JP2011024597A - 組換え糖タンパク質のインビトロでの実用的なシアリル化 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、シアリル化パターンの大規模な改変方法の提供を目的とする。
【解決手段】組換えによって生産された糖タンパク質を含む糖タンパク質をインビトロで実用的にシアリル化する方法を提供することによる。
【選択図】図1

Description

組換え糖タンパク質のインビトロでの実用的なシアリル化発明の分野 本発明は、組換え糖タンパク質を含む糖タンパク質のインビトロでのシアリル化に関する。
発明の背景 血液中の糖タンパク質の循環寿命は、N-結合された炭水化物基の組成及び構造に強く依存する。このことは、腸管外に投与することを目的とする治療用糖タンパク質において、直接に問題となる。一般に、糖タンパク質の循環半減期が最大となるには、N-結合された炭水化物基の末端が、配列NeuAc-Gal-GlcNAcで終わることが必要である。その末端にシアル酸(NeuAc)がない場合、その糖タンパク質は、基となるN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)又はガラクトース(Gal)残基の認識が関係した機構によって、血液中から急速に清掃される(Goochee et al.(1991)Bio/Techno1ogy9:1347-1355)。このため、商品開発においては、治療用糖タンパク質のN-結合された炭水化物基の末端にシアル酸が確実に存在することが、重要な勘案事項となる。
原理的には、ほとんどの治療用糖タンパク質の生産に用いられる哺乳類細胞の培養系には、完全にシアリル化されたN-結合される炭水化物基を有する糖タンパク質を生産する能力が備わっている。しかし、実際には、最適なグリコシル化を達成することは、しばしば困難である。大規模生産の条件下では、細胞による糖タンパク質の過剰生産に、グリコシル化する能力が追い付くことができない。しかも、この能力は、培養条件の多くの些細な変更事項によって、正及び負に影響され得る(Goochee et al.前出)。
トランスジェニック動物での糖タンパク質の生産においても、哺乳類細胞の培養系の場合と同じいくつかの問題が見られる。この場合、糖タンパク質の「生産」は生得的により良く制御されているが、それを操作することは容易でない。グリコシル化が完全でない場合に、その成果を変えるために動物にできることは、ほとんどない。トランスジェニック動物の場合、別の問題もある。人間において主要なシアル酸は、N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)であるが、ヤギ、ヒツジ及びウシでは、全シアル酸の大部分がN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)として生産される。この修飾体の影響は、機能又は制御の面から完全には調べられていないが、このNeuGc置換基は、人間では抗原性を示すことが知られている(Varki(1992)Glycobio1ogy2:25-40)。
商業的に重要な、組換え法及びトランスジェニック法による糖タンパク質に関する最も重要な問題は、末端のシアル酸に関するものなので、末端シアル酸を欠いた炭水化物鎖を、酵素を用いて「末端修飾」するインビトロの方法が求められている。この様な方法では、トランスジェニック法による糖タンパク質に関する前記問題点を、「人間では見られない」シアル酸NeuGcを除去した後に、NeuAcで再シリアル化することによって、解決することができるだろう。これの理想的な方法では、組換え糖タンパク質のN-結合又はO-結合されるオリゴ糖を、実用的な規模で効率よくシアリル化することができるシアリルトランスフェラーゼを用いる。本発明は、前記及びそれ以外の要求を満たすものである。
発明の要約
本発明は、組換え法によって生産された糖タンパク質に存在する糖基をインビトロでシアリル化する方法を提供する。本方法は、この糖基を、シアリルトランスフェラーゼ、シアル酸供与体、及びシアリルトランスフェラーゼ活性に必要なその他の反応体に、十分な時間且つ適切な条件下で接触させて、シアル酸をシアル酸供与体から前記の糖基に転移すること、を含んで成る。
好ましい実施態様では、本方法は、糖タンパク質mgあたり約50mU未満の濃度、好ましくは、糖タンパク質mgあたり約5〜25mUの濃度範囲のシアリルトランスフェラーゼを用いる。典型的には、反応混合液(1ml)中のシアリルトランスフェラーゼの濃度は約10〜50mU/mlであり、そしてその糖タンパク質の濃度は少なくとも約2mg/mlである。好ましい実施態様では、本方法によって、前記の糖基に存在する末端ガラクトース残基の約80%超がシアリル化される。一般に、約80%超のシアリル化を得るのに必要な時間は、約48時間未満である。
本発明の方法に有用なシアリルトランスフェラーゼは、典型的には、約48〜50アミノ酸から成るシアリルモチーフを有し、その中のアミノ酸の約40%が、共通配列RCAVVSAG---DVGSKTに一致する(ただし---は、本モチーフの長さが約48〜50アミノ酸残基となる様なアミノ酸残基の可変数を意味する)ものである。本発明での使用に適しているシアリルトランスフェラーゼの例には、ST3Gal III(好ましくはラットのST3Gal III),ST3Gal IV,ST3Gal I,ST6Gal I,ST3Gal V,ST6Gal II,ST6GalNAc I,ST6GalNAc II及びST6GalNAc IIIがある(ここで用いたシアリルトランスフェラーゼ命名法は、Tsuji et al.(1996)Glycobiology 6:v-xivに記載されている)。本発明の方法では、1種類を超えるシアリルトランスフェラーゼ、例えば、ST3Gal IIIとST3Gal I、又はST3Gal IIIとST6Gal I、あるいはその他の酵素の組み合わせによって、組換え糖タンパク質をシアリル化することができる。本発明の方法で用いられるシアル酸供与体は、一般に、CMP-シアル酸であり、これを反応液に直接加えること、又はその場で酵素的に生成させることができる。好ましい実施態様では、本シアル酸は、NeuAc及びNeuGcの群中から選択される。
本発明では、変更されたシアリル化パターンを有する糖タンパク質も提供され、それでは、本方法によって前記糖タンパク質の末端ガラクトース残基がシアリル化される。
図1は、ノイラミニダーゼで処理されたα1-酸糖タンパク質における、ST3Gal IIIによるシアリル化の時間経過を示す。シアリル化された末端ガラクトース残基の割合(%)が、反応時間に対してプロットされている。 図2は、2つの異なるシアリルトランスフェラーゼ、ST3Gal III及びST6Gal Iによる、ノイラミニダーゼで処理されたα1-酸糖タンパク質のシアリル化の比較を示す。
定義 本明細書中において次の略語が用いられる。
Araはアラビノシルであり、Fruはフルクトシルであり、Fucはフコシルであり、Galはガラクトシルであり、GalNAcはN−アセチルガラクトであり、Glcはグルコシルであり、GlcNAcはN−アセチルグルコであり、Manはマンノシルであり、そしてNueAcはシアリル(典型的に、N−アセチルノイラミニル)である。
オリゴ糖は、還元性末端における糖が実際に還元糖であっても、それでなくても、還元性末端および非還元性末端を有するものと考えられる。認知された名称によると、オリゴ糖は左側に非還元性末端および右側に還元性末端を有するように記載される。本明細書中に記載される全てのオリゴ糖は、非還元性糖のための名称または略語(例えば、Gal)、次に、グルコシド結合の立体配置(αまたはβ)、環結合、結合中に含まれる還元性糖の環位置、そして還元性糖のための名称または略語(GlcNAc)をもって記載される。2つの糖質の間の結合は、例えば、2,3、2→3または(2,3)として表現される。各糖はピラノースである。
