JP4812625B2 - 糖転移酵素の酵素活性を向上させる方法 - Google Patents

糖転移酵素の酵素活性を向上させる方法 Download PDF

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Description

本発明は、糖転移酵素の活性を向上させる方法に関する。
糖転移酵素は、生体内において糖タンパク質、糖脂質等の糖鎖の生合成に関与する酵素である。その反応生成物である糖タンパク質や糖脂質等の糖鎖(以下、複合糖質糖鎖)は、分化や発生における細胞間および細胞-細胞外マトリックス間のシグナル伝達や複合糖質のタグとして機能する重要な分子であることなどが明らかにされている。
糖鎖を応用して産業化されている例として、エリスロポエチンの糖鎖付加が挙げられる。エリスロポエチンは本来糖鎖が付加されているが、その糖鎖の数を増加させることにより、生体におけるエリスロポエチンの寿命を伸ばした製品が開発され、市販されている。今後、このような糖鎖を付加した製品の上市が増加することが想定される。そのため、糖転移酵素の生産も重要となる。また、複合糖質糖鎖の機能解明を行う上で様々な糖鎖の合成が必要とされ、大量生産が必須となる。
一般に、複合糖質糖鎖の合成方法は、大きく2種類に分けられる。一つは、化学合成法であり、他方は糖転移酵素を用いる酵素法である。なお、化学合成法と酵素法を使用する化学/酵素的合成法という中間的な合成方法も存在する。
化学合成法と酵素法を比較した場合、どちらも長所、短所を有する。
化学合成法の長所として、糖鎖合成に関する数多くの知見があり、様々な糖鎖の合成に柔軟に対応できる可能性があることが挙げられる。しかしながら、化学合成法では一般に保護・脱保護という工程を経なければならず、必然的に合成経路が長く操作自体も煩雑であるので、高い収率で目的物を得られない短所がある。さらに、前述のように、今後タンパク質や脂質等の糖鎖修飾が重要になると考えられているが、化学合成法では、その合成条件から、タンパク質や脂質等の機能を損なうことなく糖を付加することは極めて難しい。
一方、酵素法には化学合成法と比較した場合、以下の長所がある。酵素法では、反応工程が極めて簡便であり、高い反応収率で目的物を得ることが可能である。さらに、温和な条件で反応できるため、タンパク質や脂質を変性させることがなく、それらの糖鎖修飾に応用可能である。
これまでに、約150種類以上の糖転移酵素遺伝子がヒト、マウス、ラット及び酵母等の真核生物から単離されており、さらにCHO細胞や大腸菌等を宿主細胞とする生産系で糖転移酵素活性を有するタンパク質が発現されている。しかし、これらを宿主として生産された酵素が示す比活性は、本来の組織や細胞内での糖転移酵素の比活性と比較すると、一般に非常に低い値を示す。これは、大腸菌などを宿主として生産した糖転移酵素は、動物細胞内で生産されている本来の糖転移酵素とタンパク質の一次構造は同じであっても、タンパク質部分に付加される構造等が異なり、その結果、本来の酵素と比較して組換え体酵素の比活性が低下すると考えられるからである。
一方、原核生物である細菌からもいくつかの糖転移酵素遺伝子が単離されており、さらに大腸菌を用いる生産系で糖転移酵素活性を有するタンパク質が発現され、それらの基質特性や酵素化学的な諸性質が明らかにされている。そのような微生物に由来し、大量に生産可能な安定な糖転移酵素の例として、Photobacterium damselae JT0160株由来のβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素が報告されている(特許第3062409号、特開平10-234364)。同酵素の生産性は培養液1Lあたり550Uであり、同酵素は大量に生産できる例として挙げることができる。しかし、より効率的な糖鎖合成を可能にするため、酵素活性を増加させる新規な酵素反応方法の開発が望まれていた。
また、哺乳類から得られたシアル酸転移酵素について、酵素活性を測定する際には、多くの場合その反応系にMgCl2、CaCl2などの2価イオンを添加することが示されている(グライコバイオロジー実験プロトコール、細胞工学別冊、1996年7月 page 104〜107、秀潤社)。また、特殊な好熱性細菌から抽出されたプロテアーゼの中には、1-5Mという極めて高いNaClの濃度で、活性が促進されることは知られていた( Inouye et al. J. Biochem 1997; 122, 358-364)。
しかし、糖転移酵素の活性に及ぼすNaClの効果については、その由来に関わらず、何も明らかにされてはいなかった。
特開平10-234364 細胞工学別冊、1996年7月 page 104〜107 .J. Biochem 1997; 122, 358-364
本発明が解決しようとする課題は、糖転移酵素について、従来の酵素反応系と比較して効率的に糖転移反応を行うことができる安価で簡便な方法を開発することにある。
本発明者らは、上記問題解決のため鋭意研究に努めた結果、ビブリオ科に属する微生物由来の糖転移酵素について、その酵素反応系に適量のNaClを添加することにより、その酵素活性が増加することを見いだした。
本発明の効果は、Naイオンに特有であり、K等の他の1価イオン、Mg2+等の2価イオンでは得ることができない。また、本発明のNaイオンによる活性増加は、ビブリオ科に属する微生物由来の糖転移酵素に特有の効果であり、本発明の時点では、他の生物例えば哺乳類由来の糖転移酵素では認められていない。
従って、本発明は、ビブリオ科に属する微生物由来の糖転移酵素について、その酵素反応系に適量のNaClを添加することにより、酵素活性を増加させる方法に関する。
ビブリオ科に属する微生物由来の糖転移酵素は、本発明の方法でNaClを添加することにより、その酵素活性が増加すると期待でき、あるいは、NaClを反応系に追加することによりその酵素活性の増加を確認することは、本明細書の開示を見た当業者にとって容易である。
