JP2004314469A - 高分子樹脂積層体および窓材 - Google Patents

高分子樹脂積層体および窓材 Download PDF

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Abstract

【課題】より厳しい摩耗試験条件下においても、ガラス板と全く同等の耐摩耗性が得られる高分子樹脂積層体を提供する。
【解決手段】高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜100μmの架橋樹脂層と、厚みが4〜25μmの酸化珪素層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、架橋樹脂層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時のヤング率が5〜15GPaの範囲にある架橋樹脂層であって、かつ酸化珪素層は前記ヤング率が45〜125GPaの範囲にあり、かつ荷重/変位曲線の終点における変位の値が最大変位の値の0〜40%の範囲内にある酸化珪素層である事を特徴とする高分子樹脂積層体。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、極めて高度な耐摩耗性を付与した高分子樹脂積層体、および該高分子樹脂積層体を用いてなる各種車両用、建築物等の窓材(ここで窓材とは少なくとも透視が可能であるものを示す)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高分子樹脂材料は耐衝撃性、軽量性、加工性等の特徴を生かして、多方面の用途で使用されている。特に近年、その軽量性、安全性を活かして各種車両の窓材の用途に、表面硬度や耐磨耗性を高めた高分子樹脂成形物を適用しようとする動きがある。このような用途ではガラス並の高度な耐磨耗性や屋外での耐候性が要求される。例えば自動車では、ワイパー作動時のすり傷防止やウインドウ昇降時のすり傷防止等において高いレベルの耐摩耗性が要求されるし、非常に高い温度や湿度の環境下での使用も前提にしなくてはならない。
【0003】
高分子樹脂成形物の表面硬度や耐磨耗性を改良する方法として、例えば高分子樹脂成形物の表面にアクリル樹脂層をコーティングし、さらにその上にシロキサン系の硬化被膜をコーティングする方法があり、例えばアルキルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮合物にコロイド状シリカを添加したコーティング用組成物が記載されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
これらの例はすべて湿式コーティングにより層の積層を行っているが、最近では真空蒸着、CVD(化学気相堆積法)等の真空プロセスにより無機酸化物による層を積層する方法が提案されてきている。例えば、真空槽内で電子ビームによる加熱等によって酸化珪素等の材料を蒸発せしめ、蒸発粒子を真空槽内に配置した基板上に堆積させて層を積層する電子ビーム蒸着方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
また電子ビーム加熱により酸化アルミニウムや酸化珪素を蒸発させ、蒸着粒子を蒸着源と基板との間の空間に発生させたプラズマを通過させ、蒸着粒子の運動エネルギーを高めてから基板上に堆積する方法(HADプロセス)が提案されている(例えば非特許文献1、2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−278979号公報
【特許文献2】
特開平1−306476号公報
【特許文献3】
特開2000−318106号公報
【特許文献4】
特開2002−127286号公報
【非特許文献1】
M.Krug、「Abrasion resistant coatings on plastic by PVD high rate deposition」、Proceedings of the 3rd−ICCG
2000、p577
【非特許文献2】
鈴木 巧一 他、「表面処理技術最前線レポート▲4▼ フラウンホーファー 電子ビーム・プラズマ研究所(III)」、工業材料、Vol.49No.7 p72(2001年7月号)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記の湿式コーティングにより成膜を行ってなる高分子樹脂積層体では、シロキサンの硬化皮膜の硬度が低い為に、代替対象とするガラス板に対比すると耐摩耗性は明らかに劣っている。
【0008】
一方、真空プロセスにより無機酸化膜を成膜してなる高分子樹脂積層体では、比較的高い膜の硬度と優れた耐摩耗性が得られる。実際、本発明者らのこれまでの検討において、ポリカーボネート基板上に紫外線硬化樹脂層を介して、所定のヤング率、膜厚の範囲にある二酸化珪素の電子ビーム蒸着膜を積層する事によって、摩耗輪としてCS−10Fを用いた1000回転のテーバー摩耗試験を施した場合のヘイズ値の増加(△H)として、対照サンプルとして用いたガラス板と全く同等の値を得られることが確認されている。
【0009】
しかしながら、例えばテーバー摩耗試験の条件として、前記のCS−10F摩耗輪を用いず、より厳しい摩耗条件となるCS−10摩耗輪を用いた場合には、ガラス板の試験結果よりもヘイズ値の増加(△H)が若干大きくなる場合が多く観られ、耐摩耗性に多少劣るといった結果が得られた。
【0010】
これらの事から本発明者らは、こうしたより厳しい摩耗試験条件下においても、ガラス板と全く同等の耐摩耗性が得られる高分子樹脂積層体を実現することを課題とし、本発明に至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願発明は次の通りである。
