JP2011025510A - ガスバリア積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温・高湿環境でガスバリア性に対して優れた耐久性を有するガスバリア積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】プラスチックフィルム基材1の両面または片面に酸化珪素膜2を積層するガスバリア積層体において、動的粘弾性測定(DMA)よって算出される前記酸化珪素膜の弾性率が60〜150GPaの範囲内であること、酸素と珪素の比(O/Si)が1.6〜2.0の範囲内であることにより、高温高湿環境下でガスバリア性の劣化を抑えることができるガスバリア積層体を提供することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、産業資材用途として用いるバリア性及び耐久性に優れたガスバリア積層体に関するものである。特に太陽電池のモジュールセルやその配線を保護するために用いられる、バリア性及び耐久性に優れた裏面保護シート用のガスバリア積層体に関するものである。また用途はこれに限定したものではなく応用展開が可能である。
ガスバリア積層体は食品や精密電子部品及び医薬品の包材として用いられ、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を通過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体や光線による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性等を備えることが求められてきた。近年、このガスバリア積層体は太陽電池モジュールの部材である裏面保護シートを代表とした産業資材用途として用いられるようになってきた。
従来、上記裏面保護シートには温度・湿度などの影響が少ないアルミ等の金属箔がガスバリア層として一般的に用いられてきたが、金属箔は経年劣化により太陽電池のセル及び配線等と絶縁不良を起こすなど欠点を有し問題があった。
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば特許文献に記載されているようなフッ素樹脂フィルム上に、真空蒸着法により酸化珪素の蒸着膜を形成したフィルムが開発されている(特許文献1)。この蒸着フィルムは透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有しているため、金属箔等では得ることができない絶縁特性、透明性を有する包装材料として好適とされている。
しかしながら、従来のように弾性率の低い酸化珪素膜を積層したフィルムでは、酸化珪素膜が劣化するため、長時間の高温高湿環境下ではバリア性の劣化を引き起こすという欠点がある。
この問題を解決するために、従来から酸化珪素膜上にプラスチック樹脂系などのオーバーコートを塗布して用いることによって、プラスチックフィルム基材上に積層された無機酸化物層の劣化をおさえる試みがなされている。
しかしながら、従来は樹脂系オーバーコートやシリカゾル系オーバーコートで酸化珪素膜の劣化を抑えようとすると、ガスバリア積層体の工程数を増やすことになり、かつこれら成分では十分に酸化珪素膜の劣化を抑えることができなかった。
特開平10−308521号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、酸化珪素膜の膜質を変えることにより、高温高湿環境下で試験を行ってもバリア性が劣化しないガスバリア積層体を提供することを目的とする。
本発明者は酸化珪素膜の弾性率を特定の値にすることにより上記の目的が達成できることを見出した。とくに、酸化珪素膜のO/Siを特定の値にすることが好ましいことも見出した。
請求項1記載の発明は、プラスチックフィルム基材の両面または片面に酸化珪素膜を積層してなるガスバリア積層体において、動的粘弾性測定装置(DMA)によって算出される前記酸化珪素膜の弾性率が75〜140GPaの範囲内であることを特徴とする、ガスバリア積層体である。
請求項2記載の発明は、前記酸化珪素膜について、X線光電子分光法(XPS)によって算出される酸素と珪素の比(O/Si)が1.6〜2.0の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア積層体である。
請求項3記載の発明は、前記酸化珪素膜の厚さが5〜300nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスバリア積層体である。
請求項4記載の発明は、前記プラスチックフィルム基材と前記酸化珪素膜との間に、アンカーコート層を設けることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア積層体である。
請求項5記載の発明は、前記アンカーコート層が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂から選択される1種類以上の樹脂にて形成されることを特徴とする、請求項4記載のガスバリア積層体である。