本発明の方法において、ビブリオ科(Vibrionaceae)に属する微生物の例としては、ビブリオ属(Vibrio)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、アロモナス属(Allomonas)、カテノッコッカス属(Catenococcus)、エンテロビブリオ属(Enterovibrio)、あるいはサリニビブリオ属(Salinivibrio)などが含まれるが、これらに限定されない。ビブリオ科に属する微生物の中で好ましいものはフォトバクテリウム属に属する微生物、あるいはビブリオ属に属する微生物である。フォトバクテリウム属に属する微生物の例としては、フォトバクテリウム・ダムセーラ(Photobacterium damselae)、あるいはフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)、あるいはフォトバクテリウム・アンガスタム(Photobacterium angustum)、あるいはフォトバクテリウム・インディカム(Photobacterium indicum)、あるいはフォトバクテリウム・イリオピスカリウム(Photobacterium iliopiscarium)、あるいはフォトバクテリウム・プロファンダム(Photobacterium profundum)、あるいはフォトバクテリウム・レイオグナシィ(Photobacterium leiognathi)、あるいはフォトバクテリウム属菌(Photobacterium sp.)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ビブリオ属に属する微生物としては、ビブリオ・フィシリー(Vibrio fisheri)、あるいはビブリオ・アエロゲネス(Vibrio aerogenes)、あるいはビブリオ・カルビエンシス(Vibrio calviensis)、あるいはビブリオ・ルモイエンシス(Vibrio rumoiensis)、あるいはビブリオ・サルモニシーダ(Vibrio salmonicida)、あるいはビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、あるいはビブリオ・アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)、あるいはビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、あるいはビブリオ属菌(Vibrio sp.)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明におけるビブリオ科微生物は、限定されるものではないが、海洋性微生物であることが好ましい。海洋性微生物とは、例えば、海水、海砂、海産魚介類等から得られる微生物である。
ビブリオ科微生物由来の糖転移酵素の好ましいものは、シアル酸転移酵素である。その一例は、特開平10-234364に開示されているβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素である。また、ビブリオ科に属する微生物由来のβ-ガラクトシド-α2,3-シアル酸転移酵素であっても構わない。
ビブリオ科に属する微生物由来のβ-ガラクトシド-α2,3-シアル酸転移酵素は、本発明者らによって同定された。これら酵素については、PCT/JP2005/007340(2005年4月15日出願)およびPCT/JP2005/010814(2005年6月13日出願)にて国際特許出願されており、これら出願は本明細書に引用により援用される。また、これら酵素の同定と調製についての具体的な方法および結果は、後に示す参考例にも記載した。
本明細書において、糖転移酵素とは、天然材料としてビブリオ科に属する微生物中もしくはその培養培地から抽出した酵素、および遺伝子工学により当該酵素が由来するビブリオ科に属する微生物以外の宿主細胞で製造された酵素のいずれも含むものであり、また酵素の精製程度は、ゲル電気泳動による分析で単一バンドを示す程度まで十分に精製したもの、および粗精製品で活性を有する酵素の両方を含むものとする。さらに、糖転移酵素は天然の酵素と同じポリペプチドからなっていてもよく、あるいは天然酵素の活性部位を含むよう加工されたポリペプチドからなるものでもよい。
本発明の方法において、酵素反応を行う条件は、該糖転移酵素が反応する条件であれば、特に制限はない。酵素反応溶液には、限定するわけではないが、酢酸緩衝液、カコジレート緩衝液、リン酸緩衝液、ビストリス緩衝液、などの緩衝液を用いてもよい。反応溶液のpHおよび/または反応温度は、それぞれの糖転移酵素が反応する条件であればいずれでもよく、好ましくはそれぞれの糖転移酵素の至適pHおよび/または至適温度である。糖供与体および糖受容体濃度の条件は、糖転移酵素が反応する条件であれば特に制限はなく、当業者であれば、これらの濃度を適宜設定することができる。
本発明の方法において、糖転移酵素の反応系にNaClを添加する時期に特に制限はないが、例えば、酵素反応前に、酵素反応用緩衝液に、酵素溶液に、糖受容体基質溶液に、または糖供与体溶液に溶解させておいてもよく、あるいはこれらと独立に適当濃度のNaCl溶液を調整し、これを反応系に添加してもよい。NaCl溶液を酵素反応成分と独立に調整する態様では、反応の直前または反応の途中でNaClを反応系に添加することも可能である。
いずれにせよ、本発明の方法において、添加するNaClの量は、反応系の全量を基準として、0.1M〜2.0M、好ましくは0.1M〜1.5M、更に好ましくは0.2M〜1.0Mである。