用語「シアル酸」とは、9−炭素がカルボキシル化された糖質の種類のいずれかの要素を指す。シアル酸類の最も一般的な要素はN−アセチルノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミンド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノス−1−オン酸)(しばしばNeu5Ac、NeuAcまたはNANAと略す)である。この種類の第二の要素は、NeuAcのN−アセチル基がヒドロキシル化されている、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)である。第三のシアル酸類の要素は2−ケト−3−デオキシノヌロソン酸(KDN)(Nadanoら、(1986)、J.Biol.Chem.261:11550〜11557;Kanamoriら、(1990)J.Biol.Chem.265:21811〜21819)である。9−置換シアル酸、例えば、9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Acのような9−O−C1−C6アシル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acも含まれる。シアル酸類に関しては、例えば、Varki(1992)Glycobiology 2;25〜40,Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function,R.Schauer,Ed(Springer-Verlag,New York(1992))を参照されたい。シアリル化手順におけるシアル酸化合物の合成および使用は国際出願WO92/16640(1992年10月1日公開)に開示されている。
細胞に関して用いるときに、用語「組み換え体」とは、細胞が異種(heterologous)核酸を複製し、または、異種核酸によりコードされたペプチドまたはタンパク質を発現することを示す。組み換え体細胞はネイティブ(非組み換え体)の形態の細胞内に見られない遺伝子を含むことができる。組み換え体細胞は、また、ネイティブの形態の細胞内に見ることができるものであって、細胞内に人工的手段により修飾されまたは再導入された遺伝子をも含むことができる。この用語は、細胞から核酸を取り出すことなく修飾された、細胞に内在する核酸を含む細胞をも含み、このような修飾は遺伝子置換、部位特異性突然変異および関連技術により得られたものを含む。「組み換え体ポリペプチド」は組み換え体細胞により生じたポリペプチドである。
「異種配列」または「異種核酸」は、本明細書中に用いるときに、特定の宿主細胞に対して外来の源に由来するものであり、または、同一の源に由来するものであったとしても、初期形態から修飾されたものである。このように、真核宿主細胞中の糖タンパク質遺伝子は修飾された特定の宿主細胞に内在する糖タンパク質遺伝子を含む。異種配列の修飾は、例えば、制限酵素によりDNAを処理し、プロモーターに操作可能に結合されることができるDNA断片を生じさせることにより行われることができる。このような部位特異的突然変異過程の技術も異種配列を修飾するために有用である。
「配列」とは核酸もしくはアミノ酸のより長い配列(例えば、ポリペプチド)の一部を含む核酸もしくはアミノ酸配列を指す。
「組み換え体発現カセット」または単に「発現カセット」とは、このような配列が容認される宿主での構造遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる核酸要素とともに組み換え的にまたは合成的に形成された核酸構成体である。発現カセットは、少なくとも1つのプロモーター、および、所望により、転写終結シグナルを含む。通常、組み換え体発現カセットは転写される核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)およびプロモーターを含む。発現を行うのに必要であるかまたは助けになるさらなる因子を、ここに記載されるように用いてもよい。例えば、宿主細胞から発現されるタンパク質の分泌を指示するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列をも含むことができる。転写終結シグナル、エンハンサーおよび遺伝子発現に影響を及ぼす他の核酸配列も発現カセット中に含まれてよい。
用語「単離された」とは、ネイティブの状態で見られるような、通常に酵素を伴う成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を指すことが意図される。通常、単離された分子は、例えば、銀染色されたゲル上のバンド強度、または純度を決定するための他の方法により測定して、少なくとも約80%純度であり、通常、少なくとも約90%純度であり、そして好ましくは少なくとも約95%純度である。タンパク質の純度または均質性は当業界において知られている種々の手段、例えば、タンパク質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動、次に、染色による視覚化により示されることができる。特定の目的のために、高解像度が必要であり、そしてHPLCまたは精製のための同様の手段が用いられるであろう。
本発明の実施は、組み換え体核酸の形成およびトランスフェクションされた宿主細胞中の遺伝子の発現を含む。これらの目的を達成するための分子クローニング技術は当業界において知られている。発現ベクターのような組み換え体核酸の形成に適する種々のクローニングおよびインビトロ増幅法は当業者に知られている。これらの技術の例および多くのクローニング実施を通して当業者を指示するのに十分な教示はBerger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Inc.,San Diego CA(Berger);およびCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.,and John Wiley & Sons,Inc.,(1994付録)(Ausubel)に見られる。組み換え体ポリペプチドの発現に適する宿主細胞は当業者に知られており、例えば、昆虫、哺乳類および真菌類の細胞を含む真核細胞を含む。好ましい態様において、Aspergillus nigerは宿主細胞として使用される。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ−レプリカーゼ増幅および他のRNAポリメラーゼによる技術を含む、インビトロ増幅法を通して当業者を指示するために十分なプロトコールの例はBerger,SambrookおよびAusubel並びにMullisら(1987)米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innisら編)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)(Innis);Arnheim & Levinson(1990年10月1日)C & EN 36〜47;The Journal of NIH Research(1991)3:81〜94;Kwohら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173;Guatelliら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874;Lomellら(1989)J.Clin.Chem.35:1826;Landegrenら(1988)Science 241:1077〜1080;VanBrunt(1990)Biotechnology 8:291〜294;WuおよびWallace(1989)Gene 4:560およびBarringerら(1990)Gene 89:117に見られる。インビトロ増幅される核酸におけるクローニングの改良法はWallaceらの米国特許第5,426,039号に記載されている。
好ましい態様の説明 本発明は糖タンパク質、特に組み換え的に製造された糖タンパク質に結合した糖基の有効なインビトロシアリル化のための方法を提供する。例えば、本発明の方法は哺乳類の細胞またはトランスジェニック動物中における産生の間に不完全にシアリル化された組み換え的に産生された治療用糖タンパク質のシアリル化に有用である。この方法は、糖基を、シアリルトランスフェラーゼおよびシアル酸供与体とに、シアル酸供与体から糖基にシアル酸を転移させるために十分な時間、且つ適切な反応条件下に、接触させることを含む。シアリルトランスフェラーゼは供与体基質CMP−シアル酸から受容体のオリゴ糖基質にシアル酸を転移させるグリコシルトランスフェラーゼ類を含む。好ましい態様において、本発明の方法に用いるシアリルトランスフェラーゼは組み換え的に製造されたものである。
本発明の方法は糖タンパク質のシアリル化パターンを変更するために有用である。用語「変更」とは、本発明の方法を用いて修飾された糖タンパク質のシアリル化パターンがインビボで産生された糖タンパク質で観測されるものとは異なることを意味する。例えば、本発明の方法は、糖タンパク質がネイティブである組織の細胞により産生されるときに糖タンパク質に観測されるシアリル化パターンとは異なるシアリル化パターンを有する糖タンパク質を産生させるために用いることができる。または、本発明の方法は、糖タンパク質がネイティブであるかまたは異なる種によるものであってよく、宿主細胞中の糖タンパク質をコードする遺伝子の発現により、組み換え的に産生された糖タンパク質のシアリル化パターンを変更するために用いることができる。
