本発明は、培養反応槽に貯留されている微生物の培養液を連続的に分離膜へ供給循環し、培養によって生産された化学品を含む濾液を分離膜の透過側で回収するとともに、前記分離膜で濾過されなかった未濾過培養液を前記培養反応槽へ還流して連続培養を行うに際し、培養反応槽内の酸素移動容量係数(1/h)の設定値からの減少率を該設定値の30%以内に抑制することを特徴とする連続培養による化学品の製造方法であり、かかる製法は例えば図1に示す装置により実施することができる。
図1に示す装置は、基本的に培養反応槽1と膜分離槽12と差圧制御装置3とで構成されている。培養反応槽1の外部に設置された膜分離槽12には、分離膜エレメント2が単数もしくは複数収容されており、また、培養反応槽1と膜分離槽12は、培養液循環ポンプ11を介在させた培養液循環配管110により、培養液が循環できるように連結されている。そして、該培養液循環配管110は、培養反応槽1から膜分離槽12へ培養液を供給するための送液口111と未濾過培養液を培養反応槽1へ還流するための環流口112とが、培養反応槽に貯留された培養液に浸漬する位置に開口している。
培養反応槽1には、培養液の攪拌、温度、pH、溶存酸素濃度、液量などを培養にとって好適な条件に調整することができるように、攪拌機5、温度調節器10、pHセンサ・制御装置9、pH調整溶液供給ポンプ8、気体供給装置4、培地供給ポンプ7などが設けられている。
分離膜エレメント12は、上記したように、培養反応槽の外部に設けられた膜分離槽12の内部に設けられている。
培養反応槽1と該培養反応槽の外部に設置される膜分離槽12との間には、培養液を循環させる手段、例えば培養液循環ポンプ11が設けられる。該ポンプ11には、例えば渦巻きポンプ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプなど様々な種類があるが、本発明においては、ポンプの出力設定により循環液量が算出できるものが好ましく、好ましくはダイヤフラムポンプが挙げられる。
このような図1の装置において、培養反応槽1には、微生物や培養細胞、さらには培養に用いられる栄養素(培養原料)を含む培地が貯留される。そして、所定の温度等に制御することで培養、発酵が進み、化学品が生成される。
このとき、培地供給ポンプ7によって培地を培養反応槽1に投入し、必要に応じて、攪拌機5で培養反応槽1内の発酵培養液を攪拌したり、培養反応槽内に気体供給装置4で気体を供給する。また必要に応じて、pHセンサ・制御装置9およびpH調整溶液供給ポンプ8によって培養液のpHを調整したり、温度調節器10によって培養液の温度を調節する。このようにすることにより、生産性の高い発酵生産を行うことができる。
装置内の培養液は、培養液循環ポンプ11によって培養反応槽1と膜分離槽12との間を循環させ、例えば定期的に膜分離を作動させることにより発酵生産物(化学品)を系外に取り出す。すなわち、膜分離槽に送られた培養液は分離膜エレメント2によって微生物を含む未濾過培養液と発酵生産物を含む濾液とに濾過・分離されるため、膜透過側で発酵生産物を含む濾液を回収することで、化学品を装置系から取り出すことができる。一方、濾過・分離された微生物は、培養液循環配管110により培養反応槽1に還流することで培養反応系内にとどまることになり、培養反応系内の微生物濃度を高く維持でき、生産性の高い発酵生産を可能としている。
分離膜エレメント2による濾過・分離は、培養反応槽1の水面と膜分離槽12の水面との水頭差圧によって、特別な動力を使用することなく実施可能であるが、必要に応じて、レベルセンサ6および差圧制御装置3によって、分離膜エレメント2の濾過・分離速度および装置系内の発酵培養液量を適当に調節することができる。分離膜エレメント2による濾過・分離は、ポンプ等による吸引濾過あるいは装置系内を加圧することによっても行うことができる。
図2に、本発明の化学品の製造方法を実施するために用いられる他の装置の概略斜視図を示す。図2は、培養液循環配管110にも気体供給装置4を設置した以外は図1の装置と同じである。培養液循環配管110にも気体供給装置4を設けることで、培養液循環配管110および膜分離槽12に、効率よく気体を循環させることができ、装置の培養・発酵が行われる箇所全体におなじ体積比で気体を供給することが可能である。
次に、上記図1、図2に示すような装置において好ましく用いられる分離膜エレメント2について、説明する。
分離膜エレメント2には、例えば、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜および分離膜エレメントを用いることができる。
具体的に分離膜エレメント2は、例えば図3に示すように、中空糸膜で構成された分離膜束13と上部樹脂封止層14、下部樹脂封止層15によって主に構成される。分離膜束13は上部樹脂封止層14および下部樹脂封止層15よって束状に接着・固定化されている。下部樹脂封止層15による接着・固定化は中空糸膜の中空部を封止しており、培養液の漏出を防ぐ構造になっている。一方、上部樹脂封止層14は中空糸膜の中空部を封止しておらず、集水パイプ17に濾液(すなわち培養によって生産された化学品を含む液)が流れる構造となっている。この分離膜エレメントは、支持フレーム16を介して膜分離槽に設置することが可能である。分離膜束13を構成する中空糸膜の外表面を透過して中空部に進入してきた濾液は、該中空部を通り、集水パイプ17を介して膜分離槽外部に取り出される。濾液を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
分離膜エレメント2は、例えば図4示すような構成でもよい。図4に示す分離膜エレメントは、剛性を有する支持板18の両面に、流路材19と分離膜20をこの順序で配して構成されている。支持板18は、両面に凹部21を有している。分離膜20は、培養液をろ過する。流路材19は、分離膜20を透過した濾液を効率よく支持板18に流すためのものである。支持板18に流れた濾液は、支持板18の凹部21を通り、集水パイプ22を介して膜分離槽外部に取り出される。濾液を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
これら分離膜エレメントを構成する部材は、高圧蒸気滅菌操作に耐性を有する部材であることが好ましい。培養反応槽に加えて膜分離槽内が滅菌可能であれば、連続発酵時に好ましくない微生物による汚染の危険を回避でき、より安定した連続発酵が可能となる。具体的に分離膜エレメントを構成する部材としては、121℃で15分間という高圧蒸気滅菌の条件に耐性を有するものであることが好ましい。例えば、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、PVDF、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリサルホン系樹脂等の樹脂を好ましく選定できる。
次に、本発明で用いることができる分離膜について説明する。
分離膜としては、被処理液の性状や用途に応じた分離性能と透過性能を有する多孔性膜であることが好ましい。多孔性膜としては、セラミックスなどの無機材料、樹脂などの有機材料を素材とした多孔性膜を用いることが可能であるが、好ましくは多孔質樹脂層を含む多孔性の分離膜であることが好ましい。このような多孔性膜は、多孔質基材の表面に、分離機能層として作用とする多孔質樹脂層を有している。多孔質樹脂層は多孔質基材に浸透していても浸透していなくてもどちらでも良いが、強度の点で多孔質基材に浸透させた膜が好ましく採用される。
多孔質基材は、多孔質樹脂層を支持して分離膜に強度を与えるものであり、材質は、有機材料および/または無機材料等からなり、中でも有機繊維が望ましく用いられる。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエチレン繊維などの有機繊維を用いてなる織布や不織布等である。中でも、密度の制御が比較的容易であり製造も容易で安価な不織布が好ましく用いられる。多孔質基材の平均厚みは、好ましくは、50μm以上3000μm以下である。
多孔質樹脂層は、上述したように分離機能層として作用するものであり、有機高分子膜を好適に使用することができる。有機高分子膜の材質としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂等が挙げられる。有機高分子膜は、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物からなるものであってもよい。ここで主成分とは、その成分が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有されることをいう。中でも、多孔質樹脂層を構成する膜素材としては、溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂がより好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が最も好ましく用いられる。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましいが、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。また、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンまたは塩素化ポリプロピレンが挙げられるが、塩素化ポリエチレンが好ましく用いられる。
本発明で用いられる分離膜の形状については特に限定はなく、具体的には平膜や中空糸膜が挙げられる。分離膜の形状が平膜の場合、その平均厚みは、好ましくは20μm以上5000μm以下であり、より好ましくは50μm以上2000μm以下である。分離膜の形状が中空糸膜の場合、中空糸の内径は、好ましくは、200μm以上5000μm以下であり、膜厚は、好ましくは、20μm以上2000μm以下である。また、有機繊維または無機繊維を筒状にした織物や編物を中空糸の内部に含んでいても良い。
本発明において分離膜として好ましく用いられる多孔性膜の作成法の概要を例示して説明する。
まず、多孔性膜のうち、平膜の作成法の概要について説明する。平膜は、多孔質基材の表面に、多孔性樹脂層を構成する樹脂と溶媒とを含む製膜原液の被膜を形成するとともに、その製膜原液を多孔質基材に含浸させ、その後、被膜を有する多孔質基材の被膜側表面のみを非溶媒を含む凝固浴と接触させ樹脂を凝固させて多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を形成することで得られる。
次に、中空糸膜の作成法の概要について説明する。中空糸膜は、多孔性樹脂層を構成する樹脂と溶媒からなる製膜原液を二重管式口金の外側の管から吐出するとともに、中空部形成用流体を二重管式口金の内側の管から吐出して、冷却浴中で冷却固化して作製することができる。
得られた中空糸膜の外表面には、別の多孔性樹脂層をコーティング(積層)することもできる。このような多孔性樹脂層の積層は中空糸膜の性質、例えば、親水・疎水性、細孔径等を所望の性質に変化させるために行うことができる。
かかる表面に積層される多孔性樹脂層は、樹脂を溶媒に溶解させた原液を、非溶媒を含む凝固浴と接触させて該樹脂を凝固させることによって作製できる。積層の方法は特に限定されず、製膜原液に中空糸膜を浸漬してもよいし、中空糸膜の表面に製膜原液を塗布してもよく、積層後、付着した製膜原液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしすることで積層量を調整することもできる。
以上のように作成される中空糸膜は樹脂などの部材で中空部を接着・封止することで、また平膜は支持体に設置することによって、図3、図4に示す分離膜エレメントとすることができる。なお、本発明においては体積あたりの膜面積を増加させるうえで有利であるという観点から中空糸膜を用いることが好ましい。
本発明の化学品の製造方法においては、以上のような装置を用いて微生物または培養細胞を培養し、培養液を連続的に培養反応槽から分離膜へ供給循環するとともに、例えば定期的に分離膜の原液側と透過液側とに差圧を生じさせて分離膜の透過側で化学品を含む濾液を回収することにより培養液に含まれる化学品を抽出する。なお、膜分離を行っている最中、分離膜で濾過されなかった未濾過培養液は、前記培養反応槽へ還流する。また、微生物または培養細胞を増殖しつつ化学品を生成する連続培養を行うことができるのであれば、培養装置の数は問わない。連続培養操作は、通常、単一の培養装置で行うのが管理上好ましいが、培養装置の容量が小さい等の理由から、複数の培養装置を用いることも可能である。この場合、複数の培養装置を配管で並列または直列に接続して連続培養を行うことで、高い生産性で発酵生産物を得ることができる。
本発明で使用される微生物や培養細胞としては、例えば、工業的によく使用される酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌、動物細胞および昆虫細胞などが挙げられる。使用する微生物や細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。これらの微生物や培養細胞のうち、目的とする化学品の生産能力が高いものを選択して用いることが好ましい。なお、本発明においては微生物の培養を「発酵」または「発酵培養」と称することがある。
培養には、微生物または培養細胞の生育を促し、微生物または培養細胞の増殖が連続的に行われ、目的とする化学品が良好に生産されるようにするため、栄養素などの培養原料も用いられる。
培養原料となる栄養素の具体例としては、炭素源、窒素源、無機塩類、及び必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が良い。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなどが使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。
本発明に使用する微生物または培養細胞が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加する。
栄養素等の培養原料は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、適宜追加されるが、その際、培養開始時の原料組成から適宜変更しても良い。
また、培養にあたっては、消泡剤を必要に応じて使用する。
本発明において、培養反応槽内の培養液中の糖類濃度は5g/l以下に保持されるのが好ましい。当該糖類濃度を5g/l以下に保持することが好ましい理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。一方、培養反応槽内の培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが、生産性をよくする上で好ましい。該微生物または培養細胞の濃度は、例えば乾燥重量として5g/l以上に維持することで良好な生産効率が得られる。
なお、本発明において、培養液とは、培養原料により微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液のことを言う。
また、微生物または培養細胞の培養は、通常、pH4−8、温度20−40℃の範囲で行われる。培養液のpHは、無機あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウム、アンモニアガスなどによって、通常、pH4−8範囲内のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養反応槽内を加圧して培養する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
本発明の化学品の製造方法では、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って微生物濃度を高くした後に、連続培養および培養液の引き抜き(膜分離)を開始しても良い。本発明の化学品の製造方法では、微生物濃度を高くした後に、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養および培養液の引き抜きを行っても良い。すなわち、本発明の化学品の製造方法では、適当な時期から培養原料の供給及び培養液の引き抜きを行うことが可能である。培養原料の供給と培養液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、培養原料の供給と培養液引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
