JP2011037322A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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弘章 江渕
Hideaki Komada
英明 駒田
Michinobu Suzuki
岐宣 鈴木
Tomohito Ono
智仁 大野
Hirotatsu Kitahata
弘達 北畠
Takemasa Hata
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Abstract

【課題】ドライバビリティの低下を招くことなく、ショックを好適に緩和する。
【解決手段】ハイブリッド車両(10)の制御装置(100)は、ハイブリッド車両の要求加速度を特定する要求加速度特定手段と、所定の基準に基づいて要求加速度の大小を判別する判別手段と、固定変速モードから無段変速モードへの変速モードの切り替え時において、要求加速度が大であると判別された場合に、変速モードの切り替え態様を規定する切り替えモードとして、駆動応答性がショック緩和に優先するように定められた応答性優先モードを、また、要求加速度が小であると判別された場合に、切り替えモードとして、ショック緩和が駆動応答性に優先するように定められたショック緩和優先モードを夫々選択する選択手段と、選択された切り替えモードに従って動力要素(200,MG1)及びロック機構(700)を制御する変速制御手段とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、回転要素をロックすることにより多様な動力伝達態様を実現可能に構成されたハイブリッド車両を制御する、ハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
この種の装置として、複数の差動機構から構成される動力分配機構に、動力源、モータジェネレータ及び出力部材が連結され、この動力分配機構におけるいずれかの回転要素の回転を選択的に阻止するブレーキ機構を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された駆動装置によれば、このブレーキ機構によって、動力源と出力部材との間の変速比をオーバードライブ状態に固定することにより、動力循環を回避することができるとされている。
また、変速手段の変速段をダウンシフトする際に、モータMG2のトルクが出力されないように、モータMG2からの駆動トルクをエンジンやモータMG1からの駆動トルクに置き換えることで、変速時のトルクショックを低減するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示された駆動装置によれば、変速段のダウンシフトの最中に、運転者のアクセルペダルの踏み込みにより要求駆動力が増加した場合、エンジンの回転数を制限することで、エンジン回転数の上昇を抑制し駆動軸に出力するパワーを大きくすると共に、エンジンから迅速に大きいパワーを出力することによりモータMG1に係る電力を最小限に抑えることができるとされている。
また、第1及び第2のモータジェネレータにより駆動力を発生させている状態から、エンジンにより駆動力を発生させる、所謂、エンジン直結状態への切り替えを行うものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に開示された駆動装置によれば、第1モータジェネレータの回転を止めるブレーキ機構の解放開始と同時に、ブレーキ機構におけるアクチュエータの回転速度が所定の回転速度となるように第1モータジェネレータのトルクを制御することで、ブレーキ機構解放時のショックを回避することができるとされている。
また、出力軸に取り付けられた被駆動歯車と噛み合う駆動歯車が取り付けられたモータロータに、エンジン動力を伝達可能なクラッチ機構を備え、このクラッチ機構における対向する2つのカムプレート間に組み込まれたボールが、これらカムプレート間の差回転によりテーパ面に沿って変形することで、動力の伝達経路を切り替えるように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
尚、固定変速モードと無断変速モードとを切り替えるハイブリッド車両については、例えば、特許文献5に開示されている。
特開2004−345527号公報 特開2007−237925公報 特開2005−192284号公報 特開2004−142599号公報 特開2008−296778号公報
上記特許文献1から5に記載された、動力の伝達経路を切り替えることで変速モード(端的には、変速比の変化態様である)を切り替え可能である装置において、例えば、変速比を固定する固定変速モードから変速比を無段階に変化させる無段変速モードへ変速モードを切り替える際には、ドライバビリティの低下を防ぐ観点から、切り替えに伴う物理的衝撃或いは振動等のショックを緩和するための各種の措置が講じられることがある。
一方で、このような変速モードの切り替わりタイミングは、ドライバ側で必ずしも知覚認識されるものではないから、変速モードの切り替わり過程において、ドライバがアクセルを踏み増してより高い駆動力を要求することも往々にして生じ得る。ところが、上記のショック緩和に係る措置は、駆動力の応答性とは言わばトレードオフの関係にあって、ショック緩和に係る制御プロセスの実行期間中には、駆動力の応答は緩慢となり易い。このため、場合によっては、ショック緩和に係る措置を講じることにより車両の加速が阻害され、かえってドライバビリティが悪化する可能性がある。
即ち、上記各種特許文献に開示される従来技術には、変速モードの切り替え過程におけるドライバビリティの確保が不十分であるという技術的問題点がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、変速モードの切り替え期間におけるドライバビリティの低下を防止可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、回転電機と内燃機関とを含む動力要素と、前記回転電機により回転速度を調整可能な第1回転要素、車軸に繋がる駆動軸に連結された第2回転要素及び前記内燃機関に連結された第3回転要素を含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を備えた動力伝達機構と、前記第1回転要素の状態を回転不能なロック状態と回転可能な非ロック状態との間で切り替え可能なロック機構とを備え、前記第1回転要素が前記非ロック状態にある場合に対応し、前記内燃機関に対し前記回転電機から前記回転電機の回転軸を介して反力トルクを与えつつ前記回転電機の回転速度を目標値に収束させる回転速度フィードバック制御により前記内燃機関の回転速度と前記駆動軸の回転速度との比たる変速比が連続的に可変とされる無段変速モードと、前記第1回転要素が前記ロック状態にある場合に対応し、前記変速比が固定される固定変速モードとの間で変速モードを切り替え可能に構成されたハイブリッド車両を制御する装置であって、前記ハイブリッド車両の要求加速度を特定する要求加速度特定手段と、所定の基準に基づいて前記特定された要求加速度の大小を判別する判別手段と、前記固定変速モードから前記無段変速モードへの前記変速モードの切り替え時において、前記特定された要求加速度が大であると判別された場合に、前記変速モードの切り替え態様を規定する切り替えモードとして、駆動応答性がショック緩和に優先するように定められた応答性優先モードを、また、前記特定された要求加速度が小であると判別された場合に、前記切り替えモードとして、ショック緩和が駆動応答性に優先するように定められたショック緩和優先モードを夫々選択する選択手段と、前記選択された切り替えモードに従って前記動力要素及び前記ロック機構を制御する変速制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係るハイブリッド車両は、駆動軸に対し動力供給可能な動力要素として、例えばモータジェネレータ等の電動発電機として構成され得る回転電機と、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等、その物理的、機械的又は電気的構成を問わない各種の態様を採り得る、燃料の燃焼により動力を生成可能な機関としての内燃機関を少なくとも備えた車両である。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、このようなハイブリッド車両を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
本発明に係るハイブリッド車両は、動力伝達機構を備える。動力伝達機構は、(1)回転電機に直接的又は間接的に連結され、回転電機による回転速度の調整が可能な第1回転要素、(2)駆動軸に連結される第2回転要素及び(3)内燃機関に連結される第3回転要素を含む、相互に差動作用をなし得る複数の回転要素を備えており、係る差動作用により各回転要素の状態(端的には、回転可能であるか否か及び他の回転要素又は固定要素と連結された状態にあるか否か等を含む)に応じて、上記動力要素と駆動軸との間の動力伝達(端的にはトルクの伝達である)を行う機構である。
動力伝達機構に備わる複数の回転要素のうち、第1、第2及び第3回転要素は、常時或いは選択的に、これらのうち二要素の回転速度が定まれば自ずと残余の一回転要素の回転速度が定まる回転二自由度の差動機構(尚、この差動機構に含まれる回転要素は必ずしもこれら三要素に限定されない)を構築する。従って、回転電機は、内燃機関に対し内燃機関のトルクに対応する反力トルクを与える反力要素として機能し得るものであり、内燃機関の回転速度制御機構としても機能し得るものである。
本発明に係るハイブリッド車両は、第1回転要素の状態を、例えば物理的、機械的、電気的又は磁気的な各種係合力により所定の固定要素に回転不能に固定された回転不能なロック状態と、少なくともこのロック状態に係る係合力の影響を受けない状態としての回転可能な非ロック状態との間で切り替え可能な、例えば湿式多板ブレーキ装置若しくはクラッチ装置、ドグクラッチ装置又は電磁カムロック式クラッチ装置等の各種態様を採り得るロック機構を備える。本発明に係るハイブリッド車両において、このロック状態及び非ロック状態は、夫々が、相互に異なる変速モードとしての、固定変速モード及び無段変速モードに対応する構成となっている。尚、ロック機構の採り得る実践的態様は、上記の如く限定されない趣旨であるが、ロック機構は、好適な一形態として、その係合過程に、係合要素同士の回転同期を行う回転同期過程と、係合要素相互間に回転方向に形成されるガタを詰めるガタ詰め過程とを含む機構であってもよい。
無段変速モードは、上述の回転二自由度の差動機構において、回転電機を内燃機関の回転速度制御機構として機能させる(即ち、第1回転要素は、非ロック状態でなければならない)ことにより、内燃機関の回転速度と駆動軸の回転速度との比たる変速比を理論的に、実質的に或いは予め規定された物理的、機械的、機構的又は電気的な制約の範囲内で、連続的に(実践上連続的であるのと同等に段階的な態様を含む)変化させることが可能な変速モードである。この場合、好適な一形態として、内燃機関の動作点(例えば、機関回転速度とトルクとにより規定される内燃機関の一運転条件を規定する点)が、例えば、理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で自由に選択され、例えば、燃料消費率が理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で最小となる、或いはハイブリッド車両のシステム効率(例えば、動力伝達機構の伝達効率と内燃機関の熱効率等に基づいて算出される総合的な効率である)が理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で最大となる、最適燃費動作点等に制御される。動力伝達機構は、一又は複数の遊星歯車機構等のギア機構を好適な一形態として採り得るものであって、複数の遊星歯車機構を含む場合には、各遊星歯車機構を構成する回転要素の一部が複数の遊星歯車機構相互間で適宜共有され得る。
尚、無段変速モードが選択された状態においては、回転速度フィードバック制御が実行される。回転速度フィードバック制御においては、内燃機関に対し回転電機からその回転軸を介して反力トルクを与えつつ回転電機の回転速度が目標回転速度へ収束するように、回転電機の回転速度と目標回転速度との偏差に応じて回転電機のトルクが制御される。この際、回転電機の目標回転速度は、少なくとも最終的には、内燃機関の目標動作点に対応する形で設定される。回転電機の目標トルクは、例えば、動力伝達機構における回転要素の差動作用によって、回転要素間のギア比に応じて決定され得る。
固定変速モードは、同様に回転二自由度の差動機構において、第1回転要素を回転不能なロック状態に維持することによって実現される、上記変速比が一義に規定される変速モードである。即ち、第1回転要素がロック状態にある場合、この第1回転要素の回転速度(即ち、ゼロ)と、車速と一義的な回転状態を示す第2回転要素の回転速度とによって、残余の第3回転要素の回転速度は一義に規定されるのである。この際、第1回転要素が回転電機に直接連結される構成であれば、回転電機はゼロ回転となり、所謂MG1ロックと称される状態が実現され、第1回転要素が、相互に差動関係にある他の回転要素を介して回転電機に連結される構成であれば、回転電機の回転速度はこれらのギア比に応じて定まる一の値に固定される。後者においては、好適には、内燃機関の回転速度が駆動軸の回転速度未満となる、所謂O/Dロックと称される状態が実現され得る。いずれにせよ、固定変速モードは、動力循環と称される、動力要素及び動力伝達機構を含むハイブリッド駆動装置全体のシステム効率を低下させ得る非効率な電気パスの発生を回避することを目的として好適には選択される。
ここで、固定変速モードは、内燃機関に対しロック機構から反力トルクを付与する(即ち、ロック要素を反力要素として機能させる)変速モードであり、固定変速モードから無段変速モードへの変速モードの切り替え(無論、逆もまた同様である)とは即ち、反力要素の切り替えと等価な意味を持つ。
ここで特に、反力トルクは、内燃機関のトルクのうち駆動軸に現れる成分としての直達トルクと一義的な関係を有しており、反力要素を切り替えるにあたって、ロック機構から回転電機への反力トルクの委譲が円滑に行われないと、この直達トルクの連続性が乱されることによって、駆動軸トルクが変動する可能性がある。駆動軸トルクの変動は、取りも直さず車輪に供給される駆動力の変動であり、ドライバに物理衝撃或いは物理振動となって伝達されることによりドライバビリティを悪化させる要因となる。
このような駆動軸トルクの不連続性に起因するドライバビリティの悪化を抑制するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置においては、係る反力要素の切り替え態様を規定する切り替えモードとして、反力要素の切り替えに際した物理的な衝撃や振動等を緩和するショック緩和優先モードが用意される。ショック緩和優先モードの実践的態様は、例えば、内燃機関の直達トルクが変化しないように、ロック機構が負担する反力トルクの減少量と回転電機により負担する反力トルクの増加量とを一対一に対応させる等、公知非公知を問わず各種の態様を採り得る。
一方、ショック緩和優先モードは、あくまで反力要素切り替え時のショック緩和を優先するものであり、好ましくは、変速モードの切り替え過程において駆動軸トルクは不変又は略不変であることが前提となる。従って、駆動応答性(即ち、駆動力の時間応答性を意味する)の観点からは、必ずしもドライバの要求を満たさない。従って、ドライバが駆動応答性を重視する旨の志向を有する場合には、ショック緩和優先モードに従った変速モードの切り替えがかえってドライバビリティを悪化させる要因とすらなり得る。