請求項6記載の発明は、前記プラスチックフィルム基材上にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されていることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア積層体である。
請求項7記載の発明は、前記RIE処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、または、これらの混合ガスを用いて1回以上行われる処理であることを特徴とする、請求項6に記載のガスバリア積層体である。
本発明によれば、このようなガスバリア積層体を用いれば、高温高湿環境下においても酸化珪素膜の劣化を抑え、ガスバリア性が劣化しないガスバリア積層体を提供することができる。
具体的には、請求項1に記載の発明によれば、高温高湿環境下においても酸化珪素膜の劣化を抑え、バリア性が劣化しないガスバリア積層体を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、ガスバリア性およびその耐久性をさらに向上させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、ガスバリア性およびその耐久性をさらに向上させることができる。
請求項4から6に記載の発明によれば、高温高湿環境下でプラスチックフィルム基材と酸化珪素膜が剥離しない構造となる。
請求項7に記載の発明によれば、処理液を用いた化学処理に比べて環境を汚染しない処理が可能となる。
本発明のガスバリア積層体の断面図である。 動的粘弾性測定(DMA)で測定された弾性率のスペクトルである。 プレーナ型プラズマ処理を行った場合の概略模式図である。 ホロアノード・プラズマ処理器の断面図である。
以下に、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明のガスバリア積層体を説明する断面図である。図1の実施形態のガスバリア積層体は、プラスチックフィルム基材1の片面に酸化珪素膜2を積層してなる構造を有し、プラスチックフィルム基材1と酸化珪素膜2との間には、必要に応じてアンカーコート層3が設けられている。
本発明のガスバリア積層体は、酸化珪素膜の弾性率を制御している。この結果、水蒸気透過度などのガスバリア性の向上やクラック発生防止につながるだけでなく、高温高湿環境下においても、バリア劣化を抑制することができる。
本発明のガスバリア積層体は、本発明者の次の知見に基づくものである。酸化珪素膜の弾性率は動的粘弾性測定装置(DMA)で測定される。測定温度範囲は20℃〜180℃とし、引張荷重は100mNとし、そこに5Hzと10Hzの振動を与えることにより、測定温度範囲内の貯蔵弾性率を測定することができる。
プラスチックフィルム基材上の酸化珪素膜単体の弾性率を算出する方法としては、まずプラスチックフィルム基材単体の弾性率をリファレンスデータとして測定する。プラスチックフィルム基材として例えばポリエチレンテレフタレート(PET)基材を用いた場合は150℃の時の弾性率は20℃の時の弾性率と比較すると約10分の1になる。一方、酸化珪素膜は20℃および150℃では変化しない。20℃の時、PET基材と酸化珪素膜が一体となった試料では、DMAで測定された弾性率E´はPET基材が支配的になるが、150℃ではPET基材の弾性率が10分の1になるため、酸化珪素膜の弾性率の情報が支配的になる。そこで式(1)に示す複合則を用いて酸化珪素膜単体の弾性率を算出することができる。
式(1)Ef=((h+d)/h)*Ec−(d/h)*Es
Efはフィルム(酸化珪素の弾性率)、EcはPET基材と酸化珪素膜の一体フィルムの150℃時の弾性率、EsはPET基材単体の150℃時の弾性率、hは酸化珪素膜の厚み[mm]、dはPET基材の厚み[mm]である。
通常、蒸着したアモルファスのSiOの弾性率は75GPaよりも小さい値を示す。本発明者の知見によれば、ある一定の値より小さい弾性率ではガスバリア性能は十分に発揮されない。
これに対して、本発明のガスバリア積層体の酸化珪素膜は弾性率を75〜140GPaに調整することにより極めて良好なバリア性を発現することができ、高温高湿環境下でもバリア劣化を起こしにくい。さらに好ましい弾性率は、100〜130GPaである。なお、酸化珪素膜の弾性率は、成膜時に酸素を導入することにより調整できる。
図2にDMAにより測定された温度と弾性率スペクトル(5Hzと10Hz)結果の例を示す。横軸は加熱温度、縦軸は貯蔵弾性率を示す。測定された弾性率は温度に依存し、各温度での弾性率を測定することが可能である。
上述したプラスチックフィルム基材1はプラスチック材料であり、酸化珪素膜の透明性を生かすために可能であれば透明なプラスチックフィルム基材であることが好ましい。プラスチックフィルム基材の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルム基材は延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。この中で、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムが好ましく用いられる。またこのプラスチックフィルム基材の酸化珪素膜が設けられる面と反対側の表面に、公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
