JP2012056421A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハイブリッド車両において、歯打ち音の回避制御に起因するドライバビリティの低下を抑制する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置(100)は、内燃機関(200)及び電動機(MG2)を含む動力要素と、駆動軸と、動力伝達機構(300)とを備えたハイブリッド車両(1)を制御する。ハイブリッド車両の制御装置は、電動機のトルクが発生領域であるか否かを判定する第1判定手段(120)と、電動機のトルクが発生領域であると判定された場合に、内燃機関のトルク変動が小さくなるように回避制御を行う回避手段(140)と、電動機のトルクが発生領域に近づいているか否かを判定する第2判定手段(110)と、電動機のトルクが発生領域に近づいていると判定された場合に、回避制御における内燃機関の運転状態の変化が小さくなるように予備回避制御を行う予備回避手段(130)とを備える。
【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関及び電動機から出力される動力を、動力伝達機構を介して駆動軸へと伝達するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
この種の装置として、動力要素であるエンジン及び電動機と、車軸に接続された駆動軸との間に設けられた動力伝達機構(例えば、ギヤ機構)において生じる歯打ち音を抑制しようとするものがある。例えば特許文献1では、電動機の出力トルクがゼロ近傍になる場合に、電動機の出力トルクを補正して歯打ち音の発生を防止するという技術が提案されている。また特許文献2では、エンジンの動作点がノイズ発生領域(即ち、歯打ち音が発生してしまう領域)にある場合は、エンジンの動作点を変更してノイズ発生領域を回避するという技術が提案されている。
特開2006−262585号公報 特開2008−143348号公報
しかしながら上述した特許文献2に係る技術では、歯打ち音が発生してしまうような状況となってから、歯打ち音回避制御が行われる。このため、エンジンや電動機の挙動が短時間で大きく変化することとなり、ハイブリッド車両の運転者に違和感を生じさせてしまうおそれがある。具体的には、エンジンの回転数を一時的に増加させて歯打ち音の発生を防止しようとすると、運転者はエンジンの急激な吹け上がりに違和感を覚え、結果的にドライバビリティを低下させてしまう。このように、上述した技術には、仮に歯打ち音の発生を防止できたとしても、ドライバビリティの低下が必ずしも十分に抑制されないという技術的問題点がある。
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、歯打ち音の回避制御に起因するドライバビリティの低下を抑制可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
本発明のハイブリッド車両の制御装置は上記課題を解決するために、内燃機関及び電動機を含む動力要素と、車軸に連結された駆動軸と、前記動力要素と前記駆動軸との間でトルクを伝達可能とされた動力伝達機構とを備えたハイブリッド車両を制御する装置であって、前記電動機のトルクが、前記動力伝達機構におけるガタに起因する歯打ち音を発生させるものとして設定された発生領域であるか否かを判定する第1判定手段と、前記電動機のトルクが前記発生領域であると判定された場合に、前記内燃機関のトルク変動が小さくなるように、前記内燃機関の動作点を変更する回避制御を行う回避手段と、前記電動機のトルクが、前記発生領域に近づいているか否かを判定する第2判定手段と、前記電動機のトルクが前記発生領域に近づいていると判定された場合に、前記回避制御における前記内燃機関の運転状態の変化が小さくなるように、前記内燃機関の動作点を予備的に変更する予備回避制御を行う予備回避手段とを備える。
本発明に係るハイブリッド車両は、駆動軸に対し動力を供給可能な動力要素として、例えば燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等を問わない各種の態様を採り得る内燃機関、並びにモータジェネレータ等の電動発電機として構成され得る電動機を少なくとも備えた車両である。電動機は、バッテリ等から供給される電気エネルギを運動エネルギに変換して出力する力行機能と、内燃機関等から供給される運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有している。
本発明に係るハイブリッド車両には更に、上述した動力要素としての内燃機関及び電動機と、車軸に直結された或いは各種ギア機構を介して間接的に連結された駆動軸との間のトルク伝達を可能とする動力伝達機構を備える。動力伝達機構は、例えば複数の回転要素(好適には、ギアである)を有しており、これら複数の回転要素は、各々その回転方向に、例えばバックラッシュ等のガタを有する構成となっている。
