JP2011032507A - 電解用電極材料、電解用電極及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水の電気分解によって、高効率にてオゾン水を生成することを可能とする電解用電極材料、及び、電解用電極、更には、当該電解用電極の製造方法を提供する。
【解決手段】白金及び銀から成る合金であり、銀の濃度が1wt%以上50wt%以下とする電解用電極材料を、基体の表面に形成された表面層として用いることにより、当該電解用電極による電気分解において、低電流密度にて効率的にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成する。
【選択図】図4
【解決手段】白金及び銀から成る合金であり、銀の濃度が1wt%以上50wt%以下とする電解用電極材料を、基体の表面に形成された表面層として用いることにより、当該電解用電極による電気分解において、低電流密度にて効率的にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成する。
【選択図】図4
Description
本発明は、工業用又は民生用電解プロセスに使用される電解用電極、及びその材料更には、当該電解用電極の製造方法に関する。
一般に、オゾンは非常に酸化力が強い物質であり、該オゾンが溶解した水、所謂オゾン水は上下水道や、食品等、又は、半導体デバイス製造プロセス等での洗浄処理への適用など幅広い洗浄殺菌処理での利用が期待されている。オゾン水を生成する方法としては、紫外線照射や放電により生成させたオゾンを水に溶解させる方法や、水の電気分解により水中でオゾンを生成させる方法などが知られている。
特許文献1には、水の電気分解により水中でオゾンを生成させる方法が開示されている。係る方法では、多孔質体又は網状体で形成されたPbO2や白金を陽極電極として用いる。
上述した如き水の電気分解によるオゾン水の生成方法では、電極材料としてPbO2を用いた場合、生成されたオゾン水を食品等に用いる場合、PbO2の毒性が懸念される。一方、電極材料として白金(Pt)を用いた場合、低電流密度における水の電気分解では、オゾン生成効率が低いという問題がある。そのため、電解によりオゾンを生成させるためには、ゼロギャップとして大電流を流す方法を用いる必要がある。ゼロギャップとするためには、白金を網状や多孔質状に加工する必要がある。しかし、白金自体が比較的高価であり、当該白金を更に、網状や多孔質状に加工する必要があることから、生産コストの高騰を招来する。そのため、より安価に、且つ、安定して高効率のオゾンを生成可能とする電解用電極材料の開発が望まれていた。
本発明は、従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、水の電気分解によって、高効率にてオゾン水を生成することを可能とする電解用電極材料、及び、電解用電極、更には、当該電解用電極の製造方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明の電解用電極材料は、白金及び銀から成る合金であり、銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする。
請求項2の発明の電解用電極材料は、白金、銀及び酸素から成る合金であり、白金と銀における銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする。
請求項3の発明の電解用電極は、基体と、この基体の表面に形成された表面層とから構成され、表面層は、白金及び銀から成る合金であり、銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする。
請求項4の発明の電解用電極は、電気分解によってオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成する電解用電極であって、基体と、この基体の表面に形成された表面層とから構成され、表面層は、白金、銀及び酸素から成る合金であり、白金と銀における銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする。
請求項5の発明は、上記請求項3の発明の電解用電極の製造方法であって、白金と銀からなるターゲットを用い基体の表面に成膜するスパッタ法により、表面層を形成することを特徴とする。
