以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
先ず、本実施形態に係るハイブリッド車両の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、ハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、本実施形態に係るハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置10、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13、車速センサ14及びECU100を備えて構成されている。
ECU100は、CPU、ROM及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両1における各種制御を実行可能に構成されている。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する。また、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給することが可能な不図示のインバータを含んでいる。即ち、PCU11は、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された電力制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する充電可能な蓄電手段である。
アクセル開度センサ13はハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、主にエンジン200、オイルポンプ250、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、入力軸400、駆動軸500、減速機構600、第1クラッチ710及び第2クラッチ720を備えて構成されている。
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成されている。ここで、図3を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、エンジンの一断面構成を例示する模式図である。
尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関の構成は、エンジン200のものに限定されず各種の態様を有してよい。また、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図3においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
図3において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介して、クランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転数NEが算出される構成となっている。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度(即ち、上述したアクセル開度Ta)に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出される排気中のNOx(窒素酸化物)を還元すると同時に、排気中のCO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)を酸化可能に構成された触媒装置である。尚、触媒装置の採り得る形態は、このような三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。これら空燃比センサ217及び水温センサ218は、夫々ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比及び冷却水温は、夫々ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
図2に戻り、オイルポンプ250は、ハイブリッド駆動装置10の各部に潤滑油を供給する。オイルポンプ70は、入力軸400を介して伝達された動力にて駆動される。
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「電動機」の一例たる電動発電機であり、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、他の構成を有していてもよい。
エンジン200及びMG1と駆動軸500との間に設けられる動力分割機構300は、本発明の「動力伝達機構」の一例であり、ステップドピニオン式のプラネタリギヤとして構成されている。動力分割機構300は、中心部に設けられた本発明の「第1回転要素」の一例たる第1サンギヤS1と、本発明の「第2回転要素」の一例たる第2サンギヤS2と、第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2の外周に同心円状に設けられた本発明の「第3回転要素」の一例たるリングギヤR1と、第1サンギヤS1とリングギヤR1との間に配置されて第1サンギヤS1の外周を自転しつつ公転する第1ピニオンギヤP1と、第2サンギヤS2とリングギヤR1との間に配置されて第2サンギヤS2の外周を自転しつつ公転する第2ピニオンギヤP2と、これら各ピニオンギヤの回転軸を軸支する本発明の「第4回転要素」の一例たるキャリアC1とを備えている。
