JP4297894B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、気筒内に燃料を供給するとともに、燃焼により生成された既燃ガスの一部を気筒内に存在させるEGR動作をEGR装置によって実行する内燃機関の制御装置に関する。
従来、この種の内燃機関の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関は、燃料を気筒内に直接噴射する筒内噴射式のものであり、その排気管には、排ガスを浄化するためのNOx触媒が設けられている。また、この制御装置では、内燃機関の出力を得るための燃料噴射に加えて、膨張行程中に燃料を噴射する膨張行程噴射を実行する。これにより、排ガス中に未燃燃料を含ませ、排気管内で燃焼させることによって、NOx触媒をイオウ成分を放出可能な高温状態に昇温する。また、排ガスがリッチ状態になるように、これらの出力用および膨張行程時用の総噴射燃料量を決定する。以上の2つの制御により、NOx触媒からイオウ成分を放出させることによって、その排ガス浄化能力が低下するのを防止するようにしている。
しかし、上記の従来の制御装置を、排ガスの一部を吸気管内に還流させるEGR装置と組み合わせ、上記の膨張行程噴射とEGR装置による排ガスの還流動作を並行して行った場合には、次のような不具合が生じる。すなわち、この場合には、膨張行程噴射によって排ガス中に含ませられた未燃燃料の一部は、EGR装置の還流動作に伴って吸気管内に還流した後、気筒内に流入するため、その分、気筒内で燃焼する燃料の量が実質的に増加する。これに対して、この従来の制御装置では、出力用および膨張行程時用の総噴射燃料量を排ガスがリッチ状態になるように決定するに過ぎないので、気筒内で燃焼する燃料量が実質的に増加することによって、内燃機関の出力トルクが変動し、ドライバビリティが悪化するおそれがある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、膨張行程から排気行程までの間の所定の期間における気筒内への燃料供給とEGR装置によるEGR動作が並行して行われる場合でも、安定した内燃機関の出力トルクを得ることができ、それにより、ドライバビリティを向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
特開平11−107813号公報
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、気筒3a内に燃料を供給するとともに、燃焼により生成された既燃ガスの一部を気筒3a内に存在させるEGR動作をEGR装置16によって実行する内燃機関3の制御装置1であって、EGR装置16は、内燃機関3から排出された既燃ガスの一部をEGR通路(実施形態における(以下、本項において同じ)EGR管16a)を介して気筒3a内に還流させる外部EGR動作を実行する外部EGR装置(EGR装置16)で構成されており、内燃機関3の出力を得るために気筒3a内に供給される第1供給燃料の量(通常時用の要求主噴射燃料量TCYL_2ndt、膨張行程噴射時用の要求主噴射燃料量TCYL_main)を決定する第1供給燃料量決定手段(ECU2、ステップ3、ステップ25)と、内燃機関3の膨張行程から排気行程までの間の所定の期間に気筒3a内に供給される第2供給燃料の量(膨張行程噴射燃料量TCYL_3rd)を決定する第2供給燃料量決定手段(ECU2、ステップ32)と、供給された第2供給燃料のうち、EGR装置16によるEGR動作に伴って気筒3a内に存在させられる燃料の量を、付加燃料量(還流燃料量TEXJOUT)として算出する付加燃料量算出手段(ECU2、ステップ16)と、算出された付加燃料量に基づいて、決定された第1供給燃料量を補正する補正手段(ECU2、ステップ4、7)と、気筒3a内に供給された第2供給燃料が気筒3a内に存在させられるまでの第2供給燃料の動特性を表す動特性パラメータ(直接流入割合α、間接流入割合β)を算出する動特性パラメータ算出手段(ECU2、ステップ14、15、図7および図8)と、を備え、付加燃料量算出手段は、算出された動特性パラメータに基づいて、付加燃料量を算出し(ステップ16)、動特性パラメータは、EGR通路内に流入した第2供給燃料の量のうちの、気筒3a内に直接還流する燃料量の割合を表す直接流入割合α、およびEGR通路内に滞留した第2供給燃料の量のうちの、気筒3a内に還流する燃料量の割合を表す間接流入割合βの双方を含むことを特徴とする。
この内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の出力を得るために気筒内に供給される第1供給燃料の量が、第1供給燃料量決定手段によって決定され、膨張行程から排気行程までの間の所定の期間に気筒内に供給される第2供給燃料の量が、第2供給燃料量決定手段によって決定される。また、この第2供給燃料のうち、EGR装置によるEGR動作に伴って気筒内に存在させられる燃料の量が、付加燃料量として付加燃料量算出手段によって算出され、算出された付加燃料量に基づいて、第1供給燃料量が補正手段によって補正される。
