時間による変化を示した図である。 比較例3で得られたポリマーの重量平均分子量およびスルホン酸基密度の重合 時間による変化を示した図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明の重合方法はイオン性基の金属塩を含有するモノマーを脱塩重縮合する際に適用されるものである。ここで言うイオン性基とは、負電荷を有する原子団であれば特に限定されるものではないが、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。
本発明ではイオン性基と金属カチオンとでイオン性基の金属塩を構成している事が必須であり、前記塩を構成する形成する金属カチオンとしては、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属カチオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、安価で、溶解性に悪影響を与えず、容易にプロトン置換可能なNa、Kがより好ましく使用される。
これらのイオン性基は前記高分子電解質膜中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
高分子電解質膜中のスルホン酸基の量は、スルホン酸基密度(mmol/g)の値として示すことができる。本発明における高分子電解質膜のスルホン酸基密度は、プロトン伝導性、燃料クロスオーバーおよび機械強度の点から0.1〜5.0mmol/gであることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜3.0mmol/g、燃料クロスオーバーの点から最も好ましくは0.8〜2.0mmol/gである。スルホン酸基密度が、0.1mmol/gより低いと、プロトン伝導性が低いため十分な発電特性が得られないことがあり、5.0mmol/gより高いと燃料電池用電解質膜として使用する際に、十分な耐水性および含水時の機械的強度が得られないことがある。
ここで、スルホン酸基密度とは、乾燥した高分子電解質膜1グラムあたりに導入されたスルホン酸基のモル数であり、値が大きいほどスルホン酸基の量が多いことを示す。スルホン酸基密度は、元素分析、中和滴定により求めることが可能である。これらの中でも測定の容易さから、元素分析法を用い、S/C比から算出することが好ましいが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは、中和滴定法によりイオン交換容量を求めることもできる。本発明の高分子電解質材料は、イオン性基を有するモノマーとそれ以外の成分からなる複合体である態様を含むが、その場合もスルホン酸基密度は複合体の全体量を基準として求めるものとする。
本発明に使用されるイオン性基を有するポリマーには本発明の目的を阻害しない範囲において、他の成分、例えば導電性若しくはイオン伝導性を有さない不活性なポリマーや有機あるいは無機の化合物が含有されていても構わない。
これらのイオン性基に結合した金属カチオンに対し、後に述べる環状金属捕捉剤が結合し、一種のイオン性基の保護基として働き、長時間の重合による熱分解を抑制していると推測している。また、イオン性基に結合した金属カチオンに対して強く相互作用する環状金属捕捉剤を添加することで、添加分子がイオン性基/金属カチオン/イオン性基の間に割り込んで、凝集を抑制するという仮説を立てた。
その根拠として、計算科学で計算した結果を以下に示す。
発明者らは、この凝集抑制の仮説を検証するために、環状金属捕捉剤のひとつであるクラウンエーテルを添加した高分子電解質膜の微細構造を分子シミュレーションによって調べた。分子シミュレーションは、近年の電子計算機の速度の飛躍的向上と方法論の発展により、液体、高分子、タンパク質等のモデルについて、実験では困難な、原子レベルでの詳細な構造や運動に関する信頼性のある知見を得ることに成功を納めつつある手法である。
本発明者らはまず、B3LYP/6−31G(d,p)レベルの分子軌道計算を行って、Kとクラウンエーテル(18−Crown−6)の相互作用エネルギーを評価した。分子軌道法とはシュレディンガー方程式を数値的に解いて分子の電子状態を評価するものである。計算の結果、Kとクラウンエーテルの相互作用エネルギーは77kcal/molであり、水素結合(約5kcal/mol)と比較して非常に強いことがわかった。この結果はクラウンエーテルがKの捕捉剤として好適に用いることができることを意味する。
次に、本発明者らはクラウンエーテルを添加した電解質高分子の微細構造を分子動力学法を用いて調べた。分子動力学法とは分子集団系の運動方程式を構成分子のすべてに対して逐一解いて、それぞれの分子の軌跡を求める手法である。
本計算においては、構造式( 1 )に示した高分子モデルを用いて1ナノ秒の分子動力学計算を行った。