ここで、第1サンギヤS1は、第1クラッチ710及びサンギヤ軸310を介してMG1のロータRT1に連結されている。また、第2サンギヤS2は、第2クラッチ720及びサンギヤ軸310を介してMG1のロータRT1に連結されている。第1クラッチ及び第2クラッチの各々は、例えばドグクラッチとして構成されており、係合及び解放されることにより動力分割機構300及びMG1間の動力伝達を制御する。具体的には、第1クラッチ710が係合される場合、動力分割機構300及びMG1間の動力伝達は、第1サンギヤ710を介して行われる。一方で、第2クラッチ720が係合される場合、動力分割機構300及びMG1間の動力伝達は、第2サンギヤ720を介して行われる。これら第1クラッチ710及び第2クラッチ720によって実現される各動力伝達モードについては、後に詳しく説明する。
リングギヤR1は、駆動軸500及び減速機構600を介してMG2のロータRT2に結合されている。キャリアC1は、エンジン200の先に述べたクランクシャフト205に連結された入力軸400と連結されており、その回転数は、エンジン200の機関回転数と等価である。
駆動軸500は、ハイブリッド車両1の駆動輪たる右前輪FR及び左前輪FLを夫々駆動するドライブシャフトSFR及びSFL(即ち、これらドライブシャフトは、本発明に係る「車軸」の一例である)と、各種減速ギヤ及び差動ギヤを含む減速装置としての減速機構600を介して連結されている。
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置10によって実現される動力伝達モードについて、図4から図6を参照して具体的に説明する。ここに図4は、クラッチの係合状態と実現される動力伝達モードとの関係を示す係合表である。また図5は、第1の動力伝達モードを示す共線図であり、図6は、第2の動力伝達モードを示す共線図である。
図4及び図5において、ハイブリッド駆動装置10における第1クラッチ710を係合すると共に、第2クラッチ720を解放することで、第1の動力伝達モード(即ち、第1サンギヤS1を介して動力伝達を行うモード)が実現される。第1サンギヤS1は、図5の横軸比率(ギヤ比に対応)から分かるように、第2サンギヤS2と比べて歯数が多い。このため、第1の動力伝達モードによれば、動力分割機構300に連結されるMG1の回転数が小さくなる。よって、MG1における動力損失が低減される。また、動力分割機構300の作動回転も小さくなる。よって、動力分割機構300における損失も低減される。第1の動力伝達モードは、MG1への負荷が比較的小さい軽負荷時に適したモードであると言える。
図4及び図6において、ハイブリッド駆動装置10における第1クラッチ710を解放すると共に、第2クラッチ720を係合することで、第2の動力伝達モード(即ち、第2サンギヤS2を介して動力伝達を行うモード)が実現される。第2サンギヤS2は、図6の横軸比率から分かるように、第1サンギヤS1と比べて歯数が少ない。このため、第2の動力伝達モードによれば、動力分割機構300に連結されるMG1のトルク分担率が小さくなる。よって、MG1に対して要求されるトルクが小さくなる。また、エンジン200の直達トルクが大きくなるため、エンジン200に対して要求されるトルクも小さくなる。第2の動力伝達モードは、MG1への負荷が比較的大きい高負荷時に適したモードであると言える。
ここで、上述した各動力伝達モードにおけるMG1のトルク及び回転数の大小関係について、図7を参照して、より詳細に説明する。ここに図7は、各動力伝達モードにおけるMG1のトルク及び回転数の関係を示す対比表である。
図7において、リングギヤR1の歯数に対する第1サンギヤS1の歯数としてのギヤ比をρ1、リングギヤR1の歯数に対する第2サンギヤS2の歯数としてのギヤ比をρ2、エンジン200のトルクをTeと定義する。この場合、第1の動力伝達モードにおけるMG1のトルクは、ρ1/(1+ρ1)×Teという式で表される。また、第2の動力伝達モードにおけるMG2のトルクは、ρ2/(1+ρ2)×Teという式で表される。ここで、図5及び図6にも示したように、ρ1>ρ2であるため、第1の動力伝達モードにおけるMG1のトルクの方が、第2の動力伝達モードにおけるMG1のトルクより大きくなる。
更に、エンジン200の回転数をNe、リングギヤR1の回転数をNrと定義する。この場合、第1の動力伝達モードにおけるMG1の回転数は、(1+ρ1)/ρ1×Ne−1/ρ1×Nrという式で表される。また、第2の動力伝達モードにおけるMG1の回転数は、(1+ρ2)/ρ2×Ne−1/ρ2×Nrという式で表される。ここで、ρ1>ρ2であるため、第1の動力伝達モードにおけるMG1の回転数の方が、第2の動力伝達モードにおけるMG1の回転数より小さくなる。
尚、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置10は、上述した2つの動力伝達モード以外のモードを実現可能とされてもよい。具体的には、第1クラッチ710及び第2クラッチ720が共に係合されるモードや、第1クラッチ710及び第2クラッチ720が共に解放されるモードが実現可能とされてよい。
次に、上述したハイブリッド車両1を制御するハイブリッド車両の制御装置について、複数の実施形態を挙げて説明する。
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の一例であるECU100の具体的な構成について、図8を参照して説明する。ここに図8は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図8において、ECU100は、温度検出部110と、モード決定部120と、モード切替部130とを備えて構成されている。
温度検出部110は、本発明の「検出手段」の一例であり、MG1の温度を検出する。温度検出部110は、例えば定期的に或いは所定のタイミングでMG1の温度を検出する。温度検出部110において検出されたMG1の温度の値は、モード決定部120へと出力される。
