JP2011029219A - 有機薄膜太陽電池用材料及びそれを用いた有機薄膜太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機溶媒に対して良好な溶解性を持ち、かつ有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す有機薄膜太陽電池用材料を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるチエノアセン誘導体を含有する有機薄膜太陽電池用材料。
Figure 2011029219

【選択図】なし

Description

本発明は、有機薄膜太陽電池用材料及びそれを用い有機薄膜太陽電池に関する。
有機薄膜太陽電池は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードや撮像素子、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池に代表されるように、光入力に対して電気出力を示す装置であり、電気入力に対して光出力を示すエレクトロルミネッセンス(EL)素子とは逆の応答を示す装置である。中でも太陽電池は、化石燃料の枯渇問題や地球温暖化問題を背景に、クリーンエネルギー源として近年大変注目されてきており、研究開発が盛んに行なわれるようになってきた。
従来、実用化されてきたのは、単結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi等に代表されるシリコン系太陽電池であるが、高価であることや原料Siの不足問題等が表面化するにつれて、次世代太陽電池への要求が高まりつつある。このような背景の中で、有機太陽電池は、安価で毒性が低く、原材料不足の懸念もないことから、シリコン系太陽電池に次ぐ次世代の太陽電池として大変注目を集めている。
有機太陽電池は、基本的には電子を輸送するn層と正孔を輸送するp層を有しており、各層を構成する材料によって大きく2種類に分類される。
n層として、チタニア等の無機半導体表面にルテニウム色素等の増感色素を単分子吸着させ、p層として電解質溶液を用いたものは、色素増感太陽電池(所謂グレッツエルセル)と呼ばれている。変換効率の高さから、1991年以降精力的に研究されてきたが、溶液を用いるため、長時間の使用に際して液漏れする等の欠点を有していた。
そこで、このような欠点を克服するため、最近、電解質溶液を固体化して全固体型の色素増感太陽電池を模索する研究がなされている。しかしながら、多孔質チタニアの細孔に有機物をしみ込ませる技術は難易度が高く、再現性よく高変換効率が発現できるセルは完成していないのが現状である。
一方、n層、p層ともに有機薄膜からなる有機薄膜太陽電池は、全固体型のため液漏れ等の欠点がなく、作製が容易であり、稀少金属であるルテニウム等を用いないこと等から最近注目を集め、精力的に研究がなされている。
有機薄膜太陽電池は、最初メロシアニン色素等を用いた単層膜で研究が進められてきたが、p層/n層の多層膜にすることで変換効率が向上することが見出され、それ以降多層膜が主流になってきている。このとき用いられた材料はp層として銅フタロシアニン(CuPc)、n層としてペリレンイミド類(PTCBI)であった。
その後、p層とn層の間にi層(p材料とn材料の混合層)を挿入して積層を増やすことにより、変換効率が向上することが見出された。しかしこのとき用いられた材料は、依然としてフタロシアニン類とペリレンイミド類であった。またその後、p/i/n層を何層も積層するというスタックセル構成によりさらに変換効率が向上することが見出されたが、このときの材料系はフタロシアニン類とC60であった。
一方、高分子を用いた有機薄膜太陽電池では、p材料として導電性高分子を用い、n材料としてC60誘導体を用いてそれらを混合し、熱処理することによりミクロ層分離を誘起してヘテロ界面を増やし、変換効率を向上させるという、所謂バルクヘテロ構造の研究が主に行なわれてきた。ここで用いられてきた材料系はおもに、p材料としてP3HTと呼ばれる可溶性ポリチオフェン誘導体、n材料としてPCBMと呼ばれる可溶性C60誘導体であった。
このように、有機薄膜太陽電池では、セル構成及びモルフォロジーの最適化により変換効率の向上がもたらされてきたが、そこで用いられる材料系は初期の頃からあまり進展がなく、依然としてフタロシアニン類、ペリレンイミド類、C60類が用いられてきた。従って、それらに代わる新たな材料系の開発が熱望されていた。特に、実用上のために、有機薄膜太陽電池材料として、高い変換効率を示すとともに、取り扱いのし易さや高純度化の観点から、より溶解性の良い材料が望まれている。
一般に有機太陽電池の動作過程は、(1)光吸収及び励起子生成、(2)励起子拡散、(3)電荷分離、(4)キャリア移動、(5)起電力発生の素過程からなっている。有機物は概して太陽光スペクトルに合致する吸収特性を示すものが多くないため、高い変換効率は達成できないことが多かった。
上記の課題の関し、例えば、特許文献1又は2ではアントラセン骨格をさらに直線状に縮環させた構造が提案されている。ポリアセン類は、π電子共役系を直線状に拡大することで、分子量の増加を抑えながら光の吸収を可視光領域に長波長化することができるので、太陽電池の変換効率を向上させるのに有効である。しかしながら、一般にポリアセン類は有機溶媒に対して溶解性が悪く、精製や取り扱いが困難であり、高純度化が困難である。従って、実用的な光電変換素子材料とは言いがたい。
また、非特許文献1では、テトラセノ[2,3−b]チオフェンが提案されている。この化合物は、π電子共役系を直線状に拡大して、分子量を抑えながら光の吸収を可視光領域に長波長化するのに有効な構造である。しかしながら、溶解性に乏しく、実用的な取り扱いが困難である。
さらに、特許文献3ではチエノアセン骨格が提案されているが、上記文献と同様に溶解性が問題となる場合あった。
