以下、本発明を画像形成装置の一種であるインクジェット式複合型プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図5を用いて説明する。図1は、インクジェット式複合型プリンターの斜視図である。図1に示すように、画像形成装置としてのインクジェット式複合型プリンター(複合機)(以下、単に「プリンター11」という)は、一台で、スキャナー、プリンター、コピーの3つの機能を備えるカラープリンターである。プリンター11は、原稿の画像を読み取って画像データを生成するスキャナー部12と、印刷データに基づく画像をターゲットとしての用紙P(記録媒体)に印刷するプリンター部13と、操作パネル14とを備えている。なお、コピー機能は、スキャナー部12で読み取った画像データに基づきプリンター部13が印刷することで実現される。
プリンター部13の上側に配置されたスキャナー部12は、その上部に、原稿を載置するための原稿台15と、この原稿台15を覆うことが可能な開閉式の原稿台カバー16とを有している。
プリンター11の下部には、複数枚の用紙Pを収容可能な給紙カセット17が脱着可能な状態で挿着されている。給紙カセット17の上側部位には排出部18が開口しており、印刷後の用紙Pは排出部18に設けられた伸縮式の排紙スタッカー20上に排出される。
プリンター11の前面に配置された操作パネル14は、ユーザーが各種操作を行うための操作部21と、メニュー画面や画像選択画面などを表示するための表示部22とを備えている。操作部21には、電源をオン/オフ(投入/遮断)する電源スイッチ23や、印刷開始を指示する印刷開始スイッチ24、コピー開始を指示するコピースイッチ25、キャンセルスイッチ26等が設けられている。
また、プリンター11は、その前面右側に設けられたカードスロット27に挿着されたメモリーカードMCに保存された画像データに基づく画像の印刷も可能になっている。さらに、プリンター11はUSBポート(図示せず)を備え、パーソナルコンピューター等のホスト装置100(図3に示す)のプリンタードライバーからUSBケーブルを介して受信した印刷データに基づく印刷も可能になっている。なお、プリンター11の前部左右両側下部には、複数個のインクカートリッジ28がカバー13aに覆われた状態で収容されている。
本実施形態のプリンター11は、操作パネル14に対する操作やカードスロット27に対するメモリーカードMCの脱着操作などの各種操作、及びスキャナー部12やプリンター部13による各種動作(スキャン動作、印刷動作、コピー動作等)がないまま経過時間が設定時間に達すると、自動で電源をオフするオートパワーオフ機能を備えている。
図2はプリンター部の斜視図である。図2に示すように、プリンター部13は、本体フレーム29の内側に架設されたガイド軸30に沿って主走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ31を備えている。キャリッジ31は、一対のプーリー32,32に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト33に固定され、一方のプーリー32に駆動軸が取着されたキャリッジモーター34が正逆転駆動されることにより主走査方向Xに往復移動する。
キャリッジ31の下部には、インクジェット式の記録ヘッド35が設けられており、この記録ヘッド35の下面に開口する複数列のノズル(図示せず)からインクを噴射することで用紙Pへの印刷が行われる。記録ヘッド35の移動経路の下側には、記録ヘッド35と用紙Pとの間隔を規定するプラテン36が設けられている。記録ヘッド35へは複数本のインク供給チューブを集束するフレキシブル配管板37を通じて複数のインクカートリッジ28(図1参照)から複数色のインクが供給されるようになっている。
また、キャリッジ31は、その背面側にガイド軸30に沿って延びるように設けられたリニアエンコーダー38から出力されるキャリッジ31の移動量に比例する数のパルスを有するパルス信号に基づき位置制御及び速度制御されるようになっている。
図2におけるプリンター11の後部には、給紙カセット17(図1参照)内の用紙Pを、プラテン36上へ1枚ずつ給送する自動給送装置39が設けられている。自動給送装置39から給送された用紙Pは、本体フレーム29の一端側下部に配設された紙送りモーター40の駆動力により、プラテン36を挟んで用紙搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ配置された搬送ローラー対41及び排出ローラー対(図示省略)がそれぞれ回転することで、副走査方向Yに搬送される。
また、プリンター11には、記録ヘッド35とプラテン36との間隔(プラテンギャップ)を調整可能に、キャリッジ31の高さ方向の移動が可能なプラテンギャップ自動調整装置(以下、「APG調整装置42」という)が装備されている。APG調整装置42は、用紙Pの紙厚に応じてキャリッジ31の高さ位置を調整して、記録ヘッド35と用紙Pの間に適切なペーパーギャップを確保する。そして、キャリッジ31を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド35のノズルから用紙Pにインクを噴射する印字動作と、用紙Pを副走査方向Yに指定の搬送量で搬送する送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙Pに印刷が施される。
図2においてキャリッジ31が移動経路上一端部のホーム位置に配置された際の直下には、記録ヘッド35に対してノズルクリーニング等を行うメンテナンス装置44が配設されている。メンテナンス装置44は、記録ヘッド35をキャッピングするためのキャップ45と、記録ヘッド35のノズル開口面を払拭するためのワイパー46と、キャリッジ31をホーム位置にロックするためのロック部材47(ロックレバー)と、これらの部材45〜47を昇降させる昇降機構44aと、吸引ポンプ48とを備える。キャリッジ31がホーム位置に移動している印刷待機中は、ノズル目詰まり防止のために記録ヘッド35にキャップ45で蓋をし、さらにロック部材47が凹部31aに係入されることでキャリッジ31はホーム位置にロックされる。プリンター11は、キャリッジ31がホーム位置にある状態で電源オフされる。そのため、エラー発生時にユーザーが電源スイッチ23をオフ操作したり、電源プラグがコンセントから抜かれたり停電などの特殊事情がない限り、電源オフ中のキャリッジ31はホーム位置に保持される。なお、吸引ポンプ48は、記録ヘッド35のノズルからインクを吸引排出させるクリーニングの際に駆動される。また、自動給送装置39、APG調整装置42及び吸引ポンプ48は紙送りモーター40を共通の動力源としているが、各装置39、42、44に専用モーターを個別に設けてもよい。
図3は、プリンターの電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、プリンター11は、プリンター11を統括的に制御するコントローラー51を備える。コントローラー51には、リニアエンコーダー38、スキャナー52、記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40が電気的に接続されている。また、プリンター11から延出する電源ケーブル先端の電源プラグ53が、不図示のコンセント(プラグソケット)に差し込まれることで、電源54からの交流がプリンター11内の電源回路55に供給される。
また、プリンター11は、USB通信部56を備え、ホスト装置100から通信ケーブルを介して転送されてきた印刷データ(印刷ジョブデータ)はUSB通信部56で受信され、コントローラー51に送られる。
また、プリンター11は、リング検出部58及びFAX通信部59(ファクシミリ通信部)を備える。電話回線を介したファックスの着信は、リング検出部58がリング信号を検出したリング検出信号が入力されることでコントローラー51は認知し、コントローラー51はファックスの着信があると、FAX通信部59をFAX通信可能な接続状態にする。この結果、電話回線を介して送られてきたファックスデータはFAX通信部59を介してコントローラー51に受信される。このFAX通信部59は、プリンター11からファックスデータを送信する際にも使用される。
電源回路55は、電源54から供給された交流を直流に変換し、その変換した直流電圧を、操作パネル14、コントローラー51、スキャナー52、記録ヘッド35、各モーター34,40、各通信部56,59、及びリング検出部58などの各所に供給する。
図3に示すコントローラー51は、マイクロコンピューター(以下、単に「コンピューター61」と称す)及びリセットIC62を内蔵している。さらに、コンピューター61は、メイン制御部63、サブ制御部64、ROM65及びRAM66を備えている。メイン制御部63は、例えばCPU(中央処理装置)とASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成され、一方、サブ制御部64は例えばASICにより構成されている。
