以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1において、10は圧縮自着火式の内燃機関(以下単に「内燃機関」という)である。内燃機関10はシリンダブロック、シリンダブロックロワケース、および、オイルパン等を含むシリンダブロック部20と、該シリンダブロック部20上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20に空気を供給するための吸気通路40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気通路50とを具備する。
シリンダブロック部20はシリンダヘッド21と、ピストン22と、コンロッド23と、クランクシャフト24とを有する。ピストン22はシリンダ21内で往復動し、該ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランクシャフト24に伝達され、これによってクランクシャフト24が回転せしめられる。また、シリンダ21の内壁面とピストン22の上壁面とシリンダヘッド部30の下壁面とによって燃焼室25が形成されている。
シリンダヘッド部30は燃焼室25内に連通する吸気ポート31と、該吸気ポート31を開閉する吸気弁32と、該吸気弁32を駆動する吸気弁駆動機構32aと、燃焼室25に連通する排気ポート33と、該排気ポート33を開閉する排気弁34と、該排気弁34を駆動する排気弁駆動機構34aと、燃料を燃焼室25内に噴射する燃料噴射弁37と、該燃料噴射弁37に燃料を高圧で供給する蓄圧室37aと、該蓄圧室37aに燃料を圧送する燃料ポンプ37bとを有する。吸気弁駆動機構32aおよび排気弁駆動機構34aは駆動回路38に接続されている。
吸気通路40は吸気ポート31に接続された吸気枝管41と、該吸気枝管41に接続されたサージタンク42と、該サージタンク42に接続された吸気ダクト43とを有する。吸気ダクト43にはその上流端から順にエアフィルタ44と、スロットル弁48とが配置されている。スロットル弁48は吸気ダクト43に回転可能に取り付けられており、スロットル弁駆動用アクチュエータ48aによって駆動される。
排気通路50は排気ポート33に接続された排気枝管49と、該排気枝管49に接続された排気管51とを有する。排気管51には排気ガス中の窒素酸化物(以下「NOx」と表記する)を浄化する排気浄化触媒52が配置されている。
排気浄化触媒52はそこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるとき、すなわち、排気ガス中の酸素濃度が高いときにはNOxを吸収し、排気ガスの空燃比が理論空燃比または理論空燃比よりもリッチであるとき、すなわち、排気ガス中の酸素濃度が低いときには吸収したNOxを放出し、放出されたNOxを排気ガス中に含まれる未燃炭化水素や一酸化炭素によって還元浄化する。
さらに、内燃機関10は吸気ダクト43内を流れる空気の流量を検出するエアフローメータ61と、クランクシャフト24の回転位相、すなわち、クランク角度を検出するクランクポジションセンサ62と、燃焼室25内の圧力を検出する筒内圧センサ63と、アクセルペダル65の踏込量を検出するアクセル開度センサ64と、電気制御装置(ECU)70とを具備する。クランクポジションセンサ64はクランクシャフト24が1°回転する毎に幅狭のパルスを出力すると共にクランクシャフト24が360°回転する毎に幅広のパルスを出力する。クランクポジションセンサ62が出力するパルスに基づいて内燃機関10の回転数(以下「機関回転数」という)が算出可能である。
電気制御装置(ECU)70はマイクロコンピュータからなり、双方向性バスによって互いに接続されたCPU(マイクロプロセッサ)71と、ROM(リードオンリメモリ)72と、RAM(ランダムアクセスメモリ)73と、バックアップRAM74と、AD変換器を含むインターフェース75とを有する。エアフローメータ61、クランクポジションセンサ62、筒内圧センサ63、および、アクセル開度センサ64はインターフェース75に接続されている。
ところで、排気ガス中には硫黄酸化物(以下「SOx」と表記する)が含まれており、このSOxが排気浄化触媒52に流入するとこのSOxも排気浄化触媒52に吸収される。そして、排気浄化触媒52に吸収されるSOxの量が多くなると排気浄化触媒52が吸収することができるNOxの量が少なくなり、結果として、排気浄化触媒52が還元浄化することができるNOxの量が少なくなってしまう。ここで、排気浄化触媒52に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチとすると共に排気浄化触媒52の温度(以下「触媒温度」という)を或る一定の温度よりも高くすればSOxが排気浄化触媒52から除去される。そこで、本実施形態(以下「第1実施形態」という)では、排気浄化触媒52に吸収されているSOxを除去する必要があると判断されたときには以下のようにして触媒温度を該排気浄化触媒52からSOxを除去することができる温度(以下「SOx除去可能温度」という)まで上昇させると共に排気浄化触媒52に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチとするリッチ燃焼が実行される。
すなわち、第1実施形態のリッチ燃焼では、触媒温度をSOx除去可能温度まで上昇させる必要があるときには、圧縮上死点TDC近傍のタイミングで実行される燃料噴射弁37からの燃料の噴射(以下「主噴射」という)に加えて、該主噴射が実行された直後のタイミングで燃料噴射弁37からの燃料の噴射(以下「副噴射」という)が実行される。すなわち、主噴射によって噴射された燃料(以下「主噴射燃料」という)を燃焼室内で燃焼させることに加えて副噴射によって噴射された燃料(以下「副噴射燃料」という)を燃焼室内で燃焼させることによって燃焼室から排出される排気ガスの温度を上昇させれば、排気浄化触媒52に流入する排気ガスの温度が高いことになる。第1実施形態では、これによって触媒温度がSOx除去可能温度まで上昇せしめられる。さらに、第1実施形態のリッチ燃焼では、主噴射によって燃料噴射弁から噴射される燃料の量(以下「主噴射燃料量」という)は主噴射のみが実行される通常燃焼における主噴射燃料量と同じ量に設定される。そして、副噴射によって燃料噴射弁から噴射される燃料の量(以下「副噴射燃料量」という)は燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとなる量に設定される。第1実施形態では、これによって排気浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。
なお、第1実施形態では、内燃機関10の運転状態、すなわち、機関回転数と機関負荷とに応じて適切な主噴射燃料量を実験等によって予め求め、この主噴射燃料量(以下「基準主噴射燃料量」という)Qmbを図2(A)に示されているように機関回転数Nと機関負荷Lとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。同様に、第1実施形態では、内燃機関10の運転状態、すなわち、機関回転数と機関負荷とに応じて適切な副噴射燃料量を実験等によって予め求め、この副噴射燃料量(以下「基準副噴射燃料量」という)Qsbを図2(B)に示されているように機関回転数Nと機関負荷Lとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、触媒温度をSOx除去可能温度まで上昇させる必要があるとき、すなわち、リッチ燃焼を実行させる必要があるときには、これら図2(A)および図2(B)のマップから機関回転数と機関負荷とに基づいて基準主噴射燃料量Qmbおよび基準副噴射燃料量Qsbが読み込まれる。一方、通常燃焼を実行させる必要があるときには、図2(A)のマップから機関回転数と機関負荷とに基づいて基準主噴射燃料量Qmbが読み込まれ、基準副噴射燃料は零とされる。
ところで、第1実施形態のリッチ燃焼では、主噴射が実行されるタイミングおよび副噴射が実行されるタイミングは以下のようにして決定される。すなわち、内燃機関10の運転状態、すなわち、機関回転数Nと機関負荷Lとに応じて主噴射を実行するのに適したタイミングを実験等によって予め求め、このタイミング(以下「基準主噴射タイミング」という)Tmbを図3に示されているように機関回転数Nと機関負荷Lとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。同様に、第1実施形態では、内燃機関10の運転状態、すなわち、機関回転数Nと機関負荷Lとに応じて副噴射を実行するのに適したタイミングを実験等によって予め求め、これらタイミング(以下「基準副噴射タイミング」という)Tsbを図4に示されているように機関回転数Nと機関負荷Lとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、触媒温度をSOx除去可能温度まで上昇させる必要があるとき、すなわち、リッチ燃焼を実行させる必要があるときには、これら図3および図4のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準主噴射タイミングTmbおよび基準副噴射タイミングTsbが読み込まれる。