このような事情に鑑み、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置には、上記ショック緩和優先モードと共に、切り替えモードとして、駆動応答性をショック緩和に優先すべき旨が規定された応答性優先モードが用意されている。応答性優先モードの実践的態様は、例えば、一時的な駆動軸トルクの不連続性を許可してでも先の回転速度フィードバック制御を開始する等、公知非公知を問わず各種の態様を採り得る。
これら二種類の切り替えモードは、ショック緩和にせよ駆動応答性にせよ結局のところドライバビリティの悪化抑制に係る効果を有するものであるが、各々優先すべきものが異なっており、ドライバの志向にいずれのモードがより近いかが的確に判断されない限りは、実践上の大なる利益を望み難い。そこで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置では、以下の如くにして、一方のモードが的確に選択される構成となっている。
即ち、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、先ず、要求加速度特定手段により、ハイブリッド車両の要求加速度が特定される。
ここに、本発明に係る「特定」とは、特定対象(ここでは、要求加速度である)を直接的に又は間接的に算出、選択、導出、推定、検出、同定、取得或いは決定することを意味する。尚、「間接的に」とは、特定対象と、一対一、一対多、多対一或いは多対多を問わず一義的な関係を有する他の物理量、指標値若しくは制御量等を特定することを意味する。即ち、要求加速度特定手段は、必ずしも要求加速度そのものを特定する必要はない。
要求加速度が特定されると、判別手段により、特定された要求加速度の大小が所定の基準に基づいて判別される。ここで、「所定の基準」とは、好適には、予め設定される固定又は可変な閾値を意味する。このような判別手段の判別作用を経ると、ドライバの志向を代替的に意味するものとしての要求加速度が、大小いずれかに区分されることになる。
要求加速度の大小が判別されると、選択手段の作用により、要求加速度が大であると判別された場合には応答性優先モードが、また要求加速度が小であると判別された場合にはショック緩和優先モードが、夫々ドライバの志向或いは要求を満たす切り替えモードとして選択される。
このようにして切り替えモードが選択されると、変速制御手段が、選択された切り替えモードに従って、動力要素及びロック機構を制御し、変速モードを無段変速モードへ切り替える。本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、このようにして、固定変速モードから無段変速モードへの変速モードの切り替えが遂行される。
このように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、ドライバの意思、志向或いは要求に応じて、固定変速モードから無段変速モードへの切り替え過程においてドライバビリティに支配的に影響する要素が変化するために、単一の切り替えモードではドライバビリティの悪化を確実に抑制し得ない点を見出し、各々優先すべき要素の異なる複数の切り替えモードを用意し、且つドライバの意思、志向或いは要求を代替的に表わし得るものとしての要求加速度に応じてそれらを的確に選択する旨の本願に特有の技術思想によって、無段変速モードへの切り替え過程におけるドライバビリティの悪化を確実に抑制する旨の本願に特有の実践上有益なる効果を獲得したものである。
従って、例えば、要求駆動力の変化がそれ程大きくない場合、言い換えれば、駆動軸トルクの変動に対するドライバの感度が相対的に高い場合にショック緩和優先モードを選択し、或いは、例えば、ドライバがアクセルペダルを踏み増す過程において固定変速モードから無段変速モードへの切り替え条件が満たされた場合等、ドライバが駆動軸トルクの多少の変動を許容してでも動力性能を要求している場合に応答性優先モードを選択する等といった、ドライバの意思、思考或いは要求に即した切り替えモードの選択が可能となり、ショック緩和を優先する余り駆動応答性が低下してドライバビリティが悪化する、或いは、駆動応答性を優先する余りショック緩和がなおざりになってドライバビリティが悪化する等といった、切り替えモードのミスマッチに起因する好ましくない事態を招来する可能性が、限りなく低減されるのである。尚、補足すれば、無段変速モード要求駆動力の変化が極めて小さければ、元より駆動応答性を追求する必要はないのであり、ショック緩和優先モードを選択することによる実践上の不利益は生じない。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の一の態様では、前記要求加速度特定手段は、前記要求加速度として前記ハイブリッド車両のアクセル開度を特定し、前記判別手段は、前記特定されたアクセル開度が所定の判断基準値以上及び未満である場合に、夫々前記特定された要求加速度が大及び小であると判別する。
この態様によれば、要求加速度特定手段により、要求駆動力と略一対一に対応するハイブリッド車両のアクセル開度が特定され、特定されたアクセル開度が所定の判断基準値以上である場合に要求加速度が大であると判別され、また判断基準値未満である場合に要求加速度が小であると判別される。アクセル開度は、要求駆動力との相関が高いため、要求駆動力を代替する指標として極めて適当である。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ショック緩和優先モードは、(1)前記内燃機関に対しその時点で必要な前記反力トルクが与えられるように前記回転電機のトルクを固定し、(2)前記回転電機のトルクが固定された状態で前記第1回転要素を前記非ロック状態に移行させ、且つ(3)前記第1回転要素が前記非ロック状態に移行した後に前記回転速度フィードバック制御を開始するように定められたモードである。
この態様によれば、回転電機のトルクがその時点で要求される反力トルクまで増加せしめられる過程において、回転電機のトルクの増加に応じてロック機構が負担する反力トルクが減少し、駆動軸トルクが一定に維持された状態で反力要素がロック機構から回転電機へ切り替えられる。即ち、第1回転要素が非ロック状態に移行された時点では、既に回転電機が、従前にロック機構により負担されていた反力トルクを負担する状態にある。このため、第1回転要素の非ロック状態への移行に伴う物理的衝撃或いは振動は、殆ど全面的に抑制され、好適なショック緩和性が提供される。
尚、この態様では、前記選択手段は、前記ショック緩和優先モードが選択された状態において前記特定された要求加速度が小から大へと変化した場合に、前記応答性優先モードを改めて選択し、前記変速制御手段は、前記応答性優先モードが改めて選択された場合に、前記回転電機のトルクの固定を解除し、前記応答性優先モードに従って前記動力要素及び前記ロック機構を制御してもよい。
このように構成すれば、ショック緩和優先モードに従って変速モードの切り替えが開始された以降に、例えばドライバがアクセルペダルを踏み増す等して要求駆動力が小から大へ変化したとしても、切り替えモードを迅速に応答性優先モードに切り替えることができる。従って、ドライバの意思、志向或いは要求の変化に迅速に適応して、ドライバビリティの悪化を最小限に抑えることが可能となる。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記選択手段は、前記応答性優先モードが選択された状態において前記特定された要求加速度が大から小へと変化した場合に、前記ショック緩和優先モードを改めて選択し、前記変速制御手段は、前記ショック緩和優先モードが改めて選択された場合に、前記ショック緩和優先モードに従って前記動力要素及び前記ロック機構を制御する。
この態様によれば、応答性優先モードに従って変速モードの切り替えが開始された以降に、例えばドライバがアクセルペダルを過度に緩める等して要求駆動力が大から小へ変化したとしても、切り替えモードを迅速にショック緩和優先モードに切り替えることができる。従って、ドライバの意思、思考或いは要求の変化に迅速に適応して、ドライバビリティの悪化を最小限に抑えることが可能となる。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記応答性優先モードは、前記回転速度フィードバック制御を開始した後に前記第1回転要素が前記非ロック状態に移行するように定められたモードである。
この態様によれば、駆動軸トルクの変動が許容され、ロック機構が負担する反力トルクの状態とは無関係に、回転電機の回転速度フィードバック制御が迅速に開始される。この際、ロック機構が、第1回転要素をロック状態に維持するための係合力として少なくとも摩擦係合力を使用する構成であれば、ロック機構はこの応答性優先モードにおいて言わば積極的に滑らされた状態とされる。
このように応答性優先モードが構築されている場合には、無段変速モードへの切り替え過程においてドライバの要求駆動力が変化しても、回転電機の駆動状態を無段変速モードにおける目標状態に迅速に収束させることができ、駆動応答性を良好に担保することが可能となる。例えば、ショック緩和優先モードが、上述したように回転電機のトルクを固定する制御プロセスを含み、第1回転要素が非ロック状態に移行するまで回転速度フィードバックが開始されない構成と較べると、本態様に係る応答性優先モードは、要求駆動力の変化に対する不感帯が生じない分、確実に駆動応答性に優れる。
尚、この態様では、前記変速制御手段は、前記ショック緩和優先モードが改めて選択された場合に、前記回転電機の現行の回転速度が維持されるように前記回転速度フィードバック制御を継続してもよい。
一旦応答性優先モードが選択されると、応答性優先モードに従った変速モードの切り替え過程の進捗にもよるものの、基本的に反力トルクの状態は過渡的な変化を示し易い。例えば、回転速度フィードバック制御においては、回転電機の回転速度が変化する過程において回転電機のイナーシャトルクが駆動軸トルクを減少させる要因となるし、先に述べたようにロック機構が摩擦係合力により第1回転要素をロックする構成においては、ロック機構の滑り状態もまた駆動軸トルクに影響を及ぼす。これらの影響を推定し且つ補正しつつショック緩和優先モードを遂行することは必ずしも容易でない。
その点、この態様によれば、回転速度フィードバック制御の進捗過程における現行の回転速度が維持されるため、上記イナーシャトルクやロック機構の滑り状態を考慮する必要がなくなり、駆動軸トルクの変動を抑制することが容易となるため、応答性優先モードからショック緩和優先モードへの切り替えを好適に執り行うことが可能となる。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ロック機構は、前記第1回転要素に固定される第1係合要素と、該第1係合要素と対向し且つ係合可能に構成され、固定要素又は回転要素である所定のロック要素に固定される第2係合要素と、駆動電流に応じて前記第1又は第2係合要素をその対向方向に沿ってストロークさせることが可能な駆動手段とを備え、前記第1回転要素の状態を、(1)前記第1又は第2係合要素を前記対向方向に沿って所定量ストロークさせた状態において前記第1係合要素と前記第2係合要素との間にそれらの回転方向に沿って形成されるガタを詰めることによって前記第1係合要素と前記第2係合要素との間で該回転方向の動力伝達を可能とすることにより実現される、前記ロック要素にロックされた状態としての前記ロック状態と、(2)前記ロック要素から解放された前記非ロック状態との間で切り替え可能であり、前記変速制御手段は、前記無段変速モードへの前記変速モードの切り替え時に前記第1回転要素を前記非ロック状態に移行させるに際し、前記駆動電流が減少するように前記駆動手段を制御する。
この態様によれば、ロック機構は、例えばカムロック機構やドグクラッチ機構等の回転同期式の係合装置であり、第1回転要素をロック状態に移行させるにあたって、第1回転要素とロック要素とを回転同期状態に維持する過程が必要となるものの、湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等を含む摩擦係合方式の係合装置と較べて、係合力或いは制動力を維持するためのエネルギ資源が少ない上、高い係合力を維持することができ、本発明に係るロック機構として好適である。
また、この種のロック機構においては、駆動手段の駆動電流に応じてロック要素と第1回転要素との係合状態を制御することができるため、変速制御手段は、第1回転要素を非ロック状態に移行させるにあたって、駆動電流を減少させればよく、例えば油圧の大小に応じて係合力が変化する機構と較べて、その制御性が容易であるという利点もある。このような利点は、例えば、応答性優先モードが、先に述べたように、第1回転要素の非ロック状態への移行に先立って回転速度フィードバック制御を開始する構成を採る場合等には、回転速度フィードバック制御による回転電機の回転速度及びトルクの制御に並行してロック機構の係合力を減衰させることが比較的容易となるといった実践上の利益をもたらし得る。
尚、ロック要素とは、各種ケースや各種ボディ等、少なくとも第1回転要素に対し実質的に静止状態にある物体に直接又は間接的に固定されることにより少なくとも回転不能な状態にある要素としての固定要素であってもよいし、第1回転要素とは異なる動力伝達機構の一回転要素であってもよい。即ち、第1回転要素に係る「固定」とは、あくまでロック要素に対し固定されることを意味するものであって、ロック要素が固定要素であれば、文字通りロック(即ち、回転ロック)され、ロック要素が回転要素であれば、ロック要素と略一体に回転することを意味するものである。ロック機構は、上記「回転要素の状態」の一つとして第1回転要素の状態を可変とするものであり、ロック機構による第1回転要素のロックの有無は、自ずと上記変速モードの選択に相関する。例えば、ロック機構は、好適な一形態として、第1回転要素を固定要素に対し固定することにより、上述した変速比を固定する、所謂MG1ロックやO/Dロック等を実現してもよい。
この態様におけるロック機構は、第1回転要素に固定される第1係合要素と、ロック要素に固定される第2係合要素と、これらの一方を対向方向に沿って(即ち、両者が接近する方向であっても、離間する方向であってもよい)駆動可能な、電磁アクチュエータ等の駆動手段を備える。ここで、これら係合要素に係る「固定される」とは、必ずしも常時固定されていることのみを表すものではなく、然るべき条件が満たされた場合に選択的に又は限定的に固定されることを含む趣旨である。即ち、第1又は第2係合要素は、上記駆動手段による駆動力の付与によって、該当する要素に選択的に固定される構成であってもよいし、常時夫々に該当する要素に固定されていてもよい。前者は、例えば後述のカムロック機構が好適に採り得る構成の一であり(例えば、解放状態において第2係合要素がロック要素から離間し且つ第1係合要素と略一体に回転する構成を採り得る)、後者は、例えば電磁ドグクラッチ等の係合装置が好適に採り得る構成の一である。
この態様では、前記ロック機構は、前記第1係合要素たるカムと、該カムとの間に所定の動力伝達部材を介装した状態で該カムと対向し且つ初期状態において前記ロック要素と離間する、前記第2係合要素たるクラッチ要素と、前記駆動電流に応じて該クラッチ要素に対し該クラッチ要素を前記ロック要素へ固定するための駆動力を付与可能な前記駆動手段たるアクチュエータとを含み、前記クラッチ要素が前記対向方向に沿って前記ロック要素側へストロークするのに伴って前記ロック要素に固定されると共に、前記クラッチ要素が前記ロック要素に固定されることにより前記回転方向に前記動力伝達部材の可動範囲に対応する前記ガタが形成されるように構成されたカムロック機構であってもよい。