本発明の方法において、使用できる糖受容体の例として、単糖類、二糖類、多糖類、糖ペプチド、糖タンパク質、糖脂質等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法において、使用できる糖供与体の例としては、糖ヌクレオチド、例えばCMP-NeuAc、CMP-KDN、CMP-NeuGc等のCMP-シアル酸、UDP-ガラクトース、GDP-フコース、GDP-マンノース、UDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-N-アセチルガラクトサミン、UDP-グルコース等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書において、糖転移酵素とはグリコシル基を含む糖供与体から糖受容体にグリコシル基を転移する反応を触媒する酵素である。糖転移酵素の例には、シアル酸の転移反応を触媒するシアル酸転移酵素、グルコースの転移反応を触媒するグルコース転移酵素、ガラクトースの転移反応を触媒するガラクトース転移酵素、N−アセチルガラクトサミンの転移反応を触媒するアセチルガラクトサミン転移酵素、N−アセチルグルコサミンの転移反応を触媒するアセチルグルコサミン転移酵素、マンノースの転移反応を触媒するマンノース転移酵素、フコースの転移反応を触媒するフコース転移酵素、が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書においてシアル酸転移酵素とは、シアル酸を含む糖供与体から糖受容体にシアル酸を転移する反応を触媒する酵素である。本発明の方法におけるシアル酸転移酵素の例としては、ガラクトシド-α2,3-シアル酸転移酵素、ガラクトシド-α2,4-シアル酸転移酵素、ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素、シアル酸-α2,8-シアル酸転移酵素、およびシアル酸-α2,9-シアル酸転移酵素などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様において、本発明の方法におけるシアル酸転移酵素は、ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素、および/または、ガラクトシド-α2,3-シアル酸転移酵素である。
本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素」とは、シチジン1リン酸(CMP)−シアル酸からシアル酸を、複合糖質糖鎖もしくは遊離の糖鎖を構成しているガラクトース残基等の6位の炭素に水酸基を有する単糖の6位、ラクトースもしくはN−アセチルラクトサミンなどのオリゴ糖を構成しているガラクトース残基等の6位の炭素に水酸基を有する単糖の6位、またはガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンなどの複合糖質を構成しうる単糖であって6位の炭素に水酸基を有する単糖の6位、に転移させる活性を有するタンパク質を意味する。なお、いずれの単糖も、α配位であっても、β配位であっても構わない。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性」とは、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素について上述した活性を意味する。
本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素」とは、シチジン1リン酸(CMP)−シアル酸からシアル酸を、複合糖質糖鎖もしくは遊離の糖鎖を構成しているガラクトース残基等の3位の炭素に水酸基を有する単糖の3位、ラクトースもしくはN−アセチルラクトサミンなどのオリゴ糖を構成しているラクトース残基等の3位の炭素に水酸基を有する単糖の3位、またはガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンなどの複合糖質を構成しうる単糖であって3位の炭素に水酸基を有する単糖の3位、に転移させる活性を有するタンパク質を意味する。なお、いずれの単糖も、α配位であっても、β配位であっても構わない。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性」とは、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素について上述した活性を意味する。
また、ここでいう「シアル酸」とは、シアル酸ファミリーに属するノイラミン酸誘導体を示す。具体的には、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、5−デアミノ−5−ヒドロキシノイラミン酸(KDN)、ジシアル酸などを示すが、これらに限定されない。
本発明の方法は、ビブリオ科に属する微生物に由来する糖転移酵素について、その酵素反応系にNaClを添加することにより、酵素活性を増加させる方法である。ここで、酵素活性が増加するとは、当該反応をNaClの存在下で行うことにより、NaClの非存在下に比べて当該反応の効率が高まることをいう。好ましい態様において、酵素活性が増加するとは、当該反応をNaClの存在下で行うことにより、NaClの非存在下に比べて、酵素の相対活性が1倍より大きい、より好ましくは1.1倍より大きい、さらに好ましくは1.2倍より大きいことをいう。増加した酵素活性の上限は特に定めなくてもよく、好ましくは10倍以下、5倍以下、3倍以下、2倍以下であってもよい。
フォトバクテリウム属に属する細菌(Photobacterium damselae)由来の糖転移酵素(α2,6-シアル酸転移酵素;native)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 フォトバクテリウム属に属する細菌(Photobacterium damselae)由来の糖転移酵素(α2,6-シアル酸転移酵素;native)に対するKClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 ラット由来の糖転移酵素(α2,6-シアル酸転移酵素)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 フォトバクテリウム属に属する細菌(Photobacterium