本発明は、培養装置と培養装置外部の分離膜を有する膜分離装置を接続し、両装置間に培養液を循環させながら、微生物もしくは培養細胞の培養液を分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収し、かつ、培養原料を前記の培養液に追加する連続培養による化学品の製造方法であって、循環液量あたりの濾過液量の回収率を10.0%以下になるように循環液量および濾過フラックスを制御し運転することを特徴とする連続培養による化学品の製造方法である。
本発明において培養装置とは、培養液の撹拌、温度、pH、溶存酸素濃度、液量などを設定することができ、培養にとって好適な条件に維持することができる装置である。
また本発明において膜分離装置とは、分離膜を濾過に適するように設置した装置のことである。例えば、膜分離装置下部より気体を供給することで膜面を洗浄することができるものが好ましい。それら供給した気体を抜き取るためのラインがあることが好ましい。また、膜を逆洗浄できることが好ましい。また膜分離装置は複数接続する場合、直列に接続してもよいし、並列に接続してもよい。
培養装置と培養装置外部の分離膜を有する膜分離装置の間を、培養液を循環させる手段としては例えばポンプによる手段が挙げられる。ポンプには例えば渦巻きポンプ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプなど様々な種類があるが、本発明においてポンプの種類としては、ポンプの出力設定により循環液量が算出できるものが好ましい。好ましくはダイヤフラムポンプが挙げられる。
本発明においての循環液量あたりの濾過液量の回収率(以下、回収率と称することがある)について説明する。循環液量あたりの濾過液量の回収率とは単位時間あたりに循環された培養液量(循環液量)に対して、一日あたりに濾過された培養液量(濾過液量)の割合であり、下記の(式1)により算出する。ただし、膜分離装置が複数接続されている場合は、それぞれの膜分離装置での濾過液量および循環液量から算出する。また濾過液量は、膜分離装置に使用している分離膜面積と、運転制御可能である濾過フラックスから(式1)は下記の(式2)に変換できる。
循環液量あたりの濾過液量の回収率(%)
=濾過液量(m3/day)/循環液量(m3/day)×100・・・(式1)
=分離膜面積(m2)×濾過フラックス(m/day)/循環液量(m3/day)×100・・・(式2)。
本発明において、循環液量あたりの濾過液量の回収率を10.0%以下になるように制御し運転するとは、具体的には循環ラインおよび濾過ラインに流量計を設けることでその時々の循環液量および濾過液量をモニタリングすることで、(式1)から回収率を算出し回収率を10.0%以下になるように循環ポンプもしくは濾過ポンプの出力を制御しながら運転することである。例えば、循環液量を一定に保ちながら、濾過フラックスのみを制御する運転も可能である。その逆の濾過フラックスを一定に保ちながら、循環液量を制御する運転も可能である。また、回収率は10.0%以下、好ましくは5.0%以下になるように制御することが重要であり、そうすることで分離膜の詰まりがなくなり、長期連続培養を安定的に維持できることが可能となる。回収率の下限としては液を循環するためにはエネルギーが必要であるため可能な限り回収率を高めたいが、少なくとも0.01%以上が好ましい。
本発明においては、循環液量、濾過フラックスおよび濾過液量から選択される1つ以上を制御することで回収率を制御調整することが好ましい。循環液量を制御するためには、前記のような循環手段の出力を調節することが好ましい。また、濾過フラックスもしくは濾過液量を制御する手段としては例えばポンプ、水頭差圧、液体や気体等による吸引、あるいは膜分離装置内を加圧するなどの手段が挙げられ、好ましくはポンプを使用する。ポンプには例えば渦巻きポンプ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプなど様々な種類があるが、本発明においてポンプの種類としては、ポンプの出力設定により濾過液量が算出つまり濾過フラックスを制御できるものが好ましく、具体例としてダイヤフラムポンプが挙げられる。
次に、本発明においての連続培養の希釈率について説明する。連続培養の希釈率とは下記の(式3)により算出することができる。
希釈率=濾過液量の体積(m3/day)/培養液体積(m3)・・・(式3)。
ここでの培養液体積とは、培養装置および膜分離装置に存在する液体積を意味している。例えば培養装置内に3Lの培養液があり、膜分離装置に1Lの培養液がある場合、培養液体積は4Lである。つまり連続培養の希釈率とは培養液の何倍が一日にろ過されるかを表す指標である。本発明においては、連続培養の希釈率が1.8から9.0(1/day)であることが好ましい。連続培養の希釈率が1.8未満であると連続培養での生産速度を高める効果が十分に得られない場合があり、連続培養の希釈率が9.0以上であると微生物もしくは培養細胞の培養原料の消費が間に合わず、未利用の培養原料が濾過されてしまう場合がある。
次に、本発明においての濾過フラックスについて説明する。濾過フラックスとは下記の(式4)により算出することができる。
濾過フラックス=濾過液量の体積(m3/day)/分離膜面積(m2)・・・(式4)。
装置に使用している膜面積は任意に設定できるため明らかである。濾過液量の体積(m3/day)は1dayかけて濾過液量の体積を測定することが好ましいが、1時間程度の濾過液量の体積を測定することで1dayの濾過液量の体積を概算することもできる。本発明において、濾過フラックスが0.500m/day以下が好ましく、0.050m/day以上0.400m/dayがより好ましい。濾過フラックスが0.500m/dayを超えると回収率での制御によって連続培養を安定に制御することが難しくなる場合がある。また、濾過フラックスが0.050m/day未満であると分離膜面積が大きくなりすぎ経済的な観点から工業化が難しくなる。
次に、本発明においての培養液体積あたりの分離膜面積について説明する。培養液体積あたりの分離膜面積とは下記の(式5)により算出することができる。
培養液体積あたりの分離膜面積(1/m)=分離膜面積(m2)/培養液体積(m3)・・・(式5)。
ここでいう培養液体積とは、例えば、培養装置内に3Lの培養液があり、膜分離装置に1Lの培養液がある場合、培養液体積は4Lである。その装置に分離膜面積として200cm2を設置した場合は5m2/m3となる。本発明においては培養液体積あたりの前記分離膜の面積は1.5m2/m3以上90m2/m3以下が好ましい。培養液体積あたりの前記分離膜の面積が1.5m2/m3未満であると膜分離装置の体積が大きくなりすぎ、培養の制御が困難になる場合がある。培養液体積あたりの前記分離膜の面積が90m2/m3を超えると膜分離装置内に菌体が堆積しやすくなり、培養液の循環が困難になる場合がある。
本発明において用いられる分離膜について説明する。分離膜としては微生物もしくは培養細胞の培養液から微生物もしくは培養細胞のみを濾別することができ、かつ分離膜自体が滅菌操作(例えば120℃で30分)に耐えうるものであればどのような分離膜でも良い。そのような分離膜として、例えば、高分子膜としては、均質膜や多孔性膜、非対称膜、荷電膜、照射-エッチング膜、モザイク荷電膜、バイポーラ(両極)膜、液膜、イオン交換膜およびそれらを組み合わせた複合膜などが挙げられる。無機膜としては、セラミック膜、ダイナミック膜、ゼオライト膜、炭素膜、金属膜などが挙げられる。好ましくは、セラミック膜および多孔性膜であり、より好ましくは多孔性膜である。
次に、本発明において分離膜として好ましく用いられる多孔性膜について説明する。
本発明で分離膜として用いられる多孔性膜の構成について説明する。本発明における多孔性膜は、好ましくは、被処理水の水質や用途に応じた分離性能と透水性能を有するものである。
多孔性膜は、阻止性能および透水性能や分離性能、例えば、耐汚れ性の点から、多孔質樹脂層を含む多孔性膜であることが好ましい。
多孔質樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられる。有機高分子膜は、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。ここで主成分とは、その成分が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有することをいう。有機高分子膜の材質は、溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂がより好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が最も好ましく用いられる。
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましいが、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
また、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンまたは塩素化ポリプロピレンが挙げられるが、塩素化ポリエチレンが好ましく用いられる。
本発明で使用される多孔性膜は、平均細孔径が、0.01μm以上1μm未満であることが好ましい。多孔性膜の平均細孔径が、0.01μm以上1μm未満であると、発酵に使用される微生物による目詰まりが起こりにくく、かつ、濾過性能が長期間安定に継続する性能を有する。また、多孔性膜の平均細孔径が、0.01μm以上1μm未満であると、微生物あるいは培養細胞がリークすることのない高い排除率と、高い透水性を両立させることができ、透水性を長時間保持することが、より高い精度と再現性を持って実施することができる。
微生物もしくは培養細胞の大きさに近いと、これらが直接孔を塞いでしまう場合があるので、多孔性膜の平均細孔径は、1μm未満であることが好ましいが、多孔性膜の平均細孔径は、微生物もしくは培養細胞の漏出、すなわち排除率が低下する不具合の発生を防止するため、微生物もしくは培養細胞の大きさと比較して大きすぎないことが好ましく、微生物もしくは培養細胞のうち、細胞の小さい酵母や細菌などを用いる場合には、平均細孔径として0.4μm以下がより好ましく、0.2μm以下であれば、さらに好適に実施することができる。
また、微生物もしくは培養細胞が目的とする化学品以外の物質、例えば、タンパク質、多糖類など凝集しやすい物質を生産する場合があり、更に、培養液中の微生物もしくは培養細胞の一部が死滅することで細胞の破砕物が生成する場合があり、これら物質によって多孔性膜の閉塞することから回避するために、平均細孔径が0.1μm以下であることがさらに好適である。
以上のことから、本発明の多孔性膜の平均細孔径は、多孔性膜の平均細孔径は、0.4μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が、最も好ましい。また、平均細孔径が小さすぎると多孔性膜の透水性能が低下し、膜が汚れていなくても効率的な運転ができなくなるため、本発明における多孔性膜の平均細孔径は、0.01μm以上であることが好ましいが、より好ましくは、0.02μm以上であり、0.04μm以上であることが更に好適である。