系の組成としては、構造式( 1 )に示した高分子を系に4分子配置し、高分子溶液の濃度が20wt%となるようにNMP分子を410分子配置した(クラウンエーテル非添加モデル)。さらに、高分子中のスルホン酸基と当モルになるようにクラウンエーテル(18−Crown−6)を24分子配置したモデルも別途作成した(クラウンエーテル添加モデル)。
計算条件としては、温度をNose−Hoover法[M.Tuckerman,B. J.Berne and G.J.Martyna,J.Chem.Phys.,97,1990 (1992).]を用いて2 5 ℃ に制御し、圧力を斜交系セルを用いるParrinello−Rahman法[M.Parrinello and A.Rahman,J.Appl.Phys.,52,7182(1981).]を用いて1atmに制御した。また、vdW相互作用および実空間の静電相互作用の計算はカットオフ半径rc=10オングストロームとし、逆空間の静電相互作用はα=0.21オングストローム−1、|n| max=50としてEwald法を用いて計算を行った。
分子動力学計算で用いるポテンシャルパラメータについては、ポリマーの結合長および結合角の平衡位置、二面角力場パラメータ、電荷、およびKのvdWパラメータを分子軌道計算によって最適化した。また、SO3−部分のvdWパラメータには文献[W.R.Cannon,B.M.Pettitt,J.A.McCammon,J.Phys.Chem.,98,6225(1994).]のパラメータを用いた。それ以外のパラメータについては、汎用パラメータAMBER[W.D.Cornell,P.Cieplak,C.I.Bayly,I.R.Gould,K.M.Merz Jr,D.M.Ferguson,D.C.Spellmeyer,T.Fox,J.W.Caldwell and P.A.Kollman,J.Am.Chem.Soc.,117,5179(1995).]、DREIDING [S.L.Mayo,B.D.Olafson,W.A.Goddard III,J.Phys.Chem.,94,8897(1990).]を用いた。
分子動力学計算によって求めたクラウンエーテル非添加、添加モデルの構造を図1に示した。図1からクラウンエーテル非添加品はスルホン酸基がKを介して強く凝集しており、クラウンエーテル添加品は、クラウンエーテルがスルホン酸基/K/スルホン酸基の間に割り込んでいることがわかった。
スルホン酸基の凝集抑制効果を定量的に見積もるために、スルホン酸基中の硫黄原子同士の動径分布関数、配位数を計算した。ここで、動径分布関数g(r)とは、数式(1)に示したように、平均粒子数<nij(r)>に規格化定数を乗じたものである。ここで、平均粒子数<nij(r)>は、ある粒子iを中心に距離r±Δrの領域に存在する粒子の数の平均値である。また、配位数は平均原子数<n(r)>をある距離まで積算したものである。
計算結果を図2に示した。図2から、クラウンエーテル非添加品の配位数は動径分布関数の第1ピークの位置において0.8程度であることがわかった。これはスルホン酸基の第一配位圏には別のスルホン酸基が80%程度の高い確率で存在していることを示す。一方、クラウンエーテル添加品はスルホン酸基同士の配位数が0.2程度であり、クラウンエーテル非添加品よりもずっと小さな配位数であることがわかった。
以上の分子シミュレーションによる結果は、イオン性基に結合した金属カチオンに対して強く相互作用する環状金属捕捉剤を添加することで、添加分子がイオン性基/金属カチオン/イオン性基の間に割り込んで、凝集を抑制するという仮説を示唆するものである。また、イオン性基の凝集を抑制する観点からは、スルホン酸基同士の配位数が第一配位圏において、0.4以下となるような凝集抑制剤を添加することが好ましい。
このように、イオン性基の金属塩に例えばクラウンエーテルの様な環状金属捕捉剤が結合し、一種の保護基の様に作用して熱による分解を抑制していると考えられる。
また、他の効果として、重合時にイオン性基の金属塩を含有するモノマーの末端に環状金属捕捉剤が作用することによって、イオン性基同士の凝集が抑制されること、溶媒への溶解性が向上することでより均一な系での反応となることから、さらに高分子量のポリマーが得られるものと推測している。
イオン性基の金属塩の凝集抑制効果は電解質膜に形成した後も維持され、本重合方法で得られたポリマーは組成が均一であり凝集物が見られないことから、高品位かつ高耐久な電解質膜が得られる。