damselae)由来の糖転移酵素(組換えα2,6-シアル酸転移酵素のデリーション・ミュータント;N2C1)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 フォトバクテリウム属に属する細菌(Phobacterium phosphoreum)由来の糖転移酵素(α2,3-シアル酸転移酵素;467 native)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 フォトバクテリウム属に属する細菌(Phobacterium phosphoreum)由来の糖転移酵素(組換えα2,3-シアル酸転移酵素;467 N0C0)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 フォトバクテリウム属に属する細菌(Phobacterium phosphoreum)由来の糖転移酵素(組換えα2,3-シアル酸転移酵素;467 N2C0)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 フォトバクテリウム属に属する細菌(Phobacterium sp.)由来の糖転移酵素(組換えα2,3-シアル酸転移酵素;224 N1C0)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。 ビブリオ属に属する細菌(Vibrio sp.)由来の糖転移酵素(組換えα2,3-シアル酸転移酵素;FAJ N1C0)に対するNaClの酵素活性に及ぼす影響を示すグラフである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。

参考例1 ビブリオ科微生物由来のα2,3−シアル酸転移酵素の同定とクローニング
材料および方法
参考例1−1: α2,3−シアル酸転移酵素を発現する微生物のスクリーニングと菌株の同定
海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を接種源とした。この接種源をマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる平板培地上に塗布し、15℃、25℃もしくは30℃で生育する微生物を取得した。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる液体培地を用いてそれぞれの微生物を培養した。微生物が十分成育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集めた。集めた菌体に、0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕した。この細胞破砕液を酵素溶液としてシアル酸転移活性を測定し、さらに、ピリジルアミノ化糖鎖を用いて、シアル酸結合様式の決定を行った。その結果、α2,3-シアル酸転移活性を有する菌株JT−ISH−467株、JT−ISH−224株、およびJT−FAJ−16株を得た。なお、JT−ISH−467株は、スルメイカの表皮から、JT−ISH−224株はカマスの内臓から、およびJT−FAJ−16株はアジの内臓から、それぞれ得られた。
シアル酸転移活性は、J. Biochem., 120, 104-110 (1996) (引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法に準じ測定した。具体的には、糖供与体基質CMP−NeuAc(70nmol、14CでNeuAcをラベルしたCMP−NeuAc 25000cpmを含む、356cpm/nmol)、糖受容体基質としてラクト−ス(1.25μmol)、および上記に記した方法で調製した酵素を含む反応溶液(30μl)を用いて酵素反応を行った。酵素反応は25℃で10分間から30分間行った。反応終了後、反応溶液に1.97mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をDowex1×8(PO4 3‐ フォーム、0.2×2cm、BIO−RAD製)カラムに供した。このカラムの溶出液(0〜2ml)に含まれる反応生成物、すなわち、シアリルラクト−スに含まれる放射活性を測定することで、酵素活性を算出した。
また、シアル酸結合様式の決定はピリジルアミノ化糖鎖を用いて行った。得られた酵素を用い、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行った。ピリジルアミノ化糖鎖としては、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1,4Glc−PA、タカラバイオ製PA−Sugar Chain 026)を用い分析した。なお、標品として、ピリジルアミノ化α2,3シアリルラクトース(NeuAcα2,3Galβ1,4Glc−PA、タカラバイオ製PA−Sugar Chain 029)を用いた。糖受容体基質が2.0μM、CMP−NeuAcが5.7μMおよび酵素が20mU/ml程度となるように、それぞれを20mM カコジレート緩衝液(pH6.0)あるいはビストリス緩衝液(pH6.0)25μl中に溶解し、25℃下で3時間から18時間反応させた。反応終了後、100℃で2分間反応溶液を処理することにより酵素を失活させた。その後、HPLCで反応生成物の分析を行った。
HPLCシステムとしてShimadzu LC10A(島津製作所製)を用い、分析カラムにはTakara PALPAK Type R(タカラバイオ製)を用いた。0.15% N−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン(pH5.0)で平衡化したカラムに溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)で希釈した反応液を注入した。ピリジルアミノ化糖鎖の溶出には溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)および溶出液B(0.5%、n−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を用い、30〜100%溶出液Bの直線濃度勾配法(0〜35分)および100%溶出液B(35〜50分)により、順次ピリジルアミノ化糖鎖を溶出した。なお、分析は以下の条件で行った(流速:1ml/min、カラム温度:40℃、検出:蛍光(Ex:320nm、Em:400nm))。