ここで、平均細孔径は、倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡観察における、9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔すべての直径を測定し、平均することにより求めることができる。あるいは、平均細孔径は、膜表面を走査型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍で写真撮影し、10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることもできる。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求められる。
本発明に用いる多孔性膜の細孔径の標準偏差σは小さければ小さい方が好ましいが、0.1μm以下であることが好ましい。細孔径の標準偏差は細孔径の標準偏差σは、上述の9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔数をNとして、測定した各々の直径をXkとし、細孔直径の平均をX(ave)とした下記の(式6)により算出される。
本発明で用いられる多孔性膜においては、培養液の透過性が重要な性能の一つである。多孔性膜の透過性の指標として、使用前の多孔性膜の純水透過係数を用いることができる。本発明において、多孔性膜の純水透過係数は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出したとき、2×10−9m3/m2/s/pa以上であることが好ましく、純水透過係数が、2×10−9m3/m2/s/pa以上6×10−7m3/m2/s/pa以下であれば、実用的に十分な透過水量が得られる。
また、本発明で用いられる多孔性膜においては、膜表面粗さは、分離膜表面に付着した微生物もしくは培養細胞が、撹拌や循環ポンプによる液流による膜面洗浄効果で剥離しやすくするための因子の一つである。ここでいう膜表面粗さとは、表面に対して垂直方向の高さの平均値である。本発明で用いられる多孔性膜の膜表面粗さは小さければ小さいほど好ましいが、0.1μm以下であることが好ましい。表面粗さが0.1μm以下であると、膜に付着した微生物もしくは培養細胞が剥がれやすい。また、多孔性膜の膜表面粗さを、0.1μm以下とすることにより、微生物もしくは培養細胞の濾過において、膜表面で発生する剪断力を低下させることができ、微生物もしくは培養細胞の破壊が抑制され、多孔性膜の目詰まりも抑制されることにより、長期間安定な濾過が、より容易に、可能になる。さらに、多孔性膜の膜表面粗さを、0.1μm以下とすることにより、より低い膜間差圧で連続培養が実施可能であり、膜が目詰まりした場合でも高い膜間差圧で運転した場合に比べて、洗浄回復性が良好である。
ここで、膜表面粗さは、下記の原子間力顕微鏡装置(AFM)を使用して、下記の条件で測定することができる。
装置 原子間力顕微鏡装置(Digital Instruments(株)製Nanoscope IIIa)
条件
探針 SiNカンチレバー(Digital Instruments(株)製)
走査モード コンタクトモード(気中測定)
水中タッピングモード(水中測定)
走査範囲 10μm、25μm 四方(気中測定)
5μm、10μm 四方(水中測定)
走査解像度 512×512
試料調製 測定に際し膜サンプルは、常温でエタノールに15分浸漬後、RO水中に24時間浸漬し洗浄した後、風乾し用いた。
膜表面粗さdroughは、上記、原子間力顕微鏡装置(AFM)により各ポイントのZ軸方向の高さから、下記の(式7)により算出することができる。
なお、多孔性膜の平均細孔径が0.01μm以上1μm未満、多孔性膜の純水透過係数が、2×10−9m3/m2/s/pa以上、かつ多孔性膜の膜表面粗さが0.1μm以下の膜を使用することにより、膜面洗浄に必要な動力を過度に必要としない運転が、より容易に可能であることが実施例において明らかになっている。
本発明で用いられる分離膜の形状については特に限定はなく、具体的には平膜や中空糸膜が挙げられる。
本発明で用いられる多孔性膜の形状が平膜の場合、その平均厚みは好ましくは、20μm以上5000μm以下であり、より好ましくは50μm以上2000μm以下である。
本発明で用いられる多孔性膜の形状が中空糸膜の場合、中空糸の内径は、好ましくは、200μm以上5000μm以下であり、膜厚は、好ましくは、20μm以上2000μm以下である。また、有機繊維または無機繊維を筒状にした織物や編物を中空糸の内部に含んでいても良い。
本発明で用いられる多孔性膜の作成法の概要を例示して説明する。
まず、多孔性膜のうち、平膜の作成法の概要について説明する。本発明で使用される多孔性膜の平膜としては、多孔質基材の表面に、分離機能層として作用とする多孔質樹脂層を有しているもの好ましく採用される。多孔質基材は、多孔質樹脂層を支持して多孔性膜全体に強度を与える。また、多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を有している場合、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していても、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していなくてもどちらでも良いが、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透させた膜が好ましく採用され、多孔質基材の表面に、多孔性樹脂層を構成する樹脂と溶媒とを含む原液の被膜を形成するとともに、その原液を多孔質基材に含浸させ、その後、被膜を有する多孔質基材の被膜側表面のみを、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させると共に多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を形成することで得られる。
多孔質基材の材質は、有機材料および/または無機材料等からなり、有機繊維が望ましく用いられる。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエチレン繊維などの有機繊維を用いてなる織布や不織布であり、より好ましくは、密度の制御が比較的容易であり製造も容易で安価な不織布が用いられる。多孔質基材の平均厚みは、好ましくは、50μm以上3000μm以下である。
原液は、樹脂を溶媒に溶解させて調整する。原液の温度は、製膜性の観点から、通常、5〜120℃の範囲内で選定することが好ましい。溶媒は、樹脂を溶解するものであり、樹脂に作用してそれらが多孔質樹脂層を形成するのを促すものである。溶媒としては、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテール、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート、アセトンおよびメチルエチルケトンなどを用いることができる。なかでも、樹脂の溶解性の高いN−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)を好ましく用いることができる。これらを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリセリンなどの溶媒以外の成分を溶媒に添加しても良い。溶媒に非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、樹脂を溶解しない液体である。非溶媒は、樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノール、およびエタノールなどのアルコール類を用いることができる。なかでも、非溶媒として、価格の点から水やメタノールが好ましい。溶媒以外の成分および非溶媒は、混合物であってもよい。
原液には、開孔剤を添加することもできる。開孔剤は、凝固浴に浸漬された際に抽出されて、樹脂層を多孔質にする作用を持つものである。開孔剤を添加することで、平均細孔径の大きさを制御することができる。開孔剤は、凝固浴への溶解性の高いものであることが好ましい。開孔剤としては、例えば、塩化カルシウムや炭酸カルシウムなどの無機塩を用いることができる。また、開孔剤として、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールおよびポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物や、グリセリンを用いることができる。
次に、多孔性膜のうち、中空糸膜の作成法の概要について説明する。中空糸膜は、樹脂と溶媒からなる原液を二重管式口金の外側の管から吐出するとともに、中空部形成用流体を二重管式口金の内側の管から吐出して、冷却浴中で冷却固化して作製することができる。
原液は、上述の平膜の作成法で述べた樹脂を20重量%以上60重量%以下の濃度で、上述の平膜の生成法で述べた溶媒に溶解させることで調整できる。また、中空部形成用流体には、通常気体もしくは液体を用いることができる。また、得られた中空糸膜の外表面に、新たな多孔性樹脂層をコーティング(積層)することもできる。積層は中空糸膜の性質、例えば、親水・疎水性、細孔径等を所望の性質に変化させるために行うことができる。積層される新たな多孔性樹脂層は、樹脂を溶媒に溶解させた原液を、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させることによって作製できる。積層される樹脂の材質は、例えば、上述多孔性樹脂層の材質と同様のものが好ましく用いることができる。また、積層の方法は特に限定されず、原液に中空糸膜を浸漬してもよいし、中空糸膜の表面に原液を塗布してもよく、積層後、付着した原液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしすることで積層量を調整することもできる。
本発明で用いられる多孔性膜は、樹脂などの部材を用いて中空糸膜の中空部を接着・封止し、平膜を支持体に設置することによって分離膜エレメントとすることができる。なお、本発明においては体積あたりの膜面積の設置が有利であるという観点から中空糸膜を用いることが好ましい。
本発明で用いられる膜分離装置は、上記のような分離膜エレメントを複数設置することが可能である装置であり、培養液の循環液入り口と循環液出口があることが好ましい。
本発明の化学品の製造方法においては、微生物または培養細胞を培養することにより化学品を製造する。本発明で使用される微生物や培養細胞としては、例えば、工業的によく使用される酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌、動物細胞および昆虫細胞などが挙げられる。使用する微生物や細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。これらの微生物や培養細胞のうち、目的とする化学品の生産能力が高いものを選択して用いることが好ましい。なお、本発明においては微生物の培養を「発酵」または「発酵培養」と称することがある。
培養原料としては、培養する微生物または培養細胞の生育を促し、目的とする化学品を良好に生産させうるものであればよい。培養原料の具体例としては、炭素源、窒素源、無機塩類、及び必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が良い。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなどが使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。