請求項6の発明は、上記請求項4の発明の電解用電極の製造方法であって、白金と銀からなるターゲットを用い酸素を含む雰囲気中にて基体の表面に成膜するスパッタ法により、表面層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、白金及び銀から成る合金であり、銀の濃度が1wt%以上50wt%以下とする電解用電極材料を、請求項3の発明の如く基体の表面に形成された表面層として用いることにより、当該電解用電極による電気分解において、高い電流効率にて、オゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成することができる。そのため、従来のPtに比して、同量のオゾンを生成する際に必要な電力量を少なくすることができ、省エネに寄与することができる。また、同寸法の電解用電極で比較した場合、低電流密度にて効率的にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成でき、電極の消耗が少なく、耐久性の向上を実現できる。同じ電流密度にて電解処理を行う場合、電解用電極自体の寸法を小さく構成することができる。また、消耗が少ないことからも、表面層をより薄い膜にて構成することも可能となる。
この場合、従来の如く表面層に用いられる電解用電極材料として白金のみが用いられていた場合に比べ、効率的なオゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成が可能となると共に、比較的高価な白金の濃度(構成比率)を低減することができるため、生産コストの低減を図ることが可能となる。
係る電解用電極は、請求項5の製造方法の発明の如く、白金と銀をターゲットとして基体の表面に成膜するスパッタ法により、表面層を形成することにより構成されるため、基体の表面に均一に白金と銀の合金による表面層を形成することができる。そのため、基体の表面の全体に厚さが均一な白金と銀の合金の表面層を構成することが可能となるため、電極表面全体に対して一様に電気伝導を行うことができるようになり、オゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成効率の向上を図ることができるようになる。
また、請求項2の発明によれば、白金、銀及び酸素から成る合金であり、白金と銀における銀の濃度が1wt%以上50wt%以下とする電解用電極材料を、請求項4の発明の如く基体の表面に形成された表面層として用いることにより、当該電解用電極による電気分解において、高い電流効率にて、オゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成することができる。そのため、従来のPtに比して、同量のオゾンを生成する際に必要な電力量を少なくすることができ、省エネに寄与することができる。また、同寸法の電解用電極で比較した場合、低電流密度にて効率的にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成でき、電極の消耗が少なく、耐久性の向上を実現できる。同じ電流密度にて電解処理を行う場合、電解用電極自体の寸法を小さく構成することができる。また、消耗が少ないことからも、表面層をより薄い膜にて構成することも可能となる。
この場合、従来の如く表面層に用いられる電解用電極材料として白金のみが用いられていた場合に比べ、効率的なオゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成が可能となると共に、比較的高価な白金の濃度(構成比率)をより一層、低減することができるため、生産コストの低減を図ることが可能となる。
係る電解用電極は、請求項6の製造方法の発明の如く、白金と銀をターゲットとして酸素を含む雰囲気中にて基体の表面に成膜するスパッタ法により、表面層を形成することにより構成されるため、基体の表面に均一に白金と銀と酸素の合金による表面層を形成することができる。そのため、基体の表面の全体に厚さが均一な白金と銀と酸素の合金の表面層を構成することが可能となるため、電極表面全体に対して一様に電気伝導を行うことができるようになり、オゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成効率の向上を図ることができるようになる。
以下に、本発明の電解用電極の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の電解用電極1の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように電解用電極1は、基体2と、当該基体2の表面に形成される表面層3とから構成される。
本発明において基体2は、導電性材料として、チタン(Ti)を採用する。尚、基体2の材料は、これに限定されるものではなく、例えば、白金(Pt)若しくは、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)などのバルブ金属やこれらバルブ金属2種以上の合金、或いはシリコン(Si)などにより構成しても良い。