尚、動力伝達機構を構成する回転要素は、複数の回転要素が相互に差動作用をなし得る構成とされてもよい。この場合、係る差動作用により、各回転要素の状態(端的には、回転可能であるか否か及び他の回転要素又は固定要素と連結された状態にあるか否か等を含む)に応じた、上記動力要素と駆動軸との間のトルク伝達が可能となり得る。また、この場合、動力伝達機構は、遊星歯車機構等の各種差動ギア機構を一又は複数備え得る。複数の遊星歯車機構を含む場合には、各遊星歯車機構を構成する回転要素の一部が複数の遊星歯車機構相互間で適宜共有され得る。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、このようなハイブリッド車両を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
本発明に係るハイブリッド車両の走行時には、例えばアクセル開度や車速等に応じて内燃機関の動作点が決定される。即ち、駆動軸への適切な出力トルクを実現するためには、動力要素たる内燃機関が、どの程度の回転数でどの程度のトルクを出力すればよいのかが決定される。また電動機でも同様に、駆動軸に対してどの程度のトルクを出力すればよいのかが決定される。
ここで特に、電動機のトルクが比較的低い値として決定された場合には、主としてこの電動機近傍の回転要素(無論、必ずしも電動機近傍に限定されるものではなく、動力伝達機構の構成に応じて多種多様である)等が、内燃機関の脈動トルクによってガタの範囲で振動し、動力伝達機構における歯打ち音が生じる可能性がある。
動力伝達機構における歯打ち音は、実践上無視し難い(端的には、ドライバに騒音として知覚され得る程度の)大きさで生じることがある。このような歯打ち音は、車両のドライバビリティを著しく低下させる要因となり得る。このため本発明では、以下の如くにして歯打ち音によるドライバビリティの低下を抑制する。
即ち、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、電動機のトルクが発生領域であるか否かが第1判定手段によって判定される。「発生領域」は、動力伝達機構においてガタに起因する歯打ち音が発生してしまうようなトルク領域(即ち、トルク範囲)であり、例えばゼロトルクを挟んで正トルク側及び負トルク側に跨る領域として設定される。「発生領域」は、理論的、実験的或いは経験的に予め求められ、第1判定手段が有するメモリ等に記憶されている。
電動機のトルクが発生領域であると判定された場合には、内燃機関のトルク変動を小さくする回避制御が、回避手段によって行われる。回避手段は、例えば内燃機関の回転数を増加させると共に出力トルクを減少させるように動作点を変更する。このように内燃機関のトルク変動を小さくすれば、電動機のトルクが発生領域であったとしても、内燃機関の脈動トルクが伝達されることに起因する歯打ち音の発生を効果的に抑制することができる。
本発明では更に、第2判定手段によって、電動機のトルクが発生領域に近づいているか否かが判定される。尚、ここでの「近づいている」とは、電動機のトルクが現段階では発生領域ではないが、今後の推移によって発生領域となるおそれがある状態を指している。よって、電動機のトルクが発生領域から一時的に遠ざかるような場合であっても、本発明に係る「近づいている」に含まれる場合がある。第2判定手段は、例えば電動機のトルクが、発生領域に極めて近い領域にあるか否かを判定することで、電動機のトルクが発生領域に近づいているか否かを判定する。尚、第2判定手段による判定は、上述した第1判定手段による判定と相前後して行われてもよいし、同時に行われてもよい。
電動機のトルクが発生領域に近づいていると判定された場合には、予備回避手段によって予備回避制御が行われ、上述した回避制御に先立ち、内燃機関の動作点が予備的に変更される。具体的には、予備回避手段は、後に行われることになるであろう回避制御における内燃機関の運転状態の変化が小さくなるように、内燃機関の動作点を変更する。尚、ここでの「内燃機関の運転状態」とは、回転数やトルク等の内燃機関に対応するパラメータの総称であり、急激に変化することで、運転者に対する違和感を生じさせてしまうものを指している。
例えば、上述したように、内燃機関の回転数を増加させると共に出力トルクを減少させるような回避制御が行われる場合を考える。この場合、予備回避手段は、電動機のトルクが発生領域に近づいていると判定されると、内燃機関の回転数をわずかに増加させると共に出力トルクをわずかに減少させるような予備回避制御を行う。このようにすれば、回避制御における内燃機関の回転数及び出力トルクの変化を小さくすることができる。即ち、予め内燃機関の運転状態を変化させておいた分、回避制御における変化を小さくできる。
ここで仮に、上述した予備回避制御が行われなかったとすると、回避制御における内燃機関の回転数及び出力トルクの変化が比較的大きなものとなってしまう場合がある。このような内燃機関の運転状態の急激な変化は、ハイブリッド車両の運転者に対して少なからず悪影響を及ぼす。具体的には、内燃機関の回転数及び出力トルクの変化が大きいと、運転者はエンジンの急激な吹け上がりに違和感を覚え、結果的にドライバビリティが低下してしまう。
ちなみに、このような違和感への対策としては、予めエンジンの動作点を変化させておくことが考えられる。しかしながら、このような制御を常時行ってしまうと、内燃機関の動作点が最適燃費動作線から長期間外れてしまうことになるので、燃費が大幅に悪化してしまう。
しかるに本発明では、電動機のトルクが発生領域に近づいていると判定された場合に、予備回避制御が行われる。即ち、予備回避制御は常時行われる訳ではなく、後に回避制御が行われる可能性が高いと判断された時点で開始される。よって、回避制御に起因する運転者の違和感を確実に抑制すると共に、内燃機関の動作点が最適燃費動作線から外れてしまう期間を短いものとすることができる。従って、回避制御による歯打ち音の防止、並びに回避制御に伴うドライバビリティの悪化防止及び燃費の悪化防止を全て実現させることができる。