本発明に使用する微生物または培養細胞が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加する。また、消泡剤を必要に応じて使用する。本発明において、培養液とは、原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液のことを言う。追加する原料の組成は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、培養開始時の原料組成から適宜変更しても良い。
本発明では、培養液中の糖類濃度は5g/l以下に保持されるのが好ましい。培養液中の糖類濃度は5g/l以下に保持することが好ましい理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。
微生物または培養細胞の培養は、通常、pH4−8、温度20−40℃の範囲で行われる。培養液のpHは、無機あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウム、アンモニアガスなどによって、通常、pH4−8範囲内のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養を加圧する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
本発明の化学品の製造方法では、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って、微生物濃度を高くした後に、連続培養(引き抜き)を開始しても良い。本発明の化学品の製造方法では、微生物濃度を高くした後に、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行っても良い。本発明の化学品の製造方法では、適当な時期から培養原料の供給及び培養物の引き抜きを行うことが可能である。培養原料供給と培養液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、培養原料の供給と培養液引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
培養原料には微生物または培養細胞の増殖に必要な栄養素を添加し、微生物または培養細胞の増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが、効率よい生産性を得るのに好ましい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、一例として、乾燥重量として、5g/L以上に維持することで良好な生産効率が得られる。
本発明の化学品の製造方法では、必要に応じて培養装置内から微生物または培養細胞を引き抜くことができる。例えば、培養装置内の微生物または培養細胞濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、引き抜くことで、閉塞から回避することができる。また、培養装置内の微生物または培養細胞濃度によって化学品の生産性能が変化することがあり、生産性能を指標として微生物または培養細胞を引き抜くことで生産性能を維持させることも可能である。
本発明の化学品の製造方法では、微生物または培養細胞を増殖しつつ化学品を生成する連続培養法であれば、培養装置の数は問わない。本発明の化学品の製造方法では、連続培養操作は、通常、単一の培養装置で行うのが、管理上好ましいが、培養装置の容量が小さい等の理由から、複数の培養装置を用いることも可能である。この場合、複数の培養装置を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても発酵生産物の高生産性は得られる。
本発明の化学品の製造方法で製造される化学品としては、前記微生物または培養細胞が培養液中に生産する物質であれば制限はなく、培養する微生物または培養細胞によって適宜選択されうる。本発明の化学品の製造方法で製造される化学品の具体例としては、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなど、有機酸としては、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、核酸であれば、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、またカダベリンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、本発明は、酵素、抗生物質、組換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。
次に、本発明の化学品の製造方法に用いることができる微生物または培養細胞について、具体的な化学品を例示しながら説明する。
本発明の化学品の製造方法において、乳酸の生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞としては特に制限はないが、好ましくは乳酸菌を用いることができる。ここでいう乳酸菌とは、消費したグルコースに対して対糖収率として50%以上の乳酸を産生する原核微生物として定義することができる。好ましい乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、テトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属、カルノバクテリウム(Carnobacterium)属、バゴコッカス(Vagococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、アトポビウム(Atopobium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ラクトバシラス(Lactococcus)属またはバシラス(Bacillus)属に属する乳酸菌が挙げられる。それらの中でも、乳酸の対糖収率が高い乳酸菌を適宜選択して乳酸の生産に好ましく用いることができる。
本発明の化学品の製造方法においては、更に、乳酸の内でも、L―乳酸の対糖収率の高い乳酸菌を選択して乳酸の生産に好ましく用いることができる。L−乳酸とは、乳酸の光学異性体の一種であり、その鏡像体であるD−乳酸と明確に区別することができる。L−乳酸の対糖収率が高い乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス・ヤマナシエンシス(Lactobacillus yamanashiensis)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・アジリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバシラス・アビアリエス(Lactobacillus aviaries)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・デルブレッキ(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバシラス・サリバリス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・シャーピイ(Lactobacillus sharpeae)、ペディオコッカス・デクストリニクス(Pediococcus dextrinicus)またはラクトバシラス・ラクティス(Lactobacillus lactis)などが挙げられ、これらを選択して、L−乳酸の生産に用いることが可能である。
本発明の化学品の製造方法でD−乳酸を製造する場合、D−乳酸生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞としてはD−乳酸を生産することが可能な微生物であれば制限はない。D−乳酸生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞は、例えば、野生型株では、D−乳酸を合成する能力を有するラクトバシラス・デルブレッキ(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、スポロラクトバチルス・ラエボラクティカス(Sporolactobacillus laevolacticus)またはスポロラクトバチルス・イヌリナス(Sporolactobacillus inulinus)などが挙げられ、これらを選択して、D−乳酸の生産に用いることが可能である。
また、本発明の化学品の製造方法でL−乳酸またはD−乳酸を製造する場合、人為的に乳酸生産能力を付与、あるいは増強した微生物または培養細胞を用いることができる。人為的に乳酸生産能力を付与、あるいは増強する方法は、従来知られている薬剤変異による方法であってもよいが、例えば、L−乳酸脱水素酵素遺伝子(以下、L−LDHと言うことがある)またはD−乳酸脱水素酵素遺伝子(以下、D−LDHと言うことがある)を導入して、微生物または培養細胞にL−乳酸またはD−乳酸生産能力を付与、あるいは増強することが好ましく、より好ましくは、微生物にL−LDHまたはD−LDHを組み込むことによりL−乳酸またはD−乳酸生産能力が増強した組換え微生物が挙げられる。
前記組換え微生物の宿主としては、原核細胞である大腸菌、乳酸菌、および真核細胞である酵母などが好ましく、特に好ましくは酵母である。酵母のうち好ましくはサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する酵母であり、更に好ましくはサッカロマイセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)である。
本発明で使用するL−LDHまたはD−LDHとしては、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とピルビン酸を、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とL−乳酸またはD−LDHに変換する活性を持つタンパク質であるL−乳酸脱水素酵素またはD−乳酸脱水素酵素をコードしていれば限定されない。このうちL−LDHとしてはホモ・サピエンス(Homo sapiens)由来またはカエル由来のL−LDHを好ましく用いることができる。カエル由来の中でもコモリガエル科(Pipidae)に属するカエル由来のL−LDHを用いることが好ましく、コモリガエル科に属するカエルの中でも、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)由来のL−LDHを好ましく用いることができる。また、D−LDHとしては、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、およびペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)またはバシラス・ラエボラクティカス(Bacillus laevolacticus)由来の遺伝子であることが好ましく、より好ましくはバシラス・ラエボラクティカス由来の遺伝子である。
