JP2011026593A - 流動性向上剤、該流動性向上剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物、成形品 - Google Patents

流動性向上剤、該流動性向上剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物、成形品 Download PDF

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洋彰 音成
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Abstract

【課題】ポリカーボネート樹脂とABS樹脂との樹脂組成物に対して、流動性と難燃性、更には機械的特性とのバランスを取るための流動性向上剤を提供する。
【解決手段】アルキルメタクリレート単位を主成分とする重合体(a1)の存在下で、芳香族ビニル単量体を主成分とする単量体混合物(a2)を重合して得られ、アセトンに対する可溶成分の含有率が90質量%以上であり、可溶成分の質量平均分子量が5,000〜100,000である、流動性向上剤(A)の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、流動性向上剤、及び該流動性向上剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂(以下、「PC樹脂」という。)とABS樹脂との樹脂組成物は、PC樹脂の優れた耐熱性及び機械的特性と、ABS樹脂の優れた低温での耐衝撃性を併せ持つ材料として電気・電子部品、自動車部品、機械部品等の多くの用途に用いられている。
PC樹脂とABS樹脂との樹脂組成物に対しては、成形品の形状の複雑化や、成形品の薄肉化から、成形加工時の流動性の向上が要求されている。また、難燃性の向上も要求されている。
PC樹脂とABS樹脂との樹脂組成物の流動性を向上させるため、フェニルメタクリレートとスチレンの共重合体であり、質量平均分子量が10,000〜200,000である流動性向上剤を配合することが提案されている(特許文献1)。
また、ブチルアクリレートの重合体の存在下、スチレン及びアクリロニトリルをグラフトした共重合体であり、質量平均分子量が10,000〜100,000である流動性向上剤を配合することが提案されている(特許文献2)。
一方で、PC樹脂とABS樹脂との樹脂組成物の難燃性を向上させるため、有機リン化合物や、無機又は有機金属塩系難燃剤を配合する方法が多数提案されている。
しかしながら、これらの方法を組み合わせても、流動性と難燃性、更に機械的特性とのバランスを取ることは困難であった。
特開2006−257126号公報 国際公開第2003/072620号パンフレット
本発明の目的は、PC樹脂とABS樹脂との樹脂組成物に対して、流動性と難燃性、更には機械的特性とのバランスを取るための流動性向上剤を提供することである。
本発明は、アルキルメタクリレート単位を主成分とする重合体(a1)の存在下で、芳香族ビニル単量体を主成分とする単量体混合物(a2)を重合して得られ、アセトンに対する可溶成分の含有率が90質量%以上であり、可溶成分の質量平均分子量が5,000〜100,000である、流動性向上剤(A)の製造方法である。
また本発明は、前記の製造方法で得られる流動性向上剤(A)、PC樹脂(B)、ゴム質重合体(c1)の存在下で、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を含む単量体混合物(c2)を重合して得られるグラフト共重合体(C)、及び芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位を含有するビニル共重合体(D)を含有するポリカーボネート樹脂組成物である。
また本発明は、前記のPC樹脂組成物を成形して得られる成形品である。
本発明の流動性向上剤は、PC樹脂に配合することで、成形加工時の流動性を向上させることができる。
本発明のPC樹脂組成物は、成形加工時の流動性に優れる。
本発明の成形品は、難燃性に優れ、機械的特性の低下が抑制される。
本発明の流動性向上剤は、アルキルメタクリレート単位を主成分とする重合体(a1)の存在下で、芳香族ビニル単量体を主成分とする単量体混合物(a2)を重合して得られ、アセトンに対する可溶成分の含有率が90質量%以上であり、可溶成分の質量平均分子量が5,000〜100,000である。
本発明の重合体(a1)は、アルキルメタクリレート単位を主成分とする。アルキルメタクリレート単位を形成する原料となるアルキルメタクリレートは、アルキル基が直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
アルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−メチルブチルメタクリレート、3−メチルブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、エイコシルメタクリレートが挙げられる。
これらは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
これらの中では、流動性に優れることから、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートがより好ましい。
重合体(a1)は、必要に応じて、その他の単量体単位を含んでもよい。
その他の単量体単位を形成する原料となるその他の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル;ビニルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物;無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物が挙げられる。
重合体(a1)は、アルキルメタクリレート単位を主成分とする。具体的には、重合体(a1)は、100質量%中に、アルキルメタクリレート単位を60質量%以上含有し、70質量%以上含有することが好ましい。
また、重合体(a1)は、100質量%中に、その他の単量体単位を40質量%以下含有し、30質量%以下含有することが好ましい。
単量体混合物(a2)は、芳香族ビニル単量体を主成分とする。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンが挙げられる。
