<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、ハイブリッド車両10は、ECU100、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、車速センサ13及びアクセル開度センサ14並びにハイブリッド駆動装置1000を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM等を備え、ハイブリッド車両10の各部の動作を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する第1及び第2動作線切り替え制御を実行可能に構成されている。尚、ECU100は、本発明に係る「切り替え手段」、「特定手段」及び「制御手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給することが可能に構成された不図示のインバータを含み、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御することが可能に構成された制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電手段である。
車速センサ13は、ハイブリッド車両10の車速Vを検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
アクセル開度センサ14は、ハイブリッド車両10の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
ハイブリッド駆動装置1000は、ハイブリッド車両10のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置1000の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置1000の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、ハイブリッド駆動装置1000は、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)及び減速機構400を備える。
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能するように構成されている。ここで、図3を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、エンジン200の一平面構成を例示する模式図である。尚、同図において、図1及び図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも1本の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関の構成は、エンジン200のものに限定されず各種の態様を有してよい。
エンジン200は、シリンダブロック内にシリンダ201が4本直列に配置されてなる直列4気筒エンジンである。エンジン200は、各シリンダ内部において空気と燃料との混合気が燃焼するに際して生じる不図示のピストンの往復運動を、コネクティングロッド及びクランクシャフト(いずれも不図示)を介して回転運動に変換可能に構成されている。このクランクシャフトの回転位置は、ECU100と電気的に接続された不図示のクランクポジションセンサによって検出されており、所定の制御バスを介してECU100により一定又は不定の周期で参照され、後述するVVTコントローラやインジェクタ等の各種動作制御に供される構成となっている。
エンジン200が動作するに際し、外部から吸入された空気は、吸気管202に導かれ、エアクリーナ203によって浄化された後に、各気筒に連通する吸気マニホールド202aへ供給される。また、吸入された空気に係る吸入空気量は、エアクリーナ203の下流に位置するエアフローメータ204によって検出される。エアフローメータ204は、ECU100と電気的に接続されており、エアフローメータ204によって検出された吸入空気量は、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
吸気管202には、スロットルバルブ205が設けられ、その開度に応じて吸気マニホールド202aに供給される吸入空気量が制御される構成となっている。スロットルバルブ205は、スロットルバルブモータ(不図示)等の電動アクチュエータにより駆動される電子制御式のスロットルバルブであり、ECU100と電気的に接続され、ECU100により、例えば不図示のアクセルペダルの開度に応じて或いはアクセルペダルの開度とは無関係にその開度が制御される構成となっている。また、スロットルバルブ205の開度たるスロットル開度は、スロットルバルブ205近傍に設けられたスロットル開度センサ206により検出される。スロットル開度センサ206は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたスロットル開度は、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
シリンダ201内の燃焼室には、吸気マニホールド202aを介して供給される空気と、吸気マニホールド202aに連通する不図示の吸気ポートにおいて、例えば電子制御式のインジェクタ(図示は省略)等から噴射供給される燃料との混合気が、二個の吸気バルブ207を介して吸入される。この際、係る混合気は、吸気バルブ207の開弁時に燃焼室内へ供給される構成となっている。尚、係るインジェクタ等の燃料供給系は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその噴射量及び噴射時期(噴射クランク角)が制御される構成となっている。