(i)JT−ISH−467株
得られたJT−ISH−467株の性質は以下の通りであった:
菌学的性質
(1)細胞の形態は桿菌で、大きさは0.7〜0.8μm×1.5〜2.0μm。
(2)運動性 −
(3)グラム染色性 −
(4)胞子の有無 −
生理学生化学的性質
(1)生育温度 4℃では+、25℃では+、30℃では−
(2)集落の色調 特徴的集落色素を産生せず
(3)O/Fテスト +/−
(4)カタラーゼテスト −
(5)オキシダーゼテスト +
(6)グルコースからの酸産生 −
(7)グルコースからのガス産生 −
(8)発光性 +
(9)硝酸塩還元 +
(10)インドール産生 +
(11)ブドウ糖酸性化 −
(12)アルギニンジヒドロラーゼ +
(13)ウレアーゼ −
(14)エスクリン加水分解 −
(15)ゼラチン加水分解性 −
(16)β‐ガラクトシダーゼ +
(17)ブドウ糖資化性 −
(18)L−アラビノース資化性 −
(19)D−マンノース資化性 −
(20)D−マンニトール資化性 −
(21)N−アセチル−D−グルコサミン資化性 −
(22)マルトース資化性 −
(23)グルコン酸カリウム資化性 −
(24)n−カプリン酸資化性 −
(25)アジピン酸資化性 −
(26)dl−リンゴ酸資化性 −
(27)クエン酸ナトリウム資化性 −
(28)酢酸フェニル資化性 −
(29)チトクロームオキシダーゼ +
(30)菌体内DNA のGC含量(モル%)39.7%
16S rRNA遺伝子の塩基配列解析およびDNA−DNAハイブリダイゼーションによる種の同定
JT−ISH−467株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の全塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。塩基配列を配列番号3に示した。この塩基配列はフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)基準株であるATCC11040株の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対し、相同率100%の高い相同性を示した。この結果から、JT−ISH−467株はフォトバクテリウム属に属することが明らかとなった。しかしながら、16S rRNA遺伝子は細菌の全ゲノムの一部でしかないので、16S rRNA遺伝子の塩基配列による同定解析は種レベルの極めて近縁な生物間の距離に対しては誤差が非常に大きいとされている。そこで、属内における菌株の類縁関係の定量的な評価に一般的に用いられているDNA−DNAハイブリダイゼーション試験法を用い、種の決定を行った。JT−ISH−467株およびフォトバクテリウム・フォスフォレウム基準株であるNCIMB1282株(ATCC11040株と同一株)の全DNAを抽出し、供試した。その結果、84.7%の高い相同値(DNA-DNA relatedness)が得られた。一般に、同一種間のDNA−DNA相同値は60%以上を示すことから、JT−ISH−467株はフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)と同定された。なお、DNA−DNAハイブリダイゼーション試験は「微生物の分類・同定実験法」(鈴木健一郎・平石 明・横田 明 編、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社、2001年9月、参照によりその全体を本明細書に援用する)に従い、マイクロプレートを用いたフォトビオチン標識法によって行った。
(ii)JT−ISH−224株
得られたJT−ISH−224株の性質は以下の通りであった:
菌学的性質
(1)細胞の形態は桿菌で、大きさは0.7〜0.8μm×1.0〜1.5μm。
(2)運動性 +
(3)グラム染色性 −
(4)胞子の有無 −
生理学生化学的性質
(1)生育温度 4℃では−、25℃では+、30℃では+、37℃では−
(2)集落の色調 特徴的集落色素を産生せず
(3)O/Fテスト +/−
(4)カタラーゼテスト +
(5)オキシダーゼテスト +
(6)グルコースからの酸産生 +
(7)グルコースからのガス産生 +
(8)発光性 −
(9)硝酸塩還元 +
(10)インドール産生 +
(11)ブドウ糖酸性化 −
(12)アルギニンジヒドロラーゼ +
(13)ウレアーゼ −
(14)エスクリン加水分解 −
(15)ゼラチン加水分解性 −
(16)β‐ガラクトシダーゼ +
(17)ブドウ糖資化性 −
(18)L−アラビノース資化性 −
(19)D−マンノース資化性 −
(20)D−マンニトール資化性 −
(21)N−アセチル−D−グルコサミン資化性 −
(22)マルトース資化性 −
(23)グルコン酸カリウム資化性 −
(24)n−カプリン酸資化性 −
(25)アジピン酸資化性 −
(26)dl−リンゴ酸資化性 −
(27)クエン酸ナトリウム資化性 −
(28)酢酸フェニル資化性 −
(29)チトクロームオキシダーゼ +
(30)O/129感受性、10μg −、15μg +
(31)菌体内DNA のGC含量(モル%)39.4%
16S rRNA遺伝子の塩基配列解析
JT−ISH−224株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の全塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。塩基配列を配列番号32に示した。