本発明の方法により修飾されたシアリル化パターンを有する組み換え体糖タンパク質は、ネイティブであるか、未変更のグリコシル化状態であるかまたは特定の用途には最適には及ばないグリコシル化状態であるタンパク質に比べて重要な利点を有する。組み換え体糖タンパク質が、所望のグリコシル化パターンを生じさせるグリコシル化機構の適切な補助物質を有しない細胞中において産生されるときに、このような非最適化シアリル化パターンが生じることがある。最適なまたは好ましいグリコシル化パターンは、ネイティブの細胞において産生されるときに、糖タンパク質のネイティブのグリコシル化パターンであることもあるしまたはそうでないこともある。最適なシアリル化パターンの利点は、例えば、清掃速度の減少による糖タンパク質の治療的半減期の増加を含む。シアリル化パターンの変更は外来タンパク質における抗原決定基をマスクすることもでき、それにより、タンパク質に対する免疫応答を抑制しまたは排除することができる。糖タンパク質が結合した糖のシアリル化の変更は変更されたオリゴ糖に特異的な細胞表面レセプターにタンパク質を標的とするために、または、未変更の糖に特異的なレセプターに対する標的をブロックするために用いることもできる。
本発明の方法により修飾されることができるタンパク質は、例えば、ホルモン、例えば、インスリン、成長ホルモン(ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む)、組織プラスミノーゲンアクティベーター(t−PA)、レニン、凝固因子、例えば、第VIII因子および第IX因子、ボンベシン、トロンビン、造血成長因子、血清アルブミン、ホルモンおよび成長因子のためのレセプター、インターロイキン、コロニー刺激因子、T−細胞レセプター、MHCポリペプチド、ウイルス抗原、グリコシルトランスフェラーゼ等を含む。本発明の方法を用いた組み換え発現および次の修飾のために注目されるポリペプチドはα1−アンチトリプシン、エリスロポエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、アンチトロンビンIII、インターロイキン6、インターフェロンβ、プロテインC、フィブリノゲン等を含む。ポリペプチドのこのリストは例示であり、排他的なものではない。本発明の方法は、また、制限するわけではないが、IgGのようなイムノグロブリンに由来する部分を含むキメラタンパク質を含む、キメラタンパク質のシアリル化パターンを修飾するためにも有用である。
前述のシアリル化法とは異なる本発明により提供されるインビトロ(in vitro)シアリル化法は、修飾された糖タンパク質の工業規模生産に有用である。すなわち、請求の範囲に記載されている方法は、シアリル化パターンを変化させた糖タンパク質の大規模生産に有用な手段を提供する。これらの方法は、哺乳動物の細胞又はトランスジェニック動物内での生成中に不完全にシアリル化された治療用糖タンパク質に非常に適する。これらの方法は、糖タンパク質に一貫した高い末端シアリル化度を提供する。
本発明の方法を商業的に実現可能にするための1つの手段は、遺伝的組換えにより生産されるシアリルトランスフェラーゼの使用によるものである。遺伝的組換えによる生産は、大規模な糖タンパク質の修飾に必要とされるシアリルトランスフェラーゼの大量生産を可能にする。シアリルトランスフェラーゼの膜結合ドメインの欠失は、シアリルトランスフェラーゼを可溶化するためにシアリルトランスフェラーゼの大量生産及び精製を容易にするものであり、この欠失はシアリルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を修飾して、それを組換え的に発現させることによって達成される。欠失した結合ドメインを有するものを包含する組換えシアリルトランスフェラーゼの例並びに組換えシアリルトランスフェラーゼの生産方法は、米国特許第5,541,083号明細書に記載されている。少なくとも15種の異なる哺乳動物のシアリルトランスフェラーゼが報告されており、それらのシアリルトランスフェラーゼのうちの13種のもののcDNAがこれまでクローン化されている(ここで用いる系統的命名法については、Tsuji et al.(1996)Glycobiology 6:v-xivを参照されたい)。これらのcDNAは、シアリルトランスフェラーゼの組換えによる生産に使用できるものであり、シアリルトランスフェラーゼを次に本発明の方法に使用することができる。
組換えにより生産された又は天然の細菌の細胞内で生産された細菌シアリルトランスフェラーゼを使用する本発明の方法によって工業的実用性も提供される。最近、2種の細菌シアリルトランスフェラーゼが報告されている:Photobacterium damselaからのST6Gal II(Yamamoto et al.(1996)J.Biochem.120:104-110)及びNeisseria meningitidisからのST3Ga lV(Gilbert et al.(1996)J.Biol.Chem.271:28271-28276)。これらの最近になって報告された細菌酵素はシアル酸をオリゴ糖基質上のGalβ1,4GlcNAc配列に変換する。しかしながら、グリコシル化される細菌タンパク質は知られておらず、タンパク質に共有結合したGalβ1,4GlcNAc部分が細菌シアリルトランスフエラーゼのための受容体基質として作用するか否かについては知られていない。表1は、本発明の方法に有用なこれらのシアリルトランスフェラーゼ及び他のシアリルトランスフェラーゼの受容体特異性を示すものである。
好ましい態様において、本発明の方法は、低い酵素単位対糖タンパク質比を用いて糖タンパク質上の受容体基を高い割合でシアリル化することのできるシアリルトランスフェラーゼを使用するため、工業的に有用である。好ましい態様において、糖タンパク質mg当たり約50mU以下のシアリルトランスフェラーゼを使用して望ましい量のシアリル化を得ることができる。より好ましくは、糖タンパク質mg当たり約40mUのシアリルトランスフェラーゼを使用し、さらに好ましくは糖タンパク質に対するシアリルトランスフェラーゼの比は約45mU/mg以下、より好ましくは約25mU/mg以下である。最も好ましくは、望ましい量のシアリル化は、糖タンパク質mg当たり約10mU/mg未満のシアリルトランスフェラーゼを使用して得られる。典型的な反応条件は、糖タンパク質mg当たり約5〜25mUの範囲でシアリルトランスフェラーゼが存在するか、又は反応混合物ml当たり10〜50mUの範囲でシアリルトランスフェラーゼが存在して、そして少なくとも約2mg/mlの濃度で糖タンパク質が存在するものである。
典型的には、本発明の方法により改変されたシアリル化パターンを有する糖タンパク質上の糖鎖は、改変されていない糖タンパク質よりもシアリル化された末端ガラクトース残基の割合が高くなる。好ましくは、糖タンパク質に結合している糖基上に存在する末端ガラクトース残基のうちの約80%よりも多くが本発明の方法を使用することによりシアリル化される。より好ましくは、本発明の方法は、末端ガラクトース残基の約90%よりも高いシアリル化、さらに好ましくは約95%よりも高いシアリル化をもたらす。最も好ましくは、糖タンパク質上に存在する末端ガラクトース残基の実質的に100%が、本発明の方法を使用する修飾によってシアリル化される。本発明の方法は、典型的には、約48時間以内、より好ましくは約24時間以内で望ましいシアリル化度を達成することができる。
好ましくは、糖タンパク質の窒素に結合している炭水化物のグリコシル化に対して、シアリルトランスフェラーゼはシアル酸をGalβ1,4GlcNAc-配列に転移することができる。このGalβ1,4GlcNAc配列は、完全にシアリル化された炭水化物構造物上で末端シアル酸の基にある最も一般的な最後の2要素の配列である。クローン化された哺乳動物のシアリルトランスフェラーゼのうちの3種のみがこの受容体特異性に関する要件を満足し、それらの各々がシアル酸を糖タンパク質の窒素に結合している炭水化物基に転移することが実証された。Galβ1,4GlcNAcを受容体として使用するシアリルトランスフエラーゼの例を表1に示す。
Figure 2011024597
1)Goochee et al.(1991)Bio/Technology 9:1347-1355 2)Yamamoto et al.(1996)J.Biochem.120:104-110 3)Gilbert et al.(1996)J.Biol.Chem.271:28271-28276