このように、出力を得るために供給される第1供給燃料量を、EGR動作に伴って気筒内に存在させられる付加燃料量に応じて補正するので、この付加燃料量の分、内燃機関で燃焼する燃料量が実質的に増加するという事態を回避でき、これを適切に制御できる。したがって、膨張行程から排気行程までの間の所定の期間における燃料の供給とEGR装置によるEGR動作が並行して行われる場合でも、安定した内燃機関の出力トルクを得ることができ、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。
また、上述した構成によれば、動特性パラメータ算出手段によって、気筒内に供給された第2供給燃料が気筒内に存在させられるまでの第2供給燃料の動特性を表す動特性パラメータが算出され、算出された動特性パラメータに基づいて、付加燃料量が算出される。これにより、付加燃料量を、気筒内に存在させられるまでの第2供給燃料の実際の挙動に応じてきめ細かく適切に算出でき、したがって、上述した効果をより有効に得ることができる。
さらに、前述した構成によれば、EGR通路内に流入した第2供給燃料のうちの、気筒内に直接還流する燃料量の割合を表す直接流入割合、およびEGR通路内に滞留した第2供給燃料の量のうちの、気筒内に還流する燃料量の割合を表す間接流入割合の双方に基づいて、付加燃料量が算出される。本発明では、内燃機関から排出された既燃ガスの一部をEGR通路を介して気筒内に還流させるので、EGR通路内に流入した第2供給燃料の一部は、気筒内に直接還流し、残りのものは、EGR通路内に一旦滞留した後、気筒内に還流する。
本発明によれば、上述したように、第2供給燃料の直接流入割合や間接流入割合に基づき、付加燃料量を算出するので、外部EGR動作が並行して行われる場合でも、上記のような第2供給燃料の実際の挙動を反映させながら、付加燃料量の算出を適切に行うことができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置1において、動特性パラメータは、第2供給燃料が気筒内に還流するまでのむだ時間τをさらに含み、付加燃料量算出手段は、EGR通路内に流入した第2供給燃料の量である流入燃料量TEXJINを、むだ時間τ前に決定された第2供給燃料量から、EGR通路内に流入しない第2供給燃料の量を差し引くことによって算出する(ステップ13、式(1))とともに、算出された流入燃料量TEXJINにさらに基づいて、付加燃料量を算出する(ステップ16)ことを特徴とする。
この構成によれば、動特性パラメータは、第2供給燃料が気筒内に還流するまでのむだ時間をさらに含んでいる。また、EGR通路に流入した第2供給燃料の量である流入燃料量が、むだ時間前に決定された第2供給燃料量から、EGR通路内に流入しない第2供給燃料の量を差し引くことによって算出されるとともに、算出された流入燃料量にさらに基づいて、付加燃料量が算出される。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本実施形態による制御装置を適用した内燃機関3を概略的に示している。内燃機関(以下「エンジン」という)3は、車両(図示せず)に搭載された、例えば直列4気筒タイプのガソリンエンジンである。
各気筒3aのピストン3bとシリンダヘッド3cとの間には、燃焼室3d(1組のみ図示)が形成されている。また、シリンダヘッド3cには、吸気管4および排気管5が接続されるとともに、燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)6および点火プラグ7(図2参照)が、燃焼室3dに臨むように取り付けられており、インジェクタ6は、気筒3a内の点火プラグ7の近傍に、燃料を直接噴射するように構成されている。すなわち、エンジン3は、スプレーガイデッド式の直噴エンジンである。また、インジェクタ6の開弁時間および開弁タイミングと点火プラグ7の点火時期は、制御装置1のECU2からの駆動信号によって制御される。
エンジン3には、クランク角センサ21および水温センサ22が設けられている。クランク角センサ21は、マグネットロータおよびMREピックアップ(いずれも図示せず)で構成されており、クランクシャフト3eの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号を、ECU2に出力する。
このCRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに出力される。ECU2は、CRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを求める。上記のTDC信号は、各気筒3aのピストン3bが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、4気筒タイプの本例では、クランク角180゜ごとに出力される。