1.高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜100μmの架橋樹脂層と、厚みが4〜25μmの酸化珪素層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、架橋樹脂層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時のヤング率が5〜15GPaの範囲にある架橋樹脂層であって、かつ酸化珪素層は前記ヤング率が45〜125GPaの範囲にあり、かつ荷重/変位曲線の終点における変位の値が最大変位の値の0〜40%の範囲内にある酸化珪素層である高分子樹脂積層体。
2.架橋樹脂層として、分子内もしくは単位繰り返し構造内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを前駆材料の主成分とする活性光線硬化樹脂層を用いる1の高分子樹脂積層体。
3.架橋樹脂層として、有機珪素トリアルコキシドの加水分解物を前駆材料の主成分とする熱硬化樹脂層を用いる1の高分子樹脂積層体。
4.酸化珪素層として、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)のいずれかの方法、もしくはこれらの方法の組み合わせにより形成した酸化珪素層を用いる1〜3のいずれかの高分子樹脂積層体。
5.高分子樹脂基板の厚みが1〜20mmの範囲にある1〜4のいずれかの高分子樹脂積層体。
6.高分子樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂による成形基板である1〜5のいずれかの高分子樹脂積層体。
7.前記1〜6のいずれかの高分子樹脂積層体を少なくとも構成要素として含む車両用もしくは建築物用の窓材。
【0012】
以下において、本願発明を更に詳しく説明する。
本発明の課題である、より厳しい摩耗条件においてガラス板と全く同等の耐摩耗性の実現には、後述するように、酸化珪素層および架橋樹脂層の厚みとナノインデント物性を所定の範囲とする事が好ましいことがわかった。
【0013】
まず第一に酸化珪素層の厚みについては4〜25μm、より好ましくは5〜20μmの範囲にある事が好ましかった。厚みが4μm未満では耐摩耗性は不十分になりやすく、25μmを超えると酸化珪素層の密着性の低下が観られる場合が多い。
【0014】
酸化珪素層のナノインデンテーション物性は、実施例記載の測定条件において、ヤング率が45〜125GPaの範囲とする事が好ましく、より好ましくは50〜125GPa、更に好ましくは55〜125GPaの範囲とする事が好ましい。ヤング率が45GPa未満では耐摩耗性は不十分になる場合が多い。尚、ここで上限とした125GPaの値は酸化珪素膜で得られる最大値として記載した。
【0015】
また更に、実施例記載の測定条件における荷重/変位曲線の終点の変位の値(除荷過程の最後に荷重が0となった直後の変位の値)が小さいほど好ましく、少なくとも前記の変位の値が最大変位の値の0〜40%の範囲、より好ましくは0〜30%、更に好ましくは0〜20%、最も好ましくは0〜10%にある事が好ましい。この割合が40%超になると耐摩耗性が不十分になる場合が多い。こうした終点の変位と最大変位との比率は、酸化珪素層の塑性変形性の度合を示すものと考えられ、このような結果から、より高度な耐摩耗性の実現には酸化珪素層の塑性変形性をより小さくする事が好ましいものと考えられる。
【0016】
このように高いヤング率と塑性変形性を兼ね備えた酸化珪素層は、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法(化学的気相堆積法)等の真空プロセスを用いて作成される事が好ましい。
【0017】
更には、例えば電子ビーム蒸着法とスパッタリング法の組み合わせ(積層膜)や、イオンプレーティング法とCVD法の併用(混合膜)といった必要に応じて異なるプロセスを組み合わせた方法も好適に用いる事ができる。
【0018】
酸化珪素層は、化学組成的に完全な二酸化珪素でなく、酸化数が2未満である酸化珪素や、酸素と珪素以外の元素を若干含むようなものであっても用いる事は可能である。このような異種材料としては、チタン、アルミナ、ジルコニウム、鉛、セリウム、亜鉛、錫等の異種元素や、各種の有機珪素化合物、有機金属化合物、およびアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の高分子樹脂等が挙げられる。
【0019】
架橋樹脂層の厚みは3〜100μm、より好ましくは5〜100μm、更に好ましくは10〜100μmの範囲にある事が好ましかった。厚みが3μm未満では耐摩耗性が不十分になりやすく、一方、100μm超では架橋樹脂層の形成が難しくなり、また高分子樹脂基板との密着性が低下する場合が多くなった。
【0020】
架橋樹脂層のナノインデンテーション測定によるヤング率は、実施例記載の測定条件において5〜15GPaの範囲にある事が好ましく、6〜15GPaの範囲にある事がより好ましい。ヤング率が5GPa未満では耐摩耗性の低下が観られる場合が多く、15GPa超では架橋樹脂層と高分子樹脂基板や酸化珪素層との密着性が低下する場合が多い。
【0021】
また架橋樹脂層は、層の吸水率がおよそ0〜2%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0〜1.5%、更に好ましくは0〜1%の範囲である。吸水率が2%超では、酸化珪素層を作成する真空プロセスに悪影響を与える場合が多い。
【0022】