シアリルトランスフェラーゼの基質特異性は、工業的に重要な組換えによる糖タンパク質又はトランスジェニック法による糖タンパク質のシアリル化方法を確立するために酵素が満足しなくてはならない単なる第1の規準である。また、シアリルトランスフェラーゼは、種々の糖タンパク質に対して効率的かつ完全にシアリル化を達成するとともに比較的少ない費用及び基本的設備に関わる要件でもって1〜10kgの組換え糖タンパク質のスケールアップを可能にするものでなくてはならない。これらの要件を満足する実際的方法を確立するのにこれらのシアリルトランスフェラーゼのいずれかが適すると報告した刊行物はない。
本発明の方法に有用なシアリルトランスフェラーゼの例はST3GalIIIである。
このST3Gal IIIはα(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.6)とも呼ばれている。この酵素は、GAlβ1,3GlcNac又はGalβ1,4GlcNacグリコシドのGalへのシアル酸の転移を触媒(例えば、Wen et al.(1992)J.Biol.Chem.,267:21011;Van den Eijnden et al.(1991)J.Biol.Chem.,256:3159)するものであって、糖タンパク質中のアスパラギンに結合しているオリゴ糖のシアリル化の原因でもある。シアル酸は、2つの糖同士間のα結合の形成を伴ってGalに結合する。糖同士間の結合は、NeuAcの3位とGalの3位の間にある。この特異な酵素を、ラットの肝臓(Weinstein et al.(1982)J.Biol.Chem.,257:13845);ヒトのcDNA(Sasaki et al.(1993)J.Biol.Chem.268:22782-22787;Kitagawa及びPaulson(1994)J.Biol.Chem.269:1394-1401)から単離することができ、ゲノムDNA配列(Kitagawa et al.(1996)J.Biol.Chem.271:931-938)が周知であり、組換え的に発現させることによるこの酵素の生産を容易にする。好ましい態様において、本発明のシアリル化方法はラットのST3Gal IIIを使用する。
表1に列挙したものを包含する他のシアリルトランスフェラーゼも、工業的に重要な糖タンパク質の経済的で効率的な大規模なシアリル化プロセスにおいて有用である。これらの他の酵素の有用性を発見するための簡易な試験法として、種々の量の各酵素(タンパク質mg当たり1〜100mU)をアシアロ−α1AGP(1〜10mg/ml)と反応させ、ウシST6Gal I,ST3Gal IIIのいずれか又は両方のシアリルトランスフェラーゼを対照として、注目するシアリルトランスフェラーゼの糖タンパク質をシアリル化する能力を比較する。あるいは、この評価において、他の糖タンパク質若しくは糖ペプチド又はペプチド主鎖から酵素的に遊離した窒素に結合しているオリゴ糖をアシアロ−α1AGPの代わりに使用することができる。ST6Gal Iよりも効率のよい糖タンパク質の窒素に結合しているオリゴ糖をシアリル化する能力を示すシアリルトランスフェラーゼは、実際的な大規模な糖タンパク質のシアリル化プロセスにおいて有用であることが認められた(この開示中でST3Gal IIIに関して示した通り)。
本発明は、α2,6Gal結合及びα2,3Gal結合でシアル酸を加えることにより糖タンパク質のシアリル化パターンを変える方法も提供する。α2,6Gal結合及びα2,3Gal結合の両方は、ヒト血漿糖タンパク質の窒素に結合しているオリゴ糖上に存在する。この態様において、ST3Gal III及びST6Gal Iシアリルトランスフェラーゼはともにこの反応において存在し、再シアリル化反応において形成される2つの結合を再現性のある比率で有するタンパク質を提供する。例えば、最終生成物において両方の結合が望ましい場合には、2種の酵素の混合物が有用な場合がある。
シアリルトランスフェラーゼのための受容体は、本発明の方法により修飾すべき糖タンパク質上に存在する。適切な受容体としては、例えば、Galβ1,4GlcNAc、Galβ1,4GalNAc、Galβ1,3GalNAc、ラクト−N−テトラオース、Galβ1,3GlcNAc、Galβ1,3Ara、Galβ1,6GlcNAc、Galβ1,4Glc(ラクトース)のようなガラクトシル受容体並びに当該技術分野で周知の他の受容体(例えば、Paulson et al.(1978)J.Biol.Chem.253:5617-5624)が挙げられる。典型的には、受容体は、タンパク質中に存在するアスパラギン残基、セリン残基又はトレオニン残基に結合してるオリゴ糖鎖中に含まれる。
1つの態様において、シアリルトランスフェラーゼのための受容体は、糖タンパク質のインビボ(in vivo)合成によって修飾すべき糖タンパク質上に存在する。そのような糖タンパク質は、予め糖タンパク質のグリコシル化パターンを修飾することなく、本発明の方法を使用してシアリル化することができる。代わりに、本発明の方法を使用して、シアリル化の前に修飾された糖タンパク質のシアリル化パターンを変化させることができる。例えば、適切な受容体を含まないタンパク質をシアリル化することにおいて、当該技術分野で周知の方法によりタンパク質を修飾して受容体を含ませることができる。受容体は、例えばGlcNAc又はタンパク質に結合した他の適切な糖部分にガラクトース残基を結合させることにより合成できる。糖タンパク質が結合しているオリゴ糖を、シアリルトランスフェラーゼのための受容体又は適切な受容体が得られるように1つ以上の適切な残基を結合させることができる部分に暴露する様に、全体的又は部分的にまず「調整(trim)」することができる。グリコシルトランスフェラーゼ及びエンドグリコシダーゼのような酵素は、結合反応及び調整反応に有用である。本発明の方法は、また、その本来の形態においてグリコシル化されていないタンパク質上のシアル酸を末端とする糖部分を合成するのに有用である。シアリルトランスフェラーゼのための適切な受容体は、本発明の方法を使用するシアリル化に先立って、当該技術分野で周知の方法によりそのようなタンパク質に結合される。例えば、米国特許第5,272,066号明細書に記載されているシアリル化のための適切な受容体を有するポリペプチドを得る方法を参照されたい。
1つの態様において、本発明は、糖タンパク質上に存在する糖基のインビトロシアリル化方法であって、まず糖タンパク質を修飾して適切な受容体を生成させることを伴う方法を提供する。受容体を合成するための好ましい方法はガラクトシルトランスフェラーゼの使用を伴う。これらの方法は、 (a)化合物:Galβ(1→4)GlcNR'β(1→3)Galβ-ORを形成させるのに十分な条件下で、UDP-ガラクトースの存在下、ガラクトシルトランスフェラーゼにより式:GlcNR'β(1→3)Galβ-ORにより表される化合物をガラクトシル化するステップ;及び (b)シアル酸が非還元糖に変換される条件下で、シアル酸のCMP誘導体の存在下、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼを使用して(a)で形成された化合物をシアリルトランスフェラーゼによりシアリル化して化合物:NeuAcα(2→3)Galβ(1→4)GlcNR'β(1→3)Galβ-ORを形成するステップ;を含む。前記式中、Rはアミノ酸、糖、オリゴ糖又は少なくとも1つの炭素原子を有するアグリコン基である。R'はアセチルであってもアリルオキシカルボニル(Alloc)であってもよい。Rは糖タンパク質に結合しているか又は糖タンパク質の少なくとも一部である。
ガラクトシル化及びシアリル化工程は好ましくは酵素を用いて行われ、ガラクトシル化工程は好ましくはガラクトシルトランスフェラーゼサイクルの一部として行われ、シアリル化工程は好ましくはシアリルトランスフェラーゼサイクルの一部として行われる。これらのサイクルの各々における好ましい条件及び他の物質及び酵素についてはすでに説明した。好ましい実施態様において、ガラクトシル化及びシアリル化工程は、シアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼを共に含む1つの反応混合物中で行われる。この実施態様において、酵素及び基質は最初の反応混合物で混合され、又は好ましくは、第一のグリコシルトランスフエラーゼサイクルがほぼ終了したならばこの反応媒体に第二のグリコシルトランスフェラーゼサイクル用の物質及び酵素を添加する。2つのグリコシルトランスフェラーゼサイクルを順に1つの容器内で行うことにより、中間体を分離する方法に比較して全体の収率は向上する。さらに、過剰の溶媒及び副生成物の廃棄が少なくなる。