引き抜いた培養液、すなわち、分離膜の透過側で回収した化学品を含む液は、濃縮、蒸留、および晶析などの処理をさらに行って、濃度を高めて回収することが好ましい。
また、本発明の化学品の製造方法では、必要に応じて培養装置内から微生物または培養細胞を引き抜くことができる。例えば、培養装置内の微生物濃度や培養細胞濃度が高くなりすぎると分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、微生物や培養細胞を引き抜くことで分離膜の閉塞を回避することができる。また、培養装置内の微生物濃度や培養細胞濃度によって化学品の生産性能が変化することがあることから、生産性能を指標として微生物または培養細胞を引き抜くことで生産性能を維持させることも可能である。
なお、引き抜いた微生物や培養細胞は、高圧蒸気滅菌などして死滅させた後、廃棄することが好ましい。
本発明においては、培養液を連続的に培養反応槽から分離膜へ供給し循環させるが、目的とする化学品の生産速度を向上させるには、式(1)に示す通り培養液の抜き取り速度、すなわち濾液流量を大きくすればよい。しかし、濾液流量を大きくすれば、微生物による目詰まりが起こりやすくなり、濾過性能を長期間安定に制御することが困難になる。そこで、本発明においては、培養反応槽と膜分離槽とを循環する培養液の循環量を大きくすることで、膜分離槽内の分離膜の表面を流れる培養液の線速度を増加させ、膜の目詰まりを防ぐことが好ましい。この結果、目的とする化学品の生産速度向上が可能となる。なお、循環量とは培養反応槽から培養液循環配管をへて膜分離槽へと送液される培養液の流量のことを示す。また、発酵培養液量とは、培養反応槽1内の培養液量と培養液循環配管110および膜分離槽12の中の培養液量の合計をいう。
そして、本発明においては、以上のような連続培養を行うにあたり、例えば培養液循環配管110の、培養液を培養反応槽1から膜分離槽12へ供給するための送液口111および未濾過培養液を膜分離槽12から培養反応槽1へ還流するための環流口112を、培養反応槽1に貯留された培養液に浸漬する位置に開口するようにしておくことで、培養反応槽1内の酸素移動容量係数kLaの設定値からの減少率を該設定値の30%以内の範囲に抑制する。
ここで、酸素移動容量係数kLaについて説明する。酸素移動容量係数kLa(以下、単にkLaと略す)は、通気攪拌培養時において、単位時間に気相から液相へ酸素を移動させ溶存酸素を生成させる能力を示すものであり、以下の式(2)で表すことができる。また、kLaは、通気攪拌培養時において、気相から供給される酸素と微生物によって消費される酸素とによって表される培養液中の酸素の収支式、式(3)において用いられる(生物工学実験書、日本生物工学会編、培風館、p.310(1992))。
培養反応槽におけるkLaは、亜硫酸酸化法(バッチ法・連続法)、気体置換法(Gassing out法(スタティック法、ダイナミック法))、排気ガス分析法などで測定できる(前掲生物工学実験書、p311等)。以下に、気体置換法(ダイナミック法)によるkLaの測定の一例を示す。
まず、培養反応槽に水あるいは使用する培地をいれ、これらの液体中の酸素を窒素ガスにより置換するかあるいは亜硫酸ナトリムをほぼ飽和濃度に達する程度に加えることなどにより脱酸素するかして、該液体の酸素濃度を低下させる。次いで、かかる液体中に溶存酸素濃度電極を差し込み、通気速度、攪拌速度および温度を任意の条件に設定し、その条件での溶存酸素の上昇過程を測定する。ここで、上記式(2)より、下記式(4)が導かれるため、通気した時間に対して、C*−Cの対数をプロットすることで、kLaを求めることができる。
本発明においては、予めこの測定を繰り返して発酵力価が高く維持されるkLa(設定値)を見出しておき、連続培養により化学品を製造する際に、その設定値に対して減少率が当該設定値の30%以内になるようにする。
kLaは様々な要素で変動する。当該要素は、例えば、培養液の液量、培養反応槽の攪拌、通気量、温度などが挙げられ、これらは連続培養中にも比較的制御が容易である。また、kLaは、液面の振動によっても変化する。たとえば未濾過培養液を培養反応槽1に環流する際に、培養反応槽1内の培養液液面から離れた上方位置から未濾過培養液を落とし入れるように戻すと、培養液の液面が大きく振動しkLaが大きく変化する。しかしながら、液面の振動は制御が困難である。そこで、本発明においては、培養液循環配管110を、培養反応槽1から膜分離槽12へ培養液を供給するための送液口111と、未濾過培養液を培養反応槽1へ還流するための環流口112とが、培養反応槽1に貯留された培養液に浸漬する位置に開口するように設け、未濾過培養液が膜分離槽12を経て培養反応槽1へ還流するに際し、培養反応槽1に貯留されている培養液の中に直接還流するようにすることが好ましい。こうすることで、液面を大きく乱すことがなくなり、結果的にkLaの設定値からの減少率を30%以内の範囲に抑制することが可能である。
培養反応槽内の酸素移動容量係数kLaの設定値からの減少率を該設定値の30%以内に抑えて培養することにより、高発酵力価を維持した培養が可能となる。たとえば、kLaが設定値より30%以上減少すると、最適培養条件よりも嫌気培養になりすぎて、糖消費速度が低下し、炭素源が過剰にあまり、目的の化学品の生産速度が低下する。これに対して、kLaの減少率を30%以内に抑制する本発明によれば、対糖収率などの連続培養成績が変化しにくく、安定して連続発酵を行うことができるので、従来の回分発酵と比較して、高い体積生産速度で化学品が得られ、極めて効率のよい化学品の製造が可能となる。
ここで、連続培養における化学品の生産速度は、次の式(5)で計算される。また、連続培養における対糖収率は、次の式(6)で計算され、ある一定期間内で原料炭素源を消費し生成された化学品量(g)を、その期間の投入炭素源量(g)で除して求められる。
なお、回分培養での化学品生産速度は、原料炭素源をすべて消費した時点の生産物量(g)を、炭素源の消費に要した時間(h)とその時点の培養液量(L)で除して求められる。
本発明における化学品としては、微生物または培養細胞が培養液中に生産する物質であれば制限はなく、培養する微生物や培養細胞によって適宜選択されうる。該化学品の具体例としては、アルコール、有機酸など発酵工業において大量生産が望まれる物質を挙げることができる。例えば、アルコールとして、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなど、また、有機酸として、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、などである。また、L−スレオニン、L−リジン、L−グルタミン酸、L−トリプトファン、L−イソロイシン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−アラニン、L−ヒスチジン、L−プロリン、L―フェニルアラニン、L−アスパラギン酸、L−チロシン、メチオニン、セリン、バリン、ロイシンなどのアミノ酸や、イノシン、グアノシンなど核酸、カダベリンなどのジアミン化合物、酵素、抗生物質、組換えタンパク質を挙げることができる。
次に、上述の化学品の製造に用いることができる微生物または培養細胞を、具体的な化学品を例示しながら説明する。
本発明の化学品の製造方法は、例えばL−乳酸の生産に用いることが出来る。L−乳酸とは、乳酸の光学異性体の一種であり、その鏡像体であるD−乳酸と明確に区別することができる。L−乳酸の製造に用いられる微生物あるいは培養細胞としては、L−乳酸を生産することが可能な微生物であれば特に制限はないが、例えば乳酸菌を用いることができる。ここで乳酸菌とは、消費したグルコースに対して対糖収率として50%以上の乳酸を産生する原核微生物として定義することができる。
好ましい乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス属(Genus Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Genus Pediococcus)、テトラゲノコッカス属(Genus Tetragenococcus)、カルノバクテリウム属(Genus Carnobacterium)、バゴコッカス属(Genus Vagococcus)、ロイコノストック属(Genus Leuconostoc)、オエノコッカス属(Genus Oenococcus)、アトポビウム属(Genus Atopobium)、ストレプトコッカス属(Genus Streptococcus)、エンテロコッカス属(Genus Enterococcus)、ラクトバシラス属(Genus Lactococcus)、およびバシラス属(Genus Bacillus)に属する乳酸菌が挙げられる。それらの中でも、乳酸の対糖収率が高い乳酸菌を選択して乳酸の生産に好ましく用いることができ、更にその中でも、L―乳酸の対糖収率の高い乳酸菌を選択して乳酸の生産に好ましく用いることができる。
L−乳酸の対糖収率が高い乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス・ヤマナシエンシス(Lactobacillus yamanashiensis)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・アジリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバシラス・アビアリエス(Lactobacillus aviaries)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・デルブレッキ(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバシラス・サリバリス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・シャーピイ(Lactobacillus sharpeae)、ラクトバシラス・デクストリニクス(Pediococcus dextrinicus)、およびラクトバシラス・ラクティス(Lactococcus lactis)などが挙げられ、これらを選択して、L−乳酸の生産に用いることが可能である。
また、本発明によりL−乳酸を製造する場合、人為的に乳酸生産能力を付与、あるいは増強した微生物または培養細胞を用いることができる。例えば、L−乳酸脱水素酵素遺伝子(以下、L−LDHと言うことがある)を導入して、L−乳酸生産能力を付与、あるいは増強した微生物または培養細胞を用いることができる。L−乳酸生産能力を付与、あるいは増強させる方法としては、従来知られている薬剤変異による方法も用いることができる。更に好ましくは、微生物がL−LDHを組み込むことによりL−乳酸生産能力が増強した組換え微生物が挙げられる。
L−乳酸を製造する場合、組換え微生物の宿主としては、原核細胞である大腸菌、乳酸菌、および真核細胞である酵母などが好ましく、特に好ましくは酵母である。酵母のうち好ましくはサッカロマイセス属(Genus Saccharomyces)に属する酵母であり、更に好ましくはサッカロマイセス・セレビセ(Saccharomycescerevisiae)である。
L−LDHとしては、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とピルビン酸を、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とL−乳酸に変換する活性を持つタンパク質をコードしていれば限定されない。例えば、L―乳酸の対糖収率の高い乳酸菌由来のL−LDHを用いることができる。好適にはほ乳類由来L−LDHを用いることができる。このうちホモ・サピエンス(Homo sapiens)由来、およびカエル由来のL−LDHを用いることができる。カエルの中でもコモリガエル科(Pipidae)に属するカエル由来のL−LDHを用いることが好ましく、コモリガエル科に属するカエルの中でも、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)由来のL−LDHを好ましく用いることができる。
本発明に用いられるヒトまたはカエル由来のL−LDHには、遺伝的多型性や、変異誘発などによる変異型の遺伝子も含まれる。遺伝的多型性とは、遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているものである。また、変異誘発とは、人工的に遺伝子に変異を導入することをいう。変異誘発は、例えば、部位特異的変異導入用キット(Mutan-K(タカラバイオ社製))を用いる方法や、ランダム変異導入用キット(BD Diversify PCR Random Mutagenesis(CLONTECH社製))を用いる方法などがある。また、本発明で使用するヒトまたはカエル由来のL−LDHは、NADHとピルビン酸をNAD+とL−乳酸に変換する活性を持つタンパク質をコードしているならば、塩基配列の一部に欠失または挿入が存在していても構わない。
本発明によりL―乳酸を製造する場合、分離膜の透過側で回収した化学品を含む液(以降、「濾過・分離発酵液」と称する場合がある)は、さらに従来から知られている濃縮、蒸留および晶析などの方法により分離・精製することが好ましい。例えば、回収した濾過・分離発酵液のpHを1以下にしてからジエチルエーテルや酢酸エチル等で抽出する方法、イオン交換樹脂に吸着洗浄した後に溶出する方法、酸触媒の存在下でアルコールと反応させてエステルとし蒸留する方法、およびカルシウム塩やリチウム塩として晶析する方法などが挙げられる。中でも、濾過・分離発酵液の水分を蒸発させた濃縮L−乳酸溶液を蒸留操作にかける方法が好ましい。ここで、濃縮L−乳酸溶液を蒸留する際には、蒸留原液の水分濃度が一定になるように水分を供給しながら蒸留することが好ましい。L−乳酸水溶液の留出後は、水分を加熱蒸発することにより濃縮し、目的とする濃度の精製L−乳酸を得ることができる。留出液としてエタノールや酢酸等の低沸点成分を含むL−乳酸水溶液が得られる場合は、低沸点成分をL−乳酸濃縮過程で除去することが好ましい。蒸留操作後、留出液について必要に応じて、イオン交換樹脂、活性炭およびクロマト分離等による不純物除去を行い、さらに高純度のL−乳酸を得ることもできる。
本発明の化学品の製造方法は、例えばD−乳酸の生産に用いることも出来る。
D−乳酸生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞としては、D−乳酸を生産することが可能な微生物であれば制限はないが、例えば、野生型株では、D−乳酸を合成する能力を有するラクトバシラス属(Lactobacillus)、バシラス属(Bacillus)属およびペディオコッカス(Pediococcus)に属する微生物が挙げられる。
また、本発明によりD−乳酸を製造する場合、D−乳酸デヒドロゲナーゼ(以下、D−LDHともいうことがある)の酵素活性を増強している野生型株の微生物を用いることも好ましい。酵素活性を増強させる方法としては、従来知られている薬剤変異による方法も用いることができる。更に好ましくは、微生物がD−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を組み込むことによりD−乳酸デヒドロゲナーゼの酵素活性を増強した組換え微生物が挙げられる。
D−乳酸を製造する場合、組換え微生物の宿主としては、原核細胞である大腸菌、乳酸菌、および真核細胞である酵母などが好ましく、特に好ましくは酵母である。
D−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子としては、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、およびペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、およびバシラス・ラエボラクティカス(Bacillus laevolacticus)由来の遺伝子であることが好ましく、更に好ましくはバシラス・ラエボラクティカス(Bacillus laevolacticus)由来の遺伝子である。
なお、本発明によりD−乳酸を製造する場合も、先に記載したL―乳酸を製造する場合と同様に、濾過・分離発酵液に含まれるD−乳酸の分離・精製を行うことが好ましい。