これらは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
これらの中では、流動性に優れることから、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレンが好ましく、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましい。
単量体混合物(a2)は、必要に応じて、その他の単量体を含んでもよい。
その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル;ビニルグリシジルエーテル等のエポキシ基を含有する化合物;無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物が挙げられる。
単量体混合物(a2)は、芳香族ビニル単量体を主成分とする。具体的には、単量体混合物(a2)は、100質量%中に、芳香族ビニル単量体を60質量%以上含有し、70質量%以上含有することが好ましい。
また、単量体混合物(a2)は、100質量%中に、その他の単量体を40質量%以下含有し、30質量%以下含有することが好ましい。
本発明の流動性向上剤における、重合体(a1)と単量体混合物(a2)との比率は、流動性と機械的特性のバランスから、重合体(a1)/単量体混合物(a2)が1〜90/10〜99質量%が好ましく、5〜70/30〜95質量%がより好ましく、10〜50/50〜90質量%が更に好ましい。ここで、重合体(a1)と単量体混合物(a2)の合計は100質量%である。
重合体(a1)の比率が上記の範囲であれば、重合体(a1)と単量体混合物(a2)を結合させることが可能であり、流動性の向上効果が発現する。
本発明の流動性向上剤は、アセトンに対する可溶成分の含有率が90質量%以上である。好ましくは92質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。
上記可溶成分の含有率が90質量%以上であれば、充分な流動性の向上効果が発現する。
本発明の流動性向上剤は、アセトンに対する可溶成分の質量平均分子量が5,000〜100,000である。
質量平均分子量の下限値は、好ましくは7,000であり、より好ましくは8,000であり、更に好ましくは10,000である。質量平均分子量の上限値は、80,000であり、より好ましくは70,000であり、更に好ましくは60,000である。
質量平均分子量が5,000以上であれば、相対的に低分子量物が低減し、耐熱性や機械的特性を低下させない。また、成形時の発煙、ミスト、機械汚れ、フィッシュアイ等の外観不良といった問題が発生しない。
質量平均分子量が100,000以下であれば、流動性向上剤自体の溶融粘度が高くならず、充分な流動性の向上効果が発現する。
本発明の流動性向上剤は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、バルク重合でのリビングアニオン重合、RAFT系等のリビングラジカル重合等、公知の重合方法によって得ることができる。
また、重合体(a1)のマクロモノマーを用いて単量体混合物(a2)を共重合する方法や、重合体(a1)の側鎖又は末端に不飽和基を導入し、その存在下で単量体混合物(a2)を共重合する方法によっても得ることができる。
マクロモノマーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリ(メチルメタクリレート−フェニルメタクリレート)マクロモノマー、ポリ(メチルメタクリレート−メチルアクリレート)マクロモノマー、ポリ(メチルメタクリレート−ベンジルメタクリレート)マクロモノマー、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)マクロモノマーが挙げられる。
重合体の側鎖又は末端に不飽和基を導入する方法としては、例えば、重合体(a1)を形成する単量体に対して、不飽和基を2つ以上有する単量体0.5〜5質量%を配合し、重合開始剤、連鎮移動剤を添加し、高温で重合する方法が挙げられる。
不飽和基を2つ以上有する単量体としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
この中では、流動性の向上効果が優れることから、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の反応性の異なる2種以上の不飽和基を有する単量体が好ましい。
重合開始剤としては、例えば、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[N−2−(カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]4水和物等のアゾ系開始剤;酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが挙げられる。
本発明の流動性向上剤を乳化重合で製造した場合には、凝固法やスプレードライ法等の公知の技術によって、粉体として得ることができる。
本発明で用いるPC樹脂(B)は、公知のPC樹脂であり、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。
PC樹脂(B)の粘度平均分子量は、10,000〜50,000が好ましく、14,000〜35,000がより好ましく、15,000〜30,000が更に好ましく、23,000〜30,000が特に好ましい。
粘度平均分子量が15,000〜30,000であれば、流動性と耐熱性、機械的特性のバランスに優れるPC樹脂組成物となり、粘度平均分子量が23,000〜30,000であれば、成形加工時の後収縮によるヒケの発生がなく、機械的特性と表面外観が優れるPC樹脂組成物となる。
粘度平均分子量が10,000以上であれば、実用上充分な耐衝撃性や耐熱性が得られ、また耐薬品性も良好となる。一方、粘度平均分子量が50,000以下であれば、射出成形時の流動性が良好であり、成形加工温度が高くなり過ぎないことから、PC樹脂組成物の熱安定性を低下させない。
尚、PC樹脂(B)は、上記範囲外の粘度平均分子量のものを配合して得たものであってもよい。殊に、上記範囲を超える、50,000以上、更には100,000以上の粘度平均分子量のPC樹脂は、高いエントロピー弾性を有する。その結果、ガスアシスト成形、射出プレス成形及び発泡成形において、良好な成形加工性を発現する。