特開2008−34764号公報 特開2007−335760号公報 特表2008−537330号公報
Applied Physics Letters 2007年、91巻、223508
本発明の目的は、有機溶媒に対して良好な溶解性を持ち、かつ有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す有機薄膜太陽電池用材料を提供することである。
本発明によれば、以下の有機薄膜太陽電池用材料等が提供される。
1.下記式(1)で表されるチエノアセン誘導体を含有する有機薄膜太陽電池用材料。
Figure 2011029219
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R〜R10のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。
〜R10の少なくとも1つは水素以外の基である。)
2.前記式(1)で表わされるチエノアセン誘導体が、下記式(2)で表わされるチエノアセン誘導体である1に記載の有機薄膜太陽電池用材料。
Figure 2011029219
(式中、R,R,R及びRは、式(1)と同様である。
11〜R20はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R,R,R11〜R20のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
3.前記式(2)で表わされるチエノアセン誘導体が、下記式(3)で表わされるチエノアセン誘導体である2に記載の有機薄膜太陽電池用材料。
Figure 2011029219
(式中、R,R,R11〜R20は式(2)と同様である。
21及びR22はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R11〜R20,R21,R22のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
4.前記式(2)で表わされるチエノアセン誘導体が、下記式(4)で表わされるチエノアセン誘導体である2に記載の有機薄膜太陽電池用材料。
Figure 2011029219
(式中、R,R,R11〜R20は式(2)と同様である。
31〜R34はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R11〜R20,R31〜R34のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
5.一対の電極の間に、少なくともp層を有し、前記p層が1〜4のいずれかに記載の材料からなる有機薄膜太陽電池。
本発明によれば、有機溶媒に対して良好な溶解性を持ち、かつ有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す有機薄膜太陽電池用材料を提供できる。
本発明の有機薄膜太陽電池用材料は、下記式(1)で表されるチエノアセン誘導体を含有する。
Figure 2011029219
式(1)において、R〜R10の少なくとも1つは水素以外の基である。本発明では、式(1)の構造を有する化合物に、水素以外の基を1以上置換させることにより、化合物の溶解性の向上が期待できる。
式(1)のRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
尚、Cx〜Cyは炭素数がx〜yであることを意味する。
〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
式(1)の誘導体のうち、下記式(2)〜(4)のいずれかで表わされる誘導体が好ましい。これらの誘導体のように、チエノアセンの短軸方向にアリール基を導入すると、化合物のアモルファス性が増し、溶解性を向上させることが出来る。また、変換効率を向上させることが出来る。
Figure 2011029219
(式中、R,R,R及びRは、式(1)と同様である。
11〜R20はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R,R,R11〜R20のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
Figure 2011029219
(式中、R,R,R11〜R20は式(2)と同様である。
21及びR22はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R11〜R20,R21,R22のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
Figure 2011029219
(式中、R,R,R11〜R20は式(2)と同様である。R31〜R34はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R11〜R20,R31〜R34のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
上記式(1)〜(4)において、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。具体例としては、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、2−エチルヘキシル、3,7−ジメチルオクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ノルボルニル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、α,α−ジメチルベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル等が好ましい。
尚、Rは、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基である。
〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、オレイル、エイコサペンタエニル、ドコサヘキサエニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル、1,2,2−トリフェニルビニル、2−フェニル−2−プロペニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ビニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル等が好ましい。
尚、Rは、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基である。
〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、エチニル、プロピニル、2−フェニルエチニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、エチニル、2−フェニルエチニル等が好ましい。
尚、R〜R22、R31〜R34は、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基である場合はない。
〜C40の置換もしくは無置換のアリール基の具体例としては、フェニル、2−トリル、4−トリル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−シアノフェニル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、ターフェニリル、3,5−ジフェニルフェニル、3,4−ジフェニルフェニル、ペンタフェニルフェニル、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル、フルオレニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントリル、2−アントリル、9−フェナントリル、1−ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、コロニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェニル、4−ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−フェナントリル等が好ましい。
〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基について、含窒素アゾール系へテロ環の場合の結合位置は、炭素だけでなく窒素で結合することができる。それらの具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ベンズピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フラン、チオフェン、ピリジン、カルバゾール等が好ましい。
〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メトキシ、エトキシ、1−プロピルオキシ、2−プロピルオキシ、1−ブチルオキシ、2−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1−アダマンチルオキシ、2−アダマンチルオキシ、ノルボルニルオキシ、トリフルオロメトキシ、ベンジロキシ、α,α−ジメチルベンジロキシ、2−フェニルエトキシ、1−フェニルエトキシ等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メトキシ、エトキシ、ter−ブチルオキシ等が好ましい。
〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、前記アリール基が酸素を介して結合した置換基が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェノキシ、ナフトキシ、フェナントリルオキシ等が好ましい。
〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基は、アミノ基に結合する置換基のうち少なくともひとつがアリール基であればよく、具体的には、フェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジp−トリルアミノ、ジm−トリルアミノ、フェニルm−トリルアミノ、フェニル−1−ナフチルアミノ、フェニル−2−ナフチルアミノ、フェニル(sec−ブチルフェニル)アミノ、フェニルt−ブチルアミノ、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ、フェニル−4−カルバゾリルフェニルアミノ等を挙げることができる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ等が好ましい。
〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基は、アミノ基に結合するアルキル基は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。具体的には、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ビス(2−メトキシエチル)アミノ、ピペリジノ、モルホリノ等を挙げることができる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピペリジノ等が好ましい。
上記式(1)〜(4)のR〜R34基のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。環としては、ベンゼン環等のアリール環、チオフェン環等の複素環、又は、これらの基からなる縮合環(ナフタレン環、ベンゾチオフェン環等)等が挙げられる。環は、上述したR〜R34基で例示した基を置換基として有していてもよい。
