JP2009001112A - ハイブリッド駆動装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイブリッド駆動装置において変速比を切り替える際に係合手段の係合時間を短縮化する。
【解決手段】動力分割機構300にはキャリア310及びリングギア340を共有する二種類の遊星歯車機構を有し、一方には第1のサンギア330が、また他方には第2のサンギア370が備わる。第1のサンギア330はMG1に連結されており、第2のサンギア370はドグクラッチ390に連結されている。ECU100は、オーバードライブ要求が有った場合、ドグクラッチ390の可動部392の回転が停止するようにMG1の目標回転速度Ngtagを算出する。一方、目標回転速度Ngtagの変化により、実回転速度Ngとの偏差に基づくMG1トルク指令値のフィードバック制御項Tgfbのうち比例項及び微分項と積分項との符号が相違した場合には、積分項がクリアされフィードバック制御項Tgfbが算出される。
【選択図】図7
【解決手段】動力分割機構300にはキャリア310及びリングギア340を共有する二種類の遊星歯車機構を有し、一方には第1のサンギア330が、また他方には第2のサンギア370が備わる。第1のサンギア330はMG1に連結されており、第2のサンギア370はドグクラッチ390に連結されている。ECU100は、オーバードライブ要求が有った場合、ドグクラッチ390の可動部392の回転が停止するようにMG1の目標回転速度Ngtagを算出する。一方、目標回転速度Ngtagの変化により、実回転速度Ngとの偏差に基づくMG1トルク指令値のフィードバック制御項Tgfbのうち比例項及び微分項と積分項との符号が相違した場合には、積分項がクリアされフィードバック制御項Tgfbが算出される。
【選択図】図7
Description
本発明は、内燃機関と電動機とを動力源として備える車両に搭載可能なハイブリッド駆動装置を制御するハイブリッド駆動装置の制御装置の技術分野に関する。
この種の装置として、変速態様を切り替えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたハイブリッド車両の駆動装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、
回転要素により構成される差動機構に動力源と出力部材と回転数制御機構とが連結された構成において、回転数制御機構により動力源と出力部材との間の回転数比を連続的に変化させる無段変速状態と、一の回転要素の回転を選択的に阻止することにより動力源が出力部材より低速で回転するオーバードライブ状態とを実現可能であるとされている。
回転要素により構成される差動機構に動力源と出力部材と回転数制御機構とが連結された構成において、回転数制御機構により動力源と出力部材との間の回転数比を連続的に変化させる無段変速状態と、一の回転要素の回転を選択的に阻止することにより動力源が出力部材より低速で回転するオーバードライブ状態とを実現可能であるとされている。
尚、エンジン回転数にモータ回転数を一致させるフィードバック項のゲインをゼロに設定する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、基準操作量をPID制御して変速するもので、積分項をリセットする信号を出力するものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
更には、新しいギア比にシフトさせる間は、シフトを禁止する技術も開示されている(例えば、特許文献4参照)。
更には、通常走行時のアクセル開度と低速走行時の仮想アクセル開度の切替に徐変制御を行うものも提案荒れている(例えば、特許文献5参照)。
無段変速状態からオーバードライブ状態への切り替えを行うための回転要素の回転阻止には、例えばドグクラッチ等の係合手段が使用される。この際、係合手段は、回転数制御機構として電動機等の回転数制御によりその係合時間が影響される。一方、この種の回転数制御には、目標値と実際値との偏差に基づいたPID制御等のフィードバック制御が適用されるが、係合手段を係合させるに際して目標回転数の急激な変化が生じると、積分項には過去の偏差の履歴が影響するため、その符号が微分項又は比例項と相違する事態が生じ、フィードバック項の絶対値が相対的に小さくなることがある。このようにフィードバック項が相対的に小さくなると、実際値が目標値に収束する時間が相対的に長くなるため、結局係合手段の係合時間が長くなる。即ち、従来の技術には、係合手段を迅速且つ正確に係合させることに実践上の困難が伴い易いといった技術的な問題点がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド駆動装置において変速状態を切り替える際に係合手段の係合に要する時間を短縮化することが可能なハイブリッド駆動装置の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置は、差動回転可能な複数の回転要素を備えた動力分配手段に、内燃機関の機関出力軸、車軸の回転に伴って回転可能な駆動軸、及び回転速度を連続変化させることにより前記機関出力軸と前記駆動軸との回転速度比を連続変化させることが可能な第1の電動機とが連結された構成を有し、前記駆動軸に動力を出力可能な第2の電動機と、前記複数の回転要素のうち一の回転要素に連結され、該一の回転要素の回転に伴って回転可能な可動部及び該可動部に対し相対的に接離可能な固定部を有すると共に、該可動部と該固定部とが係合した状態において該可動部の回転が阻止されることにより、前記回転速度比を所定値に固定することが可能な係合手段とを備えてなるハイブリッド駆動装置の制御装置であって、前記回転速度比を前記所定値に固定すべき旨の入力がなされた場合に、前記可動部の回転が停止するように前記第1の電動機の目標回転速度を設定する設定手段と、前記第1の電動機の実回転速度を特定する第1の特定手段と、前記実回転速度と前記目標回転速度との偏差に基づいて、該偏差に対応する比例項及び該偏差の時間微分値に対応する微分項のうち少なくとも一方と、該偏差の時間積分値に対応する積分項とを少なくとも含む、前記実回転速度を前記目標回転速度へ収束させるための前記第1の電動機の制御量を決定する決定手段と、前記少なくとも一方の符号と前記積分項の符号とが相違する場合に前記制御量に対する前記積分項の反映を制限する制限手段と、前記制御量に従って前記第1の電動機を制御する第1の制御手段と、前記可動部の回転が停止した状態において前記可動部と前記固定部とが係合するように前記係合手段を制御する第2の制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置によれば、その動作時には、例えばクランクシャフト等、内燃機関の機関出力軸と、例えばドライブシャフトやアクスルシャフト等の車軸に対し例えばデファレンシャルギア、ギア機構若しくはギア装置、例えば各種リダクションギア、ギア機構若しくはギア装置又は例えばプロペラシャフト等の動力伝達用回転軸を適宜介する等して、少なくとも車軸と一義的な関係を保って回転可能に連結される駆動軸との回転速度比(以下、この回転速度比を適宜「変速比」と称する)を、動力分配手段における複数の回転要素のうち一の回転要素の回転を係合手段により固定し阻止することにより実現可能な、例えば好適な一形態として高速定常走行用等、内燃機関の機関回転速度を駆動軸の回転速度未満の低回転領域とし得る所定値(以下、適宜「所定変速比」と称する)に固定すべき旨の入力がなされた場合に、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る設定手段によって、第1の電動機の目標回転速度が設定される。
ここで、「入力」とは、例えばドライバ等操作者が、変速比を当該所定変速比に固定すべき旨の、或いはハイブリッド車両を当該所定変速比で走行させる旨の意思を有する場合等に、例えば、ボタン、レバー、ツマミ、スイッチ或いは操作ダイアル等の各種操作手段を人為的に操作すること等により生じる物理的、機械的又は電気的な信号等を含み、好適な一形態として、このような人為的な操作とは無関係に、例えば車速、負荷又は要求出力等、ハイブリッド駆動装置を搭載するハイブリッド車両の各種運転条件、環境条件又は走行条件等に応じて、或いは、負荷又は要求出力等、ハイブリッド駆動装置の各種運転条件又は環境条件等に応じて、何らかの制御装置、コントローラ又はコンピュータシステム等による制御下で自動的に発せされるものを含む概念である。
このような入力がなされた場合、第1の電動機の目標回転速度は、例えば駆動軸の回転速度及び動力分配手段のギア比等に基づいて、係合手段を構成する可動部の回転を物理的に停止させるための回転速度として決定される。尚、このような入力がなされない場合、第1の電動機の目標回転速度は、好適な一形態として、例えば内燃機関が理論的に、実質的に又は現実的に最も高効率に動作し得るように、或いはハイブリッド駆動装置全体としてのエネルギ効率が最大となるように決定される。当該入力がなされた場合の目標回転速度を設定し得る限りにおいて、設定手段は更にこのような平常時の目標回転速度の設定を行ってもよい。
一方、本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1の特定手段によって、第1の電動機の実回転速度が特定される。本発明に係る「特定」とは、例えば、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に物理的数値又は物理的数値に対応する電気信号等として検出すること、予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択又は推定すること、それら検出された物理的数値若しくは電気信号又は選択若しくは推定された数値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従った論理演算や数値演算の結果として導出すること、或いはこのように検出、選択、推定又は導出された値等を単に電気信号等として取得すること等を包括する広い概念である。係る概念の範囲内において、第1の特定手段は、例えばレゾルバ等の各種回転検出手段から、検出された回転速度に対応する電気信号を取得すること等により実回転速度を特定してもよい。
他方、このように実回転速度が特定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る決定手段によって、設定された目標回転速度と特定された実回転速度との偏差に基づいて第1の電動機の制御量、例えばトルク指令値等が決定される。この際、決定手段は、比例項及び微分項のうち少なくとも一方、好適な一形態としては少なくとも比例項と、積分項とを含む形で当該制御量を決定する。尚、本発明に係る第1の電動機の制御量とは、上記少なくとも一方と積分項とを含む限りにおいて、実回転速度を目標回転速度に収束させるべく第1の電動機の駆動制御に供し得る物理量や電気信号等を包括する概念である。
制御量が決定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1の制御手段が、この決定された制御量に従って第1の電動機を制御する。その結果、第1の電動機の回転速度は、収束時間は別として経時的に目標回転速度へ収束する。目標回転速度は、元より係合手段の可動部を停止させる(言い換えれば、当該可動部の回転速度をゼロ或いは略ゼロとする)ために設定されており、このような目標回転速度への収束に伴い、可動部の回転も停止(少なくとも実践上停止している旨の判断を下し得る程度に低回転な状態を含む)する。尚、このような第1の電動機の制御は、上記偏差に基づいてなされるフィードバック制御であるが、第1の電動機の実回転速度を目標回転速度へ収束させるための制御としては、このようなフィードバック制御に係るもの以外に、例えば実回転速度を予測的に目標回転速度へ近付けるための、例えばフィードフォワード制御量等が適宜含まれていてもよい。即ち、本発明に係る「第1の電動機の制御量」とは、実際に第1の電動機の制御に供される制御量の一部であってもよい。このような趣旨に鑑みて、以下の説明においては、第1の電動機の制御量を適宜「第1の電動機のフィードバック制御量」等と称することとする。