好ましい実施態様において、糖タンパク質のシアリル化はシアリルトランスフェラーゼサイクルを用いて行われ、このシアリルトランスフェラーゼサイクルはCMP−シアル酸シンテターゼを用いるCMP−シアル酸リサイクルシステムを含む。CMP−シアル酸は比較的高価であり、従ってこのシアル酸供与体部分の現場での合成は本発明の方法により与えられる経済的利点を高める。シアリルトランスフェラーゼサイクルは、例えば米国特許第5,374,541号に記載されている。この実施態様において用いられるCMP−シアル酸再生システムはシチジン−リン酸(CMP)、ヌクレオシド三リン酸、リン酸供与体、リン酸供与体からヌクレオシド二リン酸にリン酸を転移することができるキナーゼ、及びヌクレオシド三リン酸からCMPに末端リン酸を転移することができるヌクレオシド−リン酸キナーゼを含む。
この再生システムは、シアル酸をCTPに転移するCMP−シアル酸シンテターゼも用いる。CMP−シアル酸シンテターゼは、当該分野において公知の方法によってこのシンテターゼ酵素を含む細胞及び組織から単離及び精製することができる。例えば、Grossら(1987)、Eur.J.Biochem.,168:595;、Vijayら(1975)J.Biol.Chem.250:164、Zapataら(1989)J.Biol.Chem.264:14769、及びHigaら(1985)J.Biol.Chem.260:8838を参照されたい。この酵素の遺伝子も塩基配列が解析されている。Vannら(1987)J.Biol.Chem.,262:17556を参照されたい。この遺伝子の重複発現はCMP−NeuAcのグラムスケール合成に用いるために報告されている。Shamesら(1991)Glycobiology,1:187を参照されたい。この酵素は市販入手可能でもある。
CMP−シアル酸再生システムに用いるに適したヌクレオシド三リン酸はアデノシン三リン酸(ATP)、シチジン三リン酸(CTP)、ウリジン三リン酸(UTP)、グアノシン三リン酸(GTP)、イノシン三リン酸(ITP)及びチミジン三リン酸(TTP)である。好ましいヌクレオシド三リン酸はATPである。
ヌクレオシド一リン酸キナーゼはヌクレオシド一リン酸のリン酸化を触媒する酵素である。本発明のCMP−シアル酸再生システムに用いられるヌクレオシド一リン酸キナーゼ(NMK)又はミオキナーゼ(MK:EC2.7.4.3)はCMPのリン酸化を触媒するために用いられる。NMKは市販入手可能である(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)。
リン酸供与体及びリン酸供与体から活性ヌクレオチドへのリン酸の転移を触媒する触媒量のキナーゼもCMP−シアル酸再生システムの一部である。この再生システムのリン酸供与体はリン酸化化合物であり、そのリン酸基はヌクレオシドリン酸のリン酸化に用いることができる。リン酸供与体の選択における唯一の制限は、リン酸供与体のリン酸化形態もしくは脱リン酸化形態のいずれもシアリル化ガラクトシルグリコシドの形成に含まれる反応を実質的に阻害しないことである。好ましいリン酸供与体はホスホエノールピルビン酸(PEP)、クレアチンリン酸、及びアセチルリン酸である。特に好ましいリン酸供与体はPEPである。
シアル酸サイクルに用いるキナーゼの選択は用いるリン酸供与体によつてきまる。アセチルリン酸をリン酸供与体として用いる場合、キナーゼはアセチルキナーゼであり、クレアチンリン酸供与体に対してはクレアチンキナーゼを用い、そしてPEPをリン酸供与体として用いる場合にはキナーゼはピルビン酸キナーゼ(PK;EC2.7.1.40)である。当業者には周知であるように、他のリン酸供与体には他のキナーゼを用いることができる。キナーゼは市販入手可能である(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)。
このグリコシル化方法の自己包含及びサイクル特性のため、すべての反応体及び酵素が存在すると、最初の理論量の基質(例えば遊離Neu5Ac及びPEP、又は受容体)が消費されるまで反応が継続する。
シアリル化サイクルにおいて、CMPは添加したATPの存在下におけるヌクレオシド一リン酸キナーゼによってCDPに転化される。ATPは添加したホスホエノールピルビン酸(PEP)の存在下におけるピルビン酸キナーゼ(PK)
によって、その副生成物であるADPから触媒によって再生される。CDPはさらにCTPに転化され、この転化はPEPの存在下におけるPKによって触媒される。CTPはシアル酸と反応して無機ピロリン酸(PPi)及びCMC−シアル酸を形成する。この後者の反応はCMP−シアル酸シンテターゼによって触媒される。ガラクトシルグリコシドのシリル化に続き、放出されたCMPは再び再生システムに入り、CDP、CTP及びCMP−シアル酸を再び形成する。形成されたPPiは以下に記載のように消費され、副生成物として無機リン酸(Pi)を形成する。ピルビン酸も副生成物である。
この副生成物であるピルビン酸は、シアル酸を形成するためのNeuAcアルドラーゼ(EC4.1.3.3)の存在下においてN-アセチルマンノースアミン(ManNAc)とピルビン酸を反応させる他の反応にも使用することができる。このように、シアル酸はManNAc及び触媒量のNeuAcアルドラーゼによって置換されることができる。NeuAcアルドラーゼは逆反応(NeuAcからManNAc及びピルビン酸への反応)も触媒するが、形成されたNeuAcはCMP−シアル酸シンテターゼにより触媒されるCMP−NeuAcを介して反応サイクルに不可逆的に混入される。このシアル酸及びその9-置換誘導体の酵素による合成並びに異なるシアリル化反応法における得られたシアル酸の使用は1992年10月1日発行の国際出願WO92/16640に記載されている。
ここで「ピロリン酸スカベンジャー」とは、本発明の反応混合物から無機ピロリン酸を除去するよう機能する物質を意味する。無機ピロリン酸(PPi)はCMP−Neu5Acの製造の副生成物である。形成されたPPiはグリコシル化が低下される他の酵素を阻害するために戻される。しかしながら、PPiは酵素によって分解され又はPPi結合物質による金属イオン封鎖のような物理的手段によって分解される。好ましくは、PPiは無機ピロホスファターゼ(PPase;EC3.6.1.1)(これは市販入手可能なPPi異化酵素(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)である)又はピロリン酸スカベンジャーとして機能する同様の酵素を用いる加水分解によって除去される。反応混合物からPPi又はPiを除去する1つの方法は、媒体中の2価金属カチオンの濃度を維持することである。特に、カチオン及び形成した無機リン酸は溶解度のとても低い錯体を形成する。ピロリン酸との沈澱によって失われるカチオンを補充することによって反応速度が維持され、反応は終了することができる(すなわち100%転化)。補充は連続的に(例えば自動的に)又は断続的に行われる。このようにしてカチオン濃度を維持すると、トランスフェラーゼ反応サイクルは完了するまで進行する。
グリコシルトランスフェラーゼサイクルにおいて、用いられる種々の反応体の濃度及び量は、温度及びpH値のような反応条件、グリコシル化される受容体である糖類の選択及び量を含む多くの因子によってきまる。グリコシル化法は、触媒量の酵素の存在下において活性化するヌクレオチド、活性化された供与体糖及び形成されたPPiの除去を可能にするため、この方法は前記の理論比の基質の濃度及び量によって制限される。本発明の方法に用いられる反応体の濃度の上限はこの反応体の溶解度によって決定される。好ましくは、活性化ヌクレオチド、リン酸供与体、供与体糖及び酵素の濃度は、受容体が消費するまで、すなわち糖タンパク質に存在する糖基のシアリル化が完了するまでグリコシル化が進行するように選択される。
酵素の量及び濃度は活性単位で表される。これは触媒の初速度のめやすである。1活性単位は、所定の温度(通常は37℃)及びpH値(通常は7.5)において1分あたり1μモルの生成物の形成を触媒する。従って、10単位の酵素は、37℃の温度及び7.5のpHにおいて1分間に10μモルの基質が10μモルの生成物に転化する触媒の量である。
上記成分は水性媒体(溶液)中で混合物にされる。この媒体は約6〜約8.5のpH値を有する。この媒体はMg+2又はMn+2のような酵素コファクターを結合するキレート化剤を含まない。媒体の選択は所望のレベルにpHを維持する媒体の能力に基づいて行われる。ある実施態様においては、この媒体は、好ましくはHEPESを用いて約7.5のpH値に緩衝される。緩衝液を用いない場合、塩基の添加によって媒体のpHは約6〜8.5、好ましくは約7.2〜7.8に維持すべきである。適当な塩基はNaOH、好ましくは6MのNaOHである。
反応媒体は可溶化洗剤(例えばTriton又はSDS)及び有機溶媒、例えばメタノールもしくはエタノールを必要により含んでいてもよい。溶液中に酵素は存在せず、又はポリマーのような担体に結合される。反応の間に沈澱がいくらか形成するが、反応混合物は当初において実質的に均質である。