ROM65には、メイン制御部63を構成するCPUが実行するための制御プログラム等が記憶されている。RAM66には、CPUの演算結果や各種設定データなどが一時記憶される。また、RAM66は、プリンター11が受信した印刷データ、メイン制御部63を構成するCPUやASICがデータに画像処理などを施して得た画像データなどを一時格納するバッファーとしても用いられる。なお、コンピューター61は、CPUがプログラムを実行して構築されるソフトウェアの部分と、ASIC等のハードウェアの部分とにより構成されるが、ソフトウェアで構成したりハードウェアで構成したりしてもよい。
メイン制御部63は、スキャナー52、記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40を駆動制御する。例えばホスト装置100から印刷データを受信したとき、又は電話回線を通じてファックスデータを受信したときは、メイン制御部63が記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40を駆動制御することにより、その受信したデータに基づく印刷を行う。
本実施形態におけるプリンター11は、操作パネル14(そのうちの操作部21)の操作、及びスキャン動作、印刷動作、コピー動作などの各種動作がない状態のまま、その経過時間が設定時間に達すると、プリンター11の電源を自動でオフするオートパワーオフ機能(自動電源オフ機能)を有している。メイン制御部63は、前記操作及び動作がないまま経過時間が設定時間に達すると、サブ制御部64にオートパワーオフ(自動電源オフ)を指示する。サブ制御部64が電源スイッチ23からオフ操作信号を入力したとき、及び、メイン制御部63からオートパワーオフ指示信号を受け付けたときに、電源回路55を制御してその出力電圧を停止させるようになっている。このとき、オフ操作信号入力時は、サブ制御部64はプリンター11を完全に電源オフさせ、電源オン中に保持していた各種情報は不揮発性記憶領域にあるもの以外すべて消去される。一方、オートパワーオフ指示信号の入力時は、サブ制御部64は、オートパワーオフ状態であることを示す情報、及びオートパワーオフから復帰後の初期化動作を省略する替わりに必要な位置情報を不揮発領域に保持し、かつオートパワーオフから自動復帰するためのトリガーとなるイベントの発生を検出可能に一部の検出系(56,58)への電力供給を維持した状態で、プリンター11の電源をオフする。
次に、電源のオン・オフ制御に関する構成について詳細に説明する。図3に示すように、サブ制御部64は、電源制御部71、不揮発性記憶手段としての不揮発性記憶部72及び第1USB処理部73を内蔵している。電源制御部71は、電源オフ状態下にあっても、電源スイッチ23からのオン操作信号を検出できるようにその内部の電源オン操作検出系の回路に電力が供給されており、電源スイッチ23から電源オン操作信号を入力すると、電源回路55を制御して電源をオンさせる。その結果、電源回路55からプリンター11内の各所へ必要な所定電圧が出力される。
電源回路55は、電源スイッチ23がオン操作状態(オン操作信号入力状態)にあり、かつ電源54から電力供給がある場合に、リセットIC62へ規定の電圧を出力する。リセットIC62は、コンピューター61に対してリセット信号を出力する回路である。リセットIC62は、電源回路55からの入力電圧が規定の閾値を超えると、リセット信号を出力する。リセット信号は、最初Lレベルで一定時間(例えば10〜30ミリ秒)経過後に遅れてHレベルに立ち上がる信号である。リセットIC62の出力は、Hレベルに立ち上がった後は、電源回路55からの入力電圧が規定の閾値以下になれば直ちにLレベルに立ち下がる。よって、(1)電源プラグ53がコンセントに差し込まれた状態で電源スイッチ23がオン操作された時、あるいは、(2)プリンター11が電源オン(つまり電源スイッチ23がオン操作状態)中に電源プラグ53がコンセントから抜かれ、その後、電源プラグ53にコンセントが差し込まれた時、又は(3)プリンター11が電源オン中に停電し、その後、停電から復帰した時には、リセットIC62からリセット信号が出力されることになる。
図3に示すように、コンピューター61は、リセット信号を入力する負論理のオア回路(以下、「負論理オア回路74」と称す)を内蔵している。リセットIC62の出力端子は、負論理オア回路74の2つの入力端子のうち一方と接続され、負論理オア回路74の他方の入力端子にはサブ制御部64の出力端子が接続されている。そして、この負論理オア回路74の出力端子はメイン制御部63のRESET端子に接続されている。
電源制御部71は、上記(1)〜(3)の場合に、電源スイッチ23からオン操作信号を入力し、オン操作信号の入力があると、サブ制御部64内の不図示のクロック回路を駆動する。この結果、サブ制御部64内のクロック回路から出力されたクロックパルス(クロック信号)が、メイン制御部63のCLK端子に入力されるようになっている。メイン制御部63はCMOS素子で動作する回路であるので、CLK端子にクロックパルスが入力されることで動作する。このとき、負論理オア回路74の2つの入力端子には、そのうち一方にリセットIC62からのリセット信号が、他方にはサブ制御部64からの出力信号が入力されるので、負論理オア回路74の出力端子からはリセット信号が出力され、そのリセット信号がメイン制御部63のRESET端子に入力される。こうして、メイン制御部63は、そのCLK端子にクロックパルスが入力されると共に、そのRESET端子にリセット信号が入力されることで起動する。
また、図3に示すように、サブ制御部64内の不揮発性記憶部72には、フリップフロップ75及び不揮発性メモリー76が内蔵されている。リセットIC62からのリセット信号はフリップフロップ75にも入力され、フリップフロップ75はリセット信号を入力することにより「0」にリセットされるようになっている。
メイン制御部63は起動されると、最初にコンピューター61の初期化処理を行い、続いてプリンター11の初期化動作を行う。そして、初期化動作を終了したプリンター11は、ユーザーによる操作や、通信トリガー、受信データ等に基づき、パネル表示動作、スキャン動作、印刷動作、コピー動作などを行う。これらの初期化処理、初期化動作、パネル表示動作、スキャン動作、印刷動作、コピー動作などの各種動作は、メイン制御部63が表示部22や、スキャナー52、記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40等のメカニカル機構を制御することにより行われる。なお、初期化処理及び初期化動作の詳細は後述する。
図3に示すように、メイン制御部63は主制御部80を備え、この主制御部80はメイン制御部63を統括的に制御する。また、メイン制御部63は、オートパワーオフ機能を実現するための時間管理及びサブ制御部64に対してオートパワーオフの指示を行うオートパワーオフ制御部81、オートパワーオフさせるまでの経過時間を計時する計時部82(経過時間測定手段)、時刻を計時するための時計部83を備える。また、メイン制御部63は、電源オフ状態から電源オン状態に復帰する際に、オートパワーオフからの復帰か通常電源オフからの復帰かを判別する判断部84、及びイベントが発生したときにそのイベントの種類を判定するイベント判定部85を備えている。さらに、メイン制御部63は、サブ制御部64側の第1USB処理部73と通信可能な第2USB処理部86、表示部22の表示制御を行う表示処理部87、プリンター11の初期化動作を行う初期化処理部88(初期化動作制御手段)、ファックスデータに画像処理を施して印刷データを生成するFAX処理部89、スキャナー52にスキャン動作を行わせるスキャナー処理部90、プリンター部13に印刷動作を行わせる印刷処理部91、及びコピー動作(スキャン動作及び印刷動作)を行わせるコピー処理部92を内蔵している。また、メイン制御部63は、リニアエンコーダー38からのエンコーダーパルス信号を基にキャリッジ31の主走査方向Xにおける位置を測定する位置カウンター93を内蔵している。なお、本実施形態では、電源制御部71、リング検出部58、USB通信部56、第1USB処理部73、操作部21、電源スイッチ23及び電源回路55により、電源投入手段が構成される。また、電源回路55、電源制御部71及びオートパワーオフ制御部81などにより、電源オフ手段が構成される。
主制御部80は、イベントに応じたジョブを実行させるために用意されている処理部86〜92のうちその指示されたジョブの実行に必要な処理部を起動する。表示処理部87は、操作部21が操作された操作信号を入力した主制御部80により起動され、その操作内容に応じて表示部22の画面を切り換えるなどの表示制御を行う。ホスト装置100からUSB通信部56が受信した印刷データは、サブ制御部64内の第1USB処理部73を経由してメイン制御部63内の第2USB処理部86に入力される。ここで、第1USB処理部73は、ホスト装置100からプリンター11が起動状態(ケーブル接続状態)にあるか否かの確認など下位階層における要求に応答する簡易な通信処理を主に担当する。第2USB処理部86は、プリンター11が印刷可能状態にあることが確認できた後、ホスト装置100から転送されてくる印刷データを受信するデータ受信処理(転送処理)など上位階層の通信処理を主に担当する。