PC樹脂(B)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生したPC樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたPC樹脂の使用も可能である。
使用済みの製品としては、例えば、防音壁、ガラス窓、透光屋根材、自動車サンルーフ等のグレージング材;風防や自動車ヘッドランプレンズ等の透明部材;水ボトル等の容器;光記録媒体が挙げられる。これらは多量の添加剤や他樹脂等を含むことがなく、目的の品質が安定して得られやすい。殊に自動車ヘッドランプレンズや光記録媒体は、上記の粘度平均分子量のより好ましい条件を満足するため、好ましい態様として挙げられる。
尚、上記のバージン原料とは、その製造後に未だ市場において使用されていない原料を指す。
本発明で用いるグラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体(c1)の存在下で芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を含む単量体混合物(c2)を重合して得られる。
ゴム質重合体(c1)としては、例えば、ポリブタジエン等のジエン系ゴム;ブチルアクリルゴム等のアルキル(メタ)アクリレート系ゴム;エチレン−プロピレンゴム等のエチレン−プロピレン系共重合体ゴム;ポリオルガノシロキシサン系ゴム;ジエン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム;ポリオルガノシロキシサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム;ポリオルガノシロキシサン/ジエン系複合ゴムが挙げられる。
ゴム質重合体(c1)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ブロムスチレンが挙げられる。この中では、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
芳香族ビニル単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
シアン化ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロメタクリロニトリルが挙げられる。この中では、アクリロニトリルが好ましい。
シアン化ビニル単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
単量体混合物(c2)は、必要に応じて、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体以外の、その他の単量体を含有してもよい。
その他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸化合物が挙げられる。
その他の単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
グラフト共重合体(C)中のゴム質重合体(c1)の含有率は、30〜85質量%が好ましい。更に、流動性の向上、成形品の耐衝撃性の向上、グラフト共重合体(C)の微粉発生の抑制、ブロッキングの防止から、ゴム質重合体(c1)の含有率は、35〜80質量%がより好ましく、40〜75質量%が更に好ましい。
ここで、グラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体(c1)と単量体混合物(c2)の合計が100質量%である。
グラフト共重合体(C)は、公知の重合方法によって製造することができる。例えば、ゴム質重合体(c1)のラテックスと、単量体混合物(c2)の一部又は全量を混合することによって、単量体混合物(c2)をゴム質重合体(c1)に含浸させ、次いで、重合する方法が挙げられる。
グラフト共重合体(C)としては、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体)、MABS(メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体)、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム重合体)、AES(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン重合体)が挙げられる。
本発明で用いるビニル共重合体(D)は、芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位を含有する。
芳香族ビニル単量体単位を形成する原料となる芳香族ビニル単量体としては、単量体混合物(c2)で例示したものを用いることができる。
シアン化ビニル単量体単位を形成する原料となるシアン化ビニル単量体としては、単量体混合物(c2)で例示したものを用いることができる。
ビニル共重合体(D)は、必要に応じて、芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位以外の、その他の単量体単位を含有してもよい。
その他の単量体単位を形成する原料となるその他の単量体としては、単量体混合物(c2)で例示したものを用いることができる。
ビニル共重合体(D)(100質量%)中の芳香族ビニル単量体単位の含有率は45〜80質量%が好ましく、シアン化ビニル単量体単位の含有率は20〜55質量%が好ましい。ビニル共重合体(D)中の芳香族ビニル単量体単位の含有率は55〜80質量%がより好ましく、シアン化ビニル単量体単位の含有率は20〜45質量%がより好ましい。
ビニル共重合体(D)の質量平均分子量は、80,000〜200,000が好ましい。
ビニル共重合体(D)は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の重合方法によって製造することができる。
本発明のPC樹脂組成物での、流動性向上剤(A)の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。
(B)〜(D)成分については、PC樹脂(B)30〜98質量%、グラフト共重合体(C)1〜60質量%、ビニル共重合体(D)1〜60質量%が好ましい。また、(B)40〜90質量%、(C)5〜50質量%、(D)5〜50質量%がより好ましい。また、(B)45〜85質量%、(C)7〜40質量%、(D)7〜40質量%が更に好ましい。