上記方法を行う際の温度は凍結点〜ほとんどの酵素が失活するまでの温度である。この温度範囲は好ましくは0℃〜約45℃であり、より好ましくは約20℃〜約37℃である。
所望の比率の末端ガラクトース残基がシアリル化される糖タンパク質に結合した糖基に存在するに十分な時間、こうして形成された反応混合物を維持する。工業スケールの製造では、この反応は約8〜240時間行われ、約24〜48時間がより一般的である。
以下の実施例は説明であり、本発明を限定するものではない。
実施例1 ST3 Gal IIIを使用した組換え糖タンパク質のシアリル化
いくつかの糖タンパク質を、組換えラットST3 Gal IIIによりシアリル化されるそれらの能力について調べた。これらの糖タンパク質の各々について、シアリル化は、商業的製品としての対応の糖タンパク質の開発において貴重な処理工程であろう。
反応条件
反応条件を表2中に要約する。シアリルトランスフェラーゼ反応を、室温〜37℃の間の温度で24時間行った。シアリル化の程度を、糖タンパク質−連結オリゴ糖内に取り込まれた14C−NeuAcの量を測定することにより証明した。
結果反応討議
表2中に表す結果は、かなりの程度のシアリル化が、使用される酵素の低レベルにも拘らず、各場合に達成されたことを示している(本質的に完全なシアリル化は、利用できる末端ガラクトースの概算に基づき得られた)。表2は、各種試験のための比較の基礎としてのタンパク質1mg当りの酵素の量(mU/mg)を示す。以下に示す実施例のいくつかにおいては、たった7−13mU ST3 GalIII/mgタンパク質が、24時間後に本質的に完全なシアリル化を得るために要求された。これらの結果は、>50mU/mgタンパク質が50%未満のシアリル化を与え、そして1070mU/mgタンパク質が24時間目に約85−90%のシアリル化を与えたという、ウシST6 GalIを用いた詳細に報告された研究とは極めて対照的なものである。Paulson et al.(1977)J.Biol.Chem.252:2363-2371;Paulsonetal.(1978)J.Biol.Chem.253:5617-5624.他のグループによるラットα2,3及びα2,6シアリルトランスフェラーゼの研究は、アシアロ−α、AGPの完全なシアリル化が150−250mU/mgタンパク質の酵素濃度を要求したということを発見した。Weinstein e al.(1982)J.Biol.Chem.257:13845-13853.これらの初期の研究は、一緒になって、ST6GalIシアリルトランスフェラーゼが、完全なシアリル化を達成するために50mU/mgよりも大きく、かつ、150mU/mgまでのものを要求する。
本実施例は、ST3 Gal IIIシアリルトランスフェラーゼを使用した組換え糖タンパク質のシアリル化が、予想されるよりもかなり少い酵素を要求するということを証明する。1kg規模の反応のためには、約7,000ユニットのST3 Gal IIIシアリルトランスフェラーゼが、上記初期の研究が示した100,000−150,000ユニットの代わりに必要とされるであろう。天然源からの上記酵素の精製は、ひどく高く、1〜2ヶ月の作業の後、大規模調製のためにたった1−10ユニットの収量である。両ST6 GalIとST3 Gal IIIシアリルトランスフェラーゼが組換えシアリルトランスフェラーゼとして製造され、上記2つの酵素の等レベルの発現が達成されると仮定すると、14−21倍以上(又はそれ以上)の発酵規模が、ST3 Gal IIIシアリルトランスフェラーゼに対してST6 Gal Iシアリルトランスフェラーゼのために要求されるであろう。ST6 Gal Iシアリルトランスフェラーゼについては、酵母内での0.3U/lの発現レベルが報告されている。Borsing et al.(1995)Biochem.Biophys.Res.Commun.210:14-20.ST3Gal IIIシアリルトランスフェラーゼの1000U/リッターの発現レベルがアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)において達成されている。最近の発酵レベルにおいては、300−450,000リッターの酵母発酵が、ST6GalIシアリルトランスフェラーゼを使用した1kgの糖タンパク質のシアリル化のために十分な酵素を製造するために要求されるであろう。反対に、10リッター未満のAspergi1lus nigerの発酵が、ST3 Gal IIIシアリルトランスフェラーゼを使用した1kgの糖タンパク質のシアリル化のために要求されるであろう。従って、大規模シアリル化反応のためのST3 Gal IIIシアリルトランスフェラーゼを製造するために要求される発酵能力は、ST6 GalIを製造するために要求されるものよりも10倍小さいであろうし;そのシアリルトランスフェラーゼの製造コストは、比例的に低下するであろう。
Figure 2011024597
実施例2
ST3 Gal IIIを使用した組換え糖タンパク質のシアリル化の動態
反応条件
アッセイ混合物(全容量500μl)は、25mM MES pH6.0、0.5%(v/v)Triton(F-54、2mg/ml BSA、0.04%アジ化ナトリウム、1mgノイラミダーゼ処理−α1−酸糖タンパク質、シアリルトランスフェラーゼ(2−100mユニット/ml)及び3400nモルのCMP−シアリル酸から成り、CMP−〔14C〕SAトレーサーをシアリル化の程度に従って添加した。ST3 Gal IIIを組換えにより製造し、一方、ST6 GalIをウシ初乳から精製した。ノイラミニダーゼ−処理α1−酸糖タンパク質の濃度を、所定の消光係数(1mgについてε273=0.894)を使用した吸収により、そしてガラクトース・デヒドロゲナーゼ・アッセイ(Wallenfels and Kurz,G.(1966)Meth.Enzymol.9:112-116)により測定された末端ガラクトースの量により、測定した。
37℃で所定のインキュベーション時間の後、ノイラミダーゼ処理α1−酸糖タンパク質のシアリル化の程度を、その反応混合物から50μl(10%)を取り出すことにより測定し、そして糖タンパク質受容体を、CMP−SA供与体からそれを分離するために0.5M HCl中の1%ホスホタングステン酸1mlにより沈澱させた。このペレットを、ホスホタングステン酸で2回洗浄し、その後、20分間4℃のクロロホルム/メタノール1:1(v/v)400μl中に上記ペレットを溶解させた。最終ペレットを遠心分離により得た後、上清を除去し、そしてペレットを乾燥させた。次にこのペレットを1時間37℃で0.2M NaCl,0.5N NaOH 400μl中に溶解させた。次に溶解したペレットを、シンチレーション計数のためにシンチレーション・バイアルに移した。上記受容体を省くことにより提示されるネガティブ・コントロールを、各時点から差し引いた。
結果及び討議
20mユニット/ml(10mユニット/kg受容体)の濃度におけるST3 Gal IIIを使用したシアリル化の時間経過を図1に示す。これらの結果は、ST3 Gal IIIが、ノイラミニダーゼ−処理α1−酸糖タンパク質上の開いたガラクトース残基を効率的にシアリル化することを証明する。1時間目の80%を超えるシアリル化の達成は、治療的価値をもつ組換え糖タンパク質が37℃における延長されたインキュベーション時間をもって生物学的活性を失うことができるという点で、かなりのものである。
ノイラミニダーゼ処理α1−酸糖タンパク質は、多数のトリ−及びテトラ−触角をもつN−結合オリゴ糖に因り、完全にシアル化することが特に困難な糖タンパク質であるということが注目される。実際、受容体としてノイラミニダーゼ処理α1−酸糖タンパク質を用いると、ST3 Gal IIIは他の一般的なシアリルトランスフェラーゼ、ウシ初乳から単離されたST6 GalIよりも優れている。受容体としてのノイラミニダーゼ処理α1−酸糖タンパク質を使用した上記2つの酵素のシアリル化能力の比較を、図2中に示す。これらの結果は、ST3 Gal IIIが、調べた各時点において、特により短いインキュベーション時間をもって、ST6 GalIよりも優れているということを証明する。1時間目に、ST3 Gal IIIは、その受容体の開いたガラクトース残基の80%をシアル化していた。一方、上記部位の30%だけがST6 GalIにより飽和された。
ノイラミニダーゼ処理α1−酸糖タンパク質の異なるバッチを、同様のアッセイ条件を使用して受容体として使用したとき、開いたガラクトースのパーセント飽和は、24時間目にST3 Gal IIIについて75−99%、そしてST6 GalIについて42−60%の範囲にあった。これらの結果は、ST3 Gal IIIとST6 Gal Iが先に定義したものと同一の条件を使用して並行して比較されるような実験を提示する。これらの実験のために、ノイラミニダーゼ処理α1−酸糖タンパク質受容体を、先に記載されたような(Weistein et al.(1982)J.Biol.Chem.257:13845-13853)ゲル濾過により供与体から分離する。