本発明に用いられるL−LDHまたはD−LDHには、遺伝的多型性や、変異誘発などによる変異型の遺伝子も含まれる。遺伝的多型性とは、遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているものである。また、変異誘発とは、人工的に遺伝子に変異を導入することをいう。変異誘発は、例えば、部位特異的変異導入用キット(Mutan-K(タカラバイオ社製))を用いる方法や、ランダム変異導入用キット(BD Diversify PCR Random Mutagenesis(CLONTECH社製))を用いる方法などがある。また、本発明で使用するL−LDHまたはD−LDHは、L−乳酸脱水素酵素またはD−乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードしているならば、塩基配列の一部に欠失または挿入が存在していても構わない。
本発明の化学品の製造方法でL―乳酸を製造する場合、製造された濾過・分離発酵液に含まれるL−乳酸の分離・精製は、従来知られている濃縮、蒸留および晶析などの方法を組み合わせて行うことができる。例えば、濾過・分離発酵液のpHを1以下にしてからジエチルエーテルや酢酸エチル等で抽出する方法、イオン交換樹脂に吸着洗浄した後に溶出する方法、酸触媒の存在下でアルコールと反応させてエステルとし蒸留する方法、およびカルシウム塩やリチウム塩として晶析する方法などが挙げられる。好ましくは、濾過・分離発酵液の水分を蒸発させた濃縮L−乳酸溶液を蒸留操作にかけることができる。ここで、蒸留する際には、蒸留原液の水分濃度が一定になるように水分を供給しながら蒸留することが好ましい。L−乳酸水溶液の留出後は、水分を加熱蒸発することにより濃縮し、目的とする濃度の精製L−乳酸を得ることができる。留出液としてエタノールや酢酸等の低沸点成分を含むL−乳酸水溶液を得た場合は、低沸点成分をL−乳酸濃縮過程で除去することが好ましい態様である。蒸留操作後、留出液について必要に応じて、イオン交換樹脂、活性炭およびクロマト分離等による不純物除去を行い、さらに高純度のL−乳酸を得ることもできる。
本発明の化学品の製造方法でD−乳酸を製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるD−乳酸の分離・精製は、従来知られている濃縮、蒸留および晶析などの方法を組み合わせて行うことができる。例えば、濾過・分離発酵液のpHを1以下にしてからジエチルエーテルや酢酸エチル等で抽出する方法、イオン交換樹脂に吸着洗浄した後に溶出する方法、酸触媒の存在下でアルコールと反応させてエステルとし蒸留する方法、およびカルシウム塩やリチウム塩として晶析する方法などが挙げられる。本発明の化学品の製造方法でD−乳酸を製造する場合、好ましくは、濾過・分離発酵液の水分を蒸発させた濃縮D−乳酸溶液を蒸留操作にかけることができる。ここで、蒸留する際には、蒸留原液の水分濃度が一定になるように水分を供給しながら蒸留することが好ましい。D−乳酸水溶液の留出後は、水分を加熱蒸発することにより濃縮し、目的とする濃度の精製D−乳酸を得ることができる。留出液として低沸点成分(エタノール、酢酸等)を含むD−乳酸水溶液を得た場合は、低沸点成分をD−乳酸濃縮過程で除去することが好ましい態様である。蒸留操作後、留出液について必要に応じて、イオン交換樹脂、活性炭およびクロマト分離等による不純物除去を行い、さらに高純度のD−乳酸を得ることもできる。
本発明の化学品の製造方法でエタノールを製造する場合、エタノールの生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞としては特に制限はないが、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クルベロマイセス(Kluyveromyces)属またはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属に属する酵母を用いることができる。このうちサッカロミセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)、クルベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)を好適に用いることができる。また、ラクトバチルス(Lactobacillus)属またはザイモモナス(Zymomonas)属に属する細菌も好ましく用いることができる。このうち、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を好適に用いることができる。
本発明におけるエタノールの生産に用いることができる微生物あるいは培養細胞は人為的にエタノール生産能力を高めた微生物あるいは培養細胞であってもよく、具体的には、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。一部性質が改変されたものの一例としては、リゾパス属に属するカビのグルコアミラーゼ遺伝子を組み込み、生でんぷんの資化能力を獲得した酵母を挙げることができる(微生物、3:555−564(1987))。また、本発明の製造方法により製造された濾過・分離発酵液に含まれるエタノールの分離・精製は、例えば、蒸留法による精製法や、NF、RO膜、あるいはゼオライト製の分離膜を用いた濃縮・精製法を好適に用いることができる。
本発明の化学品の製造方法でピルビン酸を製造する場合、ピルビン酸の生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞としては特に制限はないが、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、エシェリシア(Escherichia)属またはアシネトバクター(Acinetobacter)属に属する細菌を好ましく用いることができる。さらに好ましくは、シュードモナス・フルオレエセンス(Pseudomonas fuluorescens)、シュードモナス・アエロギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)などの細菌を用いることができる。
本発明におけるピルビン酸の生産に用いることができる微生物あるいは培養細胞は人為的にピルビン酸生産能力を高めた微生物あるいは培養細胞であってもよく、これら微生物あるいは培養細胞を突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変したものを用いてもよい。例えば、酸化的リン酸化によるATP生産に直接関与するATPase遺伝子を変異、または欠失させた細菌も好ましく用いられる。またカビ、酵母なども好ましく用いることができる。例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Toluropusis)属、カンジダ(Candida)属またはシゾフィリウム(Schizophyllum)属に属するカビまたは酵母を用いることができる。さらに好ましくは、サッカロミセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・コプシス(Saccharomyces copsis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica)、トルロプシス・グラブラータ(Toluropusis glabrata)、シゾフィリウム・コムネ(Schizophyllum commune)などのカビまたは酵母を用いてピルビン酸を製造することが出来る。
本発明の化学品の製造方法でピルビン酸を製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるピルビン酸の分離・精製は、陰イオン交換カラムを用いた方法により行うことができる。例えば、特開平6−345683に示される弱塩性イオン交換体を用いた精製法を好適に用いることができる。
本発明の化学品の製造方法でコハク酸を製造する場合、コハク酸の生産に用いることができる微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、具体例としては、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属やアクチノバシラス(Actinobacillus)属に属する細菌を好適に利用することができる。具体的には、米国特許第5143833号明細書に記載のアナエロビオスピリラム サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniproducens)やJames B. Mckinlay (ジェームズ B.マッキンリー)らが開示しているアクチノバシラス・サクシノジェネス(Actinobacillus succinogenes)を挙げることができる(Appl. Microbiol. Biotechnol.(アプライド マイクロバイアル アンド マイクロバイオロジー),71,6651−6656 (2005)。また、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属やブレビバクテリウム(Brevibacterium)属などのコリネ型細菌および大腸菌なども利用可能である。コリネ型細菌では、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、およびブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)などが好適である。
本発明におけるコハク酸の生産に用いることができる微生物あるいは培養細胞は人為的にエタノール生産能力を高めた微生物あるいは培養細胞であってもよく、具体例として、遺伝子組換えによって、コハク酸の生産能力が改善された微生物を用いることができ、これによりコハク酸の生産性を向上させることも可能である。このような微生物としては、例えば、特開2005−27533号公報に記載の乳酸脱水素酵素を欠損したブレビバクテリウム・フラバムMJ233AB−41(寄託番号FERM BP−1498)や、非特許文献1に記載のコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、米国特許第5770435号明細書に記載のピルビン酸・ギ酸開裂酵素と乳酸脱水素酵素の欠損株である大腸菌AFP111株などを使用することができる。
本発明の化学品の製造方法でコハク酸を製造する場合、コハク酸の分離・精製は、通常のコハク酸の精製法を適用することができる。例えば、特開2005−333886号公報に示されている水分解電気透析処理と減圧濃縮・晶析を組み合わせた精製法を好適に用いることができる。