印刷処理部91は、第2USB処理部86を経由して受信した印刷データに基づいて、記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40を駆動制御することで、プリンター部13に印刷データに基づく画像や文書を用紙Pに印刷させる印刷動作を行わせる。
また、FAX処理部89は、リング検出部58がリング信号を検出したファックス着信時に、電話回線と接続されたFAX通信部59が受信したファックスデータを入力し、その入力したファックスデータに画像処理を施し印刷データに変換する。次に印刷処理部91が、FAX処理部89からの印刷データに基づいて記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40を駆動制御することで、プリンター部13にファックス印刷を行わせる。
また、スキャナー処理部90は、ホスト装置100からスキャン指令を受け付けた主制御部80により起動される。スキャナー処理部90は、スキャナー52を駆動して原稿台15にセットされた原稿の読み取りを行わせると共に、スキャナー52から入力される読取信号(例えばRGB信号)に基づいて原稿の画像データを生成する。さらに、コピー処理部92は、コピースイッチ25が操作された操作信号を受け付けた主制御部80により起動される。コピー処理部92はスキャナー52にスキャン動作を行わせて原稿台15の原稿から画像を読み取って生成された画像データを取得し、その取得した画像データを印刷データに変換しつつ、その印刷データに基づいて記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40を駆動制御することで、プリンター部13にコピー印刷を行わせる。
ここで、プリンター11が電源オンされた最初に行う初期化処理は、コンピューター61の初期化処理と、プリンター11の初期化動作とに分かれる。コンピューター61の初期化処理とは、システム初期化、メモリーチェック、周辺ハードウェアの初期化(設定)、オペレーティングシステムの起動、タスクの起動(初期起動)などの初期化項目がある。コンピューター61の初期化処理は、メイン制御部63のCPUが行う。一方、プリンター11の初期化動作は、初期化処理部88が主制御部80の指示に従って行う。初期化処理部88は、コンピューター61の初期化処理終了を確認した主制御部80により起動される。初期化処理部88が初期化の対象とするプリンター11の初期化動作には、キャリッジ31のホームシーク動作、APG調整装置42のリセット動作(APGリセット動作)、インクチェック、PFリセット動作、キャッピング動作、スキャナーリセット動作などの初期化項目がある。本実施形態では、初期化処理部88は、判断部84の判断結果に応じて、通常電源オフ状態からの復帰と判断されたときには全ての初期化項目について初期化動作を行う完全初期化動作を実施し、オートパワーオフ状態からの復帰と判断されたときには一部の初期化項目の初期化動作を省略して行う簡易初期化動作を実施する。
ここで、各初期化動作について説明する。ホームシーク動作とは、キャリッジ31の主走査方向Xの原点出し及びキャリッジ31がその移動経路全域で移動が可能であることを保証する処理動作である。具体的には、前述の位置カウンター93をキャリッジ31が主走査方向Xの原点位置にあるときにリセットするリセット動作と、キャリッジ31を主走査方向Xの移動経路全域で何ら支障なく移動できることを確認するための試走動作とを含む。リセット動作では、キャリッジモーター34を駆動してキャリッジ31をホーム位置側のエンドまで移動させ、モーター電流値が閾値を超えてエンドに達したと判断されると、位置カウンター93をリセットすることでキャリッジ31の主走査方向の原点を設定する。また、試走動作では、その後、キャリッジモーター34を逆転駆動させてキャリッジ31を反ホーム位置側のエンドまで移動させてその主走査方向Xの移動経路全域でキャリッジ31が何ら支障なく移動できることを確認後、キャリッジ31をホーム位置に移動させる。
APGリセット動作とは、キャリッジ31の高さ方向の原点出し及びキャリッジ31が高さ方向の移動経路全域で移動が可能であることを保証する処理動作である。具体的には、まずAPG調整装置42を駆動してキャリッジ31を上側のエンド位置まで最上昇させることで、その最上昇位置で不図示のPG用のカウンターをリセットするリセット動作を行う。次にAPG調整装置42を再び駆動してPGカウンターの計数値に基づきキャリッジ31を下降側のエンドまで一旦下降させた後に最上昇位置に戻し、高さ方向の移動経路全域でキャリッジ31が何ら支障なく昇降できることを確認する。
インクチェックとは、各インクカートリッジ28のカートリッジホルダーへの装着(電気的接続)の良否チェック及び各インクカートリッジ28のインク残量のチェックを行う処理である。また、PFリセット動作とは、搬送経路上に用紙Pの搬送の障害となる異物(例えばジャムの用紙)などがないことを保証するための処理である。具体的には、PFリセット動作は、紙送りモーター40を駆動させて仮に搬送経路上に用紙が残っていたとしても、その用紙を搬送経路から完全に排出しうる十分な所定回転量だけ搬送ローラー対41を回転駆動させる排出動作と、この排出動作終了後に不図示の紙検出センサー(媒体検出器)により搬送経路上に用紙などの異物がないことを確認する処理とを含む。また、キャッピング動作とは、メンテナンス装置44を駆動させてキャップ45等を昇降させて原点出し及び移動経路の保証などを行うリセット動作である。さらに、スキャナーリセット動作とは、スキャナーヘッドの原点出し及び移動経路の保証などを行うリセット動作である。
これらのうちホームシーク動作とAPGリセット動作の2つの初期化動作は、オートパワーオフ時における終了処理としても行われる。このため、オートパワーオフは、終了処理完了後に、キャリッジ31がホーム位置でロックされ、かつ高さ方向に原点位置(最上昇位置)に配置された状態で行われる。従って、キャリッジ31の主走査方向Xと高さ方向の各位置は、次に電源オンされたときにも保たれている可能性が極めて高い。一方、通常電源オフの場合は、例えばエラー発生時にユーザーが電源スイッチ23を操作する場合があるため、キャリッジ31がホーム位置にない状態や、キャリッジ31が高さ方向の原点位置にない状態で、プリンター11が電源オフされる場合がありうる。そのため、本実施形態では、電源オン時にメイン制御部63はオートパワーオフからの復帰であるか否かを判断し、オートパワーオフからの復帰の場合は、ホームシーク動作とAPGリセット動作のうち少なくともホームシーク動作を省略する簡易初期化動作で済ませ、通常電源オフからの復帰の場合は、ホームシーク動作とAPGリセット動作とを含む全ての初期化動作を実行する完全初期化動作を行うようにしている。
ここで、プリンター11はメカニカル機構として、スキャナー部12を構成するスキャニング機構、プリンター部13を構成する自動給送装置39(給送機構)、紙送り機構(40,41)、記録ヘッド走査機構(30〜35)、プラテンギャップ調整機構(APG調整装置42)を備えている。そして、第一の初期化動作である完全初期化動作では、これらのうち初期化動作を必要とする全てのメカニカル機構について初期化動作を行い、第二の初期化動作である簡易初期化動作では、完全初期化動作で初期化動作の対象とされるメカニカル機構のうち、記録ヘッド走査機構とプラテンギャップ調整機構の2つの初期化動作を省略する。なお、完全初期化動作が第一の初期化動作の一部を構成し、簡易初期化動作が第二の初期化動作の一部を構成する。また、記録ヘッド走査機構(30〜35)、プラテンギャップ調整機構(APG調整装置42)及び紙送り機構(40,41)が、画像形成動作(印刷動作)のためのメカニカル機構に相当する。
そして、初期化動作が省略されるメカニカル機構が備える移動体(例えば記録ヘッド35(キャリッジ31))の移動方向(例えば主走査方向又は高さ方向)におけるオートパワーオフ時の位置情報を不揮発性記憶部72に記憶し、オートパワーオフからの復帰時に不揮発性記憶部72から読み出した位置情報を、復帰時点における移動体の現在位置として設定する。
また、本実施形態では、第2USB処理部86、表示処理部87、初期化処理部88、FAX処理部89、スキャナー処理部90、印刷処理部91、コピー処理部92は、CPUが、第2USB処理タスク、初期化タスク、FAXタスク、スキャナータスク、印刷タスク、コピータスクをそれぞれ実行することにより起動される。主制御部80はタスク管理を行い、受け付けたイベント(又はジョブ)や指令などに応じて選択したタスクを実行させることで、指示された処理をマルチタスクで実行する。
図3に示すように、オートパワーオフ制御部81は設定部94を備えている。計時部82は、オートパワーオフ制御部81の管理の下で、計時の開始・停止を行う。オートパワーオフ制御部81は、操作部21の操作、及びスキャン動作、印刷動作、コピー動作、表示動作などのプリンター11の動作がないまま経過する経過時間を、計時部82に計時させる。設定部94には、オートパワーオフするまでの経過時間に相当する設定時間Toffが設定されている。オートパワーオフ制御部81は、前記操作も動作もなくなると、計時部82に計時を開始させ、その計時時間が、設定部94に設定された設定時間Toffに達すると、サブ制御部64に対してオートパワーオフ指示信号を出力する。