以上説明したように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、歯打ち音の回避制御に起因するドライバビリティの低下を好適に抑制することが可能である。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の一態様では、前記第2判定手段は、前記電動機のトルクが前記発生領域の周辺において所定の幅を有するように設定された予備回避領域である場合に、前記電動機のトルクが前記発生領域に近づいていると判定する。
この態様によれば、発生領域の周辺に、所定の幅を有する予備回避領域が設定される。尚、ここでの「所定の幅」は、予備回避制御を行うべき各種条件によって決定されるものであり、比較的早い段階で予備回避制御を行う場合には広く、逆に早い段階での予備制御を行わない場合には狭くされる。
本態様では、電動機のトルクが予備回避領域である場合に、電動機のトルクが発生領域に近づいていると判定される。即ち、電動機のトルクが予備回避領域である場合に、予備回避手段による予備回避制御が行われる。予備回避領域を設定すれば、予備回避制御を行うタイミングを的確且つ容易に設定できる。従って、回避制御に伴うドライバビリティの悪化防止及び燃費の悪化防止を、より確実に実現することができる。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記予備回避手段は、前記予備回避領域の前記発生領域側の第1境界における前記電動機のトルク及び前記予備回避領域の前記発生領域側とは反対側の第2境界における前記電動機のトルクの差を、前記予備回避領域における前記電動機のトルク変化率で除した値が、前記第1境界における前記内燃機関の回転数及び前記第2境界における前記内燃機関の回転数の差を、前記予備回避領域における前記内燃機関の回転数の変化率で除した値より大きくなるように前記予備回避制御を行う。
この態様によれば、予備回避制御が行われる際に、予備回避領域の発生領域側の第1境界(言い換えれば、予備回避領域と発生領域との境界)における電動機のトルク及び予備回避領域の発生領域側とは反対側の第2境界(言い換えれば、予備回避領域と発生領域ではない他の領域との境界)における電動機のトルクの差を、予備回避領域における電動機のトルク変化率で除した値(以下、適宜「トルク算出値」と称する)と、第1境界における内燃機関の回転数及び第2境界における内燃機関の回転数の差を、予備回避領域における内燃機関の回転数の変化率で除した値(以下、適宜「回転数算出値」と称する)とが計算され、トルク算出値が回転数算出値より大きくなるように予備回避制御が行われる。具体的には、例えば「トルク算出値」>「回転数算出値」を満たすような内燃機関の回転数が決定され、決定された回転数となるように内燃機関が制御される。
本発明に係るハイブリッド車両では、例えば低温時等において内燃機関のフリクションが増大し、内燃機関の回転数の遷移が、電動機のトルクの遷移に対して遅れてしまう場合がある。この場合、仮に内燃機関の回転数の遷移の遅れを考慮せずに予備回避制御を行ってしまうと、予備回避制御のタイミングも同様に遅れてしまい、回避制御に伴うドライバビリティの悪化防止及び燃費の悪化防止、加えて回避制御による歯打ち音の防止までもが実現困難となってしまう。
しかるに本態様では、上述したように、トルク算出値及び回転数算出値を用いて予備回避制御が行われるため、上述した不都合を確実に回避することができる。従って、回避制御による歯打ち音の防止、並びに回避制御に伴うドライバビリティの悪化防止及び燃費の悪化防止を全て確実に実現させることができる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
ハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 エンジンの一断面構成を例示する模式図である。 実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。 実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。 実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の具体的な制御動作を示すグラフ(その1)である。 実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の具体的な制御動作を示すグラフ(その2)である。 予備回避制御における制御値の決定方法を概念的に示すグラフである。 低温時におけるエンジン回転数の遷移遅延を示すグラフである。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
先ず、本実施形態に係るハイブリッド車両の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、ハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、本実施形態に係るハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置10、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13、車速センサ14及びECU100を備えて構成されている。