ところで、第1実施形態のリッチ燃焼において、上述したように読み込まれた基準副噴射タイミングにおける燃焼室内の温度(以下「筒内温度」という)が副噴射を燃焼させることができる下限の温度(以下「副噴射燃料燃焼可能温度」という)よりも低い場合、副噴射燃料が燃焼室内において完全には燃焼しないことになる。そして、この場合、燃焼室から排出される排気ガスの温度が十分に高い温度になっていない可能性がある。一方、基準副噴射タイミングで副噴射が実行されたときに、筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも高い場合であってもその筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも大幅に高い場合、副噴射燃料が一気に燃焼することになる。そして、この場合、副噴射燃料の燃焼によって発生するトルク(以下「副噴射トルク」という)が大幅に大きくなり、その結果、内燃機関10全体のトルク変動量が大幅に大きくなってしまう。
そこで、第1実施形態のリッチ燃焼では、上述したように読み込まれた基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも高いか否か、および、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射トルクが許容可能な値よりも小さくなる温度よりも低いか否か、すなわち、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射トルクによって内燃機関10全体のトルク変動量が許容可能な量よりも小さくなる温度(以下「副噴射トルク許容温度」という)よりも低いか否かが判別される。ここで、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも高く且つ副噴射トルク許容温度よりも低いときには基準副噴射タイミングで副噴射が実行されたとしても副噴射燃料は確実に燃焼し、且つ、副噴射トルクは許容可能な値よりも小さく抑制される。そこで、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも高く且つ副噴射トルク許容温度よりも低いとき、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度を下限温度すると共に副噴射トルク許容温度を上限温度とする温度範囲を所定温度範囲とした場合に基準副噴射タイミングにおける筒内温度が所定温度範囲内にあるときには、図5(A)に示されているように基準主噴射タイミングTmbで主噴射Imが実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に基準副噴射タイミングTsbで副噴射Isが実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。これによれば、燃焼室から排出される排気ガスの温度が十分に上昇せしめられると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。
一方、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の下限温度、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度よりも低いときに基準副噴射タイミングが進角されてこの進角された基準副噴射タイミングで副噴射が実行されれば、副噴射が実行された時点の筒内温度は高くなる。しかしながら、基準副噴射タイミングの進角量が大きすぎると副噴射が蓄圧室37aから燃料噴射弁37の燃料噴射孔までの燃料通路内に発生する燃料のうねり、すなわち、燃料の脈動の影響を受け、副噴射によって所望の量の燃料が噴射されないことになる。そこで、第1実施形態では、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに応じて筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度となっているタイミングまで基準副噴射タイミングを進角させる量(以下「副噴射進角量」という)を実験等によって予め求め、この副噴射進角量Ksaを図6(A)に示されているように基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。一方、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに応じて副噴射が上記燃料の脈動の影響を受ける度合いが許容可能な度合いよりも大きくなってしまう副噴射進角量(以下「副噴射進角量上限値」という)も実験等によって予め求め、この副噴射進角量上限値Ksa(max)を図6(B)に示されているように基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の下限温度、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度よりも低いときには、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに基づいて図6(A)のマップから副噴射進角量が読み込まれると共に図6(B)のマップから副噴射進角量上限値が読み込まれる。そして、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも小さいときには、基準副噴射タイミングが副噴射進角量だけ進角せしめられ、図5(B)に示されているように主噴射Imが基準主噴射タイミングTmbで実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isがこの進角後の基準副噴射タイミング(Tms−Ksa)で実行されて基準副噴射燃料量Qmsの燃料が噴射される。これによれば、燃焼室から排出される排気ガスの温度が十分に上昇せしめられると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。一方、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準副噴射タイミングおよび基準主噴射タイミングが以下のように制御される。
すなわち、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の下限温度、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度よりも低いときに基準主噴射タイミングが遅角されてこの遅角された基準主噴射タイミングで主噴射が実行されれば、基準副噴射タイミングで副噴射が実行された時点の筒内温度は高くなる。しかしながら、基準主噴射タイミングの遅角量が大きすぎると主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが所望のトルクよりも小さくなってしまう。そこで、基準主噴射燃料量と基準副噴射タイミングとに応じて基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度となるタイミングまで基準主噴射タイミングを遅角させる量(以下「主噴射遅角量」という)を実験等によって予め求め、この主噴射遅角量Kmdを図7(A)に示されているように基準主噴射燃料量Qmbと基準副噴射タイミングTsbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。一方、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに応じて主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが許容可能な値よりも大きくなってしまう主噴射遅角量(以下「主噴射遅角量上限値」という)を実験等によって予め求め、この主噴射遅角量上限値Kmd(max)を図7(B)に示されているように基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射燃料量と基準副噴射タイミングとに基づいて図7(A)のマップから主噴射遅角量が読み込まれると共に基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに基づいて図7(B)のマップから主噴射遅角量上限値が読み込まれる。そして、主噴射遅角量が主噴射遅角量上限値よりも小さいときには、基準主噴射タイミングが主噴射遅角量だけ遅角せしめられ、図5(C)に示されているように主噴射Imがこの遅角後の基準主噴射タイミング(Tmb+Kmd)で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが基準副噴射タイミングTsbで実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。これによれば、燃焼室から排出される排気ガスの温度が十分に上昇せしめられると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。一方、主噴射遅角量が主噴射遅角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射タイミングが主噴射遅角量上限値だけ遅角せしめられ、図5(D)に示されているように主噴射Imがこの遅角後の基準主噴射タイミング(Tmb+Kmd(max))で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが基準副噴射タイミングTsbで実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃焼室量が噴射される。これによれば、燃焼室から排出される排気ガスの温度が比較的十分に上昇せしめられると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。