本発明の化学品の製造方法でイタコン酸を製造する場合、イタコン酸の生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はなく、具体例としては、カビあるいは酵母を好ましく用いることができる。更に好ましくは、アスペルギルス(Aspergillus)属、あるいはウスティラゴ(Ustilago)属に属するカビ、およびカンジダ(Candida)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属に属する酵母を用いたイタコン酸の生産が挙げられる。中でも、アスペルギルス テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス イタコニクス(Aspergillus itaconicus)、ウスティラゴ メイディス(Ustilago maydis)、ウスティラゴ シノドンティス(Ustilago cynodontis)、およびウスティラゴ ラベンホルスティナ(Ustilago rabenhorstina)のカビ、あるいはカンジダ アンタルクティカ(Candia antarctica)を、イタコン酸の生産に好ましく用いることができる。
本発明の化学品の製造方法でイタコン酸を製造する場合、イタコン酸の分離・精製は、好ましくは、限外濾過や電気透析を用いて行うことができる。例えば、特公昭−50958号公報に示される限外濾過、および塩型カチオン交換樹脂膜を用いた電気透析による精製法を好適に用いることができる。
本発明の化学品の製造方法で1,3−プロパンジオールを製造する場合、1,3−プロパンジオールの生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、具体例としては、野生型株ではグリセロールから1,3−プロパンジオールを合成する能力を有するクレブシエラ(Klebsiella)属、クロスツリジウム(Clostridium)属、ラクトバシルス(Lactobacillus)属に属する微生物が挙げられる。
本発明の化学品の製造方法でグリセロールから1,3−プロパンジオールを製造する場合、微生物は、(a)グリセロールデヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子;(b)グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子をコードする少なくとも1つの遺伝子;及び (c)3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを1,3−プロパンジオールに転換する非−特異的触媒活性をコードする少なくとも1つの遺伝子を含んでいることが好ましい。本発明では、更に好ましくは、微生物は、組換え微生物で1,3−プロパンジオールを生産可能にすることが挙げられる。
組換え微生物で1,3−プロパンジオールを製造する場合、好ましくは、クレブシエラ(Klebsiella)属、クロスツリジウム(Clostridium)属、ラクトバシルス(Lactobacillus)属、シトロバクテル(Cytrobacter)属、エンテロバクテル(Enterobacter)属、アエロバクテル(Aerobacter)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、ピチア(Pichia)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、カンジダ(Candida)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、ムコル(Mucor)属、トルロプシス(Torulopsis)属、メチロバクテル(Methylobacter)属、サルモネラ(Salmonella)属、バシルス(Bacillus)属、アエロバクテル(Aerobacter)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、エッシェリシア(Eschericia)属及びシュードモナス(Pseudomonas)属より成る群から選ばれる組換え微生物で、更に好ましくはエッシェリシア コリである。
本発明の化学品の製造方法でグルコースから1,3−プロパンジオールを製造する場合、組換え微生物は、例えば、(a)グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子;及び(b)グリセロール−3−ホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を含んだ組換え微生物であることが好ましく。 更にグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子がdhaレギュロンから単離されるorfX及びorfZによりコードされる遺伝子を含んだ組換え微生物であることが更に好ましい。更には、組換え微生物は、グリセロールキナーゼ活性および/またはグリセロールデヒドロゲナーゼ活性および/またはトリオースリン酸イソメラーゼ活性を欠失した組換え微生物であることが更に好ましい。
本発明の化学品の製造方法で1,3−プロパンジオールを製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれる1,3−プロパンジオールの分離・精製は、濃縮、晶析させて行うことができる。例えば、特開平−35785号公報に示される減圧濃縮・晶析を用いた精製法を好適に用いることができる。
本発明の化学品の製造方法でカダベリンを製造する場合、カダベリンの生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はないが、具体例としては、微生物が有するリジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターの酵素活性が増強された微生物が好ましい。更に好ましくは、微生物がリジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターをコードする遺伝子を組み込んだ組換え微生物が挙げられる。更に好ましくは、組換え微生物がリジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子が、1または2種類以上組み込まれている微生物が挙げられる。
組換え微生物でカダベリンを製造する場合、大腸菌またはコリネ型細菌を宿主とする組換え微生物が好ましく、より好ましくは、リジン脱炭酸酵素活性を有し、かつホモセリン栄養要求性またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性の少なくともいずれか1つの特徴を有しているコリネ型細菌である。また、コリネ型細菌の中でもコリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属から選ばれることがより好ましく、コリネバクテリア・グルタミカム(Corynebacuterium gulutamicum)が更に好ましい。更に微生物はホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損していることが好ましく、遺伝子挿入変異生成によりホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損していることがより好ましい。
本発明の化学品の製造方法でカダベリンを製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれるカダベリンの分離・精製は、濃縮、蒸留および晶析などの従来知られている方法を組み合わせて行うことができる。例えば、特開2004−222569号公報に示される晶析を用いた精製法を好適に用いることができる。本発明では、連続培養の際に用いられる酸によって様々なポリマー原料にすることができ、好純度が求められるポリマー原料用途では晶析による精製方法が好ましく用いられる。塩酸により培養液のpHを維持すると、その濾過液から晶析工程によりカダベリン二塩酸塩を回収することができる。更に好ましくは、連続培養の際にジカルボン酸により培養液のpHを維持し、そのろ過液から晶析工程によりカダベリン・ジカルボン酸塩を回収することが挙げられる。更に好ましくは、そのジカルボン酸は、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸である。更に好ましくは、該ジカルボン酸として、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸またはテレフタル酸のいずれかを挙げることができる。
本発明の化学品の製造方法で核酸を製造する場合、核酸の生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞であれば特に制限はなく、核酸の生産に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞は、元来核酸の生産能力が高いものを自然界から分離してもよいし、人為的に生産能力を高めた原核微生物であってもよい。具体的には、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
ここで、前記一部性質の改変に関して説明する。核酸を効率よく生産するためには、核酸を生合成して蓄積し、生体外に放出する必要がある。そのため、核酸の生合成系路に関与する酵素の増強、核酸の分解路に関与する酵素活性低下、また核酸を生体外放出に関わるタンパク質、あるいは生体膜組成等の改変など、微生物あるいは培養細胞の性質を変えることによって効率的に核酸を生産する微生物あるいは培養細胞を作出することができる。
具体的には、一部性質の内、イノシンを生産する場合には、アデニロコハク酸シンテターゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。また、イノシン酸デヒドロゲナーゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。また、ヌクレオシダーゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。グアノシンを生産する場合には、アデニロコハク酸シンテターゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。また、グアニル酸レダクターゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。また、ヌクレオシダーゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。また、ヌクレオチダーゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。ウリジンを生産する場合には、ウリジンホスホリラーゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。シチジンを生産する場合には、シジチンデアミナーゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましく、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を持たないか、微弱であることが望ましい。