可動部の回転が停止すると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第2の制御手段によって、可動部と固定部とが係合するように、係合手段が制御される。このような係合手段の制御は、係合手段の物理的、機械的又は電気的な態様に応じて各種の態様を採り得る。可動部と固定部とが係合することによって、係合手段に対応する回転要素の回転が阻止され、動力分配機構のギア比は所定ギア比に固定される。
ここで特に、上記入力がなされる以前の第1の電動機の回転状態によっては、上記第1の電動機の制御量を構成する比例項又は微分項、或いはその両方と、積分項との符号が相違することがある。例えば、上記偏差が略一定の正の値(例えば、オフセット量に相当する)を保持している状態において上記入力がなされ、目標回転速度が実回転速度未満となった場合等には、偏差は正の値から負の値へ変化する。このような変化が生じた場合、比例項と微分項は符号が負であるのに対して、過去の履歴が影響する時間積分値に対応する積分項は必ずしもその符号が反転しない。
一時的にしろこのような符号の相違が生じた場合、フィードバック制御量は符号の相違する各項が相殺して小さくなる。このため、このフィードバック制御量に従ってなされるフィードバック制御により実回転速度が目標回転速度へ収束するのに要する収束時間は長くなる。第2の制御手段による係合手段の制御は、可動部と固定部との回転が同期した状態(即ち、好適には固定部の回転が停止した状態)において実行されるから、可動部の回転が例えば停止するのに要する時間の長大化は、係合時間の長大化に直結する。
そこで、本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置では、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制限手段により、上記少なくとも一方の符号と積分項の符号とが相違する場合には、フィードバック制御量に対する積分項の反映が制限される。ここで、「制限される」とは、何らの対策も施されない場合と比較して、積分項がフィードバック制御量に占める重みが緩和されることを包括する概念であって、例えば、所定の補正演算(例えば、1未満の補正係数が乗じられる等の演算)が施された後に上記少なくとも一方との例えば加算演算に供される、或いは、このような場合については積分項をフィードバック制御量の決定プロセスに供さない、等の各種態様を含む趣旨である。
このように積分項の反映が制限されることにより、符号の相違が生じた場合におけるフィードバック制御量の縮小量が軽減され、或いはフィードバック制御量の縮小自体が防止され、相対的に大きなフィードバック制御量に従って、第1の制御手段に係るフィードバック制御が実行されることになる。従って、実回転速度が目標回転速度に収束するのに要する時間が短くなり、迅速に係合手段を係合させることが可能となるのである。
本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置の一の態様では、前記所定値は、前記機関出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度未満であることに対応するオーバードライブ変速比である。
所定変速比としてオーバードライブ変速比を採る場合、内燃機関を低回転且つ高負荷側の相対的に高効率な動作領域で運転することができる。この際、本発明に係る制限手段によれば、係合手段の係合時間を短縮化することが可能であり、可及的速やかに当該オーバードライブ変速比に基づいた駆動状態、或いはハイブリッド車両のオーバードライブ走行を実現することが可能となり、実践上有益である。
本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置の他の態様では、前記制限手段は、前記符号が相違する場合に、前記積分項を予め設定された初期値に初期化することにより前記積分項の反映を制限する。
この態様によれば、積分項が、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて少なくとも積分項を反映させることによる不具合が実践上顕在化しないように定められる等した初期値に初期化される。従って、制御量の決定プロセスが簡便なものとなり、制御上の負荷が軽減されることにより、係合手段の係合時間がより短縮化されるといった実践上の利益が提供される。
尚、この態様では、前記初期値はゼロであってもよい。
即ち、この場合、積分項は実質的にクリアされ、フィードバック制御量の決定に際し全く反映されなくなる。従って、フィードバック制御量を理論的に、実質的に又は現実的な範囲で最大とすることが可能となり、係合手段の係合時間を理論的に、実質的に又は現実的に或いは可及的に最短とすることができる。
即ち、この場合、積分項は実質的にクリアされ、フィードバック制御量の決定に際し全く反映されなくなる。従って、フィードバック制御量を理論的に、実質的に又は現実的な範囲で最大とすることが可能となり、係合手段の係合時間を理論的に、実質的に又は現実的に或いは可及的に最短とすることができる。
本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置の他の態様では、前記可動部と前記固定部との係合を禁止すべき旨の所定の条件が満たされた場合に、前記係合を禁止する係合禁止手段を更に具備する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る係合禁止手段により、例えば可動部と固定部とを係合させることにより可動部及び固定部の少なくとも一方に物理的、機械的又は電気的な不具合を生じさせかねない等の判断を下し得る、或いは例えば第1の電動機の実回転速度を正確に目標回転速度に収束させることに実践上の困難が伴う等の判断を下し得る場合等を好適に含む趣旨としての、所定の条件が満たされた場合に、係合手段における係合が、例えば可動部と固定部との係合が禁止される、第1の電動機の実回転速度を目標回転速度へ追従させる旨の制御が禁止される、或いは可動部を停止させるのに要する第1の電動機の目標回転速度の設定が禁止される等各種の態様の下に禁止される。従って、例えば実際には可動部が停止していないにもかかわらず可動部が停止した旨の判断が下されること等によって、可動部と固定部とを係合させる際に生じ得る物理的、機械的、機構的又は電気的な各種の不具合の発生が回避され、係合手段の係合時間を短縮化する旨の本発明に係る利益が、より効率的に且つ効果的に享受される。
係合禁止手段を備える本発明に係るハイブリッド駆動装置の一の態様では、前記ハイブリッド駆動装置における要求駆動力を特定する第2の特定手段を更に具備し、前記係合禁止手段は、前記条件が満たされる場合として、前記要求駆動力の変化の度合いを規定する指標値が所定値よりも大きい場合に前記係合を禁止する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第2の特定手段により、例えばアクセル開度、スロットル開度又は負荷等、ハイブリッド駆動装置における各種の運転条件等に基づいて、ハイブリッド駆動装置に要求される駆動力たる要求駆動力が特定される。
係合手段を係合させる場合、固定部の回転が停止するように第1の電動機の目標回転速度が設定されるから、必然的に、第1の電動機の実回転速度が目標回転速度に収束するまで、或いは更に係合手段が係合するまでの期間において、ハイブリッド駆動装置の実駆動力は実質的に見て不変となる。従って、このような期間に要求駆動力の大きな変化が生じると、或いは要求駆動力の大きい状況であるにもかかわらず係合手段の係合を図ろうとすると、ハイブリッド駆動装置の実駆動力と、要求駆動力との間に実践上無視し得ない乖離が生じかねない。このような駆動力の乖離は、例えばハイブリッド車両におけるドライバビリティの悪化として顕在化し得る。
ここで、上記係合禁止手段は、特定された要求駆動力の変化の度合いを規定する指標値、好適には例えば変化率、変化量或いは変化速度等が所定値よりも大きい(所定値の設定如何により容易に「以上」と置換し得る概念である)場合、例えば、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいてハイブリッド車両に搭載される場合にドライバビリティの悪化を顕在化させかねない値等として規定される閾値よりも大きい場合等に、係合手段における可動部と固定部との係合を禁止する。従って、この態様によれば、このような実践上の不具合の発生が回避され、効率的且つ効果的に、係合手段の迅速な係合を図り得るといった高い利益が提供される。
係合禁止手段を備える本発明に係るハイブリッド駆動装置の他の態様では、前記駆動軸の回転速度を特定する第3の特定手段を更に具備し、前記係合禁止手段は、前記条件が満たされる場合として、前記駆動軸の回転速度の変動の度合いを規定する指標値が所定値よりも大きい場合に前記係合を禁止する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第3の特定手段により、駆動軸の回転速度が特定される。駆動軸の回転速度は、駆動軸に動力を供給可能な第2の電動機の出力軸の回転速度と、当該出力軸が駆動軸と直結されているか、或いは当該出力軸と駆動軸との間に何らかの変速装置が介在しているか否かによらず、少なくとも一義的な関係を有している(無論、変速装置が介在する場合、その変速比は既知である)。従って、駆動軸に連結された車軸を介して、路面状況等による例えば駆動輪の回転変動(例えば、車輪束の変動)が入力される場合や、内燃機関の機関回転が機関回転軸の回転変動を伴う程度に不安定である場合等には、駆動軸にもまた回転変動が顕著に生じ得る。
一方、駆動軸の回転変動は、動力分配手段を介して第1の電動機の回転変動を生じさせる。或いは第1の電動機の目標回転速度が駆動軸の回転速度に基づいて設定される場合等には、第1の電動機を目標回転速度に追従させた所で、係合手段の可動部は必ずしも停止していない可能性がある。
そこで、係合禁止手段は、駆動軸の回転変動の度合いを規定する指標値が所定値よりも大きい場合(所定値の設定如何により容易に「以上」と置換し得る概念である)、例えば、回転変動の周波数値が閾値を超える場合、或いは例えば特定の周波数帯域の信号レベルや回転速度の変化量が閾値を超える場合等には、固定部と可動部との係合を禁止する。
従って、係合手段に物理的な或いは機械的な不具合が生じる可能性を低減することが、理想的には排除することが可能であり、実践上有益である。
係合禁止手段を備える本発明に係るハイブリッド駆動装置の他の態様では、前記ハイブリッド駆動装置は、前記第2の電動機と前記駆動軸との間の動力伝達経路に、前記第2の電動機と前記駆動軸との回転速度比を変更することが可能な変速装置を更に備え、前記係合禁止手段は、前記条件が満たされる場合として、前記変速装置による変速がなされている場合に前記係合を禁止する。
この態様によれば、ハイブリッド駆動装置は、第2の電動機と駆動軸との間の動力伝達経路に、第2の電動機の出力軸と駆動軸との回転速度比を二値的に、段階的に又は連続的に変化させることが可能な変速装置を備えており、この変速装置の変速期間中は、係合手段における可動部と固定部との係合が禁止される。当該変速期間中は、変速比が変化しているのであるから、変速比の特定精度は相対的に担保され難くなる。一方で、第1の電動機の目標回転速度は、好適には駆動軸の回転速度(例えば、第2の電動機の回転速度に変速装置の変速比を乗じた値等)に基づいて設定されるのであり、変速比の特定精度が担保されない場合、結局上述したように、係合手段に物理的な又は機械的な不具合が発生する可能性が排除され難い。この態様によれば、そのような可能性を低減し、理想的には排除することが可能であり、実践上有益である。
本発明に係るハイブリッド駆動装置の制御装置の他の態様では、前記係合手段は、前記固定部及び前記可動部の各々における、複数のギア歯が形成された対向面が、所定の対向方向に相互に対向し、且つ前記固定部及び可動部の少なくとも一方が前記対向方向へ所定のストローク量移動することが可能に構成されると共に、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記各々における対向面に形成されたギア歯同士が嵌合することにより前記固定部と前記可動部とが係合するように構成されており、前記第2の制御手段は、前記可動部の回転が停止した状態において前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動するように前記係合手段を制御し、前記決定手段は、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記可動部において回転方向に加わるトルクが減少するように前記制御量を決定する。