次に脱塩重縮合について説明する。イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法としては、繰り返し単位中にイオン性基を有したモノマーを用いれば良く、必要により適当な保護基を導入して重合後脱保護基を行えばよい。かかる方法は例えば ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(Journal of Membrane Science), 197, 2002, p.231-242 に記載がある。本発明は上記の重合法の中でも脱塩重縮合に限定される方法であり、アルカリ金属塩の存在下で適用されるのが、最も効果的である。
重合方法に関する好ましい重合条件を以下に示す。
脱塩重縮合は、上記モノマー混合物を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒などを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。
反応性の観点からイオン性基の金属塩を含有するモノマーをアルカリ金属塩存在下で重合する際に、それらが同一の金属で塩を形成しているか、すなわちイオン化傾向が同じであるか、あるいはアルカリ金属塩の方がイオン化傾向の高い金属を使用して塩を形成していることが好ましい。アルカリ金属塩の方にイオン化傾向の高い金属を用いた場合、モノマーのイオン性基の金属塩がアルカリ金属塩の金属に置き換わり、その分アルカリ金属塩が仕込量より減ることになり、重合が伸びにくい傾向にあった。
具体的な例としては、スルホン酸基のナトリウム塩を有するモノマーを炭酸カリウム存在下で重合した場合、スルホン酸基の末端がカリウムに交換された分、炭酸カリウムが仕込量よりも減ることになる。また、置き換わって生成した炭酸ナトリウムは一般的に炭酸カリウムに比べ重合活性に劣ることが知られており、重合度が上がりにくいことがあった。
その対策として、アルカリ金属塩をモノマーのイオン性基の金属塩のモル数分も増量して仕込むことが好ましく、そうすることで、重合活性が劣ることなく高分子量化することができる。
脱離する無機塩、つまりモノマーの反応末端は、一価のアルカリ金属とハロゲンの組み合わせが好ましく用いられる。具体的にはLi、Na、K、RbとF、Cl、Br、I等である。安価であることや環状金属捕捉剤を考慮すると、Na、KとF、Clが特に好ましく用いられる。この脱離した無機塩は塩基性化合物または塩基性化合物の分解物と結合する場合もある。この塩基性化合物の分解物等も重合反応において阻害となる恐れがあり、同様に環状金属化合物により、阻害を抑制する効果もある。
また、重縮合においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水剤を使用することもできる。
反応水又は反応中に導入された水を除去するのに用いられる共沸剤は、一般に、重合を実質上妨害せず、水と共蒸留し且つ約25℃〜約250℃の間で沸騰する任意の不活性化合物である。普通の共沸剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、塩化メチレン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどが含まれる。もちろん、その沸点が用いた双極性溶媒の沸点よりも低いような共沸剤を選定することが有益である。共沸剤が普通用いられるが、高い反応温度、例えば200℃以上の温度が用いられるとき、特に反応混合物に不活性ガスを連続的に散布させるときにはそれは常に必要ではない。一般には、反応は不活性雰囲気下に酸素が存在しない状態で実施するのが望ましい。
縮合反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低く、副生する無機塩の溶解度が高い溶媒中に加えることによって、無機塩を除去、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。回収されたポリマーは場合により水やアルコール又は他の溶媒で洗浄され、乾燥される。所望の分子量が得られたならば、ハライドあるいはフェノキシド末端基は場合によっては安定な末端基を形成させるフェノキシドまたはハライド末端封止剤を導入することにより反応させることができる。
また、水を使用しないポリマー精製方法が提案されており、フィルター濾過や遠心分離で固液分離が行われている。例えば、遠心分離では析出した不純物を沈降させ、ポリマーを含む上澄液を分離することで精製される。しかし、溶媒に水中で沈殿して精製する場合よりも塩やモノマー、オリゴマーの含有が多く、ポリマー完全な分離は困難であるが、環状金属捕捉剤を添加することにより金属カチオンやイオン性基を有するモノマーやオリゴマーを有機溶媒に可溶化することができ、膜に成型した後に析出することなく、酸処理や水洗により除去することができる。
本発明で結晶性モノマーを用いた場合においては、製膜性を向上させるために保護基を導入してもよい。この保護基は加工性の観点から製膜段階まで脱保護させずに導入しておく必要があることから、保護基が安定に存在できる条件を考慮して、重合および精製を行う必要がある。芳香環に置換した保護基は酸性下では脱保護反応が進行してしまうため、系を中性あるいはアルカリ性に保つ必要がある。