そして、本発明によりエタノールを製造する場合は、ピルビン酸を生産することが可能な微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、例えば、サッカロミセス属(Genus Saccharomyces)、クルベロマイセス属(Genus Kluyveromyces)、シゾサッカロミセス属(Genus Schizosaccharomyces)に属する酵母を用いることができる。このうちサッカロミセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)、クルベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)を好適に用いることができる。また、ラクトバチルス属(Genus Lactobacillus)、ザイモモナス属(Genus Zymomonas)に属する細菌も好ましく用いることができる。このうち、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を好適に用いることができる。
エタノールの生産に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、人為的にエタノール生産能力を高めた微生物あるいは培養細胞であってもよい。具体的には、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。一部性質が改変されたものの一例としては、リゾパス属に属するカビのグルコアミラーゼ遺伝子を組み込み生でんぷんの資化能力を獲得した酵母を挙げることができる(微生物、3:555−564(1987))。
また、本発明によりエタノールを製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるエタノールの分離・精製は、例えば、蒸留法による精製法や、NF、RO膜、あるいはゼオライト製の分離膜を用いた濃縮・精製法により好適に行うことができる。
本発明によりピルビン酸を製造する場合は、ピルビン酸を生産することが可能な微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、例えば、シュードモナス属(Genus Pseudomonas)、コリネバクテリウム属(Genus Corynebacterium)、エシェリシア属(Genus Escherichia)、アシネトバクター属(Genus Acinetobacter)に属する細菌を好ましく用いることができる。さらに好ましくは、シュードモナス・フルオレエセンス(Pseudomonas fuluorescens)、シュードモナス・アエロギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)などの細菌を用いることができる。これら細菌を突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変したものを用いてもよい。例えば、酸化的リン酸化によるATP生産に直接関与するATPase遺伝子を変異、または欠失させた細菌も好ましく用いられる。またカビ、酵母なども好ましく用いることができる。例えば、サッカロミセス属(Genus Saccharomyces)、トルロプシス属(Genus Toluropusis)、カンジダ属(Genus Candida)、シゾフィリウム属(Genus Schizophyllum)に属するカビ、酵母を用いることができる。さらに好ましくは、サッカロミセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・コプシス(Saccharomyces copsis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica)、トルロプシス・グラブラータ(Toluropusis glabrata)、シゾフィリウム・コムネ(Schizophyllum commune)などのカビ、酵母を用いてピルビン酸を製造することが出来る。
本発明によりピルビン酸を製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるピルビン酸の分離・精製は、陰イオン交換カラムを用いた方法により行うことができる。例えば、特開平6−345683に示される弱塩性イオン交換体を用いた精製法を好適に用いることができる。
次に、本発明によりコハク酸を製造する場合は、コハク酸を生産することが可能な微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、例えば、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属やアクチノバシラス(Actinobacillus)属に属する細菌を好適に利用することができる。具体的には、米国特許第5143833号明細書に記載のアナエロビオスピリラム サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)やJames B. Mckinlay (ジェームズ B.マッキンリー)らが開示しているアクチノバシラス・サクシノジェネス(Actinobacillus succinogenes)を挙げることができる(Appl. Microbiol. Biotechnol.(アプライド マイクロバイアル アンド マイクロバイオロジー),71,6651−6656 (2005)。また、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属やブレビバクテリウム(Brevibacterium)属などのコリネ型細菌(Coryneform bacterium)、および大腸菌(Escherichia)なども利用可能である。コリネ型細菌では、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、およびブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)などが好適である。
また、微生物としては、遺伝子組換えによって、コハク酸の生産能力が改善された微生物を用いることができ、これによりコハク酸の生産性を向上させることも可能である。このような微生物としては、例えば、特開2005−27533号公報に記載の乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase)を欠損したブレビバクテリウム・フラバムMJ233AB−41(FERM BP−1498)や、非特許文献1に記載のコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、米国特許第5770435号明細書に記載のピルビン酸・ギ酸開裂酵素(pyruvate formate lyase)と乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase)の欠損株である大腸菌AFP111株などを使用することができる。
本発明によりコハク酸を製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるコハク酸の分離・精製には、通常のコハク酸の精製法を適用することができる。例えば、特開2005−333886号公報に示されている水分解電気透析処理と減圧濃縮・晶析を組み合わせた精製法を好適に用いることができる。
本発明によりイタコン酸を製造する場合は、イタコン酸を生産することが可能な微生物であれば特に制限はないが、例えばカビあるいは酵母を好ましく用いることができる。更に好ましくは、アスペルギルス属(Genus Aspergillus)、あるいはウスティラゴ属(Genus Ustilago)に属するカビ、およびカンジダ属(Genus Candida)、ロドトルラ属(Genus Rhodotorula)に属する酵母を用いたイタコン酸の生産が挙げられる。中でも、アスペルギルス テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス イタコニクス(Aspergillus itaconicus)、ウスティラゴ メイディス(Ustilago maydis)、ウスティラゴ シノドンティス(Ustilago cynodontis)、およびウスティラゴ ラベンホルスティナ(Ustilago rabenhorstina)のカビ、あるいはカンジダ アンタルクティカ(Candia antarctica)を、イタコン酸の生産に好ましく用いることができる。
本発明によりイタコン酸を製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるイタコン酸の分離・精製は、好ましくは、限外濾過や電気透析を用いて行うことができる。例えば、特公昭−50958号公報に示される限外濾過、および塩型カチオン交換樹脂膜を用いた電気透析による精製法を好適に用いることができる。
本発明により1,3−プロパンジオールを製造する場合は、1,3−プロパンジオールを生産することが可能な微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、例えば、野生型株ではグリセロールから1,3−プロパンジオールを合成する能力を有するクレブシエラ(Klebsiella)属、クロスツリジウム(Clostridium)属、ラクトバシルス(Lactobacillus)属に属する微生物が挙げられる。
そして、1,3−プロパンジオールを製造する場合、微生物は、(a)グリセロールデヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子;(b)グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子をコードする少なくとも1つの遺伝子;及び(c)3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを1,3−プロパンジオールに転換する非−特異的触媒活性をコードする少なくとも1つの遺伝子を含んでいることが好ましい。本発明では、更に好ましくは、微生物は、組換え微生物で1,3−プロパンジオールを生産可能にすることが挙げられる。
かかる組換え微生物としては、1,3−プロパンジオールを製造する場合、グリセロールから1,3−プロパンジオールを合成する能力を有する微生物は、好ましくは、クレブシエラ(Klebsiella)、クロスツリジウム(Clostridium)、ラクトバシルス(Lactobacillus)、シトロバクテル(Cytrobacter)、エンテロバクテル(Enterobacter)、アエロバクテル(Aerobacter)、アスペルギルス(Aspergillus)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、ピチア(Pichia)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hansenula)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ムコル(Mucor)、トルロプシス(Torulopsis)、メチロバクテル(Methylobacter)、サルモネラ(Salmonella)、バシルス(Bacillus)、アエロバクテル(Aerobacter)、ストレプトミセス(Streptomyces)、エッシェリシア(Eschericia)及びシュードモナス(Pseudomonas)より成る群から選ばれる組換え微生物が好ましく、更に好ましくはエッシェリシア コリである。
また、組換え微生物は、グルコースから効率よく1,3−プロパンジオールを生産する事ができるようにする改良を行ったほうが好ましい。組換え微生物は、例えば、(a)グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子;及び(b)グリセロール−3−ホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を含んだ組換え微生物であることが好ましく。
更にグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子がdhaレギュロンから単離されるorfX及びorfZによりコードされる遺伝子を含んだ組換え微生物であることが更に好ましい。更には、組換え微生物は、グリセロールキナーゼ活性および/またはグリセロールデヒドロゲナーゼ活性および/またはトリオースリン酸イソメラーゼ活性を欠失した組換え微生物であることが好ましい。
本発明により1,3−プロパンジオールを製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれる1,3−プロパンジオールの分離・精製は、濃縮、晶析により行うことができる。例えば、特開平−35785号公報に示される減圧濃縮・晶析を用いた精製法を好適に用いることができる。
本発明によりカダベリンを製造する場合は、カダベリンを生産することが可能な微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、例えば、リジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターの酵素活性を増強している微生物が好ましい。更に好ましくは、リジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターをコードする遺伝子を組み込んだ組換え微生物が挙げられる。更に好ましくは、リジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子が1または2種類以上組み込まれている組換え微生物である。
カダベリンを製造する場合、組換え微生物としては大腸菌およびコリネ型細菌が好ましく、更に好ましくは、リジン脱炭酸酵素活性を有し、かつホモセリン栄養要求性またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性の少なくともいずれか1つの特徴を有しているコリネ型細菌である。更には、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損していることが好ましく。遺伝子挿入変異生成によりホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損していることが更に好ましい。また、コリネ型細菌の属が、コリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属からなる群より選ばれる少なくとも1つの属であることが好ましい。更に好ましくは、コリネバクテリア・グルタミカム(Corynebacuterium gulutamicum)である。
本発明によりカダベリンを製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるカダベリンの分離・精製は、濃縮、蒸留および晶析などの従来知られている方法を組み合わせて行うことができる。例えば、特開2004−222569号公報に示される晶析を用いた精製法を好適に用いることができる。本発明によって得られるカダベリンは、連続培養の際に用いられる酸によって様々なポリマー原料にすることができるが、好純度が求められるポリマー原料用途では晶析による精製方法が好ましく用いられる。塩酸により培養液のpHを維持すると、濾過・分離発酵液からは晶析工程によりカダベリン二塩酸塩を回収することができる。更に、連続培養の際にジカルボン酸により培養液のpHを維持し、濾過・分離発酵液から晶析工程によりカダベリン・ジカルボン酸塩を回収することも好ましい。そのジカルボン酸は、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸であることが、更にはアジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸またはテレフタル酸のいずれかであることが、好ましい。
以下、本発明をさらに詳細に説明するために、上記化学品として、L−乳酸、D−乳酸、エタノール、ピルビン酸、コハク酸、1,3−プロパンジオール、イタコン酸、カダベリンを選定し、それぞれの化学品を生産する能力のある微生物あるいは培養細胞による、図1および図2に示す装置を用いた連続発酵の具体的な実施形態について、実施例を挙げて説明する。
(参考例1) 多孔性膜の作製(その1)