本発明の化学品の製造方法で核酸を製造する場合、その微生物あるいは培養細胞としてコリネ型細菌または枯草菌を好ましく用いることができる。例えば、イノシンを生産する場合には、コリネ型細菌として、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌が挙げられ、コリネバクテリウム属の中でも、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・グアノファシエンス(Corynebacterium guanofaciens)またはコリネバクテリウム・ペトロフィリウム(Corynebacterium petrophilium)が好ましく用いられる。また、枯草菌として、バチルス(Bacillus)属に属する細菌が挙げられ、中でも、バチスル・サチルス(Bacillus subtilis)、バチスル・ライケニフォルミス(Bacillus liqueniformis)またはバチスル・プミラス(Bacillus pumilus)が好ましく用いられる。また、グアノシンを生産する場合には、コリネ型細菌として、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌が挙げられ、中でも、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)が好ましく、枯草菌としては、例えば、バチルス(Bacillus)属に属する細菌が挙げられ、中でも、バチスル・サチルス(Bacillus subtilis)、バチスル・ライケニフォルミス(Bacillus liqueniformis)またはバチスル・プミラス(Bacillus pumilus)が好ましく用いられる。また、ウリジンまたはシチジンを生産する場合には、枯草菌として中でもバチルス(Bacillus)属に属する細菌が好ましく用いられ、中でも、バチスル・サチルス(Bacillus subtilis)が好ましく用いられる。
本発明の化学品の製造方法で核酸を製造する場合、濾過・分離発酵液に含まれる核酸の分離・精製は、好ましくは、イオン交換樹脂処理法、濃縮冷却晶析法、膜分離法およびその他の方法を組み合わせることにより行なわれる。不純物を除くためには、常法の活性炭吸着法および再結法を用いて精製してもよい。
本発明の化学品の製造方法でアミノ酸を製造する場合、アミノ酸の製造に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞としてはアミノ酸を生産することが可能な微生物であれば制限はない。アミノ酸の製造に用いることが出来る微生物あるいは培養細胞は、元来アミノ酸の生産能力が高いものを自然界から分離してもよいし、人為的に生産能力を高めた微生物あるいは培養細胞であってもよい。
本発明の化学品の製造方法でアミノ酸を製造する場合、アミノ酸は、好ましくは、L−スレオニン、L−リジン、L−グルタミン酸、L−トリプトファン、L−イソロイシン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−アラニン、L−ヒスチジン、L−プロリン、L―フェニルアラニン、L−アスパラギン酸、L−チロシン、メチオニン、セリン、バリン、ロイシンが挙げられる。
次に、具体的なアミノ酸を例示しながら、アミノ酸の生産に用いることができる微生物あるいは培養細胞について説明する。
本発明の化学品の製造方法でL−スレオニンを製造する場合、L−スレオニンの製造に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、エシェリシア(Escherichia)属、プロビデンシア(Providencia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属またはセラチア(Serratia)属に属する細菌を用いることができる。そのうちで、特に好ましい細菌は、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、プロビデンシア・レトゲリ(Providencia rettgeri)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)またはセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)である。
本発明の化学品の製造方法でL−リジンまたはL−グルタミン酸を製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)またはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−トリプトファンを製造する場合、L−トリプトファンの製造に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)またはエシェリシア・コリ(Escherichia coli)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−イソロイシンを製造する場合、L−イソロイシンの製造に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)またはセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−グルタミンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)またはフラボバクテリウム・リゲンス(Flavobacterium rigense)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−アルギニンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)またはバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−アラニンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)またはアルスロバクター・オキシダンス(Arthrobacter oxydans)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−ヒスチジンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アモニアジェネス(Brevibacterium ammoniagenes)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)またはストレプトマイセス・コエリコラー(Streptomyces coelicolor)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−プロリンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、カルチア・カテナフォルマ(Kurthia catenaforma)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)またはエシェリシア・コリ(Escherichia coli)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−フェニルアラニンまたはL−チロシンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)またはエシェリシア・コリ(Escherichia coli)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でL−アスパラギン酸を製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megatherium)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)またはシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でメチオニンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でセリンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)またはアルスロバクター・オキシダンス(Arthrobacter oxydans)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でバリンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)またはクレブシェラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でロイシンを製造する場合に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)またはセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)が好ましい。
本発明の化学品の製造方法でアミノ酸を製造する場合、アミノ酸の製造に用いることができる微生物あるいは培養細胞は、例示した微生物あるいは培養細胞に対して、人為的に生産能力を高めた微生物あるいは培養細胞であってもよく、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。一部性質が改変されたアミノ酸の製造に用いることができる微生物あるいは培養細胞の一例としては、特開平2−219582に記載されているL−スレオニン生産性の向上したプロビデンシア・レトゲリ(Providencia rettgeri)や、特表平3−500486に記載されているL−アラニン生産性の向上したコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium gulutamicum)などがある。
本発明の化学品の製造方法に従って、連続培養をおこなった場合、従来の回分発酵と比較して、高い体積生産速度が得られ、極めて効率のよい発酵生産が可能となる。ここでいう、連続培養における生産速度は、次の式(8)で計算される。
また、回分培養での発酵生産速度は、原料炭素源をすべて消費した時点の生産物量(g)を、炭素源の消費に要した時間(h)とその時点の培養液量(L)で除して求められる。
次に、本発明の化学品の製造方法で用いられる連続培養装置の好ましい態様について、図を用いて説明する。図1は、本発明の化学品の製造方法で用いられる連続培養装置の例を説明するための概要側面図である。
図1において、連続培養装置は、培養装置1と膜分離装置2と循環ポンプ3と濾過ポンプ4および分離膜エレメント5で基本的に構成されている。ここで、分離膜エレメント5には、多孔性膜が組み込まれている。この多孔性膜としては、例えば、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜、および分離膜エレメントを使用することが好適である。また、膜分離装置2は、循環ポンプ3を介して培養装置1に接続されている。
図1において、培地供給ポンプ6によって培地を培養装置1に投入し、必要に応じて、攪拌機7で培養装置1内の培養液を攪拌し、また必要に応じて、気体供給装置8によって必要とする気体を供給することができる。この時、供給した気体を回収リサイクルして再び気体供給装置8で供給することができる。また必要に応じて、pHセンサ・制御装置9およびよびpH調整溶液供給ポンプ10によって発酵液のpHを調整し、また必要に応じて、温度調節器11によって培養液の温度を調節することにより、生産性の高い発酵生産を行うことができる。さらに、培養装置内の培養液は、循環ポンプ3によって培養装置1と膜分離装置2の間を循環する。生産物を含む培養液は、分離膜エレメント5によって微生物と生産物に濾過・分離され、装置系外に取り出すことができる。また、濾過・分離された微生物は、装置系内にとどまることで装置系内の微生物濃度を高く維持でき、生産性の高い発酵生産を可能としている。また、レベルセンサー12によって、培養装置内の液面を一定にするために培地供給ポンプ6を制御する。