一方、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の上限温度、すなわち、副噴射トルク許容温度よりも高いときに基準副噴射タイミングが遅角されてこの遅角された基準副噴射タイミングで副噴射が実行されれば、副噴射が実行された時点の筒内温度は低くなる。しかしながら、基準副噴射タイミングの遅角量が大きすぎると燃焼室内に流入して来る潤滑油によって副噴射燃料が希釈されてしまって十分に燃焼しないことになる。そこで、第1実施形態では、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに応じて筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度となっているタイミングまで基準副噴射タイミングを遅角させる量(以下「副噴射遅角量」という)を実験等によって予め求め、この副噴射遅角量Ksdを図8(A)に示されているように基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。一方、基準副噴射タイミングに応じて副噴射燃料が潤滑油によって希釈される度合いが許容可能な度合いよりも大きくなってしまう副噴射遅角量(以下「副噴射遅角量上限値」という)も実験等によって求め、この副噴射遅角量上限値Ksd(max)を図8(B)に示されているように基準副噴射タイミングTsbの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の上限温度、すなわち、副噴射トルク許容温度よりも高いときには、基準主噴射タイミングと主噴射燃料量とに基づいて図8(A)のマップから副噴射遅角量が読み込まれると共に図8(B)のマップから副噴射遅角量上限値が読み込まれる。そして、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも小さいときには、基準副噴射タイミングが副噴射遅角量だけ遅角せしめられ、図5(E)に示されているように主噴射Imが基準主噴射タイミングTmbで実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isがこの遅角後の基準副噴射タイミング(Tsb+Ksd)で実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。これによれば、燃焼室から排出される排気ガスの温度が十分に上昇せしめられると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。一方、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きいときには、基準副噴射タイミングおよび基準主噴射タイミングが以下のように制御される。
すなわち、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の上限温度、すなわち、副噴射トルク許容温度よりも高いときに基準主噴射タイミングが進角されてこの進角された基準主噴射タイミングで主噴射が実行されれば、基準副噴射タイミングで副噴射が実行された時点の筒内温度は低くなる。しかしながら、基準主噴射タイミングの進角量が大きすぎると主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが所望のトルクよりも大きくなってしまう。そこで、基準主噴射燃料量と基準副噴射タイミングとに応じて基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射トルク許容温度となるタイミングまで基準主噴射タイミングを進角させる量(以下「主噴射進角量」という)を実験等によって予め求め、この主噴射進角量Kmaを図9(A)に示されているように基準主噴射燃料量Qmbと基準副噴射タイミングTsbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。一方、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに応じて主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが許容可能な値よりも大きくなってしまう主噴射進角量(以下「主噴射進角量上限値」という)を実験等によって予め求め、この主噴射進角量上限値Kma(max)を図9(B)に示されているように基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きいときには、主噴射燃料量と基準副噴射タイミングとに基づいて図9(A)のマップから主噴射進角量が読み込まれると共に図9(B)のマップから主噴射進角量上限値が読み込まれる。そして、主噴射進角量が主噴射進角量上限値よりも小さいときには、基準主噴射タイミングが主噴射進角量だけ進角せしめられ、図5(F)に示されているように主噴射Imがこの進角後の基準主噴射タイミング(Tmb−Kma)で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射が基準副噴射タイミングTsbで実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。これによれば、燃焼室から排出される排気ガスの温度が十分に上昇せしめられると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。一方、主噴射進角量が主噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射タイミングが主噴射進角量上限値だけ進角せしめられ、図5(G)に示されているように主噴射Imがこの進角後の基準主噴射タイミング(Tmb−Kma(max))で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが基準副噴射タイミングTsbで実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。これによれば、燃焼室から排出される排気ガスの温度が比較的十分に上昇せしめられると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとされる。
次に、第1実施形態に従った燃料噴射制御を実行するフローチャートの一例について図10〜図14を参照して説明する。図10〜図14のルーチンが開始されると、始めに、ステップ100において、リッチ燃焼の実行が要求されているか否かが判別される。ここで、リッチ燃焼の実行が要求されていないと判別されたとき、すなわち、通常燃焼の実行が要求されていると判別されたときには、ルーチンはステップ109以降のステップに進んで通常燃料が実行される。すなわち、ステップ109において、図2(A)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準主噴射燃料量Qmbが読み込まれる。次いで、ステップ110において、図3のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準主噴射タイミングTmbが読み込まれる。次いで、ステップ111において、ステップ109で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ113において、副噴射燃料量Qsに零が入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ100において、リッチ燃焼の実行が要求されていると判別されたときには、ステップ101において、吸気圧力Paが取得され、次いで、ステップ102において、1回の機関サイクルにおいて燃焼室に吸入されるガスの量(筒内ガス量)Gcが取得され、次いで、ステップ103において、1回の機関サイクルにおいて燃焼室に吸入される酸素の量(筒内酸素量)Gocが取得される。次いで、ステップ104において、図2(A)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準主噴射燃料量Qmbが読み込まれ、次いで、ステップ105において、図3のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準主噴射タイミングTmbが読み込まれる。次いで、ステップ106およびステップ107において、ステップ101〜ステップ103で取得された吸気圧力、筒内ガス量、および、筒内酸素量等に基づいて今回の機関サイクルにおける燃焼室内の最大圧力(最大筒内圧)Pc(max)が推定されると共に今回の機関サイクルにおける燃料室内の最大温度(最大筒内温度)TEMP(max)が推定される。次いで、ステップ108において、圧縮上死点における燃焼室内の温度(圧縮端温度)に対する燃焼室内の酸素濃度(筒内酸素濃度)のマップが取得される。
次いで、図11のステップ114において、図2(B)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準副噴射燃料量Qsbが読み込まれる。次いで、ステップ115において、図4のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準副噴射タイミングTsbが読み込まれる。次いで、ステップ116において、ステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbで副噴射が実行された場合の筒内温度(副噴射時筒内温度)TEMPsbが推定される。次いで、ステップ117〜ステップ119において、今回の機関サイクルにおいて目標とすべき吸気圧力(目標吸気圧力)TPa、目標とすべき燃焼室内のガスの量(目標筒内ガス量)、および、目標とすべき燃焼室内の酸素の量(目標筒内酸素量)が読み込まれる。次いで、ステップ120において、副噴射燃料燃焼可能温度TEMPLが推定される。次いで、ステップ121において、副噴射トルク許容温度TEMPHが推定される。