ECU100は、CPU、ROM及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両1における各種制を実行可能に構成されている。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して、後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する。また、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換して、バッテリ12に供給することが可能な不図示のインバータを含んでいる。即ち、PCU11は、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された電力制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する充電可能な蓄電手段である。
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、入力軸400、ロック機構500、MG2リダクション機構600及び減速機構700を備える。
エンジン200は、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ガソリンエンジンである。ここで、図3を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、エンジン200の一断面構成を例示する模式図である。
尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関の構成は、エンジン200のものに限定されず各種の態様を有してよい。また、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図3においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
図3において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介して、クランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転数NEが算出される構成となっている。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度(即ち、上述したアクセル開度Ta)に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出される排気中のNOx(窒素酸化物)を還元すると同時に、排気中のCO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)を酸化可能に構成された触媒装置である。尚、触媒装置の採り得る形態は、このような三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。これら空燃比センサ217及び水温センサ218は、夫々ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比及び冷却水温は、夫々ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
図2に戻り、モータジェネレータMG1は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機である。
モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1よりも体格の大きい、本発明に係る「電動機」の一例たる電動発電機であり、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。
尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、他の構成を有していてもよい。
動力分割機構300は、本発明に係る「動力伝達機構」の一例たる複合型遊星歯車機構である。動力分割機構300は、中心部に設けられた、サンギアS1と、サンギアS1の外周に同心円状に設けられた、リングギアR1と、サンギアS1とリングギアR1との間に配置されてサンギアS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC1とを備える。
ここで、サンギアS1は、モータジェネレータMG1のロータに、その回転軸を共有する形で連結されており、その回転速度はMG1の回転速度たるMG1回転速度Nmg1と等価である。また、リングギアR1は、減速機構700及びMG2リダクション機構600の後述するリングギアR2に連結されており、その回転速度は、駆動軸の回転速度たる出力回転速度Noutと等価である。更に、キャリアC1は、エンジン200のクランク軸に連結された入力軸400と連結されており、その回転速度は、エンジン200の機関回転速度Neと等価である。