モード決定部120は、本発明の「制御手段」の一例であり、温度検出部110において検出されたMG1の温度に基づいて、実現すべき動力伝達モード(即ち、第1の動力伝達モード又は第2の動力伝達モードのいずれか)を決定し、モード切替部130を制御する。モード判定部120は、例えば実現すべき動力伝達モードを判定するための閾値や数式、マップ等を記憶している。
モード切替部130は、本発明の「切替手段」の一例であり、モード決定部120において選択された動力伝達モードを実現するように動力分割機構300を制御する。具体的には、モード切替部130は、動力分割機構300における第1クラッチ710、第2クラッチ720の係合状態を夫々制御する。これにより動力分割機構300における動力伝達経路が切替えられ、動力伝達モードが変化することとなる。
尚、ECU100は、上述した各部位を含んで構成された一体の電子制御ユニットであり、上記各部位に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記部位の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各部位は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
次に、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による具体的な制御及びその効果について、図9を参照して説明する。ここに図9は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図9において、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の初期動作時には、第1の動力伝達モードが実現されている(即ち、第1クラッチ710が係合され、第2クラッチ720が解放されている)ものとして説明する(ステップS101)。尚、初期動作時に第2の動力伝達モードが実現されている場合には、図中のステップS106から処理を開始するようにすればよい。
第1の動力伝達モードが実現されている場合には、先ず温度検出部110によって、MG1の温度が検出される(ステップS102)。検出されたMG1の温度は、モード決定部120において、閾値T1以上であるか否かが判定される(ステップS103)。尚、ここでの閾値T1は、本発明の「第1閾値」の一例であり、第1の動力伝達モードを第2の動力伝達モードへと切替えるか否かを判定するための閾値として予め決定され、モード決定部120に記憶されている。
MG1の温度が閾値T1以上でない場合(ステップS103:NO)、第1の動力伝達モードは維持されたままとなり(ステップS104)、処理は終了する。一方で、MG1の温度が閾値T1以上である場合(ステップS103:YES)、モード決定部120は、第2の動力伝達モードを実現するようにモード切替部130を制御する。よって、モード切替部130は、第1クラッチ710を解放すると共に第2クラッチ720を係合する。この結果、第2の動力伝達モードが実現される(ステップS105)。
第2の動力伝達モードが実現された後には、再び温度検出部110によって、MG1の温度が検出される(ステップS106)。検出されたMG1の温度は、モード決定部120において、閾値T2以下であるか否かが判定される(ステップS107)。尚、ここでの閾値T2は、本発明の「第2閾値」の一例であり、第2の動力伝達モードを第1の動力伝達モードへと切替えるか否かを判定するための閾値として予め決定され、モード決定部120に記憶されている。閾値T2は、閾値T1より低い値とされている。
MG1の温度が閾値T2以下でない場合(ステップS107:NO)、第2の動力伝達モードは維持されたままとなり(ステップS108)、ステップS106移行の処理が繰り返される。一方で、MG1の温度が閾値T2以下である場合(ステップS107:YES)、モード決定部120は、第1の動力伝達モードを実現するようにモード切替部130を制御する。よって、モード切替部130は、第1クラッチ710を係合すると共に第2クラッチ720を解放する。この結果、第1の動力伝達モードが実現される(ステップS105)。
以上のように、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、MG1の温度が比較的高い場合に第2の動力伝達モードが実現され、MG1の温度が比較的低い場合に第1の動力伝達モードが実現される。
ここで本願発明者の研究によれば、MG1の温度が上昇すると、最大出力トルクが低下する可能性があることが判明している。即ち、高温となったMG1では、出力すべき要求トルクを出力できなくなるおそれがあることが判明している。MG1の温度上昇に起因してトルクが大きく低下すると、エンジン200の反力をMG1で十分にとりきることができず、駆動軸500に対して適切にトルクを伝達することが困難となってしまう。この結果、ハイブリッド車両1の運転効率が著しく低下してしまう。
これに対し、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置では、不都合を生じてしまう程にMG1が高温となっている場合には、MG1に対する要求トルクを小さくできる第2の動力伝達モードが実現される。よって、MG1の出力トルクが低下している場合であっても、エンジン200の反力を十分にとることができる。また、MG1への印加電流値が小さくなるため、発熱量が低下し、更なる温度上昇を抑制することができる。
一方で、MG1が高温でない場合には、回転数が小さくトルクの大きい第1の動力伝達モードが実現される。第1の動力伝達モードは、第2の動力伝達モードと比べて、MG1及び動力分割機構300における動力損失が少ない。よって、ハイブリッド車両の運転効率を高めることができる。