本発明で用いることのできる化合物としては、例えば以下の構造の化合物を挙げることができる。
Figure 2011029219
本発明におけるチエノアセン誘導体は、一般に下図のような合成経路で合成することができる。
Figure 2011029219
上記の反応において、出発原料Aは下記の文献を参照することで合成できる。
・Chemistry of Materials 2007年,19巻,3018頁
・Applied Physics Letters 2007年、91巻、223508頁
工程1では、求核種等を用いて中間体Bを合成する工程であり、その際に用いる試薬としては有機リチウム試薬、有機マグネシウム試薬(Grignard試薬)等が挙げられる。
工程2では、還元剤を用いてアセン骨格を構築し中間体Cを合成する工程であり、その際に用いる試薬としてはヨウ化カリウム、塩化第二スズ等が上げられる。
工程3では、チオフェン環のα位にハロゲンを導入して中間体Dを合成する工程であり、その際に用いる試薬としては種々のハロゲン化試薬やハロゲン類(ヨウ素、臭素、塩素等)を用いることができる。
工程4では、チオフェン環のα位に置換基を導入して最終体Eを合成する工程であり、その際に用いる反応としては鈴木−宮浦カップリング反応、Stilleカップリング反応、根岸カップリング反応、檜山カップリング反応、Ullmannカップリング反応、溝呂木−Heck反応等を用いることができる。このうち、良好な収率を与えることから鈴木−宮浦カップリング反応が好ましい。
本発明の有機薄膜太陽電池の構造は、一対の電極の間に上記化合物を含有する構造であれば特に限定されるものでない。具体的には、安定な絶縁性基板上に下記の構成を有する構造が挙げられる。
(1)下部電極/有機化合物層/上部電極
(2)下部電極/p層/n層/上部電極
(3)下部電極/p層/i層(又はp材料とn材料の混合層)/n層/上部電極
(4)下部電極/p材料とn材料の混合層/上部電極
及び上記(2)、(3)の構成のp層とn層を置換した構造が挙げられる。
また、必要に応じて、電極と有機層の間にバッファー層を設けてもよい。例えば具体例として、上記構成(1)にバッファー層を設けた場合、下記構成を有する構造が挙げられる。
(5)下部電極/バッファー層/p層/n層/上部電極
(6)下部電極/p層/n層/バッファー層/上部電極
(7)下部電極/バッファー層/p層/n層/バッファー層/上部電極
本発明の有機薄膜太陽電池用材料は、例えば、有機化合物層、p層、n層、i層、p材料とn材料の混合層、バッファー層に使用できるが、p層の材料として使用することが好ましい。
本発明の有機薄膜太陽電池では、電池を構成するいずれかの部材に本発明の材料を含有していればよい。また、本発明の材料を含有する部材は、他の成分を併せて含んでいてもよい。本発明の材料を含まない部材や混合材料については、有機薄膜太陽電池で使用される公知の部材や材料を使用することができる。
以下、各構成部材について簡単に説明する。
1.下部電極、上部電極
下部電極、上部電極の材料は特に制限はなく、公知の導電性材料を使用できる。例えば、p層と接続する電極としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や金(Au)、オスミウム(Os),パラジウム(Pd)等の金属が使用でき、n層と接続する電極としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In),カルシウム(Ca),白金(Pt)リチウム(Li)等の金属やMg:Ag、Mg:InやAl:Li等の二成分金属系,さらには上記P層と接続する電極例示材料が使用できる。
尚、高効率の光電変換特性を得るためには、例えば有機薄膜太陽電池が太陽電池の場合、太陽電池の少なくとも一方の面は太陽光スペクトルにおいて充分透明にすることが望ましい。透明電極は、公知の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように形成する。受光面の電極の光透過率は10%以上とすることが望ましい。一対の電極構成の好ましい構成では、電極部の一方が仕事関数の大きな金属を含み、他方は仕事関数の小さな金属を含む。
2.有機化合物層
p層、p材料とn材料の混合層又はn層のいずれかである。本発明の材料を有機化合物層に使用するとき、具体的には、下部電極/本発明の材料の単独層/上部電極や、下部電極/本発明の材料と、後述するn層材料又はp層材料の混合層/上部電極等の構成が挙げられる。
3.p層、n層、i層
本発明の材料をp層に用いるときは、n層は特に限定されないが、電子受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、C60等のフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等、高分子系ではCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基又はCF基含有ポリマー、それらの−CF置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体等を挙げることができる。電子の移動度が高い材料が好ましい。さらに、好ましくは、電子親和力が小さい材料が好ましい。このように電子親和力の小さい材料をn層として組み合わせることで充分な開放端電圧を実現することができる。
また、無機化合物であれば、n型特性の無機半導体化合物を挙げることができる。具体的には、n−Si、GaAs、CdS、PbS、CdSe、InP、Nb,WO,Fe等のドーピング半導体及び化合物半導体、また、二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の導電性酸化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、酸化チタン、特に好ましくは、二酸化チタンを用いる。