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ-ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解し、製膜原液を作製した。この原液をγ-ブチロラクトンを中空部形成液体として随拌させながら口金から吐出し、温度20℃のγ-ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社、CAP482−0.5)を1重量%、N-メチル-2-ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社製、商品名“イオネットT−20C”(登録商標))を5重量%、および水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して、コーティング原液を調整した。このコーティング原液を、上記で得られた中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させ、以下の実施例、比較例で用いる中空糸膜(多孔性膜)を製作した。
得られた多孔性膜の被処理液側表面(外側表面)の平均細孔径は、0.05μmであった。また、この多孔性膜について純水透過係数を評価したところ、5.5×10-9m3/m2・s・Paであった。なお、純水透過係数の測定は、逆浸透膜で調製した25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。また、平均細孔径の標準偏差は0.006μmであった。
(参考例2) 多孔性膜の作製(その2)
ポリフッ化ビニリデン15.9重量%、塩化リチウム0.9重量%、水3.7重量%およびポリビニルピロリドン2.3重量%を、溶媒のジメチルアセトアミド(DMAC)77.2重量%に加えて混合し十分に溶解させ製膜原液を調製した。次に、得られた製膜原液を25℃の温度に冷却した後、あらかじめガラス板上に貼り付けて置いた、ポリエステル繊維製不織布(多孔質基材)に塗布し、相対湿度が80%の空気に2分間放置し、直ちに50℃の温度の温水浴中に5分間浸漬して、多孔質基材上に多孔質樹脂層が形成された多孔性膜を得た。
得られた多孔性膜の多孔質樹脂層表面を、倍率1,500倍で走査型電子顕微鏡観察を行った。観察できる細孔すべての直径の平均は、2.0μmであった。また、この多孔性膜について、純水透過係数を評価した結果、3.0×10−6m3/m2・s・Paであった。なお、純水透過係数の測定は、逆浸透膜で調製した25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
(参考例3) L−乳酸生産能力を持つ酵母株の作製
乳酸生産能力を有する酵母として、配列番号1に記載の塩基配列を有するアフリカツメガエル由来のldh遺伝子がPDC1遺伝子、SED1遺伝子、およびTDH3遺伝子座に導入された酵母を作製した。アフリカツメガエル由来のldh遺伝子のクローニングはPCR法により行った。PCRには、アフリカツメガエルの腎臓由来cDNAライブラリー(STRATAGENE社製)より付属のプロトコールに従い調製したファージミドDNAを鋳型とした。
PCR増幅反応には、KOD-Plus polymerase(東洋紡社製)を用い、反応バッファー、dNTPmixなどは付属のものを使用した。上記のように付属のプロトコールに従い調整したファージミドDNAを50ng/サンプル、プライマーを50pmol/サンプル、及びKOD-Plus polymeraseを1ユニット/サンプルになるように50μlの反応系に調製した。反応溶液をPCR増幅装置iCycler(BIO−RAD社製)により94℃の温度で5分熱変成させた後、94℃(熱変成):30秒、55℃(プライマーのアニール):30秒、68℃(相補鎖の伸張):1分を1サイクルとして30サイクル行い、その後4℃の温度に冷却した。なお、遺伝子増幅用プライマー(配列番号2,3)には、5末端側にはSalI認識配列、3末端側にはNotI認識配列がそれぞれ付加されるようにして作製した。
PCR増幅断片を精製し、末端をT4 polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーションは、DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)を用いて行った。ライゲーション溶液を大腸菌DH5αのコンピテント細胞(タカラバイオ社製)に形質転換し、抗生物質アンピシリンを50μg/mLを含むLBプレートに蒔いて一晩培養した。生育したコロニーについて、ミニプレップでプラスミドDNAを回収し、制限酵素SalI及びNotIで切断し、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が挿入されているプラスミドを選抜した。これら一連の操作は、全て付属のプロトコールに従い行った。
上記アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が挿入されたpUC118ベクターを制限酵素SalI及びNotIで切断し、DNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、定法に従いアフリカツメガエル由来のldh遺伝子を含む断片を精製した。得られたldh遺伝子を含む断片を、図6に示す発現ベクターpTRS11のXhoI/NotI切断部位にライゲーションし、上記と同様な方法でプラスミドDNAを回収し、制限酵素XhoI及びNotIで切断することにより、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が挿入された発現ベクターを選抜した。以後、このようにして作製したアフリカツメガエル由来のldh遺伝子を組み込んだ発現ベクターをpTRS102とする。
このpTRS102を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号4,5)をプライマーセットとしたPCRにより、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子及びTDH3ターミネーター配列を含む1.3kbのPCR断片を増幅した。ここで配列番号4は、PDC1遺伝子の開始コドンから上流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
次に、プラスミドpRS424を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号6,7)をプライマーセットとしたPCRにより、酵母選択マーカーであるTRP1遺伝子を含む1.2kbのPCR断片を増幅した。ここで、配列番号7は、PDC1遺伝子の終始コドンから下流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
それぞれのDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた各1.3kb断片、1.2kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号4,7)をプライマーセットとしたPCR法によって、5末端・3末端にそれぞれPDC1遺伝子の上流・下流60bpに相当する配列が付加された、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子、TDH3ターミネーター及びTRP1遺伝子が連結された約2.5kbのPCR断片を増幅した。
上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、酵母サッカロミセス・セレビセNBRC10505株に形質転換し、トリプトファン非添加培地で培養することにより、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が染色体上のPDC1遺伝子プロモーターの下流に導入されている形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が染色体上のPDC1遺伝子プロモーターの下流に導入されている酵母であることの確認は下記のように行った。まず、形質転換株のゲノムDNAをゲノムDNA抽出キットGenとるくん(タカラバイオ社製)により調製し、これを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号7,8)をプライマーセットとしたPCRにより、約2.8kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。なお、非形質転換株では、上記PCRによって約2.1kbの増幅DNA断片が得られる。以下、上記アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が染色体上のPDC1遺伝子プロモーターの下流に導入された形質転換株を、B2株とする。なお、PDC1遺伝子の上流及び下流配列は、Saccharomyces Genome Database(URL:http://www.yeastgenome.org/)より取得することができる。
続いてこのB2株に、配列番号1に記載のldh遺伝子をSED1遺伝子座に導入した。SED1遺伝子座への導入は、参考例1で作製したpTRS102を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号5,9)をプライマーセットとしたPCRにより、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子及びTDH3ターミネーター配列を含む1.3kbのPCR断片を増幅した。ここで配列番号9は、SED1遺伝子の開始コドンから上流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
次に、プラスミドpRS423を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号6,10)をプライマーセットとしたPCRにより、酵母選択マーカーであるHIS3遺伝子を含む約1.3kbのPCR断片を増幅した。ここで、配列番号10は、SED1遺伝子の終始コドンから下流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
それぞれのDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた二種類の約1.3kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号9,10)をプライマーセットとしたPCR法によって、5末端・3末端にそれぞれSED1遺伝子の上流・下流60bpに相当する配列が付加された、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子、TDH3ターミネーター及びHIS3遺伝子が連結された約2.6kbのPCR断片を増幅した。
上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、B2株に形質転換し、ヒスチジン非添加培地で培養することにより、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が染色体上のSED1遺伝子プロモーターの下流に導入されている形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が染色体上のSED1遺伝子プロモーターの下流に導入されている酵母であることの確認は下記のように行った。まず、形質転換株のゲノムDNAをゲノムDNA抽出キットGenとるくん(タカラバイオ社製)により調製し、これを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号11,12)をプライマーセットとしたPCRにより、約2.9kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。なお、非形質転換株では、上記PCRによって約1.4kbの増幅DNA断片が得られる。以下、上記アフリカツメガエル由来のldh遺伝子が染色体上のSED1遺伝子プロモーターの下流に導入された形質転換株を、SU014−I株とする。
続いてSU014−Iに配列番号1に記載のldh遺伝子をTDH3遺伝子座に導入した。TDH3遺伝子座への導入は、pTRS102のTDH3ターミネーターをADH1ターミネーターに変更したプラスミドを作製した。
まず、NBRC10505株からゲノムDNA抽出キットGenとるくん(タカラバイオ社製)によりゲノムDNAを抽出し、抽出したゲノムDNAを鋳型として、オリゴヌクレオチド(配列番号13,14)をプライマーセットとしたPCRにより、ADH1プロモーターを含むPCR断片を増幅した。ここで配列番号13には、5末端側にはNotI認識配列、配列番号14には3末端側にはHindIII認識配列がそれぞれ付加されるようにして作製した。
PCR増幅断片を精製し、末端をT4 polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーション溶液を大腸菌DH5αのコンピテント細胞(タカラバイオ社製)に形質転換し、抗生物質アンピシリンを50μg/mLを含むLBプレートに蒔いて一晩培養した。生育したコロニーについて、ミニプレップでプラスミドDNAを回収し、制限酵素NotI及びHindIIIで切断し、ADH1ターミネーターが挿入されているプラスミドを選抜した。作製したプラスミドをpUC118−ADH1tとする。
次にpUC118−ADH1tを制限酵素NotI及びHindIIIで切断し、DNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常定法に従いADH1ターミネーターを含む断片を精製した。得られたADH1ターミネーターを含む断片を、pTRS102のNotI/HindIII切断部位にライゲーションし、上記と同様な方法でプラスミドDNAを回収し、制限酵素NotI及びHindIIIで切断することにより、TDH3ターミネーターがADH1ターミネーターに変更されたプラスミドを選抜した。以後、このようにして作製したプラスミドをpTRS150とする。
このpTRS150を鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号15,16)をプライマーセットとしたPCRにより、カエル由来のL−ldh遺伝子及びADH1ターミネーター配列を含む1.3kbのPCR断片を増幅した。ここで配列番号16のプライマーは、TDH3遺伝子の開始コドンから上流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
次に、プラスミドpRS426を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号17,18)をプライマーセットとしたPCRにより、酵母選択マーカーであるURA3遺伝子を含む1.2kbのPCR断片を増幅した。ここで、配列番号18のプライマーは、TDH3遺伝子の終始コドンから下流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
それぞれのPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた各1.3kb断片、1.2kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号16,18)をプライマーセットとしたPCR法によって、カエル由来のL−ldh遺伝子、ADH1ターミネーター及びURA3遺伝子が連結された約2.5kbのPCR断片を増幅した。
上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、SU014−I株に形質転換し、ウラシル非添加培地で培養することにより、カエル由来のL−ldh遺伝子が染色体上のTDH3遺伝子プロモーターの下流に導入されている形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、カエル由来のL−ldh遺伝子が染色体上のTDH3遺伝子プロモーターの下流に導入されている酵母であることの確認は下記のように行った。まず、形質転換株のゲノムDNAをゲノムDNA抽出キットGenとるくん(タカラバイオ社製)により調製し、これを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号19,20)をプライマーセットとしたPCRにより、約2.8kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。なお、非形質転換株では、上記PCRによって約2.1kbの増幅DNA断片が得られる。以下、上記カエル由来のL−ldh遺伝子が染色体上のTDH3遺伝子プロモーターの下流に導入された形質転換株をSU014−II株とする。