次いで、ステップ122において、ステップ116で推定された副噴射時筒内温度TEMPsbがステップ120で推定された副噴射燃料燃焼可能温度TEMPL以上である(TEMPsb≧TEMPL)か否かが判別される。ここで、TEMPsb≧TEMPLであると判別されたときには、ルーチンはステップ123に進む。ステップ123では、ステップ116で推定された副噴射時筒内温度TEMPsbがステップ121で推定された副噴射トルク許容温度TEMPHよりも低い(TEMPsb<TEMPH)か否かが判別される。ここで、TEMPsb<TEMPHであると判別されたときには、ルーチンは図12のステップ128以降のステップに進む。すなわち、副噴射時筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度以上であって且つ副噴射トルク許容温度よりも低いときに、ルーチンはステップ128以降のステップに進む。ステップ128では、ステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ129において、ステップ114で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ130において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbが主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ131において、ステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbが副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、図11のステップ122において、TEMPsb<TEMPLであると判別されたときには、ルーチンはステップ124以降のステップに進む。ステップ124では、図6(A)のマップから基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとに基づいて副噴射進角量Ksaが読み込まれ、次いで、ステップ125において、図6(B)のマップから基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとに基づいて副噴射進角量上限値Ksa(max)が読み込まれる。次いで、図13のステップ132において、ステップ124で読み込まれた副噴射進角量Ksaがステップ125で読み込まれた副噴射進角量上限値Ksa(max)よりも小さい(Ksa<Ksa(max))か否かが判別される。ここで、Ksa<Ksa(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ133に進んで、ステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ134において、ステップ114で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ135において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbが主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ136において、基準副噴射タイミングTsbを副噴射進角量Ksaだけ進角せしめたタイミング(Tsb−Ksa)が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ132において、Ksa≧Ksa(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ137以降のステップに進む。ステップ137では、図7(A)のマップからステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbとステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbとに基づいて主噴射遅角量Kmdが読み込まれ、次いで、ステップ138において、図7(B)のマップからステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbとステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbとに基づいて主噴射遅角量上限値Kmd(max)が読み込まれる。次いで、ステップ139において、ステップ137で読み込まれた主噴射遅角量Kmdがステップ138で読み込まれた主噴射遅角量上限値Kmd(max)よりも小さい(Kmd<Kmd(max))か否かが判別される。ここで、Kmd<Kmd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ140以降のステップに進む。ステップ140では、ステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ141において、ステップ114で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ142において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ137で読み込まれた主噴射遅角量Kmdだけ遅角されたタイミング(Tmb+Kmd)が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ143において、ステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbが副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ139において、Kmd≧Kmd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ144以降のステップに進む。ステップ144では、ステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ145において、ステップ114で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ146において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ138で読み込まれた主噴射遅角量上限値Kmd(max)だけ遅角されたタイミング(Tmb+Kmd(max))が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ147において、ステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbが副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
ところで、図11のステップ123において、TEMPsb≧TEMPHであると判別されたときには、ルーチンはステップ126以降のステップに進む。ステップ126では、図8(A)のマップからステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbとステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbとに基づいて副噴射遅角量Ksdが読み込まれ、次いで、ステップ127において、図8(B)のマップからステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbに基づいて副噴射遅角量上限値Ksd(max)が読み込まれる。次いで、図14のステップ148において、ステップ126で読み込まれた副噴射遅角量Ksdがステップ127で読み込まれた副噴射遅角量上限値Ksd(max)よりも小さい(Ksd<Ksd(max))か否かが判別される。ここで、Ksd<Ksd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ149以降のステップに進む。ステップ149では、ステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ150において、ステップ114で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ151において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbが主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ152において、ステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbがステップ126で読み込まれた副噴射遅角量Ksdだけ遅角されたタイミング(Tsb+Ksd)が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ148において、Ksd≧Ksd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ153以降のステップに進む。ステップ153では、図9(A)のマップからステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbとステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbとに基づいて主噴射進角量Kmaが読み込まれ、次いで、ステップ154において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbとステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbとに基づいて主噴射進角量上限値Kma(max)が読み込まれる。