本発明の材料をn層に用いるときは、p層は特に限定されないが、正孔受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、N,N’−ビス(3−トリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等に代表されるアミン化合物、フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、チタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類、オクタエチルポルフィリン(OEP)、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等に代表されるポルフィリン類、高分子化合物であれば、ポリヘキシルチオフェン(P3HT)、メトキシエチルヘキシロキシフェニレンビニレン(MEHPPV)等の主鎖型共役高分子類、ポリビニルカルバゾール等に代表される側鎖型高分子類等が挙げられる。
本発明の材料をi層に用いるときは、上記p層化合物もしくはn層化合物と混合してi層を形成してもよいが、本発明の材料を単独でi層として用いることもできる。その場合のp層もしくはn層は、上記例示化合物のいずれも用いることができる。
4.バッファー層
一般に、有機薄膜太陽電池は総膜厚が薄いことが多く、そのため上部電極と下部電極が短絡し、セル作製の歩留まりが低下することが多い。このような場合には、バッファー層を積層することによってこれを防止することが好ましい。
バッファー層に好ましい化合物としては、膜厚を厚くしても短絡電流が低下しないようにキャリア移動度が充分に高い化合物が好ましい。例えば、低分子化合物であれば下記に示すNTCDAに代表される芳香族環状酸無水物等が挙げられ、高分子化合物であればポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリアニリン:カンファースルホン酸(PANI:CSA)等に代表される公知の導電性高分子等が挙げられる。
Figure 2011029219
(n、mは繰り返し数である。)
また、バッファー層には、励起子が電極まで拡散して失活してしまうのを防止する役割を持たせることも可能である。このように励起子阻止層としてバッファー層を挿入することは、高効率化のために有効である。励起子阻止層は陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。この場合、励起子阻止層として好ましい材料としては、例えば有機EL用途で公知な正孔障壁層用材料又は電子障壁層用材料等が挙げられる。正孔障壁層として好ましい材料は、イオン化ポテンシャルが充分に大きい化合物であり、電子障壁層として好ましい材料は、電子親和力が充分に小さい化合物である。具体的には有機EL用途で公知な材料であるバソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)等が陰極側の正孔障壁層材料として挙げられる。
Figure 2011029219
さらに、バッファー層には、上記n層材料として例示した無機半導体化合物を用いてもよい。また、p型無機半導体化合物としてはCdTe、p−Si、SiC、GaAs、WO等を用いることができる。
5.基板
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものが好ましい。例えば、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
本発明の有機薄膜太陽電池の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。
各層の膜厚は特に限定されないが、適切な膜厚に設定する。一般に有機薄膜の励起子拡散長は短いことが知られているため、膜厚が厚すぎると励起子がヘテロ界面に到達する前に失活してしまうため光電変換効率が低くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生してしまうため、充分なダイオード特性が得られないため、変換効率が低下する。通常の膜厚は1nmから10μmの範囲が適しているが、5nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
乾式成膜法の場合、公知の抵抗加熱法が好ましく、混合層の形成には、例えば、複数の蒸発源からの同時蒸着による成膜方法が好ましい。さらに好ましくは、成膜時に基板温度を制御する。
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、適切な溶媒に溶解又は分散させて発光性有機溶液を調製し、薄膜を形成するが、任意の溶媒を使用できる。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。尚、使用可能な溶媒は、これらに限定されるものではない。
本発明においては、有機薄膜太陽電池のいずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
製造例1[チエノアセン誘導体の合成]
下記の反応により、化合物A及びBを合成した。
Figure 2011029219
(A−1)中間体A1の合成
300mL四つ口ナス型フラスコにアントラ[2,3−b]チオフェン−5,12−ジオン(10.3g,39.0mmol,)を秤り取り、系内をアルゴン置換した後、無水トルエン(100mL)、無水テトラヒドロフラン(THF)(50mL)に溶解させた。反応溶液を−60℃に冷却し、フェニルリチウムの1.9Mジフェニルエーテル溶液(65.0mL,124mmol)をゆっくり滴下した。4時間攪拌した後、メタノール、水を加えて反応を停止し、有機層を抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた中間体A1(18.3g)は精製せずに次の反応に用いた。