ここで、オートパワーオフ制御部81は、現在時刻を計時している時計部83から時刻情報を取得し、その時刻情報から把握される1日のうちの時間帯に応じた設定時間Toffを設定部94に設定する。例えばプリンター11が設置されたオフィス等で仕事が行われている可能性の高い時間帯(例えばAM8〜PM6)であれば、プリンター11の使用頻度が比較的高いはずなので、長めの設定時間Toffを設定する。一方、例えばオフィス等で仕事がまず行われないとみなしうる時間帯(例えばPM10〜AM5)であれば、プリンター11の使用頻度が極めて低いはずなので、短めの設定時間Toffを設定する。そして、両者の間の時間帯(例えばAM5〜AM8とPM6〜PM10)では、両者の設定時間の中間の長さの設定時間Toffを設定するようにしている。よって、オートパワーオフ制御部81は、計時部82の計時時間(測定時間)が、そのときの時刻が属する時間帯に応じた設定時間Toffに達すると、サブ制御部64に対してオートパワーオフ指示信号を出力する。なお、設定時間Toffを決めるために1日を複数の時間帯に分ける時間帯の数は2つでもよいし、4つ以上でもよい。
メイン制御部63からのオートパワーオフ指示信号はサブ制御部64内の電源制御部71が受け付けられる。電源制御部71は、オートパワーオフ指示信号を受け付けると、フリップフロップ75に「1」をセットすると共に、電源回路55を制御して電源オフさせ、さらにサブ制御部64内のクロック回路を停止させる。クロック回路が停止することで、メイン制御部63のCLK端子へのクロックパルスの入力が停止され、メイン制御部63はその動作を停止する。このフリップフロップ75は不揮発性であるのでその値は電源オフ中も保持される。
ここで、図3に示すように、電源回路55にはスイッチ回路96が内蔵されている。このスイッチ回路96は、オートパワーオフ状態においても、発生したイベントを検出できるようにイベント検出系の部分への電力供給を維持するためのものである。オートパワーオフ状態では、このスイッチ回路96はオン状態に維持されることで、操作部21、リング検出部58、USB通信部56及び第1USB処理部73への電力供給状態が維持される。また、電源回路55は、オートパワーオフと通常電源オフとの区別なく電源オフ中は、電源制御部71への電力供給を維持する構成になっている。
電源回路55は、電源制御部71からオートパワーオフ信号を入力したときには、スイッチ回路96のオン状態を維持したまま、他の全てのスイッチ回路(図示せず)をオフ状態にする。このため、オートパワーオフ中は、操作部21、リング検出部58、USB通信部56、電源制御部71及び第1USB処理部73への電力供給が維持される。
一方、電源スイッチ23がオフ操作されたときは、そのオフ操作信号を入力したメイン制御部63は、サブ制御部64に対して通常の電源オフ(つまりオートパワーオフ以外の電源オフ)を指示する電源オフ指示信号を出力する。電源制御部71は電源オフ指示信号を入力すると、電源回路55に対して通常の電源オフを指示する電源オフ信号を出力する。このとき、電源制御部71は、フリップフロップ75のセットは行わない。電源回路55は、電源オフ信号を入力すると、スイッチ回路96を含むすべてのスイッチ回路をオフする。このため、通常電源オフ状態では、電源スイッチ23以外の操作部21、リング検出部58、USB通信部56及び第1USB処理部73への電力供給が停止され、電源制御部71及び電源スイッチ23のみ電力供給が維持される。よって、オートパワーオフ状態ではファックス着信機能及びUSB通信機構がオンし、通常電源オフ状態ではファックス着信機能及びUSB通信機構がオフする。
このように、通常電源オフ状態ではフリップフロップ75の値が「0」であり、オートパワーオフ状態ではフリップフロップ75の値が「1」である。このため、電源オフ状態から次回電源オンされたときには、メイン制御部63は、フリップフロップ75の値を読み込んで、その値が「0」であれば、今回の電源オンが通常電源オフ状態からの復帰であり、一方、その値が「1」であれば、オートパワーオフからの復帰であることを認知できる。なお、フリップフロップ75の値「1」が、自動電源オフ状態(オートパワーオフ状態)であることを示す情報に相当し、フリップフロップ75の値「0」である場合が、自動電源オフ状態であることを示す情報が記憶されていない場合に相当する。
例えばオートパワーオフ中に、電源プラグ53がコンセントから抜けたり停電が発生した場合は、その後、電源スイッチ23をコンセントに差し込んだり停電から復帰した場合に、電源スイッチ23がオン操作状態にあることから、リセットIC62からリセット信号が出力され、オートパワーオフ中で「1」がセットされたフリップフロップ75は「0」にリセットされる。このため、オートパワーオフ中に、コンセントから抜けた電源プラグ53を再びコンセントに差し込んだり停電から復帰したりしてプリンター11の電源がオンした場合は、フリップフロップ75の値が「0」になることから、通常電源オフ状態であると認知され、完全初期化動作が行われる。
ここで、位置カウンター93について説明する。リニアエンコーダー38は、キャリッジ31の移動経路に沿って張設されてその長手方向に一定刻みでスリットが形成された光非透過性のテープ状の符号板と、該符号板のスリットを検知可能な状態でキャリッジ31の所定位置に固定された光学センサー(いずれも図示せず)とを有する。光学センサーは、符号板を挟んで対峙する一対の発光素子と受光素子とを有し、受光素子が発光素子からのスリットを通過した光を受光する。よって、リニアエンコーダー38は、キャリッジ31の移動距離に比例するパルス数で、かつキャリッジ31の移動速度に反比例するパルス周期のパルスを出力する。電源オン時には、初期化処理部88はキャリッジ31のホームシーク動作を行い、キャリッジ31がホーム位置側のエンド位置に達したときに位置カウンター93をリセットする原点出しを行う。以後、位置カウンター93は、リニアエンコーダー38からの入力パルスのパルスエッジの数を計数する。すなわち、キャリッジ31が反ホーム位置側へ向かって移動するときに位置カウンター93の計数値をインクリメントし、キャリッジ31がホーム位置側へ向かって移動するときに位置カウンター93の計数値をデクリメントすることで、キャリッジ31の主走査方向Xの位置を測定する。このため、主制御部80は位置カウンター93の計数値から、キャリッジ31の主走査方向Xにおける位置を把握できる構成になっている。
そして、メイン制御部63がサブ制御部64へオートパワーオフ指示信号又は電源オフ指示信号を出力する場合は、そのときのプリンター11の状態を示す各種情報を含む付属情報97を、不揮発性メモリー76の所定記憶領域に書き込む。この付属情報97は、オートパワーオフ時と通常電源オフ時とで異なる。オートパワーオフ時の付属情報97には、位置カウンター93及びPG用の位置カウンターの各計数値(位置カウント値)が含まれている。オートパワーオフや通常電源オフが行われるときには、キャリッジ31はホーム位置にある。特に本実施形態では、オートパワーオフ直前に、キャリッジ31の主走査方向Xにおける原点出しであるホームシーク動作(原点シーク動作)と、キャリッジ31の高さ方向の原点出しであるAPGリセット動作(原点シーク動作)とを含む終了処理を行う。そして、これらのシーク動作(ホームシーク動作とAPGリセット動作)終了後、キャリッジ31を主走査方向Xの原点位置(基準位置)から電源オフ時の位置であるホーム位置に復帰させてから、電源オフ時のキャリッジ31の主走査方向と高さ方向の各位置カウント値を含む付属情報97を不揮発性メモリー76に記憶し、その後、プリンター11をオートパワーオフする。このオートパワーオフ時における各位置カウント値がキャリッジ31の位置情報に相当する。
オートパワーオフ期間中はキャリッジ31はロック部材47に係止されてホーム位置にロックされているため、オートパワーオフ状態からの復帰時に、不揮発性メモリー76から読み出した付属情報97中の各位置カウント値は、この復帰時におけるキャリッジ31の主走査方向Xと高さ方向における各現在位置を正確に表していると言える。このため、本実施形態では、オートパワーオフから復帰した場合は、付属情報97中の各位置カウント値を位置カウンター93及びPG用の位置カウンターにそれぞれセットすることとし、初期化処理部88によるキャリッジ31のホームシーク動作及びAPGリセット動作を省略する。もちろん、ホームシーク動作のみ省略する構成も採用できる。例えばキャリッジ31を高さ方向の所定位置にロックする機構を有する構成であれば、初期化動作の1つとしてAPGリセット動作も省略するのが好ましい。ロックされることでオートパワーオフ時と電源オン時のキャリッジ位置が同じ位置に保たれる可能性が極めて高いからである。