ここで、(B)〜(D)成分の合計は100質量%である。
本発明で用いる難燃剤(E)は、PC樹脂の難燃剤として公知の化合物である。この中では、(E−i)有機リン系難燃剤、(E−ii)有機金属塩系難燃剤、(E−iii)シリコーン系難燃剤が好ましい。
(E−i)有機リン系難燃剤
有機リン系難燃剤としては、アリールホスフェート化合物が好適である。アリールホスフェート化合物は難燃性の向上に効果的であり、且つアリールホスフェート化合物は可塑化効果があるため、耐熱性の低下はあるものの、本発明のPC樹脂組成物の成形加工性を高められる点で有利である。
アリールホスフェート化合物は、従来難燃剤として公知の各種ホスフェート化合物が使用できる。
アリールホスフェート化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリ(2,6−キシリル)ホスフェート等のモノホスフェート化合物;レゾルシノールビスジ(2,6−キシリル)ホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;4,4−ジヒドロキシジフェニルビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマー;トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート等のハロゲンで置換されたアリールホスフェート化合物が挙げられる。
有機リン系難燃剤の配合量は、(B)〜(D)の合計100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましく、0.01〜25質量部がより好ましく、0.1〜20質量部が更に好ましい。
有機リン系難燃剤の配合量が0.001質量部以上であれば、難燃性の向上効果が発現し、30質量部以下であれば、耐熱性や耐衝撃性が低下しない。
(E−ii)有機金属塩系難燃剤
有機金属塩系難燃剤は、耐熱性がほぼ維持されると共に少なからず帯電防止性を付与できる点で有利である。本発明において最も有利に使用される有機金属塩系難燃剤は、含フッ素有機金属塩化合物である。含フッ素有機金属塩化合物とは、フッ素置換された炭化水素基を有する有機酸と金属イオンからなる金属塩化合物をいう。
具体例としては、フッ素置換有機スルホン酸の金属塩、フッ素置換有機硫酸エステルの金属塩、フッ素置換有機リン酸エステルの金属塩が挙げられる。
この中では、フッ素置換有機スルホン酸の金属塩が好ましく、パーフルオロアルキル基を有するスルホン酸の金属塩がより好ましい。
有機金属塩系難燃剤の金属イオンを構成する金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
この中では、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
含フッ素有機金属塩化合物の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.005〜0.6質量部が好ましく、0.005〜0.2質量部がより好ましく、0.008〜0.13質量部が更に好ましい。
上記の範囲内であれば、含フッ素有機金属塩化合物の配合により、難燃性及び帯電防止性が発現する。
その他上記の含フッ素有機金属塩化合物以外の有機金属塩系難燃剤としては、フッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩が好ましい。該金属塩としては、例えば、脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
(E−iii)シリコーン系難燃剤
シリコーン系難燃剤として使用されるシリコーン化合物は、燃焼時の化学反応によって難燃性を向上させるものである。シリコーン化合物は、その燃焼時にそれ自体が結合して、又は樹脂に由来する成分と結合してストラクチャーを形成することにより、又は該ストラクチャー形成時の還元反応により、PC樹脂に難燃効果を付与するものと考えられている。
従って、この反応における活性の高い基を含んでいることが好ましく、具体的にはアルコキシ基及びハイドロジェン(即ちSi−H基)から選択された少なくとも1種の基を所定量含んでいることが好ましい。
シリコーン化合物は、直鎖状であっても分岐構造を持つものであってもよい。またシリコン原子に結合する有機残基は炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましい。
有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;トリル基等のアラルキル基が挙げられる。この中では、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましい。
シリコーン系難燃剤の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜7質量部がより好ましく、1〜5質量部が更に好ましい。
本発明で用いるアンチドリップ剤(F)とは、燃焼時の溶融滴下を防止し難燃性を更に向上させるためのもので、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましく使用される。(以下、ポリテトラフルオロエチレンを「PTFE」ということがある。)
PTFEは、固体形状の他、水性分散液形態でも使用可能である。また、PTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性及び機械的特性を得るために、他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
PTFEの市販品としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lが挙げられる。PTFEの水性分散液の市販品としては、例えば、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jが挙げられる。
混合形態のPTFEの市販品としては、例えば、三菱レイヨン(株)のメタブレンA3800、メタブレンA3750、GEスペシャリティーケミカルズ社製のBLENDEX B449が挙げられる。
混合形態のPTFEにおけるPTFEの割合は、1〜60質量%が好ましく、5〜55質量%がより好ましい。PTFEが上記の範囲内であれば、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