MG2リダクション機構600は、動力分割機構300と同様の遊星歯車機構である。MG2リダクション機構600は、中心部に設けられた、サンギアS2と、サンギアS2の外周に同心円状に設けられた、リングギアR2と、サンギアS2とリングギアR2との間に配置されてサンギアS2の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC2とを備えており、サンギアS2にモータジェネレータMG2のロータが連結された構成を有する。
ここで、MG2リダクション機構600のリングギアR2は、先に述べたように動力分割機構300のリングギアR1と連結され、車軸と一義的な回転状態を呈する。また、キャリアC2は、固定要素に回転不能に固定されている。従って、残余の一回転要素たるサンギアS2に固定されたモータジェネレータMG2には、駆動軸の回転がMG2リダクション機構600を構成する各ギアのギア比に応じて定まる減速比に応じて減速された形で伝達される。また、MG2リダクション機構600は、このように単なる減速ギア機構であり、MG2リダクション機構600と動力分割機構300とによって規定される複合型遊星歯車機構は、回転二自由度の差動機構を構築し、モータジェネレータMG2の回転速度たるMG2回転速度Nmg2は、車速Vに応じて一義的となる。
減速機構700は、車軸と一義的な回転状態を呈する駆動軸(符合省略)と、この駆動軸に連結された減速ギア(符合省略)と、デファレンシャル(符合省略)とを含むギア機構である。減速機構700により、各車軸の回転速度は所定のギア比に従って減速された状態で駆動軸に伝達される。この駆動軸には、先に述べたようにリングギアR1及びリングギアR2が連結されており、各リングギアが、車速Vと一義的な回転状態を呈する構造となっている。
尚、モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1及びエンジン200と異なり、駆動軸に対し、その出力トルクであるMG2トルクTmを作用させることができる。従って、モータジェネレータMG2は、駆動軸にトルクを付加してハイブリッド車両1の走行をアシストすることも、駆動軸からのトルクの入力により電力回生を行うことも可能である。モータジェネレータMG2の入出力トルクたるMG2トルクTmは、モータジェネレータMG1の入出力トルクたるMG1トルクTgと共に、PCU11を介してECU100により上位に制御される。
尚、ハイブリッド駆動装置10においては、図示破線枠A1及びA2に相当する部位に、レゾルバ等の回転センサが付設されており、検出部位の回転速度を検出可能な構成となっている。これら回転センサは、ECU100と電気的に接続された状態にあり、検出された回転速度は、夫々ECU100に対し一定又は不定の周期で送出されている。補足すると、図示破線枠A1に相当する部位の回転速度とは、即ちMG2回転速度Nmg2であり、図示破線枠A2に相当する部位の回転速度とは、即ちMG1回転速度Nmg1である。
動力分割機構300は、上述した構成の下で、エンジン200から入力軸400に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1によってサンギアS1及びリングギアR1に所定の比率(各ギア相互間のギア比に応じた比率)で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能である。この際、動力分割機構300の動作を分かり易くするため、リングギアR1の歯数に対するサンギアS1の歯数としてのギア比ρを定義すると、エンジン200からキャリアC1に対しエンジントルクTeを作用させた場合に、サンギアS1に作用するトルクTesは下記(1)式により、また駆動軸に現れるエンジン直達トルクTerは下記(2)式により、夫々表される。
Tes=−Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
本実施形態に係る動力分割機構300は、機械的なギア機構であるから、回転要素である各ギアは、夫々その回転方向にバックラッシュ等のガタを有する構成となっている。このようなガタは、一方で回転要素の円滑な動作を促し得る反面、他方で歯打ち音と称される騒音の要因となる。
より具体的には、動力分割機構300は、入力軸400を介して起振源たるエンジン200と連結されており、エンジン200を起振源とする物理振動は、入力軸400を介して動力分割機構300の各回転要素に伝達される。ここで、各回転要素に、係る物理振動を抑え得るトルクが作用していれば、係る物理振動が歯打ち音を発生させることはない。従って、基本的にエンジン200に対し反力トルクを与えるモータジェネレータMG1に対応するサンギアS1は、この種の歯打ち音の発生源とはなり難い。
ところが、駆動軸に連結され、比較的制御上の独立性を保つモータジェネレータMG2は、例えば極端な場合として、エンジントルクTeの直達成分たる直達トルクTerのみでドライバ要求トルクを賄い得る運転条件においては、非稼働状態又は補機類駆動のための比較的小規模の電力回生状態を採り得る。例えば、このようにMG2トルクTmがゼロトルク付近にある場合、エンジン200を起振源とする物理振動は、例えばリングギアR1を、そのガタの範囲で振動させ、歯打ち音を発生させる可能性がある。このような歯打ち音は、ハイブリッド車両1のドライバビリティを低下させる要因となる。そこで、ハイブリッド車両1では、ECU100により実行される歯打ち音抑回避制御により、係る歯打ち音によるドライバビリティの低下が抑制される構成となっている。