必要に応じて、気体供給装置13によって必要とする気体を膜分離装置2内に供給することができる。この時、供給した気体を回収リサイクルして再び気体供給装置13で供給することができる。分離膜エレメント5による濾過・分離は、濾過ポンプ4によって行う。循環ポンプ3および濾過ポンプ4の先にある流量計14および15によって循環液量および濾過液量を回収率モニタリング装置16に取り込み、回収率を常時計算し、必要に応じて循環ポンプまたは濾過ポンプの出力を変更し、回収率を10.0%以下に制御する。
本発明の化学品の製造方法で用いられる連続培養装置で、好ましく用いられる分離膜エレメントについて、説明する。
図2示す分離膜エレメントについて説明する。本発明の化学品の製造方法で用いられる連続培養装置では、好ましくは、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜および分離膜エレメントを用いることができる。分離膜エレメントは、図2に示すように、剛性を有する支持板17の両面に、流路材18と前記の分離膜19をこの順序で配し構成されている。支持板17は、両面に凹部20を有している。分離膜19は、培養液を濾過する。流路材18は、分離膜19でろ過された透過水を効率よく支持板17に流すためのものである。支持板17に流れた透過水は、支持板17の凹部20を通り、集水パイプ21を介して膜分離装置外部に取り出される。透過水を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
次に、図3に示す分離膜エレメントについて説明する。分離膜エレメントは、図3に示すように、中空糸膜で構成された分離膜束22と上部樹脂封止層23、下部樹脂封止層24によって主に構成される。分離膜束は上部樹脂封止層23、および下部樹脂封止層24よって束状に接着・固定化されている。下部樹脂封止層による接着・固定化は中空糸膜の中空部を封止しており、発酵培養液の漏出を防ぐ構造になっている。一方、上部樹脂封止層23は中空糸膜の内孔を封止しておらず、集水パイプ25に透過水が流れる構造となっている。分離膜束22によって濾過された透過水は、中空糸膜の中空部を通り、集水パイプ25を介して膜分離装置26の外部に取り出される。透過水を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
本発明の化学品の製造方法で用いられる連続培養装置の膜分離装置を構成する部材は、高圧蒸気滅菌操作に耐性の部材であることが好ましい。培養装置内が滅菌可能であれば、連続培養時に好ましくない微生物による汚染の危険を回避でき、より安定した連続培養が可能となる。膜分離装置を構成する部材は、高圧蒸気滅菌操作の条件である、121℃で15分間に耐性であることが好ましい。分離膜エレメント部材は、例えば、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、PVDF、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリサルホン系樹脂等の樹脂を好ましく選定できる。
以下、本発明をさらに詳細に説明するために、上記化学品の例として、L−乳酸を選定し、L−乳酸を生産する能力のある微生物による図1の概要図に示す装置を用いた連続培養の具体的な実施形態について、実施例を挙げて説明する。
参考例1 L−乳酸生産能力を持つ酵母株の作製
L−乳酸生産能力を持つ酵母株を下記のように造成した。ヒト由来L−LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結することでL−乳酸生産能力を持つ酵母株を造成した。ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)には、La−Taq(宝酒造)、あるいはKOD-Plus-polymerase(東洋紡)を用い、付属の取扱説明に従って行った。
ヒト乳ガン株化細胞(MCF−7)を培養回収後、TRIZOL Reagent(Invitrogen)を用いてtotal RNAを抽出し、得られたtotal RNAを鋳型としてSuperScript Choice System(Invitrogen)を用いた逆転写反応によりcDNAの合成を行った。これらの操作の詳細は、それぞれ付属のプロトコールに従った。得られたcDNAを続くPCRの増幅鋳型とした。
上記操作で得られたcDNAを増幅鋳型とし、配列番号1および配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたKOD-Plus-polymeraseによるPCRによりヒトL−LDH遺伝子のクローニングを行った。各PCR増幅断片を精製し末端をT4 Polynucleotide Kinase(TAKARA社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーションは、DNA Ligation Kit Ver.2(TAKARA社製)を用いて行った。ライゲーションプラスミド産物で大腸菌DH5αを形質転換し、プラスミドDNAを回収することによりヒトL−LDH遺伝子(配列番号3:アクセッションナンバーAY009108)がサブクローニングされたプラスミドを得た。得られたヒトL−LDH遺伝子が挿入されたpUC118プラスミドを制限酵素XhoIおよびNotIで消化し、得られた各DNA断片を酵母発現用ベクターpTRS11のXhoI/NotI切断部位に挿入した。このようにしてヒトL−ldh遺伝子発現プラスミドpL−LDH5を得た。なお、ヒト由来のL−LDH遺伝子発現ベクターである上記pL−LDH5は、プラスミド単独で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1中央第6)にFERM AP−20421として寄託した(寄託日:平成17年2月21日)。
ヒト由来LDH遺伝子を含むプラスミドpL−LDH5を増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号5で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより1.3kbのヒト由来LDH遺伝子、及びサッカロミセス・セレビセ由来のTDH3遺伝子のターミネーター配列含むDNA断片を増幅した。また、プラスミドpRS424を増幅鋳型として、配列番号6および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより1.2kbのサッカロミセス・セレビセ由来のTRP1遺伝子を含むDNA断片を増幅した。それぞれのDNA断片を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた1.3kb断片、1.2kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCR法によって得られた産物を1.5%アガロースゲル電気泳動して、ヒト由来LDH遺伝子及びTRP1遺伝子が連結された2.5kbのDNA断片を常法に従い調整した。この2.5kbのDNA断片で出芽酵母NBRC10505株を常法に従いトリプトファン非要求性に形質転換した。
得られた形質転換細胞がヒト由来LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結されている細胞であることの確認は、下記のように行った。まず、形質転換細胞のゲノムDNAを常法に従って調製し、これを増幅鋳型とした配列番号8および配列番号9で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより0.7kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。また、形質転換細胞が乳酸生産能力を持つかどうかは、SC培地(METHODS IN YEAST GENETICS 2000 EDITION、 CSHL PRESS)で形質転換細胞を培養した培養上澄に乳酸が含まれていることを下記に示す条件でHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
また、L−乳酸の光学純度測定は以下の条件でHPLC法により測定した。
カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー社製)
移動相 :1mM 硫酸銅水溶液
流速:1.0ml/min
検出方法 :UV254nm
温度 :30℃。
また、L−乳酸の光学純度は次式で計算される。
光学純度(%)=100×(L−D)/(L+D)
ここで、LはL−乳酸の濃度、DはD−乳酸の濃度を表す。
HPLC分析の結果、4g/LのL−乳酸が検出され、D−乳酸は検出限界以下であった。以上の検討により、この形質転換体がL−乳酸生産能力を持つことを確認した。得られた形質転換細胞を酵母SW−1株として、続く実施例に用いた。
参考例2 多孔性膜の作製(その1)
樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂と、溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミドをそれぞれ用い、これらを90℃の温度下に十分に攪拌し、次の組成を有する原液を得た。
ポリフッ化ビニリデン:13.0重量%
N,N−ジメチルアセトアミド:87.0重量%。
次に、上記原液を25℃の温度に冷却した後、あらかじめガラス板上に貼り付けて置いた、密度が0.48g/cm3、厚みが220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、直ちに次の組成を有する25℃の温度の凝固浴中に5分間浸漬して、多孔質樹脂層が形成された多孔質基材を得た。
水 :30.0重量%
N,N−ジメチルアセトアミド:70.0重量%。
この多孔質基材をガラス板から剥がした後、80℃の温度の熱水に3回浸漬して、N,N−ジメチルアセトアミドを洗い出し、分離膜を得た。
多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行った。観察できる細孔すべての直径の平均は、0.1μmであった。
次に、上記分離膜について、純水透過係数を評価した。50×10−9m3/m2・s・Paであった。純水透過係数の測定は、逆浸透膜による25℃の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
また、細孔径の標準偏差 は、0.035μm、膜表面粗さは0.06μmであった。このようにして作製した多孔性膜は、本発明に好適に用いることができた。
実施例1 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その1)
図1の連続培養装置と表1に示す組成の乳酸発酵培地を用い、L−乳酸の製造を行った。培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。分離膜エレメント部材としては、ステンレス、及び、ポリサルホン樹脂の成型品を用いた。分離膜としては参考例2で作製した多孔性膜を用いた。実施例1における運転条件は以下のとおりである。