アンチドリップ剤(F)の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましく、0.1〜0.6質量部が更に好ましい。
本発明で用いる強化剤(G)とは、ゴム質重合体であり、中でもコアシェルタイプのグラフト共重合体が好ましい。コアシェルタイプのグラフト共重合体とは、コア(芯)とシェル(殻)から構成される2層以上の構造を有しており、コア部分は軟質なゴム状態であり、表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、強化剤(G)自体は粉末状(粒子状態)である。
強化剤(G)は市販されており、容易に入手可能である。シェルの部分にメチルメタクリレートに代表されるアルキル(メタ)アクリレート成分が共重合されたゴム質重合体は、スチレン系硬質重合体の存在下においてもPC樹脂マトリクス中に選択的に存在しやすく、これによりPC樹脂組成物全体の衝撃性の向上に寄与する。
強化剤(G)の市販品としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム又はブタジエン−アクリル複合ゴムを主体とするものとして、三菱レイヨン(株)のメタブレンCシリーズ(例えばC223A等)、Wシリーズ(例えばW450A等)、(株)カネカのカネエースBシリーズ(例えばB−56等)が挙げられる。
アクリル−シリコーン複合ゴムを主体とするものとして、三菱レイヨン(株)のメタブレンSシリーズ(例えばS2001、SRK200等)が挙げられる。
本発明のPC樹脂組成物には、成形加工時の外観を整えるために艶消し剤を添加することが可能である。
また、本発明のPC樹脂組成物には、成形加工時の分子量や色相を安定化させるために、各種安定剤や色材を使用することができる。安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤が挙げられる。
(i)リン系安定剤
リン系安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル、第3級ホスフィンが挙げられる。
亜リン酸化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
リン酸化合物としては、例えば、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、が挙げられる。
亜ホスホン酸化合物としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトが挙げられる。
ホスホン酸化合物としては、例えば、ベンゼンホスホン酸ジメチルが挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、例えば、トリエチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィンが挙げられる。
(ii)ヒンダードフェノール系安定剤
ヒンダードフェノール系安定剤としては、通常樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノールが挙げられる。
リン系安定剤及びヒンダードフェノール系安定剤は、いずれかが配合されることが好ましい。殊にリン系安定剤が配合されることが好ましく、トリオルガノホスフェート化合物が配合されることがより好ましい。
リン系安定剤及びヒンダードフェノール系安定剤の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.005〜1質量部が好ましく、0.01〜0.3質量部がより好ましい。
(iii)紫外線吸収剤
本発明のPC樹脂組成物は、ゴム成分や難燃剤の影響によって耐候性に劣る場合がある。このような劣化を防止するため、紫外線吸収剤の配合は有効である。
本発明の紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体等のベンゾトリアゾール系;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系;2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等の環状イミノエステル系;1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン等のシアノアクリレート系が挙げられる。
紫外線吸収剤の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、0.03〜2質量部がより好ましく、0.02〜1質量部が更に好ましく、0.05〜0.5質量部が特に好ましい。
(iv)離型剤
本発明のPC樹脂組成物には、その成形時の生産性向上や成形品の歪みの低減を目的として、離型剤を配合することが好ましい。
離型剤としては公知のものが使用でき、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイル等)、パラフィンワックス、蜜蝋が挙げられる。
この中では、脂肪酸エステルが好ましい。
離型剤の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.005〜2質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部が更に好ましい。上記の範囲内であれば、PC樹脂組成物は良好な離型性を有する。
(v)染顔料
本発明のPC樹脂組成物は、更に各種の染顔料を含有して、多様な意匠性を発現することができる。
蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料が挙げられる。
この他にも、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料が挙げられる。
また、メタリック顔料を配合して、メタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、各種板状フィラーに金属被膜又は金属酸化物被膜を有するものが好ましい。
染顔料の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.00001〜1質量部が好ましく、0.00005〜0.5質量部がより好ましい。