上記の水温センサ22は、エンジン3のシリンダブロック3f内を循環する冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
吸気管4には、上流側から順に、エアーフローセンサ23、スロットル弁機構8および吸気温センサ24が、それぞれ設けられている。エアーフローセンサ23は、吸気管4内を流れる新気の流量(以下「新気流量」という)GINを検出し、その検出信号をECU2に出力する。吸気温センサ24は、気筒3aに吸入される空気の温度(以下「吸気温」という)TAを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
スロットル弁機構8は、スロットル弁8aおよびこれを開閉駆動するTHアクチュエータ8bを有している。スロットル弁8aは、吸気管4内に回動自在に設けられており、その回動に伴う開度の変化により吸気管4内の新気流量GINを変化させる。THアクチュエータ8bは、モータにギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2からの駆動信号で駆動され、それにより、スロットル弁8aの開度(以下「スロットル弁開度」という)THが制御される。このスロットル弁開度THは、スロットル弁開度センサ25によって検出され、その検出信号はECU2に出力される。
排気管5には、上流側から順に、LAFセンサ26および触媒装置15がそれぞれ設けられている。LAFセンサ26は、理論空燃比よりもリッチな領域から極リーンまでの広範囲な空燃比の領域において、排気管5内を流れる排ガス中の酸素濃度をリニアに検出し、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、このLAFセンサ26で検出された酸素濃度に基づいて、燃焼室3dで燃焼した混合気の実際の空燃比を表す検出空燃比KACTを算出する。この場合、検出空燃比KACTは当量比として算出される。また、触媒装置15は、三元触媒およびNOx吸着触媒を組み合わせたものであり、エンジン3の排ガス中のNOx、COおよびHCを浄化する。
また、エンジン3には、EGR装置16(外部EGR装置)が設けられている。このEGR装置16は、燃焼によって生成されるNOxの量を低減するために、排気管5内の排ガスを吸気管4内に還流させる外部EGR動作を実行するものであり、排気管5の触媒装置15よりも上流側と吸気管4のスロットル弁機構8よりも下流側に接続されたEGR管16a(EGR通路)と、EGR管16aを開閉するEGR制御弁16bを有している。
EGR制御弁16bは、リニア電磁弁タイプのもので、ECU2による制御に基づいて供給される電流のデューティ比EGR_DUTYに応じて、そのリフト(以下「EGRリフト」という)がリニアに変化し、それにより、EGR管16aの開度すなわち排気還流量(以下「外部EGR量」という)を変化させる。また、EGR制御弁16bには、EGRリフトセンサ27が取り付けられており、EGRリフトセンサ27は、EGR制御弁16bの実際のEGRリフトLACTを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
ECU2にはさらに、大気圧センサ28から、大気圧PAを表す検出信号が、アクセル開度センサ29から、アクセルペダルの操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、それぞれ出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。また、ECU2は、前述した各種のセンサ21〜29からの検出信号に応じ、エンジン3の運転状態を判定するとともに、判定した運転状態に応じて、エンジン3の燃焼モードを決定するとともに、決定された燃焼モードに従って、膨張行程噴射を含むインジェクタ6の燃料噴射制御処理などを実行する。なお、本実施形態では、ECU2は、第1供給燃料量決定手段、第2供給燃料量決定手段、付加燃料量算出手段、補正手段、および動特性パラメータ算出手段に相当する。
上記の燃焼モードは、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて決定され、原則として、低〜中負荷運転時には成層燃焼モードに、それ以外の運転時には均一燃焼モードにそれぞれ決定される。また、両燃焼モード間の切換時には、2回噴射燃焼モードに決定される。なお、要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって算出される。