次に、国際公開WO2007/097260号公報に記載されている、pdc5遺伝子に温度感受性変異を有する酵母SW015株と上記得られたSU014−II株とを接合させ2倍体細胞を得た。該2倍体細胞を子嚢形成培地で子嚢形成させた。マイクロマニピュレーターで子嚢を解剖し、それぞれの一倍体細胞を取得し、それぞれ一倍体細胞の栄養要求性を調べた。取得した一倍体細胞の中から、pdc1遺伝子、sed1遺伝子、tdh3遺伝子座にアフリカツメガエル由来のldh遺伝子が挿入され、かつ、pdc5遺伝子に温度感受性変異を有する(34℃で生育不能)株をMATa、およびMATαのそれぞれの接合型を選択した。得られた酵母株のうちMATaの接合型を有する株をSU014―8A株、MATαの接合型を有する株をSU014―3B株とした。
(参考例4) リジン栄養要求性復帰株の作成
参考例3で得られたSU014−8A株のリジン要求性を復帰させた。フナコシ社製のBY4741のゲノムDNA を鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号21,22)をプライマーセットとしたPCRにより、LYS2遺伝子の前半約2kbのPCR断片を増幅させた。上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、SU014―8A株に形質転換し、lys2遺伝子のアンバー変異を解除した。リジン非添加培地で培養することにより、リジン合成能が復帰した形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、lys2遺伝子のアンバー変異を解除された酵母であることの確認は下記のように行った。まず、得られた形質転換体と野生型のLYS2遺伝子を持つ20GY77株とを接合させ2倍体細胞を得た。該2倍体細胞を子嚢形成培地で子嚢形成させた。マイクロマニピュレーターで子嚢を解剖し、それぞれの一倍体細胞を取得し、それぞれ一倍体細胞の栄養要求性を調べた。取得した一倍体細胞のすべてがリジン合成能を持っていることを確認した。なお、lys2の変異が解除されずにリジン合成能が復帰した場合には、上記で得られる1倍体細胞のうち、リジン合成能を持たない細胞が得られる。以下SU014−8A株のリジン合成能が復帰した株をHI001とする。
(参考例5) リジン栄養要求性復帰株の取得
参考例3で得られたSU014−3B株のロイシン要求性を復帰させた。PRS425 を鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号23,24)をプライマーセットとしたPCRにより、LEU2遺伝子のPCR断片約2kbを増幅させた。上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、SU014―3B株に形質転換し、leu2遺伝子の変異を解除した。ロイシン非添加培地で培養することにより、ロイシン合成能が復帰した形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、leu2遺伝子の変異を解除された酵母であることの確認は下記のように行った。まず、得られた形質転換体と野生型のLEU2遺伝子を持つ20GY7株とを接合させ2倍体細胞を得た。該2倍体細胞を子嚢形成培地で子嚢形成させた。マイクロマニピュレーターで子嚢を解剖し、それぞれの一倍体細胞を取得し、それぞれ一倍体細胞の栄養要求性を調べた。取得した一倍体細胞のすべてがロイシン合成能を持っていることを確認した。なお、leu2遺伝子の変異が解除されずにロイシン合成能が復帰した場合には、上記で得られる1倍体細胞のうち、ロイシン合成能を持たない細胞が得られる。以下SU014−3B株のロイシン合成能が復帰した株をHI002とする。
(参考例6) 2倍体原栄養株の取得
参考例4及び参考例5で得られたHI001株とHI002株とを接合させ、栄養要求性のない2倍体原栄養株を得た。得られた株を以下HI003とする。
(参考例7) 2倍体栄養要求性株の取得
参考例3で得られたSU014−8A株とSU014−3B株とを接合させ、栄養要求性のある2倍体栄養要求性株を得た。得られた株をSU014とする。
(参考例8) 乳酸など培地成分の定量
乳酸は、濾液の遠心上清について、以下の条件でHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
また、L−乳酸およびD−乳酸の濃度測定は以下の条件でHPLC法により測定した。
カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー社製)
移動相 :1mM 硫酸銅水溶液
流速:1.0ml/min
検出方法 :UV254nm
温度 :30℃。
また、L−乳酸の光学純度は次式で計算した。
光学純度(%)=100×(L−D)/(L+D)
ここで、LはL−乳酸の濃度、DはD−乳酸の濃度を表す。
また、スクロース、グルコース、フラクトース濃度の測定は、濾液の遠心上清について、以下の条件でHPLC法により測定することで確認した。
カラム:Asahipak NH2P-50 4E(SHODEX社製)
移動相:75 %アセトニトリル溶液
検出方法:示差屈折率
温度:30℃
流速:0.6ml/min。
(比較例1) 2倍体原栄養株を用いたバッチ培養
微生物を用いた発酵形態として最も典型的な回分発酵を行い、L−乳酸生産性を評価した。すなわち、図1の連続培養装置の培養反応槽1のみを用いた回分発酵試験を行った。酵母乳酸発酵培地には、表1に示すように原料糖(粗糖)等を使用した。原料糖としては、ムソー株式会社の優糖精(商品名)を使用した。培地は、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌して用いた。微生物としては上記の参考例6で造成した酵母HI003株を用い、濾液中の生産物(乳酸)の濃度および濾糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLC法を用いた。
培養の条件を以下に示す。
・培養反応槽容量:1.5(L)
・温度調整:32(℃)
・培養反応槽通気量:0.1(L/min)
・培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
・pH調整:5N Ca(OH)2によりpH5に調整
・培養反応槽は121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
具体的には、まず、HI003株を試験管で5mlの乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々培養)。前々培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mlに植菌し500ml容坂口フラスコで24時間振とう培養した(前培養)。前培養液を図1の連続培養装置の1.5Lの乳酸発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、通気した。温度の調整とpHの調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働させることなく、回分発酵培養を行った。回分発酵の結果を表2に示す。乳酸対糖収率は、80%であった。また、この培養時のkLaは7.0であった。
(比較例2) 外部循環装置を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造
L−乳酸を生産させる微生物として上記の参考例6で造成した酵母HI003株を用い、培地として表3に示す組成の酵母乳酸発酵培地を用い、図5の連続培養装置によりL−乳酸の製造を行った。なお、図5に示す装置は、分離膜エレメント2が、培養反応槽1の外部に設置され、培養反応槽1には、培養液循環配管110の培養反応槽1から膜分離槽12へ培養液を供給するための送液口111と、未濾過培養液を膜分離槽12から培養反応槽1へ還流するための環流口112とが接続され、かつ、送液口111が培養反応槽1に貯留される培養液に浸漬する位置に開口してなり、環流口112が培養反応槽1に貯留される培養液に浸漬しない位置に開口しているものであり、環流口112が培養液に浸漬しない位置に開口している以外は図1の連続培養装置と同じものである。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。濾液中の生産物(乳酸)の濃度および糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLCを用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:60平方cm
温度調整:32(℃)
培養反応槽通気量:0.1(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N Ca(OH)2によりpH5に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
培養液の循環液量:0.1(L/min)
濾液流量制御:膜間差圧による流量制御
(膜間差圧:0.1kPa〜20kPa未満で制御)
具体的には、まず、HI003株を試験管で5mlの乳酸発酵培地で一晩振とう培養し培養液を得た(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図5に示す連続培養装置の1.5Lの乳酸発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度の調整、pHの調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働させ(0.1L/min)、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量が2L(培養反応槽分1.5L、培養液循環配管分および膜分離槽分で合計0.5L)となるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるL−乳酸の製造を行った。連続発酵試験を行うときの濾液量の制御は、差圧制御装置3により、適宜変化させることで行った。適宜、濾液中のL−乳酸濃度および残存糖濃度を測定した。
800時間の連続発酵試験を行った結果を表4に示す。図5に示す連続培養装置を用いて外部循環を行いながら発酵を行うことで、回分発酵の比較例1より若干乳酸対糖収率が低下した。乳酸対糖収率は、73%であった。また、この培養時のkLaは9.1であった。
(比較例3) 循環量を変化させたときのろ過流量の変化
生産速度を向上させるには、上記式(1)、式(5)に示した通り培養液の抜き取り速度すなわち濾液流量を大きくすれば向上する。しかし、濾液流量を大きくすれば、微生物による目詰まりが起こりやすくなり、濾過性能を長期間安定に制御することが困難になる。
そこで、培養反応槽−膜分離槽間の培養液の循環量を大きくすることで、クロスフロー流速を発生させ、膜表面を洗浄することにより、微生物による目詰まりが起こりにくくなり、濾液流量を大きくしても濾過性能を安定に維持できるか、以下の運転条件にて確認を行った。
L−乳酸を生産させる微生物として、上記の参考例6で造成した酵母HI003株を用い、培地として表3に示す組成の酵母乳酸発酵培地を用い、図5の連続培養装置によりL−乳酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:60平方cm
温度調整:32(℃)
培養反応槽通気量:0.1(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N Ca(OH)2によりpH5に調整
培養液循の循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)。
具体的には、まず、HI003株を試験管で5mlの乳酸発酵培地で一晩振とう培養し培養液を得た(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図5に示す連続培養装置の1.5Lの乳酸発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度の調整、pHの調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働させ(0.1L/min)、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるL−乳酸の製造を行った。また、循環量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。600時間の連続発酵試験を行った結果を表5に示す。循環量を大きくすることで、濾液流量が向上することが明らかとなった。また、循環量ごとのkLaを測定した結果、0.25L/minの運転時にkLaが回分培養時と同じ7.0となった。また、0.5L/minの運転時はkLaが3.1、1.0L/minの運転時はkLaが1.9であった。
(実施例1) 酵母を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その1)
L−乳酸を生産する微生物として、上記の参考例6で造成した酵母HI003株を用い、培地として表3に示す組成の酵母乳酸発酵培地を用い、図1の連続培養装置によりL−乳酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物である乳酸の濃度および残存糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLCを用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:60平方cm
温度調整:32(℃)
培養反応槽通気量:0.1(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH5に調整
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、HI003株を試験管で5mlの酵母乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な酵母乳酸発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の1.5Lの酵母発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、酵母乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるL−乳酸の製造を行った。また、循環量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中のL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。
600時間の連続発酵試験を行った結果を表6に示す。kLaは、回分培養で対糖収率の高かった7.0(設定値)の条件で培養を開始したところ、循環量を大きくすると低下したものの、その減少率は設定値の30%以内に収まっていた。図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定した収率でL−乳酸の連続発酵による製造が可能であった。
なお、kLaの減少率は、kLaの設定値とある時点でのkLa値との差を当該設定値で除し、その値に100を乗じることで算出する。
(実施例2) 酵母を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その2)
分離膜として参考例2で作製した多孔性膜、図4に示す分離膜エレメントを構成した以外は実施例1と同様の条件で、L−乳酸連続発酵試験を行った。その結果を表6に示す。kLaは、回分培養で対糖収率の高かった7.0(設定値)の条件で培養を開始したところ、循環量を大きくすると低下したものの、その減少率は設定値の30%以内に収まっていた。図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定した収率でL−乳酸の連続発酵による製造が可能であった。
(実施例3) 酵母を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その3)
L−乳酸を生産する微生物として、上記の参考例6で造成した酵母HI003株を用い、培地として表3に示す組成の酵母乳酸発酵培地を用い、図2の連続培養装置によりL−乳酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物である乳酸の濃度および残存糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLCを用いた。