(vi)光高反射用白色顔料
本発明のPC樹脂組成物は、光高反射用白色顔料を配合して光反射効果を付与することができる。
光高反射用白色顔料としては、二酸化チタン(特にシリコーン等有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が好ましい。
光高反射用白色顔料の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、3〜30質量部が好ましく、8〜25質量部がより好ましい。
(vii)帯電防止剤
本発明のPC樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、この場合には、帯電防止剤を配合することが好ましい。
帯電防止剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩等のアリールスルホン酸ホスホニウム塩;アルキルスルホン酸ホスホニウム塩等の有機スルホン酸ホスホニウム塩;テトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩等のホウ酸ホスホニウム塩;有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸カルシウム等の有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩;アルキルスルホン酸アンモニウム塩、アリールスルホン酸アンモニウム塩等の有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。
帯電防止剤の配合量は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.001〜5質量部が好ましく、0.005〜3.5質量部がより好ましい。
(viii)その他の添加剤
本発明のPC樹脂組成物には、(A)〜(D)成分以外の他の熱可塑性樹脂、その他の流動向上剤、抗菌剤、流動パラフィン等の分散剤、光触媒系防汚剤、熱線吸収剤、及びフォトクロミック剤を配合することができる。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂))、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−G)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン樹脂、熱可塑性フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂等)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、エチレン−(α−オレフィン)共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂等)が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂は、(B)〜(D)成分の合計100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
(PC樹脂組成物の製造)
本発明のPC樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。
例えば(A)〜(D)成分、及び任意の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等の予備混合手段を用いて充分に混合した後、ベント式二軸押出機等の溶融混練機で溶融混練し、その後、ペレタイザーによりペレット化する方法が挙げられる。
本発明のPC樹脂組成物は、上記のペレットを射出成形して成形品を得ることができる。
射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形等が挙げられる。
また、本発明のPC樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルム等の形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。
本発明の成形品は、OA機器や家電製品の内部部品やハウジング等や自動車内外装部品への応用に好適である。
これらの製品としては、例えば、パソコン、ノートパソコン、CRTディスプレー、プリンター、携帯端末、携帯電話、コピー機、ファックス、記録媒体(CD、CD−ROM、DVD、PD、FDD等)ドライブ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、テレビ、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク等の音声機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサー等の筐体や各種部品、ドアハンドル、フロントグリル、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーステレオ部品等の車両用部品が挙げられる。
更に、本発明の成形品には、各種の表面処理を行なうことが可能である。表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、印刷等の成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常のPC樹脂に用いられる方法が適用できる。
表面処理としては、例えば、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、メタライジング(蒸着等)が挙げられる。
更に、本発明の成形品は、金属との密着性にも優れることから、蒸着処理及びメッキ処理の適用も好ましい。
このようにして金属層が設けられた成形品は、電磁波シールド部品、導電部品、アンテナ部品等に利用できる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
実施例に示した各物性の評価は、以下に示す方法により実施した。
(1)アセトン可溶成分の含有率
流動性向上剤1.0gを、25℃でアセトン50mlに24時間浸漬し、14,000rpmで30分間遠心分離して、アセトン不溶成分を分離した。分離したアセトン不溶成分を、真空乾燥機を用いて50℃で乾燥した後、質量を測定した。
下式1によりアセトン可溶成分の含有率を算出した。