前記脱保護反応は、不均一又は均一条件下に水及び酸の存在下において行うことが可能であるが、機械強度や耐溶剤性の観点からは、膜等に成型した後で酸処理する方法がより好ましい。具体的には、成型された膜を塩酸水溶液中に浸漬することにより脱保護することが可能であり、酸の濃度や水溶液の温度については適宜選択することができる。
ポリマーに対して必要な酸性水溶液の重量比は、好ましくは1〜100倍であるけれども更に大量の水を使用することもできる。酸触媒は好ましくは存在する水の0.1〜50重量%の濃度において使用する。好適な酸触媒としては塩酸、硝酸、フルオロスルホン酸、硫酸などのような強鉱酸、及びp−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンルスホン酸などのような強有機酸が挙げられる。ポリマーの膜厚等に応じて、酸触媒及び過剰水の量、反応圧力などは適宜選択できる。
例えば、膜厚50μmの膜であれば、6N塩酸水溶液に例示されるような酸性水溶液中に浸漬し、95℃で1〜48時間加熱することにより、容易にほぼ全量を脱保護することが可能である。また、25℃の1N塩酸水溶液に24時間浸漬しても、大部分の保護基を脱保護することは可能である。ただし、脱保護の条件としてはこれらに限定される物ではなく、酸性ガスや有機酸等で脱保護したり、熱処理によって脱保護しても構わない。
このようにして得られる本発明の高分子電解質材料として用いるポリマーの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、0.1万〜500万、好ましくは1万〜50万である。0.1万未満では、成型した膜にクラックが発生するなど機械強度が不十分な場合がある。一方、500万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある場合がある。なお、本発明で得られる高分子電解質材料は、溶剤不溶性であるため分子量の測定が困難な場合がある。
本発明の高分子電解質材料として用いるポリマー中のスルホン酸基はブロック共重合で導入しても、ランダム共重合で導入しても構わない。用いるポリマーの化学構造や結晶性の高さによって適宜選択することができる。燃料遮断性や低含水率が必要である場合にはランダム共重合がより好ましく、プロトン伝導性や高含水率が必要である場合にはブロック共重合がより好ましく用いられる。
環状金属捕捉剤について説明する。
環状金属捕捉剤とは、環状金属捕捉剤は環状構造を取り金属カチオンとキレート錯体を形成するものや金属カチオンを包摂する様な構造であれば特に限定しない。例えばポルフィリン、フタロシアニン、コロール、クロリン、シクロデキストリン、クラウンエーテル類、クラウンエーテルのOがSやNHなどに置き換わったチアクラウンエーテル類、アザクラウンエーテル類などが好ましく用いられる。コストの観点からクラウンエーテル類が好適であり、中でも12−Crown−4(1,4,7,10-Tetraoxacyclododecane)、15−Crown−5(1,4,7,10,13-Pentaoxacyclopentadecane)、18−Crown−6(1,4,7,10,13,16- Hexaoxacyclooctadecane)が好適に用いられる。
これらの添加剤の量は適宜実験的に決定され、特に限定はしない。1種類単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
環状金属捕捉剤は、上記のとおり、重合反応終了後に取り除かれ、また、イオン性基に作用しやすいことが望まれるので、高分子電解質材料に取り込まれたり、環状金属捕捉剤自身が高分子量化してしまうような重合性基や反応性基を有さない。また、自身が高分子量でないことや、立体障害基を有さないことが好ましい。これらは適宜実験的に決定される。
環状金属捕捉剤を重合のどの段階で添加するかについて、モノマーの段階で添加する場合、イオン性基を有するモノマーユニットに対し環状金属捕捉剤が作用しやすく、また除去する酸処理工程までずっと環状金属捕捉剤が作用するので、イオン性基の金属塩同士の凝集を抑制する効果が大きく、環状金属捕捉剤の添加量が少なくて済むので好ましい。
本発明の重合方法によって得られる高分子ポリマーは、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、イオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途に適用可能である。また、人工筋肉としても好適である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等が挙げられるが、中でも燃料電池が最も好ましく、電解質膜および触媒層のバインダーに好適である。