更に架橋樹脂層は、層のガラス転移温度もしくは軟化温度が120℃以上、より好ましくは150℃以上である事が好ましい。これらは例えば示差熱分析(DSC)における吸熱ピーク(複数ピークが現れる場合には、主成分に由来するメインピークの温度)や、熱走査型の動的粘弾性の分析等によって測定が可能である。
【0023】
このような物性を有する架橋樹脂層としては、例えば、分子内もしくは単位繰り返し構造内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを主な前駆材料とする活性光線硬化樹脂層や、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機珪素トリアルコキシドの加水分解物を主な前駆材料とする熱硬化樹脂層等が好ましく挙げられる。
【0024】
活性光線硬化樹脂層の前駆材料となるモノマー、オリゴマーとしては、吸水率の観点で分子内もしくは単位繰り返し構造内に、水酸基、アミノ基等の親水基を側鎖、末端に含有する事はあまり好ましくなく、脂肪鎖や脂肪環等の疎水基を適度な割合で含んでいる事が好ましく、耐熱性の観点でシクロ環、イソシアヌル環、シアヌル環、イソホロン、1,3−ジオキサン等の環状構造を含む事が好ましい。
【0025】
より具体的には例えば、シクロ環を含有する多官能(メタ)アクリレート(例えばジシクロペンタニルジアクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート)、イソシアヌル環、シアヌル環を含有する多官能アクリレート(例えばイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、シアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート)、2官能イソシアネートを変性してなる多官能ウレタンアクリレート(例えばヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートを変性してなるヘキサアクリレート)、1,3ジオキサンを含有する多官能アクリレート、フタル酸を変性してなるポリエステルアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびまたはそのエチレンオキサイドおよびまたはプロピレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が好ましく挙げられ、この他にも、前記の変性物を含めた各種の構造の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0026】
これら前駆モノマー、オリゴマーは、必要に応じて適当な溶剤で希釈の後、高分子樹脂基板上に湿式コーティングを行い、その後、紫外線(可視光線を含んで良い)や電子線等の活性光線を適量照射する事によって活性光線硬化層の硬化、形成が行われる。
【0027】
尚、これら活性光線硬化層には、適量の副成分添加が好ましい場合があり、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等の有機珪素化合物や、平均粒径が3〜30nm程度の酸化珪素、アクリル樹脂等の微粒子、更に光重合開始剤、光重合開始助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤等の添加が必要に応じて行われる。
【0028】
尚、これら架橋樹脂層の前駆材料の高分子樹脂基板へのコーティング方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、(ドクター)ナイフコート法、ダイレクトグラビヤコート法、オフセットグラビヤ法、リバースグラビヤ法、リバースロールコート法、(マイヤー)バーコート法等の方法が適用できる。
【0029】
尚、コーティングに好適な塗液粘度への調整の目的で、各種の溶剤による前駆材料の希釈も必要に応じて行われる。溶剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコール、ターシャルブチルアルコール、1メトキシ2プロパノール、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、ジアセトンアルコール等が例示される。
【0030】
尚、架橋樹脂層の前駆材料を塗布した高分子樹脂基板は、前駆材料中の残留溶剤の乾燥除去、レベリング性の向上、活性光線硬化層と高分子樹脂基板との間の密着性の向上等の各種目的において、活性光線の照射を行う前に一度50〜130℃に昇温することが好ましい場合が多い。
【0031】
また高分子樹脂基板上に架橋樹脂層を積層するにあたっては、必要に応じて、高分子樹脂基板と架橋樹脂層の密着性を高める効果を有するプライマー層を積層したり、高分子樹脂基板上に各種の表面処理を施してもよい。
【0032】
このようなプライマー層としては、アクリル系の熱可塑性樹脂を主成分にする層が好適に挙げられ、また表面処理としては、各種のプラズマ処理、コロナ処理、UV−オゾン処理、高圧の熱水もしくは水蒸気による表面洗浄、アルコール等による溶剤洗浄などの方法が好適に挙げられる。
【0033】
さて高分子樹脂基板の平均的な厚みは、およそ1〜20mmの範囲にある事が好ましく、より好ましくは2〜20mmの範囲、更に好ましくは3〜15mmの範囲にある事が好ましい。厚みが1mm未満では窓材としての力学的強度が不十分になりやすく、20mm超では基板の重量増加の影響が大きくなるので好ましくない。
【0034】
高分子樹脂基板としては、例えばポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂や各種のポリオレフィン系樹脂(例えばJSR社の商品名「アートン」、日本ゼオン社の商品名「ゼオノア」)等を成形してなる高分子樹脂基板が挙げられる。