尚、本発明に係る「動力伝達機構」に係る実施形態上の構成は、動力分割機構300のものに限定されない。例えば、本発明に係る動力伝達機構は、複数の遊星歯車機構が組み合わされた複合型遊星歯車機構であってもよい。
ロック機構500は、例えば湿式多板型クラッチ機構として構成されている。ロック機構500は、モータジェネレータMG1の回転軸に連結された第1のクラッチ板と、固定要素に連結された第2のクラッチ板を備えており、これらクラッチ板の係合状態が、図示せぬ油圧制御機構により制御される構成となっている。この際、クラッチ板同士が係合した状態では、モータジェネレータMG1は回転不能にロックされ、所謂MG1ロックと称される状態が実現される。一方これらクラッチ板同士が解放された状態では、モータジェネレータMG1は自由に回転可能である。尚、モータジェネレータMG1は、動力分割機構300のサンギアS1に連結されており、モータジェネレータMG1をロックすることは、サンギアS1をロックすることと等価である。即ち、ロック機構500のクラッチ板同士が相互に係合すると、サンギアS1は本発明に係るロック状態となり、クラッチ板同士が解放されると、サンギアS1は本発明に係る非ロック状態となる。
尚、ロック機構500は、実践的態様の一例に過ぎず、例えば電磁ドグクラッチ機構や電磁カムロック機構等他の係合装置であってもよい。
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置であるECU100の具体的な構成について、図4を参照して説明する。ここに図4は、ECUの構成を示すブロック図である。
図4において、ECU100は、予備回避判定部110、回避判定部120、予備回避制御部130及び回避制御部140を備えて構成されている。
予備回避判定部110は、本発明の「第2判定手段」の一例であり、モータジェネレータMG2のトルクが、予備回避制御を行うべき予備回避領域であるか否かを判定する。予備回避判定部110には、例えばMG2のトルクに対応する閾値が予め記憶されており、入力されたMG2のトルクが閾値以内となっているか否かによって、予備回避制御を行うべきか否かを判定する。
回避判定部120は、本発明の「第1判定手段」の一例であり、モータジェネレータMG2のトルクが、回避制御を行うべき発生領域(即ち、歯打ち音が発生してしまう領域)であるか否かを判定する。回避判定部120には、例えばMG2のトルクに対応する閾値が予め記憶されており、入力されたMG2のトルクが閾値以内となっているか否かによって、回避制御を行うべきか否かを判定する。
予備回避制御部130は、本発明の「予備回避手段」の一例であり、予備回避判定部110においてMG2のトルクが予備回避領域であると判定された場合に、回避制御に先立って予備回避制御を行う。予備回避制御部130は、例えばエンジン200の挙動を制御することで予備回避制御を行う。予備回避制御の具体的な処理については後に詳述する。
回避制御部140は、本発明の「回避手段」の一例であり、回避判定部120においてMG2のトルクが回避領域であると判定された場合に、歯打ち音を抑制するための回避制御を行う。回避制御部140は、例えばエンジン200の挙動を制御することで回避制御を行う。回避制御の具体的な処理については後に詳述する。
尚、ECU100は、上述した各手段を含んで構成された一体の電子制御ユニットであり、上記各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
次に、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作について、図5を参照して説明する。ここに図5は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5において、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置10の動作時には、先ずモータジェネレータMG2のトルクが検出され、予備回避判定部110に入力される(ステップS01)。MG2のトルクは、例えばMG2に対して出力するように指示されている指示トルク値として検出することができる。
MG2のトルクが予備回避判定部110に入力されると、MG2のトルクが予備回避領域であるか否かが判定される(ステップS02)。即ち、現在のMG2のトルクの値が、予備回避制御を行うべき値であるか否かが判定される。予備回避領域は、歯打ち音が発生してしまう発生領域(例えば、ゼロトルクを含む領域)を含み、発生領域より所定の幅だけ広い領域として設定される(図6参照)。予備回避領域の幅は、例えばエンジン、MG1及びMG2等の各動力要素や、動力分割機構300の構成等に応じて、理論的、実験的或いは経験的に求められ設定されている。
MG2のトルクが予備回避領域ではないと判定されると(ステップS02:NO)、ハイブリッド車両の制御装置による処理は終了する。一方で、MG2のトルクが予備回避領域であると判定されると(ステップS02:YES)、回避判定部120において、MG2のトルクが回避領域であるか否かが判定される(ステップS03)。即ち、現在のMG2のトルクの値が、回避制御を行うべき値であるか否かが判定される。
MG2のトルクが回避領域ではないと判定されると(ステップS03:NO)、予備回避制御部130によって予備回避制御が行われる(ステップS04)。即ち、MG2のトルクが予備回避領域には含まれるものの回避領域ではない場合には、予備回避制御が行われる。一方で、MG2のトルクが回避領域であると判定されると(ステップS03:YES)、回避制御部140によって回避制御が行われる(ステップS05)。