燃焼室内部では、燃焼行程において点火プラグ208による点火動作により混合気が燃焼する。尚、点火プラグ208は、ECU100と電気的に接続されており(制御ラインは不図示)、ECU100によってその点火時期(点火クランク角)が制御されるように構成されている。燃焼室において燃焼済みとなった混合気は、不図示の排気ポートに連通する二個の排気バルブ209の開弁時に、排気として係る排気ポートに排出される。係る排気は、排気ポートに連通する排気マニホールド210a及び排気管210を介して排出される。
排気管210には、三元触媒211が設けられており、排気管210に排出された排気は、係る三元触媒211により浄化せしめられ、更に後段に設置される他の触媒装置により順次浄化せしめられた後に車外へ排出される構成となっている。また、エンジン200のシリンダブロック内に収容されるウォータジャケットには、冷却水が循環供給されており、係る冷却水の温度たる冷却水温Twは、水温センサ233によって検出され、水温センサ233と電気的に接続されたECU100によって絶えず把握される構成となっている。
吸気バルブ207は、不図示のシリンダヘッド上に回転可能に支持された吸気カムシャフト212に各吸気バルブ207に対応付けられて固定された吸気カム213によって、その開閉動作が制御される。一方、排気バルブ209は、不図示のシリンダヘッド上に回転可能に支持された排気カムシャフト214に各排気バルブ209に対応付けられて固定された排気カム215によって、その開閉動作が制御される。ここで、本実施形態では特に、吸気側カムシャフト212の一方の端部付近にVVTコントローラ216が備わり、吸気バルブ207のバルブタイミングが可変に制御される構成となっている。
ここで、図4を参照して、VVTコントローラ216の構成について説明する。ここに、図4は、VVTコントローラ216の、吸気カムシャフト212と直交する平面における模式断面図である。
図4において、VVTコントローラ216は、ハウジング217とロータ218とを備える。
ハウジング217は、紙面に垂直な方向へ伸長する吸気カムシャフト212の外周に回動可能に支持されたスプロケット(不図示)にボルト等で締め付けられることによって固定されている。この際、エンジン200におけるクランクシャフトの回転は、タイミングチェーン(不図示)を介してスプロケットとハウジング217に伝達されるため、スプロケット及びハウジング217は、クランクシャフトに同期して回転することが可能である。
吸気カムシャフト212は、エンジン200のシリンダヘッドとベアリングキャップにより回転可能に支持されている。ロータ218は、このように支持された吸気カムシャフト212の一方の端部においてストッパを介してボルトで締め付けられることによって固定されており、ハウジング217内に回動可能に収容されている。また、ハウジング217の内部には、複数の液室が形成されており、その各々が、ロータ218の外周部に形成されたベーン219によって、進角室220及び遅角室221に区画されている。尚、ロータ218に形成された複数のベーン219のうち一つには、ロック孔223が形成されている。ロック孔223の作用については後述する。
吸気カムシャフト212の外周部分には、遅角側流路部222が環状に形成されており、遅角室221の各々に不図示の液圧流路を介して連通している。また、吸気カムシャフト212の外周部には更に、進角側流路部(不図示)が、遅角側流路部222と同様環状に形成されており、進角室220の各々に不図示の液圧流路を介して連通している。
一方、VVTコントローラ216は、前述した遅角側流路部222及び進角側流路部等の液圧流路を含む液圧伝達系225を備える。ここで、図5を参照して、液圧伝達系225について説明する。ここに、図5は、液圧伝達系225の模式図である。
図5において、液圧伝達系225は、スプリング227及びソレノイド228により駆動される液圧制御弁226を備える。液圧制御弁226は、その弁体の位置を、進角室220に液圧を伝達せしめる進角位置、遅角室221に液圧を伝達せしめる遅角位置並びに進角室220及び遅角室221の何れにも液圧を伝達させない非伝達位置のいずれかに切替え可能に構成される。尚、ソレノイド228は、不図示の駆動系を介してECU100と電気的に接続されており、ECU100の上位制御によって制御されるソレノイド電流に応じて、液圧制御弁226の弁体の位置を切替え可能に構成されている。
スプリング227は、液圧制御弁226を図示右方向に付勢する弾性部材である。ソレノイド228に電流が供給されない場合、液圧制御弁226は、スプリング227による付勢を受けて、図示するように遅角位置で停止するように構成されている。
また、液圧伝達系225は、ポンプ229を備える。ポンプ229は、エンジン200の動力によって作動するように構成されており、エンジン200における潤滑用のオイルの一部をオイルパン230から汲み上げて、VVTコントローラ216の各部に循環供給することが可能に構成されている。このポンプ229によって循環供給されるオイルは、液圧制御弁226に接続された遅角側デリバリ231及び進角側デリバリ232を介して、更にはこれらに連通する前述した遅角側流路部222や進角側流路部等を介して夫々最終的に遅角室221及び進角室220に供給される構成となっている。
図2に戻り、モータジェネレータMG1は、本発明に係る「電動機」の一例たる電動発電機であり、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。モータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動機」の他の一例たる電動発電機であり、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有していてもよいし、他の構成を有していてもよい。