(A−2)化合物Aの合成
300mL四つ口ナス型フラスコに粗中間体A1(18.3g)、ヨウ化カリウム(19.4g,117mmol)、ホスフィン酸ナトリウム一水和物(6.20g,58.4mmol)を秤り取り、系内をアルゴン置換した。酢酸(100mL)を加えた後、4時間加熱攪拌した。室温に戻した後、水を加え、析出した粉末を濾過した。水、メタノールで洗浄した後、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物A(8.36g,18.0mmol)を得た。(2段階収率46%)
この固体の核磁気共鳴測定(H−NMR)、電解離脱質量分析(FDMS)、及び液体クロマトグラフィ(HPLC)による純度の測定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ8.20(s,1H),8.15(s,1H),7.67−7.61(m,9H),7.54−7.52(m,4H),7.39(d,J=6Hz,1H),7.15(dd,J=7,3Hz,2H)
・FDMS:計算値C2818S=386、実測値m/z=386(M,100)
・HPLC:98.4%(検出波長254nm:面積%)
上で得られた固体(0.55g)を220℃/4.5x10−4Paで昇華精製することにより黄色アモルファス固体(0.50g)を得た。
・HPLC:98.8%(検出波長254nm:面積%)
尚、化合物Aはトルエンに1wt%以上の濃度で溶解した。
(B−1)中間体B1の合成
300mL四つ口ナス型フラスコに化合物A(2.0g,5.2mmol)を秤りとり、系内をアルゴン置換した後、無水THF(40mL)に溶解させた。系内を−60℃に冷却した後、n−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(4.8mL,7.8mmol)をゆっくり加え、1時間攪拌した。ヨウ素(1.6g,6.2mmol)のTHF溶液(30mL)をゆっくり加え、さらに4時間攪拌した。メタノール、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体B1(2.1g)を得た。(収率79%)
H−NMR(400MHz,CDCl
δ8.06(s,1H),8.03(s,1H),7.65−7.61(m,8H),7.52−7.47(m,4H),7.47(s,1H),7.30(dd,J=7,3Hz,2H)
(B−2)化合物Bの合成
300mL四つ口ナス型フラスコに中間体B1(1.0g,2.0mmol,)、フェニルボロン酸(0.8g,6.4mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.13g,0.11mmol)を秤りとり、系内をアルゴン置換した後、トルエン(20mL)に溶解させた。2M炭酸ナトリウム水溶液(6mL,12mmol)を加え、9時間加熱攪拌した。水を加え、有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物B(0.6g)を得た(収率67%)。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ8.13(s,1H),8.09(s,1H),7.68−7.53(m,17H),7.50(s,1H),7.44−7.38(m,2H).
・FDMS:計算値C3422S=462、実測値m/z=462(M,100)
・HPLC:93.9%(検出波長254nm:面積%)
上で得られた固体(0.28g)を260℃/5.3x10−1Paで昇華精製することにより黄色アモルファス固体(0.27g)を得た。
・HPLC:96.1%(検出波長254nm:面積%)
化合物Bはトルエンに1wt%以上の濃度で溶解した。
製造例2
下記の反応により、化合物Cを合成した。
Figure 2011029219
(1)中間体C1の合成
チオフェン−2,3−ジカルボアルデヒド(2.0g,14mmol)、アントラセン−1,4ジオール(2.9g,14mmol)をエタノール(300ml)に溶解させ、これに5%水酸化カリウム水溶液(20ml)を加えて室温で1時間撹拌した。
反応混合物をろ別し、水、エタノールで洗浄して中間体C1(3.7g,12mmol)を得た。(収率85%)
H−NMR(400MHz,CDCl
8.96(s,1H),8.87(s,2H),8.14−8.10(m,2H),7.81(d,J=5Hz,1H),7.73−7.70(m,2H),7.62(dd,J=5Hz,2H)
(2)中間体C2の合成
アルゴン雰囲気下、中間体C1(3.7g,12mmol)を無水THF(80ml)に懸濁し、ドライアイス/メタノール浴で−78℃に冷却した。これに1.9Mフェニルリチウムのエーテル溶液(16ml,31mmol)を加えて、冷却浴をはずし、室温で1時間撹拌した。反応混合物を水(100ml)で失活させ、有機層を抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して赤色固体を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製して淡褐色固体(4.3g,9.1mmol)を得た。(収率78%)
H−NMR(400MHz,CDCl
δ8.43(s,1H),8.35−8.34(m,3H),7.94−7.90(m,2H),7.56−7.52(m,3H),7.41(dd,J=5Hz,1H),7.01−6.94(m,10H),3.06(s,2H)
(3)化合物Cの合成