さらに、本発明によって得られる高分子電解質成型体を使用した高分子電解質型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA、テレビ、ラジオ、ミュージックプレーヤー、ゲーム機、ヘッドセット、DVDプレーヤーなどの携帯機器、産業用などの人型、動物型の各種ロボット、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらとのハイブリット電源として好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
[測定方法]
(1)重量平均分子量
ポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
(2)スルホン酸基密度
作製した電解質膜を0.1g計り取り真空乾燥機にて80℃12時間以上減圧乾燥後、重量を測定した。電解質膜を30%の塩化カリウム溶液に2時間浸漬し純水で洗浄後、再び真空乾燥機にて80℃で12時間以上乾燥した。電解質膜を入れたサンプル瓶に10wt%の硫酸(秤量)を入れ60℃で2時間浸漬した。10wt%硫酸溶液を純水で10倍に薄めた液をサンプルとし、大塚電子製キャピラリー電気泳動装置でカリウム量を測定した。測定した濃度から、下記式に従いスルホン酸基密度を算出した。
酸処理液中カリウム重量(g)=10wt%硫酸重量(g)×酸処理液中カリウム濃度(ppm)/106
スルホン酸基密度(mmol/g)={酸処理液中カリウム重量(g)×1000}/{39×電解質膜重量(g)}
合成例1:イオン性基の金属塩を含有するモノマー(ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン)の合成
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記一般式(G2)で示されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。
合成例2:加水分解性可溶性付与基を含むモノマー(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン)(K−DHBP)の合成
攪拌器、温度計及び留出管を備えた 500mlフラスコに、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp−トルエンスルホン酸1水和物0.50gを仕込み溶解する。その後78〜82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mlで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mlを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン52.0gを得た。
[実施例1]
撹拌機、窒素導入管、滴下漏斗をDean−Starkトラップを備えた4000mL反応容器に、炭酸カリウム138g(アルドリッチ試薬、1mol)、合成例2で得られたK−DHBP103.3g(0.4mol)、ジヒドロキシベンゾフェノン21.4g(和光純薬試薬、0.1mol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン43.6g(アルドリッチ試薬、0.2mol)、および合成例1で得られたイオン性基の金属塩を含有するモノマーであるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン126.7g(0.3mol)、環状金属捕捉剤として18−Crown−6 158.4g(和光純薬、0.6mol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)1250mL、トルエン550mLを加え、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、205℃で7時間重合し、重合原液Aを得た。
重合原液Aを久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機 型番6930 にアングルローターRA−800をセットし、25℃、30分間、遠心力20000Gで固液分離を行った。ケーキと上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので、上澄み液を回収した。上澄み液のみを5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターで加圧濾過して、セパラブルフラスコに移した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、上澄み液の粘度が10Pa・sになるまでNMPを除去し、塗液Aを得た。