表面層3は、基体2の表面に銀(Ag)と白金(Pt)の合金若しくは、AgとPt及び酸素(O)の合金により形成される。当該AgとPtとの合金の濃度(wt%。構成比率)若しくは、AgとPtとOとの濃度(wt%。構成比率)の詳細については、後述する。この表面層3は、所定厚み、例えば、150nmとする。尚、当該表面層3の膜厚は、100nm乃至10μmが適切である。薄すぎると、基体2に十分なAgとPt若しくは、Agと、PtとOとから構成される被膜を形成できず、耐久性の低下を招来するからである。また、厚すぎると、高コストの原因となるからである。
次に、本発明の電解用電極1の製造方法について図2のフローチャートを参照して説明する。先ず、電解用電極1の基体2となるTi基板の前処理工程を実行する。前処理工程では、先ず、ステップS1において、基体2の材料として用いられるTi基板を所定の寸法、この場合、10cm角、厚さ1mmに加工する。その後、ステップS2において、当該Ti基板の表面を研磨紙にて研磨し、水洗いを行う(ステップS3)。これにより、表面の汚染物質を除去し、表面の平坦処理を行う。更に、Ti基板の表面を超音波洗浄によるアセトン洗浄(ステップS4)及び超音波洗浄による水洗い(ステップS5)を行い、その後、ステップS6において、Ti基板をシュウ酸によりエッチング処理を沸騰で5min行い、当該Ti基板の表面に形成された自然酸化膜の除去を行う。これにより、基体2の表面をより平坦な状態とする。その後、ステップS7において純水にて基体2の表面のリンスを行い(超音波洗浄)、前処理工程を終了する。前処理工程終了後、ステップS8に進み、既存のスパッタ装置のチャンバー内に、当該基体2(Ti基板)を導入し、成膜を行う。
本実施例では、基体2への表面層3の形成は、スパッタ法により実行する。ここでは、高周波マグネトロンスパッタ装置を使用し、PtとAgの同時スパッタによりPt−Ag合金の薄膜を基体2の表面に形成する。スパッタの条件は、表面層3をPtとAg合金により構成するため、ターゲットとして表面層構成材である純度3NのPtと純度3NのAgを用い、高周波出力を100W、スパッタガスとして純度6N以上のArを用い、ガス圧を5mTorrとして、室温で10分間成膜を実行する(ステップS8)。尚、PtとAgは、それぞれの純度のPtとAgとをそれぞれ所定量を隣接して配置してスパッタ法による基体2への成膜を行う。当該PtとAgの使用比率の詳細については、後述する。また、これに限定されず、所定純度のPtとAgとを予め所定比率にて混合したものをターゲットとして用い、スパッタ法により基体2の表面に成膜を行っても良い。
これにより、基体2の表面には、厚さ150nm程度の表面層3が形成される。尚、上述したように、当該表面層3の厚さは、これに限定されないが、100nm乃至10μmが適切である。以上の工程により、適切な厚さ、適切な量で、面内均一性高く、基体2の表面に所定のPt−Ag濃度(wt%。構成比率)にて表面層3を形成することが可能となる。
尚、本実施例では、表面層3の成膜方法としてスパッタ法を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、CVD法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、メッキ法、熱分解法、溶射法などであっても良い。
その後、ステップS9に進み、表面層3が成膜された電解用電極1を所定の寸法、例えば、5cm×2cmに切断する。本実施例では、切断はせん断加工により行っているが、これに限定されるものではなく、金型によるプレス加工やレーザー加工などであっても良い。
次に、上記実施例において製造された電解用電極1を用いた電解によるオゾン生成について図3を参照して説明する。図3は本実施例の電解用電極1を適用したオゾン水生成装置20の概略説明図である。オゾン水生成装置20は、処理槽21と、上述した如きアノードとしての電解用電極1と、カソードとしての電極22と、陽イオン交換膜24と、電極1、22に直流電流を印加する電源25とから構成される。また、この処理槽21内には、電解質溶液としての模擬水道水23が貯溜される。
電解用電極1は、上述した如き製造方法により作製したものである。オゾン水生成装置20に用いる電解用電極1は、表面層3のPtとAgの濃度(wt%。構成比率)を変化させたものを使用する。具体的には、Ptが100wt%の電極、Ptが99wt%でAgが1wt%の電極、Ptが98.5wt%でAgが1.5wt%の電極、Ptが98wt%でAgが2wt%の電極、Ptが97.5wt%でAgが2.5wt%の電極、Ptが97wt%でAgが3wt%の電極、Ptが96wt%でAgが4wt%の電極、Ptが94wt%でAgが6wt%の電極、Ptが92wt%でAgが8wt%の電極、Ptが90wt%でAgが10wt%の電極、Ptが86wt%でAgが14wt%の電極、Ptが72wt%でAgが28wt%の電極、Ptが50wt%でAgが50wt%の電極、Ptが30wt%でAgが70wt%の電極、Ptが10wt%でAgが90wt%の電極、Agが100wt%の電極を使用する。これにより、それぞれの電解用電極1をアノードとして用いた場合のオゾン生成量を測定することで、各電解用電極1の評価を行う。