以下では、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によって行われる予備回避制御及び回避制御について、図6から図9を参照して詳細に説明する。ここに図6及び図7は夫々、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の具体的な制御動作を示すグラフである、また図8は、予備回避制御における制御値の決定方法を概念的に示すグラフである。
図6において、MG2のトルクは、TmAとなるまでは予備回避領域に入っていない状態である。このため、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による制御(以下、適宜「本制御」と称する)では、MG2のトルクがTmAとなるまでは、エンジン200の回転数及びトルクが最適燃費動作線(図中の破線参照)上となるように制御される(図中の実線参照)。
MG2のトルクは、TmAとなりTmBとなるまでは、予備回避領域に入っている状態である。このため、MG2のトルクがTmAとなりTmBとなるまでは、予備回避制御が行われる。予備回避制御では、エンジン200の回転数が、NeAからNeBまで徐々に増大される。ここで、回転数NeAは、MG2のトルクTmAに対応する最適燃費動作線上の点であり、回転数NeBは、後述する回避制御におけるエンジン200の回転数の急激な増大が、ハイブリッド車両1の運転者に対して違和感を与えないように設定された値である。即ち、回避制御における上昇後のエンジン回転数とNeBとの差は、運転者に違和感を与えないような回転数差である。
このように、予備回避制御では、MG2のトルクが発生領域に近づくにつれて、エンジン200の回転数が徐々に増大させられる。また、エンジン200の回転数の増大に伴い、エンジン200のトルクは最適燃費動作線を下回るように制御される。
MG2のトルクは、TmBとなりTmCとなるまでは、回避領域に入っている状態である。このため、MG2のトルクがTmBとなりTmCとなるまでは、歯打ち音を抑制するための回避制御が行われる。回避制御では、エンジン200の回転数が一時的に大きく増大され、エンジン200のトルク変動が小さくされる。これにより、エンジン200の脈動トルクに起因する歯打ち音の発生を効果的に抑制することが可能となる。
ここで特に、本制御では、回避制御に先立って上述した予備回避制御が行われているため、回避制御におけるエンジン200の回転数の急激な増大によって、ハイブリッド車両1の運転者に違和感が生じてしまうことを防止できる。即ち、予めエンジン200の回転数がNeBまで高められているため、回避制御によってエンジン200の回転数が急激に増大したとしても、運転者は吹け上がりの違和感を全く或いは殆ど感じない。よって、歯打ち音の回避制御に起因するドライバビリティの低下を防止することができる。
尚、このような効果は、図中の点線で示す比較例に係る制御においても得ることが可能である。しかしながら、この比較例に係る制御では、エンジン200の動作点が最適燃費動作線から離れてしまう期間が長いため、ハイブリッド車両1における燃費の悪化を招いてしまう。これに対し本制御では、予備回避制御を行うことによって、燃費の悪化を最小限に抑えつつ、確実にドライバビリティの低下を防止することができる。即ち、回避制御による歯打ち音の抑制、並びに燃費の悪化防止及びドライバビリティの低下防止を全て実現することができる。
MG2のトルクは、TmCとなると回避領域を抜け、その後TmDとなるまで予備回避領域に入っている状態となる。このため、MG2のトルクがTmCとなると、回避制御は終了し、エンジンの回転数がNeCまで低下させられる。そして、MG2のトルクがTmCからTmDの間は、予備回避制御が行われ、エンジン200の回転数及びトルクが、それぞれ最適燃費動作線に徐々に近づくように制御される。MG2のトルクが予備回避領域を脱するTmDとなると、エンジン200の回転数は、最適燃費動作線上のNeDとなる。
図7において、上述した本制御を、横軸がエンジン200の回転数で、縦軸がエンジン200のトルクであるグラフ上で見ると、図6でも述べたように、MG2のトルクがゼロトルク付近で発生する歯打ち音を確実に防止しつつ、できるだけ最適燃費動作線上を移動していることが分かる。尚、図中の本制御と比較例に係る制御との差は、図8に示すようなリニアに変化する調整値αによって表すことができる。
図8において、NVラインは、歯打ち音回避ラインへと移行しても、エンジン200の急激な吹け上がりによる違和感を防止できるラインである。また、NV’ラインは、最適燃費動作線上に位置するNVラインと同じ傾きを持ったラインである。調整値αは、NVライン及びNV’ライン間でリニアに変化する。
本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置で更に、ハイブリッド駆動装置10の温度変化にも対応した制御が行われている。以下では、予備回避制御における目標エンジン回転数の決定方法について、図9を参照して説明する。ここに図9は、低温時におけるエンジン回転数の遷移遅延を示すグラフである。