アセトン可溶成分の含有率[%]
=(1−[アセトン不溶成分の質量]/1.0)×100 (式1)
(2)質量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、流動性向上剤の質量平均分子量を測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定条件は、下記の通りであり、標準ポリスチレンによる検量線から質量平均分子量を求めた。
装置 :東ソー(株)製 「HLC8220」
カラム :東ソー(株)製 「TSKgel SuperMultipore HZ−H」(内径4.6mm×長さ150mm×2本)
溶離液 :テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.35ml/分
測定温度 :40℃
試料注入量:10μl(試料濃度:0.1%)
(3)スパイラル流動長
PC樹脂組成物のペレットを、射出成形機(機種名「SE−100DU」、住友重機械工業(株)製)を用いて、成形温度280℃、速度200mm/秒、圧力100MPa、幅15mm、厚さ2mmのスパイラル金型、金型温度60℃にて成形を行ない、PC樹脂組成物のスパイラル流動長を測定した。
(4)シャルピー衝撃強度
成形品(シャルピー衝撃強度試験用のノッチありの試験片)を、JiS K7111に準拠し、23℃及び−30℃の測定温度でシャルピー衝撃強度を測定した。
(5)面衝撃性
成形品(100mm×100mm×2mmの試験片)を、JiS K7211に準拠し、0℃の測定温度で試験を行なった。
延性破壊したものを「○」、脆性破壊したものを「×」、と判定した。
(6)曲げ弾性率
成形品(80mm×10mm×4mmの試験片)を、JiS K7171に準拠し、2mm/分の試験速度にて曲げ弾性率の測定を行なった。
(7)荷重たわみ温度
成形品(80mm×10mm×4mmの試験片)を、JiS K7191に準拠し、曲げ応力1.80MPaにて試験を行なった。
(8)難燃性
UL規格94Vに従い、厚み1.5mmで燃焼試験を実施した。
[実施例1] 流動性向上剤(A−1)の製造
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、脱イオン水118部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25部(商品名「ネオペレックスG−15」、花王(株)製)、メチルメタクリレート50部、アリルメタクリレート0.65部、n−オクチルメルカプタン1.1部を投入し、窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、70℃まで昇温した。
次いで、液温が70℃となった時点で、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオナミジン]テトラハイドレート0.09部(商品名「VA−057」、和光純薬工業(株)製)及び脱イオン水5.0部の混合液を添加し、重合を開始した。その後、内温70℃で60分間保持し、重合を進行させた。
ここに、アクリロニトリル14部、スチレン36部、n−オクチルメルカプタン1.05部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.02部(商品名「V−65」、和光純薬工業(株)製)、脱イオン水30部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部(商品名「ネオペレックスG−15」、花王(株)製)のプレ乳化液を120分かけて滴下した。その後、内温70℃で120分間保持し、流動性向上剤(A−1)のラテックスを得た。
得られた流動性向上剤(A−1)のラテックスの固形分は、44.8%であった。
流動性向上剤(A−1)のラテックスを、回転円盤式噴霧乾燥機(機種名「L−8型スプレードライヤー」、大川原化工機(株)製)を用いて、乾燥用加熱ガスの入口温度150℃及び出口温度65℃で噴霧乾燥した。
得られた流動性向上剤(A−1)は、アセトン可溶成分の比率が99%、質量平均分子量が2.8万であった。
[実施例2、比較例1〜2] 流動性向上剤(A−2)〜(A−4)の製造
表1に示す原材料に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、流動性向上剤(A−2)〜(A−4)を得た。
(但し、(A−2)と(A−3)のプレ乳化液は、180分かけて滴下した。)
[比較例3] 流動性向上剤(A−5)の製造
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、脱イオン水118部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6.3部(商品名「ネオペレックスG−15」、花王(株)製)、スチレン8.7部、フェニルメタクリレート1.3部、n−オクチルメルカプタン0.05部を投入し、窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、80℃まで昇温した。
次いで、液温が80℃となった時点で、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオナミジン]テトラハイドレート0.12部(商品名「VA−057」、和光純薬工業(株)製)及び脱イオン水5.0部の混合液を添加し、重合を開始した。その後、内温70℃で30分間保持し、スチレン78.3部、フェニルメタクリレート11.7部、n−オクチルメルカプタン0.45部の混合物を180分かけて滴下した。その後、内温70℃で120分間保持し、流動性向上剤(A−5)のラテックスを得た。
その後の操作は実施例1と同様にして、噴霧乾燥した。
得られた流動性向上剤(A−1)〜(A−5)のアセトン可溶成分の含有率、質量平均分子量を、表1に示す。
Figure 2011026593
表1に記載の略号を、以下に示す。
MMA :メチルメタクリレート
BA :ブチルアクリレート
AMA :アリルメタクリレート
AN :アクリロニトリル
St :スチレン
PhMA :フェニルメタクリレート
n−OM :n−オクチルメルカプタン
DBSNa :ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
VA−057:「VA−057」(商品名、和光純薬工業(株)製)
V−65 :「V−65」(商品名、和光純薬工業(株)製)