JT−ISH−224株はマリンアガー上での生育性、桿菌、グラム染色性、グルコース発酵的分解性、O/129感受性などの形態観察および生理・生化学的性状試験の結果からビブリオ科に属することが示された。さらに、JT−ISH−224株の16S rRNA遺伝子のDNA塩基配列はフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)基準株ATCC11040の16S rRNA遺伝子の配列に最も相同性が高く、その相同率は99.2%であること、次にフォトバクテリウム・イリオピスカリウム(Photobacterium iliopiscarium)基準株ATCC51760の16S rRNA遺伝子の配列に相同性が高く、その相同率は99.1%であることが明らかとなった。これらの結果から、JT−ISH−224株はフォトバクテリウム属(Photobacterium sp.)に属する微生物であることが明らかとなった。
(iii)JT−FAJ−16株
得られたJT−FAJ−16株の性質は以下の通りであった:
菌学的性質
(1)細胞の形態は桿菌で、大きさは0.7〜0.8μm×1.2〜1.5μm。
(2)運動性 −
(3)グラム染色性 −
(4)胞子の有無 −
生理学生化学的性質
(1)生育温度 4℃では+w、25℃では+、30℃では+、37℃では+
(2)集落の色調 淡黄色〜クリーム色
(3)O/Fテスト +/+
(4)カタラーゼテスト +
(5)オキシダーゼテスト +
(6)グルコースからの酸産生 +
(7)グルコースからのガス産生 −
(8)硝酸塩還元 +
(9)インドール産生 −
(10)ブドウ糖酸性化 +
(11)アルギニンジヒドロラーゼ −
(12)ウレアーゼ −
(13)エスクリン加水分解 +
(14)ゼラチン加水分解性 −
(15)β‐ガラクトシダーゼ +
(16)ブドウ糖資化性 −
(17)L−アラビノース資化性 −
(18)D−マンノース資化性 −
(19)D−マンニトール資化性 −
(20)N−アセチル−D−グルコサミン資化性 −
(21)マルトース資化性 −
(22)グルコン酸カリウム資化性 −
(23)n−カプリン酸資化性 −
(24)アジピン酸資化性 −
(25)dl−リンゴ酸資化性 −
(26)クエン酸ナトリウム資化性 −
(27)酢酸フェニル資化性 −
(28)チトクロームオキシダーゼ +
(29)O/129感受性、 −
(30)マンイトール発酵性、 +
(31)イノシトール発酵性、 +
(32)アラビノース発酵性、 +
(33)ラムノース発酵性、 −
(34)サッカロース発酵性、 −
(35)生育性(NaCl)、3%NaCl+、4%NaCl+、6%NaCl+、
(36)デンプン加水分解、 −
(37)Tween80分解、 −
(38)H2S産生、 −
(39)アセトイン産生(VPテスト)、 −
16S rRNA遺伝子の塩基配列解析
JT−FAJ−16株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の全塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。塩基配列を配列番号33に示した。
JT−FAJ−16株はマリンアガー上での生育性、桿菌、グラム染色性、グルコース発酵的分解性、O/129感受性などの形態観察および生理・生化学的性状試験の結果からビブリオ科に属することが示された。さらに、JT−FAJ−16株の16S rRNA遺伝子のDNA塩基配列はビブリオ・ルモイエンシス(Vibrio rumoiensis)基準株の16S rRNA遺伝子の配列に最も相同性が高く、その相同率は99.5%であることが明らかとなった。これらの結果から、JT−FAJ−16株はビブリオ属(Vibrio sp.)に属する微生物であることが明らかとなった。

参考例1−2: フォトバクテリウム フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)JT−ISH−467からのα2,3−シアル酸転移酵素の抽出および精製
マリンアガー2216平板培地上で継代培養したフォトバクテリウム フォスフォレウムJT−ISH−467株のコロニーから菌体をループで採取し、マリンブロス2216液体培地10mlに接種し、25℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
本培養は、以下の手順で実施した。20g/LのBacto Peptoneおよび4 g/LのBacto Yeast Extractを加えたマリンブロス2216培地を1000ml容のコブ付フラスコに300ml張り込み、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌した。これを36本(合計10.8L)用意した。各々のフラスコに前述の培養液10mlを接種し、25℃、毎分180回転で24時間振とう培養した。培養液を遠心分離し、菌体を回収した。湿重量で約60gを得た。
この菌体を、990mlの0.2%トリトンX−100および3M塩化ナトリウムを含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。菌体破砕液を4℃、100,000×gで1時間、遠心分離を行い、上清を得た。得られた上清を、透析膜チューブに入れ、0.2%トリトンX−100を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)中で4℃、塩化ナトリウムが20mM程度になるまで透析した。透析後、溶液中に沈澱が生じたため、4℃で、100,000×gで1時間遠心分離を行い、沈殿を取り除いた。
この粗酵素液を、0.2%トリトンX−100なる界面活性剤を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)で平衡化したHiPrep 16/10 DEAE FF(アマシャムバイオサイエンス製)という陰イオン交換カラムに吸着させ、0.2%トリトンX−100を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)から1M塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が0.25M付近で溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