尚、各電解用電極1の表面層3の組成分析は、蛍光X線分析により行った。蛍光X線分析は、測定条件をX線管球をRhターゲット、X線検出器は、検出元素範囲Na〜U、分解能149eV以下、真空雰囲気で測定範囲φ7mm以下として行った。
他方、カソードとしての電極22には、この場合、白金を用いる。これ以外にも当該電解用電極1と同様に構成された電極をカソードの電極として用い、極性を切り替えて使用可能としても良い。
陽イオン交換膜24は、過酸化水素のような酸化剤に耐久性を有するフッ素樹脂系の膜により構成される。また、本実施例において電解処理される電解質溶液は、水道水を模擬した水溶液であり、この模擬水道水23の成分組成は、Na+が5.75ppm、Ca2+が10.02ppm、Mg2+が6.08ppm、K+が0.98ppm、Cl-が17.75ppm、SO4 2-が24.5ppm、CO3 2-が16.5ppmである。電気伝導率は、160μS/cmである。
以上の構成により、処理槽21内に水温+20℃の模擬水道水23を陽イオン交換膜24にて仕切られたアノード側及びカソード側にそれぞれ150mlずつ、合計300ml貯溜する。電解用電極1及び電極22をそれぞれアノード側の模擬水道水及びカソード側の模擬水道水中に、陽イオン交換膜24を挟んで浸漬させる。尚、本実施例における電解用電極1及び電極22の面積は50mm×20mm(浸漬部20mm×15mm)、電極間距離は10mmとする。そして、電源25により電流密度100mA/cm2程度の定電流が電解用電極1及び電極22に印加される。
尚、本実施例では電解用電極1によるオゾン生成量は、上記条件にて1分間電解後の模擬水道水23中のオゾン濃度をインジゴ法(HACH、DR−3000)を用いて測定する。
次に、図4を用いてオゾン生成効率のAg濃度(wt%。構成比率)の依存性について説明する。図4は本実施例における上記各電解用電極1の上記同一条件下でのそれぞれのオゾン生成率を示している。この図4における縦軸はオゾン生成率(%)であり、横軸は電解用電極1の表面層3を構成するAgの濃度(wt%。構成比率)を示している。
この図4の実験結果によると、電解用電極1の表面層3を全てPtにて構成した場合のオゾン生成率は、約0.6%であるのに対し、Agの濃度が徐々に上昇して行くに従い、オゾン生成率が上昇していき、図4の実験では、Agの濃度が4wt%の際にオゾン生成率が約3.2%のピークに達している。以後、徐々にAgの濃度を上昇させて行くに従い、オゾン生成率が減少していき、Ag濃度が14wt%では、オゾン生成率が約1.6%、Ag濃度が28wt%では、オゾン生成率が約1.2%、Ag濃度が50wt%では、オゾン生成率が約0.7%である。以後も、徐々にAg濃度を上昇させていくと、徐々にオゾン生成率が低下していき、Ag100wt%の電解用電極では、直ぐに溶解してしまうこともあるが、オゾン生成率は0%であった。尚、いずれの場合であっても、オゾン生成が行われる際には、同時にOHラジカル等の活性酸素種が発生している。
これによると、Pt−Agの表面層3のAg濃度が1wt%以上50wt%以下では、オゾン生成率が約0.7%以上であり、電解用電極1の表面層3全てをPtにて構成した場合に比べて、オゾンの生成効率が高いということができる。特に、Ag濃度が2wt%以上14wt%以下では、オゾン生成率が約1.5%以上であり、更にオゾン生成効率を上昇させることができる。また、Ag濃度が3wt%以上6wt%以下では、オゾン生成率が約2.9%以上であり、著しくオゾン生成効率を上昇させることができる。
ここで、表面層3を構成するPtに対するAg濃度を変化させた場合の各電解用電極1の表面層3の結晶構造について考察する。図5は各Ag濃度の電解用電極のX線回折プロファイルであり、図6は図5の2θが43°から47°を拡大したX線回折プロファイルを示している。
この場合、Ptに対するAg濃度を0、1wt%、3wt%、6wt%、28wt%、40wt%、80wt%、100wt%とした各電解用電極1について結晶構造解析をX線回折測定法により行った。当該X線回折測定の条件は、X線源はCuローターターゲットとし、45kV、360mAで、スリットは、入射側を1.0mm×5mm、ディテクター側 parallel soller slit(0.12deg)とし、測定方法はθ−2θ法を採用した。
これによると、表面層3がPt100wt%で作製された電解用電極1のX線回折パターンは、各図において最下段において示すように回折ピーク(2θ)は、39.6°付近において、Pt(111)のピークが見られる。また、46.3°にPt(200)のピークが見られる。表面層3がAg100wt%で作製された電解用電極1のX線回折パターンは、各図において最上段において示すように回折パターン(2θ)は、38.2°付近にAg(111)のピークが見られ、44.4°付近にAg(200)、64.7°付近にAg(220)のピークが見られる。