【0035】
これらの中でも特に、耐衝撃性、透明性、成形性、軽量性等の観点からポリカーボネート樹脂を成形してなる高分子樹脂基板が最も好ましく用いられ、各種車両や建築物等の窓材の用途においては特に好ましく用いられる。
【0036】
尚、ここでポリカーボネートとは、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸結合形成性化合物との重縮合物を意味する。
【0037】
かかる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4,4−ジヒドロキシフェニル−1,1’−m−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオレンなどのビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−シクロヘキサン、4−[1−〔3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル〕−1−メチルエチル]−フェノール、4,4’−〔1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル〕ビスフェノール、2,2,2’,2’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビス−〔1H−インデン〕−6,6’−ジオールなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、などのジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−3,3’−イサチンなどのジヒドロキシジアリールイサチン類、3,6−ジヒドロキシ−9,9−ジメチルキサンテンなどのジヒドロキシジアリールキサンテン類、レゾルシン、3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−t−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、3−クミルレゾルシン、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル等ジヒドロキシジフェニル類が挙げられる。中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0038】
炭酸結合形成性化合物としては、具体的にはホスゲンやトリクロロメチルクロロフォーメート、ビス(トリクロロメチル)カーボネートなどのホスゲン類、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートなどのジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート類、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネートなどのアルキルアリールカーボネート類などを挙げることができる。
【0039】
ホスゲン類を用いる場合はポリカーボネートは溶液法で製造され、カーボネート結合を有する炭酸エステル類を用いる場合は溶融法で製造される。炭酸エステル類の中ではジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0040】
これらの化合物は単独または組み合わせて用いることができる。
【0041】
なお、他の成分を共重合またはブレンド成分として含むものもポリカーボネートの範疇に含まれる。
【0042】
本願発明にもっとも適するものは芳香族ジヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用し、炭酸結合形成性化合物として、ホスゲン類やカーボネート結合を有する炭酸エステル類を使用するポリカーボネートである。
【0043】
それ以外の成分の共重合率またはブレンド率が高いとポリカーボネートの特徴が薄れるため、共重合率またはブレンド率は20重量%以下が望ましく、10重量%以下が更に望ましい。
【0044】
また、こうしたポリカーボネートによる成形基板の少なくとも片面に、紫外線吸収剤を含み、樹脂自身の耐候性に優れるポリカーボネート以外の樹脂によるフィルムを積層してなる基板も好ましく用いられる。このような基板を用い、フィルムを積層した側の基板面が屋外側の面(太陽光が主に入射する面)になるように用いることにより、高分子樹脂積層体の硬度や耐候性を高める事ができる。
【0045】
フィルムは、取り扱い性やラミネート適性から10〜200μm程度の厚みが好ましく、あらかじめ成形してあるポリカーボネート基板にラミネートしたり、場合によっては粘着加工を行っても良いし、共押し出し法により一体成形しても良いし、インジェクション型内でのインサート成形、もしくは二色成形によってポリカーボネートと一体化しても良い。
【0046】
このような方法によると、積層したフィルム自身の紫外線照射による着色、物性劣化は極めて少ない上に、紫外線を長期にわたりほぼ100%吸収可能な量の紫外線吸収剤を混合したフィルムを用いることにより、ポリカーボネート基板には全く紫外線が入射しないので紫外線による着色や物性劣化の心配が無くなる。このような樹脂フィルムとしては特にアクリル系の樹脂によるフィルムが好ましく挙げられ、ポリカーボネート上に積層して一体化した樹脂基板として、例えば帝人化成の商品名「パンライトPC−8111」などが好ましく例示される。
【0047】
本願発明の高分子樹脂積層体は、その用途における必要性から、積層体の透視性が高いことが好ましい。具体的には積層体のヘーズ(曇値)は5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0048】