動力分割機構300は、中心部に設けられた、本発明に係る「回転要素」の一例たるサンギア303と、サンギア303の外周に同心円状に設けられた、本発明に係る「回転要素」の他の一例たるリングギア301と、サンギア303とリングギア301との間に配置されてサンギア303の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア305と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支する、本発明に係る「回転要素」の更に他の一例たるプラネタリキャリア306とを備えた、本発明に係る「動力分配手段」の一例たる遊星歯車機構である。
ここで、サンギア303は、サンギア軸304を介してMG1のロータ(符合は省略)に結合されており、その回転速度はMG1の回転速度Nmg1と等価である。また、リングギア301は、駆動軸302及び減速機構500を介してMG2の不図示のロータに結合されており、その回転速度はMG2の回転速度Nmg2と等価である。更に、プラネタリキャリア306は、エンジン200のクランクシャフトに結合されており、その回転速度はエンジン200の機関回転速度NEと等価である。
一方、駆動軸302は、ハイブリッド車両の駆動輪たる右前輪FR及び左前輪FLを夫々駆動するドライブシャフトSFR及びSFLと、デファレンシャル等各種減速ギアを含む減速装置としての減速機構500を介して連結されている。従って、モータジェネレータMG2から駆動軸302に出力されるモータトルクは、減速機構500を介して各ドライブシャフトへと伝達され、同様に各ドライブシャフトを介して伝達される各駆動輪からの駆動力は、減速機構500及び駆動軸302を介してモータジェネレータMG2に入力される。即ち、モータジェネレータMG2の回転速度Nmg2は、ハイブリッド車両10の車速Vと一義的な関係にある。
動力分割機構300は、係る構成の下で、エンジン200が発する動力を、プラネタリキャリア306とピニオンギア305とによってサンギア303及びリングギア301に所定の比率(各ギア相互間のギア比に応じた比率)で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能となっている。
尚、本発明に係る「動力分配手段」に係る実施形態上の構成は、動力分割機構300のものに限定されない。例えば、本発明に係る動力分配手段は、複数の遊星歯車機構を備え、一の遊星歯車機構に備わる複数の回転要素が、他の遊星歯車機構に備わる複数の回転要素の各々と適宜連結され、一体の差動機構を構成していてもよい。また、本実施形態に係る減速機構500は、予め設定された減速比に従って駆動軸302の回転速度を減速するに過ぎないが、ハイブリッド車両10は、この種の減速装置とは別に、例えば、複数のクラッチ機構やブレーキ機構を構成要素とする複数の変速段を備えた有段変速装置を備えていてもよい。
<実施形態の動作>
<バルブタイミング制御>
VVTコントローラ216は、以下に説明する三種類の制御モードに従ってその駆動状態が制御される
<強制最遅角モード>
エンジン200が機関停止状態にある期間或いは始動後暫時の期間については強制最遅角モードが実行される。VVTコントローラ216に供給されるオイルの液圧が、エンジン200の停止に伴って減少すると、ベーン219は、可動部のフリクションによって徐々に遅角側に回動し、最終的には最遅角位置(即ち、ベーン219の可動範囲の中で最も遅角側に相当する位置)で停止する。強制最遅角モードにおいては、ベーン219の位置が係る最遅角位置に強制的に固定される。より具体的には、ロック孔223が形成されたベーン219の最遅角位置に相当する部位には、不図示のロックピンがロック孔223に対し出没可能に設置されている。このロックピンは、通常、コイルバネ(不図示)によってロック孔223の方向に付勢を受けており、ロック孔223に所定の解除液圧(ベーン219を回動させるのに要する液圧よりも高圧である)以上の液圧でオイルが供給され、液圧がコイルバネによる付勢に打ち勝つと、ベーン219の回動を阻害しない所定の収容孔に収容される構成となっている。従って、機関停止状態において、液圧の低下に伴いベーン219が最遅角位置で停止すると、コイルバネによる付勢を受けてロックピン224がロック孔223に嵌合し、ベーン219の回動が機械的に固定、即ちロックされる。
<フィードバックモード>
エンジン200の始動に伴って液圧が上昇する過程で、ロック孔223に加わる液圧が上述した解除液圧以上となると、上記強制最遅角モードは解除され、ベーン219はその可動範囲において回動可能な状態となる。この状態において、進角室220及び遅角室221における液圧を変化させた場合、ベーン219は所定の可動範囲内で双方の液圧の度合いに応じて図示進角方向及び遅角方向に回動する。この際、ベーン219が形成されるロータ218もベーン219に伴って回動するため、結果的に吸気カムシャフト212の回転位相は、クランクシャフトの回転位相に対して変化し、即ち吸気カムシャフト212のクランクシャフトに対する回転位相差が変化し、吸気カムシャフト212に固定された吸気バルブ207のバルブタイミングが変化する。この際、ECU100は、吸気バルブ207のバルブタイミングの目標変位角を演算し、ソレノイド228を駆動する駆動系に対しフィードバック電流値に相当する信号を供給してソレノイド228を制御する。その結果、F/Bモードでは、吸気カムシャフト212の回転位相差が、所望の値にフィードバック的に収束する。
<保持モード>