次いで、ステップ155において、ステップ153で読み込まれた主噴射進角量Kmaがステップ154で読み込まれた主噴射進角量上限値Kma(max)よりも小さい(Kma<Kma(max))か否かが判別される。ここで、Kma<Kma(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ156以降のステップに進む。ステップ156では、ステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ157において、ステップ114で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ158において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ153で読み込まれた主噴射進角量Kmaだけ進角されたタイミング(Tmb−Kma)が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ159において、ステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbが副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ155において、Kma≧Kma(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ160以降のステップに進む。ステップ160では、ステップ104で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ161において、ステップ114で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ162において、ステップ105で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ154で読み込まれた主噴射進角量上限値Kma(max)だけ進角されたタイミング(Tmb−Kma(max))が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ163において、ステップ115で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbが副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
ところで、第1実施形態のリッチ燃焼では、基準副噴射タイミングに対する副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準副噴射タイミングが進角されずに基準主噴射タイミングが遅角される。しかしながら、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きい場合に基準副噴射タイミングが副噴射進角量上限値だけ進角されたとしても副噴射が受ける燃料の脈動の影響の度合いは許容可能な度合いに収まる。すなわち、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きい場合に基準副噴射タイミングが副噴射進角量上限値まで進角されたとしても副噴射が受ける燃料の脈動の影響の度合いの観点からは問題ない。また、第1実施形態のリッチ燃焼では、基準副噴射タイミングに対する副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きいときには、基準副噴射タイミングが遅角されずに基準主噴射タイミングが進角される。しかしながら、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きい場合に基準副噴射タイミングが副噴射遅角量上限値だけ遅角されたとしても副噴射燃料が潤滑油によって希釈される度合いは許容可能な度合いに収まる。すなわち、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きい場合に基準副噴射タイミングが副噴射遅角量上限値まで遅角されたとしても副噴射燃料が潤滑油によって希釈される度合いの観点からは問題ない。そこで、リッチ燃焼が実行されるときに以下のようにして副噴射タイミングおよび主噴射タイミングを制御するようにしてもよい。
すなわち、本実施形態(以下「第2実施形態」という)のリッチ燃焼では、第1実施形態のリッチ燃焼と同様に、触媒温度をSOx除去可能温度まで上昇させる必要があるときには、主噴射に加えて副噴射が実行される。そして、第2実施形態のリッチ燃焼では、第1実施形態のリッチ燃焼と同様に、主噴射燃料量は主噴射のみが実行される通常燃焼における主噴射燃料量と同じ量に設定され、副噴射燃料量は燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチとなる量に設定される。
なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、リッチ燃焼を実行させる必要があるときには、図2(A)および図2(B)のマップから機関回転数と機関負荷とに基づいて基準主噴射燃料量Qmbおよび基準副噴射燃料量Qsbが読み込まれ、通常燃焼を実行させる必要があるときには、図2(A)のマップから機関回転数と機関負荷とに基づいて基準主噴射燃料量Qmbが読み込まれ、基準副噴射燃料量は零とされる。
さて、第2実施形態のリッチ燃焼では、主噴射が実行されるタイミングおよび副噴射が実行されるタイミングは以下のようにして決定される。すなわち、第1実施形態のリッチ燃焼と同様に、リッチ燃焼を実行させる必要があるときには、図3および図4のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて基準主噴射タイミングTmbおよび基準副噴射タイミングTsbが読み込まれる。
そして、第2実施形態のリッチ燃焼では、第1実施形態のリッチ燃焼と同様に、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも高いか否か、および、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射トルク許容温度よりも低いか否かが判別される。そして、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも高く且つ副噴射トルク許容温度よりも低いとき、すなわち、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲内にあるときには、第1実施形態と同様に、図15(A)に示されているように基準主噴射タイミングTmbで主噴射Imが実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に基準副噴射タイミングTsbで副噴射Isが実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。
一方、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の下限温度、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度よりも低いときには、第1実施形態と同様に、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに基づいて図6(A)のマップから副噴射進角量が読み込まれると共に図6(B)のマップから副噴射進角量上限値が読み込まれる。そして、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも小さいときには、第1実施形態と同様に、基準副噴射タイミングが副噴射進角量だけ進角せしめられ、図15(B)に示されているように主噴射Imが基準主噴射タイミングTmbで実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isがこの進角後の基準副噴射タイミング(Tsb−Ksa)で実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。一方、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準副噴射タイミングおよび基準主噴射タイミングが以下のように制御される。