プラスチックフィルム基材の厚さは特に制限を受けるものではないが、酸化珪素膜を形成するときの加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜50μmとすることが好ましい。3μm以下である場合は、巻取り装置で加工する場合、シワの発生やフィルムの破断が生じ、200μm以上である場合は、フィルムの柔軟性が低下するため、巻き取り装置では加工が困難になる。
また、産業資材、包装材料としての適性を考慮して酸化珪素膜以外に異なる性質のフィルムを積層することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリフッ化ビニルフィルムやポリフッ化ジビニルなどのフッ素系樹脂フィルムなどが考えられるが、これら以外の樹脂フィルムを積層することもできる。
酸化珪素膜の弾性率を測定する方法としては、引張試験があるが、この方法は、測定対象の膜が積層しているプラスチックフィルム基材に対して極めて薄く、酸化珪素膜単体を正確に算出することが困難であり、ほとんどプラスチックフィルム基材の弾性率を測定していることになる。一方、DMA法測定は、酸化珪素膜を通常の膜厚で確保しつつ、酸化珪素膜単体の弾性率を算出することができる。
本発明のガスバリア積層体は、プラスチックフィルム基材と酸化珪素膜との密着性向上のため、プラスチックフィルム基材と酸化珪素膜の間に、アンカーコート層を設けることが好ましい。アンカーコート層の形成法としては、プラスチックフィルム基材にアンカーコートを塗布する方法が採用でき、形成されたアンカーコート層の上に酸化珪素膜を形成すれば良い。
アンカーコート剤としては、溶剤溶解性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂およびアルキルチタネート等を単独、あるいは2種類以上併せて使用することができる。なかでも好ましくは、アンカーコート層が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂から選択される1種類以上の樹脂にて形成される形態である。
アンカーコート層の厚さは通常0.005〜5μm、好ましくは0.01〜1μmである。5μmを超える膜厚では、すべり性が悪くなり、アンカーコート層自体の内部応力によりプラスチックフィルム基材から剥離しやすくなる場合がある。一方0.005μmに満たない膜厚では、均一な膜厚とはならない可能性がある。
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート層の塗布性、接着性を改良するために、プラスチックフィルム基材表面に放電処理を施しても良い。
本発明のガスバリア積層体は、プラスチックフィルム基材の酸化珪素膜を積層する面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施してもよい。このRIEによる処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用してプラスチックフィルム基材の表面に官能基を持たせるなどの化学的効果と、イオンエッチングすることで表面の不純物を除去したり、表面粗さを大きくしたりといった物理的効果の2つの効果を同時に得ることが可能である。これにより、プラスチックフィルム基材と酸化珪素膜との密着を向上させ、高温高湿環境下で両者が剥離しない構造となる。
本発明におけるRIEによる処理を巻き取り式のインライン装置で行う方法としては、プラスチックフィルム基材の設置されている冷却ドラムに電圧を印加してプレーナ型にする方法(図3)、もしくはホロアノード・プラズマ処理器を用いて処理を行う方法(図4)がある。
プレーナ型で処理を行えば、処理ロール6に接して移動するプラスチックフィルム基材7は電極4としての陰極(カソード)側に設置することができ、高い自己バイアスを得ることによってRIEによる処理が行える(図3)。もし、通常インライン処理で行うように、処理ロール6の対面側に印加電極を設置した場合には、プラスチックフィルム基材7は陽極(アノード)側に設置されることになる(図4)。この時、プラスチックフィルム基材は高い自己バイアスを得られず、ラジカルがプラスチックフィルム基材表面に作用し化学反応するだけの、いわゆるプラズマエッチングしか行われないため、酸化珪素膜とプラスチックフィルム基材との密着性は低いままである。なお、符号5はプラズマ、8はガス導入口、9はマッチングボックス、10は遮蔽板である。