調べた各場合において、ST3 Gal IIIは、24時間までにST6 GalIにより達成されたシアリル化の程度よりも有意に大きなレベルにまで上記受容体をシアリル化した。
上記哺乳類シアリルトランスフェラーゼを調べることに加えて、2つのバクテリアのシアリルトランスフェラーゼを、α1−酸糖タンパク質をシアリル化するそれらの能力について調べた。予期しなかった発見は、ネイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)からの組換え2,3シアリルトランスフェラーゼが、それが末端Galβ1,4を含有するオリゴ糖、例えばLNnT及びラクトースをシアリル化する条件下で、α1−酸糖タンパク質にシアリル酸を転移しなかったということであった。反対に、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damsela)から精製された2,6シアリルトランスフェラーゼは、受容体としてのノイラミニダーゼ処理α−酸糖タンパク質内にシアル酸を効率的に取り込んだ。
実施例III 実用的商業的糖タンパク質修飾のための方法において有用なシアリルトランスフェラーゼの同定
以下の表3中に示す哺乳類シアリルトランスフェラーゼ遺伝子ファミリーのメンバーを、組換えにより発現させ、そして商業的実用的なやり方でさまざまな糖タンパク質をシアリル化するそれらの能力について調べた。
Figure 2011024597
50mユニット/mg以下の受容体を使用して少なくとも80%のレベルまで糖タンパク質をシアリル化することができるシアリルトランスフェラーゼは、商業的規模の糖タンパク質修飾における使用にとって“実用的”であると考えられる。上記分析は、大規模における使用にとって実用的であるアッセイ条件、例えば、1−10mg/ml糖タンパク質受容体及び2−50mユニット/mg受容体のシアリルトランスフェラーゼ濃度を使用する。開いたガラクトースの量を、ガラクトース・デヒドロゲナーゼ・アッセイ(Wallenfels et al.,前掲)により測定する。37℃での適当なインキュベーション時間の後、糖タンパク質の程度を、その反応混合物から適量を取り出し、そして沈澱又はゲル濾過によりCMP−SA供与体からその糖タンパク質を分離することにより評価する。
さらに、以下の表4中に示すバクテリアからの組換え又は精製シアリルトランスフェラーゼが調べられる。再び、このシアリルトランスフエラーゼ濃度は、50mユニット/mg糖タンパク質受容体及び1−10mg/mlの糖タンパク質濃度レンジを超えない。
Figure 2011024597
表3と4中に列記するバクテリアと哺乳類のシアリルトランスフェラーゼを、組換え又は遺伝子導入により発現された糖タンパク質、例えば、以下の表5中に示すものを完全にシアリル化するそれらの能力についてテストする。このリストは、網羅的であることを意味せず、その代わり、完全なシアリル化が糖タンパク質の薬理動態又は生物学的活性を好ましく変更することができるところの、知られた治療用途をもつ糖タンパク質の例を提供する。上記実験において使用される糖タンパク質は、トランスジェニック動物、又は真核細胞又は細胞系内で製造されることができる。
本実験においては、シアリル化の程度及び着目の糖タンパク質を修飾するグリカンのタイプを、ゲル電気泳動、HPLC、及びマス・スペクトロメトリーの如き標準的な生化学的技術を使用して調べる。この構造情報は、得られたグリカンのゲル電気泳動又はHPLCにより判断されるとき、その糖タンパク質を完全に(又はできるだけ近く)シアリル化するための、正しい特異性をもつシアリルトランスフェラーゼを選ぶために使用される。この点で、完全にシアリル化された糖タンパク質の薬理動態は、小動物における検査により低くシアリル化されている糖タンパク質の薬理動態と比較されることができる。
特定の糖タンパク質は、上記クラスの酵素の立体化学的及び位置選択的な性質を与えられたシアリルトランスフェラーゼの組合せを要求するであろう。それ故、シアリルトランスフェラーゼの組合せは、糖タンパク質のリモデリングにおけるそれらの潜在的な大規模実行可能性のための所定の条件を使用して調べられる。これは、両N−結合及びO−結合グリカンをもつ糖タンパク質並びに高く枝分かれしたオリゴ糖により修飾されたものを調べるときに、特に重要である。この点で、多特異性を示すシアリルトランスフェラーゼ、例えば、ST3 Gal IV及びカンピロバクター(Campylobacter)シアリルトランスフェラーゼは、多数のN及びO−結合グリカンをもつ糖タンパク質をシアリル化するとき、独立型のリモデリング酵素として、特に有用であることができる。
Figure 2011024597
本明細書中に記載する実施例及び態様は説明だけを目的としたものであり、この点でのさまざまな修正又は変更が、当業者に示唆され、そして本明細書の本質及び範囲並びに添付請求の範囲内に包含されると理解される。本明細書中に引用する刊行物、特許、及び特許出願の全てを、目的を限定せずに引用により本明細書中に援用する。

Claims (58)

  1. 組換え糖タンパク質上の糖基をシアリル化する方法であって、組換え糖タンパク質上の受容体であるガラクトース又はN-アセチルガラクトサミンを含んでいる糖基を、シアリルトランスフェラーゼ活性に必要な反応体を供給する反応混合液中にて、シアル酸供与体及び組換えシアリルトランスフェラーゼに、十分な時間且つ適切な条件下で接触させて、シアル酸を前記シアル酸供与体から前記の糖基に転移すること、を含んで成る前記方法。
  2. 前記シアル酸供与体が、CMP-シアル酸である、請求項1の方法。
  3. 前記CMP-シアル酸が、その場で酵素反応によって生成する、請求項2の方法。
  4. 前記シアリルトランスフェラーゼが、実質的に膜貫通ドメインを欠失した真核生物の組換えシアリルトランスフェラーゼである、請求項1の方法。
  5. 前記シアリルトランスフェラーゼが、ST3Gal I,ST6Gal I,及びST3Gal IIIの群中から選択されたシアリルトランスフェラーゼに由来するシアリルモチーフに対して少なくとも約40%同一であるアミノ酸配列を有するシアリルモチーフを含んでいる、請求項1の方法。
  6. 前記シアリルトランスフェラーゼが、組換えST3Gal IIIである、請求項1の方法。
  7. 前記シアリルトランスフェラーゼが、ラットの組換えST3Gal IIIである、請求項6の方法。
  8. 前記シアリルトランスフエラーゼが、組換えST3Gal IVである、請求項1の方法。
  9. 前記シアリルトランスフェラーゼが、組換えST6Gal Iである、請求項1の方法。
  10. 前記シアリルトランスフェラーゼが、組換えST3Gal Iである、請求項1の方法。
  11. 前記反応液が、別の組換えシアリルトランスフェラーゼを含んでいて、この別の組換えシアリルトランスフェラーゼがST3Gal IIIである、請求項10の方法。
  12. 前記シアリルトランスフェラーゼが、細菌の組換えシアリルトランスフェラーゼである、請求項1の方法。
  13. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria menigitidis)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項12の方法。
  14. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria menigitidis)の2,3-シアリルトランスフエラーゼである、請求項13の方法。
  15. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damsela)の2,6-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項12の方法。
  16. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damsela)の2,6-シアリルトランスフェラーゼである、請求項15の方法。
  17. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ヘモフィルス菌(Haemophilus)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項12の方法。
  18. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ヘモフィルス菌(Haemophilus)の2,3-シアリルトランスフェラーゼである、請求項17の方法。