すなわち、第2実施形態のリッチ燃焼では、基準主噴射燃料量と進角後の基準副噴射タイミングとに応じて進角後の基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度となるタイミングまで基準主噴射タイミングを遅角させる量(以下「主噴射遅角量」という)を実験等によって予め求め、この主噴射遅角量Kmdを図16(A)に示されているように基準主噴射燃料量Qmbと進角後の基準副噴射タイミングTsaとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。一方、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに応じて主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが許容可能な値よりも大きくなってしまう主噴射遅角量、すなわち、主噴射遅角量上限値を実験等によって予め求め、この主噴射遅角量上限値Kmd(max)を図16(B)に示されているように基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射燃料量と進角後の基準副噴射タイミングとに基づいて図16(A)のマップから主噴射遅角量が読み込まれると共に基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに基づいて図16(B)のマップから主噴射遅角量上限値が読み込まれる。そして、主噴射遅角量が主噴射遅角量上限値よりも小さいときには、基準主噴射タイミングが主噴射遅角量だけ遅角せしめられると共に基準副噴射タイミングが副噴射進角量上限値だけ進角せしめられ、図15(C)に示されているように主噴射Imが遅角後の基準主噴射タイミング(Tmb+Kmd)で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが進角後の基準副噴射タイミング(Tsb−Ksa(max))で実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。一方、主噴射遅角量が主噴射遅角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射タイミングが主噴射遅角量上限値だけ遅角せしめられると共に基準副噴射タイミングが副噴射進角量上限値だけ進角せしめられ、図15(D)に示されているように主噴射Imが遅角後の基準主噴射タイミング(Tmb+Kmd(max))で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが進角後の基準副噴射タイミング(Tsb−Ksa(max))で実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。
一方、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の上限温度、すなわち、副噴射トルク許容温度よりも高いときには、第1実施形態と同様に、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに基づいて図8(A)のマップから副噴射遅角量が読み込まれると共に基準副噴射タイミングに基づいて図8(B)のマップから副噴射遅角量上限値が読み込まれる。そして、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも小さいときには、第1実施形態と同様に、基準副噴射タイミングが副噴射遅角量だけ遅角せしめられ、図15(E)に示されているように主噴射Imが基準主タイミングTmbで実行されて基準主燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが遅角後の基準副噴射タイミング(Tsb+Ksd)で実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。一方、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きいときには、基準副噴射タイミングおよび基準主噴射タイミングが以下のように制御される。
すなわち、第2実施形態のリッチ燃焼では、基準主噴射燃料量と遅角後の基準副噴射タイミングとに応じて遅角後の基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射トルク許容温度となるタイミングまで基準主噴射タイミングを進角させる量(以下「主噴射進角量」という)を実験等によって予め求め、この主噴射進角量Kmaを図17(A)に示されているように基準主噴射燃料量Qmbと遅角後の基準副噴射タイミングTsdとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。一方、基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに応じて主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが許容可能な値よりも大きくなってしまう主噴射進角量、すなわち、主噴射進角量上限値を実験等によって予め求め、この主噴射進角量上限値Kma(max)を図17(B)に示されているように基準主噴射タイミングTmbと基準主噴射燃料量Qmbとの関数のマップの形でECU70に記憶させておく。そして、副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射燃料量と遅角後の基準副噴射タイミングとに基づいて図17(A)のマップから主噴射進角量が読み込まれると共に基準主噴射タイミングと基準主噴射燃料量とに基づいて図17(B)のマップから主噴射進角量上限値が読み込まれる。そして、主噴射進角量が主噴射進角量上限値よりも小さいときには、基準主噴射タイミングが主噴射進角量だけ進角せしめられると共に基準副噴射タイミングが副噴射遅角量上限値だけ遅角せしめられ、図15(F)に示されているように主噴射Imが進角後の基準主噴射タイミング(Tmb−Kma)で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが遅角後の基準副噴射タイミング(Tsb+Ksd(max))で実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。一方、主噴射進角量が主噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射タイミングが主噴射進角量上限値だけ進角せしめられると共に基準副噴射タイミングが副噴射遅角量上限値だけ遅角せしめられ、図15(G)に示されているように主噴射Imが進角後の基準主噴射タイミング(Tmb−Kma(max))で実行されて基準主噴射燃料量Qmbの燃料が噴射されると共に副噴射Isが遅角後の基準副噴射タイミング(Tsb+Kmd(max))で実行されて基準副噴射燃料量Qsbの燃料が噴射される。
次に、第2実施形態に従って燃料噴射制御を実行するフローチャートの一例について図18〜図22を参照して説明する。なお、図18〜図22のステップ200〜ステップ238は図10〜図14のステップ100〜ステップ138に対応し、図18〜図22のステップ244〜ステップ254は図10〜図14のステップ144〜ステップ154に対応しているのでこれらのステップの説明は省略し、図18〜図22のステップ239〜ステップ243およびステップ255〜ステップ263について説明する。
図21のステップ239では、ステップ237で読み込まれた主噴射遅角量Kmdがステップ238で読み込まれた主噴射遅角量上限値Kmd(max)よりも小さい(Kmd<Kmd(max))か否かが判別される。ここで、Kmd<Kmd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ240以降のステップに進む。ステップ240では、ステップ204で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ241において、ステップ214で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ242において、ステップ205で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ237で読み込まれた主噴射遅角量Kmdだけ遅角されたタイミング(Tmb+Kmd)が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ243において、ステップ215で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbがステップ225で読み込まれた副噴射進角量上限値Ksa(max)だけ進角されたタイミング(Tsb−Ksa(max))が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ239において、Kmd≧Kmd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ244以降のステップに進む。ステップ244では、ステップ204で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ245において、ステップ214で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ246において、ステップ205で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ238で読み込まれた主噴射遅角量上限値Kmd(max)だけ遅角されたタイミング(Tmb+Kmd(max))が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ247において、ステップ215で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbがステップ225で読み込まれた副噴射進角量上限値Ksa(max)だけ進角されたタイミング(Tsb−Ksa(max))が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、図22のステップ255では、ステップ253で読み込まれた主噴射進角量Kmaがステップ254で読み込まれた主噴射進角量上限値Kma(max)よりも小さい(Kma<Kma(max))か否かが判別される。ここで、Kma<Kma(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ256以降のステップに進む。