プリンター11は、ホスト装置100から通信アクセスがあった場合、電話回線を介したファックの着信があった場合、操作部21が操作された場合、これらをイベントとして認識する。例えば、ファックス着信時はリング検出部58がリング信号を検出し、リング検出信号を電源制御部71に送る。電源制御部71はリング検出信号の入力があると、「FAXイベント」が発生したと判断し、そのFAXイベント情報を不揮発性メモリー76の所定記憶領域に書き込む。
また、例えばホスト装置100から印刷データが送られてくる際は、事前にホスト装置100から、プリンター11が起動しているか(通信ケーブルがプリンター11に接続されているか)など印刷可能な状態にあるか否かの確認の要求がプリンター11に入る。第1USB処理部73はこの種の要求を受け付けてホスト装置100に応答すると共に、この種の要求を受け付けた旨の信号を電源制御部71へ送る。電源制御部71は第1USB処理部73からその信号を受け付けると、印刷データなどのデータや指令をUSBポート経由で受信する「USBイベント」が発生したと判断し、そのUSBイベント情報を不揮発性メモリー76の所定記憶領域に書き込む。さらに、ホスト装置100からスキャン動作可能な状態にあるか否かの確認要求に対する応答も第1USB処理部73が行い、電源制御部71は第1USB処理部73からその確認要求を受け付けると、スキャンイベントが発生したと判断し、そのスキャンイベント情報を不揮発性メモリー76の所定記憶領域に書き込む。また、ユーザーが操作部21を操作した場合の操作信号は電源制御部71へ入力される。電源制御部71は、操作信号を入力すると、表示部22を起動させる「パネルイベント」が発生したと判断し、そのパネルイベント情報を不揮発性メモリー76の所定記憶領域に書き込む。
例えば通常電源オフ状態では、操作部21、リング検出部58及びUSB通信部56には電力が供給されていないので、FAXイベント、USBイベント、パネルイベント(電源オンのパネルイベントは除く)のどのイベントも発生しない。そして、電源スイッチ23がオン操作された場合だけは、そのオン操作信号が電源制御部71に入力され、電源投入イベントが発生する。電源制御部71は電源投入イベントが発生すると、電源回路55を制御してプリンター11を電源オンさせる。
一方、オートパワーオフ状態では、操作部21、リング検出部58及びUSB通信部56に電力が供給されているので、リング信号の検出、ホスト装置100からの要求受信(印刷要求受信、スキャン要求受信)、パネル操作の検出(操作部21の操作の検出)があれば、それをトリガーとして、FAXイベント、USBイベント、パネルイベントのうち、そのときのトリガーに応じたイベントが発生する。また、オートパワーオフ状態においても、電源制御部71は、電源スイッチ23からオン操作信号を入力すれば、電源オン投入イベントが発生するので、電源回路55を制御してプリンター11を電源オンさせる。
ROM65には、電源オフ状態から電源オン状態に復帰した際にコンピューターを初期化するための図4に示す電源オン初期化処理ルーチン用のプログラムと、このコンピューター初期化処理に続いて行われるプリンター動作を司る図5に示す電源オン復帰動作処理ルーチン用のプログラムとが記憶されている。これらのプログラムを含む制御プログラムを実行するメイン制御部63内のCPUにより、メイン制御部63内の主制御部80、オートパワーオフ制御部81、判断部84、イベント判定部85、各処理部86〜92の主要部は構成される。各処理部89〜92のうち、画像処理をはじめとするデータ処理などを行う部分はASICにより構成されている。もちろん、各部80,81,84〜92のうちその一部又は全部をASIC等のハードウェアで構成することもできる。
以下、電源オフ状態から電源オン状態に復帰されるときの処理について説明する。
ここで、通常電源オフ状態では、フリップフロップ75は「0」にリセットされた状態にある。オートパワーオフ状態ではフリップフロップ75には、オートパワーオフ状態であることを示す情報「1」が記憶されている。また、オートパワーオフ状態では、電源制御部71の他に、操作部21、リング検出部58、USB通信部56及び第1USB処理部73にも電力が供給されているので、これらは起動状態にある。このため、ファックス着信時のリング信号検出、ホスト装置100からのUSB通信部56を介したアクセス、操作部21からの操作信号の入力のうち1つがあると、それぞれFAXイベント、USBイベント、パネルイベントとして受け付けられ、その受け付けられたイベント情報は電源制御部71により不揮発性メモリー76に書き込まれる。
このイベント発生時は、電源制御部71は、クロック回路からクロックパルスをメイン制御部63のCLK端子へ出力させる。メイン制御部63はCLK端子にクロックパルスが入力されることで起動する。また、これとほぼ同時に、電源制御部71はリセット信号を出力し、このリセット信号が負論理オア回路74の他方の入力端子に入力されることで、負論理オア回路74の出力端子から出力されたリセット信号がメイン制御部63のRESET端子に入力される。その結果、メイン制御部63のCPUは、まず図4の電源オン初期化処理ルーチンを実行し、その後、続いて図5の電源オン復帰処理ルーチンを実行する。
一方、通常電源オフ状態においては、電源スイッチ23がオン操作されると、プリンター11は電源オンする。このとき、リセットIC62から出力されたリセット信号が負論理オア回路74の一方の入力端子に入力されることで、負論理オア回路74の出力端子から出力されたリセット信号がメイン制御部63のRESET端子に入力される。その結果、メイン制御部63のCPUは、まず図4の電源オン初期化処理ルーチンを実行し、その後、続いて図5の電源オン復帰処理ルーチンを実行する。
以下、メイン制御部63がコンピューター初期化処理のために実行する電源オン初期化処理ルーチンを図4に基づいて説明する。まずステップS10では、システム初期化を行う。次のステップS20では、オートパワーオフからの復帰であるか否かを判断する。すなわち、判断部84がサブ制御部64側のフリップフロップ75の値を読み込んで、その値がオートパワーオフ状態であることを示す情報「1」であるか否かを判断する。オートパワーオフ状態であることを示す情報「1」であればステップS30に進み、一方、オートパワーオフ状態であることを示す情報「1」でなければ(つまり通常電源オフ状態であることを示す情報「0」であれば)、ステップS40に進む。
ステップS30では、簡易メモリーチェックを行う。ここで、簡易メモリーチェックとは、オートパワーオフからの復帰の場合は、イベント発生による復帰になるので、サブ制御部64内の不揮発性メモリー76からイベント情報を読み込んで、そのイベント情報で示されたイベント内容を判定し、判定したイベント内容に応じたジョブの実行に必要な分の記憶領域を確保できるかどうかチェックする目的で一部の記憶領域に対してメモリーチェックを行う。なお、イベント内容の判定は、イベント判定部85が行う。一方、ステップS40では、完全メモリーチェックを行う。つまり、すべての記憶領域に対してメモリーチェックを行う。
次のステップS50では、周辺ハードウェアの初期化(設定)を行う。次のステップS60では、オペレーティングシステムを起動させる。次にオートパワーオフからの復帰であるか否かを判断する。オートパワーオフからの復帰であれば、ステップS80に進み、通常電源オフからの復帰であればステップS100に進む。ステップS80では、イベントはFAX(FAXイベント)又はUSB(USBイベント)であるか否かを判断する。すなわち、イベント判定部85が不揮発性メモリー76からイベント情報を読み出し、その読み出したイベント情報に基づきイベントを判別する。イベントがFAX又はUSBであれば、ステップS90に進んで、イベントに応じたタスクを起動する。一方、イベントがFAXでもUSBでもなければ、ステップS100に進む。そして、ステップS100では、全てのタスクを起動させる。なお、ここで、タスクの起動とは、タスクを実行できるようにRAM66の所定領域に読み込んでタスクを発生させる処理などを指す。また、本実施形態では、図4のフローチャートにおいて、完全メモリーチェック(S40)と全タスクの起動(S100)の各処理により第一の初期化動作の一部が構成され、簡易メモリーチェック(S30)とイベントに応じたタスク起動(S90)の各処理により第二の初期化動作の一部が構成される。そして、第二の初期化動作の一部を構成するステップS30,S90の各処理により、最低限のハードウェア初期化が行われる。
こうして電源オン初期化処理ルーチンを終えると、メイン制御部63は、次に図5に示す電源オン復帰動作処理ルーチンを実行する。
まずステップS210では、オートパワーオフからの復帰であるか否かを判断する。すなわち、判断部84がサブ制御部64側のフリップフロップ75の値を読み込んで、その値がオートパワーオフ状態であることを示す情報「1」であるか否かを判断する。オートパワーオフ状態であることを示す情報「1」であればステップS220に進み、一方、オートパワーオフ状態であることを示す情報「1」でなければ(つまり通常電源オフ状態であることを示す情報「0」であれば)、ステップS330に進む。