一方、液圧伝達系225を介して進角室220及び遅角室221に然るべき液圧が加えられた状態で、液圧制御弁226の弁体が非伝達位置に制御されると、保持モードが作動する。保持モードでは、進角室220及び遅角室221における液圧が保持されるため、進角室220及び遅角室221双方の液圧によってベーン219は固定され、クランクシャフトの回転に伴うハウジング217の回転がオイルを介してロータ218及びベーン219に伝達される。従って、ロータ218に固定された吸気カムシャフト212は、クランクシャフトとの間で一定の回転位相差が保持された状態でロータ218と一体に回転駆動される。ハイブリッド車両10では、エンジン200が稼動している期間においては基本的にフィードバックモードと保持モードとが適宜実行され、吸気バルブ207のバルブタイミングが目標値に維持される。
ここで、本実施形態において、吸気バルブ207のバルブタイミングは、ベーン219が所定の進角位置で停止した状態に対応する進角側バルブタイミングと、ベーン219が所定の遅角位置(上述の最遅角位置よりは進角側であるとする)で停止した状態に対応する遅角側バルブタイミングとの間で二値的に切り替えられるものとする。この際、ECU100は、予め設定されたバルブタイミングマップを参照し、進角側バルブタイミングと遅角側バルブタイミングとのうち、ハイブリッド車両10の運転条件に適合する一方を目標バルブタイミングとして選択する。尚、このバルブタイミングマップは、ハイブリッド車両10のアクセル開度Ta(要求負荷)と車速Vとをパラメータとするマップとして構築されている。即ち、アクセル開度Taと車速Vとの組み合わせ一つ一つに対し、いずれか一方のバルブタイミングが対応付けられた構成を採る。定性的には、アクセル開度Taが大きい領域(即ち、高負荷領域)において進角側バルブタイミングが選択され、それ以外の領域で遅角側バルブタイミングが選択される。尚、このような本実施形態に係る吸気バルブ207のバルブタイミング制御は一例であり、吸気バルブ207のバルブタイミングは、例えばより多段階に又は連続的に可変に制御されてもよい。
<動作線の制御>
本実施形態に係るハイブリッド車両10では、エンジン200のクランクシャフトの回転速度と駆動軸302の回転速度との比たる変速比を自由に選択することができる。ここで、図6を参照し、係る変速比の制御の仕組みについて説明する。ここに、図6は、ハイブリッド駆動装置1000の各部の動作状態を説明する動作共線図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、縦軸は回転速度を表しており、横軸には、左から順にモータジェネレータMG1、エンジン200及びモータジェネレータMG2が表されている。ここで、動力分割機構300は遊星歯車機構であり、サンギア303(即ち、実質的にMG1)、プラネタリキャリア306(即ち、実質的にエンジン200)及びリングギア301(即ち、実質的にMG2)のうち二要素の回転速度が定まれば、残余の一要素の回転速度が必然的に決定される。即ち、共線図上において各要素の動作状態は、ハイブリッド駆動装置1000の一動作状態について、1本の直線として表すことができる。
例えば、図6において、モータジェネレータMG2の動作点を図示白丸m1とし、エンジン200の反力トルクを負担するモータジェネレータMG1の動作点が図示白丸m3であるとすれば、エンジン200の動作点は必然的に図示白丸m2となる。ここで、車速V(即ち、MG2の回転速度Nmg2及び駆動軸302の回転速度と一義的である)を一定とすれば、MG1の回転速度Nmg1を制御して、MG1の動作点を図示白丸m4或いは白丸m5に変化させた場合、エンジン200の動作点は、夫々図示白丸m6或いは白丸m7に変化する。このように、ハイブリッド駆動装置1000では、モータジェネレータMG1を回転速度制御装置として利用し、エンジン200を所望の動作点で動作させることが可能である。また、この際、駆動軸302の回転速度は変化しないため、必然的に変速比が無段階に変化するのである。ハイブリッド駆動装置1000によれば、このような所謂電気CVT機能を得ることができる。
エンジン200の動作点は、ROMに格納された動作点マップに従って設定される。ここで、図7を参照し、係る動作点マップについて説明する。ここに、図7は、動作点マップの構成を概念的に表してなる模式図である。
図7において、エンジン200の動作点は、図示実線で示される、上記進角側バルブタイミングに対応する進角側動作線又は上記遅角側バルブタイミングに対応する遅角側動作線と、エンジン要求出力に対応する等出力線とが交わる座標点として設定される。尚、図7には、等出力線の一例としてエンジン要求出力Pi(i=0,1,・・・,6)に夫々対応する7本の等出力線EPi(i=0,1,・・・,6)が示されている。例えば、現時点のエンジン200の要求出力がP5であるとする。この場合、エンジン200の動作点は、吸気バルブ207のバルブタイミングが進角側バルブタイミングであれば図示動作点M0(機関回転速度NE0且つエンジントルクTE1)に設定され、吸気バルブ207のバルブタイミングが遅角側バルブタイミングであれば図示動作点M1(同様にNE1(NE1>NE0)且つTE0(TE0<TE1))に設定される。
ここで、進角側動作線及び遅角側動作線(いずれも本発明に係る「動作線」の一例である)について説明する。尚、いずれの動作線も、エンジン要求出力に対しエンジン200の熱効率が最大となる(燃料消費率が最小となる)最適燃費動作点を繋げて得られる動作線である。