以上説明したように、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、MG1の温度に応じて適切な動力伝達モードが実現される。従って、技術的な不具合の発生を抑制しつつ、ハイブリッド車両1の運転効率を高めることが可能である。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について説明する。尚、第2実施形態は、上述した第1実施形態と比べて、一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の多くの点については概ね同様である。このため、以下では第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
先ず、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成について、図10を参照して説明する。ここに図10は、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置を示すブロック図である。
図10において、第2実施形態に係るECU100は、温度検出部110、モード決定部120、モード切替部130に加えて、勾配検出部140を備えて構成されている。
勾配検出部140は、例えば傾きセンサとして構成されており、ハイブリッド車両1が走行している道路の勾配を検出する。勾配検出部140において検出された勾配を示す値は、モード決定部120に出力される。
次に、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による具体的な制御及びその効果について、図11を参照して説明する。ここに図11は、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図11において、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の初期動作時には、第1の動力伝達モードが実現されているものとして説明する(ステップS201)。
第1の動力伝達モードが実現されている場合には、先ず勾配検出部140によって、ハイブリッド車両1が走行している道路の勾配が検出される(ステップS202)。検出された道路の勾配は、モード決定部120において、閾値G1以上であるか否かが判定される(ステップS203)。尚、ここでの閾値G1は、第1の動力伝達モードを第2の動力伝達モードへと切替えるか否かを判定するための閾値として予め決定され、モード決定部120に記憶されている。
道路の勾配が閾値G1以上でない場合(ステップS203:NO)、第1の動力伝達モードは維持されたままとなり(ステップS204)、処理は終了する。一方で、道路の勾配が閾値G1以上である場合(ステップS203:YES)、モード決定部120は、第2の動力伝達モードを実現するようにモード切替部130を制御する。よって、モード切替部130は、第1クラッチ710を解放すると共に第2クラッチ720を係合する。この結果、第2の動力伝達モードが実現される(ステップS205)。
第2の動力伝達モードが実現された後には、第1実施形態と同様に、温度検出部110によって、MG1の温度が検出される(ステップS206)。検出されたMG1の温度は、モード決定部120において、閾値T2以下であるか否かが判定される(ステップS207)。
MG1の温度が閾値T2以下でない場合(ステップS207:NO)、第2の動力伝達モードは維持されたままとなり(ステップS208)、ステップS206移行の処理が繰り返される。一方で、MG1の温度が閾値T2以下である場合(ステップS207:YES)、モード決定部120は、第1の動力伝達モードを実現するようにモード切替部130を制御する。よって、モード切替部130は、第1クラッチ710を係合すると共に第2クラッチ720を解放する。この結果、第1の動力伝達モードが実現される(ステップS209)。
以上のように、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、第1の動力伝達モードから第2の動力伝達モードへの切替が、ハイブリッド車両1が走行している道路の勾配に基づいて決定される。
ここで、ハイブリッド車両1が、第1の動力伝達モードで比較的勾配の大きい道路を走行する場合、MG1からMG2への電機パスが大きいことに起因して、MG1及びMG2が発熱し易くなる。これに対し、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、勾配の大きい場合に第2の動力伝達モードが実現されるため、MG1及びMG2の発熱を抑制することができる。具体的には、第1の動力伝達モードを第2の動力伝達モードへと切替えることにより、MG1及びMG2に印加する電流値を小さくすることができる。よって、インバータ内の損失が小さくでき、発熱量を低減できる。
以上説明したように、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、道路の勾配に応じて適切な動力伝達モードが実現される。従って、技術的な不具合の発生を抑制しつつ、ハイブリッド車両1の運転効率を高めることが可能である。
尚、第1の動力伝達モードから第2の動力伝達モードへの切替には、道路の勾配という条件に加えて、第1実施形態と同様にMG1の温度という条件を用いることもできる。即ち、道路の勾配が閾値G1以上でない場合であっても、MG1の温度が閾値T1以上である場合には、第1の動力伝達モードが第2の動力伝達モードへと切替えられるようにしてもよい。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について説明する。尚、第3実施形態は、上述した第1及び第2実施形態と比べて、一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の多くの点については概ね同様である。このため、以下では第1及び第2実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1及び第2実施形態と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