高分子樹脂積層体の光透過率に関しては、一般的には高いことが望まれ、全光線透過率の値で50%以上である事が好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。しかしながら高分子樹脂積層体の用途によっては必ずしも高い光透過率が望まれない場合もあり、例えば、自動車の後部座席用の窓材においては太陽光線の直射による車内温度の上昇を抑える目的等において、高分子樹脂基板内に可視光の吸収剤(顔料、染料等)を混合する等の方法により、意図的に積層体の光透過率を低下させる場合には、前記の全光線透過率の好適範囲を逸脱していても構わない。
【0049】
【実施例】
以下に本願発明における好適な実施例について説明する。しかしながら本願発明はこれらの例に限定されるものでは決してない。尚、実施例および比較例における特性評価は以下の要領にて行った。
【0050】
1.架橋樹脂層および酸化珪素層の厚みの測定
走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察像に基づいて求めた。
【0051】
2.ナノインデンテーションによるヤング率、塑性変形性の測定
株式会社エリオニクス製のナノ・インデンテーション・テスター ENT−1100aを用いて、酸化珪素の蒸着層および活性光線硬化層のナノインデンテーション測定を行った。尚、測定位置はサンプルの中央部(対角線の交点付近)とした。
【0052】
すなわち稜間隔115度の三角錐圧子を用い、最大荷重値を均等に250分割してステップ状に押し込み荷重を増加させていき(最大荷重1mNの場合には4μN/ステップとなる)、10秒間で最大荷重に到達させ、この最大荷重を1秒間保持した後に、ステップ状に押し込み荷重を徐荷していき、10秒間で荷重値を0に戻す。
【0053】
測定は25℃の恒温条件下で行い、測定装置とサンプルの温度を十分に安定させた後に、最大荷重1mNの条件で上記荷重/変位曲線の測定を行い、ヤング率と塑性変形性の測定を行った。尚、測定は5回連続測定して行い、その平均値をもって測定値とした。
【0054】
尚、塑性変形性については、前記除荷過程の最終ステップにおける変位の値、すなわち荷重が0に戻った直後の変位の値の、最大変位(最大荷重で1秒保持した直後の変位の値)に対する割合(%)で表した。
【0055】
尚、測定にあたっては、圧子の先端摩耗等によって測定データの誤差を生じる場合があるので、各サンプルの測定を行う前には、まず市販のシリコンウエハの測定を行い、最大荷重1mNの条件下でシリコンウエハを押し込んだ時の最大変位の値が55nm±3nmの範囲内にあることを確認した後に、サンプルの測定を行う事とした。尚、最大変位の値がこの範囲を逸脱した場合には、新しい圧子に交換を行うものとした。
【0056】
尚、参考として表1に5mm厚の市販の板ガラスならびに0.4mm厚のポリカーボネートの成形シート(帝人化成「パンライトPC−1151」)を前記測定条件にて測定した結果を併記した。
【0057】
3.ヘイズ値と全光線透過率の測定
日本電色工業社製の測定器(商品名「COH−300A」)を用いて測定を行った。
【0058】
尚、ヘイズ値は以下の式により求められた値である。
ヘイズ(H)=(拡散透過率/全光線透過率)×100 (%)
【0059】
4.耐摩耗性評価
テーバー摩耗試験機(東洋精機製)を用い、CS−10摩耗輪(Calibrase製)を使用して、試験荷重4.9N、1000回転の条件で、酸化珪素層の形成面のテーバー摩耗試験を行った時のサンプルのヘイズ値増加(ΔH)の大きさを用いて評価した。
【0060】
ヘイズ値(増加)の測定は、サンプル上の互いに離れた4箇所(摩耗輪通過部分)についてそれぞれ行い、その平均値をもってサンプルのヘイズ増加の値とした。
【0061】
評価方法としては、サンプルの試験を行う際に同時に、対照となる市販のガラス板(5mm厚み)の試験を行い、サンプルの試験値(△Hs)がガラス板の試験値(△Hg)の±15%以内の値を示した場合にサンプルはガラス板同等の耐摩耗性を有する(評価○)と評価した。
【0062】
尚、CS−10の磨耗輪については、日本工業規格K6301に記載されているゴム硬度測定法に準拠して測定を行った時の摩耗輪のゴム硬度が所定の範囲(規格範囲)にある事を確認して用いた。
またサンプルのヘイズ値の測定は、摩耗試験面を光線検出器側に向けた配置で行った。
【0063】
5.密着性評価
日本工業規格K5400に記載されている碁盤目テープ試験法に準拠して行った。
【0064】
尚、サンプルによっては、酸化珪素層の形成直後に酸化珪素層が経時的に自然剥離していくといった現象が観られ、充分に評価が行えないものがあったが、このようなサンプルについては0/100(自然)と記載した。
【0065】
[実施例1]
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にメチルメタクリレート(以下MMAと略称する)80.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略称する)13部、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略称する)0.14部及び1,2−ジメトキシエタン200部を添加混合し、溶解させた。次いで、窒素気流中70℃で6時間攪拌下に反応させた。得られた反応液をn−ヘキサンに添加して再沈精製し、MMA/HEMAの組成比90/10(モル比)のコポリマー(アクリル樹脂(I))80部を得た。
【0066】