また、ホロアノード・プラズマ処理器とは、中空状の陽極を有し、その陽極の面積(Sa)が、対極となる基板面積(Sc)に比べ、Sa>Scとなるような処理器である(図4)。陽極の面積を大きくすることで、対極となる陰極(プラスチックフィルム基材)上に大きな自己バイアスを発生することが出来る。この大きな自己バイアスにより、安定で強力な表面処理が可能となる。さらに好ましくは、上記ホロアノード電極中に磁石を組み込み、磁気アシスト・ホロアノードとすることで、より強力且つ安定したプラズマ表面処理を高速で行うことである。磁気電極から発生される磁界により、プラズマ閉じ込め効果を更に高め、大きな自己バイアスで高いイオン電流密度を得ることが出来る。
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、アルゴン、酸素、窒素、水素を使用することが出来る。これらのガスは単独で用いても、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。また、2基以上の処理器を用いて、連続して処理を行ってもよい。この時2基以上の処理器は同じものを使用する必要はなく、プレーナ型で処理を行った後に連続してホロアノード・プラズマ処理器を用いて処理を行っても構わない。
次に酸化珪素膜2について、詳しく説明する。酸化珪素膜のXPS法測定によって算出される酸素と珪素の比(O/Si)が1.6〜2.0であることが好ましい。O/Siが1.6より小さい場合、バリア性が低下し、かつバリア層が着色し透明性を失う。一方、2.0より大きい場合、バリア膜の残留応力が大きく、また柔軟性が失われるためクラック等の膜欠陥が生じやすくバリア性が著しく低下する。
また、酸化珪素膜の厚さは、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また、膜厚が300nmを越える場合は薄膜の残留応力によりフレキシビリティを保持させることができず、成膜後外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。
酸化珪素からなる蒸着薄膜層をプラスチックフィルムに積層する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることができる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式または抵抗加熱方式を用いることがより好ましい。また蒸着薄膜層とプラスチックフィルム基材の密着性及び蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いても一向に構わない。
酸化珪素からなる蒸着薄膜層を真空蒸着法によりプラスチックフィルムに積層する場合、成膜条件として、成膜室圧力を5.0×10−2Pa以下、導入ガスの量を1000sccm以下にすることが好ましい。このような成膜室圧力および導入ガス量にすることで、高温高湿環境下でも酸化珪素からなる蒸着薄膜層のバリア性が劣化せず、水蒸気透過度を抑えることができる。
また、酸化珪素膜上には、保護および接着性を向上させるため、オーバーコート層を形成することができる。このオーバーコート層としては、溶剤溶解性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ビニルアルコール樹脂、EVOH樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂およびアルキルチタネート等を単独あるいは2種類以上からなる層を設けることができる。また、オーバーコート層としては、バリア性、摩耗性、滑り性向上のためシリカゾル、アルミナゾル、粒子状無機フィラーおよび層状無機フィラーから選択される1種類以上を添加あるいはこれらの1粒子の存在下で上記樹脂を重合あるいは縮合により形成して得た上記樹脂からなるオーバーコート層が好ましい。
以下に本発明のガスバリア積層体の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[動的粘弾性測定(DMA法)による酸化珪素膜の弾性率の算定]
測定装置は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のDMA装置DMS2100を用いた。試料は縦50mm,横10mmの短冊状にカットした。測定温度範囲は20℃〜180℃として昇温速度は2℃/分、20℃までの降温速度を10℃/分とした。引張荷重は100mNとし、振動は5Hzと10Hzで測定した。測定された貯蔵弾性率E´の5Hzの150℃の時の値をデータとし3回測定してその平均値を採用した。
[X線光電子分光法(XPS)によるO/Siの算出]
測定装置は日本電子株式会社製のX線光電子分光分析装置JPS−90MXVを用いた。X線源として非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、X線出力は100W(10kV−10mA)で測定した。O/Siを求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、Si2pで0.9の相対感度因子を用いて計算した。
<実施例1>