そして、ステップS220において、簡易初期化動作を行う。一方、通常電源オフからの復帰である場合は、ステップS330に進んで完全初期化動作を行う。
以下、オートパワーオフからの復帰である場合の処理をまず説明し、次に通常電源オフからの復帰である場合の処理について説明する。
オートパワーオフからの復帰である場合は、ステップS220において、プリンター11の簡易初期化動作を行う。この簡易初期化動作では、初期化処理部88が、初期化動作のうちホームシーク動作とAPGリセット動作を省略し、その他のインクチェック、PFリセット動作、キャッピング動作、スキャナーリセット動作などからなる簡易初期化動作を行う。詳しくは、初期化処理部88がサブ制御部64側の不揮発性メモリー76の付属情報97を読み込んで、その付属情報97中の各位置カウント値を、位置カウンター93及びPG用の位置カウンターにそれぞれセットする。こうしてオートパワーオフ時に保存した位置情報を位置カウンター93等にセットすることで、初期化動作のうちホームシーク動作とAPGリセット動作を省略する。このようにオートパワーオフからの復帰時は、一部の初期化動作を省略した簡易初期化動作を行うことで、プリンター初期化動作の所要時間が短くなり、イベントに応じたジョブ動作を比較的早期に開始できる。
次のステップS230では、イベントはFAX(FAXイベント)であるか否かを判断する。すなわち、イベント判定部85が不揮発性メモリー76からイベント情報を読み出し、その読み出したイベント情報に基づきイベントを判別する。FAXイベントであれば、ステップS240でFAXタスクを実行し、さらにステップS250で印刷タスクを実行する。この結果、FAX処理部89と印刷処理部91が順次起動され、FAX処理部89がファックスデータに画像処理を施して印刷データを生成しつつ、印刷処理部91がその印刷データに基づき記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40を駆動制御して、用紙Pにファックス画像を印刷させる。このとき、FAXタスクと印刷タスクとがマルチタスク処理で交互に実行されることで、FAX処理部89によるFAX処理と印刷処理部91による印刷処理は同時並行で進められる。
一方、ステップS230の判断で、イベントがFAXイベントでなかった場合は、ステップS260に進んで、イベントがUSB(USBイベント)であるか否かを判断する。USBイベントであれば、ステップS270においてUSB通信タスクを実行し、さらにステップS280において、指示されたジョブの実行に必要なタスクを実行する。詳しくは、主制御部80は、例えば第2USB処理部86が印刷データ(印刷ジョブデータ)を受信した場合は、印刷タスクを実行し、スキャン指令を受信した場合はスキャンタスクを実行する。すなわち、印刷データ受信時には、印刷処理部91が印刷データに基づきプリンター部13のメカニカル機構に印刷動作を行わせ、一方、スキャン指令受信時はスキャナー処理部90がスキャナー52にスキャン動作を行わせる。なお、印刷動作を行うときは、第2USB処理部86と印刷処理部91が順次起動され、印刷処理部91は、第2USB処理部86から印刷データを逐次受信しつつ、その印刷データに基づきプリンター11のメカニカル機構部を構成する記録ヘッド35、キャリッジモーター34及び紙送りモーター40を駆動制御して、用紙Pに1行ずつ印刷を施す。このとき、USBタスクと印刷タスクがマルチタスク処理で交互に実行されることで、第2USB処理部86によるUSB通信処理と印刷処理部91による印刷処理は同時並行で進められる。
さらにステップS260の判断で、イベントがUSBイベントでなかった場合は、ステップS290に進む。ステップS290では、他のイベントがあるか否かを判断する。他のイベントがあれば、ステップS300において、他のイベントに対応する他のタスクを実行する。ここで、他のイベントとしては、操作部21(操作パネル14)が操作されたときのパネルイベントが挙げられる。パネルイベントがあった場合は、表示タスクを実行する(S300)。すなわち、表示処理部87が起動され、この表示処理部87が表示部22を起動させて操作部21で操作されたスイッチに応じた表示内容を画面に表示する。
着信したファックスを印刷するFAXジョブ、あるいはUSB通信経由で受け付けた印刷データ又は指示に基づくUSB通信系のジョブ(印刷ジョブ、コピージョブ、スキャンジョブ)を終了した場合はステップS360に進む。一方、他のイベントに応じた他のタスク(他のジョブ)(例えばパネルイベントに基づく表示タスク(表示ジョブ))を終了した場合はステップS310に進み、このステップS310において、他のタスク(他のジョブ)の終了から設定時間Toffを経過したか否かを判断する。詳しくは、ジョブを終了すると、オートパワーオフ制御部81が計時部82に計時を開始させ、設定時間Toffを計時し終わる前に他のイベントが発生した場合(S290で肯定判定)はその計時を中止する。そして、ステップS310で設定時間Toffを経過したと判断するまでは、ステップS290に戻って他のイベントがあるか否かを判断しつつ設定時間Toffの経過の成否を判断する(S290,S310)。例えば、計時部82による経過時間測定中に、ユーザーが印刷開始スイッチ24を操作して印刷指示を受け付けた場合は印刷ジョブを行い、ユーザーがコピースイッチ25を操作してコピー指示を受け付けた場合はコピージョブを行い、ジョブ終了から経過時間の計時(測定)をやり直す。そして、その計時中に他のイベント(他のジョブ又は操作など)がないまま設定時間Toffを経過すると、ステップS320に進む。なお、設定時間Toffを経過するまでの計時中に、他のイベント以外のイベント(FAXイベント又はUSB通信系のイベント)が発生した場合は、図5では処理経路を省略しているが、S230からの処理を実行するようになっている。
そして、ステップS320において、キャリッジ31のホームシーク動作及びAPGリセット動作とを行う。すなわち、初期化処理部88が終了動作としてホームシーク動作及びAPGリセット動作を行う。詳しくは、初期化処理部88は、キャリッジモーター34を駆動制御してキャリッジ31をホーム位置側のエンド位置まで移動させると共に、このキャリッジ移動過程におけるキャリッジモーター34の電流値を監視し、その電流値が閾値を超えると、キャリッジ31がエンド位置に達したと判断し、そのときのキャリッジ31がエンド位置にある状態で位置カウンター93をリセットする。その後、キャリッジ31を、ホーム位置に移動させる。また、APG調整装置42を駆動させ、キャリッジ31が上限位置まで上昇する過程で、監視するモーター電流値が閾値を超えると、PG用の位置カウンターをリセットすることでAPGリセット動作を行う。そして、キャリッジ31がホーム位置にあるときの位置カウンター93の位置カウント値と、APGリセット動作終了時のPG用の位置カウンターの位置カウント値とを読み取って、各位置カウント値を一情報として含む付属情報97を、サブ制御部64内の不揮発性メモリー76に書き込む。この書込み後、ステップS370に進む。
そして、ステップS370において、オートパワーオフを行う。このオートパワーオフは、オートパワーオフ制御部81が、サブ制御部64内の電源制御部71に対してオートパワーオフ指示信号を出力することにより行われる。
このようにオートパワーオフから復帰した際は、ホームシーク動作などの一部の初期化動作を省略した簡易初期化動作で済ますことで、イベントに応じたメカニカル動作(FAX印刷動作、USB印刷動作、コピー印刷動作、スキャン動作)を早期に開始できるうえ、イベントに応じたメカニカル動作を終了すれば、設定時間Toffの経過を待つことなく直ちにプリンター11をオートパワーオフさせる。このため、イベントに応じたジョブの実行を早期に開始してジョブ終了までのユーザーの待ち時間を短くできるうえ、省電力効果も高めることができる。
次に通常電源オフ状態からの復帰の場合の処理について説明する。オートパワーオフからの復帰ではないと判断した場合(つまり通常電源オフ状態からの復帰の場合)は(S210で否定判定)、ステップS330において、プリンター11の完全初期化動作を行う。すなわち、キャリッジ31のホームシーク動作、APGリセット動作、インクチェック、PFリセット動作、キャッピング動作、スキャナーリセット動作などの全ての初期化動作を行う。
次のステップS340では、イベントがあるか否かを判断する。イベントありの場合はステップS350に進み、イベントなしの場合はステップS360に進む。ここで、通常電源オフ状態から復帰した場合、電源制御部71が電源スイッチ23からのオン操作信号入力時にそのオン操作信号に基づくパネルイベント情報を不揮発性メモリー76に書き込んでいる。そして、イベント判定部85は不揮発性メモリー76から読み出すべきイベント情報の有無を確認し、読み出すべきイベント情報があればイベントありと判断し、イベント情報がなければイベントなしと判断する。