回収した画分を20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で希釈し、予め0.2%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したハイドロキシアパタイト(Bio−Rad製)に吸着させ、0.2%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)から0.2%トリトンX−100を含む500mMリン酸緩衝液(pH6.0)へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、リン酸緩衝液濃度が125mM付近に溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
この画分をMonoQ 5/50 GL(アマシャムバイオサイエンス製)陰イオン交換カラムに吸着させ、0.2%トリトンX−100を含む20mM カコジレート緩衝液(pH6.0)から1M 塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が300mM付近で溶出される酵素活性を有する画分を回収した。
この画分を、0.2%トリトンX−100を含む20mM カコジレート緩衝液(pH7.0)で10倍希釈し、MonoQ 5/50 GL(ファルマシア製)陰イオン交換カラムに吸着させた。0.2%トリトンX−100を含む20mMカコジレート緩衝液(pH7.0)から1M 塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ、直線濃度勾配法で溶出させた。塩化ナトリウム濃度が300mM付近で溶出される酵素活性を有する画分を回収した。
この画分を0.2%トリトンX−100および0.2M塩化ナトリウムを含む20mMカコジレート緩衝液(pH7.0)で2倍希釈し、HiLoad 16/60 Superdex 200 prep grade(アマシャムバイオサイエンス製)ゲルろ過カラムで分画した。0.2%トリトンX−100および0.2M塩化ナトリウムを含む20mM カコジレート緩衝液(pH7.0)で溶出させた。
活性のあった画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した結果、目的酵素は単一のバンドを示し、約39,000の分子量を示した(本明細書において467 nativeと表記する)。この画分の比活性は、菌体破砕時の比活性に比べて約350倍に上昇した(表3)。
粗酵素液からのJT−ISH−467株由来のα2,3−シアル酸転移酵素の精製について、上述したそれぞれの精製工程を経た試料の酵素活性を表1に示す。酵素活性は、実施例7−1に記載したのと同様にJ. Biochem. 120, 104-110(1996)に記載されている方法で測定した。また、タンパク質の定量はCoomassie Protein Assay Reagent(PIERCE製)を用いて、添付されたマニュアルにしたがってタンパク質の定量を行った。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量とした。
Figure 0004812625
参考例1−3: ピリジルアミノ化糖鎖を用いたシアル酸結合様式の決定
参考性1−2で得られた酵素を用い、参考例1−1のように、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行った。その結果、本酵素を用いることにより、ピリジルアミノ化ラクトースからピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトースが合成されることが明らかとなった。

参考例1−4: フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株が生産するα2,3−シアル酸転移酵素をコードする遺伝子の塩基配列解析および当該遺伝子の形質転換
(1)ゲノムDNAの精製とゲノムライブラリーの作成
JT−ISH−467株の菌体ペレット約0.5gから、Qiagen Genomic-tip 100/G(Qiagen社製)を用いて、キット添付の説明書きに従って、約100μgのゲノムDNAを調製した。1−2μgのDNAに対して、0.1〜0.2ユニットの四塩基認識の制限酵素Sau3AIを反応させ、部分分解を行った。反応バッファーは酵素に添付のものを用い、反応条件は37℃、30分とした。反応終了後、反応液に最終濃度25mMのEDTA pH8.0を加え、フェノール・クロロホルム処理を行った。ゲノムDNAをエタノール沈殿で回収し、TE 400μlに溶解した。遠心チューブ(日立製作所製40PA)に、グラジエント作製装置を用いて、40%シュークロースバッファー(20mM Tris pH8.0,5mM EDTA pH8.0,1M NaCl)と10%シュークロースバッファーから、40−10%のグラジエントを作製し、そこへ上記の部分分解DNA溶液を重層した。超遠心機(日立製作所製SCP70H、ローター:SRP28SA)を用いて、26,000rpm、20℃、15時間遠心した。遠心後チューブの底部に25Gの針で穴を空け、底部の液から1mlずつ回収した。回収したゲノムDNAを含むサンプルの一部を、サブマリン電気泳動糟を用い、0.5−0.6%アガロースゲル/TAEバッファー中で、26V、20時間電気泳動を行い、9−16kbのサイズのDNAを含む画分を把握した。マーカーとしてλ/HindIIIを用いた。9−16kbのサイズのDNA断片を含む画分にTEを2.5ml加えシュークロース濃度を下げた後,エタノール沈殿、リンスを行い、少量のTEに溶解した。