このように、ロック機構がカムロック機構として構成される場合、第1回転要素とロック要素とは、例えば電磁アクチュエータ等から付与される電磁力等によって結合するから、両者間に作用する摩擦係合力は、アクチュエータの駆動電流と一対一で変化する。このため、回転電機のトルクがこの摩擦係合力に打ち勝てば、或いは駆動電流を適宜減少せしめれば、未だロック状態が解除されない過渡期間における回転速度フィードバック制御の遂行が可能である。応答性優先モードの実践的態様は、先に述べたものに限定されないが、応答性を優先するからには無段変速モードに準拠した回転電機の回転速度及びトルクの制御が不可欠である点に鑑みれば、このように第1回転要素をロック要素に対して滑らせつつ回転速度フィードバック制御を遂行させ得る構成は、実践上有利である。
ロック機構がカムロック機構として構成されるハイブリッド車両の制御装置の一の態様では、前記ロック機構において前記ロック要素と前記第2係合要素との間に作用する摩擦トルク、前記回転電機のトルク並びに前記回転電機及び前記回転軸を含む回転慣性系の慣性トルクに基づいて前記回転軸の軸トルクを特定する軸トルク特定手段を更に具備する。
ロック要素と第2係合要素(第2係合要素は、第1係合要素を介して第1回転手段と連結されるから、実質的には第1回転要素と解釈してもよい)との間に摩擦トルクが作用するカムロック機構においては(ドグクラッチ機構は、噛合式の係合機構であり、この種の摩擦トルクは作用しない)、一種の過渡期間である無段変速モードへの切り替え期間において、この摩擦トルクが駆動軸トルクの一部として作用する。また、回転電機に回転速度変化が生じている場合、内燃機関のトルクの一部は、回転電機のイナーシャトルクと相殺するため、駆動軸トルクとならない。このため、第1回転要素が非ロック状態へ移行する前に回転速度フィードバック制御を遂行しようとした場合、回転電機のトルクのみを反力トルクとして扱うと、内燃機関のトルクの推定精度が低下することになる。
一方、この態様によれば、軸トルク特定手段により、回転電機のトルク、回転慣性系のトルク及び摩擦トルクに基づいて回転電機の軸トルクが特定される。回転電機の軸トルクは、例えば駆動軸に他の回転電機からトルクが供給されようがされまいが、駆動軸トルクと一義的な関係にあるから、例えば、この特定手段により特定される軸トルクに基づいて回転速度フィードバック制御を実行することによって、駆動軸トルクをドライバの要求に収束させる或いは近付けることが容易となり、駆動応答性をより確保することが可能となる。
この態様では、前記ハイブリッド車両の要求駆動力が満たされるように前記特定された軸トルクに応じて前記動力要素を制御する駆動力制御手段を更に具備してもよい。
このように特定された軸トルクに応じて動力要素を制御する駆動力制御手段が備わることによって、ハイブリッド車両の要求駆動力(実質的にドライバの要求駆動力)を満たす精度の高い制御を実現することが可能である。
この態様では、前記回転速度フィードバック制御は、制御項として少なくとも積分項を含む制御であり、前記変速制御手段は、前記無段変速モードから前記固定変速モードへの前記変速モードの切り替え時における前記第2係合要素のストローク開始時点以降において前記積分項を固定し、前記第1回転要素と前記ロック要素との相対回転速度の時間勾配に基づいて前記第2係合要素のストロークが完了したか否かを判別するストローク判別手段を更に具備し、前記駆動力制御手段は、前記第2係合要素のストロークが完了した旨の判別がなされた時点以降において前記特定された軸トルクに応じて前記動力要素を制御してもよい。
カムロック機構等の回転同期式係合装置においては、第1回転要素をロック状態に移行させるにあたって、第1回転要素とロック要素とが回転同期状態にある必要がある。ここで、「回転同期状態」とは、両者の相対回転速度が、係合機構の構成に応じて、或いは予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて定められ得る許容値以内に収束している状態を指し、好適には当該相対回転速度がゼロ或いはゼロ近傍の極低回転に収束している状態を指す。但し、ロック状態においてはガタ詰めが完了している必要があり、回転方向に形成されるガタを詰めるためには、両者の間には差回転が必要である。従って、目標回転速度は、好適にはゼロではなく、例えば、相対回転速度にして毎分十回転程度の極低回転領域で設定され得る。尚、係る回転同期は、無段変速モードにおける回転速度フィードバック制御の一部として実行される。
この目標回転速度への収束過程において、当該偏差(厳密には、偏差の絶対値)が例えば基準値以下に低下する等して、予め設定された許可条件が満たされると、第2係合要素たるクラッチ要素が第1係合要素たるカムとの対向方向へ沿ってストロークされる(カムロック機構の場合、カムと対向するクラッチ要素がカムから離間する方向に位置する摩擦要素の方向へ吸着される(即ち、この場合、第2係合要素がロック要素に固定されない状態で第1回転要素の回転同期が開始される))。
一方、第1回転要素(実質的には第1係合要素と等価である)の回転同期は、好適には、第2係合要素が対向方向に沿ってストロークを開始した時点以降においても継続される。即ち、この場合、第1回転要素は、ロック状態に移行するまでの有限の期間にわたり、第1係合要素と第2係合要素との間に本来形成され得るガタを詰めるために必要となる回転量を含んで設定される目標回転速度に向って収束を続ける。従って、カムとクラッチ要素との間に形成されたガタを詰めるガタ詰め過程は、クラッチ要素をストロークさせるストローク過程に、少なくともその一部が含まれた状態となり、クラッチ要素が所定量ストロークしたストローク完了時点で、或いは当該ストローク完了時点と略同時点でガタ詰めも完了する。
このように、カムロック機構においては、第2係合要素を所定量ストロークさせるストローク過程において、回転速度フィードバック制御の態様によっては、ストローク過程とガタ詰め過程とを並行して進捗させることができる。ここで、ガタ詰め完了時点においては、クラッチ要素の回転が比較的急激に抑止されるため、第1回転要素とロック要素との相対回転速度の時間勾配に基づいて、第2係合要素のストロークが完了したか否かを的確判別することができる。
ここで特に、第2係合要素のストローク完了時点とガタ詰め完了時点とは先に述べたように略同時点となり得るから、駆動力制御手段は、このストローク完了判定をもって、先に述べた特定された軸トルクに応じた動力要素の制御を開始することができる。より具体的には、ガタ詰め完了時点においては、好適には、アクチュエータの駆動電流を適宜減少させて、クラッチ要素をロック要素との摩擦面において滑らせ、物理的衝撃或いは振動を緩和する措置が講じられるため、正確な駆動軸トルクの推定には、先に述べたように、回転電機自体のトルクと、イナーシャトルクと、摩擦トルクとが必要となるのである。即ち、この場合、このようなストローク判別手段と駆動制御手段との協調により、カムとクラッチ要素との間に形成されたガタを終始詰めた状態で、ショックを緩和しつつ固定変速モードへの切り替えを好適に遂行することが可能となる。
一方、この態様によれば、クラッチ要素のストローク開始時点において、回転同期フィードバック制御の制御項の一部である積分項が固定される。カムロック機構は、ストローク開始時点でカムとクラッチ要素との位相は整合しているため、固定変速モードへの切り替え時における、過去の回転履歴に基づいた負荷の大きい積分項処理は実質的に不要となる。従って、このように積分項を固定することにより、処理負荷軽減に係る実践上の利益のみが享受され、迅速且つ正確に第1回転要素をロック状態へ移行させることが可能となるのである。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 図1のハイブリッド車両におけるハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 図2のハイブリッド駆動装置に備わるエンジンの一断面構成を例示する模式図である。 図2のハイブリッド駆動装置に備わるロック機構の一断面構成を例示する模式図である。 図4において矢線A方向へ見たロック機構の一断面構成を例示する模式図である。 図4のロック機構のロック作用によりサンギアが解放状態からロック状態に状態遷移する過程を説明する模式的な断面図である。 図2のハイブリッド駆動装置における動力分割機構の作用を説明する動作共線図である。 図1のハイブリッド車両におけるECUにより実行される第1解放制御のフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るハイブリッド車両におけるECUにより実行される第2解放制御のフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係るハイブリッド車両におけるECUにより実行される第3解放制御のフローチャートである。 本発明の第4実施形態に係るハイブリッド車両におけるECUにより実行されるロック制御のフローチャートである。 本発明の第5実施形態に係るハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 本発明の第6実施形態に係るハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 本発明の第7実施形態に係るハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1-1:実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両1の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両1の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、ハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置10、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13、車速センサ14及びECU100を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
ECU100は、CPU、ROM及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述するMG1解放制御及びMG1ロック制御を実行可能に構成されている。尚、ECU100は、本発明に係る「要求加速度特定手段」、「判別手段」、「選択手段」及び「変速制御手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、上記各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給することが可能な不図示のインバータを含み、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された電力制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する充電可能な蓄電手段である。
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、主にエンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、入力軸400、駆動軸500、減速機構600及びロック機構700を備える。
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成されている。ここで、図3を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、エンジン200の一断面構成を例示する模式図である。尚、同図において、図1及び図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関の構成は、エンジン200のものに限定されず各種の態様を有してよい。尚、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図3においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
図3において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介して、本発明に係る「機関出力軸」の一例たるクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転速度NEが算出される構成となっている。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度(即ち、上述したアクセル開度Ta)に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出される排気中のNOx(窒素酸化物)を還元すると同時に、排気中のCO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)を酸化可能に構成された触媒装置である。尚、触媒装置の採り得る形態は、このような三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。これら空燃比センサ217及び水温センサ218は、夫々ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比及び冷却水温は、夫々ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
図2に戻り、モータジェネレータMG1は、本発明に係る「回転電機」の一例たる電動発電機であり、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1と同様に、電動発電機であり、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、他の構成を有していてもよい。
動力分割機構300は、中心部に設けられた、本発明に係る「第1回転要素」の一例たるサンギアS1と、サンギアS1の外周に同心円状に設けられた、本発明に係る「第2回転要素」の一例たるリングギアR1と、サンギアS1とリングギアR1との間に配置されてサンギアS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギアP1と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支する、本発明に係る「第3回転要素」の一例たるキャリアC1とを備えた、本発明に係る「動力伝達機構」の一例たる動力伝達装置である。
ここで、サンギアS1は、サンギア軸310を介してMG1のロータRT1に連結されており、その回転速度はMG1の回転速度Nmg1(以下、適宜「MG1回転速度Nmg1」と称する)と等価である。また、リングギアR1は、駆動軸500、減速機構600及び後述するMG2減速機構800を介してMG2のロータRT2に結合されており、その回転速度はMG2の回転速度Nmg2(以下、適宜「MG2回転速度Nmg2」と称する)と一義的な関係にある。更に、キャリアC1は、エンジン200の先に述べたクランクシャフト205に連結された入力軸400と連結されており、その回転速度は、エンジン200の機関回転速度NEと等価である。尚、ハイブリッド駆動装置10において、MG1回転速度Nmg1及びMG2回転速度Nmg2は、夫々レゾルバ等の回転センサにより一定の周期で検出されており、ECU100に一定又は不定の周期で送出されている。