この態様によれば、係合手段は、固定部と可動部との双方の対向面に相互に噛合可能なギア歯が形成された、例えばドグクラッチ等と称される態様を採る。この際、可動部又は固定部或いはその両方が、第2の制御手段により、例えば然るべき物理的な、機械的な又は電気的な駆動機構の制御がなされること等により対向方向へ所定のストローク量に相当する量移動せしめられ(このような移動をこれ以降適宜「ストローク」と称することとする)、ギア歯同士が噛合することにより両者が係合する。尚、係合手段がこのような構成を有する場合、当然ながら、可動部を停止せしめた後に、可動部と固定部との回転位相の整合、言い換えれば、少なくとも一方が所定のストローク量ストロークした際にギア歯同士が噛合するように、或いは少なくとも一方が所定のストローク量ストロークできるように、ギア歯の位置を最適化するといった制御が行われる。即ち、好適な一形態として、係合手段における係合制御は、可動部の回転阻止、可動部と固定部との位相整合、及び少なくとも一方のストローク制御を含むものとなる。
ここで、ギア歯同士が噛合した後、第1の電動機の出力トルクが可動部の回転方向に加わったままの状態では、係合手段の固定部が反力を持たないため、係合手段が実質的にみて有効に機能しない。そこで、係合手段がこのような構成を有する場合、係合手段における可動部と固定部との係合は、第2の制御手段による上記の制御に加え、第1の制御手段による第1の電動機の出力トルクの低減が行われる。上述したように第1の電動機は、決定手段によって決定される制御量、例えばトルク指令値等に従って制御されるから、決定手段が、当該制御量を減少せしめることにより、第1の電動機から付与されるトルクが減少し、固定部が反力トルクを持ち始め、係合手段が真に機能することになる。
このような態様においては、固定部及び可動部に形成されたギア歯の変形、損傷又は損壊等を回避する目的から、係合制御における可動部の回転制御は重要であり、本発明によってもたらされる係合時間の短縮化に係る利益が顕著である。
係合時に可動部及び固定部の少なくとも一方を所定のストローク量移動させる本発明に係るハイブリッド駆動装置の一の態様では、前記決定手段は、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記回転方向に加わるトルクがゼロとなるように前記制御量を決定する。
この態様によれば、可動部に加わるトルクがゼロとなるように制御量が決定される。即ち、好適な一形態として、第1の電動機の目標出力トルクがゼロとなる。この場合、第1の電動機は係合手段が固定部の反力トルクを作用させることにより動力分配手段の変速比を所定変速比に固定しているため、実質的には空転している状態となり、動力損失やエネルギ損失が生じないといった実践上の高い利益が提供される。この際、本発明に係る係合時間の短縮効果によれば、可及的速やかに係る損失低減の効果を実効させることが可能となる。
係合時に可動部及び固定部の少なくとも一方を所定のストローク量移動させる本発明に係るハイブリッド駆動装置の他の態様では、前記決定手段は、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記制御量を徐変させる。
第1の電動機の制御量を、例えば係合手段におけるストロークの完了後に二値的に或いは段階的に減少せしめた場合、トルク変化が生じた時点において噛合しているギア歯に少なくとも一時的な且つ相対的に大きな衝撃力が加わることとなり、係合手段に物理的又は機械的な不具合を生じさせる原因となりかねない。この態様によれば、制御量が徐変される、即ち好適な一形態として少なくとも実践的にみて連続的とみなし得る程度にシームレスに制御量が変化せしめられるため、係合手段に物理的又は機械的な不具合を生じさせることなく、固定部と可動部とを係合させることができる。
尚、この態様では、前記決定手段は、前記制御量を徐変させる度合いを前記制御量に応じて決定してもよい。
この場合、制御量に応じて徐変量が決定されるため、徐変処理による係合時間の長大化が回避され、係合手段の保護を図りつつ可及的に係合時間を短縮するといった、実践的にみて高い利益が提供される。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド駆動システム10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド駆動システム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド駆動システム10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド駆動システム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、ハイブリッド駆動システム10は、図示せぬハイブリッド車両に搭載され、当該ハイブリッド車両を駆動可能なシステムである。
ハイブリッド駆動システム10は、ECU100、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)及びモータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)を備える。尚、図示するハイブリッド駆動システム10において、ECU100を除く構成要素(即ち、エンジン200、動力分割機構300.MG1及びMG2)は、全体として本発明に係る「ハイブリッド駆動装置」の一例たるハイブリッド駆動装置10Aを構成する。即ち、図1において、ハイブリッド駆動システム10は、ハイブリッド駆動装置10A及びECU100から構成されている。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM等を備え、ハイブリッド駆動装置10Aの動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド駆動装置の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する各種の処理を実行することが可能に構成されている。尚、ECU100は、一体の電子制御ユニットであり、本発明に係る「設定手段」、「第1の特定手段」、「決定手段」、「制限手段」、「第1の制御手段」、「第2の制御手段」、「係合禁止手段」、「第2の特定手段」及び「第3の特定手段」における各動作は、全てECU100によって実行される。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド駆動装置10Aの主たる動力源として機能するように構成されている。ここで、図2を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、エンジン200の模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該各々の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等を適宜介して動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。
図2において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205(即ち、本発明に係る「機関出力軸」の一例である)の回転運動に変換することが可能に構成されている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転速度NEが算出される構成となっている。
尚、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図2においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。また、本発明に係る内燃機関における気筒数及び各気筒の配列形態は、エンジン200のものに限定されず、例えば、6気筒、8気筒或いは12気筒エンジンであってもよいし、V型、水平対向型等であってもよく、各種の態様を採ることが可能である。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節するスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的にはアクセル開度に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。尚、触媒装置の採り得る形態は三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
また、排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。水温センサ218は、ECU100と電気的に接続されており、検出された冷却水温は、ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
図1に戻り、モータジェネレータMG1は、本発明に係る「第1の電動機」の一例たる電動発電機であり、図示せぬハイブリッド用バッテリを充電するための、或いはモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として、更にはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。また、モータジェネレータMG1は、動力分割機構300を無段変速機として機能させるための、回転速度制御装置としても機能するように構成されている。
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「第2の電動機」の一例たる電動発電機であり、エンジン200の動力をアシストする電動機として、或いは図示せぬハイブリッドバッテリを充電するための発電機として機能するように構成されている。尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。モータジェネレータMG2は、ハイブリッド駆動装置10Aがハイブリッド車両に搭載された場合にハイブリッド車両の駆動輪に連結されるドライブシャフトと各種の減速ギア装置を介して連結される出力軸380(即ち、本発明に係る「駆動軸」の一例)に対し、その出力動力を供給することが可能となるように、その出力回転軸が出力軸380に連結された構成を有している。即ち、出力軸380の回転速度は、モータジェネレータMG2の回転速度と等しい構成となっている。
動力分割機構300は、本発明に係る「動力分配手段」の一例たるプラネタリギアユニットである。動力分割機構300は、エンジン200の出力トルクをモータジェネレータMG1と出力軸380とに分配するための機構であり、差動作用を生じるように構成されている。より具体的には、複数組の差動機構を備え、互いに差動作用を生じる三つの回転要素のいずれかにエンジン200が連結され、かつ他の回転要素にモータジェネレータMG1が連結され、さらに第3の回転要素に出力軸380が連結されている。従って、その状態では、モータジェネレータMG1の回転速度を連続的に変化させることにより、エンジン200の回転数が連続的に変化し、その結果、動力分割機構300が無段変速機能を生じる。言い換えれば、エンジン200の機関回転速度NE(NEに対応する回転速度でもよい)と、出力軸380との回転速度(出力軸の回転速度に対応する回転速度でもよい)の比(即ち、変速比)が連続的に変化する。
尚、モータジェネレータMG1は、エンジン200からトルクの供給を受けて回転することにより発電を主としておこなう電動発電機であり、発電に伴う反力トルクが作用することにより、その回転速度の制御を介してエンジン200の機関回転速度NEを連続的に変化させることが可能となっている。このような無段変速機能は、動力分割機構300の差動作用に伴って生じる。尚、モータジェネレータMG1は、ハイブリッド駆動装置10Aを搭載するハイブリッド車両の走行状態によっては、電動機として機能することもある。発電機能を生じさせる場合には、モータジェネレータMG1に代えてモータジェネレータMG2を回転速度の制御機構として採用することもできる。