吸気バルブ207のバルブタイミングが進角側バルブタイミングである場合、吸排気バルブのバルブオーバラップ量は遅角側バルブタイミングが選択される場合と較べて拡大する。このため、高回転領域においては排気慣性による吸気充填効率の向上が見込まれ、最大吸気量が遅角側バルブタイミングと較べて上昇する。従って、遅角側動作線よりも高負荷側(総じて熱効率が高い側)で動作点を設定することが可能である。一方、低回転領域においては、排気の一部が吸気系に戻されるため、進角側バルブタイミングではかえって吸気充填効率が低下し、吸気量は遅角側バルブタイミングと較べて低下する。
一方、吸気バルブ207のバルブタイミングが遅角側バルブタイミングである場合、吸排気バルブのバルブオーバラップ量は進角側バルブタイミングが選択される場合と較べて減少する。従って、高回転領域における吸気充填効率は、進角側バルブタイミングと較べて低下し、進角側動作線よりも軽負荷側で動作点を設定せざるを得なくなる。一方、低回転領域においては、内部EGR量が進角側バルブタイミングと較べて減少するため、吸気充填効率は進角側バルブタイミングよりも高くなる。その結果、遅角側動作線は進角側動作線よりも高トルク側で設定される。
動作点マップは、上記進角側動作線及び遅角側動作線の各々について、エンジン要求出力に対応する各動作点に機関回転速度NE及びエンジントルクTEの値が対応付けられた構成を有しており、ECU100は、その時点で選択されている吸気バルブ207のバルブタイミングに対応する一方の動作線から、エンジン要求出力に対応する一の動作点を選択的に取得して、エンジン200の動作点が係る選択された動作点となるように、MG1、MG2、スロットルバルブ205及びインジェクタ等を制御する。
ここで特に、吸気バルブ207のバルブタイミングを切り替えるに際しては、進角側動作線と遅角側動作線との間で動作線を切り替える必要が生じる。この動作線の切り替えは、以下に説明する第1及び第2動作線切り替え制御により行われる。尚、図7に示される動作線は、ハイブリッド駆動装置1000においてエンジン200が採り得る動作線の一例に過ぎず、また説明を分かり易くするため適宜模式化されている。従って、エンジン200の動作線は、無論図7に例示される以外の態様を有していてよく、その場合も以下に記述する本実施形態に係る効果は担保される。
<第1動作線切り替え制御の詳細>
ここで、図8を参照し、第1動作線切り替え制御の詳細について説明する。ここに、図8は、第1動作線切り替え制御のフローチャートである。
図8において、ECU100は、現時点がエンジン200の始動期間に該当するか否かを判別する(ステップS101)尚、第1動作線切り替え制御における「始動期間」とは、エンジン200の始動時点からの経過時間であるエンジン始動後経過時間が、VVTコントローラ216の基準遅延時間Tb未満となる時間領域を指す。
ここで、基準遅延時間Tbとは、エンジン始動後、VVTコントローラ216の作動制限が解除されるまでの時間である。補足すると、ベーン219は、解除液圧以下の液圧で回動可能であり、解除液圧に達さない時点でベーン219の回動を開始すると、ベーン219が所謂「噛んだ」状態となり、回動不能な状態となり得る。従って、基本的には、液圧が確実に解除液圧以上となるまで(即ち、エンジン始動後、基準遅延時間Tbが経過するまで)VVTコントローラ216の作動を制限する必要が生じる。従って、係る基準遅延時間Tbの値は、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、エンジン始動後、ロック孔223に確実に解除液圧以上の液圧が供給される時間として設定されている。
エンジン200が機関停止状態にあるか、或いは既にエンジン200の始動期間が過ぎた場合(ステップS101:NO)、ECU100は、処理をステップS101で待機させると共に、エンジン200が始動し且つ始動後経過時間が上記基準遅延時間Tb未満である場合(ステップS101:YES)、ECU100は、VVT進角要求の有無を判別する(ステップS102)。
ここで、「VVT進角要求」とは、吸気バルブ207のバルブタイミングを先述した進角側バルブタイミングに設定すべき旨の要求であり、ECU100は、ハイブリッド車両10の運転条件と先述したバルブタイミングマップとに基づいてその有無を判別する。尚、本実施形態において、吸気バルブ207のバルブタイミングは、進角側バルブタイミングと遅角側バルブタイミングとの間で二値的に切り替えられるため、係るVVT進角要求が生じていない状態とは、即ち吸気バルブ207のバルブタイミングを遅角側バルブタイミングに設定すべき旨の要求が生じている状態と等価である。VVT進角要求がない場合(ステップS102:NO)、ECU100は、処理をステップS101に戻し、一連の処理を繰り返す。
尚、第1動作線切り替え制御は、エンジン200の始動期間内においてなされる制御であり、エンジン始動期間外においてVVT進角要求が発生した場合は、公知の各種制御態様を伴ってVVTコントローラ216は制御される。補足すると、エンジン始動期間外においてVVT進角要求が発生した場合は、既にロック孔223には解除液圧以上の液圧が加わっていることになるから、強制最遅角モードは既に解除されているか、或いは即座に解除可能な状態にある。従って、VVT進角要求に応じて即座にVVTコントローラ216を駆動制御することが可能である。
ステップS102においてVVT進角要求が有る場合(ステップS102:YES)、ECU100は、エンジン200が始動する以前に停止していた期間たるエンジン停止期間Teが、基準値Te0以下であるか否かを判別する(ステップS103)。尚、ハイブリッド車両10では、内燃機関のみを動力源として備える車両と異なり、電動機(本実施形態で言えば、主としてMG2)の動力のみにより所謂EV走行を行うことが可能である。従って、エンジン200は、例えばイグニッションオン時等の他に、EV走行中にハイブリッド車両10の運転条件が変化してEV走行を継続し得ないと判断された場合(物理的、機械的若しくは電気的な制約又は制御上の制約等、その判断要素は各種存在してよい)等においても、その始動が適宜要求され得る。エンジン始動期間にVVT進角要求が発生する状態は、顕著には、このように走行中にエンジン200が始動する場合(例えば、アクセルが踏み増しされてハイブリッド車両10が加速状態となり、ハイブリッド車両10の車速或いは要求出力がEV走行可能な範囲を越えた場合等)に生じ得る。