一方、駆動軸500は、ハイブリッド車両1の駆動輪たる右前輪FR及び左前輪FLを夫々駆動するドライブシャフトSFR及びSFL(即ち、これらドライブシャフトは、本発明に係る「車軸」の一例である)と、各種減速ギア及び差動ギアを含む減速装置としての減速機構600を介して連結されている。従って、モータジェネレータMG2から駆動軸500に供給されるモータトルクTmg2は、減速機構600を介して各ドライブシャフトへと伝達され、各ドライブシャフトを介して伝達される各駆動輪からの駆動力は、同様に減速機構600及び駆動軸500を介してモータジェネレータMG2に入力される。従って、MG2回転速度Nmg2は、ハイブリッド車両1の車速Vと一義的な関係にある。
動力分割機構300は、係る構成の下で、エンジン200からクランクシャフト205を介して入力軸400に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1とピニオンギアP1とによってサンギアS1及びリングギアR1に所定の比率(各ギア相互間のギア比に応じた比率)で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能となっている。
動力分割機構300の動作を分かり易くするため、リングギアR1の歯数に対するサンギアS1の歯数としてのギア比ρを定義すると、エンジン200からキャリアC1に対しエンジントルクTeを作用させた場合に、サンギア軸310に現れるトルクTesは下記(1)式により、また駆動軸500に現れるトルクTer(即ち、エンジン200からの直達トルク)は下記(2)式により夫々表される。
Tes=−Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
モータジェネレータMG2は、MG2減速機構800を介して、先に述べた減速機構600及び動力分割機構300に連結されている。MG2減速機構800は、動力分割機構300と同様に、複数の差動要素から構成された遊星歯車機構であり、この遊星歯車機構のサンギアS2にMG2のロータRT2が、リングギアR2に動力分割機構300のリングギアR1が夫々連結されると共に、キャリアC2が固定要素に回転不能に固定されることによって、駆動軸500の回転速度に対し、MG2回転速度Nmg2を減速させるように構成されている。
ロック機構700は、主たる構成要素としてカム710、クラッチ板720及びアクチュエータ730を含んでなり、サンギアS1の状態を、回転不能なロック状態と回転可能な非ロック状態との間で選択的に切り替え可能に構成された、本発明に係る「ロック機構」の一例たるカムロック式係合装置である。
ここで、図4を参照し、ロック機構700の詳細な構成について説明する。ここに、図4は、ロック機構700の一断面構成を例示する模式断面図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、ロック機構700は、カム710、クラッチ板720、アクチュエータ730、リターンスプリング740及びカムボール750を備える。
カム710は、サンギア軸310に連結され、サンギア軸310及びサンギアS1と一体回転可能な、クラッチ板720と一対をなす本発明に係る「第1係合要素」の一例たる略円板状の係合部材であり、本発明に係る「カム」の一例である。尚、カム710は、必ずしもサンギア軸310と直接的に連結されている必要はなく、各種連結部材を介してサンギア軸310と間接的に連結されていてもよい。
クラッチ板720は、磁性金属材料により構成されると共にカム710と対向配置されてなる、カム710と一対をなす本発明に係る「第2係合要素」及び「クラッチ要素」の一例たる円板状の係合部材である。
アクチュエータ730は、吸引部731、電磁石732及び摩擦部733を含んで構成された、本発明に係る「駆動手段」の一例である。
吸引部731は、磁性金属材料により構成されると共に電磁石732を収容可能に構成された、アクチュエータ730の筐体である。吸引部731は、ハイブリッド駆動装置10の外郭部材と略一体に固定された、本発明に係る「固定要素」の一例たるケースCSに対し固定されている。即ち吸引部731は、係るケースCSと共に本発明に係る「ロック要素」の一例として機能する。
電磁石732は、バッテリ12からの電力供給を受けた不図示の駆動部から所定のクラッチ係合電流Id(即ち、本発明に係る「駆動電流」の一例であり、所謂励磁電流である)が供給された励磁状態において磁力を発生可能に構成された磁石である。励磁状態において電磁石732から発せられる磁力は、磁性金属材料により構成された吸引部731を介して、先述したクラッチ板720を吸引する(即ち、クラッチ板720に対しクラッチ板720を電磁石側へ吸引する方向へ駆動力たる電磁力を付与する)構成となっている。尚、この駆動部は、ECU100と電気的に接続されており、電磁石732の励磁動作は、ECU100により上位に制御される構成となっている。
摩擦部733は、吸引部731におけるクラッチ板720との対向面に形成された摩擦機能体であり、形成されない場合と較べて、接触状態にある物体の移動をより大きく阻害し得るようにその摩擦係数が設定されている。
リターンスプリング740は、一方の固定端がクラッチ板720に固定され、他方の固定端がカム710に固定されてなる弾性体であり、クラッチ板720をカム710の方向へ付勢している。このため、クラッチ板720は、通常、このリターンスプリング740の付勢を受けて、所定の対向間隔GAPを隔てて吸引部731と対向する非接触位置で停止している。
カムボール750は、カム710とクラッチ板720とに挟持された「動力伝達部材」の一例たる球状物体である。ロック機構700は、サンギアS1及びサンギア軸310を介してカム710に伝達されるモータジェネレータMG1のトルクたるMG1トルクTmg1が、このカムボール750を伝達要素としてクラッチ板720に伝達される構成となっている。
ここで、図5を参照し、ロック機構700の構成について更に具体的に説明する。ここに、図5は、図4において矢線A方向にロック機構700を見た模式的な断面図である。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図5において、カム710及びクラッチ板720の各々における対向面は、夫々中心部へ向かう程、当該各々における、サンギア軸310の伸長方向への厚みが小さくなるように形成されており、上記カムボール750は、通常、両者間の対向空間が最も広い中心部付近に挟持されている。このため、クラッチ板720が上記非接触位置にある場合、カム710とクラッチ板720とは、このカムボール750をトルクの伝達要素として、モータジェネレータMG1の回転方向と等しい方向へ略一体に回転する。従って、クラッチ板720が上記非接触位置にある場合、モータジェネレータMG1の回転は、少なくとも実質的には何ら阻害されることはない。尚、図5では、図示下方がモータジェネレータMG1の正回転方向と定義されるが、モータジェネレータMG1は、係る正回転方向のみならず、係る正回転方向と真逆の負回転方向(図示省略)にも同様に回転可能である。
<1-2:実施形態の動作>
<1-2-1:ロック機構700のロック作用>
ハイブリッド駆動装置10において、ロック機構700は、サンギアS1を本発明に係る第1回転要素として、サンギアS1の状態をロック状態と非ロック状態との間で選択的に切り替えることが可能である。尚、サンギアS1は、既に述べた通りモータジェネレータMG1に連結されており、サンギアS1がロック状態にある場合、MG1もまた回転不能なロック状態となる。従って、これ以降、サンギアS1がロック状態にあることを適宜「MG1がロック状態にある」等と表現することとする。
ここで、図6を参照して、ロック機構700によるサンギアS1のロック作用について説明する。ここに、図6は、ロック機構700のロック作用によりサンギアS1が非ロック状態からロック状態に状態遷移するロック遷移過程を説明する模式的な断面図である。尚、同図において、図4又は図5と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、図6(a)は、先の図5と同様の状態を表しており、クラッチ板720と摩擦部733との間に対向空間GAPが介在しており、クラッチ板720は、摩擦部733による抑止力の影響を受けることなく回転可能である。このため、カムボール750の作用によりカム710とクラッチ板720とは略一体に回転可能である。ここで、カム710は、サンギア軸310を介してMG1のロータRT1に連結されており、このロータRT1は、サンギア軸310を介してサンギアS1に連結されている。従って、ハイブリッド駆動装置10において、カム710は、サンギアS1と一体に回転する回転要素として扱うことができる。即ち、図6(a)に示される状態では、サンギアS1もまたクラッチ板720の制約を受けずに回転可能である。この状態は、本発明に係る「非ロック状態」の一例に相当する。
図6(b)には、アクチュエータ730の電磁石732にクラッチ係合電流Idが供給された状態が示される。即ち、この場合、電磁石732から発せられる電磁力が吸引部731を介してクラッチ板720に及び、クラッチ板720は、リターンスプリング740の付勢に打ち勝って上記非接触位置と対極の接触位置まで移動し、吸引部731に吸着される。その結果、対向空間GAPは消滅する。また、励磁による電磁力の供給と共に、摩擦部733がクラッチ板720に対し摩擦力を発揮する形となり、クラッチ板720の正回転又は負回転方向への動作が阻害される。即ち、この状態において、クラッチ板720は、電磁石732と摩擦部733とにより、その動作が阻害され、アクチュエータ730に対し、即ちケースCSに対して静止する。
一方、このようにクラッチ板720が吸引部731に吸着された状態では、消滅した対向空間GAPの代わりに、カムボール750とクラッチ板720との間に、回転方向に沿ったガタGTが形成される。従って、カム710がMG1の回転の影響を受けて正回転方向又は負回転方向へ回転すると、カム710とカムボール750のみが、その回転方向へ移動する。尚、ここでは、これらが正回転方向へ移動するものとして説明を継続する。ここで、新たに形成されたガタGTは、先に述べたように断面視逆テーパ状となっており、カムボール750が回転方向に進行するにつれて徐々に詰められ、遂には消滅してガタ詰め完了状態となる。ガタ詰め完了状態においては、再びカム710、カムボール750及びクラッチ板720が相互に接触する。
図6(c)には、このようなガタ詰め完了状態が示される。このガタ詰め完了状態でカム710が正回転方向に回転しようとした場合、この逆テーパ形状をなす対向面の作用によって、カムボール750には、クラッチ板720を更にアクチュエータ730の方向へ押圧する押圧力が発生する。その結果、カム710に対し正回転方向への正トルクが加わっている限りにおいて、電磁石732への励磁を停止しても三者の接触状態が変化することはなく、カム710は、当該押圧力と摩擦部733から与えられる摩擦力とによって所謂セルフロック状態となる。
このセルフロック状態では、カム710もまたクラッチ板720と同様にケースCSに対し静止、即ち固定された状態となる。その結果、カム710と一体に回転するサンギアS1もまたケースCSに対し固定された状態となる。この状態がロック状態である。ロック状態では、サンギアS1の回転速度、即ちMG1回転速度Nmg1がゼロとなる。
尚、ここでは、ロック機構700を構成するカムロック式係合装置は、上記セルフロック作用を有するものとしたが、カム710及びクラッチ板720における対向面の各々の形状等を調整することにより、この種のセルフロック作用を有さぬ構成とすることもできる。その場合、電磁石732への励磁が停止されると、リターンスプリング740の作用により、クラッチ板720は元の非接触位置へと復帰する。また、上記の説明においては、ロック状態におけるMG1回転速度Nmg1はゼロであるとしたが、MG1の出力トルクであるMG1トルクTmg1がクラッチ板720と摩擦部733との間に作用する摩擦トルクを上回れば、MG1は、アクチュエータ730からの電磁力に打ち勝って回転することもできる。その場合、後述するように、クラッチ板720は摩擦部733から摩擦トルクを受けつつ摩擦部733に対し幾らかなり滑った状態となる。
<1-2-2:変速モードの詳細>
本実施形態に係るハイブリッド車両1は、サンギアS1の状態に応じて、変速モードとして固定変速モード又は無段変速モードを選択可能である。ここで、図7を参照し、ハイブリッド車両1の変速モードについて説明する。ここに、図7は、動力分割機構300の作用を説明するハイブリッド駆動装置10の動作共線図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図7(a)において、縦軸は回転速度を表しており、横軸には、左から順にモータジェネレータMG1(一義的にサンギアS1)、エンジン200(一義的にキャリアC1)及びモータジェネレータMG2(一義的にリングギアR1)が表されている。ここで、動力分割機構300は遊星歯車機構であり、サンギアS1、キャリアC1及びリングギアR1のうち二要素の回転速度が定まった場合に、残余の一回転要素の回転速度が必然的に定まる構成となっている。即ち、動作共線図上において、各回転要素の動作状態は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態に一対一に対応する一の動作共線によって表すことができる。尚、これ以降適宜、動作共線図上の点を動作点mi(iは自然数)によって表すこととする。即ち、一の動作点miには一の回転速度が対応している。
図7(a)において、MG2の動作点が動作点m1であるとする。この場合、MG1の動作点が動作点m3であれば、残余の一回転要素たるキャリアC1に連結されたエンジン200の動作点は、動作点m2となる。この際、駆動軸500の回転速度を維持したままMG1の動作点を動作点m4及び動作点m5に変化させれば、エンジン200の動作点は夫々動作点m6及び動作点m7へと変化する。
即ち、この場合、モータジェネレータMG1を回転速度制御装置とすることによって、エンジン200を所望の動作点で動作させることが可能となる。この状態に対応する変速モードが、無段変速モードである。無段変速モードでは、エンジン200の動作点(この場合の動作点とは、機関回転速度とエンジントルクTeとの組み合わせによって規定される)は、基本的にエンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点に制御される。尚、当然ながら無段変速モードにおいて、MG1回転速度Nmg1は可変である必要がある。このため、無段変速モードが選択される場合、ロック機構700は、サンギアS1が非ロック状態となるように、その駆動状態が制御される。また、この際、MG1回転速度Nmg1は、回転速度フィードバック制御により、目標回転速度に収束制御される。
ここで補足すると、動力分割機構300において、駆動軸500に先に述べたエンジントルクTeに対応するトルクTerを供給するためには、サンギア軸310にエンジントルクTeに応じて現れる先述のトルクTesと大きさが等しく且つ符合が反転した(即ち、負トルクである)反力トルクをモータジェネレータMG1からサンギア軸310(即ち、本発明に係る「回転電機の回転軸」の一例である)に供給する必要がある。この場合、動作点m3或いは動作点m4といった正回転領域の動作点において、MG1は正回転負トルクの発電状態となる。即ち、無段変速モードにおいては、モータジェネレータMG1(一義的にサンギアS1)を反力要素として機能させることにより、駆動軸500にエンジントルクTeの一部を供給し、且つサンギア軸310に分配されるエンジントルクTeの一部で発電が行われる。駆動軸500に対し要求されるトルクがエンジン直達のトルクで不足する場合には、この発電電力を利用する形で、モータジェネレータMG2から駆動軸500に対し適宜トルクTmg2が供給される。