そして、上段から下段に行くに従って表面層3のPtに対するAgの濃度を上昇させて示している。ここで、特徴的な変化を示すAg(200)ピークとPt(200)ピークの間のピークの変化について考察する。Pt100wt%では、46.3°付近であったPt(200)ピークは、Agの濃度を上昇させて行くに従い、徐々に小さくなっていき、Ag100wt%における44.4°付近のAg(200)ピークに近づいていくことが分かる。
表面層として構成されるPt及びAgの結晶構造は、共に面心立方構造(fcc)である。上述したようにAg濃度(wt%)の変化に伴うAg(200)ピーク位置の変化について着目すると、Ag濃度(wt%)の増加に伴い回折角度2θがPtの46.3°からAgの44.4°の間で連続的に変化していることが分かる。この結果から、Ptに対するAgの濃度を上昇させていく際、PtとAgとは、面心立方構造の結晶構造を維持しながら合金化している。
そのため、Agのみが表面層3に単独で存在している場合には、耐食性が十分でないが、係る結晶構造解析によって、電解用電極1の表面層3を構成するAgとPtは、合金化していることから、耐食性が大幅に向上される。
また、その結晶の格子定数は、Pt100wt%の場合の0.3923nmからAg100wt%の場合の0.4078nmに連続的に変化していることが分かる。このことから、上記オゾン生成効率のAg濃度の依存性を考慮すると、Pt100wt%の表面層3よりも所定量、上記実験結果よりAg濃度がPtに対して1wt%〜50wt%の範囲とすることで、表面層3を構成する結晶構造は、Ptのみの場合の結晶構造よりも所定の範囲で格子定数が大きくなったものといえ、係る格子定数と合金を形成するAgとPtとの割合がオゾン生成効率の著しい向上に寄与したものと推測できる。
これにより、Pt及びAgから成る合金であって、Agの濃度が1wt%以上50wt%以下とする電解用電極材料を、基体2の表面に形成された表面層3として用いることにより、当該電解用電極1による電気分解において、高い電流効率にて、オゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成することができる。そのため、従来の比して、同量のオゾンを生成する際に必要な電力量を少なくすることができ、省エネに寄与することができる。また、同寸法の電解用電極で比較した場合、低電流密度にて効率的にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成でき、電極の消耗が少なく、耐久性の向上を実現できる。同じ電流密度にて電解処理を行う場合、電解用電極自体の寸法を小さく構成することができる。また、消耗が少ないことからも、表面層3をより薄膜にて構成することも可能となる。
また、従来の如く表面層に用いられる電解用電極材料としてPtのみが用いられていた場合に比べ、効率的なオゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成が可能となると共に、比較的高価なPtの濃度(構成比率)を低減することができるため、生産コストの低減を図ることが可能となる。また、電解用電極の表面積を拡大させるために網状や多孔質状に加工を施すことなく、従前のPtのみにて構成される電解用電極よりも高効率にてオゾンを生成することが可能となり、これによっても生産コストの低減を図ることができる。
また、本実施例では、電解用電極1は、基体2を試料とし、PtとAgをターゲットとして基体2の表面に成膜するスパッタ法により、表面層3を形成することにより構成されるため、基体2の表面に均一にPtとAgの合金による表面層3を形成することができる。そのため、基体2の表面の全体に厚さが均一なPtとAgの合金の表面層3を構成することが可能となるため、電極1表面全体に対して一様に電気伝導を行うことができるようになり、オゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成効率の向上を図ることができるようになる。
尚、表面層3を形成するAgとPtの合金は、これに限定されるものではなく、AgとPtに酸素(O)を加えた合金により形成しても良い。この場合、表面層3の形成は、上記スパッタ条件に加えて、スパッタガスとして純度6N以上のArと、純度6N以上のO2を用いる。この際、スパッタ装置のチャンバー内に導入するスパッタガスのO2の流量は、酸素濃度が15〜19%となるように設定する。
図7は表面層3をPt−Ag−Oの合金により構成した電解用電極1のオゾン生成効率のAg濃度(wt%)の依存性について示している。尚、図4におけるPt−Agの濃度比との比較を容易とするため、Ag濃度は、PtとAgの総量を100%とした場合のAgwt%を示している。