ここで、エンジン200が機関停止してより相応に長い時間が経過した定常的な機関停止状態においては、VVTコントローラ216に供給される液圧は十分に低下しており、エンジン200のフリクションによりベーン219が最遅角位置まで回動するため、ロックピンがロック孔223に嵌合することとなって、VVTコントローラ216の制御モードは、先述した強制最遅角モードとなっている。従って、少なくとも上述した基準遅延時間Tbが経過するまでは、VVTコントローラ216の駆動を開始することが実践上不可能となる。
一方、エンジン200の停止後に、液圧がベーン219を回動せしめるのに要する液圧未満に低下するまでには、或いはベーン219が最遅角位置まで回動するには、夫々相応の経過時間を要するから、例えばエンジン200が機関停止後十分なインタバルを経ることなく再始動する場合(特に、EV走行中には十分に起こり得る)等には、液圧の上昇を待つことなくバルブタイミングの制御が可能となり得る。ステップS102に係る基準値Te0とは、このように、VVTコントローラ216に対し未だベーン219を回動させるのに十分な液圧が残存していると推定される時間値として、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて設定されている。
エンジン停止期間Teが基準値Te0よりも長い場合(ステップS102:NO)、ECU100は、VVT作動インタバルΔTvをΔTv1に設定する(ステップS106)と共に、エンジン停止期間Teが基準値Te0以下である場合(ステップS102:YES)、ECU100は、VVT作動インタバルΔTvをΔTv0に設定する(ステップS104)。
ここで、VVT作動インタバルΔTvとは、VVT進角要求が生じた時点からECU100がVVTコントローラ216の駆動制御を開始する時点までの遅延時間である。ここで特に、エンジン始動時点からVVT進角要求が発生する(オンとなる)までの経過時間をTpとすると、VVT作動インタバルΔTv1は、下記(1)式により規定される。尚、経過時間Tpの上限値は無論、基準遅延時間Tbである(基準遅延時間よりも大きい値を採ると、エンジン始動期間外となり、第1動作線切り替え制御の制御範囲から逸脱して通常のVVT制御がなされる)。
ΔTv1=ΔTv0+(Tb−Tp)・・・(1)
即ち、VVT作動インタバルΔTv1は、最小値としてΔTv0を採り且つ最大値としてΔTv0+Tbを採る、経過時間Tpに応じて連続的に可変な値である。尚、ΔTv0はゼロに設定されていてもよいし、有意な時間値が設定されていてもよいが、迅速にVVTコントローラ216の作動を開始させる観点から言えば、ゼロ或いはそれに順ずる小さい値が設定されるのが望ましい。ステップS104又はステップS106において、VVT作動インタバルΔTvが設定されると、ECU100は、この設定されたVVT作動インタバルΔTvに従ってVVTコントローラ216を駆動制御する一方で、この設定されたVVT作動インタバルΔTvに同期させる形でエンジン200の動作線を切り替える(ステップS105)。動作線の切り替えがなされると、処理はステップS101に戻される。第1動作線切り替え制御は、このようにして実行される。
ここで、図9を参照し、係る第1動作線切り替え制御の効果について説明する。ここに、図9は、第1動作線切り替え制御の実行時における各部の動作を概念的に表してなる模式的なタイミングチャートである。
図9において、上段から順にエンジン200の動作状態、VVT進角要求の有無、VVT進角量及びエンジン出力の夫々時間推移が示されている。
時刻T1において、エンジン200が始動し、時刻T2においてVVT進角要求が発生したとする。また、VVT進角量及びエンジン出力について、エンジン停止期間Teが基準値Te0以下である場合の時間特性(以下、適宜「第1の特性」とする)を実線、エンジン停止期間Teが基準値よりも長い場合の時間特性(以下、適宜「第2の特性」とする)を破線として表すものとする。
ここで、第1の特性によれば、VVTコントローラ216に十分な液圧が加わっているとの判断の下、ECU100は、時刻T2から上記ΔTv0が経過した時刻T3においてVVTコントローラ216の駆動制御を開始する。その結果、時刻T3を境にベーン219は回動を開始し、時刻T4において、VVT進角量が、進角側バルブタイミングを規定するベーン219の進角位置に相当する図示A1に収束する。また、エンジン200の動作線も、VVT作動インタバルΔTvに同期して切り替えられるため、エンジン出力もまた時刻T3において増加し始め、時刻T4において要求出力たるPe0に収束する。尚、実際には、ECU100が駆動制御を開始してからVVTコントローラ216のベーン219が回動を開始するまでには、VTコントローラ216の物理的、機械的又は電気的構成上生じ得る動作遅延が生じ得るが、ここでは、説明の煩雑化を防ぐ目的から省略する。
一方、第2の特性によれば、VVTコントローラ216が強制最遅角モードにあると判断されるため、上記(1)式に従って、VVT作動インタバルΔTvが設定される。ここで、時刻T4と時刻T1との偏差を上記基準遅延時間Tbとすると、VVTコントローラ216は、時刻T4から、上記ΔTv0が経過した時刻T5において作動を開始し、時刻T5を境にベーン219は回動を開始し、時刻T6において、VVT進角量が、進角側バルブタイミングを規定するベーン219の進角位置に相当する図示A1に収束する。また、エンジン200の動作線も、VVT作動インタバルΔTvに同期して切り替えられるため、エンジン出力もまた時刻T5において増加し始め、時刻T6において要求出力たるPe0に収束する。