一方、例えば高速軽負荷走行時等、例えばMG2回転速度Nmg2が高いものの機関回転速度NEが低く済むような運転条件においては、MG1が、例えば動作点m5の如き負回転領域の動作点となる。この場合、モータジェネレータMG1は、エンジントルクTeの反力トルクとして負トルクを出力しており、負回転負トルクの状態となって力行状態となる。即ち、この場合、MG1トルクTmg1は、駆動軸500に作用する駆動軸トルクとして駆動軸500に伝達されてしまう。
他方で、モータジェネレータMG2は、駆動軸500に出力される、要求トルクに対し過剰なトルクを吸収するため、負トルク状態となる。この場合、モータジェネレータMG2は、正回転負トルクの状態となって発電状態となる。このような状態においては、MG1からの駆動力をMG2での発電に利用し、この発電電力によりMG1を力行駆動する、といった所謂動力循環と称される非効率な電気パスが生じることとなる。動力循環が生じた状態では、ハイブリッド駆動装置10の伝達効率が低下してハイブリッド駆動装置10のシステム効率が低下しかねない。
そこで、ハイブリッド車両1では、予めこのような動力循環が生じ得るものとして定められた運転領域において、ロック機構700によりサンギアS1が先に述べたロック状態に制御される。その様子が図7(b)に示される。サンギアS1がロック状態となると、必然的にモータジェネレータMG1もまたロック状態となり、MG1の動作点は、回転速度がゼロである動作点m8となる。このため、エンジン200の動作点は動作点m9となり、その機関回転速度NEは、車速Vと一義的なMG2回転速度Nmg2により一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)。このようにMG1がロック状態にある場合に対応する変速モードが、固定変速モードである。
固定変速モードでは、本来モータジェネレータMG1が負担すべきエンジントルクTeの反力トルクをロック機構700の物理的な制動力により代替させることができる。即ち、モータジェネレータMG1を発電状態にも力行状態にも制御する必要はなくなり、モータジェネレータMG1を停止させることが可能となる。従って、基本的にモータジェネレータMG2を稼動させる必要もなくなり、MG2は言わば空転状態又は補機発電のみを行う状態となる。結局、固定変速モードでは、駆動軸500に現れるトルクたる駆動軸トルクTdsが、エンジントルクTeのうち、動力分割機構300により駆動軸500側に分割された直達成分(上記(2)式参照)である直達トルクTerのみとなり、ハイブリッド駆動装置10は、機械的な動力伝達を行うのみとなって、その伝達効率が向上する。
一方、固定変速モードから無段変速モードへ変速モードを切り替える際には、反力要素をロック機構700からモータジェネレータMG1に切り替える必要がある。ところが、固定変速モードにおいては、モータジェネレータMG1は停止しており、然るべき反力トルクを負担できる状態にない。従って、何らの対策も講じられることがなければ、駆動軸トルクTdsは、過渡的に不連続となって、ドライバに対する物理的衝撃或いは振動となって顕在化しかねない。そこで、本実施形態において、ECU100は、変速モードを固定変速モードから無段変速モードへ切り替える際に、第1解放制御を実行するように構成されている。
<1-2-3:第1解放制御の詳細>
ここで、図8を参照し、第1解放制御の詳細について説明する。ここに、図8は、第1解放制御のフローチャートである。
図8において、ECU100は、アクセル開度Taが規定値以下であるか否かを判別する(ステップS101)。アクセル開度Taが規定値以下である場合(ステップS101:YES)、ECU100は、固定変速モードから無段変速モードへの切り替え態様を規定する切り替えモードとして、ショック緩和優先モードを選択し、ステップS102乃至S107に従って、ショック緩和優先モードに対応する処理を行う。
ショック緩和優先モードにおいて、ECU100は先ず、MG1トルク調整制御を実行する(ステップS102)。ここで、MG1トルク調整制御とは、エンジントルクTeの反力トルクを負担する反力要素を、固定変速モードにおけるロック機構700からモータジェネレータMG1に移行させる制御を指す。即ち、固定変速モードにおいて停止していたMG1を始動させ、MG1トルクTmg1を、その時点で必要な反力トルクの値まで上昇させる。
MG1トルク調整制御の実行が開始されると、ECU100は、MG1トルクTmg1の調整が完了したか否か、即ち、MG1トルクTmg1が、ロック機構700で負担していた反力トルクを全て負担する状態に移行したか否かを判別する(ステップS103)。MG1トルクTmg1の調整が未だ完了しない場合(ステップS103:NO)、ECU100は、処理をステップS102に戻し、一連の処理を繰り返す。
MG1トルクTmg1の調整が完了した場合(ステップS103:YES)、ECU100は、MG1トルクTmg1を固定する(ステップS104)一方で、クラッチ係合電流Idを減少させ、アクチュエータ730を停止させる(ステップS105)。その結果、クラッチ要素たるクラッチ板320はアクチュエータ730から解放され、再びクラッチ板320とカム310とが一体回転状態に移行することとなって、サンギアS1がロック状態から非ロック状態へ移行する。
サンギアS1が非ロック状態に移行すると、ECU100は、直達トルクTerの計算方法を変更する(ステップS106)。より具体的には、サンギアS1がロック状態にある場合、直達トルクTerは、エンジントルクTeに対し動力分割機構300の各回転要素のギア比により定まる固定ギア比Grを乗じることによって算出される。一方、サンギアS1が非ロック状態にある場合、直達トルクTerは、MG1トルクTmg1から算出される。従って、切り替え直後においては、ステップS104の処理により固定されたMG1トルクTmg1が参照される。
MG1トルクTmg1に基づいた反力トルク計算が開始されると、ECU100は、MG1F/B制御を開始する(ステップS107)。MG1F/B制御とは、先述したように、MG1回転速度Nmg1と、エンジン200の目標動作点に対応するMG1回転速度Nmg1の目標値との偏差をフィードバックしてMG1トルクTmg1を制御し、最終的にMG1回転速度Nmg1を目標値へ収束させる制御を指す。このMG1F/B制御の開始により、無段変速モードへの変速モードの切り替えが完了し、第1解放制御が終了する。
一方、ステップS101において、アクセル開度Taが規定値以下でない場合(ステップS101:NO)、ECU100は、無段変速モードから固定変速モードへの切り替え態様を規定する切り替えモードとして、応答性優先モードを選択し、ステップS108乃至S111に従って、応答性優先モードに対応する処理を行う。
応答性優先モードにおいて、ECU100は先ず、直達トルクTerの算出に固定ギア比Grが用いられた状態で、上述したMG1F/B制御を開始する(ステップS108)。即ち、上述のショック緩和優先モードと異なり、未だサンギアS1のロック状態が解除されない(非ロック状態へ移行しない状態)で、MG1F/B制御が開始される。
一方、ECU100は、MG1F/B制御を開始すると、アクチュエータ730のクラッチ係合電流Idを徐々に減少させる(ステップS109)。クラッチ係合電流Idが減少する過程において、アクチュエータ730からクラッチ板720に作用していた電磁力がリターンスプリング740の弾性力を下回ると、クラッチ板720はカム710の方向へ再びストロークし、サンギアS1が非ロック状態へ移行する。
ECU100は、サンギアS1が非ロック状態となったか否かを判別し(ステップS110)、非ロック状態に移行しない間は(ステップS110:NO)、処理をステップS109に戻し、一連の処理を繰り返す。一方、サンギアS1が非ロック状態へ移行すると(ステップS110:YES)、ECU100は、ステップS106の処理と同様にして、固定ギア比Grに代えてMG1トルクTmg1が反力トルクの計算に使用されるように直達トルクTerの計算方法を変更する(ステップS111)。直達トルクTerの計算方法が変更されると、第1解放制御は終了する。
以上説明したように、第1解放制御によれば、ドライバの加速要求(即ち、要求加速度或いは要求駆動力)と一義的な関係にあるアクセル開度Taに応じて、アクセル開度Taが大である場合(本実施形態では規定値よりも大きい場合に相当する)には応答性優先モードが、アクセル開度Taが小である場合(本実施形態では規定値以下である場合に相当する)にはショック緩和優先モードが、夫々固定変速モードから無段変速モードへの変速モードの切り替え態様を規定する切り替えモードとして選択される。
ここで、応答性優先モードにおいては、モータジェネレータMG1が反力トルクを負担するのに先立って、MG1F/B制御が開始される。即ち、無段変速モードへの移行が最優先される。従って、駆動軸500にドライバが要求する駆動力が供給されるのに要する時間は、可及的に短縮化され、良好な駆動応答性が担保される。一方、このようにロック機構700の解放制御に先立ってMG1F/B制御が開始されるため、応答性優先モードにおいては、サンギアS1が非ロック状態に移行するまでの過渡期間において、クラッチ板720と摩擦部733との接触面ではクラッチ板720がスリップ状態となる。このため、係る過渡期間において、駆動軸トルクTdsは、一時的にその制御性が低下して不連続となり易く、物理的衝撃或いは振動が一時的にせよドライバに知覚される可能性が高くなる。然るに、ドライバの意思、志向或いは要求といった観点から見ると、アクセル開度Taが大である場合とは、駆動応答性をショック緩和に優先すべき場合であると判断されるため、このような物理的衝撃或いは振動が招くドライバビリティの悪化は、実質的には無視し得る程度に小さくて済む。また、応答性優先モードにおいては、MG1F/B制御の開始と共にアクチュエータ730のクラッチ係合電流Idが徐減されるため、クラッチ板720が摩擦面においてスリップ状態を維持する期間は、物理的衝撃或いは振動が長時間にわたって継続する程には長くない。その点から言っても、応答性優先モードにおけるドライバビリティは、好適な状態を維持し得る。
一方、ショック緩和優先モードにおいては、MG1F/B制御の開始が、サンギアS1が非ロック状態に移行するまで待機される。また、サンギアS1を非ロック状態に移行させるにあたっては、クラッチ板720のストロークに先立って、MG1トルクTmg1が、エンジン200に対しその時点で必要な反力トルクを付与し得る値に固定される。従って、ロック機構700で負担していた反力トルクは、MG1に円滑に委譲され、変速モードの切り替えがなされる過渡期間において、駆動軸トルクTdsの変動は理想的にはゼロ、実践的にみてもドライバに知覚され得る程度に大きくなることがなくなり、良好なショック緩和性が提供されるのである。一方、このようにサンギアS1の解放までMG1F/B制御の開始を遅らせると、駆動軸500にドライバが要求する駆動力が提供されるまでに要する時間は、先の応答性優先モードと較べて長くなる。即ち、駆動応答性の観点から、ドライバビリティへの影響が懸念される。然るに、ドライバの意思、志向或いは要求といった観点から見ると、アクセル開度Taが小である場合とは、ショック緩和を駆動応答性に優先すべき場合であると判断されるため、このような緩慢な駆動応答性が招くドライバビリティの悪化は、実質的には無視し得る程度に小さくて済む。
このように、本実施形態に係る第1解放制御によれば、駆動応答性がドライバビリティに与える影響の方が大きい場合には応答性優先モードが、ショック緩和がドライバビリティに与える影響の方が大きい場合にはショック緩和優先モードが夫々選択されるように、上記の規定値が、例えば実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて的確に定められている。従って、ドライバの意思、志向或いは要求に即した無段変速モードへの切り替えが実現され、ドライバビリティの悪化を好適に抑制することが可能となるのである。
<第2実施形態>
次に、図9を参照し、本発明の第2実施形態として、固定変速モードから無段変速モードへの切り替えに係る第2解放制御の詳細について説明する。ここに、図9は、第2解放制御のフローチャートである。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。尚、第2実施形態に係るハイブリッド車両及びハイブリッド駆動装置の構成は、第1実施形態に準ずるものとする。
図9において、ECU100は、アクセル開度Taが規定値以下であるか否かを判別し(ステップS101)、アクセル開度Taが規定値以下である場合(ステップS101:YES)、ショック緩和優先モードに従って、MG1トルク調整制御を実行する(ステップS102)。MG1トルク調整制御が実行されると、ECU100は再び、アクセル開度Taが規定値以下であるか否かを判別する(ステップS201)。
ステップS201において、アクセル開度Taが規定値以下の状態を維持している場合(ステップS201:YES)、ECU100は、MG1のトルク調整が完了したか否かを判別する(ステップS103)。MG1のトルク調整が完了しない間は(ステップS103:NO)、処理はステップS102に戻され、一連の処理が繰り返される。MG1のトルク調整が完了した場合(ステップS103:YES)、ECU100は、MG1トルクTmg1を固定する(ステップS104)。
MG1トルクTmg1が固定された段階で、ECU100は再び、アクセル開度Taが規定値以下であるか否かを判別する(ステップS202)。アクセル開度Taが規定値以下の状態を維持している場合(ステップS202:YES)、ECU100は、クラッチ係合電流Idをゼロまで減少させる(ステップS105)と共に、直達トルクTerの計算方法を変更する(ステップS106)。
直達トルクTerの計算方法が変更されると、ECU100は再び、アクセル開度Taが規定値以下であるか否かを判別する(ステップS203)。アクセル開度Taが規定値以下の状態を維持している場合(ステップS203:YES)、ECU100は、サンギアS1が非ロック状態に移行したか否かを判別する(ステップS204)。サンギアS1が非ロック状態に移行しない間は(ステップS204:NO)、ステップS105以降の処理が繰り返し実行される。
サンギアS1が非ロック状態に移行すると(ステップS204:YES)、ECU100は、MG1F/B制御を開始する(ステップS107)。
一方、ステップS201、202及び203において、例えばドライバがアクセルペダルを踏み増す等の理由により、アクセル開度Taが規定値よりも大きくなった場合(ステップS201:NO、ステップS202:NO又はステップS203:NO)、ECU100は、応答性優先モードを改めて選択し、応答性優先モードを開始するべく、処理をステップS206に進める。ここで、MG1トルクTmg1が既に固定されている場合(即ち、ステップS202又はS203において当該判別がなされた場合)、ECU100は、MG1トルクTmg1の固定を解除した後(ステップS205)、処理をステップS206に進める。
ステップS206において、ECU100は、アクセル開度Ta及び車速Vに基づいて要求駆動力マップよりハイブリッド車両1の要求駆動力を決定し、決定した要求駆動力に基づいて、動作点マップに規定される最適燃費動作線に従ってエンジントルクTeの要求値を決定する。それと同時に、動力分割機構300の回転要素間のギア比ρに基づいて規定される上記(1)式に従って、MG1トルクTmg1の目標値が算出される。