尚、モータジェネレータMG2は、駆動トルク或いはブレーキ力を補助(アシスト)する装置であり、駆動トルクをアシストする場合には、電力が供給されて電動機として機能し、ブレーキ力をアシストする場合には、ハイブリッド駆動装置10Aが搭載されるハイブリッド車両の駆動輪側から伝達されるトルクによって回転させられて電力を発生する発電機として機能するようになっている。
動力分割機構300では、キャリア310に、エンジン200のクランクシャフト205に連結された入力軸320が連結されている。第1のサンギア330に前述したモータジェネレータMG1が連結され、その第1のサンギア330と同心円状に配置される内歯歯車たるリングギア340が出力軸380に連結されている。これら第1のサンギア330とリングギア340とに噛合する大ピニオンギ350が、その中心軸線を中心に自転し、キャリア310の自転によって公転するようにキャリア310によって保持されている。これらキャリア310、第1のサンギア330、リングギア340及び大ピニオンギア350によって、第1の遊星歯車機構(符号省略)が構成されている。
その大ピニオンギア350は、いわゆるステップドピニオンギアとして構成されている。すなわち、大ピニオンギア350より小径の小ピニオンギア360が、同一軸線上に並べて一体化されている。その小ピニオンギア360が、第1のサンギア330より大径の第2のサンギア370に噛み合っている。すなわち第2のサンギア370と、大小のピニオンギア350及び360(即ち、ステップドピニオンギア)と、これを保持しているキャリア310と、上記リングギア340とによって第2の遊星歯車機構(符号省略)が構成されている。従って、第1の遊星歯車機構における第1のサンギア330が第2の遊星歯車機構における第2のサンギア370より小径であり、かつリングギア340を共用しているので、第1の遊星歯車機構におけるギア比(サンギアとリングギアとの歯数の比)ρ1が、第2の遊星歯車機構のギア比ρ2より小さくなっている。
一方、第2のサンギア370には、第2のサンギア370の回転を選択的に阻止するドグクラッチ390が連結されている。ドグクラッチ390は、第2のサンギア370に連結され、第2のサンギア370と一体に回転する可動部392(即ち、本発明に係る「可動部」の一例)と、可動部392と対向配置され、且つ物理的に固定された固定部391(即ち、本発明に係る「固定部」の一例)とを備えた、本発明に係る「係合手段」の一例である。
ここで、図3を参照し、ドグクラッチ390について説明する。ここに、図3は、ドグクラッチ390の模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図3(a)において、固定部391には、複数のドグ歯(即ち、本発明に係る「ギア歯」の一例)391a、391b、391c、・・・が形成されている(図示するはその一部である)。同様に、可動部392にも、複数のドグ歯392a及び392bが形成されている(同様に、図示されるのは、形成されるドグ歯の一部である)。但し、可動部392は、上述したように第2のサンギア370に連結されており、第2のサンギア370と一体に回転する構成となっている。その回転方向は、図示回転方向(一点鎖線参照)となっている。
ドグクラッチ390では、固定部391と可動部392とが、夫々ドグ歯の形成される面が対向するように対向配置されている。また、可動部392は、図示ストローク方向(白抜き矢線参照、本発明に係る「対向方向」の一例)へ所定量ストロークすることが可能に構成されている。この可動部392のストロークは、可動部392を物理的に駆動すべく設けられる不図示の油圧アクチュエータにより実現される。尚、図3(a)には、固定部391と可動部392とが相互に離間した状態(以下、適宜「離間状態」と称する)が表されている。
一方、図3(b)には、可動部392がストロークしたことにより固定部391と可動部392とが相互に係合した状態(以下、適宜「噛合状態」と称する)が表される。噛合状態においては、可動部392に形成されたドグ歯と固定部391に形成されたドグ歯とが相互に噛合する。このようにドグ歯同士が噛合することにより、可動部392は固定部391によりその回転が阻止された状態となり、可動部392に連結された第2のサンギア370の回転も阻止される。動力分割機構300では、このように第2のサンギア370の回転が阻止された状態において、変速比が、オーバードライブ変速比(エンジン200の機関回転速度NEが出力軸380の回転速度より小さいことに相当する変速比)となるように構成されている。
尚、以降の説明において、上記「離間状態」及び「噛合状態」なる言葉に加え、ドグクラッチ390が離間状態にあるのか噛合状態にあるのかといった、ドグクラッチ390の物理的な状態を指し示すものとして適宜「係合状態」なる言葉を使用することとする。尚、これ以降の説明では、動力分割機構300において、このドグクラッチ390の係合状態に応じて実現されるオーバードライブ変速比が選択されている状態を適宜「オーバードライブ状態」と称し、またこのようなオーバードライブ状態に対応する機能を適宜「オーバードライブ機能」と称することとする。また、反対に、動力分割機構300において、このドグクラッチ390の係合状態に応じて実現されるオーバードライブ変速比が選択されていない状態を適宜「無段変速状態」と称し、またこのような無段変速状態に対応する機能を適宜「無段変速機能」と称することとする。
図1に戻り、動力分割機構300では、このように、第1のサンギア330、キャリア310、リングギア340及び第2のサンギア370の合計四つの独立した回転要素(即ち、本発明に係る「回転要素」の一例)を備えており、これらの回転要素が、上述したように、夫々モータジェネレータMG1、入力軸320、駆動軸340及びドグクラッチ390に連結されている。
尚、動力分割機構300を構成する差動機構は、相互に関連して回転する三つ以上の回転要素を備え、それらの回転要素が、入力・出力・反力の各要素として機能するように制御されることにより、増速、減速、反転及び直結等の作用をおこなう機構であり、その一例はシングルピニオン型或いはダブルピニオン型の遊星歯車機構である。複数組の遊星歯車機構を組み合わせて動力分割機構300を構成する場合、全く独立している遊星歯車機構の回転要素を適宜に連結して動力分割機構300を構成してもよいが、いずれかの回転要素を各遊星歯車機構で共有もしくは共用する構成としてもよい。その一例が、シングルピニオン型遊星歯車機構とダブルピニオン型遊星歯車機構とを組み合わせたラビニヨ型遊星歯車機構である。或いは歯数の異なるピニオンギアを一体に連結することによりキャリアおよびリングギアを共用した二組の遊星歯車機構を組み合わせた構成(即ち、本実施形態の構成)がその例である。
尚、ハイブリッド駆動装置10Aには、電力供給源としての充電可能なハイブリッドバッテリ及び該ハイブリッドバッテリとの間の電力の入出力を制御するPCU(Power Control Unit)等が備わるが、図面の煩雑化を防ぐ目的から図示が省略されている。このPCUは、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
<1−2:実施形態の動作>
<オーバードライブ機能の詳細>
ハイブリッド駆動装置10Aにおいて、動力分割機構300がドグクラッチ390による回転要素(ここでは、第2のサンギア370)の固定を行っていない状態でエンジン200を駆動すると、その出力トルクが動力分割機構300によってモータジェネレータMG1と出力軸380とに分配されて伝達される。これは、動力分割機構300の差動作用によるものであり、モータジェネレータMG1の回転速度を制御することにより、エンジン200の機関回転速度NEが無段階(連続的)に制御される。これが無段変速状態である。このような無段変速状態におけるエンジン200の機関回転速度NEは、基本的には、エンジン200の動作点(機関回転速度と負荷(即ち、一義的に出力トルク)との組み合わせとして規定される動作条件)が、エンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点で動作するように、該最適燃費動作点に対応する値を目標回転速度として制御される。
<オーバードライブ機能の詳細>
ハイブリッド駆動装置10Aにおいて、動力分割機構300がドグクラッチ390による回転要素(ここでは、第2のサンギア370)の固定を行っていない状態でエンジン200を駆動すると、その出力トルクが動力分割機構300によってモータジェネレータMG1と出力軸380とに分配されて伝達される。これは、動力分割機構300の差動作用によるものであり、モータジェネレータMG1の回転速度を制御することにより、エンジン200の機関回転速度NEが無段階(連続的)に制御される。これが無段変速状態である。このような無段変速状態におけるエンジン200の機関回転速度NEは、基本的には、エンジン200の動作点(機関回転速度と負荷(即ち、一義的に出力トルク)との組み合わせとして規定される動作条件)が、エンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点で動作するように、該最適燃費動作点に対応する値を目標回転速度として制御される。
これに対して要求駆動力或いはエンジン負荷が小さい場合には、動力分割機構300は、上記オーバードライブ状態に制御され、動力分割機構300の実質的な変速比がオーバードライブ変速比に固定される。即ち、エンジン200の機関回転速度NEが可及的に低回転側に抑制される。その場合、動力分割機構300では、モータジェネレータMG1に代わってドグクラッチ390の固定部391が反力トルクを受け持つので、モータジェネレータMG1を発電機及び電動機として機能させる必要が生じない。従って、モータジェネレータMG2で発電してモータジェネレータMG1に給電する、或いはハイブリッドバッテリからモータジェネレータMG1に給電する等の必要が生じないので、電力消費が生じない。即ち、オーバードライブ状態では、機械的エネルギと電気的エネルギとのエネルギ変換を繰り返すことによる動力損失、所謂エネルギ再循環が生じることはなく、燃料消費率の悪化を防止もしくは抑制することが可能となる。
ここで、図4を参照し、無段変速機能とオーバードライブ機能との違いについて説明する。ここに、図4は、動力分割機構300の共線図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、左から順にMG1、ドグクラッチ390、エンジン200及びMG2が表され、夫々における回転速度が縦軸に表されている。
無段変速状態とは、ドグクラッチ390が離間状態に制御された状態に対応しており、モータジェネレータMG1の回転速度を実線矢印で示すように大小に変化させる状態である。従って、エンジン200並びにクランクシャフト205及び入力軸320を介してエンジン200が連結されるキャリア310回転速度は、出力軸380及び出力軸380が連結されるリングギア340の回転速度よりも速い状態と遅い状態との範囲で連続的に変化する。このような無段変速状態に対応する特性が、図示PRF_2(一点鎖線参照)として表されている。
即ち、無段変速状態では、キャリア310にエンジン200の出力トルクが作用し、第1のサンギア330にモータジェネレータMG1による反力トルクが作用するので、リングギア340及び出力軸380には、エンジン200と同方向に回転させるトルクが作用する。その場合、モータジェネレータMG1の回転速度の変化に応じてエンジン200の回転速度が増減するので、モータジェネレータMG1の回転速度に応じてエンジン200の回転速度が適宜に制御される。
一方、ドグクラッチ390を噛合状態に制御し、第2のサンギア370の回転を抑止すると、動力分割機構300の動作状態は、図示PRF_1(実線参照)により表される状態となる。即ち、モータジェネレータMG1の回転を止めて第1のサンギア330を固定した場合よりもエンジン200の機関回転速度が更に低下した状態に変速比が固定される。即ち、オーバードライブ変速比に固定される。この状態では、第2のサンギア370に対してドグクラッチ390から反力トルクを与えることになるので、モータジェネレータMG1は空転状態となり、発電機及び電動機のいずれとしても機能しない。そのため、モータジェネレータMG2からモータジェネレータMG1に電力を供給する必要がなく、動力循環を回避することができる。また、エンジン200を低回転且つ高負荷側で運転することが可能になり、エンジン200を効率の良い動作領域で運転することができる。