このように、本実施形態に係る第1動作線切り替え制御によれば、エンジン始動期間にVVT進角要求が生じた場合に、信頼性を損なうことなく可及的に早期にVVTコントローラ216の駆動制御を開始することが可能となる。この際、エンジン200の動作線も、吸気バルブ207のバルブタイミングに同期するため、エンジン出力を早期に向上させることが可能となるのである。尚、第1動作線切り替え制御は、エンジン停止期間が比較的短い場合には、VVTコントローラ216を再度始動するために要する時間が短くて済む点に着眼した、エンジン停止期間に応じてVVTコントローラ216の始動タイミングを可変とする技術思想に基づいたものであり、図8及び図9はその一例を示すに過ぎず、その実践的制御態様は、上記に限らず各種態様を採り得る。
<第2動作線切り替え制御の詳細>
次に、図10を参照し、第2動作線切り替え制御の詳細について説明する。ここに、図10は、第2動作線切り替え制御のフローチャートである。
図10において、ECU100は、吸気バルブ207のバルブタイミングが進角側バルブタイミングから遅角側バルブタイミングへ切り替えられたか否か(近未来的に切り替えられることが明らかなタイミングを含む)を判別する(ステップS201)。この種の切り替えタイミングではない場合(ステップS201:NO)、ECU100は、ステップS201で処理を待機させると共に、この種の切り替えタイミングである場合(ステップS201:YES)、ECU100は、VVTコントローラ216の駆動制御による吸気バルブ207のバルブタイミングを進角側バルブタイミングから遅角側バルブタイミングに切り替えると共に、下記(2)式により機関回転速度偏差ΔNEを算出し、この機関回転速度ΔNEが閾値A以上であるか否かを判別する(ステップS202)。
ΔNE=NEbase−NEtag・・・(2)
(2)式において、NEbaseは、基準機関回転速度であり、エンジン要求出力に応じて設定される動作点(尚、ステップS201の判別が「YES」側に分岐する場合、進角側動作線上の動作点である)の機関回転速度である。基準機関回転速度NEbaseは、エンジン200の機関回転速度の過渡的な目標値であり、本発明に係る「基準値」の一例である。また、NEtagは、目標回転速度であり、機関回転速度を基準機関回転速度へ収束させるにあたっての、機関回転速度の最終的な目標値である。目標回転速度NEtagは、本発明に係る「目標値」の一例である。尚、閾値Aは、本発明に係る「所定値」の一例であるが、閾値Aの詳細については後述する。
ECU100は、機関回転速度偏差ΔNEが閾値A未満である場合(ステップS202:NO)、動作線切り替え時間TmをTm2に設定し(ステップS204)、機関回転速度偏差ΔNEが閾値A以上である場合(ステップS202:YES)動作線切り替え時間TmをTm1(Tm1<Tm2)に設定する(ステップS203)。ステップS203又はステップS204において動作線切り替え時間Tmが設定されると、ECU100は、設定された動作線切り替え時間Tmでエンジン200の動作線を切り替える(ステップS205)。動作線の切り替えが終了すると、処理はステップS201に戻される。第2動作線切り替え制御はこのようにして実行される。
ここで、図11を参照し、第2動作線切り替え制御の詳細について説明する。ここに、図11は、第2動作線切り替え制御の実行時における各部の動作を概念的に表してなる模式的なタイミングチャートである。尚、同図において、図9と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図11を参照する前に図7を参照して補足すると、進角側動作線から遅角側動作線へ動作線を切り替える際、エンジン動作点は、エンジン要求出力が例えば図示P5であれば、図示動作点M0から動作点M1へ切り替えられる。この場合、機関回転速度はNE0からNE1へと上昇することとなる。進角側動作線から遅角側動作線への動作線の切り替えは、定性的には高回転領域で生じ得るため、このように切り替えに際しては、基本的に機関回転速度NEの上昇を伴い得る。尚、図11を参照した説明では、動作線切り替え前の基準機関回転速度NEbaseをNE0、動作線切り替え後の基準機関回転速度NEbaseをNE1とする。
図11において、上段から順に、VVT進角要求の有無、ΔNEが閾値A以上である場合の基準機関回転速度NEbase及び目標機関回転速度NEtagの時間特性(以下、適宜「第1の時間特性」と称する)並びにΔNEが閾値A未満である場合の基準機関回転速度NEbase及び目標機関回転速度NEtagの時間特性(以下、適宜「第2の時間特性」と称する)が示されている。また、第1及び第2の時間特性の各々において、実線は基準機関回転速度NEbaseに、破線は目標機関回転速度NEtagに夫々対応している。
図11において、時刻T10にVVT進角要求がオフとなり、吸気バルブ207のバルブタイミングが進角側バルブタイミングから遅角側バルブタイミングに切り替えられたとする。この進角要求がオフとなった時点から基準機関回転速度NEbaseを最終目標であるNE1に設定するまでの時間を動作線の切り替え時間Tmと定義すると、第1の特性によれば、時刻T10から動作線切り替え時間Tm1が経過した時刻T11において動作線の切り替えが終了する。