これによると、電解用電極1の表面層3を全てPtにて構成した場合のオゾン生成率は、約0.6%であるのに対し、Agの濃度が徐々に上昇して行くに従い、オゾン生成率が上昇していき、図7の実験では、Agの濃度が5wt%の際にオゾン生成率が約0.7%、Agの濃度が9wt%の際に1.8%、Agの濃度が10wt%の際に2.2%、Agの濃度が11wt%の際にオゾン生成率が2.4%、Agの濃度が12wt%の際にオゾン生成率が2.1%、Agの濃度が15wt%の際にオゾン生成率が1.3%、Agの濃度が21wt%の際にオゾン生成率が0.8%、Agの濃度が30wt%の際にオゾン生成率が0.5%であった。
図7において、点線は、上記図4において示したPt−Agの電解用電極1を使用した場合を示している。これによるとPt−Agに酸素を添加した合金であっても、同様にPtのみを電解用電極1の表面層3として構成した場合に比して、より効率的にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成することができることが分かる。特にAgの濃度が5wt%〜21wt%では、Ptのみを表面層3として用いた場合に比してオゾン生成効率が高く、更に、Agの濃度が9wt%〜12wt%とした場合、よりオゾン生成効率が高くなる。
そのため、Pt−Ag−Oから成る合金であって、Agの濃度が1wt%以上50wt%以下とする電解用電極材料を、基体2の表面に形成された表面層3として用いることによっても、当該電解用電極1による電気分解において、低電流密度にて効率的にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成することができる。
この場合、従来の如く表面層に用いられる電解用電極材料として白金のみが用いられていた場合に比べ、効率的なオゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成が可能となると共に、比較的高価な白金の濃度(構成比率)をより一層、低減することができるため、生産コストの低減を図ることが可能となる。酸素が加わることで、上記Pt−Agのみから成る表面層3により構成した場合に比して、そのAg比率に対するオゾン生成効率が低下するが、所定の範囲のオゾン生成用として当該電解用電極を用いる場合、PtやAgの使用量をより低減することが可能となるため、生産コストの低減を図ることができる。
尚、上記実施例における電解用電極1は、基体2を試料とし、PtとAgをターゲットとして酸素を含む雰囲気中にて基体2の表面に成膜するスパッタ法により、表面層3を形成することにより構成されるため、基体2の表面に均一にPtとAgとOの合金による表面層3を形成することができる。そのため、基体2の表面の全体に厚さが均一なPtとAgとOの合金の表面層3を構成することが可能となるため、電極表面全体に対して一様に電気伝導を行うことができるようになり、オゾンやOHラジカル等の活性酸素種の生成効率の向上を図ることができるようになる。
尚、上記各実施例では、基体2の表面にAgとPtとが所定の濃度(wt%。構成比率)にて構成された合金若しくはAgとPt及びOとが所定の濃度(wt%。構成比率)にて構成された合金により形成される表面層3を形成した板状の電解用電極1を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。例えば、図8に示すようにTi等の弁金属により網状に形成された基体の表面に当該AgとPtとが所定の濃度(wt%。構成比率)にて構成された合金若しくはAgとPt及びOとが所定の濃度(wt%。構成比率)にて構成された合金により形成される表面層を形成した電解用電極5としてもよい。尚、網状電極に限定されず、これ以外にも、多孔質電極、棒状電極、針金状電極、帯状電極としても良い。また、基体の表面にAg及びPt等の合金から成る表面層を形成したものに限らず、当該AgとPtとが所定の濃度(wt%。構成比率)にて構成された合金若しくはAgとPt及びOとが所定の濃度(wt%。構成比率)にて構成された合金を電極触媒の材料(電解用電極材料)として用いても、同様の効果を奏することができる。
次に、図9を参照して、上記電解用電極1を用いたオゾン水生成装置20を適用した空気清浄機30を説明する。図9は空気清浄機30の概略構成図を示している。31は水槽であり、この水槽31の貯留水には、陽極を構成する上述した如き電解用電極1と、陰極を構成する電極32とが浸漬されている。この場合、電極32は、Tiの基板上にPtの表面層が形成された電極を採用する。これら電極1と32には、直流電源33から、通常動作では、100〜500mAの定電流が供給される。尚、当該電源33は定電圧電源であっても良い。
係る空気清浄機30には、室内空気が通風されるエアフィルター34が配設されており、ポンプ35が介設された導水管36によって水槽31内の電解水がエアフィルター34の上方に搬送され、当該エアフィルター34に滴下される。