上記の成層燃焼モードでは、燃料噴射を圧縮行程中に行うことによって、成層燃焼が行われる。また、成層燃焼モードでの混合気の空燃比A/Fは、スロットル弁8aをほぼ全開状態に制御することにより、理論空燃比よりも極めてリーンな空燃比A/F(例えば27〜60)に制御される。一方、均一燃焼モードでは、燃料噴射を吸気行程中に行うことによって、均一燃焼が行われる。この場合の空燃比A/Fは、成層燃焼モード時と比較して、スロットル弁8aを小さな開度に制御し、新気流量GINを小さくすることによって、リッチな空燃比A/F(例えば12〜22)に制御される。また、2回噴射燃焼モードでは、原則として1燃焼サイクルの吸気行程中と圧縮行程中の2回に分けて、燃料が噴射され、成層燃焼モードよりもリッチな空燃比A/F(例えば12〜22)で燃焼が行われる。
また、前記膨張行程噴射は、触媒装置15の触媒を昇温し、活性化するために行われるものであり、膨張行程中に燃料をインジェクタ6から気筒3a内に噴射することにより、未燃燃料を排ガス中に含ませ、触媒装置15の触媒で燃焼させることによって、触媒の活性化が行われる。
また、ECU2は、外部EGR量を制御する。具体的には、まず、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、目標EGR量マップ(図示せず)を検索することによって目標EGR量を算出する。そして、算出した目標EGR量に基づいて、EGR制御弁16bに供給する電流のデューティ比EGR_DUTYを算出する。これにより、外部EGR量が目標EGR量に制御される。
この目標EGR量マップでは、目標EGR量は、エンジン回転数NEが第1所定回転数NE1(例えば1000rpm)以下の極低回転域では、小さな値に設定され、第2および第3の所定回転数NE2,NE3(例えば1500、2000rpm)の間の低〜中回転域では、大きな値に設定され、第4所定回転数NE4(例えば3500rpm)以上の中〜高回転域では、値0に設定されている。これは、極低回転域では、燃焼が安定していないので、多量の外部EGR量の導入による燃焼のさらなる不安定化を防止するためであり、低〜中回転域では、燃焼が安定しているので、多量の外部EGR量の導入によって、NOxの抑制を図るためであり、中〜高回転域では、エンジン3の高い出力を安定して確保するためである。また、目標EGR量は、要求トルクPMCMDが大きいほど、より小さな値に設定されている。これは、エンジン3の高い出力を安定して確保するためである。
次に、図3を参照しながら、インジェクタ6の燃料噴射を制御する処理について説明する。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。まず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、還流燃料量TEXJOUTを算出する。この還流燃料量TEXJOUTは、膨張行程噴射によって排ガス中に含まれた未燃燃料のうち、EGR装置16による外部EGR動作に伴って気筒3a内に還流する燃料の量を表す。
図4は、この還流燃料量TEXJOUTの算出処理を示している。まず、ステップ11では、触媒流入割合KCATを算出する。この触媒流入割合KCATは、膨張行程噴射された燃料量(以下「膨張行程噴射燃料量」という)のうちの、触媒装置15に流入する燃料量の割合を表す。具体的には、触媒流入割合KCATは、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、図5に示すKCATマップを検索することによって算出される。
このKCATマップでは、触媒流入割合KCATは、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに対し、前述した目標EGR量とは逆の傾向に設定されている。具体的には、前述したエンジン3の極低回転域では、1.0未満の比較的大きな値に設定され、低〜中回転域では、最も小さな値に設定され、中〜高回転域では、値1.0に設定され、また、PMCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、前述したように、目標EGR量は、EGR管16aを介して気筒3a内に還流する排ガスの量の目標値であるのに対し、触媒流入割合KCATは、膨張行程噴射燃料量のうちの、EGR管16a内に流入しない残りの排ガスとともに触媒装置15に流入する燃料量の割合を表すためである。
次いで、むだ時間τを算出する(ステップ12)。このむだ時間τは、膨張行程噴射された燃料が、その噴射後、EGR管16a内に流入するまでのむだ時間を、その間に発生するTDC信号の数で表したものである。具体的には、むだ時間τは、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、図6に示すτマップを検索することによって算出される。