培養装置液量:20(L)
膜分離装置液量:5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜
膜分離エレメント有効濾過面積:4000平方cm
温度調整:30(℃)
培養装置通気量:2.0(L/min)
膜分離装置通気量:なし
反応槽攪拌速度:100(rpm)
pH調整:4N NaOHによりpH5に調整
培地供給速度:培養装置内の液面レベルセンサーにて可変制御
循環ポンプによる循環液量:6.02(L/min)
濾過フラックス:0.325m/day
回収率:1.5%。
微生物として参考例1で造成した酵母SW−1株を用い、培地として表1に示す組成の乳酸発酵培地を用い、生産物である乳酸の濃度の評価には、参考例1に示したHPLCを用い、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
まず、SW−1株を試験管で5mlの乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸発酵培地1000mlに植菌し、3000ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前培養)。前培養液を、図1に示す連続培養装置の20Lの乳酸発酵培地に植菌し、培養装置を付属の攪拌機によって攪拌し、通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、48時間培養を行った後に、濾過ポンプを稼働させ0.325m/dayの濾過フラックスで濾過し連続培養によるL−乳酸の製造を行った。この時の回収率は式1から計算すると1.5%である。適宜、膜透過発酵液中の生産されたL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。膜の閉塞が発生すると濾過フラックスが低下してくるため、濾過フラックスを経時的に計測した。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。運転開始から1000時間に渡って濾過フラックスが安定し、回収率1.5%での運転によって、長時間安定したL−乳酸の連続培養による製造が可能となった。連続培養結果を表2に示す。
実施例2 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その2)
回収率を3.0%で運転を行った。実施例1の運転条件との変更点は下記のみで、その他は実施例1と同様におこなった。
循環ポンプによる循環液量:3.01(L/min)
回収率:3.0%。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。800時間に渡って濾過フラックスが安定し、回収率3.0%での運転でも長時間安定したL−乳酸の連続培養による製造が可能となった。連続培養結果を表2に示す。
実施例3 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その3)
回収率を1.5%での運転であるが、実施例1の運転条件と下記条件を変更し行った。
循環ポンプによる循環液量:3.01(L/min)
濾過フラックス:0.162m/day
回収率:1.5%。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。900時間に渡って濾過フラックスが安定し、実施例1と循環液量および濾過フラックスの条件が異なろうとも、回収率1.5%での運転にすることで、安定したL−乳酸の連続培養による製造が可能であった。連続培養結果を表2に示す。
実施例4 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その4)
回収率を1.5%での運転であるが、実施例1の運転条件と下記条件を変更し行った。
膜分離装置液量:2.5(L)
膜分離エレメント有効濾過面積:2000平方cm
濾過フラックス:0.650m/day
回収率:1.5%。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。1050時間に渡って濾過フラックスが安定し、実施例1より膜面積が小さく高い濾過フラックスであっても、回収率1.5%での運転にすることで、安定したL−乳酸の連続培養による製造が可能であった。連続培養結果を表2に示す。
実施例5 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その5)
回収率を9.9%での運転であるが、実施例1の運転条件と下記条件を変更し行った。
膜分離エレメント有効濾過面積:5000平方cm
濾過フラックス:0.100m/day
循環ポンプによる循環液量:0.35(L/min)
回収率:9.9%。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。550時間に渡って濾過フラックスが安定し、実施例1より膜面積が小さく高い濾過フラックスであっても、回収率9.9%での運転にすることで、安定したL−乳酸の連続培養による製造が可能であった。連続培養結果を表2に示す。
比較例1 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その6)
回収率を12.0%で運転を行った。実施例1の運転条件との変更点は下記のみで、その他は実施例1と同様におこなった。
循環ポンプによる循環液量:1.16(L/min)
濾過フラックス:0.500m/day
回収率:12.0%。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。100時間で濾過フラックスが低下し、回収率12.0%では急速に濾過フラックスが低下し、安定したL−乳酸の連続培養による製造が困難であった。連続培養結果を表2に示す。
参考例2 多孔性膜の作製(外圧式中空糸)(その2)
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ-ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解し原液を作製した。この原液をγ-ブチロラクトンを中空部形成液体として随拌させながら口金から吐出し、温度20℃のγ-ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社、CAP482−0.5)を1重量%、N-メチル-2-ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社、商品名イオネットT−20C)を5重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して原液を調整した。この原液を中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させた中空糸膜を製作した。得られた中空糸膜は被処理水側表面の平均孔径が0.05μmであった。次に、上記分離膜について純水透水量を評価したところ、5.5×10−9m3/m2・s・Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。また、細孔径の標準偏差 は0.006μmであった。
実施例6 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その7)
分離膜として参考例2で作製した多孔性膜を使用して作製した有効濾過面積が4000平方cmの図3に示す分離膜エレメントを用い、実施例2の運転条件との変更点は下記のみで、その他は実施例2と同様におこなった。
膜分離装置液量:0.9(L)
回収率:3.0%
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。1000時間に渡って濾過フラックスが安定し、分離膜の形状には関係なく回収率を10.0%以下で運転することが連続培養の運転条件において重要であることがわかった。連続培養結果を表2に示す。
実施例7 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その8)
分離膜として塩素化ポリエチレンである液中膜510型(クボタ社製)を使用して実施例5と同様のL−乳酸連続培養試験を行った。本分離膜の多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行った。観察できる細孔すべての直径の平均は、0.4μmであった。次に、上記分離膜について、純水透過係数を評価したところ30×10−9m3/m2・s・Paであった。純水透過係数の測定は、逆浸透膜による25℃の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。500時間に渡って濾過フラックスが安定し、分離膜の素材には関係なく回収率を10.0%以下で運転することが連続培養の運転条件において重要であることがわかった。連続培養結果を表2に示す。
実施例8 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その9)
分離膜として内圧式中空糸であるUMP−153(旭化成社製)を使用してL−乳酸連続培養試験を行った。本分離膜の多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行った。観察できる細孔すべての直径の平均は、0.2μmであった。実施例8における運転条件は以下のとおりである。
培養装置液量:20(L)
膜分離装置液量:2.5(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜
膜分離エレメント有効濾過面積:4000平方cm
温度調整:30(℃)
培養装置通気量:2.0(L/min)
膜分離装置通気量:なし
反応槽攪拌速度:100(rpm)
pH調整:4N NaOHによりpH5に調整
培地供給速度:培養装置内の液面レベルセンサーにて可変制御
循環ポンプによる循環液量:4.8(L/min)
濾過フラックス:0.200m/day
回収率:1.2%。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。700時間に渡って濾過フラックスが安定し、中空糸の外圧式、内圧式には関係なく回収率を10.0%以下で運転することが連続培養の運転条件において重要であることがわかった。連続培養結果を表2に示す。
実施例9 酵母を用いた連続培養によるL−乳酸の製造(その10)
分離膜として内圧式中空糸であるULP−143(旭化成社製)を使用してL−乳酸連続培養試験を行った。本分離膜の多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行った。観察できる細孔すべての直径の平均は、0.45μmであった。実施例8の運転条件と下記条件を変更し行った。
循環ポンプによる循環液量:2.4(L/min)
回収率:2.3%。
図4に測定した濾過フラックスの推移を示す。800時間に渡って濾過フラックスが安定し、中空糸の外圧式、内圧式には関係なく回収率を10.0%以下で運転することが連続培養の運転条件において重要であることがわかった。連続培養結果を表2に示す。