培養条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:60平方cm
温度調整:32(℃)
培養反応槽通気量:0.1(L/min)
培養液循環配管通気量:0.03(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH5に調整
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、HI003株を試験管で5mlの酵母乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な酵母乳酸発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示す連続培養装置の1.5Lの酵母発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、酵母乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるL−乳酸の製造を行った。また、循環量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。
600時間の連続発酵試験を行った結果を表6に示す。kLaは、回分培養で対糖収率の高かった7.0(設定値)の条件で培養を開始したところ、循環量を大きくしてもほぼ一定であり、その減少率は設定値の30%以内に収まっていた。図2に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、高収率で安定したL−乳酸の連続発酵による製造が可能であった。
(比較例4) 酵母を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その4)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用いた以外は実施例1と同様に、L−乳酸連続発酵試験を行った。適宜、濾液中のL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。また、該L−乳酸およびグルコース濃度から算出された該L−乳酸対糖収率を表6に示した。kLaは、回分培養で対糖収率の高かった7.0(設定値)の条件で培養を開始したところ、循環量を大きくすると低下し、その減少率は設定値の30%以上であった。
(比較例5) 酵母を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その5)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用いた以外は実施例2と同様に行った。その結果を表6に示した。kLaは、回分培養で対糖収率の高かった7.0(設定値)の条件で培養を開始したところ、循環量を大きくすると低下し、その減少率は設定値の30%以上であった。
表6に示した結果(比較例4および比較例5)を見ると、培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している連続培養装置(図5)で循環量を変化させ培養を行うと、循環量を大きくするほど連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下してしまった。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。一方、培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬している位置に開口している連続培養装置(図1および図2)では、循環量を変化させても連続培養成績の一つである対糖収率が変化せず安定に長期間運転可能であった。さらに、図2の連続培養装置を用いて、培養液循環配管部分に培養反応槽内と同じ体積比で通気を行うことで、より高収率で安定に長期間培養が可能であった。
(実施例4) 連続発酵によるエタノールの製造(その1)
エタノールを生産する微生物としてNBRC10505株を用い、培地として表7に示す組成のエタノール発酵培地を用い、図1の連続培養装置によりエタノールの製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物であるエタノールの濃度の評価には、ガスクロマトグラフ法により定量した。Shimadzu GC-2010キャピラリーGC TC-1(GL science) 15 meter L.*0.53 mm I.D., df1.5 μmを用いて、水素炎イオン化検出器により検出・算出して、評価した。残存糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLCを用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:32(℃)
培養反応槽通気量:0.1(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH5に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、NBRC10505株を試験管で5mlのエタノール発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮なエタノール発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の1.5Lのエタノール発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、エタノール発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるエタノールの製造を行った。また、還流量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたエタノール濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表8に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したエタノールの連続発酵による製造が可能であった。
(実施例5) 連続発酵によるエタノールの製造(その2)
エタノールを生産する微生物としてNBRC10505株を用い、培地として表7に示す組成のエタノール発酵培地を用い、図2の連続培養装置によりエタノールの製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物であるエタノールの濃度の評価には、ガスクロマトグラフ法により定量した。残存糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLCを用いた。
培養条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:32(℃)
培養反応槽通気量:0.1(L/min)
培養液循環配管通気量:0.03(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH5に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、NBRC10505株を試験管で5mlのエタノール発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮なエタノール発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示す連続培養装置の1.5Lのエタノール発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、エタノール発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるエタノールの製造を行った。また、還流量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。その結果を表8に示す。
図2に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したエタノールの連続発酵による製造が可能であった。
(比較例6) 連続発酵によるエタノールの製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例4と同様に行った。
結果を表8に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下してしまった。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。
(実施例6) 連続発酵によるピルビン酸の製造(その1)
ピルビン酸を生産する微生物としてトルロプシス・グラブラータP120−5a株(FERM P−16745)を用い、培地として表9に示す組成のピルビン酸発酵培地を用い、図1の連続培養装置によりピルビン酸の製造を行った。該培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
生産物であるピルビン酸の濃度は、下記に示す条件でHPLC法により測定した。また、残存糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLCを用いた。
カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:30(℃)
培養反応槽通気量:1.5(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:4N NaOHによりpH5.5に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、P120−5a株を試験管で5mlのピルビン酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮なピルビン酸発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の1.5Lのピルビン酸発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、ピルビン酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるピルビン酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたピルビン酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表10に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したピルビン酸の連続発酵による製造が可能であった。
(実施例7) 連続発酵によるピルビン酸の製造(その2)
ピルビン酸を生産する微生物としてトルロプシス・グラブラータP120−5a株(FERM P−16745)を用い、培地として表9に示す組成のピルビン酸発酵培地を用い、図2の連続培養装置によりピルビン酸の製造を行った。該培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
生産物であるピルビン酸の濃度は、下記に示す条件でHPLC法により測定した。また、残存糖類の定量には、上記の参考例8に示したHPLCを用いた。
カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:30(℃)
培養反応槽通気量:1.5(L/min)
培養液循環配管通気量:0.5(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:4N NaOHによりpH5.5に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、P120−5a株を試験管で5mlのピルビン酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮なピルビン酸発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示す連続培養装置の1.5Lのピルビン酸発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、ピルビン酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵培養液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるピルビン酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたピルビン酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表10に示す。
図2に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したピルビン酸の連続発酵による製造が可能であった。
(比較例7) 連続発酵によるピルビン酸の製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例6と同様に行った。
結果を表10に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下してしまった。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。
(実施例8) 連続発酵によるコハク酸の連続製造(その1)
コハク酸を生産する微生物として、アナエロビオスピリラム サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)ATCC53488株を用い、培地として表11に示す組成のコハク酸発酵培地を用い、図1に示す連続培養装置によりコハク酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した
コハク酸の製造におけるコハク酸およびグルコースは、特に断らない限り、以下の方法で測定した。
コハク酸は、培養液の遠心上清について、HPLC(島津 LC10A、RIモニター:RID-10A、カラム:アミネックスHPX-87H)で分析した。カラム温度は50℃、0.01N H2SO4でカラムを平衡化した後、サンプルをインジェクションし、0.01N H2SO4で溶出して分析を行った。グルコースは、グルコースセンサー(BF−4、王子計測機器)を用いて測定した。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:39(℃)
培養反応槽CO2通気量:10(mL/min)
O2通気量:1(mL/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:2M Na2CO3でpH6.4に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、発酵培地を125mL容三角フラスコに入れ加熱滅菌し、その後、嫌気グローブボックス内で、30mM Na2CO3 1mLと180mM H2SO4 0.15mLを加え、さらに、0.25g/L システイン・HCl、0.25g/L Na2Sからなる還元溶液0.5mLを加えた後、ATCC53488株を接種し、39℃で一晩静置培養した(前々培養)。その後、図1に示す連続培養装置の1.5Lのコハク酸発酵培地に、0.25g/L システイン・HCl、0.25g/L Na2S・9H2Oからなる還元溶液5mLを加えた後、前々培養液50mLを植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。
前培養完了後直ちに、コハク酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるよう濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるコハク酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたコハク酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表12に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したコハク酸の連続発酵による製造が可能であった。
(実施例9) 連続発酵によるコハク酸の連続製造(その2)