<変速状態の切り替え制御>
このような、二種類の変速状態(無段変速状態及びオーバードライブ状態)を有する動力分割機構300における変速状態の切り替えは、ECU100により実行される変速切り替え処理によって制御される。ここで、図5を参照し、変速切り替え処理の詳細について説明する。ここに、図5は、変速切り替え処理のフローチャートである。
このような、二種類の変速状態(無段変速状態及びオーバードライブ状態)を有する動力分割機構300における変速状態の切り替えは、ECU100により実行される変速切り替え処理によって制御される。ここで、図5を参照し、変速切り替え処理の詳細について説明する。ここに、図5は、変速切り替え処理のフローチャートである。
図5において、ECU100は、出力軸380の回転速度たる出力回転速度Noutを算出する(ステップS101)。この際、出力回転速度Noutは、モータジェネレータMG2の回転速度(以下、適宜「MG2回転速度」と称する)により代替される。MG2回転速度は、図1において不図示の回転センサにより検出される構成となっている。この回転センサは、ECU100と電気的に接続された状態にあり、ECU100は、当該回転センサから検出結果たるMG2回転速度を取得することが可能である。尚、本実施形態において「算出する」とは、必ずしも数値演算或いは論理演算といった各種演算処理のみに限定されるものではなく、算出対象に相当する数値を電気的なデータとして取得する態様を含む概念である。
出力回転速度Noutを算出すると、ECU100は、オーバードライブ要求が有るか否かを判別する(ステップS102)。ここで、ハイブリッド駆動装置10Aでは、上述したように、要求駆動力が小さい場合、或いはエンジン負荷が小さい場合等にオーバードライブ状態が選択される。即ち、本実施形態における「オーバードライブ要求」とは、オーバードライブ状態を選択する旨のドライバの人為操作に対応するものと言うよりは(排除はされない)、ECU100が、ハイブリッド駆動装置10A(或いはハイブリッド車両)の動作条件に鑑みて、予め設定されるアルゴリズムに基づいてその都度適宜にその有無を判別するものである。即ち、本実施形態では、オーバードライブ状態を選択すべき旨の判断を下し得る要求駆動力或いは負荷状態(スロットル開度や吸入空気量)等が、本発明に係る「回転速度比を所定値に固定すべき旨の入力」の一例として相当する。オーバードライブ要求が無い場合(ステップS102:NO)、ECU100は、処理をステップS104に移行させる。
一方、オーバードライブ要求が有る場合(ステップS102:YES)、ECU100は、ドグクラッチ390における固定部391と可動部392との係合(即ち、係合状態として上記噛合状態を採ること)を許可するか否かを規定する係合許可フラグFGを、当該係合を許可する旨の(本実施形態では、後述するオーバードライブ処理の実行を許可する旨に相当する)オン状態に制御し(ステップS103)、処理をステップS104に移行させる。尚、係合許可フラグFGは、初期状態においてオフ状態に設定されている。
ステップS104では、係合許可フラグFGがオン状態であるか否かが判別される。上述したように、係合許可フラグFGの初期状態はオフ状態であり、オーバードライブ要求がなされた場合に係合許可フラグFGはオン状態に制御される。係合許可フラグFGがオン状態である場合(ステップS104:YES)、即ち、オーバードライブ要求がなされた場合、ECU100は、動力分割機構300をオーバードライブ状態に制御すべくオーバードライブ処理を実行する(ステップS300)。一方、係合許可フラグFGがオフ状態である場合(ステップS104:NO)、即ち、オーバードライブ要求がなされていない場合、ECU100は、動力分割機構300を無段変速状態に制御すべく無段変速処理を実行する(ステップS200)。尚、オーバードライブ処理及び無段変速処理については後述する。ステップS200又はステップS300に係る処理が実行されると、ECU100は、処理をステップS101に戻し、一連の処理を繰り返す。変速切り替え処理は、このように進行する。
<無段変速処理の詳細>
次に、図6を参照し、無段変速処理の詳細について説明する。ここに、図6は、無段変速処理のフローチャートである。
次に、図6を参照し、無段変速処理の詳細について説明する。ここに、図6は、無段変速処理のフローチャートである。
図6において、ECU100は、モータジェネレータMG1の回転速度(以下、適宜「MG1回転速度」と称する)の目標値たる目標回転速度Ngtagを算出する(ステップS201)。既に述べたように、無段変速状態においては、エンジン200の回転速度は、基本的に最適燃費動作点に対応する値に制御される。最適燃費動作点は、要求出力が定まれば一義的に決定される。従って、ECU100は、ステップS201に係る処理において、要求出力を算出し、当該要求出力に対応する等出力線と、最適燃費動作点を繋げて得られる最適燃費線との交点(即ち、最適燃費動作点)に対応する機関回転速度をエンジン200の目標回転速度として、この目標回転速度が得られるように出力回転速度Noutと動力分割機構300のギア比(即ち、この場合、第1の遊星歯車機構のギア比)とに基づいて目標回転速度Ngtagを算出する。
尚、要求出力の算出に際しては、例えばアクセル開度及びハイブリッド車両の車速に基づいて、予めROMに格納されたマップから現時点におけるアクセル開度及び車速に対応した要求駆動力或いは要求駆動トルク(即ち、ハイブリッド車両の車軸に出力されるべき駆動力或いは駆動トルク)が算出される。更に、この要求駆動力或いは要求駆動トルクを、ハイブリッドバッテリの要求発電量や各種の補機類(エアコンやパワーステアリング等)の電力要求量とを参照して補正することによって、エンジン要求出力を算出する。尚、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更されてよい。
目標回転速度Ngtagが算出されると、ECU100は、モータジェネレータMG1から出力すべきトルクを表すMG1トルク指令値Tgのうちフィードフォワード制御項(以下、適宜「F/F項」と称する)Tgffを算出する(ステップS202)。続いて、MG1トルク指令値Tgのフィードバック制御項(以下、適宜「F/B」項と称する)を算出する(ステップS203)。更に、この算出されたF/F項とF/B項とに基づいて、MG1トルク指令値Tgが算出される(ステップS204)。尚、本実施形態において、MG1トルク指令値Tgは、下記(1)式に従って算出される、本発明に係る「第1の電動機の制御量」の一例である。
Tg=Tgff+Tgfb・・・(1)
尚、F/F項Tgff及びF/B項Tgfbの算出方法については後述する。MG1トルク指令値Tgが算出されると、このMG1トルク指令値Tgに従ってモータジェネレータMG1のトルク制御が実行され、無段変速処理は終了する。
尚、F/F項Tgff及びF/B項Tgfbの算出方法については後述する。MG1トルク指令値Tgが算出されると、このMG1トルク指令値Tgに従ってモータジェネレータMG1のトルク制御が実行され、無段変速処理は終了する。
<オーバードライブ処理の詳細>
次に、図7を参照し、オーバードライブ処理の詳細について説明する。ここに、図7は、オーバードライブ処理のフローチャートである。
次に、図7を参照し、オーバードライブ処理の詳細について説明する。ここに、図7は、オーバードライブ処理のフローチャートである。
図7において、ECU100は、エンジントルク指令値Teを固定する(ステップS301)。ここで、エンジントルク指令値Teとは、上述した最適燃費動作点に対応するエンジン200の出力トルクである。オーバードライブ処理においては、ドグクラッチ390の係合が完了するまでエンジントルク指令値Teの変更が禁止される。同様に、ECU100は、モータジェネレータMG2の出力トルクの指令値であるMG2トルク指令値Tmを固定する(ステップS302)。このように、エンジントルク指令値Te及びMG2トルク指令値Tmが夫々固定される(変更が禁止される)ことにより、ドグクラッチ390の係合精度を高め、且つドグクラッチ390の破損、損傷或いは損壊等各種物理的又は機械的な不具合の発生が回避される。
次に、ECU100は、MG1トルク指令値のF/F項たるTgffを算出する(ステップS303)。Tgffは、MG1回転速度を目標回転速度Ngtagに予測的に近付けるためのトルク指令値であり、初期値としてエンジントルク指令値Teを採り、それ以降は、MG1トルク指令値Tgを採る。
F/F項を算出すると、ECU100は、MG1の目標回転速度Ngtagを算出する(ステップS304)。ここで、オーバードライブ処理における目標回転速度Ngtagは、無段変速処理におけるそれと異なり、ドグクラッチ390の可動部392の回転を停止させるための回転速度である。ECU100は、出力回転速度Noutと第1遊星歯車機構のギア比とに基づいて、可動部392の回転(即ち、第2のサンギア370の回転)が停止するように目標回転速度Ngtagを算出する。
目標回転速度Ngtagを算出すると、ECU100は、MG1トルク指令値TgのF/B項たるTgfbにおける、比例項(以下、適宜「P項」と称する)Tgfb_pを算出し(ステップS305)、積分項(以下、適宜「I項」と称する)Tgfb_iを算出し(ステップS306)、また微分項(以下、適宜「D項」と称する)Tgfb_dを算出する(ステップS307)。即ち、本実施形態において、モータジェネレータMG1のトルク制御には、所謂PID制御が採用される。ここで、P項、I項及びD項は、夫々下記(2)式、(3)式及び(4)式に従って算出される。
Tgfb_p=k1×(Ngtag−Ng)・・・(2)
Tgfb_i=k2×∫(Ngtag−Ng)dt・・・(3)
Tgfb_d=k3×d(Ngtag−Ng)/dt・・・(4)
尚、上式において、k1、k2及びk3は夫々予め設定された比例定数、積分定数及び微分定数である。また、「Ngtag−Ng」は、本発明に係る「実回転速度と目標回転速度との偏差」の一例である。これ以降の説明において、この偏差を適宜「偏差ΔNg」と称することとする。尚、MG1回転速度Ngは、MG2回転速度と同様に、図1において不図示の回転センサにより検出され、電気的に接続されたECU100により把握されている。
Tgfb_i=k2×∫(Ngtag−Ng)dt・・・(3)
Tgfb_d=k3×d(Ngtag−Ng)/dt・・・(4)
尚、上式において、k1、k2及びk3は夫々予め設定された比例定数、積分定数及び微分定数である。また、「Ngtag−Ng」は、本発明に係る「実回転速度と目標回転速度との偏差」の一例である。これ以降の説明において、この偏差を適宜「偏差ΔNg」と称することとする。尚、MG1回転速度Ngは、MG2回転速度と同様に、図1において不図示の回転センサにより検出され、電気的に接続されたECU100により把握されている。
MG1トルク指令値のF/B項Tgfbを構成する三要素が算出されると、ECU100は、それらの符号が相互に異なるか否かを判別する(ステップS308)。ここで、P項Tgfb_p及びD項Tgfb_dは、夫々偏差ΔNgの符号が反映されるため基本的に符号が等しいが、I項Tgfb_iは、積分項であるが故、必ずしも偏差ΔNgの符号がそのまま反映されない。従って、目標回転速度Ngtag次第では、これらの間で符号の相違が発生する場合がある。尚、P項及びD項とI項との符号の相違が与える影響については後述する。
MG1トルク指令値のF/B項を構成する三項の符号が同一である場合(ステップS308:NO)、ECU100は、そのまま処理をステップS310に移行させると共に、当該符号が異なる場合(ステップS308:YES)、ECU100は積分項Tgfb_iをクリアし(ステップS309)、処理をステップS310に移行させる。尚、「クリアする」とは、消去する、F/B項に反映させない、或いは初期値としてゼロを代入する(ゼロとして扱う)等の各処理と等価であり、即ち、本発明に係る「積分項の反映を制限する」処理の一例である。
ステップS310においては、MG1トルク指令値のF/B項Tgfbが、下記(5)式に従って算出される。
Tgfb=Tgfb_p+Tgfb_i+Tgfb_d・・・(5)