次に、基材として125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)を用い、塗液Aをスリットダイで流延塗工し、150℃で15分間乾燥した。
次に、乾燥膜をPETから剥離し、25℃の純水10分間浸漬し残存塩、残存モノマー、残存炭酸カリウム、残存NMP、残存18−Crown−6等を洗浄した後、60℃の10重量%の硫酸に30分間浸漬し、加水分解性可溶性付与基の加水分解とスルホン酸基の金属塩のプロトン交換を実施した。
次に、この膜を洗浄液が中性になるまで純水で洗浄し、60℃で30分間乾燥し膜厚15μmの電解質膜Aを得た。
図3に示すように、最終的に得られた電解質膜Aの重量平均分子量は18.4万、スルホン酸基密度は2.2mmol/gであった。また、重合経過時間0時間目、0.5時間目、1.5時間目、2.5時間目、3.5時間目、7.0時間目の重合液を反応釜からサンプリングし、上記と同様に電解質膜に加工してスルホン酸基密度と重量平均分子量を測定し、図3にプロットした。
環状金属捕捉剤として18−Crown−6を添加して重合した場合、重合時間が3時間辺りから分子量とスルホン酸基密度に大きな変化はなく、長時間の重合におけるスルホン酸基の熱分解が起こっていない事が分かる。
[比較例1]
18−Crown−6を加えず、NMP量を1950gに増量した以外は実施例1と同様の仕込みで、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、205℃で7時間重合し、重合原液Bを得た。さらに実施例1と同様に製膜/酸処理を実施し電解質膜Bを得た。図4に示すように、最終的に得られた電解質膜Bの重量平均分子量は7.9万、スルホン酸基密度は1.1mmol/gであった。
また、重合経過時間0時間目、1.0時間目、1.5時間目、2.0時間目、2.5時間目、3.0時間目、3.5時間目、4.0時間目、4.5時間目、5.5時間目、6.5時間目、7.5時間目の重合液を反応釜からサンプリングし、電解質膜に加工してスルホン酸基密度と重量平均分子量を測定し、図4にプロットした。
実施例1と比較して、重合時間3時間辺りから分子量およびスルホン酸基密度が大幅に低下しており、長時間の重合時間によりスルホン酸基を含むユニットの分解が起こったものと考えられる。
[実施例2]
撹拌機、窒素導入管、滴下漏斗をDean−Starkトラップを備えた4000mL反応容器に、イオン性基の金属塩を含有するモノマーのモル数も加味し炭酸カリウムを138.2g(アルドリッチ試薬、1.0mol)加えた。さらに、合成例2で得られたK−DHBP103.3g(0.4mol)、ジヒドロキシベンゾフェノン21.4g(和光純薬試薬、0.1mol)、合成例1で得られたイオン性基の金属塩を含有するモノマーであるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン211.2g(0.5mol)、環状金属捕捉剤として18−Crown−6 264g(和光純薬、1.0mol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)1540mL、トルエン550mLを加え、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、205℃で7時間重合し、重合原液Cを得た。
重合原液Cを久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機 型番6930 にアングルローターRA−800をセットし、25℃、30分間、遠心力20000Gで固液分離を行った。ケーキと上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので、上澄み液を回収した。上澄み液のみを5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターで加圧濾過して、セパラブルフラスコに移した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、上澄み液の粘度が10Pa・sになるまでNMPを除去し、塗液Cを得た。
次に、基材として125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)を用い、塗液Cをスリットダイで流延塗工し、150℃で15分間乾燥した。
次に、乾燥膜をPETから剥離し、25℃の純水10分間浸漬し残存塩、残存モノマー、残存炭酸カリウム、残存NMP、残存18−Crown−6等を洗浄した後、60℃の10重量%の硫酸に30分間浸漬し、加水分解性可溶性付与基の加水分解とスルホン酸基の金属塩のプロトン交換を実施した。