次にアクリル樹脂(I)8.9部および2−(2’−ヒドロキシー5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール1.5部をメチルエチルケトン20部、メチルイソブチルケトン30部および2−プロパノール30部からなる混合溶媒に溶解し、さらにこの溶液に前記アクリル樹脂(I)のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.5当量となるようにヘキサメチレンジイソシアネート1.1部を添加して25℃で5分間攪拌し、プライマー層形成用塗液を調製した。
【0067】
またメチルトリメトキシシラン120重量部、ノルマルプロピルアルコール100重量部の混合液に氷冷下で10%重量濃度の酢酸水50重量部を少しずつ加え、30分間攪拌した後に、25℃で1時間、引き続いて70℃で2時間の攪拌後、1メトキシ2プロパノール30重量部を加えて室温で24時間攪拌して、架橋樹脂層形成用塗液Aを調製した。
【0068】
高分子樹脂基板としては、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとより合成されたポリカーボネート樹脂による厚み4mm、縦横200mm×200mmの成形板(帝人化成「パンライトPC−1111」)を用いた。
【0069】
まず前記のプライマー層形成用塗液をバーコーターを用いて、ポリカーボネート基板にコーティングし、120℃で1時間熱処理を行って、厚み4.3μmのプライマー層を積層した。
【0070】
次に前記の架橋樹脂層形成用塗液Aをバーコーターを用いて、プライマー層の上にコーティングし、125℃で1時間熱処理を行って、厚み4.5μmの有機珪素による架橋樹脂層を積層した。
【0071】
続いて、この基板を110mm角の大きさに切断した後に、石英ガラスの溶融成形体のターゲットを配したスパッタリング装置の真空槽内にセットし、真空圧力1×10−3Paまで真空排気を行った後、Ar/O=99:1の混合ガスを導入して、真空圧力4×10−1Pa、堆積速度0.002μm/分の条件で高周波マグネトロンスパッタ法による成膜を行い、架橋樹脂層上に4.4μmの酸化珪素層を積層した。
【0072】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0073】
[実施例2]
ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)90重量部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDPE−6E」)10重量部とを混合して用い、紫外線吸収剤2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(チバスペシャリティケミカルズ「チヌビン1577FF」)1.7重量部、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカルス「IRGACURE184」)7重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.05重量部、ノルマルプロピルアルコール80重量部とを混合、よく攪拌して、架橋樹脂層形成用塗液Bを調製した。
【0074】
実施例1で用いたものと同様のポリカーボネート基板上に、架橋樹脂層形成用塗液Bをバーコーターを用いてコーティングした後、70℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmの高圧水銀ランプにより、積算光量1.2J/cmの紫外線を照射し、厚み40μmの架橋樹脂層を積層し、更にこの基板を130℃にコントロールした熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した後、110mm角の大きさに切断した。
【0075】
次にこの基板を電子ビーム蒸着源を備えた真空装置内にセッティングした。基板面が水平方向に平行になるように配置し、蒸着源と基板の中央(対角線の交点)を結ぶ直線が基板面と垂直に交わり、蒸着源と基板の中央との距離は60cmとなる位置にセッティングした。
【0076】
そしてヒーターで基板を90℃に加熱した状態で真空圧力3×10−4Paまで真空排気を行った後、基板を室温(約30℃)まで自然冷却した。尚、室温冷却後の真空槽内の真空圧力は1×10−4Paであった。
【0077】
続いて、蒸着源のるつぼに入れた石英ガラスの破砕粒子(高純度化学研究所製、平均粒径2mm)を電子ビームで加熱して二酸化珪素を気化させ、堆積速度0.3μm/分の条件で架橋樹脂層上に膜厚7.2μmの酸化珪素層を積層した。
【0078】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例3]
ポリエステルジオールからなるテトラアクリレート(東亜合成化学「アロニックスM8030」)90重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)10重量部、γ−メタクリロキシトリメトキシシランによる表面処理を行った平均粒径12nmのシリカ微粒子(触媒化成製、30重量%濃度のイソプロピルアルコール分散液)80重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)5重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン製「SH28PA」)0.12重量部、1メトキシ2プロパノール50重量部とを混合し、よく攪拌して架橋樹脂層形成用塗液Cとした。
【0080】
実施例1で用いたものと同じポリカーボネート基板上に架橋樹脂層形成用塗液Cをバーコーターを用いてコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量0.9J/cmの紫外線を照射して、厚み25μmの架橋樹脂層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した後、110mm角の大きさに切断した。