先ず、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成について、図12及び図13を参照して説明する。ここに図12は、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置を示すブロック図である。また図13は、第3実施形態に係るハイブリッド車両によって実現される動力伝達モードを示す係合表である。
図12において、第3実施形態に係るECU100は、温度検出部110、モード決定部120、モード切替部130に加えて、トルク検出部150を備えて構成されている。
トルク検出部150は、MG1及びMG2のトルクを夫々検出可能とされている。トルク検出部150において検出されたトルクを示す値は、モード決定部120に出力される。
図13に示すように、第3実施形態に係るモード切替部130は、第1の動力伝達モード及び第2の動力伝達モードに加えて、第3の動力伝達モードを実現可能とされている。モード切替部130は、第1クラッチ710及び第2クラッチ720を共に係合することで第3の動力伝達モードを実現する。
次に、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による具体的な制御及びその効果について、図14を参照して説明する。ここに図14は、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図14において、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の初期動作時には、EV走行(即ち、エンジン200が停止し、MG2からの動力によって走行している状態)が実現されていると共に、動力分割機構300において第1の動力伝達モードが実現されているものとして説明する(ステップS301)。
EV走行時に第1の動力伝達モードが実現されている場合には、先ずトルク検出部150によって、MG2のトルクが検出される(ステップS302)。検出されたMG2のトルクは、モード決定部120において、閾値T3以上であるか否かが判定される(ステップS303)。尚、ここでの閾値T3は、第1の動力伝達モードを第3の動力伝達モードへと切替えるか否かを判定するための閾値として予め決定され、モード決定部120に記憶されている。
MG2のトルクが閾値T3以上でない場合(ステップS303:NO)、第1の動力伝達モードは維持されたままとなり(ステップS304)、処理は終了する。一方で、MG2のトルクが閾値T3以上である場合(ステップS303:YES)、モード決定部120は、第3の動力伝達モードを実現するようにモード切替部130を制御する。よって、モード切替部130は、既に係合されている第1クラッチ710に加えて第2クラッチ720を係合する。この結果、第3の動力伝達モードが実現される(ステップS305)。
第3の動力伝達モードが実現された後には、トルク検出部150によって、MG1及びMG2のトルクが夫々検出される(ステップS306)。検出されたMG1のトルク及びMG2のトルクは、モード決定部120において、その合計値(即ち、MG1のトルク値+MG2のトルク値)が閾値T4以下であるか否かが判定される(ステップS307)。
MG1及びMG2のトルク合計値が閾値T4以下でない場合(ステップS307:NO)、第3の動力伝達モードは維持されたままとなり(ステップS308)、ステップS306移行の処理が繰り返される。一方で、MG1及びMG2のトルク合計値が閾値T4以下である場合(ステップS307:YES)、モード決定部120は、第1の動力伝達モードを実現するようにモード切替部130を制御する。よって、モード切替部130は、第2クラッチ720を解放する。この結果、第1の動力伝達モードが実現される(ステップS309)。
以上のように、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、EV走行時における第1の動力伝達モードから第2の動力伝達モードへの切替が、MG2のトルクに基づいて決定される。また、EV走行時における第3の動力伝達モードから第1の動力伝達モードへの切替が、MG1及びMG2のトルクに基づいて決定される。
ここで、第1の動力伝達モード中は、駆動に用いられるMG2に負荷が集中してしまうため、高負荷時に第1の動力伝達モードを実現しようとすると、MG2の体格を大きくせざるを得ない。これに対し、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、上述したように、MG2のトルクが大きくなった場合に、第3の動力伝達モードが実現される。よって、駆動トルクをMG1及びMG2で分担できるため、MG2に対する要求トルクを小さくすることができる。よって、MG2の体格が大きくなってしまうことを防止できる。また、同様の理由から、EV走行による駆動領域を拡大することができる。更には、動力分割機構300における作動回転がゼロとなるため、ピニオンの回転数が上限に達することに起因するEV走行領域の制限を緩和することができる。
以上説明したように、第3実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、MG1及びMG2のトルクに応じて適切な動力伝達モードが実現される。従って、技術的な不具合の発生を抑制しつつ、ハイブリッド車両1の運転効率を高めることが可能である。
尚、第3実施形態はEV走行時の制御に関するものであるが、EV走行時以外には第1実施形態や第2実施形態で説明したような、MG1の温度や道路の勾配に基づいた動力伝達モードの切替えが行われればよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。