そして、ステップS350では、イベントに応じたタスクを実行する。すなわち、各処理部86〜92のうちイベントに応じた処理部が起動され、その起動された処理部がイベントに応じたジョブを実行する。ユーザーが電源スイッチ23をオン操作した際は、表示部22に初期画面(例えばメニュー画面)を表示させるためのパネルイベントが発生しており、不揮発性メモリー76から読み出したパネルイベント情報に応じた表示タスクを実行することで表示処理部87が起動される。そして、表示処理部87は表示部22に初期画面を表示させる。そして、タスクを終了すると、オートパワーオフ制御部81が計時部82に計時を開始させることで、タスク終了からの経過時間の測定が行われる。
次のステップ360では、設定時間Toffを経過したか否かを判断する。設定時間Toffを経過していない場合は、ステップS340に戻り、イベントがあれば、ステップS350においてイベントに応じたタスクを実行し、イベントが無ければステップS360において設定時間Toffの経過の成否を判断する。なお、ステップS350においてタスクを実行した場合は、計時部82の計時を中止し、そのタスク終了後に、計時部82による計時をやり直す。例えば電源スイッチ23をオン操作したユーザーは、通常、プリンター11が立ち上がった後、印刷、コピー、スキャン等のうち所望のジョブをプリンター11に指示するので、通常は、ステップS340においてイベントありと判断される。この場合、ステップS350では、イベント(スキャンイベント、印刷イベント、コピーイベント等)に応じたタスク(スキャンタスク、印刷タスク、コピータスク等)を実行することで、処理部(スキャナー処理部90、印刷処理部91、コピー処理部92等)が、ジョブ(スキャンジョブ、印刷ジョブ、コピージョブ等)を行う。
そして、タスク終了(ジョブ終了)後に経過時間の測定(計時)を開始し、その経過時間測定中に何らイベント(ジョブ又は操作など)がないまま設定時間Toffを経過すると(S360で肯定判定)、ステップS370に進む。このように、通常電源オフからの復帰の場合は、イベントに応じて実行されたタスク(ジョブ)が終了しても、その後、必ず設定時間Toffの経過を待ってから、ステップS370に進む。
そして、ステップS370において、オートパワーオフを行う。このオートパワーオフは、オートパワーオフ制御部81が、サブ制御部64内の電源制御部71に対してオートパワーオフ指示信号を出力することにより行われる。
ここで、オートパワーオフ状態において、電源プラグ53がコンセントから抜かれた場合又は停電の場合(以下「停電等」という)は、その後、電源プラグ53がコンセントに差し込まれた際又は停電から復帰した際に、リセットIC62からリセット信号が出力され、そのリセット信号を入力したフリップフロップ75の値が「0」にリセットされる。このため、オートパワーオフ中に電源プラグ53がコンセントから抜かれたり、停電があった場合は、次回電源オン時におけるフリップフロップ75の値が、オートパワーオフ状態でないことを示す情報「0」(つまり通常電源オフ状態であることを示す情報「0」)となっているので、メイン制御部63の判断部84は、通常電源オフ状態からの復帰であると判断する。
このように通常電源オフから復帰した際、あるいはオートパワーオフされたものの、その後、電源プラグ53の抜け又は停電が発生した場合は、通常電源オフ状態からの復帰と判断して、メカニカル機構の初期化動作を全て行う完全初期化動作を行う。このように、電源スイッチ23がオフ操作された場合の他、オートパワーオフ状態にあるときに電源プラグ53の抜けや停電が発生した場合は、電力供給が強制的に遮断されて、キャリッジ31が適切な位置(ホーム位置やAPGリセット位置)にあることを必ずしも保証できない。しかし、本実施形態では、オートパワーオフ中に電源プラグ53の抜けや停電が発生した場合は、フリップフロップ75の値が「0」になることから、通常電源オフ状態からの復帰とみなされ、ホームシーク動作とAPGリセット動作とを省略することなく全て実施する完全初期化動作が行われる。その結果、キャリッジ31の主走査方向及び高さ方向の位置を示す位置カウンター93及びPG用の位置カウンターの各位置カウント値の信頼性を確保できる。よって、例えば、用紙P上の適切な位置にドットが形成され、高い印刷品質を維持できる。
また、ユーザーが電源スイッチ23をオン操作してプリンター11を起動させた場合は、ユーザーがプリンター11の近くに居て何らかの操作や指示をプリンター11に対して行う可能性が高いので、タスク終了(ジョブ終了)後も、操作及び動作がないまま設定時間Toffを経過するまで待ってから、プリンター11をオートパワーオフする。例えば、設定時間Toffの経過を待つことなく直ちにオートパワーオフしてしまう構成とした場合は、ユーザーが再度電源オン操作してプリンター11を再起動させるための無駄なオン操作や余分な待ちが発生する。しかし、設定時間Toffを待ってからオートパワーオフするので、ユーザーの使い勝手も確保できる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)電源オン状態で、計時部82がユーザーによる操作及び動作がないまま経過した時間を測定した経過時間が設定時間Toffを超えた場合、電源オフ手段を構成する電源制御部71は、不揮発性記憶部72のフリップフロップ75に、自動電源オフ状態であることを示す情報「1」を記憶してから、プリンター11の電源をオフにする。そして、このオートパワーオフ状態から電源制御部71により電源が投入された場合、初期化動作制御手段としての初期化処理部88は、フリップフロップ75に自動電源オフ状態であることを示す情報「1」が記憶されていない場合(つまり「0」である場合)に、第一の初期化動作として完全初期化動作を行い、一方、フリップフロップ75に自動電源オフ状態であることを示す情報「1」が記憶されている場合に、第一の初期化動作から一部の初期化動作を省略した簡易初期化動作を第二の初期化動作として行う。このため、オートパワーオフ状態から電源オン状態に復帰した場合の初期化動作を、通常電源オフ状態から復帰した場合の初期化動作に比べ簡単に済ませることができる。よって、プリンター11の省電力効果を高めることができる。
(2)また、第二の初期化動作としての簡易初期化動作は、第一の初期化動作としての完全初期化動作に含まれるメカニカル機構の初期化動作のうち少なくとも一つのメカニカル機構の初期化動作を含まないので、オートパワーオフ状態から電源オン状態に復帰した際の初期化動作を簡易に済ませることができる。よって、メカニカル機構を初期化動作のために駆動させる電力を、省略した初期化動作の分だけ低減できる。
(3)完全初期化動作は、記録ヘッド35(つまりキャリッジ31)の走査範囲を走査して基準位置を設定するホームシーク動作を含み、オートパワーオフ状態から電源オン状態に復帰する際の簡易初期化動作はホームシーク動作を含まないので、オートパワーオフ状態から電源オン状態に復帰した際の初期化動作を簡単に済ませることができる。
(4)不揮発性記憶部72のフリップフロップ75にオートパワーオフ状態であることを示す情報「1」が記憶されている場合に、ファックスの着信を検出して電源が投入された場合には、このファックスのジョブの終了後に、主制御部80は設定時間Toffの経過を待つことなく(つまり設定時間Toffを経過する前に)、電源制御部71にオートパワーオフを指示する。そして、電源制御部71は、フリップフロップ75にオートパワーオフ状態であることを示す情報「1」を記憶(セット)し、あるいは「1」を記憶(セット)したまま、電源をオフにする。この場合、ユーザーがプリンター11の近傍にいない確率が高いので、ジョブ終了後、速やかにオートパワーオフした方が省電力に寄与できる。
(5)電源オフ手段(電源制御部71及び電源回路55等)は、オートパワーオフ時には、ファックス着信手段を構成するリング検出部58を電力の供給によりファックスの着信を検出可能な状態にしておくことで着信機能をオンにし、通常電源オフ(オートパワーオフ以外の電源オフ)時にはリング検出部58への電力供給を停止することで着信機能をオフにする。よって、ユーザーが電源オフする意思のないオートパワーオフ時には、ユーザーの意図通りFAX通信部59によるファックスの着信及び印刷処理部91による印刷ができ、ユーザーが意図的に電源をオフした通常電源オフ時には、ユーザーの意図通りFAX通信部59によるファックスの着信及び印刷処理部91による印刷が行われないようにすることができる。
(6)電源投入手段(電源制御部71及び電源回路55等)がリング検出部58からのファックス着信の旨の検出信号に基づき電源を投入した場合は、第二の初期化動作ではファックス印刷に必要な最低限のハードウェア初期化を行う。すなわち、最低限のハードウェア初期化として、簡易メモリーチェック(図4のS30)で済ませ、かつファックス印刷に必要なタスクのみを起動させる(図4のS90)。このため、過度なメモリーチェックや不要なタスクを起動させるなどの不要なハードウェア初期化が省かれるので、ファックス印刷を比較的早期に開始できるうえ、省いたハードウェア初期化の分だけ省電力にも寄与できる。