次に、この膜を洗浄液が中性になるまで純水で洗浄し、60℃で30分間乾燥し膜厚15μmの電解質膜Cを得た。
図5に示すように、最終的に得られた電解質膜Cの重量平均分子量は24.2万、スルホン酸基密度は3.0mmol/gであった。また、重合経過時間0時間目、0.5時間目、1.5時間目、2.5時間目、3.5時間目、7.0時間目の重合液を反応釜からサンプリングし、上記と同様に電解質膜に加工してスルホン酸基密度と重量平均分子量を測定し、図5にプロットした。
環状金属捕捉剤として18−Crown−6を添加して重合した場合、重合時間が2時間辺りから分子量とスルホン酸基密度に大きな変化はなく、長時間の重合におけるスルホン酸基の熱分解が起こっていない事が分かる。
[比較例2]
18−Crown−6を加えず、NMP量を2800gに増量した以外は実施例2と同様の仕込みで、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、205℃で7時間重合し、重合原液Dを得た。さらに実施例2と同様に製膜/酸処理を実施し電解質膜Dを得た。図6に示すように、最終的に得られた電解質膜Dの重量平均分子量は4.3万、スルホン酸基密度は0.42mmol/gであった。
また、重合経過時間0時間目、0.5時間目、1.5時間目、2.5時間目、3.5時間目、4.5時間目、5.5時間目、7.0時間目の重合液を反応釜からサンプリングし、電解質膜に加工してスルホン酸基密度と重量平均分子量を測定し、図6にプロットした。
実施例2と比較し、昇温開始前から分子量が伸びず昇温後も分子量およびスルホン酸基密度が低下していることがわかる。環状金属捕捉剤を添加していないために重合経過時間毎にサンプリングした液はモノマーおよびオリゴマーと思われる析出が見られ、重合反応が進行していない可能性がある。
また、実施例1、比較例1、実施例2、比較例2の結果から、スルホン酸基密度が高いほど、本発明が効果的であることがわかる。
[比較例3]
炭酸カリウムの量をジオールモノマーの反応等量である69.1g(アルドリッチ試薬、0.5mol)にした以外は実施例2と同様の仕込みで、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、205℃で7時間重合し、重合原液Eを得た。さらに実施例2と同様に製膜/酸処理を実施し電解質膜Eを得た。図7に示すように、最終的に得られた電解質膜Eの重量平均分子量は6.3万、スルホン酸基密度は1.52mmol/gであった。
また、重合経過時間0時間目、1.0時間目、1.5時間目、2.0時間目、2.5時間目、3.0時間目、3.5時間目、4.0時間目、4.5時間目、5.5時間目、6.5時間目、7.5時間目の重合液を反応釜からサンプリングし、電解質膜に加工してスルホン酸基密度と重量平均分子量を測定し、図7にプロットした。
実施例2と比較し、昇温開始前から分子量が伸びず昇温後も分子量が伸びていないことがわかる。炭酸カリウムの量がジオールモノマーの反応等量である比較例3は、イオン性基の金属塩を含有するモノマーであるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの末端ナトリウムがカリウムと置き換わる事を考慮していなかったため、交換して生成した炭酸ナトリウムが重合活性に劣り、高分子量化できなかったと考えられる。
本発明の膜電極複合体は、水素やメタノールを燃料とする燃料電池に好適である。本発明の燃料電池の用途としては、特に限定されないが、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体、携帯電話、パソコン、PDA、ビデオカメラ、デジタルカメラなどの携帯機器、コードレス掃除機等の家電、玩具類、ロボットの電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらや太陽電池とのハイブリッド電源、もしくは充電用として好ましく用いられる。

Claims (4)

  1. イオン性基の金属塩を含有するモノマーを脱塩重縮合する際に、環状金属捕捉剤を添加することを特徴とする高分子重合方法。
  2. 前記環状金属捕捉剤がクラウンエーテル類である請求項1記載の高分子重合方法。
  3. アルカリ金属塩の存在下で行う請求項1または2記載の高分子重合方法。
  4. アルカリ金属塩の金属のイオン化傾向と、イオン性基の金属塩を含有するモノマーの金属のイオン化傾向が同じか、アルカリ金属塩の金属のイオン化傾向がイオン性基の金属塩を含有するモノマーの金属のイオン化傾向より高い請求項3記載の高分子重合方法。
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