このマップでは、むだ時間τは、エンジン回転数NEが低いほど、また、要求トルクPMCMDが大きいほど、より小さな値に設定されている。これは、エンジン回転数NEが低いほど、TDC信号の発生間隔が長くなるので、排ガスの流速を一定とすれば、同じむだ時間に対して、TDC信号の発生回数が少なくなるためである。また、要求トルクPMCMDが大きいほど、排ガスの流速がより高くなるためである。
次に、前記ステップ11および12でそれぞれ算出した触媒流入割合KCATおよびむだ時間τを用い、次式(1)によって、流入燃料量TEXJINを算出する(ステップ13)。この流入燃料量TEXJINは、膨張行程噴射燃料量のうち、EGR管16aに流入した燃料量(以下「流入燃料量」という)を表し、TEXJIN(n)は、その今回値である。
TEXJIN(n)=(1−KCAT)・TCYL_3rd(n−τ)
……(1)
ここで、TCYL_3rdは、実際の膨張行程噴射燃料量であり、後述するようにして算出される。また、記号(n)付きの各離散データは、TDC信号の発生ごとに算出またはサンプリングされたデータであることを示している。なお、以下の説明では、今回値であることを示す(n)を適宜、省略する。
前述した触媒流入割合KCATの定義から、式(1)中の(1−KCAT)は、膨張行程噴射燃料量に対する流入燃料量の割合を表す。また、前述したむだ時間τの定義から、膨張行程噴射燃料量TCYL_3rd(n−τ)は、むだ時間τ前に膨張行程噴射された実際の燃料量を表す。したがって、式(1)によって、今回の流入燃料量TEXJIN(n)を適切に算出することができる。
次いで、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、図7に示すαマップを検索することによって、直接流入割合αを算出する(ステップ14)。この直接流入割合αは、流入燃料量のうちの、気筒3aに直接流入する燃料量の割合を表す。
このαマップでは、直接流入割合αは、エンジン回転数NEが高いほど、また、要求トルクPMCMDが大きいほど、より小さな値に設定されている。これは、NEが高いほど、また、PMCMDが大きいほど、新気流量GINが大きいことから、EGR管16aに流入した燃料が気筒3aに直接流入しにくいためである。
次に、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、図8に示すβマップを検索することによって、間接流入割合βを算出する(ステップ15)。この間接流入割合βは、EGR管16aに流入した後、気筒3aに直接流入せずに、EGR管16a内や吸気管4内に滞留している燃料量(以下「滞留燃料量」という)のうちの、気筒3aに流入する燃料量の割合を表す。
このβマップでは、間接流入割合βは、エンジン回転数NEが高いほど、また、要求トルクPMCMDが大きいほど、より小さな値に設定されている。これは、NEが高いほど、また、PMCMDが大きいほど、新気流量GINがより大きいことから、EGR管16a内などに滞留している燃料が気筒3aに流入しにくいためである。
次いで、前記ステップ13〜15でそれぞれ算出した流入燃料量TEXJIN(n)、直接流入割合αおよび間接流入割合βを用い、次式(2)によって、還流燃料量TEXJOUTを算出する(ステップ16)。
TEXJOUT(n)=α・TEXJIN(n)+β・TEXJ(n−1)
……(2)
ここで、TEXJは滞留燃料量である。
次に、滞留燃料量の今回値TEXJ(n)を、その前回値TEXJ(n−1)、流入燃料量TEXJIN(n)、直接流入割合αおよび間接流入割合βを用い、次式(3)によって算出し(ステップ17)、本処理を終了する。
TEXJ(n)=(1−α)・TEXJIN(n)
+(1−β)・TEXJ(n−1) ……(3)
前述した直接流入割合αおよび間接流入割合βの定義から明らかなように、式(3)中の(1−α)・TEXJIN(n)は、今回の流入燃料量TEXJIN(n)のうち、EGR管16a内などに滞留する滞留燃料量を表し、(1−β)・TEXJ(n−1)は、前回の滞留燃料量TEXJ(n−1)のうち、引き続き滞留する滞留燃料量を表す。したがって、式(3)によって、今回の滞留燃料量TEXJ(n)を適切に算出することができる。
図3に戻り、前記ステップ1に続くステップ2では、膨張行程噴射フラグF_EXEMが「1」であるか否かを判別する。この膨張行程噴射フラグF_EXEMは、膨張行程噴射の実行条件が成立しているときに、「1」にセットされるものである。この実行条件は、成層燃焼モード中であって、触媒装置15の触媒の推定温度が第1所定温度(例えば500℃)以下のときに成立していると判定される。なお、この触媒の温度の推定は、エンジン回転数NEや要求トルクPMCMDに基づいて行われる。さらに、膨張行程噴射は、触媒の推定温度が第1所定温度よりも高い第2所定温度(例えば600℃)に達したとき、または、膨張行程噴射の開始後、所定時間(例えば1sec)が経過したときに終了し、それに伴い、膨張行程噴射フラグF_EXEMが「0」にリセットされる。