ここで、目標機関回転速度NEtagは、VVT進角要求がオフになる以前から機関回転速度NEが上昇傾向にあるため、時刻T10において基準機関回転速度NEbase(即ち、NE0)未満のNE4であり、最終的にNE1に収束するのは、時刻T11よりも遅い時刻T12となっている。即ち、目標回転速度NEtagが設定されてからモータジェネレータMG1の回転制御により実際にエンジン200の機関回転速度NEがそれに追従するまでの時間を無視すれば、この場合、実際にエンジン200の動作点が切り替わるのは、時刻T12となる。
一方、第2の特性によれば、時刻T10から動作線切り替え時間Tm2が経過した時刻T13において動作線の切り替えが終了する。第1の特性と同様に、目標機関回転速度NEtagは、VVT進角要求がオフになる以前から機関回転速度NEが上昇傾向にあるため、時刻T10において基準機関回転速度NEbase(即ち、NE0)未満のNE5であり、最終的にNE1に収束するのは、時刻T13よりも遅い時刻T14となっている。即ち、目標回転速度NEtagが設定されてからモータジェネレータMG1の回転制御により実際にエンジン200の機関回転速度NEがそれに追従するまでの時間を無視すれば、この場合、実際にエンジン200の動作点が切り替わるのは、時刻T14となり、動作点が切り替わるまでに、機関回転速度偏差ΔNEが閾値A以上である場合と較べて、時刻T14と時刻T12との偏差に相当する時間遅延が発生することとなる。
エンジン200の動作点は、既に述べたように、エンジン200の熱効率が可及的に大きくなるように(或いは、ハイブリッド駆動装置1000のシステム効率が可及的に大きくなるように)設定されており、動作点の切り替えに要する時間は、ハイブリッド車両10の燃費に直結する。従って、第2の特性は、第1の特性と較べて、ハイブリッド車両10の燃費の観点からは、実践上有意な差異として顕在化し得るか否かは別として劣る特性となる。
このように、動作線切り替え時間Tmは、基本的に短い方が好ましいことは明らかであるが、その一方で、動作線切り替え時間Tmの短縮方向への変化は、動作線(動作点でも同様である)切り替え期間中における機関回転速度NEの変動の度合いを増大させる方向に作用する。
上記例で言えば、機関回転速度偏差ΔNEが閾値A以上である場合、動作線の切り替え速度は(NE1−NE0)/Tm1となり、機関回転速度偏差ΔNEが閾値A未満である場合の切り替え速度たる(NE1−NE0)/Tm2よりも高くなる。この種の過渡的な回転変動は、ドライバビリティの低下を招来する要因となる。即ち、定性的には、この種の動作線の切り替え期間において、燃費とドライバビリティとは背反の関係となる。
一方、動作線の切り替え期間中に回転変動が生じたとしても、動作線の切り替え以前に既に相応の回転変動が生じている場合、回転変動の度合い自体に変化はなくとも、ドライバビリティに与える影響は軽減される。
ここで特に、機関回転速度偏差ΔNEの大きさは、動作線切り替え要求が生じる以前における機関回転速度NEの変動の度合いと一義的な関係があり、基準機関回転速度NEbaseの変化が大きい場合、目標機関回転速度NEtagの追従が遅れるため、ΔNEもまた大きくなる。即ち、ΔNEの大小は、当該回転変動の度合いの大小に夫々一対一、一対多、多対一又は多対多に対応する。
例えば、図11を参照すれば、機関回転速度偏差ΔNEが閾値A以上である場合に対応する第1の特性において、動作線切り替え以前における機関回転速度の変化率は、(NE0−NE3)/dt1=(NE4−NE2)/dt1であり、ΔNEが閾値A未満である場合に対応する第2の特性における当該変化率たる、(NE0−NE7)/dt1=(NE5−NE6)/dt1よりも大きい。
このため、機関回転速度偏差ΔNEと閾値Aとの比較判別結果に基づいて動作線の切り替え時間を適切に制御することが可能となるのである。本実施形態において、閾値Aは、それ以上の領域が、動作線切り替え時間Tm1に従って早期に動作線を切り替えてもドライバビリティの低下が少なくとも実践的にみて顕在化しない程度の機関回転速度の変動が生じている場合に対応するように、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて設定されている。
このように、第2動作線切り替え制御によれば、ドライバビリティの低下を招来しない範囲で可及的に早期に動作線を切り替えることが可能となり、エンジン200を可及的に高効率に動作させることが可能となるのである。
尚、ここでは、動作線切り替え時間TmはTm1とTm2との間で二値的に切り替えられる構成としたが、VVT進角要求がオンからオフに変化した時点のエンジン要求出力或いは基準機関回転速度NEbaseの値によっては、動作線切り替え時間Tmが同一でも動作線切り替え速度は変化し得る。係る点に鑑みれば、動作線切り替え時間Tmは、多段階に又は連続的に切り替えられてもよい。即ち、本発明の本質的な技術思想は、動作線切り替え前後における機関回転速度の過度な変動を防止した上で可及的に早期に動作線を切り替える点にあり、一の目標偏差(動作線切り替え前後の基準機関回転速度の偏差)について、機関回転速度偏差ΔNEの大小が動作線切り替え時間Tmの小大に夫々対応する限りにおいて、目標偏差毎の動作線切り替え時間又は機関回転速度偏差ΔNEに係る閾値の設定態様はどのようなものであってもよく、いずれにせよ本発明に係る「特定された偏差に応じて動作線の切り替え時間を制御する」動作の範疇である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、201…シリンダ、216…VVTコントローラ、217…ハウジング、218…ロータ、219…ベーン、220…進角室、221…遅角室、223…ロック孔、225…液圧伝達系、226…液圧制御弁、227…スプリング、228…ソレノイド、300…動力分割機構、1000…ハイブリッド駆動装置、MG1、MG2…モータジェネレータ。