コハク酸を生産する微生物として、アナエロビオスピリラム サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)ATCC53488株を用い、培地として表12に示す組成のコハク酸発酵培地を用い、図2に示す連続培養装置によりコハク酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
コハク酸の製造におけるコハク酸およびグルコースは、特に断らない限り、以下の方法で測定した。
コハク酸は、培養液の遠心上清について、HPLC(島津 LC10A、RIモニター:RID-10A、カラム:アミネックスHPX-87H)で分析した。カラム温度は50℃、0.01N H2SO4でカラムを平衡化した後、サンプルをインジェクションし、0.01N H2SO4で溶出して分析を行った。グルコースは、グルコースセンサー(BF−4、王子計測機器)を用いて測定した。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:39(℃)
培養反応槽CO2通気量:10(mL/min)
O2通気量:1(mL/min)
培養液循環配管通気量:0.03(mL/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:2M Na2CO3でpH6.4に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、発酵培地を125mL容三角フラスコに入れ加熱滅菌し、その後、嫌気グローブボックス内で、30mM Na2CO31mLと180mM H2SO4 0.15mLを加え、さらに、0.25g/L システイン・HCl、0.25g/L Na2Sからなる還元溶液0.5mLを加えた後、ATCC53488株を接種し、39℃で一晩静置培養した(前々培養)。
その後、図2に示す連続培養装置の1.5Lのコハク酸発酵培地に、0.25g/L システイン・HCl、0.25g/L Na2S・9H2Oからなる還元溶液5mLを加えた後、前々培養液50mLを植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。
前培養完了後直ちに、コハク酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるよう濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるコハク酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたコハク酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表12に示す。
図2に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したコハク酸の連続発酵による製造が可能であった。
(比較例8) 連続発酵によるコハク酸の製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例8と同様に行った。
結果を表12に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下してしまった。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。
(実施例10) 連続発酵による1,3−プロパンジオールの製造(その1)
1,3−プロパンジオールを生産する微生物としてクレブシエラ・ニューモニアエATCC 25955株を用い、培地として表13に示す組成の1,3−プロパンジオール生産培地を用い、図1の連続培養装置により1,3−プロパンジオールの製造を行った。培地は、高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
生産物である1,3−プロパンジオールの測定は、以下のように行った。1.0mLの培養上澄み液に30μLの濃(70%v/v)過塩素酸を加え、混合の後、試料を凍結乾燥した。ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド:ピリジンの1:1混合物(300μL)を凍結乾燥された材料に加え、激しく混合し、65℃において1時間置いた。遠心により不溶性材料を除いて試料を透明にした。得られる液体は2相に分かれ、その上相を分析に用いた。試料をDB−5カラム(48m、内径0.25mm、フィルム厚さ0.25μm;J&W Scientificから)上でクロマトグラフィーにより分析した。また、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:37(℃)
培養反応槽N2通気量:0.6(L/min)
O2通気量:0.05(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH7.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、クレブシエラ・ニューモニアエATCC 25955株を試験管で5mlの1,3−プロパンジオール生産培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な1,3−プロパンジオール生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示した連続培養装置の1.5Lの1,3−プロパンジオール生産培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、1,3−プロパンジオール生産培地(グリセロール濃度は100g/L)の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるよう濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵による1,3−プロパンジオールの製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産された1,3−プロパンジオール濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表14に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定した1,3−プロパンジオールの連続発酵による製造が可能であった。
(実施例11) 連続発酵による1,3−プロパンジオールの製造(その2)
1,3−プロパンジオールを生産する微生物としてクレブシエラ・ニューモニアエATCC 25955株を用い、培地として表13に示す組成の1,3−プロパンジオール生産培地を用い、図2の連続培養装置により1,3−プロパンジオールの製造を行った。培地は、高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
生産物である1,3−プロパンジオールの測定は、以下のように行った。1.0mLの培養上澄み液に30μLの濃(70%v/v)過塩素酸を加え、混合の後、試料を凍結乾燥した。ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド:ピリジンの1:1混合物(300μL)を凍結乾燥された材料に加え、激しく混合し、65℃において1時間置いた。遠心により不溶性材料を除いて試料を透明にした。得られる液体は2相に分かれ、その上相を分析に用いた。試料をDB−5カラム(48m、内径0.25mm、フィルム厚さ0.25μm;J&W Scientificから)上でクロマトグラフィーにより分析した。また、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:37(℃)
培養反応槽N2通気量:0.6(L/min)
O2通気量:0.05(L/min)
培養液循環配管通気量:0.017L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH7.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、クレブシエラ・ニューモニアエATCC 25955株を試験管で5mlの1,3−プロパンジオール生産培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な1,3−プロパンジオール生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示した連続培養装置の1.5Lの1,3−プロパンジオール生産培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、1,3−プロパンジオール生産培地(グリセロール濃度は100g/L)の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるよう濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵による1,3−プロパンジオールの製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産された1,3−プロパンジオール濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表14に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定した1,3−プロパンジオールの連続発酵による製造が可能であった。
(比較例9) 連続発酵による1,3−プロパンジオールの製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例10と同様に行った。
結果を表14に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下した。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。
(実施例12) 連続発酵によるイタコン酸の製造(その1)
イタコン酸を生産する微生物としてアスペルギルス テレウス(A.terreus)ATCC10020株を用い、培地として表15に示す組成のイタコン酸発酵培地を用い、図1に示す連続培養装置によりイタコン酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌処理(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物であるイタコン酸の濃度は、コッペシャール(Koppeshaar)の方法(共立出版、微生物光学講座第5巻「カビの利用工業」p72−73、昭和31年発行)の方法で測定した。また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:35(℃)
培養反応槽通気量:1.5(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:4N NaOHによりpH5.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、アスペルギルス テレウスATCC10020株を、試験管で表15に示す5mlの前培養培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な前培養培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで48時間、35℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の1.5Lの連続・回分発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、イタコン酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるイタコン酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたイタコン酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表16に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したイタコン酸の連続発酵による製造が可能であった。
(実施例13) 連続発酵によるイタコン酸の製造(その2)
イタコン酸を生産する微生物としてアスペルギルス テレウス(A.terreus)ATCC10020株を用い、培地として表15に示す組成のイタコン酸発酵培地を用い、図2に示す連続培養装置によりイタコン酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌処理(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
生産物であるイタコン酸の濃度は、コッペシャール(Koppeshaar)の方法(共立出版、微生物光学講座第5巻「カビの利用工業」p72−73、昭和31年発行)の方法で測定した。また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:35(℃)
培養反応槽通気量:1.5(L/min)
培養液循環配管通気量:0.5L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:4N NaOHによりpH5.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、アスペルギルス テレウスATCC10020株を、試験管で表15に示す5mlの前培養培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な前培養培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで48時間、35℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示す連続培養装置の1.5Lの連続・回分発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、イタコン酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるイタコン酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたイタコン酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表16に示す。
(比較例10) 連続発酵によるイタコン酸の製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例12と同様に行った。
結果を表16に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下した。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。
(実施例14) 連続発酵によるカダベリンの製造(その1)
カダベリンを生産させる微生物として、特開2004−222569号公報に記載のコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株用い、培地として表17に示す組成のカダベリン生産培地を用い、図1に示す連続培養装置によりカダベリンの製造を行った。培地は、高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
カダベリンは以下に示すHPLC法によって評価した。
使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
移動相:0.1%(w/w)リン酸水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
検出:UV360nm
サンプル前処理:分析サンプル25μlに内標として、1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μlおよび2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し、37℃の温度で1時間保温する。上記の反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の上清10μlをHPLC分析した。また、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬社製)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:30(℃)