上記ステップ2の答がNOで、膨張行程噴射の実行条件が成立していないときには、膨張行程噴射を行わない通常運転時用の要求主噴射燃料量TCYL_2ndtを次式(4)によって算出する(ステップ3)。この要求主噴射燃料量TCYL_2ndtは、通常運転時に、エンジン3の所要の出力や排ガス特性などを得るために燃焼させるべき燃料の量である。
TCYL_2ndt=TIM・KCMD・KAF・KTOTAL ……(4)
ここで、TIM、KCMD、KAFおよびKTOTALはそれぞれ、基本燃料噴射量、目標空燃比、空燃比補正係数および総補正係数である。なお、基本燃料噴射量TIMは、新気流量GINに応じて、目標空燃比KCMDは、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、それぞれ算出される。空燃比補正係数KAFは、検出空燃比KACTが目標空燃比KCMDになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって算出される。総補正係数KTOTALは、エンジン水温TW、吸気温TAおよび大気圧PAなどに応じて算出される。
次いで、算出した要求主噴射燃料量TCYL_2ndtと前記ステップ1で算出した還流燃料量TEXJOUTを用い、次式(5)によって、実主噴射燃料量TCYL_2ndを算出する(ステップ4)。
TCYL_2nd=TCYL_2ndt−TEXJOUT ……(5)
インジェクタ6の開弁時間および開弁タイミングは、算出した実主噴射燃料量TCYL_2ndに従って制御される。
次に、膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdを値0に設定し(ステップ5)、本処理を終了する。これにより、膨張行程噴射が停止される。
一方、前記ステップ2の答がYES(F_EXEM=1)で、膨張行程噴射の実行条件が成立しているときには、膨張行程噴射時用の要求主噴射燃料量TCYL_mainを算出する(ステップ6)。この要求主噴射燃料量TCYL_mainは、膨張行程噴射時に、エンジン3の所要の出力や排ガス特性などを得るために燃焼させるべき燃料の量である。
図9は、この要求主噴射燃料量TCYL_mainの算出処理を示している。まず、ステップ21では、膨張行程噴射フラグの前回値F_EXEMZが「0」であるか否かを判別する。この答がYESのとき、すなわち、今回が膨張行程噴射を開始した直後のループであるときには、要求トルクの前回値PMCMD(n−1)を、直前要求トルクPMEXEMINとして設定する(ステップ22)とともに、前回のループで算出された通常運転時用の要求主噴射燃料量TCYL_2ndtを、直前要求燃料量TCYLEXEMINとして設定し(ステップ23)、ステップ24に進む。一方、上記ステップ21の答がNOのときには、上記ステップ22および23をスキップし、ステップ24に進む。
このステップ24では、係数KNEを、エンジン回転数NEに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって算出する。このマップでは、係数KNEは、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されている
次いで、要求トルクPMCMD、上記ステップ22〜24でそれぞれ求めた直前要求トルクPMEXEMIN、直前要求燃料量TCYLEXEMINおよび係数KNEを用い、次式(6)によって、要求主噴射燃料量TCYL_mainを算出し(ステップ25)、本処理を終了する。
TCYL_main=(PMCMD−PMEXEMIN)・KNE
+TCYLEXEMIN ……(6)
このように、膨張行程噴射時用の要求主噴射燃料量TCYL_mainは、膨張行程噴射の開始直前の要求主噴射燃料量TCYL_2ndt(TCYLEXEMIN)および要求トルクPMCMD(PMEXEMIN)をベースとして、今回の要求トルクPMCMDに応じて算出される。
図3に戻り、前記ステップ6に続くステップ7では、算出した要求主噴射燃料量TCYL_mainおよび還流燃料量TEXJOUTを用い、次式(7)によって、実主噴射燃料量TCYL_2ndを算出する(ステップ7)。
TCYL_2nd=TCYL_main−TEXJOUT ……(7)
インジェクタ6の開弁時間および開弁タイミングは、算出した実主噴射燃料量TCYL_2ndに従って制御される。
次いで、膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdを算出し(ステップ8)、本処理を終了する。図10は、この膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdの算出処理を示している。まず、ステップ31では、ストイキ用燃料量TCYL_1sttを算出する。この算出は、前記ステップ3で用いた基本燃料噴射量TIMや総補正係数KTOTALを用い、次式(8)によって行われる。
TCYL_1stt=TIM・KREF・KTOTAL ……(8)