(7)設定時間Toff経過後に、オートパワーオフ状態であることを示す情報「1」とともにキャリッジ31(記録ヘッド35)の位置カウント値を不揮発性メモリー76に記憶する。そして、簡易初期化動作においては、不揮発性メモリー76に記憶された位置カウント値を、キャリッジ31の現在位置を示す位置カウント値として設定することで、キャリッジ31の位置カウント値を新たに取得するための初期化動作(ホームシーク動作)を省略する。よって、不揮発性メモリー76に記憶された位置カウント値を用いて、キャリッジ31の位置カウント値を正しく設定しつつ、初期化動作を省略することができる。特に省略する初期化動作は、その初期化動作の対象が、オートパワーオフ中はホーム位置にロックされるキャリッジ31であるホームシーク動作なので、オートパワーオフ時と電源オン時とで同じ位置に保持されている可能性が極めて高く、過去の位置カウント値を用いても比較的信頼性の高い位置精度が得られる。
(8)オートパワーオフ前にホームシーク動作を行い、このホームシーク動作終了後におけるオートパワーオフ時のキャリッジ位置を示す位置カウント値を不揮発性メモリー76に記憶し、その記憶した位置カウント値を電源オン時のキャリッジ位置として取得する。例えばオートパワーオフ前のホームシーク動作を行わない構成とすると、ホームシーク動作を省略し続けた場合に位置カウント値の誤差が累積し、キャリッジ31の位置カウント値の信頼性が低下する。これに対し、オートパワーオフの度に事前にホームシーク動作を行ってから位置カウント値を取得すれば、位置カウント値の誤差の累積を回避できる。
(9)時計部83から得られる現在時刻が属する時間帯に応じた異なる設定時間Toffを設定部94が設定する。このため、オートパワーオフまでの経過時間が時間帯に応じて変化するので、例えばプリンター11の使用頻度の比較的高い就業時間帯における設定時間Toffを相対的に長く設定し、その使用頻度の比較的低い夜間の時間帯における設定時間Toffを相対的に短く設定することで、プリンター11の使い勝手の犠牲をなるべく回避しつつ、オートパワーオフまでの経過時間の短縮による省電力効果を高めることができる。
前記実施形態は上記に限定されず、以下の態様に変更することもできる。
・ステップS220における簡易初期化動作において、メカニカル機構の初期化動作のうち省略する初期化動作を、イベント内容に応じて変化させてもよい。つまり、発生したイベントに対応するジョブの実行に必要なメカニカル機構についての初期化動作(但し簡易初期化動作で省略することになっているホームシーク動作などは除く)のみ行い、そのジョブの実行に必要のないメカニカル機構の初期化動作は行わない構成とする。例えば、FAXイベント発生時は、FAXジョブの実行に必要な印刷系のメカニカル機構の初期化動作(例えば紙送り機構のPFリセット動作)は行うが、そのジョブの実行に必要のないスキャン系のメカニカル機構の初期化動作は行わない。また、例えばスキャンイベント発生時は、スキャンジョブの実行に必要なスキャン系のメカニカル機構の初期化動作(スキャニング機構のスキャナーヘッドの原点出し動作)は行うが、そのジョブの実行に必要のない印刷系のメカニカル機構の初期化動作は行わない。この構成によれば、不要なメカニカル機構の初期化動作を行わないので、発生イベントに応じた適切な省電力を実現できる。
・オートパワーオフ直前に終了処理として行った初期化動作(ホームシーク動作やAPGリセット動作)を廃止してもよい。この構成によれば、位置カウンターの誤差の累積により移動体(キャリッジ31等)の位置精度の信頼性は若干低下するものの、オートパワーオフ状態から復帰した際の初期化動作を簡易初期化動作で済ませることで得られる効果は同様に得られる。ここで、位置カウンターの誤差の累積に起因する位置精度の低下を抑える対策としては、以下の構成を挙げることができる。例えば、第二の初期化動作(例えば簡易初期化動作)の連続実施回数を計数する計数手段を設け、計数手段の計数回数が規定回数Ko(但しKo≧2)以上になった場合は、たとえオートパワーオフ状態からの復帰時でも、第一の初期化動作(例えば完全初期化動作)を行う構成とする。この構成によれば、簡易初期化動作の連続実施回数(つまりオートパワーオフから復帰した連続回数)が規定回数Ko以上になれば、オートパワーオフからの復帰時でも完全初期化動作を行うので、例えば位置カウンターの原点出しが行われることで、誤差の累積による移動体(キャリッジ31等)の位置精度の低下をなるべく小さく抑えることができる。
・電源オフ期間も計時できる時計部を備え、オートパワーオフ時に自動電源オフ状態であることを示す情報(フリップフロップ75の値「1」)と、オートパワーオフ時刻とを不揮発性記憶手段に格納する。そして、電源投入(電源オン)時に不揮発性記憶手段に自動電源オフ状態であることを示す情報(フリップフロップ75の値「1」)が記憶されていた場合に、電源投入時刻とオートパワーオフ時刻とから求まるオートパワーオフから電源投入までの期間が所定期間(例えば1週間〜3ヶ月の範囲内の期間)を超える場合には、第一の初期化動作(例えば完全初期化動作)を行うのが好ましい。これは、電源オフ期間の間に、プリンターの移設に伴いキャリッジ31の位置が変化している可能性があり、完全初期化動作を行う必要性が高いからである。なお、所定期間は、プリンターの設計思想や顧客ニーズ等に応じて適宜変更でき、例えば1日〜半年の間で設定してよい。
・自動電源オフ状態であることを示す情報を記憶する不揮発性記憶手段は、EEPROM等の不揮発性メモリーでもよいし、不揮発性のレジスター(例えばキャパシター付きレジスター)でもよい。また、位置情報を記憶する不揮発性記憶手段は、不揮発性のレジスターでもよい。
・メカニカル機構を構成する移動体(例えばキャリッジ31等)の電源オフ状態における適正な位置を記憶手段に記憶しておき、オートパワーオフからの復帰時に不揮発性記憶手段から読み出した位置カウント値(位置情報)が、移動体の適正な位置とみなしうる範囲内にあるか否かを判断手段により判断し、その範囲内にあれば、第二の初期化動作(簡易初期化動作)を行うが、その範囲外にあれば、たとえオートパワーオフからの復帰であっても、第一の初期化動作(完全初期化動作)を行う。
・第二の初期化動作の一部として行った最低限のハードウェア初期化は、簡易メモリーチェックと簡易タスク起動とを行ったが、イベントに対応するジョブの実行に必要なタスクのみを起動する簡易タスク起動に替え、イベント内容に応じてタスクの起動順序を切り換える構成を採用してもよい。
・第二の初期化動作を構成する簡易初期化動作では、メカニカル機構のうちキャリッジ系機構の初期化動作を省略したが、省略するメカニカル機構の初期化動作は適宜変更できる。例えば紙送り機構のPFリセット動作を省略してもよいし、メンテナンス装置44のキャッピング動作を省略してもよい。
・第一初期化動作は完全初期化動作に限定されず、例えば特許文献3のように、記録ヘッドを有するキャリッジをホーム位置に移動させてから電源オフさせた旨の情報が不揮発性メモリーに記憶されていれば、電源オン時にホームシーク動作をスキップするものであってもよい。この場合、第二の初期化動作が、第一の初期化動作で行われるうちの一部の初期化動作が省略されたものであれば、省電力効果は得られる。
・画像形成装置はシリアルプリンターに限定されず、ラインプリンターあるいはページプリンターに適用してもよい。また、スキャナー機能やコピー機能を有しないプリンターにも適用できる。さらに、記録方式についても、インクジェット方式に限定されず、ドットインパクト方式や感熱方式、レーザー方式などの画像形成装置にも適用できる。その他、オートパワーオフ機能を備え、かつ電源投入直後にメカニカル機構の初期化動作が行われる画像形成装置に広く適用できる。
前記実施形態及び変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(1)データ受信手段を備え、前記電源投入手段は、前記データ受信手段がデータを受信すると、電源を投入するように構成され、前記不揮発性記憶手段に自動電源オフ状態であることを示す情報が記憶されている場合に、前記データの受信に基づいて電源が投入された場合には、該データに基づくジョブの終了後に前記設定時間を経過する前に、前記不揮発性記憶手段に前記自動電源オフ状態であることを示す情報を記憶した状態で、電源をオフにすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。なお、データ受信手段とは、ファックスデータを受信するファックス着信手段と、印刷データを受信する印刷データ受信手段(56,73,83)とを含む。
(2)前記電源オフ手段は、自動電源オフ時には、前記データ受信手段をデータの受信が可能な状態に受信機能をオンにし、前記自動電源オフ以外の電源オフ時には前記データ受信手段の受信機能をオフにすることを特徴とする技術的思想(1)に記載の画像形成装置。
(3)データ受信手段を備え、前記電源投入手段は、前記データ受信手段がデータを受信すると、電源を投入するように構成され、前記不揮発性記憶手段に自動電源オフ状態であることを示す情報が記憶されている場合に、前記データの受信に基づいて電源が投入された場合には、該データに基づくジョブの実施に必要なメカニカル機構の初期化動作に限定して前記第二の初期化動作を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。