厚さ12μmのPETフィルム(東レ製P60)の片面に、電子線加熱方式を用い、成膜条件として成膜室圧力を1.5×10−2Paとし、導入ガスとして酸素を250sccm導入し、酸化珪素膜を約40nmの厚みで成膜して、ガスバリア積層体を作製した。この時の膜弾性率は122GPa、O/Siが1.8であった。
<実施例2>
導入ガス量を500sccmとし、成膜室圧力を2.2×10−2Paとした以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。この膜弾性率は116GPa、O/Siが1.9であった。
<実施例3>
導入ガス量を750sccmとし、成膜室圧力を3.2×10−2Paとした以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。この膜弾性率は87GPa、O/Siが1.9であった。
<実施例4>
導入ガス量を1000sccmとし、成膜室圧力を4.5×10−2Paとした以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。この膜弾性率は79GPa、O/Siが2.0であった。
<実施例5>
導入ガス量を0sccmとし、成膜室圧力を1.3×10−2Paとした以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。この膜弾性率は130GPa、O/Siが1.7であった。
<比較例1>
導入ガス量を1250sccmとし、成膜室圧力を5.8×10−2Paとした以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。この膜弾性率は66GPa、O/Siが2.1であった。
<比較例2>
導入ガス量を1500sccmとし、成膜室圧力を5.8×10−2Paとした以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。この膜弾性率は70GPa、O/Siが2.1であった。
<評価>
上記サンプルのガスバリア積層体について温度湿度85℃85%1000時間の環境下前後でガスバリア性の指標として水蒸気透過度(g/m・day)を測定した。測定方法はモコン法を用いて行い、その時の測定条件は、水蒸気透過度が40℃−90%RHとした。測定結果を表1に示す。評価基準として、水蒸気透過度5g/m・day以下を示した場合を適として○とし、上記範囲以上のバリア性を示した場合を不適として×とした。
Figure 2011025510
したがって、酸化珪素膜の弾性率が75〜140GPa、O/Siが1.6〜2.0に調整した以外の比較例1、2のバリア性が悪いことが示された。
以上のように本発明のガスバリア積層体は、高温高湿環境下でもガスバリア性が劣化しにくいことが分かった。
本発明のガスバリア積層体は食品や精密電子部品及び医薬品の包材として用いられるほかに、とくに、太陽電池モジュールの部材である裏面保護シートのような産業資材用途に利用できる。
1・・・プラスチックフィルム基材
2・・・酸化珪素膜
3・・・アンカーコート層
4・・・電極
5・・・プラズマ
6・・・処理ロール
7・・・プラスチックフィルム基材
8・・・ガス導入口
9・・・マッチングボックス
10・・・遮蔽板

Claims (7)

  1. プラスチックフィルム基材の両面または片面に酸化珪素膜を積層してなるガスバリア積層体において、動的粘弾性測定装置(DMA)によって算出される前記酸化珪素膜の弾性率が75〜140GPaの範囲内であることを特徴とする、ガスバリア積層体。
  2. 前記酸化珪素膜について、X線光電子分光法(XPS)によって算出される酸素と珪素の比(O/Si)が1.6〜2.0の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア積層体。
  3. 前記酸化珪素膜の厚さが5〜300nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
  4. 前記プラスチックフィルム基材と前記酸化珪素膜との間に、アンカーコート層を設けることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア積層体。
  5. 前記アンカーコート層が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂から選択される1種類以上の樹脂にて形成されることを特徴とする、請求項4記載のガスバリア積層体。
  6. 前記プラスチックフィルム基材上にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されていることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア積層体。
  7. 前記RIE処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、または、これらの混合ガスを用いて1回以上行われる処理であることを特徴とする、請求項6に記載のガスバリア積層体。
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