ここで、KREFは、前記ステップ3で用いた、空燃比を理論空燃比に制御しているときに学習された空燃比補正係数KAFの学習値である。この学習値KREFは、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに対応させて、ECU2のRAMに記憶されており、上記のストイキ用燃料量TCYL_1sttの算出には、そのときのエンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに対応した学習値KREFが用いられる。これにより、ストイキ用燃料量TCYL_1sttは、空燃比が理論空燃比になるように算出される。
次に、算出したストイキ用燃料量TCYL_1sttと、前記ステップ25で算出した要求主噴射燃料量TCYL_mainと、触媒流入割合KCATを用い、次式(9)によって、膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdを算出し(ステップ32)、本処理を終了する。以上のように膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdが算出されると、その分の燃料が膨張行程中に噴射されるように、インジェクタ6の開弁時間および開弁タイミングが制御され、それにより、膨張行程噴射が行われる。
TCYL_3rd=(TCYL_1stt−TCYL_main)
/KCAT ……(9)
膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdを上記のようにして算出するのは、次の理由による。すなわち、触媒15を速やかに昇温し、活性化するためには、できるだけ多くの燃料を触媒15で燃え残りを発生させずに完全に燃焼させるのが有効であり、そのためには、触媒15で燃料が燃焼した後の排ガスの酸素濃度が、理論空燃比の混合気が燃焼したときに生成される排ガスの酸素濃度(以下「ストイキ酸素濃度」という)になるように、触媒15で燃焼させる燃料量を決定するのが好ましい。
したがって、式(9)に示すように、膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdのうちの触媒15に流入する燃料量(TCYL_3rd・KCAT)と要求主噴射燃料量TCYL_mainとの総和が、ストイキ用燃料量TCYL_1sttになるように、膨張行程噴射燃料量TCYL_3rdを算出し、膨張行程噴射を行うことによって、膨張行程噴射した燃料が触媒15で燃焼した後の排ガスの酸素濃度を、ストイキ酸素濃度になるように制御することができる。
以上のように、本実施形態によれば、膨張行程噴射時に、要求主噴射燃料量TCYL_mainから還流燃料量TEXJOUTを減算することによって、実主噴射燃料量TCYL_2ndを算出するので、外部EGR動作が膨張行程噴射の実行中に行われた場合でも、安定したエンジン3の出力トルクを得ることができ、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。また、還流燃料量TEXJOUTを、むだ時間τ、直接流入割合αおよび間接流入割合βに応じて算出するので、この算出を、膨張行程噴射された燃料の実際の挙動を反映させながら、適切に行うことができる。
さらに、膨張行程噴射時以外の通常運転時に、要求主噴射燃料量TCYL_2ndtから還流燃料量TEXJOUTを減算することによって、実主噴射燃料量TCYL_2ndを算出する。これにより、膨張行程噴射の終了後、膨張行程噴射された燃料がEGR管16a内などに滞留し続けているような場合でも、エンジン3の出力トルクを適切に制御できる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、外部EGR装置として、EGR管16aを排気管5および吸気管4に接続したタイプのものを用いているが、排ガスをEGR管を介して還流させるのであれば、これに限らず、例えば、EGR管を排気管5および気筒3aに、または気筒3aおよび吸気管4に接続したタイプのものを用いてもよい。また、実施形態では、EGR装置として、排ガスの一部をEGR管16aを介して吸気管4内に還流させるEGR装置16を用いたが、これに代えて、エンジン3の排気弁9の閉弁タイミングを早めることなどによって、燃焼ガスの一部を燃焼室3d内に残留させる、いわゆる内部EGRタイプのものを用いてもよく、あるいは、外部および内部EGRを組み合わせて用いてもよい。
さらに、実施形態では、膨張行程噴射を、触媒装置15の触媒を活性化するために行っているが、膨張行程中に燃料を噴射するのであれば、他の目的のために行うものでもよい。また、実施形態では、膨張行程中に燃料を噴射する膨張行程噴射を行っているが、膨張行程から排気行程までの間の所定の期間に燃料を噴射してもよい。