ステップ256では、ステップ204で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ257において、ステップ214で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ258において、ステップ205で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ253で読み込まれた主噴射進角量Kmaだけ進角されたタイミング(Tmb−Kma)が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ259において、ステップ225で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbがステップ227で読み込まれた副噴射遅角量上限値Ksd(max)だけ遅角されたタイミング(Tsb+Ksd(max))が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ255において、Kma≧Kma(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ260以降のステップに進む。ステップ260では、ステップ204で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ261において、ステップ214で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ262において、ステップ205で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ254で読み込まれた主噴射進角量上限値Kma(max)だけ進角されたタイミング(Tmb−Kma(max))が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ263において、ステップ215で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbがステップ227で読み込まれた副噴射遅角量上限値Ksd(max)だけ遅角されたタイミング(Tsb+Kmd(max))が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
ところで、上述した第1実施形態および第2実施形態のリッチ燃焼では、基準主噴射タイミングに対する主噴射遅角量が主噴射遅角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射タイミングが主噴射遅角量上限値だけ遅角される。しかしながら、これによっても副噴射が実行された時点の筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度に十分に達していない可能性がある。これに対し、副噴射を実行しなくても主噴射燃料量を基準主噴射燃料量よりも増大させて主噴射を実行すれば燃焼室から排出される排気ガスの温度を十分に上昇させることができると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチにすることができる。一方、上述した第1実施形態および第2実施形態のリッチ燃焼では、基準主噴射タイミングに対する主噴射進角量が主噴射進角量上限値よりも大きいときには、基準主噴射タイミングが主噴射進角量上限値だけ進角される。しかしながら、これによっても副噴射が実行された時点の筒内温度が副噴射トルク許容温度よりも低くなっていない可能性がある。これに対し、副噴射を実行せずに主噴射燃料量を基準主噴射燃料量よりも増大させて主噴射を実行すれば内燃機関全体のトルク変動量を許容可能な量に抑制しつつ燃焼室から排出される排気ガスの温度を十分に上昇させることができると共に燃焼室から排出される排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチにすることができる。そこで、リッチ燃焼が実行されるときに以下のようにして燃料噴射を制御するようにしてもよい。
すなわち、本実施形態(以下「第3実施形態」という)のリッチ燃焼では、第1実施形態または第2実施形態のリッチ燃焼において、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の下限温度、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度よりも低いときに副噴射進角量が副噴射進角量上限値よりも大きく且つ主噴射遅角量が主噴射遅角量上限値よりも大きいときには、副噴射が実行されずに基準主噴射燃料量が増大せしめられて基準主噴射タイミングで主噴射が実行される。なお、この場合に基準主噴射燃料量の増大量は内燃機関のトルク変動量が許容可能な量に収まる量に設定される。
同様に、第1実施形態または第2実施形態のリッチ燃焼において、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が上記所定温度範囲の上限温度、すなわち、副噴射トルク許容温度よりも高いときに副噴射遅角量が副噴射遅角量上限値よりも大きく且つ主噴射進角量が主噴射進角量上限値よりも大きいときには、副噴射が実行されずに基準主噴射燃料量が増大せしめられて基準主噴射タイミングで主噴射が実行される。なお、この場合に基準主噴射燃料量の増大量は内燃機関のトルク変動量が許容可能な量に収まる量に設定される。
次に、第3実施形態に従って燃料噴射制御を実行するフローチャートの一例について図23〜図27を参照して説明する。なお、図23〜図27のステップ300〜ステップ338は図10〜図14のステップ100〜ステップ138に対応し、図23〜図27のステップ344〜ステップ354は図10〜図14のステップ144〜ステップ154に対応しているのでこれらのステップの説明は省略し、図23〜図27のステップ339〜ステップ343およびステップ355〜ステップ363について説明する。
図26のステップ339では、ステップ337で読み込まれた主噴射遅角量Kmdがステップ338で読み込まれた主噴射遅角量上限値Kmd(max)よりも小さい(Kmd<Kmd(max))か否かが判別される。ここで、Kmd<Kmd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ340以降のステップに進む。ステップ340では、ステップ304で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ341において、ステップ314で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ342において、ステップ305で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ337で読み込まれた主噴射遅角量Kmdだけ遅角されたタイミング(Tmb+Kmd)が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ343において、ステップ315で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbがステップ325で読み込まれた副噴射進角量上限値Ksa(max)だけ進角されたタイミング(Tsb−Ksa(max))が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ339において、Kmd≧Kmd(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ344以降のステップに進む。ステップ344では、ステップ204で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが所定の量ΔQだけ増大せしめられた量(Qmb+ΔQ)が主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ345において、副噴射燃料量Qsに零が入力される。次いで、ステップ346において、ステップ205で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbが主噴射タイミングTmに入力され、ルーチンが終了する。この場合、副噴射は実行されない。
一方、図27のステップ355では、ステップ353で読み込まれた主噴射進角量Kmaがステップ354で読み込まれた主噴射進角量上限値Kma(max)よりも小さい(Kma<Kma(max))か否かが判別される。ここで、Kma<Kma(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ356以降のステップに進む。ステップ356では、ステップ304で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ357において、ステップ314で読み込まれた基準副噴射燃料量Qsbが副噴射燃料量Qsに入力される。次いで、ステップ358において、ステップ305で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbがステップ353で読み込まれた主噴射進角量Kmaだけ進角されたタイミング(Tmb−Kma)が主噴射タイミングTmに入力され、次いで、ステップ359において、ステップ225で読み込まれた基準副噴射タイミングTsbがステップ327で読み込まれた副噴射遅角量上限値Ksd(max)だけ遅角されたタイミング(Tsb+Ksd(max))が副噴射タイミングTsに入力され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ355において、Kma≧Kma(max)であると判別されたときには、ルーチンはステップ360以降のステップに進む。ステップ360では、ステップ304で読み込まれた基準主噴射燃料量Qmbが所定の量ΔQだけ増大せしめられた量(Qmb+ΔQ)が主噴射燃料量Qmに入力され、次いで、ステップ361において、副噴射燃料量Qsに零が入力される。次いで、ステップ362において、ステップ305で読み込まれた基準主噴射タイミングTmbが主噴射タイミングTmに入力され、ルーチンが終了する。この場合、副噴射は実行されない。