培養反応槽通気量:1.5(L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、コリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を、試験管で5mlのカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン発酵培地添加で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で、振幅30cmで、180rpmの条件下で培養を行った(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の1.5Lのカダベリン発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。
前培養完了後直ちに、カダベリン発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるよう濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるカダベリンの製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたカダベリン濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表18に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したカダベリンの連続発酵による製造が可能であった。
(実施例15) 連続発酵によるカダベリンの製造(その2)
カダベリンを生産させる微生物として、特開2004−222569号公報に記載のコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株用い、培地として表17に示す組成のカダベリン生産培地を用い、図2に示す連続培養装置によりカダベリンの製造を行った。培地は、高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。
カダベリンは以下に示すHPLC法によって評価した。
使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
移動相:0.1%(w/w)リン酸水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
検出:UV360nm
サンプル前処理:分析サンプル25μlに内標として、1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μlおよび2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し、37℃の温度で1時間保温する。上記の反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の上清10μlをHPLC分析した。また、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬社製)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:30(℃)
培養反応槽通気量:1.5(L/min)
培養液循環配管通気量:0.5L/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、コリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を、試験管で5mlのカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン発酵培地添加で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で、振幅30cmで、180rpmの条件下で培養を行った(前々培養)。前々培養液を、図2に示す連続培養装置の1.5Lのカダベリン発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。
前培養完了後直ちに、カダベリン発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるよう濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるカダベリンの製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたカダベリン濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表18に示す。
(比較例11) 連続発酵によるカダベリンの製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例14と同様に行った。
結果を表18に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下した。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。
(実施例16) 乳酸菌を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その1)
L−乳酸を生産する微生物として、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)JCM7638株を用い、培地として表19に示す組成の乳酸菌乳酸発酵培地を用い、図1に示す連続培養装置によりL−乳酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物であるL−乳酸の濃度は、参考例8に示したHPLC法により評価した。また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:37(℃)
培養反応槽N2通気量:50(mL/min)
O2通気量:5(mL/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:8N アンモニア水溶液によりpH6.5に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、ラクトコッカス ラクティス JCM7638株を、試験管で表20に示す5mlの窒素ガスでパージした乳酸発酵培地で24時間、37℃の温度で静置培養した(前々々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、48時間、37℃の温度で静置培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の窒素ガスでパージした1.5Lの乳酸発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるL−乳酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表20に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したL−乳酸の連続発酵による製造が可能であった。
(実施例17) 乳酸菌を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その2)
L−乳酸を生産する微生物として、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)JCM7638株を用い、培地として表19に示す組成の乳酸菌乳酸発酵培地を用い、図2に示す連続培養装置によりL−乳酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物であるL−乳酸の濃度は、参考例8に示したHPLC法により評価した。また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:37(℃)
培養反応槽N2通気量:50(mL/min)
O2通気量:5(mL/min)
培養液循環配管通気量:1.7(mL/min)
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:8N アンモニア水溶液によりpH6.5に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、ラクトコッカス ラクティス JCM7638株を、試験管で表20に示す5mlの窒素ガスでパージした乳酸発酵培地で24時間、37℃の温度で静置培養した(前々々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、48時間、37℃の温度で静置培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の窒素ガスでパージした1.5Lの乳酸発酵培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるL−乳酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産されたL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表20に示す。
(比較例12) 乳酸菌を用いた連続発酵によるL−乳酸の製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例16と同様に行った。
結果を表20に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下した。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。
(実施例18) 乳酸菌を用いた連続発酵によるD−乳酸の製造(その1)
D−乳酸を生産する微生物として、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス ATCC23492株を用い、培地として表21に示す組成のD−乳酸生産培地を用い、図1に示す連続培養装置によりD−乳酸の製造を行った。培地は、高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物であるD−乳酸の濃度は参考例8に示したHPLC法により測定した。また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬社製)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:37(℃)
培養反応槽N2通気量:0.2(L/min)
O2通気量:2(mL/min)
膜分離槽通気量:なし
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:8N NaOHによりpH6.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス ATCC23492株を試験管中で10mlの乳酸発酵培地を用い、嫌気条件下で一晩培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なD−乳酸生産培地50mlに植菌し、嫌気条件下、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続培養装置の1.5LのD−乳酸生産培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。
前培養完了後直ちに、D−乳酸生産培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるD−乳酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産された乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表22に示す。
図1に示す連続培養装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、安定したD−乳酸の連続発酵による製造が可能であった。
(実施例19) 乳酸菌を用いた連続発酵によるD−乳酸の製造(その2)
D−乳酸を生産する微生物として、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス ATCC23492株を用い、培地として表21に示す組成のD−乳酸生産培地を用い、図2に示す連続培養装置によりD−乳酸の製造を行った。培地は、高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜としては参考例1で作製した多孔性膜を用い、図3に示す分離膜エレメントを構成した。生産物であるD−乳酸の濃度は参考例8に示したHPLC法により測定した。また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬社製)を用いた。
培養の条件を以下に示す。
培養反応槽容量:1.5(L)
膜分離槽容量:0.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜(参考例1)
膜分離エレメント有効濾過面積:200平方cm
温度調整:37(℃)
培養反応槽N2通気量:0.2(L/min)
O2通気量:2(mL/min)
培養液循環配管通気量:0.7(mL/min)
膜分離槽通気量:なし
培養反応槽攪拌速度:400(rpm)
pH調整:8N NaOHによりpH6.0に調整
発酵培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
循環液量:0.25〜1(L/min)の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:循環液量0.25L/min
200時間〜400時間:循環液量0.5L/min
400時間〜600時間:循環液量1L/min)
濾過量:50mL〜300ml/hr.の範囲で可変制御
(連続発酵開始後〜200時間:濾過量400mL/h
200時間〜400時間:濾過量600mL/h
400時間〜600時間:濾過量800mL/h)。
具体的には、まず、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス ATCC23492株を試験管中で10mlの乳酸発酵培地を用い、嫌気条件下で一晩培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なD−乳酸生産培地50mlに植菌し、嫌気条件下、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示す連続培養装置の1.5LのD−乳酸生産培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、また、培養液循環配管部分に培養反応槽と同じ通気量(体積比)になるよう通気を行い、培養液循環ポンプ11を稼働(循環液量:0.25L/min)させ、24時間培養を行った(前培養)。
前培養完了後直ちに、D−乳酸生産培地の連続供給を行い、連続培養装置の発酵液量を2Lとなるように濾液流量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるD−乳酸の製造を行った。また、循環液量は200時間ごとに0.25、0.5、1.0L/minで可変制御した。濾液流量の制御は、200時間ごとに400,600,800mL/hで可変制御した。適宜、濾液中の生産された乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した結果を表22に示す。
(比較例13) 乳酸菌を用いた連続発酵によるD−乳酸の製造(その3)
培養液循環配管の環流口が培養反応槽において培養液に浸漬しない位置に開口している図5の連続培養装置を用い、それ以外は実施例18と同様に行った。
結果を表22に示すが、循環量を変化させることで連続培養成績の一つである対糖収率が変化し低下した。このことから、図5の連続培養装置を用いて循環量を変化させる連続培養を行うことには培養成績が安定しないといった問題があることが明らかになった。
図1および図2に示す発酵装置を用いた本発明の化学品の製造方法により、循環量が変化しても連続培養成績が変化せず安定に長期間運転可能であった。