係る構成により、オゾン水生成装置20の電源33により陽極を構成する電極1と陰極を構成する電極32間に直流電流が流れると、水槽31内にオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を含む電解水が生成される。そして、この電解水がポンプ35により導水管36を介してエアフィルター34に滴下される。これにより、図示しない送風機によってエアフィルター34に循環供給される室内空気は、エアフィルター34を通過する際に浄化され、除菌処理される。当該オゾン水生成装置20の陽極には上述した如き低電流にて高効率でオゾンを生成可能とする電解用電極1が採用されているため、安定してオゾン等の活性酸素種を発生させ、空気清浄機能や除菌機能を長期に渡って発揮することができる。
次に、図10を参照して、上述した如き本発明に係る電解用電極1を採用したオゾン水生成装置20を採用した電気洗濯機について説明する。図10は電気洗濯機40の縦断側面図を示している。電気洗濯機40は外殻を構成するハウジング41の内部上方に洗濯槽44が配置されており、その内部下方には貯水槽50が配置されている。ハウジング41の前面上部には、ハウジング開口41Aが形成されており、扉42にて開閉自在に閉塞されている。図中43はハウジング41の前面上部に配置されたコントロールパネルである。
電気洗濯機40には洗濯槽(収納室)44が備えられ、この洗濯槽44は外槽45と、当該外槽45内に配置されて洗濯物を収納するための円筒状のドラム(内槽)46とから構成される。そして、外槽45の背面にはDDモータ47が配設され、当該DDモータ47によって外槽45内にてドラム46が回転可能とされる。
外槽45の上方には、注水口ユニット48が配設されている。この注水口ユニット48は外槽45内への洗浄水やすすぎ水が通過するユニットであり、上述した如きオゾン水生成装置20を備えている。尚、当該オゾン水生成装置20は、上記空気清浄機40における構成と略同一にて構成されているものとする。
洗濯槽44の下方に配設された貯水槽50は、外槽45から排出された水や、図示しない風呂水ポンプにてくみ上げられた風呂水を貯水するものである。貯水槽50の近傍には、当該貯水槽50内の水をくみ出すための循環ポンプ51が設けられている。オゾン水生成装置20には、注水口ユニット48から供給された水が一旦溜まり、その間に、上述したような直流電源33から陽極を構成する電解用電極1と陰極を構成する電極32間に直流電流が流れることによって、当該注水口ユニット48から供給される水にオゾンが生成される。このオゾン水は、洗浄やすすぎの際に外槽45内に供給される。これにより、当該電気洗濯機40では、水道水に生成されたオゾン水によって洗浄・すすぎ運転を実行することができる。
尚、本発明の電解用電極1を採用した実施態様は、これら空気洗浄機30や電気洗濯機40に限定されるものではなく、オゾンが所定濃度にて含まれたオゾン水が用いられる各機器、例えば、オゾン水生成器において有効である。このオゾン水生成器において、メッシュ電極を用いる場合、隔膜を用い、ゼロギャップとしてもよい。一方、メッシュ電極を用いない場合、板状の電解用電極を対向させ、その電極間の間隔を0.1〜10mmとすることが望ましい。このとき、隔膜は用いても用いなくても良い。
1、5 電解用電極
2 基体
3 表面層
20 オゾン水生成装置
21 処理槽
22 電極
23 模擬水道水
24 陽イオン交換膜
25 電源
2 基体
3 表面層
20 オゾン水生成装置
21 処理槽
22 電極
23 模擬水道水
24 陽イオン交換膜
25 電源
Claims (6)
- 白金及び銀から成る合金であり、前記銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする電解用電極材料。
- 白金、銀及び酸素から成る合金であり、前記銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする電解用電極材料。
- 基体と、該基体の表面に形成された表面層とから構成され、
前記表面層は、白金及び銀から成る合金であり、前記銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする電解用電極。 - 電気分解によってオゾンやOHラジカル等の活性酸素種を生成する電解用電極であって、
基体と、該基体の表面に形成された表面層とから構成され、
前記表面層は、白金、銀及び酸素から成る合金であり、前記銀の濃度が1wt%以上50wt%以下であることを特徴とする電解用電極。 - 白金と銀からなるターゲットを用い、前記基体の表面に製膜するスパッタ法により、前記表面層を形成することを特徴とする請求項3に記載の電解用電極の製造方法。
- 白金と銀からなるターゲットを用い、酸素を含む雰囲気中にて前記基体の表面に製膜するスパッタ法により、前記表面層を形成することを特徴とする請求項5に記載の電解用電極の製造方法。
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