さらに、実施形態では、むだ時間として、膨張行程噴射された燃料がその噴射後、EGR管16aに流入するまでのむだ時間τを用いているが、これに代えて、その噴射後、気筒3a内に還流するまでのむだ時間を用いてもよい。また、実施形態では、還流燃料量TEXJOUTを算出するためのパラメータとして、むだ時間τ、直接流入割合αおよび間接流入割合βをすべて用いているが、これらの少なくとも1つを用いてもよく、また、これら以外の適当なパラメータを、これらのパラメータに代えて、またはこれらのパラメータとともに用いてもよい。
さらに、実施形態は、本発明をガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外の各種のエンジン、例えば、ディーゼルエンジンやクランク軸を鉛直方向に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンに適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
本実施形態による制御装置を適用した内燃機関を概略的に示す図である。 制御装置の概略構成を示すブロック図である。 燃料噴射制御処理を示すフローチャートである。 図3のステップ1におけるTEXJOUT算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 図4の処理で用いられるKCATマップの一例である。 図4の処理で用いられるτマップの一例である。 図4の処理で用いられるαマップの一例である。 図4の処理で用いられるβマップの一例である。 図3のステップ6におけるTCYL_main算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 図3のステップ8におけるTCYL_3rd算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
符号の説明
1 制御装置
2 ECU(第1供給燃料量決定手段、第2供給燃料量決定手段、付加燃料量算出手
段、補正手段、動特性パラメータ算出手段)
3 エンジン
3a 気筒
16 EGR装置(外部EGR装置)
16a EGR管(EGR通路)
TCYL_2ndt 通常時用の要求主噴射燃料量(第1供給燃料量)
TCYL_main 膨張行程噴射時用の要求主噴射燃料量(第1供給燃料量)
TCYL_3rd 膨張行程噴射燃料量(第2供給燃料の量)
TEXJOUT 還流燃料量(付加燃料量)
τ むだ時間(動特性パラメータ)
α 直接流入割合(動特性パラメータ)
β 間接流入割合(動特性パラメータ)
TEXJIN 流入燃料量

Claims (2)

  1. 気筒内に燃料を供給するとともに、燃焼により生成された既燃ガスの一部を前記気筒内に存在させるEGR動作をEGR装置によって実行する内燃機関の制御装置であって、
    前記EGR装置は、前記内燃機関から排出された既燃ガスの一部をEGR通路を介して前記気筒内に還流させる外部EGR動作を実行する外部EGR装置で構成されており、
    前記内燃機関の出力を得るために前記気筒内に供給される第1供給燃料の量を決定する第1供給燃料量決定手段と、
    前記内燃機関の膨張行程から排気行程までの間の所定の期間に前記気筒内に供給される第2供給燃料の量を決定する第2供給燃料量決定手段と、
    前記供給された第2供給燃料のうち、前記EGR装置によるEGR動作に伴って前記気筒内に存在させられる燃料の量を、付加燃料量として算出する付加燃料量算出手段と、
    当該算出された付加燃料量に基づいて、前記決定された第1供給燃料量を補正する補正手段と、
    前記気筒内に供給された第2供給燃料が前記気筒内に存在させられるまでの前記第2供給燃料の動特性を表す動特性パラメータを算出する動特性パラメータ算出手段と、を備え
    前記付加燃料量算出手段は、前記算出された動特性パラメータに基づいて、前記付加燃料量を算出し、
    前記動特性パラメータは、前記EGR通路内に流入した第2供給燃料の量のうちの、前記気筒内に直接還流する燃料量の割合を表す直接流入割合、および前記EGR通路内に滞留した第2供給燃料の量のうちの、前記気筒内に還流する燃料量の割合を表す間接流入割合の双方を含むことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記動特性パラメータは、前記第2供給燃料が前記気筒内に還流するまでのむだ時間をさらに含み、
    前記付加燃料量算出手段は、前記EGR通路内に流入した第2供給燃料の量である流入燃料量を、前記むだ時間前に決定された第2供給燃料量から、前記EGR通路内に流入しない第2供給燃料の量を差し引くことによって算出するとともに、当該算出された流入燃料量にさらに基づいて、前記付加燃料量を算出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
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