【0081】
次に、この基板を実施例2と同様に電子ビーム蒸着源を備えた真空装置内にセッティングし、ヒーターで基板を90℃に加熱した状態で真空圧力3×10−4Paまで真空排気を行った後、基板を室温(約30℃)まで自然冷却した。尚、室温冷却後の真空槽内の真空圧力は1×10−4Paであった。
【0082】
続いて、蒸着源のるつぼに入れた石英ガラスの破砕粒子(高純度化学研究所製、平均粒径2mm)を電子ビームで加熱して二酸化珪素を気化させ、堆積速度0.3μm/分の条件で、架橋樹脂層上に膜厚6.2μmの酸化珪素層を積層した。
【0083】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0084】
[実施例4]
実施例2と全く同じ要領でポリカーボネート基板上に架橋樹脂層を積層し、熱処理、基板の切断を行った。
【0085】
次にこの基板を、電子ビーム蒸着源と高周波コイル(アンテナ)を備えた真空装置内にセッティングし、ヒーターで基板を90℃に加熱した状態で真空圧力3×10−4Paまで真空排気を行った後、基板を室温(約30℃)まで自然冷却した。尚、室温冷却後の真空槽内の真空圧力は1×10−4Paであった。
【0086】
続いて、真空装置内にAr/O=99:1の混合ガスを導入して、真空圧力を2×10−1Paとした後、高周波電源から13.56MHz、300Wの高周波電圧を高周波コイルにかけ、真空槽内にプラズマを励起させた。
【0087】
続いて、蒸着源に用いた石英ガラス(二酸化珪素)の破砕粒子(高純度化学研究所製、平均粒径2mm程度)を電子ビーム加熱して二酸化珪素を気化させ、気化した二酸化珪素が前記プラズマ空間を通過した後に基板に堆積するイオンプレーティング法により、堆積速度0.2μm/分の条件で、架橋樹脂上に膜厚6.5μmの酸化珪素層を積層した。
【0088】
尚、ここでも蒸着源と基板の中央(対角線の交点)を結ぶ直線は基板平面と垂直に交わる配置としており、その距離は60cmである。
【0089】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例5]
本実施例では、電子ビーム蒸着とスパッタリングの2つのプロセスを組み合わせて、酸化珪素層を作成した。
【0091】
すなわちまず実施例2と全く同じ要領でポリカーボネート基板上に架橋樹脂層を積層し、熱処理、基板の切断を行った。
【0092】
次にこの基板を、電子ビーム蒸着源を備えた真空装置内にセッティングし、ヒーターで基板を90℃に加熱した状態で真空圧力3×10−4Paまで真空排気を行った後、基板を室温(約30℃)まで自然冷却した。尚、室温冷却後の真空槽内の真空圧力は1×10−4Paであった。
【0093】
続いて、石英ガラスの破砕粒子(高純度化学研究所製、平均粒径2mm)を電子ビームで加熱して二酸化珪素を気化させ、堆積速度0.3μm/分の条件で架橋樹脂層上に膜厚0.6μmの酸化珪素層を積層した。
【0094】
引き続いて、この基板を石英ガラスの溶融成形体のターゲットを配したスパッタリング装置の真空槽内にセットし、真空圧力1×10−3Paまで真空排気を行った後、Ar/O=99:1の混合ガスを導入して、真空圧力4×10−1Pa、堆積速度0.002μm/分の条件で高周波マグネトロンスパッタ法による成膜を行い、前記酸化珪素層上に5.2μmの酸化珪素層を積層した。
尚、本実施例における酸化珪素層のトータルの膜厚は5.8μmである。
【0095】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0096】
[実施例6]
本実施例では、イオンプレーティングとCVDの2つのプロセスを併用して、酸化珪素層を作成した。
【0097】
すなわちまず実施例2と全く同じ要領でポリカーボネート基板上に架橋樹脂層を積層し、熱処理、基板の切断を行った。
【0098】
次にこの基板を、実施例4と同様に電子ビーム蒸着源と高周波コイル(アンテナ)を備えた真空装置内にセッティングし、ヒーターで基板を90℃に加熱した状態で真空圧力3×10−4Paまで真空排気を行った後、基板を室温(約30℃)まで自然冷却した。尚、室温冷却後の真空槽内の真空圧力は1×10−4Paであった。
【0099】
続いて、真空装置内にヘキサメチルジシロキサンのモノマーと酸素との混合ガスを導入して、真空圧力を1×10−1Paとした後、高周波電源から13.56MHz、200Wの高周波電圧を高周波コイルにかけ、真空槽内にプラズマを励起させた。
【0100】
続いて、蒸着源に用いた石英ガラス(二酸化珪素)の破砕粒子(高純度化学研究所製、平均粒径2mm程度)を電子ビーム加熱して二酸化珪素を気化させ、気化した二酸化珪素が前記プラズマ空間を通過した後に基板に堆積するイオンプレーティング法と、ヘキサジメチルシロキサンモノマーを用いたCVD法との併用により、堆積速度0.1μm/分の条件で、架橋樹脂上に膜厚6.3μmの酸化珪素層を積層した。
【0101】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0102】
[比較例1]
実施例2において、酸化珪素膜の膜厚を3.3μmとした以外は全く実施例2と同じ要領で高分子樹脂積層体を作成した。
【0103】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0104】
[比較例2]
実施例2において、基板を真空装置内にセッティングした後、基板を加熱する事なく、室温で真空排気を行い、真空圧力5×10−4Paで酸化珪素膜の電子ビーム蒸着を開始した以外は、全く実施例2と同じ要領で高分子樹脂積層体を作成した。