  19. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項12の方法。
  20. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の2,3-シアリルトランスフェラーゼである、請求項19の方法。
  21. 前記のシアリルトランスフェラーゼが、昆虫細胞、哺乳類細胞、及び真菌細胞の群中から選択された宿主細胞において、組換えシアリルトランスフェラーゼを発現させることによって生産される、請求項1の方法。
  22. 前記宿主細胞が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である、請求項21の方法。
  23. 組換え糖タンパク質上の糖基をシアリル化する方法であって、組換え糖タンパク質上の受容体であるガラクトース又はN-アセチルガラクトサミンを含んでいる糖基を、シアリルトランスフェラーゼ活性に必要な反応体を供給する反応混合液中にて、シアル酸供与体及び細菌のシアリルトランスフェラーゼに、十分な時間且つ適切な条件下で接触させて、シアル酸を前記シアル酸供与体から前記の糖基に転移すること、を含んで成る前記方法。
  24. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damsela)の2,6-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項23の方法。
  25. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damsela)の2,6-シアリルトランスフェラーゼである、請求項24の方法。
  26. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria menigitidis)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項23の方法。
  27. 前記のシアリルトランスフェラーゼが、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria menigitidis)の2,3-シアリルトランスフェラーゼである、請求項26の方法。
  28. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項23の方法。
  29. 前記のシアリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の2,3-シアリルトランスフエラーゼである、請求項28の方法。
  30. 前記の細菌のシアリルトランスフエラーゼが、ヘモフィルス菌(Haemophilus)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項23の方法。
  31. 前記のシアリルトランスフェラーゼが、ヘモフィルス菌(Haemophilus)の2,3-シアリルトランスフェラーゼである、請求項30の方法。
  32. 糖タンパク質上に存在する糖基をインビトロでシアリル化する方法であって、前記の糖基を、シアリルトランスフェラーゼ、シアル酸供与体、及びシアリルトランスフェラーゼ活性に必要なその他の反応体に、十分な時間且つ適切な条件下で接触させて、シアル酸を前記シアル酸供与体から前記の糖基に転移すること、そして前記シアリルトランスフェラーゼが、糖タンパク質mgあたり約50mU未満の濃度であること、を含んで成る前記方法。
  33. 前記シアリルトランスフェラーゼが、糖タンパク質mgあたり約5〜25mUの濃度範囲である、請求項32の方法。
  34. 反応混合液中の前記シアリルトランスフェラーゼが、約10〜50mU/mlの濃度範囲であり、そして反応混合液中の前記糖タンパク質が、少なくとも約2mg/mlの濃度である、請求項32の方法。
  35. 前記方法によって、前記の糖基に存在する末端ガラクトース残基の少なくとも約80%がシアリル化された糖タンパク質が生成する、請求項32の方法。
  36. 前記シアリルトランスフェラーゼが、組換えシアリルトランスフェラーゼである、請求項32の方法。
  37. 前記シアリルトランスフェラーゼが、実質的に膜貫通ドメインを欠失している、請求項36の方法。
  38. 前記シアリルトランスフェラーゼが、ST3Gal I,ST6Gal I,及びST3Gal IIIの群中から選択されたシアリルトランスフエラーゼに由来するシアリルモチーフに対して少なくとも約40%同一であるアミノ酸配列を有するシアリルモチーフを含んでいる、請求項32の方法。
  39. 前記シアリルトランスフエラーゼが、ST3Gal IIIである、請求項32の方法。
  40. 前記ST3Gal IIIが、ラットのST3Gal IIIである、請求項39の方法。
  41. 前記シアリルトランスフェラーゼが、ST3Gal IVである、請求項32の方法。
  42. 前記シアリルトランスフェラーゼが、ST3Gal Iである、請求項32の方法。
  43. 前記反応液が、別の組換えシアリルトランスフェラーゼを含んでいて、この別の組換えシアリルトランスフェラーゼがST3Gal IIIである、請求項42の方法。
  44. 前記シアリルトランスフェラーゼが、細菌のシアリルトランスフェラーゼである、請求項32の方法。
  45. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、組換えシアリルトランスフェラーゼである、請求項44の方法。
  46. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria menigitidis)の2,3-シアリルトランスフエラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項44の方法。
  47. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ネイセリア・メニンギチジス(Neisseria menigitidis)の2,3-シアリルトランスフェラーゼである、請求項46の方法。
  48. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damsela)の2,6-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項44の方法。
  49. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damsela)の2,6-シアリルトランスフェラーゼである、請求項48の方法。
  50. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項44の方法。
  51. 前記のシアリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の2,3-シアリルトランスフエラーゼである、請求項50の方法。
  52. 前記の細菌のシアリルトランスフェラーゼが、ヘモフィルス菌(Haemophilus)の2,3-シアリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項44の方法。
  53. 前記のシアリルトランスフェラーゼが、ヘモフィルス菌(Haemophilus)の2,3-シアリルトランスフェラーゼである、請求項52の方法。
  54. 前記シアル酸供与体が、CMP-シアル酸である、請求項32の方法。
  55. 前記CMP-シアル酸が、その場で酵素反応によって生成する、請求項54の方法。
  56. 前記シアル酸が、NeuAc及びNeuGcの群中から選択される、請求項32の方法。
  57. 糖タンパク質上に存在する糖基をインビトロでシアリル化する方法であって、前記の糖基を、ST3Gal IIIシアリルトランスフェラーゼ、シアル酸供与体、及びシアリルトランスフェラーゼ活性に必要なその他の反応体に、十分な時間且つ適切な条件下で接触させて、シアル酸を前記シアル酸供与体から前記の糖基に転移すること、そして前記ST3Gal IIIシアリルトランスフェラーゼが、糖タンパク質mgあたり約50mU未満の濃度であること、を含んで成る前記方法。
  58. 前記方法が、前記の糖基をST6Gal Iシアリルトランスフェラーゼに接触させることを更に含んでいる、請求項57の方法。
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