中間体C2(4.3g,9.1mmol)、ヨウ化カリウム(6.0g,36mmol)、ホスフィン酸ナトリウム一水和物(7.7g,73mmol)を酢酸(50ml)に溶解させ、4時間還流した。反応混合物をろ別し、水、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物C(3.4g)を得た。(収率86%)
H−NMR(400MHz,CDCl
δ8.31(s,2H),8.19(s,1H),8.14(s,1H),7.78−7.59(m,14H),7.36(d,J=6Hz,1H),7.19(d,J=6Hz,1H),
・FDMS:計算値C32H20S=436、実測値m/z=436(M+,100)
・HPLC:92.0%(検出波長254nm:面積%)
上で得られた固体(2.6g)を280℃/5.3x10−1Paで昇華精製することにより赤色アモルファス固体(0.8g)を得た。
・HPLC:91.3%(検出波長254nm:面積%)
この化合物はトルエンに1wt%以上の濃度で溶解した。
製造例3
下記の反応により、化合物Dを合成した。
Figure 2011029219
(1)中間体D1の合成
300mL四つ口フラスコにベンゾ[b]チオフェン−3−カルバルデヒド(5.0g,31mmol)、エタンジオール(2.5mL,44mmol)を秤りとり、Dean−Stark管を取り付けた後、系内をアルゴン置換した。無水トルエン(200mL)に溶解させた後、硫酸(1滴)を加え、9時間加熱還流した。反応溶液を氷冷し、炭酸ナトリウムを加えて中和し、濾過した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体D1(5.7g,28mmol)を得た(収率90%)。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ7.88(d,J=8Hz,1H),7.76(d,J=8Hz,1H),7.53(s,1H),7.33−7.30(m,2H),6.09(s,1H),4.00−3.96(m,2H)
(2)中間体D2の合成
300mL四つ口フラスコに中間体D1(15.7g,28mmol)を秤りとり、系内をアルゴン置換した。無水THF(100mL)に溶解させた後、反応溶液を−60℃に冷却し、1.6Mブチルリチウムのヘキサン溶液(26mL,42mmol)をゆっくり加えた。1時間攪拌した後、無水ジメチルホルムアミド(DMF)(3.0mL,39mmol)を加え、4時間攪拌した。反応終了後、水を加え、有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体D2(5.8g,25mmol)を得た(収率89%)。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ10.6(s,1H),8.11(d,J=8Hz,1H),7.84(d,J=8Hz,1H),7.47(d,J=8Hz,1H),7.41(d,J=8Hz,1H),6.47(s,1H),4.28−4.27(m,1H),4.15−4.14(m,1H)
(3)中間体D3の合成
300mL四つ口フラスコに中間体D2(4.7g,20mmol)を秤りとり、THF(50mL)に溶解させた後、3N塩酸(100mL)を加え、15分間攪拌した。有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体D3(4.7g,20mmol)を得た(収率quant.)。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ10.8(s,1H),10.7(s,1H),8.63(dd,J=6,3Hz,1H),7.94(dd,J=6,3Hz,1H),7.59−7.57(m,2H)
(4)中間体D4の合成
300mL四つ口フラスコに中間体D3(2.0g,11mmol)、2,3−ジヒドロナフタレン−1,4−ジオン(1.8g,11mmol)を秤りとり、系内をアルゴン置換した。無水エタノール(100mL)に溶解させた後、水酸化カリウム(2.4g,42mmol)を加え、9時間加熱還流した。反応終了後、水を加え、有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体D4(1.1g,3.5mmol)を得た(収率33%)。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ9.07(s,1H),8.80(s,1H),8.40−8.35(m,3H),7.94−7.91(m,1H),7.84−7.82(m,2H),7.61−7.53(m,2H)
(5)中間体D5の合成
300mL四つ口ナス型フラスコに中間体D4(1.1g,3.5mmol)を秤り取り、系内をアルゴン置換した後、無水トルエン(48mL)、無水THF(24mL)に溶解させた。反応溶液を−60℃に冷却し、フェニルリチウムの1.9Mジフェニルエーテル溶液(7.6mL,14.4mmol)をゆっくり滴下した。5時間攪拌した後、メタノール、水を加えて反応を停止し、有機層を抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた中間体D5(1.0g)は精製せずに次の反応に用いた。
(6)化合物Dの合成
300mL四つ口ナス型フラスコに粗中間体D5(1.0g)、ヨウ化カリウム(3.9g,24mmol)、ホスフィン酸ナトリウム一水和物(1.2g,11mmol)を秤り取り、系内をアルゴン置換した。酢酸(30mL)を加えた後、4時間加熱攪拌した。室温に戻した後、水を加え、析出した粉末を濾過した。水、メタノールで洗浄した後、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物D(0.23g,0.53mmol)を得た(2段階収率15%)。
。1H−NMR(400MHz,CDCl
δ8.44(s,1H),8.09(s,1H),7.95(d,J=8Hz,1H),7.70−7.50(m,17H)
・FDMS:計算値C32H20S=436、実測値m/z=436(M+,100).