F/B項Tgfbが算出されると、ECU100は、上記(1)式に従ってMG1トルク指令値Tgを算出する(ステップS311)。MG1トルク指令値Tgが算出されると、このMG1トルク指令値Tgに従ってモータジェネレータMG1のトルク制御が実行される(ステップS312)。
F/B項Tgfbが算出されると、ECU100は、上記(1)式に従ってMG1トルク指令値Tgを算出する(ステップS311)。MG1トルク指令値Tgが算出されると、このMG1トルク指令値Tgに従ってモータジェネレータMG1のトルク制御が実行される(ステップS312)。
ECU100は、このトルク制御の結果、ドグクラッチ390の可動部392の回転が固定部391に同期したか否か、即ち可動部392が停止したか否かを判別する(ステップS313)。尚、可動部392が停止したか否かは、MG1回転速度Ngが、目標回転速度Ngtagに収束したか否かに基づいて判別される。可動部392の回転が未だ非同期である場合(ステップS313:NO)、ECU100は、処理をステップS303に戻し、一連の処理を繰り返す。即ち、トルクを制御量とした回転速度のフィードバック制御が(無論、フィードフォワード制御も含む)繰り返される。
可動部392の回転が固定部391に同期すると(ステップS313:YES)、ECU100は、ドグクラッチ係合処理を実行する(ステップS400)。ドグクラッチ係合処理が終了すると、オーバードライブ処理は終了する。
<ドグクラッチ係合処理の詳細>
次に、図8を参照し、ドグクラッチ係合処理の詳細について説明する。ここに、図8は、ドグクラッチ係合処理のフローチャートである。
次に、図8を参照し、ドグクラッチ係合処理の詳細について説明する。ここに、図8は、ドグクラッチ係合処理のフローチャートである。
図8において、ECU100は、位相整合処理を実行する(ステップS401)。位相整合処理とは、固定部391と可動部392との係合面(対向面)の位相を、前述した可動部392のストロークが可能となる位置に整合させる処理を指す。即ち、固定部391及び可動部392各々のドグ歯同士が、一方の凹部に他方の凸部が、また一方の凸部に他方の凹部が夫々対向するように、微細な位置制御が実行される。
位相整合処理を実行すると、ECU100は、位相が整合したか否かを判別する(ステップS402)。位相が未だ整合しない場合(ステップS402:NO)、ECU100は、位相が整合するまでステップS402に係る処理を繰り返す。位相が整合すると(ステップS402:YES)、ECU100は、可動部392のストロークを開始する(ステップS403)。尚、ここでは省略するが、位相の整合が完了した場合には、ストロークの開始を許可するストローク開始フラグSTが、ストロークの開始を禁止すべき旨のオフ状態から、ストロークを開始すべき旨を表すオン状態に制御される。
可動部392のストロークが開始されると、ECU100は、可動部392のストロークが完了したか否かを判別する(ステップS404)。ストロークが完了していない場合(ステップS404:NO)、ECU100は、ストロークが完了するまでステップS404に係る処理を繰り返す。ストロークが完了した旨が判別された場合(ステップS404:YES)、ECU100は、MG1トルク指令値Tgをゼロに設定し(ステップS405)、ドグクラッチ係合処理を終了する。
MG1トルク指令値Tgがゼロに設定されることにより、モータジェネレータMG1はトルクを出力しない空転状態となり、上述したように、反力トルクを与える手段が、モータジェネレータMG1からドグクラッチ390へと切り替わる。即ち、動力分割機構300がオーバードライブ状態に制御される。
<オーバードライブ処理の効果>
次に、図9を参照し、本実施形態に係るオーバードライブ処理の効果について説明する。ここに、図9は、オーバードライブ処理の実行過程に対応するタイミングチャートである。
次に、図9を参照し、本実施形態に係るオーバードライブ処理の効果について説明する。ここに、図9は、オーバードライブ処理の実行過程に対応するタイミングチャートである。
図9において、横軸は共通に時刻が採られており、縦軸の系列には、上段にMG1回転速度Ng、下段にMG1トルク指令値TgのF/B項Tgfbが表されている。
時刻T0以前において、F/B項TgfbがTgfb0であったとする。このTgfb0は、微分項Dと、比例項Pと、積分項Iとを加算してなる値である。ここで、時刻T0において、オーバードライブ要求(以下、適宜「O/D要求」と称する)が有る旨が判別され、目標回転速度Ngtagが、従前のNgtag0からNgtag1(Ngtag1<Ngtag0)まで急激に低下したとする。尚、目標回転速度Ngtagのこのような特性は、図示PRF_Ngtag(鎖線参照)として表される。尚、時刻T0において、MG1回転速度Ngは、Ng0(Ngtag1<Ng0<Ngtag0)であるとする。尚、図9では、本発明に係る効果を分かり易く説明するために、時刻T0におけるMG1回転速度Ngが目標回転速度Ngtag0から大きく乖離しているが、実際には、上述した無段変速処理の実行過程において、MG1回転速度Ngは目標回転速度Ngtagに或いはNgtagと一定のオフセット保った値に収束している。
ここで、このような目標回転速度Ngtagの時間推移に応じて、F/B項Tgfbは、図示PRF_Tgfb(下段実線参照)によって表される時間推移を辿る。即ち、時刻T0において、目標回転速度NgtagがMG1回転速度Ng未満まで低下したため、上述した偏差ΔNgの符号が時刻T0を境に反転する。それに伴い、比例項P及び微分項Dの符号は反転するが、積分項Iの符号は反転しない。その結果、積分項は破棄され、時刻T0におけるMG1トルク指令値のF/B項Tgfbは、算出された微分項及び比例項のみが反映された、図示Tgfb1となる。F/B項Tgfbは、このTgfb1を初期値として徐々に減少する。
その結果、時刻T0以降、MG1トルク指令値のフィードバック制御により、MG1回転速度Ngは、図示PRF_Ng(上段実線参照)によって表される時間推移を辿る。即ち、MG1回転速度Ngは、Ng0から徐々に低下し、時刻T1において、目標回転速度たるNgtag1に収束する。MG1回転速度Ngが目標回転速度Ngtagに収束したことに伴い、偏差ΔNgはゼロとなり、F/B項Tgfbもゼロとなる。
一方、図9には、このような本実施形態に係る特性との比較に供すべき比較例として、積分項がクリアされない場合の特性線も示される。即ち、上段における図示PRF_Ngcmp(破線参照)及び下段における図示PRF_Tgfbcmp(破線参照)である。
即ち、比較例によれば、時刻T0において積分項がクリアされないため、時刻T0におけるF/B項Tgfbの値は、微分項及び比例項とは符号の異なる積分項を反映した、図示Tgfb1’となり、本実施形態において得られるF/B項Tgfb1と較べて明らかに小さくなる。
モータジェネレータMG1のトルク制御は、この相対的に小さい値をフィードバック制御の初期値として実行されるため、PRF_Ngcmpとして示すように、MG1回転速度Ngの目標回転速度Ngtagへの収束は大きく遅れる。その結果、比較例においてMG1回転速度Ngが目標回転速度Ngtagに収束するのは、時刻T1から相応の時間遅延を経た時刻T2となる。即ち、本実施形態に係るオーバードライブ処理によれば、比較例と較べて「T2−T1」に相当する時間だけ早くドグクラッチ390における回転同期が完了する。回転同期の完了タイミングは、そのままオーバードライブ処理の実行期間の長さに反映されるから、本実施形態によれば、比較例と較べて明らかに早期にオーバードライブ処理が完了することになる。即ち、ドグクラッチ390の係合時間が短縮化されるのである。
このため、本実施形態によれば、オーバードライブ状態によってもたらされる、動力損失の低減或いは燃料消費率の最適化といった利益を可及的速やかに享受することが可能となる。また、既に述べたように、オーバードライブ処理の実行期間中には、エンジン200及びモータジェネレータMG2各々におけるトルク指令値が固定される。即ち、この期間は、ハイブリッド駆動装置10Aの、或いはハイブリッド駆動装置10Aを搭載するハイブリッド車両の要求駆動力が満たされない可能性がある。ドライバビリティへの影響を考えれば、このような要求駆動力と実際の駆動力との差は生じない方がよいことは自明であり、本実施形態に係るオーバードライブ処理によってドグクラッチ390の係合時間短縮化されることによる実践上の利益は大きいものとなる。
尚、本実施形態においては、MG1トルク指令値TgのF/B項は、比例項、微分項及び積分項を含むが、比例項と微分項とはいずれか一方であってもよく、その場合も、積分項をクリアすることによる上述した利益は担保される。
また、本実施形態においては、積分項がクリアされ、全くMG1トルク指令値Tgへ反映されないが、積分項の反映の度合いが軽減される限りにおいて、積分項は必ずしもクリアされずともよく、例えば相応の重み係数等(例えば、1未満の係数)が乗じられる等した後に、F/B項の算出に供されてもよい。
<2:第2実施形態>
次に、図10を参照し、本発明の第2実施形態に係る変速切り替え処理について説明する。ここに、図10は、本発明の第2実施形態に係る変速切り替え処理のフローチャートである。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
<2:第2実施形態>
次に、図10を参照し、本発明の第2実施形態に係る変速切り替え処理について説明する。ここに、図10は、本発明の第2実施形態に係る変速切り替え処理のフローチャートである。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
図10において、O/D要求がある旨の判別が行われた場合(ステップS102:YES)、ECU100は、要求駆動トルク変化率Aを算出すると共に、算出した要求駆動トルク変化率Aが所定の閾値Ath(即ち、本発明に係る「所定値」の一例)未満であるか否かを判別する(ステップS501)。
ここで、要求駆動トルク変化率Aは、要求出力を求める際に算出される要求駆動トルクと同様の手法で算出された要求駆動トルクの単位時間当たりの変化量であり、本発明に係る「要求駆動力の変化の度合いを規定する指標値」の一例である。要求駆動トルク変化率Aが閾値Ath以上である場合(ステップS501:NO)、ECU100は、処理をステップS104に移行させる。一方、要求駆動トルク変化率Aが閾値Ath未満である場合(ステップS501:YES)、ECU100は更に、出力回転速度変動値Bを算出すると共に、算出した出力回転速度変動値Bが所定の閾値Bth(即ち、本発明に係る「所定値」の一例)未満であるか否かを判別する(ステップS502)。
ここで、出力回転速度変動値Bとは、出力回転速度Noutの変動の度合いであり、本発明に係る「駆動軸の回転速度の変化の度合いを規定する指標値」の一例である。ECU100は、出力回転速度Noutを周波数解析することにより、出力回転速度Noutの変動周波数として出力回転速度変動値Bを算出する。出力回転速度変動値Bが閾値Bth以上である場合(ステップS502:NO)、ECU100は、処理をステップS104に移行させると共に、出力回転速度変動値Bが閾値Bth未満である場合(ステップS502:YES)、ECU100は、係合許可フラグFGをオン状態に制御する(ステップS103)。
このように、第2実施形態に係る変速切り替え処理によれば、第1実施形態と異なり、O/D要求がなされたのみでは、係合許可フラグFGはオンとならない。即ち、オーバードライブ処理の実行が許可されない。ここで、図11及び図12を参照し、第2実施形態の効果について説明する。
ここに、図11は、第2実施形態に係る変速切り替え処理に対応する一のタイミングチャートであり、図12は、同じく第2実施形態に係る変速切り替え処理に対応する他のタイミングチャートである。尚、これらの図において、図9と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図11において、縦軸の系列には、上段から順に、駆動トルク、要求駆動トルク変化率A、O/D要求の有無、及び係合許可フラグFGの状態が表されている。