なお、上述した実施形態では、基準副噴射タイミングを進角させる場合、基準副噴射タイミングを副噴射進角量だけ進角させるか否かを判断するパラメータとして、基準副噴射タイミングを進角させたときに蓄圧室から燃料噴射弁の燃料噴射孔までの間の燃料通路内に発生する燃料のうねり、すなわち、燃料の脈動が副噴射に対して影響する度合いが採用されている。しかしながら、このパラメータ以外にも基準副噴射タイミングの進角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータがあれば該パラメータが採用されてもよい。したがって、広義には、上述した実施形態において基準副噴射タイミングを副噴射進角量だけ進角させるか否かを判断するパラメータとして、基準副噴射タイミングの進角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータが採用されればよいと言える。
また、上述した実施形態では、基準副噴射タイミングを遅角させる場合、基準副噴射タイミングを副噴射遅角量だけ遅角させるか否かを判断するパラメータとして、基準副噴射タイミングを副噴射遅角量だけ遅角させたときに副噴射燃料が燃焼室内の潤滑油によって希釈される度合いが採用されている。しかしながら、このパラメータ以外にも基準副噴射タイミングの遅角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータがあれば該パラメータが採用されてもよい。したがって、広義には、上述した実施形態において基準副噴射タイミングを副噴射遅角量だけ遅角させるか否かを判断するパラメータとして、基準副噴射タイミングの遅角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータが採用されればよいと言える。
また、上述した実施形態では、基準主噴射タイミングを遅角させる場合、基準主噴射タイミングを主噴射遅角量だけ遅角させるか否かを判断するパラメータとして、基準主噴射タイミングを遅角させたときに主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが減少する度合いが採用されている。しかしながら、このパラメータ以外にも基準主噴射タイミングの遅角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータ、例えば、主噴射燃料の失火が生じるか否か、或いは、主噴射燃料の燃焼によって生成されるスモーク、すなわち、煤の量、或いは、セタン価が変化してしまうか否か、が採用されてもよい。したがって、広義には、上述した実施形態において基準主噴射タイミングを主噴射遅角量だけ遅角させるか否かを判断するパラメータとして、基準主噴射タイミングの遅角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータが採用されればよいと言える。
また、上述した実施形態では、基準主噴射タイミングを進角させる場合、基準主噴射タイミングを主噴射進角量だけ進角させるか否かを判断するパラメータとして、基準主噴射タイミングを進角させたときに主噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが増加する度合いが採用されている。しかしながら、このパラメータ以外にも基準主噴射タイミングの進角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータが採用されてもよい。したがって、広義には、上述した実施形態において基準主噴射タイミングを主噴射進角量だけ進角させるか否かを判断するパラメータとして、基準主噴射タイミングの進角の影響を受ける内燃機関に関連するパラメータであって考慮すべきパラメータが採用されればよいと言える。
また、上述した実施形態では、副噴射燃料燃焼可能温度を下限温度とすると共に副噴射トルク許容温度を上限温度とする温度範囲を所定温度範囲とし、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が所定温度範囲の下限温度よりも低いときには副噴射が実行されずに基準主噴射タイミングにおいて主噴射が実行されると共に主噴射燃料量が増大せしめられる場合、すなわち、第3実施形態のリッチ燃焼を除き、副噴射が実行された時点の筒内温度が所定温度範囲内の温度になるように基準副噴射タイミングが進角せしめられ、或いは、基準主噴射タイミングが遅角せしめられ、或いは、基準副噴射タイミングが進角せしめられると共に基準主噴射タイミングが遅角せしめられる。しかしながら、副噴射が実行された時点の筒内温度が所定温度範囲の下限温度、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度になっていれば副噴射燃料が確実に燃焼せしめられると共に副噴射トルクが許容可能な値よりも小さくなっていることを考慮すれば、副噴射が実行された時点の筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度になっていればよい。したがって、広義には、上述した実施形態において基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも低いときに副噴射が実行された時点の筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度になるように基準副噴射タイミングが進角せしめられ、或いは、基準主噴射タイミングが遅角せしめられ、或いは、基準副噴射タイミングが進角せしめられると共に基準主噴射タイミングが遅角せしめられるようにしてもよいと言える。すなわち、上記所定温度範囲の上限温度がその下限温度に一致させられていてもよい。
同様に、上述した実施形態では、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が所定温度範囲の上限温度よりも高いときには副噴射が実行されずに基準主噴射タイミングにおいて主噴射が実行されると共に主噴射燃料量が増大せしめられる場合を除き、副噴射が実行された時点の筒内温度が所定温度範囲内の温度になるように基準副噴射タイミングが遅角せしめられ、或いは、基準主噴射タイミングが進角せしめられ、或いは、基準副噴射タイミングが遅角せしめられると共に基準主噴射タイミングが進角せしめられる。しかしながら、副噴射が実行された時点の筒内温度が所定温度範囲の下限温度、すなわち、副噴射燃料燃焼可能温度になっていれば副噴射燃料の燃焼によって発生するトルクが許容可能な値よりも小さくなっていると共に副噴射燃料が確実に燃焼せしめられることを考慮すれば、副噴射が実行された時点の筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度になっていればよい。したがって、広義には、上述した実施形態において基準副噴射タイミングにおける筒内温度が副噴射燃料燃焼可能温度よりも高いときに副噴射が実行された時点の筒内温度が副噴射燃料可能温度になるように基準副噴射タイミングが遅角せしめられ、或いは、基準主噴射タイミングが進角せしめられ、或いは、基準副噴射タイミングが遅角せしめられると共に基準主噴射タイミングが進角せしめられるようにしてもよいと言える。すなわち、上記所定温度範囲の上限温度がその下限温度に一致させられていてもよい。
また、上述した実施形態は、排気ガス中のNOxを浄化する排気浄化触媒の温度をSOx除去可能温度まで上昇させる場合に本発明を適用した実施形態である。しかしながら、排気ガス中のNOxを浄化する排気浄化触媒の温度をSOx除去可能温度まで上昇させる目的以外の目的で主噴射を実行すると共に副噴射を実行する場合もあり、この場合にも本発明は適用可能である。したがって、広義には、上述した実施形態は或る特定の目的で主噴射が実行されると共に副噴射が実行される場合において、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が所定温度範囲の下限温度よりも低いときに副噴射が実行された時点の筒内温度が所定温度範囲内の温度になるように基準副噴射タイミングが進角せしめられ、或いは、基準主噴射タイミングが遅角せしめられ、或いは、基準副噴射タイミングが進角せしめられると共に基準主噴射タイミングが遅角せしめられ、或いは、副噴射が実行されずに基準主噴射タイミングにおいて主噴射が実行されると共に主噴射燃料量が増大せしめられるものとも言える。
同様に、広義には、上述した実施形態は或る特定の目的で主噴射が実行されると共に副噴射が実行される場合において、基準副噴射タイミングにおける筒内温度が所定温度範囲の上限温度よりも高いときに副噴射が実行された時点の筒内温度が所定温度範囲内の温度になるように基準副噴射タイミングが遅角せしめられ、或いは、基準主噴射タイミングが進角せしめられ、或いは、基準副噴射タイミングが遅角せしめられると共に基準主噴射タイミングが進角せしめられ、或いは、副噴射が実行されずに基準主噴射タイミングにおいて主噴射が実行されると共に主噴射燃料量が増大せしめられるものとも言える。
また、上述した実施形態では、通常燃焼が実行されるときには主噴射のみが実行され、リッチ燃焼が実行されるときには主噴射および副噴射が実行される。しかしながら、上述した実施形態において、通常燃焼またはリッチ燃焼が実行されるときに主噴射が実行される直前のタイミングで燃料噴射弁から少量の燃料を噴射するいわゆるパイロット噴射が実行されてもよい。