エンジン200及びMG1の目標トルクが決定されると、ECU100は、応答性優先モードに従って、決定された目標トルクに基づくMG1F/B制御を開始すると共に(ステップS108)、クラッチ係合電流Idを徐々に低下させる(ステップS109)。
次に、ECU100は、アクセル開度Taが規定値よりも大きい状態が継続しているか否かを判別する(ステップS207)。アクセル開度Taが規定値よりも大きい状態が継続している場合(ステップS207:YES)、応答性優先モードは継続され、ECU100は、サンギアS1が非ロック状態に移行したか否かを判別する(ステップS110)。サンギアS1が非ロック状態に移行しない間は(ステップS110:NO)、処理はステップS109に戻され、一連の処理が繰り返される。サンギアS1が非ロック状態に移行すると(ステップS1110:YES)、ECU100は、直達トルクTerの計算方法を変更して(ステップS111)第2解放制御を終了する。
一方、ステップS207において、例えばドライバがアクセルペダルを緩める等して、アクセル開度Taが規定値以上にまで低下した場合(ステップS207:NO)、ECU100は、ショック緩和優先モードを改めて選択する。即ち、直達トルクTerの計算方法を、再び固定ギア比Grを用いたものに変更し(ステップS208)、MG1F/B制御におけるMG1回転速度Nmg1の目標値を現状の値に固定して、MG1回転速度Nmg1の変化を抑制する(ステップS209)。ステップS209が実行されると、処理はステップS110に進められる。
以上説明したように、第2実施形態に係る第2解放制御によれば、応答性優先モード又はショック緩和優先モードが一旦選択され、選択された切り替えモードに従った処理プロセスが開始された後であっても、適宜ドライバの意思、志向或いは要求を反映するアクセル開度Taと規定値との比較判別が適宜なされ、フレキシブルに切り替えモードの選択がなされる。従って、無段変速モードへの切り替え期間において、ドライバがアクセルペダルを踏み増す或いは緩める等の過渡操作を行ったとしても、ドライバビリティの悪化を抑制することが可能となる。
また特に、応答性優先モードからショック緩和優先モードへ切り替えモードが変更される場合には、既に開始されているMG1F/B制御によって、MG1回転速度Nmg1がその時点の値に維持固定される。このため、モータジェネレータMG1のイナーシャトルクやクラッチ板720に作用する摩擦トルクによってエンジン直達トルクTerの計算精度を良好に保つことが可能となる。
<3:第3実施形態>
次に、図10を参照し、本発明の第3実施形態として、固定変速モードから無段変速モードへの切り替えに係る第3解放制御の詳細について説明する。ここに、図10は、第3解放制御のフローチャートである。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。尚、第3実施形態に係るハイブリッド車両及びハイブリッド駆動装置の構成は、第1実施形態に準ずるものとする。また、第3解放制御は、第1解放制御に対し、応答性優先モードの処理プロセスのみにおいて相違する構成となっている。従って、以下の説明では、応答性優先モードについてのみ説明することとする。尚、第3実施形態に係るハイブリッド駆動装置におけるECU100は、本発明に係る「軸トルク特定手段」及び「駆動力制御手段」の夫々一例としても機能するように構成されている。
図10において、ステップS108が実行されると、ECU100は、クラッチ係合電Idを徐々に低下させると共に、クラッチ係合電流Idの値を取得する(ステップS301)。このクラッチ係合電流Idは、その大小が、クラッチ板720に作用する摩擦トルクの大小と相関する。
ECU100は次に、カム710と摩擦部733との相対回転速度及び相対回転角を取得し、相対回転速度が第1閾値αよりも大きく、且つ相対回転角が第2閾値βよりも大きいか否かを判別する(ステップS302)。ステップS302に係る判別処理は、カム710が、クラッチ板720との間に形成されるガタの範囲内で回転しているか、ガタよりも大きい角度変位で相対回転しているかを判別処理である。第1閾値αは、カム710がクラッチ板720と共に摩擦部733に対し十分なスリップ状態にあるか否かを規定し得る値として設定されており、例えば、極端な場合にはゼロであってもよい。第2閾値βは、即ち予め把握されるガタの大きさと等価である。
ECU100は、相対回転速度がα以下である又は相対回転角がβ以下である場合或いはその両方ともが満たされる場合(ステップS302:NO)、処理をステップS301に戻して一連の処理を繰り返すと共に、相対回転速度がαよりも大きく且つ相対回転角がβよりも大きい場合には(ステップS302:YES)、クラッチ係合電流Idに基づいて、クラッチ板720と摩擦部733との摩擦面に作用する摩擦トルクを算出する(ステップS303)。より具体的には、摩擦トルクは、クラッチ係合電流Idとこれに対応する摩擦トルクとの関係を表すマップから取得される。或いは当該関係を規定する関数から算出される。
ECU100は、摩擦トルクを算出すると、この摩擦トルクと、モータジェネレータMG1のイナーシャトルクと、MG1トルクTmg1とに基づいて、サンギア軸310に作用するサンギア軸トルクを算出する(ステップS304)。尚、このサンギア軸トルクは、本発明に係る「回転電機の回転軸の軸トルク」の一例である。サンギア軸トルクが算出されると、ECU100は、固定ギア比Grに代えて、このサンギア軸トルクが用いられるように、直達トルクTerの計算方法を変更する(ステップS305)。ステップS305を経ると、第3解放制御は終了する。
以上説明したように、第3解放制御によれば、クラッチ係合電流Idに基づいて摩擦トルクが把握され、イナーシャトルクと共に、サンギア軸トルクの特定に供される。ここで、駆動軸トルクTdsを規定するトルクは、正確にはサンギア軸トルクであり、サンギア軸トルクは、モータジェネレータMG1に回転変化が生じていればMG1のイナーシャトルクによって変動し、また、クラッチ板720と摩擦部733との間の摩擦面に摩擦トルクが作用していればこの摩擦トルクによって変動する。従って、これらイナーシャトルク及び摩擦トルクを、夫々正回転時には負トルク、負回転時には正トルクが夫々作用するものとして扱えば、MG1トルクTmg1のみから駆動軸トルクTdsを推定するよりも高精度に駆動軸トルクTdsを推定することが可能となる。
駆動軸トルクTdsの推定精度は、取りも直さず無段変速モードにおける駆動応答性に直結するから、本実施形態によれば、応答性優先モードにおける駆動応答性がより向上し、よりドライバビリティの悪化を抑制することが可能となるのである。
<4:第4実施形態>
次に、図11を参照し、本発明の第4実施形態として、無段変速モードから固定変速モードへの切り替えに係るロック制御の詳細について説明する。ここに、図11は、ロック制御のフローチャートである。尚、第4実施形態に係るハイブリッド車両及びハイブリッド駆動装置の構成は、第1実施形態に準ずるものとする。尚、第4実施形態に係るハイブリッド駆動装置におけるECU100は、本発明に係る「ストローク判別手段」の一例としても機能するように構成されている。
図11において、ECU100は、回転同期F/B制御を実行する(ステップS401)。ここで、回転同期F/B制御とは、カム710(この時点ではカム710とクラッチ板720とは一体に回転しているため、クラッチ板720としてもよい)と吸引部731との回転同期を図る制御を指す。
回転同期F/B制御が実行されると、ECU100は、MG1回転速度Nmg1と、その目標値との偏差(以下、適宜「回転速度偏差」とする)が、予め設定された規定値以下であるか否かを判別する(ステップS402)。偏差が規定値以下でない場合(ステップS402:NO)、ECU100は、処理をステップS401に戻し、一連の処理を繰り返す。
一方、回転速度偏差が規定値以下である場合(ステップS402:YES)、ECU100は、アクチュエータ730において所定のクラッチ係合電流Idを投入し(ステップS403)、回転同期F/B制御のフィードバック制御項の一部である積分項を、その時点の値に固定する(ステップS404)。積分項は、過去一定期間にわたるMG1回転速度Nmg1を反映するため、このように積分項が固定されることによって、ECU100の制御上の負担は軽くなり、他の処理への影響が回避することができる。
続いて、ECU100は、カム710と吸引部731との相対回転速度の時間勾配が増加したか否かを判別する(ステップS405)。ここで、吸引部731は非回転要素であるため、当該相対回転速度とは、カム710の回転速度に他ならず、当該相対回転速度に係る「時間勾配」とは、具体的には、カム710の回転速度の時間変化量を意味する。補足すると、この時間勾配は、カム710とクラッチ板720との間に形成されたガタが詰まるガタ詰め過程の完了時点前後で異なった挙動を示す。即ち、ガタ詰めが未完である場合、この時間勾配は、回転速度F/B制御に支配された挙動を示し、ガタ詰め完了時点前後において急激に減少する。従って、この時間勾配に基づいて、ガタ詰め完了のタイミングを正確に検出することが可能となるのである。一方、ステップS403においてクラッチ係合電流Idが印加され、クラッチ板720の吸引部732へのストロークが開始された以降も、回転速度F/Bは継続しており、予めMG1回転速度Nmg1の目標値を、ガタの分だけオフセットしておけば、ストロークの終了時点とガタ詰めの完了時点とは略同時点となる。即ち、ステップS405に係る判別処理は、本発明に係る「ストローク判別手段」の動作の一例である。
クラッチ板720のストロークが完了していない場合(ステップS405:NO)、ECU100は、処理をステップS403に戻し、一連の処理を繰り返す。一方、クラッチ板720のストロークが完了した場合(ステップS405:YES)、ECU100は、第3実施形態と同様に、クラッチ板720に作用する摩擦トルクを算出する(ステップS406)。尚、この摩擦トルクの算出は、所定周期でその時点のクラッチ係合電流Idの値に基づいて繰り返し実行される。
摩擦トルクの算出処理が開始されると、ECU100は、クラッチ係合電流Idを徐々に低下させる(ステップS407)。クラッチ係合電流Idは、摩擦トルクと一義的な関係にあり、その減少は摩擦トルクの減少を招く。このため、クラッチ係合電流Idの減少が開始されると、クラッチ板720を吸引部732に固定する係合力が減少して、MG1トルクTmg1によって、クラッチ板720は吸引部732に対しスリップしたスリップ状態に移行する。このようにクラッチ板720を吸引部732(摩擦部733)に対しスリップ状態に維持することによって、ガタ詰め完了時点を境に生じ得る物理的衝撃或いは振動を低減することが可能となる。また、このようなスリップ状態においては、先に述べたように、駆動軸トルクTdsが当該摩擦トルクを始めとする各種のトルクに影響を受ける。このため、ECU100は、第3実施形態で述べたようにサンギア軸310に作用するサンギア軸トルクを算出し(ステップS408)、直達トルクTerの計算方法を変更する(ステップS409)。
一方、このままでは、サンギアS1のロック状態への移行が完了しないため、ECU100は、係合電流F/B制御を開始する(ステップS410)。係合電流F/B制御とは、ガタ詰め状態を維持しつつ、カム710(この状態では、一義的にクラッチ板720である)と吸引部732との相対回転速度が規定値以下となるようになされるクラッチ係合電流Idのフィードバック制御を意味する。ステップS410は、例えば、ATにおける油圧スイープ制御等と同様に、MG1回転速度Nmg1をゼロ回転へ向って漸減させる処理である。ステップS410によれば、例えばクラッチ係合電流Idの制御により摩擦トルクを制御することによって、ガタ詰まり状態を維持し且つ衝撃音及びトルクショックの発生をも防止しつつ、MG1回転速度Nmg1を漸減することが可能となる。
係合電流F/B制御が開始されると、ECU100は、当該相対回転速度が規定値以下であるか否かを判別し(ステップS411)、規定値よりも大きい間は(ステップS411:NO)、係合電流F/B制御を継続する。係合電流F/B制御が遂行される過程で、当該相対回転速度が規定値以下にまで低下すると(ステップS411:YES)、クラッチ係合電流Idはその時点の値に保持され、ステップS401で開始された回転同期F/B制御が終了する(ステップS412)。回転同期F/B制御を終了させると、ECU100は、クラッチ係合電流Idを保持電流に切り替える(ステップS413)。尚、ここでは、相対回転速度が規定値以下であることを条件としたが、相対回転速度がゼロとなったことを回転同期F/B制御の終了条件としてもよい。
クラッチ係合電流Idが保持電流に切り替えられると、ECU100は、一方で、エンジントルクTeの反力トルクをロック機構700に移譲すべく、MG1モータトルクTmg1の絶対値を低下させる(ステップS414)。この際、MG1モータトルクTmg1の減少速度は、事前に実験的な適合により決定された、比較的高速側の値に設定される。即ち、既にガタ詰めが完了している状態においては、比較的急激にモータトルクTmg1を低下させても、トルクショックが顕在化することはないのである。
ここで、上述した無段変速モードにおいて、エンジントルクTeのうち駆動軸500に現れる直達トルクTerは、反力要素たるモータジェネレータMG1の反力トルクによって推定されている。即ち、エンジントルクTeのうちサンギアS1に現れるトルク成分TesがMG1モータトルクTmg1に等しいとして、「Tes=−Te×ρ/(1+ρ)」なる上記(1)式と、「Ter=Te×1/(1+ρ)」なる上記(2)式とから、モータトルクTmg1を「−1/ρ」倍することによって直達トルクTerを推定しているのである。このため、MG1モータジェネレータMG1をトルクセンサとして利用する直達トルクTerの推定を固定変速モードにおいて継続すると、反力トルクをロック機構700に受け渡した以降における、直達トルクTerの推定が困難になる。その結果、直達トルクTerが、ドライバ要求トルクから乖離してトルクショックが生じる可能性がある。
そこで、ECU100は、直達トルクTerの計算方法を、固定ギア比に基づいた通常の固定変速モードにおける計算方法へ変更する(ステップS415)。より具体的には、直達トルクTerは、エンジントルクTeに対し動力分割機構300の各回転要素のギア比により定まる固定ギア比Grを乗じることによって算出される。駆動軸トルクTdsは、この直達トルクTerでは不足する分をモータジェネレータMG2からのモータトルクTmg2で補償することにより、ドライバ要求トルクに好適に維持される。その結果、無段変速モードから固定変速モードへの移行に際してのトルクショックが低減され、シームレスな変速モードの切り替えが実現される。ステップS414及びS415が実行されると、ロック制御は終了する。
以上説明したように、本実施形態に係るロック制御によれば、クラッチ板720の吸引部732へのストロークが完了した時点を境に、第3実施形態と同様にクラッチ機構700から付与される摩擦トルクを算出し、この算出された摩擦トルクと、モータジェネレータMG1のイナーシャトルクと、MG1トルクTmg1とに基づいて、エンジン200からの直達トルクTerを高精度に推定することが可能となる。また、ストローク完了時点と略同時点であるガタ詰め完了時点において、一時的にクラッチ係合電流Idを減少せしめることにより、ガタ詰め状態を維持しつつ、物理的衝撃或いは振動の発生を抑制することができる。従って、無段変速モードから固定変速モードへの変速モードの切り替えを、極めて好適に進捗させることが可能となるのである。