・HPLC:93.1%(UV254,面積%)
上で得られた固体(0.23g)を220℃/9.5x10−2Paで昇華精製することにより赤色アモルファス固体(0.20g)を得た。
・HPLC:94.1%(検出波長254nm:面積%)
化合物Dはトルエンに1wt%以上の濃度で溶解した。
[有機薄膜太陽電池の作製]
実施例1
25mm×75mm×0.7mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄した後、UVオゾン洗浄を30分間実施した。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず下部電極である透明電極ラインが形成されている側の面上に、透明電極を覆うようにして、膜厚30nmの化合物Aを抵抗加熱蒸着により、1Å/sで成膜した。続けて、この化合物A膜上に膜厚60nmのC60を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜し、その上に10nmのバソクプロイン(BCP)を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜した。最後に、連続して対向電極として金属Alを膜厚80nm蒸着させ、有機薄膜太陽電池を形成した。面積は0.5cmであった。
Figure 2011029219
この有機薄膜太陽電池をAM1.5条件下(光強度(Pin)100mW/cm)でI−V特性を測定した。その結果、開放端電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、変換効率(η)を表1に示す。尚、光電変換効率は下記式によって導出した。
Figure 2011029219
同じPinに対して、Voc、Jsc及びFFがいずれも大きな化合物ほど優れた変換効率を示す。
実施例2−4
化合物Aをそれぞれ化合物B〜化合物Dへ変更した以外は実施例1と同様に有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
比較例1、2
化合物AをそれぞれmTPD、銅フタロシアニンへ変更した以外は実施例1と同様に有機薄膜太陽電池を作製した。結果を表1に示す。
Figure 2011029219
Figure 2011029219
表1からわかるように、本発明で使用する有機薄膜太陽電池用材料は、比較例化合物に比べ、優れた変換効率と有機溶媒に対する良好な溶解性を持つことが明らかになった。
本発明の有機薄膜太陽電池用材料は、電池を構成する有機薄膜層に用いることができる。特に、p層の材料として好適である。
本発明の有機薄膜太陽電池は、時計、携帯電話及びモバイルパソコン等に使用できる。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表されるチエノアセン誘導体を含有する有機薄膜太陽電池用材料。
    Figure 2011029219
    (式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
    〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R〜R10のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。
    〜R10の少なくとも1つは水素以外の基である。)
  2. 前記式(1)で表わされるチエノアセン誘導体が、下記式(2)で表わされるチエノアセン誘導体である請求項1に記載の有機薄膜太陽電池用材料。
    Figure 2011029219
    (式中、R,R,R及びRは、式(1)と同様である。
    11〜R20はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R,R,R11〜R20のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
  3. 前記式(2)で表わされるチエノアセン誘導体が、下記式(3)で表わされるチエノアセン誘導体である請求項2に記載の有機薄膜太陽電池用材料。
    Figure 2011029219
    (式中、R,R,R11〜R20は式(2)と同様である。
    21及びR22はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R11〜R20,R21,R22のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
  4. 前記式(2)で表わされるチエノアセン誘導体が、下記式(4)で表わされるチエノアセン誘導体である請求項2に記載の有機薄膜太陽電池用材料。
    Figure 2011029219
    (式中、R,R,R11〜R20は式(2)と同様である。
    31〜R34はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R,R,R11〜R20,R31〜R34のうち、隣接するものは互いに結合して環を成してもよい。)
  5. 一対の電極の間に、少なくともp層を有し、前記p層が請求項1〜4のいずれかに記載の材料からなる有機薄膜太陽電池。
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