時刻T3において、要求駆動トルク変化率Aが従前の値A0から急激に上昇し、A1(A1>A0)となったとする。この時点では、未だO/D要求がなされていないから、ECU100は、モータジェネレータMG1のトルク制御を行っている。また、要求駆動トルクの変化に応じて、ECU100は、エンジン200のスロットルバルブ208等を制御し、要求駆動トルクに応じた(即ち、要求出力に応じた)トルクを出力する。その結果、仮想的にO/D要求がなされないまま時間が経過したとすれば、上段に実線で示す如くに駆動トルクは変化し、最終的には要求駆動トルク変化率AがA0で安定するのに伴い、トルクTr3で安定する。
ここで、時刻T4において、O/D要求がなされた(O/D要求がある旨の判別が行われた)とする。然るに、時刻T4の時点では、要求駆動トルク変化率Aが未だA1(A1>Ath)であり、先に述べた判別処理により、係合許可フラグFGはオフ状態に維持される。即ち、ドグクラッチ390を係合させるためのオーバードライブ処理の実行が許可されない。この様子が、下段に図示PRF_FG1(実線参照)として表される。O/D要求がなされた状態が時刻T4以降継続したとすると、要求駆動トルク変化率AがAthまで低下する時刻T5において、係合許可フラグFGはオン状態に制御され、オーバードライブ処理の実行が許可された状態となる。
一方、本実施形態との比較に供すべき比較例として、O/D要求がなされたことをもって係合許可フラグFGがオン状態に制御された場合に対応するPRF_FGcmp1(破線参照)を表すと、PRF_FGcmp1は、時刻T4において、オフ状態からオン状態へ変化する。
ここで、本実施形態に係るタイミング(時刻T5)で係合許可フラグFGがオン状態に制御された場合、先に述べた駆動トルクの仮想的な特性により明らかな通り、駆動トルクは、Tr2(Tr2<Tr3)まで上昇している。一方で、比較例に準じたタイミング(時刻T4)でオーバードライブ処理の実行が許可された場合、駆動トルクは、未だTr1(Tr1<Tr2)までしか上昇していない。即ち、本実施形態と比較例とでは、オーバードライブ処理の実行が許可された時点における駆動トルクに「Tr2−Tr1」に相当する差が生じることになる。
ここで、係合許可フラグFGがオン状態に制御されることにより実行される上述したオーバードライブ処理によれば、エンジントルク指令値Te及びMG2トルク指令値Tmは夫々固定されるため、時刻T5の時点で、要求駆動トルクと実際の駆動トルクとの差は、本実施形態では「Tr3−Tr2」となり、比較例では「Tr3−Tr1」となる。即ち、圧倒的に比較例の方が大きくなる。この差が大きい場合、ハイブリッド車両におけるドライバビリティの悪化、ドライバに与える違和感の増大といった問題が顕在化しかねない。
このように、本実施形態によれば、要求駆動トルク変化率Aが閾値Ath未満である場合に、ドグクラッチ390の係合を許可すべくオーバードライブ処理の実行が許可される。従って、要求駆動トルクと実際の駆動トルクとの偏差が相対的に小さくて済み、ドライバビリティの悪化及びドライバへの違和感の付与といった問題が顕在化することを回避することが可能となる。即ち、ドグクラッチ390の係合時間短縮に係る利益を、より効果的に享受することが可能となるのである。
次に、図12において、縦軸の系列には、上段から順にO/D要求の有無、出力回転速度Nout、出力回転速度変動値B、MG1トルク指令値のF/B項Tgfb、係合許可フラグFGの状態、及び上述したストローク開始フラグSTの状態が表されている。
時刻T6において、O/D要求がなされたとする。この際、出力回転速度変動値Bは、例えば、ハイブリッド車両の駆動輪の回転が(即ち、車輪速が)不安定である、或いはハイブリッド駆動装置10Aにおいてエンジン200の回転が不安定である等の理由から未だ閾値Bth以上である。従って、係合許可フラグFGの特性を表す図示PRF_FG2(実線参照)及びストローク開始フラグSTの特性を表すPRF_ST(実線参照)は、共にオフ状態である。また、F/B項Tgfbは、出力回転速度Noutの変動の影響を受けて変動している。
時刻T6以降、出力回転速度変動値Bが閾値Bth未満に低下した時刻T8において、係合許可フラグFGはオン状態に制御される。その後、F/B項Tgfbがゼロに収束した(即ち、MG1回転速度Ngが目標回転速度Ngtagに収束した)時刻T9において(厳密には、上述したように位相の整合を経て)、ストローク開始フラグSTがオン状態に制御される。
ここで、図11と同様の比較例を用い、係合許可フラグFGについて、図示PRF_FGcmp2(破線参照)を、またストローク開始フラグSTについて図示PRF_STcmp(破線参照)を表すと、比較例では、O/D要求がなされた時刻T6において係合許可フラグFGがオン状態に制御される。その後、F/B項Tgfbが収束する過程である時刻T7において、F/B項Tgfbが一時的にゼロとなると、ストローク開始フラグSTがオン状態に制御され、ドグクラッチ390における可動部392のストロークが許可される。
ところが、時刻T8では未だ出力回転速度Noutの変動の影響を受ける形でMG1回転速度Ngは収束の途上にあり、時刻T8以降において、可動部392は、必ずしも停止していない。従って、可動部392が回転方向への回転を継続している状態、或いは回転が再開する可能性がある状態で可動部392がストロークを開始することになり、可動部392のドグ歯は固定部391のドグ歯と噛合しない。その結果、例えば応力に起因する物理的又は機械的な負荷によりドグ歯の欠損や損傷といった事態が生じかねない。
その点、本実施形態によれば、出力回転速度Noutの変動がある程度収束した後に係合許可フラグFGがオン状態に制御されるため、F/B項Tgfbが真に収束した段階でストローク開始フラグSTをオン状態とすることができ、ドグクラッチ390の物理的又は機械的な保護をより好適に図ることが可能となる。即ち、ドグクラッチ390の係合時間短縮に係る利益を、より効果的に享受することが可能となるのである。
<3:第3実施形態>
次に、図13を参照し、本発明の第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理について説明する。ここに、図13は、本発明の第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理のフローチャートである。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
<3:第3実施形態>
次に、図13を参照し、本発明の第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理について説明する。ここに、図13は、本発明の第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理のフローチャートである。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図13において、ストロークが完了した旨の判別がなされた場合(ステップS404:YES)、ECU100は、MG1トルク指令値徐変量ΔTgを算出する(ステップS701)。MG1トルク指令値徐変量ΔTgは、ストローク完了後におけるドグクラッチ390の可動部392の回転方向に加わるトルクの変化率が大きくならないように設定されるMG1トルク指令値の変化量である。
MG1トルク指令値徐変量ΔTgの値は、予めその時点でのMG1トルク指令値Tgの値に対応付けられたマップとしてROMに格納されており、ECU100は、当該マップからMG1トルク指令値Tgに対応する値を選択的に取得することによってMG1トルク指令値徐変量ΔTgを算出する。尚、当該マップの詳細は省略するが、基本的に、MG1トルク指令値Tg徐変量ΔTgの値は、MG1トルク指令値Tgが大きい程大きい値として設定されている。
MG1トルク指令値徐変量ΔTgが算出されると、ECU100は、下記(6)式に従って、MG1トルク指令値Tgを算出する(ステップS702)。尚、(6)式において、(n)及び(n−1)は、夫々一の算出タイミングと、その前回の算出タイミングとを表している。即ち、MG1トルク指令値Tgは、前回値からMG1トルク指令値徐変量ΔTgを減算してなる(徐変量の設定態様如何では加算してなる)値である。
Tg(n)=Tg(n−1)+ΔTg・・・(6)
MG1トルク指令値Tgが算出されると、ECU100は、この算出されたMG1トルク指令値Tgに基づいてモータジェネレータMG1のトルク制御を実行すると共に、MG1トルク指令値Tgがゼロとなったか否かを判別する(ステップS703)。MG1トルク指令値Tgがゼロでない場合(ステップS703:NO)、ECU100は、処理をステップS701に戻し、一連の処理を繰り返す。その結果、MG1トルク指令値Tgがゼロとなった場合に(ステップS703:YES)、ECU100は、第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理を終了する。
MG1トルク指令値Tgが算出されると、ECU100は、この算出されたMG1トルク指令値Tgに基づいてモータジェネレータMG1のトルク制御を実行すると共に、MG1トルク指令値Tgがゼロとなったか否かを判別する(ステップS703)。MG1トルク指令値Tgがゼロでない場合(ステップS703:NO)、ECU100は、処理をステップS701に戻し、一連の処理を繰り返す。その結果、MG1トルク指令値Tgがゼロとなった場合に(ステップS703:YES)、ECU100は、第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理を終了する。
ここで、図14を参照し、第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理の効果について説明する。ここに、図14は、第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理が実行される過程におけるタイミングチャートである。尚、同図において、図9と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図14において、縦軸の系列には、上段から順にMG1トルク指令値Tg、ドグクラッチ390の反力、及び駆動トルクが表される。
時刻T10において、ECU100が、ドグクラッチ390における可動部392のストロークが完了したとする。ここで、本実施形態に係るドグクラッチ係合処理が適用された場合の特性を各項目について実線で表すと、MG1トルク指令値Tgは、時刻T10から前述したMG1トルク指令値徐変量ΔTgにより徐変され、時刻T12においてゼロとなる。
一方、ドグクラッチ390の反力は、このMG1トルク指令値Tgの徐変により徐々に増加し(反力なので、図14では負側に表されている)、時刻T12において、固定値TrDGを採る。ドグクラッチ390のトルク反力がこのように連続的に推移することに伴って、駆動トルクは、このようなドグクラッチ390の係合前後において変化は生じない。
ここで、比較例として、可動部320のストローク完了後にMG1トルク指令値Tgがステップ的にゼロに設定された場合の特性を、太い破線で表す。比較例では、時刻T10においてMG1トルク指令値Tgがゼロに設定され、可動部320において回転方向に加えられていたトルクが急激に減少するため、固定部391及び可動部392に形成された、相互に嵌合状態にあるギア歯同士に、所謂ガタ打ちと称される物理的なショックが発生する。
このため、ドグクラッチ390の反力は、一時的に前述したTrDGよりも大きくなり、時刻T11において収束するまでその状態が継続する。この反力の不連続性により、駆動トルクにも同様の影響が現れ、時刻T10において駆動トルクが一時的に上昇し、時刻T11まで継続する。
このように比較例では、MG1トルク指令値Tgが急激に変化するために、ドグクラッチ390の反力に言わば歪が生じ、結局出力軸380に作用する駆動トルクに影響が及ぶ。その結果、ハイブリッド車両のドライバビリティが悪化する或いはハイブリッド車両のドライバへ違和感が与えられる等の不具合が顕在化しかねない。その点、第3実施形態に係るドグクラッチ係合処理が適用された場合には、MG1トルク指令値Tgが、MG1トルク指令値徐変量ΔTgに応じて徐変されるため、ドグクラッチ390の反力が連続的に上昇し、ドグクラッチ390の係合前後で駆動トルクの変動が生じない。従って、ドライバビリティの悪化或いは違和感の発生が抑制され、ドグクラッチ390の係合時間短縮化に係る利益を、より実践上の優位性を保って享受することが可能となるのである。