尚、このようにして切り替えられた固定変速モードから再び無段変速モードへの切り替えが要求されるに際しては、上述した第1乃至第3実施形態に係る各種の解放制御及びそれに類する制御を好適に適用可能であることは言うまでもない。
<5:第5実施形態>
上記第1乃至第4実施形態においては、ハイブリッド駆動装置10が固定変速モードを採るに際して、MG1がロックされる(正確には、サンギアS1及びカム710を介してMG1がロックされる)構成を採る。然るに、固定変速モードを得るに際してのハイブリッド駆動装置の構成は、この種のMG1ロックに限定されない。ここで、図12を参照し、本発明の第5実施形態として、他のハイブリッド駆動装置の構成について説明する。ここに、図12は、本発明の第5実施形態に係るハイブリッド駆動装置20の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、図12において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図12において、ハイブリッド駆動装置20は、動力分割機構300に代えて、本発明に係る「動力分割機構」の他の一例として動力分割機構900を備える点と、ロック機構700に代えて、本発明に係る「ロック機構」の他の一例としてブレーキB1を備える点とにおいて、ハイブリッド駆動装置10と相違する構成となっている。
動力分割機構900は、複数の回転要素により構成される差動機構として、シングルピニオンギア型の遊星歯車機構の形態を採る。動力分割機構900は、サンギアS3、キャリアC3及びリングギアR3並びに軸線方向に自転し且つキャリアC3の自転により公転するようにキャリアC3に保持された、サンギアS3及びリングギアR3に噛合するピニオンギアP3を備え、サンギアC3にモータジェネレータMG1のロータRT1が、キャリアC3に入力軸400が、またリングギアR3にMG2変速機構1000を介して駆動軸500が夫々連結された構成となっている。尚、MG2変速機構1000は、駆動軸500の回転速度に対するMG2回転速度Nmg2の比を変更するための有段の変速装置である。
ブレーキB1は、一方のブレーキ板が物理的に固定された湿式多板摩擦係合式の係合手段である。ブレーキB1の他方のブレーキ板は、MG1の回転軸に連結されており、ブレーキB1の各ブレーキ板同士が係合した状態においては、MG1の回転は阻止され、所謂MG1ロックが実現される構成となっている。尚、ブレーキB1を駆動する駆動系は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100により上位に制御される構成となっている。尚、ブレーキB1は、上記第1乃至第4実施形態と同様に、カムロック機構たるロック機構700であってもよい。
ハイブリッド駆動装置20によれば、サンギアS3がブレーキB1によりロック状態となり、その回転速度がゼロとなると、車速Vと一義的な回転速度を有するモータジェネレータMG2と、このサンギアS3とによって、残余の一回転要素たるエンジン200の回転速度が規定される。キャリアC3は、エンジン200のクランクシャフト205に連結された入力軸400に連結されているため、結局エンジン200の機関回転速度NEは、車速Vと一義的な関係となって、固定変速モードが実現されるのである。このように、固定変速モードは、ハイブリッド駆動装置10以外の構成においても実現可能であり、それに合わせて、ロック機構700のロック対象も適宜変更されてよい。いずれにせよ、MG1がロック状態から非ロック状態へ切り替わる際に、要求加速度に応じて、上述したショック緩和優先モード又は応答性優先モードを選択し実行することにより、ドライバビリティの低下を招くことなく、ショックを好適に緩和することが可能である。
<6:第6実施形態>
次に、図13を参照し、本発明の第6実施形態として、MG1がロックされる構成を有する、更に他のハイブリッド駆動装置の構成について説明する。ここに、図13は、本発明の第6実施形態に係るハイブリッド駆動装置30の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、図13において、図12と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図13において、ハイブリッド駆動装置30は、動力分割機構900に代えて、本発明に係る「動力分割機構」の他の一例として動力分割機構1100を備える点において、図12におけるハイブリッド駆動装置20と相違する構成となっている。動力分割機構1100は、複数の回転要素により構成される差動機構として、シングルピニオンギア型の第1遊星歯車機構1110及び1120を備える。
第1遊星歯車機構1110は、サンギア1111、キャリア1112及びリングギア1113並びに軸線方向に自転し且つキャリア1112の自転により公転するようにキャリア1112に保持された、サンギア1111及びリングギア1113に噛合するピニオンギア1114を備え、サンギア1111にモータジェネレータMG1のロータRT1が、キャリア1112に入力軸400が、またリングギア1113にMG2変速機構1000を介して駆動軸500が夫々連結された構成となっている。
第2遊星歯車機構1120は、サンギア1121、キャリア1122及びリングギア1123並びに軸線方向に自転し且つキャリア1122の自転により公転するようにキャリア1122に保持された、サンギア1121及びリングギア1123に噛合するピニオンギア1124を備え、サンギア1121にブレーキB1の他方のブレーキ板が連結された構成となっている。即ち、本実施形態においては、サンギア1121が、本発明に係る「第1回転要素」の他の一例として機能する。
このように、動力分割機構1100は、全体として第1遊星歯車機構1110のサンギア1111、第2遊星歯車機構1120のサンギア1121(第1回転要素)、相互に連結された第1遊星歯車機構1110のキャリア1112及び第2遊星歯車機構1120のリングギア1123からなる第1回転要素群、並びに相互に連結された第1遊星歯車機構1110のリングギア1113及び第2遊星歯車機構1120のキャリア1122からなる第2回転要素群の、合計4個の回転要素を備えている。
ハイブリッド駆動装置30によれば、サンギア1121がロック状態となり、その回転速度がゼロとなると、車速Vと一義的な回転速度を有する第2回転要素群と、このサンギア1121とによって、残余の回転要素たる第1回転要素群の回転速度が規定される。第1回転要素群を構成するキャリア1112は、エンジン200のクランクシャフト205に連結された入力軸400に連結されているため、結局エンジン200の機関回転速度NEは、車速Vと一義的な関係となって、固定変速モードが実現されるのである。また、このようにエンジン200の機関回転速度NEが車速Vと一義的な関係を維持することに伴って、第1回転要素群及び第2回転要素群と差動関係にあるサンギア1111の回転状態も一義的となり、モータジェネレータMG1もロック状態となる。即ち、ハイブリッド駆動装置30においては、所謂O/Dロックと称される固定変速モードが実現される。
このように、固定変速モードは、ハイブリッド駆動装置10及び20以外の構成においても実現可能であり、それに合わせて、ロック機構700又はブレーキB1のロック対象も適宜変更されてよい。いずれにせよ、MG1がロック状態から非ロック状態へ切り替わる際に、要求加速度に応じて、上述したショック緩和優先モード又は応答性優先モードを選択し実行することにより、ドライバビリティの低下を招くことなく、ショックを好適に緩和することが可能である。
<7:第7実施形態>
次に、図14を参照し、本発明の第7実施形態として、MG1がロックされる構成を有する、他のハイブリッド駆動装置の構成について説明する。ここに、図14は、ハイブリッド駆動装置50の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、図14において、図2と重複する要素には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図14において、ハイブリッド駆動装置50は、複数のモータジェネレータの各々相互間で、エンジン200に対し反力トルクを付与する反力要素としての役割と、駆動軸500に駆動軸トルクの一部を供給する出力要素としての役割とを切り替えることが可能に構成され、且つ無段変速モード及び固定変速モードの各々を、複数の変速段に対応して複数構築することが可能な所謂マルチモードハイブリッドと称される駆動形態を有する。
ハイブリッド駆動機構50は、エンジン200、動力分割機構1400、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2、第1変速装置1500、第2変速装置1600、動力伝達遮断クラッチ1700、及びカウンタ軸1800を備える。
動力分割機構1400は、所謂ダブルピニオン式の遊星歯車機構を含んで構成される。即ち、動力分割機構1400は、相互に同軸上に配置されたサンギア1420及びリングギア1410と、サンギア1420に噛合された第2ピニオンギア1440と、この第2ピニオンギア1440及びリングギア1410に噛合する第1ピニオンギア1430と、第1ピニオンギア1430及び第2ピニオンギア1440を自転可能且つ一体的に公転可能に支持してなるキャリア1450とを有している。
動力分割機構1400では、エンジン200の機関出力軸たるクランクシャフトに連結された入力軸400が、リングギア1410に連結されており、エンジン200からの動力は、リングギア1410に伝達される構成となっている。
また、キャリア1450は、モータジェネレータMG2のロータに連結された、中空の入力軸1470(即ち、MG2の出力回転軸と等価である)に連結されている。
更に、サンギア1420は、中空の入力軸1470内に収容された入力軸1460に連結されている。この入力軸1460は、モータジェネレータMG1のロータに連結された出力回転軸1480と同軸上に配置されており、後述する動力伝達遮断クラッチ1700が締結されている場合には、出力回転軸1480と一体に回転する構成となっている。尚、特に断りのない限り、これ以降の説明では、動力伝達遮断クラッチ1700は締結されているものとする。
このような構成において、動力分割機構1400では、エンジン200の出力トルクが、リングギア1410に入力され、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2のいずれか一方により反力トルクが受け持たれる。即ち、リングギア1410が入力要素となり、サンギア1420及びモータジェネレータMG1が反力要素となった場合は、キャリア1450が出力要素となる。このキャリア1450から出力されたトルクは、入力軸1470に伝達される。一方、リングギア1410が入力要素となり、モータジェネレータMG2及びキャリア1450が反力要素となった場合には、サンギア1420が出力要素となる。このサンギア1420から出力されたトルクは、入力軸1460に伝達される。
カウンタ軸1800は、入力軸1460及び入力軸1470と平行に配置され、入力軸1460及び入力軸1470の回転軸線と平行な軸線を中心として回転可能である。カウンタ軸1800は、前述した減速機構600と間接的に連結され、各ドライブシャフトの回転速度と一義的な関係を保って回転することが可能に構成される。
第1変速装置1500は、カウンタ軸1800と、モータジェネレータMG1の出力回転軸1480(即ち、動力伝達遮断クラッチ1700が締結されていれば、入力軸1460と等価である)との間に設けられている。第1変速装置1500は、出力回転軸1480とカウンタ軸1800との回転速度比としての変速比を複数段階に変更可能に構成されている。
第1変速装置1500は、2速ギア1510及び4速ギア1520を備える。2速ギア1510は、相互に噛合してなる2速用駆動ギア1511及び2速用従動ギア1512を備える。また、4速ギア1520は、相互に噛合してなる4速用駆動ギア1521及び4速用従動ギア1522を備える。2速用駆動ギア1511及び4速用駆動ギア1521は、出力回転軸1480と一体に回転するように出力回転軸1480に連結されており、2速用従動ギア1512及び4速用従動ギア1522は、カウンタ軸1800に対し相対回転可能に取り付けられている。
第2変速装置1600は、カウンタ軸1800と、入力軸1470との間に設けられている。第2変速装置1600は、出力回転軸1470とカウンタ軸1800との回転速度比としての変速比を複数段階に変更可能に構成されている。
第2変速装置1600は、1速ギア1610及び3速ギア1620を備える。1速ギア1610は、相互に噛合してなる1速用駆動ギア1611及び1速用従動ギア1612を備える。また、3速ギア1620は、相互に噛合してなる3速用駆動ギア1621及び3速用従動ギア1622を備える。1速用駆動ギア1611及び3速用駆動ギア1621は、出力回転軸1470と一体に回転するように出力回転軸1480に連結されており、1速用従動ギア1612及び3速用従動ギア1622は、カウンタ軸1800に対し相対回転可能に取り付けられている。
第1変速装置1500とカウンタ軸1800との間の動力伝達は、第1変速装置1500の一部として構成された第1クラッチ機構1530により制御される。
第1クラッチ機構1530は、2速用従動ギア1512及び4速用従動ギア1522のいずれか一方をカウンタ軸1800に対し動力伝達可能に接続すると共に、2速用従動ギア1512及び4速用従動ギア1522の両方をカウンタ軸1800に対し動力伝達不可能に維持する(即ち、カウンタ軸1800に接続しない)ことが可能に構成された、噛合式のドグクラッチ機構である。
より具体的には、第1クラッチ機構1530は、2速用従動ギア1512に連結された2速用クラッチ板1532及び4速用従動ギア1522に連結された4速用クラッチ板1533と、これら2速用クラッチ板1532及び4速用クラッチ板1533とに係合可能な主クラッチ板1531を備えており、主クラッチ板1531と2速用クラッチ板1532(即ち、2速用従動ギア1512)とが接続された状態(以下、適宜「2速ギアが選択された状態」等と称する)、主クラッチ板1531と4速用クラッチ板1533(即ち、4速用従動ギア1522)とが接続された状態(以下、適宜「4速ギアが選択された状態」等と称する)、及び主クラッチ板1531がいずれのクラッチ板とも接続されていない状態(以下、適宜「遮断状態」等と称する)の三状態を採ることが可能に構成される。
このような構成において、主クラッチ板1531をいずれか一方のクラッチ板へ接続する場合、同期接続が行われる。例えば、主クラッチ板1531は、図示せぬ油圧(或いは電動)アクチュエータにより駆動される構成を有しており、接続対象となるクラッチ板と回転同期が取れた状態において、接続対象となるクラッチ板の方向へ所定量ストロークされる構成となっている。一方、第1クラッチ機構1530は、ドグクラッチ機構であり、接続の際には、接続対象に形成された噛合用の突起部と、主クラッチ板1531に形成された同じく噛合用の突起部とが、各々における突起部と陥没部とが対応するように噛合し、接続が行われる。この際、噛合後に、接続対象となるクラッチ板を介してトルクが主クラッチ板1531に伝達され、接続が完了する。尚、主クラッチ板1531を駆動するアクチュエータは、ECU100により上位に制御される構成となっている。また、この場合、主クラッチ板1531が、一方のクラッチ板の方向へストロークする構成となっているが、これらは相対移動可能であればよく、各従動ギアに連結されたクラッチ板が主クラッチ板1531の方向へ所定量ストロークする構成を有していてもよい。