【0105】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0106】
[比較例3]
実施例2において、基板面を水平方向に対して30度傾けて配置した以外は(ただし蒸着源と基板の中央を結ぶ距離は実施例2と同様に60cmである)、実施例2と同じ要領で高分子樹脂積層体を作成した。尚、基板を傾けて配置をした為に酸化珪素膜の堆積速度は0.25μm/分となった。
【0107】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0108】
[比較例4]
実施例2において、架橋樹脂層を積層せずに直接ポリカーボネート基板上に酸化珪素層を積層した以外は、実施例2と同じ要領で高分子樹脂積層体を作成した。
【0109】
以上の方法で作成した酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0110】
[比較例5]
実施例2において、架橋樹脂層を以下の方法で形成した以外は、実施例2と全く同じ要領で高分子樹脂積層体を作成した。
【0111】
すなわちポリエステルジオールおよびウレタンジオールを原料とする2官能アクリレート(日本化薬「KAYARAD UX−8101」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)1.3重量部、1メトキシ2プロパノール70重量部を70℃の加熱下でよく混合し、室温冷却後、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)8重量部と、ポリエーテル変性ジメチルジシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、イソプロピルアルコール30重量部を混合、良く攪拌して、架橋樹脂層形成用塗液Dとした。
【0112】
この架橋樹脂層形成用塗液Dをバーコーターを用いてポリカーボネート基板にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cmの紫外線を照射して、厚み40μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0113】
以上の方法で作成した架橋樹脂層、酸化珪素層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
Figure 2004314469
【0115】
実施例および比較例における架橋樹脂層と蒸着膜の膜厚、物性の評価結果と、高分子樹脂積層体の評価評価の結果を示す表である。
【0116】
【発明の効果】
ポリカーボネート等の硬度や耐摩耗性の低い樹脂成形物に対して、本願発明を適用することにより、極めて優れた耐摩耗性を有する高分子樹脂積層体を得ることができ、各種車両や建築物の窓材、その他の幅広い用途に利用することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2における基板の真空蒸着装置内での配置を示す模式図である。
【図2】比較例3における基板の真空蒸着装置内での配置を示す模式図である。
【図3】ナノインデンテーション測定の負荷/除荷曲線についての説明図である。
【符号の説明】
1. 基板
2. 蒸着源
3. 電子ビーム
4. 基板
5. 蒸着源
6. 電子ビーム
7. 負荷曲線
8. 除荷曲線
9. 除荷曲線終点の変位
10.最大変位

Claims (7)

  1. 高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜100μmの架橋樹脂層と、厚みが4〜25μmの酸化珪素層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、架橋樹脂層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時のヤング率が5〜15GPaの範囲にある架橋樹脂層であって、かつ酸化珪素層は前記ヤング率が45〜125GPaの範囲にあり、かつ荷重/変位曲線の終点における変位の値が最大変位の値の0〜40%の範囲内にある酸化珪素層である事を特徴とする高分子樹脂積層体。
  2. 架橋樹脂層として、分子内もしくは単位繰り返し構造内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを前駆材料の主成分とする活性光線硬化樹脂層を用いる事を特徴とする請求項1に記載の高分子樹脂積層体。
  3. 架橋樹脂層として、有機珪素トリアルコキシドの加水分解物を前駆材料の主成分とする熱硬化樹脂層を用いる事を特徴とする請求項1に記載の高分子樹脂積層体。
  4. 酸化珪素層として、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)のいずれかの方法、もしくはこれらの方法の組み合わせにより形成した酸化珪素層を用いる事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  5. 高分子樹脂基板の厚みが1〜20mmの範囲にある事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  6. 高分子樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂による成形基板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子樹脂積層体を少なくとも構成要素として含む車両用もしくは建築物用の窓材。
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