図9において、通常時のエンジン200のトルクは、図の実線で示すような値となる。即ち、MG2のトルクがTmAの際にNeAとなり、TmBの際に歯打ち音発生閾値であるNeBとなる。一方で、低温時のエンジン200のトルクは、エンジン200のフリクションの増大等によって遷移が遅れる。このため、MG2のトルクがTmBの際にNeBより低いNeB’となる。この場合、MG2のトルクが発生領域であるTmBとなったとしても、エンジン200の回転数は歯打ち音発生閾値(即ち、NeB)より低い値(即ち、NeB’)となっているため、仮に何らの対策も施さなければ、MG2のトルクがTmBとなってから、エンジン200の回転数が歯打ち音発生閾値を超えるまでの期間に、歯打ち音が発生してしまうことになる。
本実施形態では、上述したような問題を解決するために、以下の数式1を満足するような値として目標エンジン回転数を決定している。
(TmA−TmB)/Tm変化率 > (NeA−NeB)/Ne変化率 ・・・(1)
尚、Tm変化率は、TmAからTmBまでの間にMG2のトルクが変化する割合を示しており、Ne変化率は、NeAからNeBまでの間にエンジン200の回転数が変化する割合を示している。
上述した数式1によって求められた目標エンジン回転数を用いれば、MG2のトルクが発生領域となる前に、エンジン200の回転数を確実にNVライン(即ち、違和感を生じさせないライン)に待機させることができる。即ち、エンジン200の回転数の遷移が遅れるような場合であっても、好適に予備回避制御を行うことができる。
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、回避制御に先立って予備回避制御を行うことで、燃費の悪化を抑えつつ、回避制御に起因するドライバビリティの低下を抑制することが可能である。従って、回避制御による歯打ち音の抑制、並びに燃費の悪化防止及びドライバビリティの低下防止を全て実現することができる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…ハイブリッド車両、10…ハイブリッド駆動装置、11…PCU、12…バッテリ、13…アクセル開度センサ、14…車速センサ、100…ECU、110…予備回避判定部、120…回避判定部、130…予備回避制御部、140…回避制御部、200…エンジン、300…動力分割機構、310…サンギア軸、S1,S2…サンギア、C1,C2…キャリア、R1,R2…リングギア、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、400…入力軸、500…ロック機構、600…MG2リダクション機構、700…減速機構

Claims (3)

  1. 内燃機関及び電動機を含む動力要素と、
    車軸に連結された駆動軸と、
    前記動力要素と前記駆動軸との間でトルクを伝達可能とされた動力伝達機構と
    を備えたハイブリッド車両を制御する装置であって、
    前記電動機のトルクが、前記動力伝達機構におけるガタに起因する歯打ち音を発生させるものとして設定された発生領域であるか否かを判定する第1判定手段と、
    前記電動機のトルクが前記発生領域であると判定された場合に、前記内燃機関のトルク変動が小さくなるように、前記内燃機関の動作点を変更する回避制御を行う回避手段と、
    前記電動機のトルクが、前記発生領域に近づいているか否かを判定する第2判定手段と、
    前記電動機のトルクが前記発生領域に近づいていると判定された場合に、前記回避制御における前記内燃機関の運転状態の変化が小さくなるように、前記内燃機関の動作点を予備的に変更する予備回避制御を行う予備回避手段と
    を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 前記第2判定手段は、前記電動機のトルクが前記発生領域の周辺において所定の幅を有するように設定された予備回避領域である場合に、前記電動機のトルクが前記発生領域に近づいていると判定することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  3. 前記予備回避手段は、前記予備回避領域の前記発生領域側の第1境界における前記電動機のトルク及び前記予備回避領域の前記発生領域側とは反対側の第2境界における前記電動機のトルクの差を、前記予備回避領域における前記電動機のトルク変化率で除した値が、前記第1境界における前記内燃機関の回転数及び前記第2境界における前記内燃機関の回転数の差を、前記予備回避領域における前記内燃機関の回転数の変化率で除した値より大きくなるように前記予備回避制御を行うことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012106664A (ja) * 2010-11-18 2012-06-07 Toyota Motor Corp エンジンの駆動装置および駆動方法
US10464576B2 (en) * 2016-09-29 2019-11-05 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Control device for hybrid vehicle
JP7489290B2 (ja) 2020-10-20 2024-05-23 日産自動車株式会社 車両の制御方法及び車両の制御システム

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