[実施例3〜6、比較例4〜13]
表2及び3に記載の配合で各成分を配合し、二軸押出機(機種名「PCM−30」、(株)池貝製)を用いて、シリンダー温度280℃及びスクリュー回転数150rpmで溶融混合してPC樹脂組成物を得て、ペレット状に賦形した。
得られたペレットを、80℃で12時間乾燥した後、100t射出成形機(商品名「SE−100DU」、住友重機(株)製)に供給し、シリンダー温度280℃及び金型温度60℃で射出成形を行ない、成形品を得た。
結果を、表2及び3に示した。
Figure 2011026593
Figure 2011026593
表2及び3に記載の略号を、以下に示す。
PC :粘度平均分子量22000のPC樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製;ユーピロンS−2000F)
ABS :ポリブタジエンからなるゴム成分量が約45質量%のABS樹脂
AS−1:質量平均分子量が約12万であるAS樹脂
AS−2:質量平均分子量が約8万であるAS樹脂
AS−3:質量平均分子量が約5万であるAS樹脂
PX200:レゾルノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]を主成分とするリン酸エステル(大八化学工業(株)製;PX−200(商品名))
A3800:ポリテトラフルオロエチレン含有アンチドリップ剤(三菱レイヨン社製;A3800(商品名))
S2001:シリコーン系強化剤(三菱レイヨン社製;S2001(商品名))
iRGX:フェノール系熱安定剤(チバ・ジャパン(株)製;iRGANOX245(商品名))
PEP36:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化工業社製;アデカスタブPEP36(商品名))
表2から明らかなように、本発明の流動性向上剤(A−1)〜(A−2)を配合した実施例3〜5では、PC樹脂組成物のスパイラル流動長が向上し、成形品の耐衝撃性が優れることが確認された。
本発明の流動性向上剤を配合していない比較例8及び10では、PC樹脂組成物の溶融流動性(スパイラル流動長)が劣り、成形品の耐衝撃性が劣った。
本発明の流動性向上剤に代えて、低分子量AS(AS−3)を配合した比較例7では、PC樹脂組成物は溶融流動性が劣り、成形品の耐衝撃性が劣った。
アルキルメタクリレート単位を主成分とする重合体(a1)を有さない流動性向上剤(A−5)を配合した比較例6では、PC樹脂組成物は溶融流動性が優れるものの、成形品の低温での耐衝撃性、面衝撃性が劣った。
アセトンに対する可溶成分の質量平均分子量が本発明の範囲より大きい流動性向上剤(A−4)を配合した比較例5では、PC樹脂組成物は溶融流動性が劣り、成形品の耐衝撃性が劣った。
重合体(a1)として、アルキルアクリレート単位を主成分とするものを用いた流動性向上剤(A−3)を配合した比較例4では、PC樹脂組成物は溶融流動性が優れるものの、成形品の低温での耐衝撃性が劣った。
表3から明らかなように、本発明の流動性向上剤(A−1)を配合した実施例6では、PC樹脂組成物は溶融流動性が優れ、成形品の難燃性及び耐衝撃性が優れた。
本発明の流動性向上剤を配合していない比較例11〜13では、PC樹脂組成物は溶融流動性が劣り、成形品は難燃性が劣った。

Claims (6)

  1. アルキルメタクリレート単位を主成分とする重合体(a1)の存在下で、芳香族ビニル単量体を主成分とする単量体混合物(a2)を重合して得られ、
    アセトンに対する可溶成分の含有率が90質量%以上であり、
    可溶成分の質量平均分子量が5,000〜100,000である、
    流動性向上剤(A)の製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法で得られる流動性向上剤(A)、
    ポリカーボネート樹脂(B)、
    ゴム質重合体(c1)の存在下で、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を含む単量体混合物(c2)を重合して得られるグラフト共重合体(C)、及び
    芳香族ビニル単量体単位及びシアン化ビニル単量体単位を含有するビニル共重合体(D)を含有するポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 更に、難燃剤(E)を含有する、請求項2記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 更に、アンチドリップ剤(F)を含有する、請求項2又は3記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 更に、強化剤(G)を含有する、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品。
JP2010158433A 2010-07-13 2010-07-13 流動性向上剤、該流動性向上剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物、成形品 Pending JP2011026593A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015189904A (ja) * 2014-03-28 2015-11-02 三菱瓦斯化学株式会社 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物
US10253178B2 (en) 2014-10-03 2019-04-09 Kaneka Corporation Flowability improver for polycarbonate and polyarylate, polycarbonate resin composition, polyarylate resin composition, and molded article thereof
WO2022081000A1 (en) * 2020-10-12 2022-04-21 Toray Industries, Inc. Flame-retardant rubber-reinforced polycarbonate resin composition and molded article thereof

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