第2変速装置1600とカウンタ軸1800との間の動力伝達は、第2変速装置1600の一部として構成された第2クラッチ機構1630により制御される。
第2クラッチ機構1630は、1速用従動ギア1612及び3速用従動ギア1622のいずれか一方をカウンタ軸1800に対し動力伝達可能に接続すると共に、1速用従動ギア1612及び3速用従動ギア1622の両方をカウンタ軸1800に対し動力伝達不可能に維持する(即ち、カウンタ軸1800に接続しない)ことが可能に構成された、噛合式のドグクラッチ機構である。
より具体的には、第2クラッチ機構1630は、1速用従動ギア1612に連結された1速用クラッチ板1632及び3速用従動ギア1622に連結された3速用クラッチ板1633と、これら1速用クラッチ板1632及び3速用クラッチ板1633とに係合可能な主クラッチ板1631を備えており、主クラッチ板1631と1速用クラッチ板1632(即ち、1速用従動ギア1612)とが接続された状態(以下、適宜「1速ギアが選択された状態」等と称する)、主クラッチ板1631と3速用クラッチ板1633(即ち、3速用従動ギア1622)とが接続された状態(以下、適宜「3速ギアが選択された状態」等と称する)、及び主クラッチ板1631がいずれのクラッチ板とも接続されていない状態(以下、適宜「遮断状態」等と称する)の三状態を採ることが可能に構成される。
このような構成において、主クラッチ板1631をいずれか一方のクラッチ板へ接続する場合、同期接続が行われる。本実施形態では、主クラッチ板1631は、図示せぬ油圧(或いは電動)アクチュエータにより駆動される構成を有しており、接続対象となるクラッチ板と回転同期が取れた状態において、接続対象となるクラッチ板の方向へ所定量ストロークされる構成となっている。一方、第2クラッチ機構1630は、ドグクラッチ機構であり、接続の際には、接続対象に形成された噛合用の突起部と、主クラッチ板1631に形成された同じく噛合用の突起部とが、各々における突起部と陥没部とが対応するように噛合し、接続が行われる。この際、噛合後に、接続対象となるクラッチ板を介してトルクが主クラッチ板1631に伝達され、接続が完了する。尚、主クラッチ板1631を駆動するアクチュエータは、ECU100により上位に制御される構成となっている。また、この場合、主クラッチ板1631が、一方のクラッチ板の方向へストロークする構成となっているが、これらは相対移動可能であればよく、各従動ギアに連結されたクラッチ板が主クラッチ板1631の方向へ所定量ストロークする構成を有していてもよい。
動力伝達遮断クラッチ1700は、モータジェネレータMG1の出力回転軸1480と入力軸1460との間の動力伝達を制御することが可能に構成された湿式多板摩擦式クラッチ機構である。動力伝達遮断クラッチ1700は、図示せぬアクチュエータにより駆動される構成を有しており、これら軸間の動力伝達を遮断する解放状態と、これら軸間の動力伝達を可能とする締結状態の二値状態を採ることが可能に構成されている。尚、本実施形態では、特に断りの無い限り、動力伝達遮断クラッチ1700は、締結状態に制御されているものとする。尚、上記アクチュエータは、ECU100と電気的に接続されており、動力伝達遮断クラッチ1700の状態は、上述した第1及び第2クラッチ機構と共に、ECU100により制御される構成となっている。
ハイブリッド駆動機構50では、第1変速装置1500及び第2変速装置1600の作用により、ハイブリッド駆動機構50の変速比を規定する変速モードを、複数の変速モードの中から適宜に選択することが可能である。即ち、適宜に変速が可能である。ここで、ハイブリッド駆動機構50における変速モードの詳細について説明する。
ハイブリッド駆動機構50は、1速ギア1610のみをカウンタ軸1800に接続することにより実現される1速モード、1速ギア1610と2速ギア1510とを同時にカウンタ軸1800に接続することにより実現される1速+2速モード、2速ギア1510のみをカウンタ軸1800に接続することにより実現される2速モード、2速ギア1510と3速ギア1620とを同時にカウンタ軸に1800に接続することにより実現される2速+3速モード、3速ギア1620のみをカウンタ軸1800に接続することにより実現される3速モード、3速ギア1620と4速ギア1520とを同時にカウンタ軸1800に接続することにより実現される3速+4速モード、4速ギア1520のみをカウンタ軸1800に接続することにより実現される4速モード、及び1速ギア1610と4速ギア1520とを同時にカウンタ軸1800に接続することにより実現される1速+4速モードの8種類の変速モードが実現可能である。
これら8種類の変速モードのうち、第1変速装置1500及び第2変速装置1600がいずれもカウンタ軸1800への動力伝達に供される4種類の変速モードでは、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2がいずれもカウンタ軸1800に接続された状態となり、これらの回転状態は、ハイブリッド車両50の走行条件に応じて一義的に規定される。従って、この状態では、これら各モータジェネレータは反力要素としても出力要素としても機能することはなく、実質的にエンジン200のみがハイブリッド車両50の動力源として機能する。この4種類の変速モードは、入力軸400とカウンタ軸1800との間の変速比が一の値に固定される、固定変速モードである。
一方、第1変速装置1500及び第2変速装置1600のうちいずれか一方がカウンタ軸1800への動力伝達に供される4種類の変速モードでは、第1変速装置1500が動力伝達に寄与している場合には、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2が夫々出力要素及び反力要素となり、第2変速装置1600が動力伝達に寄与している場合には、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2が夫々反力要素及び出力要素として機能する。この場合、反力要素となるモータジェネレータの回転速度制御により、エンジン200のクランク軸200Aの回転速度は物理的、機械的、機構的又は電気的に可能な範囲で連続的に無段階に制御可能であり、所謂電気CVT機能が実現される。即ち、この4種類の変速モードは、本発明に係る「無段変速モード」の一例である。
このような、所謂マルチモードハイブリッドと称される駆動機構においても、例えば第1クラッチ機構1530、第2クラッチ機構1630或いは動力伝達遮断クラッチ1700の締結解放制御に、本発明に係るショック緩和優先モード及び応答性重視モードの選択制御を適用することが可能である。尚、これら各クラッチ機構の構成は、上述したドグクラッチ機構或いは湿式多板クラッチ機構等に限定されるものではなく、例えば、上述の第1乃至第4実施形態と同様にカムロック機構であってもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…ハイブリッド車両、10…ハイブリッド駆動装置、20…ハイブリッド駆動装置(第2実施形態)、30…ハイブリッド駆動装置(第3実施形態)、100…ECU、200…エンジン、205…クランクシャフト、300…動力分割機構、310…サンギア軸、S1…サンギア、C1…キャリア、R1…リングギア、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、400…入力軸、500…駆動軸、600…減速機構、700…ロック機構。

Claims (12)

  1. 回転電機と内燃機関とを含む動力要素と、
    前記回転電機により回転速度を調整可能な第1回転要素、車軸に繋がる駆動軸に連結された第2回転要素及び前記内燃機関に連結された第3回転要素を含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を備えた動力伝達機構と、
    前記第1回転要素の状態を回転不能なロック状態と回転可能な非ロック状態との間で切り替え可能なロック機構と
    を備え、
    前記第1回転要素が前記非ロック状態にある場合に対応し、前記内燃機関に対し前記回転電機から前記回転電機の回転軸を介して反力トルクを与えつつ前記回転電機の回転速度を目標値に収束させる回転速度フィードバック制御により前記内燃機関の回転速度と前記駆動軸の回転速度との比たる変速比が連続的に可変とされる無段変速モードと、前記第1回転要素が前記ロック状態にある場合に対応し、前記変速比が固定される固定変速モードとの間で変速モードを切り替え可能に構成されたハイブリッド車両を制御する装置であって、
    前記ハイブリッド車両の要求加速度を特定する要求加速度特定手段と、
    所定の基準に基づいて前記特定された要求加速度の大小を判別する判別手段と、
    前記固定変速モードから前記無段変速モードへの前記変速モードの切り替え時において、前記特定された要求加速度が大であると判別された場合に、前記変速モードの切り替え態様を規定する切り替えモードとして、駆動応答性がショック緩和に優先するように定められた応答性優先モードを、また、前記特定された要求加速度が小であると判別された場合に、前記切り替えモードとして、ショック緩和が駆動応答性に優先するように定められたショック緩和優先モードを夫々選択する選択手段と、
    前記選択された切り替えモードに従って前記動力要素及び前記ロック機構を制御する変速制御手段と
    を具備することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 前記要求加速度特定手段は、前記要求加速度として前記ハイブリッド車両のアクセル開度を特定し、
    前記判別手段は、前記特定されたアクセル開度が所定の判断基準値以上及び未満である場合に、夫々前記特定された要求加速度が大及び小であると判別する
    ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  3. 前記ショック緩和優先モードは、(1)前記内燃機関に対しその時点で必要な前記反力トルクが与えられるように前記回転電機のトルクを固定し、(2)前記回転電機のトルクが固定された状態で前記第1回転要素を前記非ロック状態に移行させ、且つ(3)前記第1回転要素が前記非ロック状態に移行した後に前記回転速度フィードバック制御を開始するように定められたモードである
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  4. 前記選択手段は、前記ショック緩和優先モードが選択された状態において前記特定された要求加速度が小から大へと変化した場合に、前記応答性優先モードを改めて選択し、
    前記変速制御手段は、前記応答性優先モードが改めて選択された場合に、前記回転電機のトルクの固定を解除し、前記応答性優先モードに従って前記動力要素及び前記ロック機構を制御する
    ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  5. 前記選択手段は、前記応答性優先モードが選択された状態において前記特定された要求加速度が大から小へと変化した場合に、前記ショック緩和優先モードを改めて選択し、
    前記変速制御手段は、前記ショック緩和優先モードが改めて選択された場合に、前記ショック緩和優先モードに従って前記動力要素及び前記ロック機構を制御する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  6. 前記応答性優先モードは、前記回転速度フィードバック制御を開始した後に前記第1回転要素が前記非ロック状態に移行するように定められたモードである
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  7. 前記変速制御手段は、前記ショック緩和優先モードが改めて選択された場合に、前記回転電機の現行の回転速度が維持されるように前記回転速度フィードバック制御を継続する
    ことを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  8. 前記ロック機構は、前記第1回転要素に固定される第1係合要素と、該第1係合要素と対向し且つ係合可能に構成され、固定要素又は回転要素である所定のロック要素に固定される第2係合要素と、駆動電流に応じて前記第1又は第2係合要素をその対向方向に沿ってストロークさせることが可能な駆動手段とを備え、前記第1回転要素の状態を、(1)前記第1又は第2係合要素を前記対向方向に沿って所定量ストロークさせた状態において前記第1係合要素と前記第2係合要素との間にそれらの回転方向に沿って形成されるガタを詰めることによって前記第1係合要素と前記第2係合要素との間で該回転方向の動力伝達を可能とすることにより実現される、前記ロック要素にロックされた状態としての前記ロック状態と、(2)前記ロック要素から解放された前記非ロック状態との間で切り替え可能であり、
    前記変速制御手段は、前記無段変速モードへの前記変速モードの切り替え時に前記第1回転要素を前記非ロック状態に移行させるに際し、前記駆動電流が減少するように前記駆動手段を制御する
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  9. 前記ロック機構は、前記第1係合要素たるカムと、該カムとの間に所定の動力伝達部材を介装した状態で該カムと対向し且つ初期状態において前記ロック要素と離間する、前記第2係合要素たるクラッチ要素と、前記駆動電流に応じて該クラッチ要素に対し該クラッチ要素を前記ロック要素へ固定するための駆動力を付与可能な前記駆動手段たるアクチュエータとを含み、前記クラッチ要素が前記対向方向に沿って前記ロック要素側へストロークするのに伴って前記ロック要素に固定されると共に、前記クラッチ要素が前記ロック要素に固定されることにより前記回転方向に前記動力伝達部材の可動範囲に対応する前記ガタが形成されるように構成されたカムロック機構である
    ことを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  10. 前記ロック機構において前記ロック要素と前記第2係合要素との間に作用する摩擦トルク、前記回転電機のトルク並びに前記回転電機及び前記回転軸を含む回転慣性系の慣性トルクに基づいて前記回転軸の軸トルクを特定する軸トルク特定手段を更に具備する
    ことを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  11. 前記ハイブリッド車両の要求駆動力が満たされるように前記特定された軸トルクに応じて前記動力要素を制御する駆動力制御手段を更に具備する
    ことを特徴とする請求項10に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  12. 前記回転速度フィードバック制御は、制御項として少なくとも積分項を含む制御であり、
    前記変速制御手段は、前記無段変速モードから前記固定変速モードへの前記変速モードの切り替え時における前記第2係合要素のストローク開始時点以降において前記積分項を固定し、
    前記第1回転要素と前記ロック要素との相対回転速度の時間勾配に基づいて前記第2係合要素のストロークが完了したか否かを判別するストローク判別手段を更に具備し、
    前記駆動力制御手段は、前記第2係合要素のストロークが完了した旨の判別がなされた時点以降において前記特定された軸トルクに応じて前記動力要素を制御する
    ことを特徴とする請求項11に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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