尚、この際、上述したように、MG1トルク指令値徐変量ΔTgは、MG1トルク指令値Tgが大きい程大きく設定されるため、よりドグクラッチ390の反力への影響が大きくなり易い、係合直前(即ち、MG1トルク指令値Tgがゼロにより近い領域)においてトルクがより精細に減少せしめられる。このため、全体的な係合時間に実践上の不具合(即ち、徐変することによる係合時間の長大化)が発生することが好適に防止されている。
<4:第4実施形態>
次に、図15を参照し、本発明の第4実施形態に係るハイブリッドシステム11について説明する。ここに、図15は、本発明の第4実施形態に係るハイブリッドシステム11の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
<4:第4実施形態>
次に、図15を参照し、本発明の第4実施形態に係るハイブリッドシステム11について説明する。ここに、図15は、本発明の第4実施形態に係るハイブリッドシステム11の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図15において、ハイブリッドシステム11は、ハイブリッド駆動装置10Aの代わりに、ハイブリッド駆動装置11Aを備える点において、上述した各実施形態に係るハイブリッドシステム10と相違する。ハイブリッド駆動装置11Aは、モータジェネレータMG2と出力軸380との動力伝達経路上に、変速装置400を備える点において、ハイブリッド駆動装置10Aと相違している。
変速装置400は、例えばリダクション機構等と称されるプラネタリギアユニットであり、ここでは詳細な構成を省略するが、複数のブレーキ要素、クラッチ要素及びワンウェイクラッチ要素等の係合状態に応じて、MG2回転速度と出力回転速度Noutとの比(即ち、変速比)を段階的に変化させることが可能に構成されている。但し、変速装置400は、他の形式の変速装置であっても構わない。ハイブリッド駆動装置11Aにおいては、ドグクラッチ390の係合状態に応じた、無段変速状態及びオーバードライブ状態の他に、変速装置400を使用した変速が実現可能である。
ところで、このように変速装置400が備わる構成においては、変速装置400による変速期間中に、O/D要求がなされる可能性がある。ところが、このように変速装置400において変速がなされていると、出力回転速度Noutの特定精度が低下する。即ち、この場合、上述した各種実施形態と異なり、出力回転速度Noutは、MG2回転速度に変速装置400の変速比を乗じた値となるが、変速期間中は変速比の特定精度が極端に低下する(別言すれば、変速期間中は、変速比が実質的に不明である)ため、MG2回転速度から算出された出力回転速度Noutは、出力軸380の回転速度を正しく表さない。
このような信頼性の低下した出力回転速度Noutに基づいてモータジェネレータMG1の目標回転速度Ngtagを算出すると、MG1回転速度Ngが目標回転速度Ntagに収束した所で、ドグクラッチ390の可動部392が停止しているか否かは不明である。従って、オーバードライブ処理において、ドグクラッチ390の回転同期が完了した旨の判別がなされ、ドグクラッチ係合処理が実行された場合に、回転状態にある可動部392をストロークさせることによるドグクラッチ390の、或いは固定部391及び可動部392の、更には各々におけるドグ歯の、故障、損傷、変形或いは損壊等を招きかねない。
このような現象について、図16を参照して説明する。ここに、図16は、動力分割機構300の他の共線図である。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図16において、右端には出力軸380の回転速度が表される。ここで、MG2回転速度から算出した出力回転速度Noutが図示白丸m1によって表されるとする。また、この白丸m1に基づいてECU100により算出された、モータジェネレータMG1の目標回転速度Ngtagが、図示白丸m3によって表されるとする。白丸m3は、即ち、ドグクラッチ390の回転速度をゼロとする(図示白丸m4に相当)ための回転速度である。
ところが、実際には、変速比の特定精度低下により、出力回転速度Noutが図示白丸m2に相当する値であったとする。この場合、MG1回転速度Ngが目標回転速度Ngtagに収束しても、ドグクラッチ390の回転速度は図示白丸m5に相当する値となり、即ちゼロとならないのである。
そこで、ハイブリッドシステム11において、ECU100は、図17に示す変速切り替え処理を実行する。ここで、図17を参照し、第4実施形態に係る変速切り替え処理について説明する。ここに、図17は、当該変速切り替え処理のフローチャートである。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図17において、ECU100は、O/D要求がなされた場合(ステップS102:YES)、変速装置400が変速中でないか否かを判別する(ステップS801)。変速装置400における各係合手段は、ECU100の制御により駆動される油圧駆動機構によってその動作状態が制御されるから、ECU100は、変速装置400が変速中であるか否かをリアルタイムに且つ正確に判別することが可能である。
変速装置400が変速中でない場合(ステップS801:YES)、ECU100は、係合許可フラグFGをオン状態に制御すると共に、変速装置400が変速中である場合(ステップS801:NO)、処理をステップS104に移行させる。即ち、係合許可フラグFGがオフ状態のまま、ステップS104に係る判別処理が実行され、ステップS200が選択されて無段変速処理が実行される。
このように、本実施形態によれば、出力回転速度Noutの特定精度が担保されない状況においては、ドグクラッチ390の保護が優先される。従って、ドグクラッチ390の係合時間短縮に係る利益がより効果的に享受される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド駆動装置の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…ハイブリッドシステム、100…ECU、200…エンジン、201…気筒、203…ピストン、205…クランクシャフト、300…動力分割機構、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、380…出力軸、390…ドグクラッチ。
Claims (12)
- 差動回転可能な複数の回転要素を備えた動力分配手段に、内燃機関の機関出力軸、車軸の回転に伴って回転可能な駆動軸、及び回転速度を連続変化させることにより前記機関出力軸と前記駆動軸との回転速度比を連続変化させることが可能な第1の電動機とが連結された構成を有し、前記駆動軸に動力を出力可能な第2の電動機と、前記複数の回転要素のうち一の回転要素に連結され、該一の回転要素の回転に伴って回転可能な可動部及び該可動部に対し相対的に接離可能な固定部を有すると共に、該可動部と該固定部とが係合した状態において該可動部の回転が阻止されることにより、前記回転速度比を所定値に固定することが可能な係合手段とを備えてなるハイブリッド駆動装置の制御装置であって、
前記回転速度比を前記所定値に固定すべき旨の入力がなされた場合に、前記可動部の回転が停止するように前記第1の電動機の目標回転速度を設定する設定手段と、
前記第1の電動機の実回転速度を特定する第1の特定手段と、
前記実回転速度と前記目標回転速度との偏差に基づいて、該偏差に対応する比例項及び該偏差の時間微分値に対応する微分項のうち少なくとも一方と、該偏差の時間積分値に対応する積分項とを少なくとも含む、前記実回転速度を前記目標回転速度へ収束させるための前記第1の電動機の制御量を決定する決定手段と、
前記少なくとも一方の符号と前記積分項の符号とが相違する場合に前記制御量に対する前記積分項の反映を制限する制限手段と、
前記制御量に従って前記第1の電動機を制御する第1の制御手段と、
前記可動部の回転が停止した状態において前記可動部と前記固定部とが係合するように前記係合手段を制御する第2の制御手段と
を具備することを特徴とするハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記所定値は、前記機関出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度未満であることに対応するオーバードライブ変速比である
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記制限手段は、前記符号が相違する場合に、前記積分項を予め設定された初期値に初期化することにより前記積分項の反映を制限する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記初期値はゼロである
ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記可動部と前記固定部との係合を禁止すべき旨の所定の条件が満たされた場合に、前記係合を禁止する係合禁止手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記ハイブリッド駆動装置における要求駆動力を特定する第2の特定手段を更に具備し、
前記係合禁止手段は、前記条件が満たされる場合として、前記要求駆動力の変化の度合いを規定する指標値が所定値よりも大きい場合に前記係合を禁止する
ことを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記駆動軸の回転速度を特定する第3の特定手段を更に具備し、
前記係合禁止手段は、前記条件が満たされる場合として、前記駆動軸の回転速度の変動の度合いを規定する指標値が所定値よりも大きい場合に前記係合を禁止する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記ハイブリッド駆動装置は、前記第2の電動機と前記駆動軸との間の動力伝達経路に、前記第2の電動機と前記駆動軸との回転速度比を変更することが可能な変速装置を更に備え、
前記係合禁止手段は、前記条件が満たされる場合として、前記変速装置による変速がなされている場合に前記係合を禁止する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記係合手段は、前記固定部及び前記可動部の各々における、複数のギア歯が形成された対向面が、所定の対向方向に相互に対向し、且つ前記固定部及び可動部の少なくとも一方が前記対向方向へ所定のストローク量移動することが可能に構成されると共に、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記各々における対向面に形成されたギア歯同士が嵌合することにより前記固定部と前記可動部とが係合するように構成されており、
前記第2の制御手段は、前記可動部の回転が停止した状態において前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動するように前記係合手段を制御し、
前記決定手段は、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記可動部において回転方向に加わるトルクが減少するように前記制御量を決定する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記決定手段は、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記回転方向に加わるトルクがゼロとなるように前記制御量を決定する
ことを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記決定手段は、前記少なくとも一方が前記所定のストローク量移動した場合に、前記制御量を徐変させる
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記決定手段は、前記制御量を徐変させる度合いを前記制御量に応じて決定する
ことを特徴とする請求項11に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。
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