JT−ISH−467株のゲノムライブラリー作成のためのベクターとして、λDASH II(Stratagene製)を用いた。λDASH II/BamHIベクターとゲノムDNA断片のライゲーション反応はStratagene製のライゲーションキットを用いて、12℃で一晩行った。反応後、反応液をGigaPack III Gold Packaging extractと反応させ、ゲノムDNAが組み込まれたλベクターをファージ粒子に取り込ませた。ファージ液は500μlのSMバッファーと20μlのクロロホルム中で4℃保管した。大腸菌XL1−Blue MRA(P2)(Stratagene製)をLBMM(LB+0.2%マルトース+10mM MgSO4)中でA600=0.5になるまで培養し、この培養液200μlに、適量のファージ溶液を加え、37℃で15分間培養した。ここへ48℃で保温したNZYトップアガロースを4ml加え、混合し、NZYアガープレート(直径9cmのプラスチックシャーレ)にプレーティングした。プレートを37℃で一晩培養し、プラーク数を数え、titerを計算したところ、ライブラリーサイズは約30万pfu(plaque forming unit)と算出された。
(2)プライマー設計とプローブ作成
Procise 494 cLC Protein Sequencing System(Applied Biosystems製)を用いて、JT−ISH−467株由来のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ末端(N末端)アミノ酸配列、および内部アミノ酸配列を決定した。
N末端アミノ酸配列の決定は、次のようにして行った。当該シアル酸転移酵素を5/20%グラジエントゲル(ATTO製)にてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。泳動後、当該酵素をPVDF膜に吸着させ、アミノ酸配列分析装置により、アミノ末端側10個のアミノ酸の配列を決定した。その結果、当該酵素のN末端アミノ酸配列はXNSDSKHNNS(配列番号4)であった。
また、内部アミノ酸配列の決定は、次のようにして行った。当該シアル酸転移酵素を5/20%グラジエントゲル(ATTO製)にてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。ゲルを染色した後、目的のバンドを切り出し、リジルエンドペプチダーゼを含むトリスバッファー(pH8.5)を加え、35℃、20時間の処理を行った。その後、溶液の全量を逆相HPLC(カラム:Symmetry C18 3.5μm)に供して、断片ペプチドを分離した。アミノ酸配列分析装置により、当該酵素の内部アミノ酸配列は、SLDSMILTNEIK(配列番号5)、FYNFTGFNPE(配列番号6)およびGHPSATYNQQIIDAHNMIEIY(配列番号7)を有することが明らかとなった。
上記のように決定されたフォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467由来α2,3−シアル酸転移酵素の部分アミノ酸配列、即ちN末アミノ酸配列:XNSDSKHNNS(配列番号4)と、三箇所の内部アミノ酸配列のうち、二箇所の内部アミノ酸配列:FYNFTGFNPE(配列番号6)およびGHPSATYNQQIIDAHNMIEIY(配列番号7)を基に以下のdegenerateプライマーを設計、合成した。即ち、N末端のアミノ酸配列:XNSDSKHNNS(配列番号4)から、下記の表2に示す3本のプライマーを合成した。
Figure 0004812625
また、内部アミノ酸配列:GHPSATYNQQIIDAHNMIEIY(配列番号7)から下記の表3に示す4本のプライマーを合成した。
Figure 0004812625
さらに、内部アミノ酸配列:FYNFTGFNPE(配列番号6)から下記の表4に示す2本のプライマーを合成した。
Figure 0004812625
これらのプライマーを用いて、上記(1)で抽出・精製したJT−ISH−467株のゲノムDNAを鋳型にPCRを行い、ライブラリーをスクリーニングするためのプローブとなるJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分長DNAを増幅した。プライマー組み合わせは、N末端配列由来の3本のプライマーのそれぞれと、467in1FW(配列番号12)、467in1FW2(配列番号14)もしくは467in2FW(配列番号16)の9つの組み合わせ、467in1RV(配列番号11)もしくは467in1RV2(配列番号13)と467in2FW(配列番号16)の2つの組み合わせ、さらに467in2RV(配列番号15)と467in1FW(配列番号12)もしくは467in1FW2(配列番号14)の2つの組み合わせの、総計13組み合わせである。PCR反応は以下のように行った。50μlの反応液中に、ゲノムDNA 250ng、10( Ex taqバッファー 5μl、2.5mM 各dNTPs 4μl,プライマーをそれぞれの配列について5pmole,Ex taq(タカラバイオ製)0.5μl、をそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK社)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、50℃ 1分、72℃ 2分を40回、72℃ 6分を1回行った。その結果、9つのプライマー組み合わせ(467N−RV(配列番号8)と467in1FW(配列番号12)、467N−RV(配列番号8)と467in2FW(配列番号16)、467in1RV(配列番号11)と467in2FW(配列番号16)、467in2RV(配列番号15)と467in1FW(配列番号12)の組み合わせ以外の9つ)において、PCR産物が増幅された。これらのPCR産物のうち、特異的かつ高い増幅効率の得られた組み合わせ(467N−RV3(配列番号10)と467in1FW(配列番号12))由来のPCR産物をベクターpCR2.1TOPO(Invitrogen製)にクローニングした。ライゲーション反応はベクターキット添付の説明書きに従った。大腸菌TB1にエレクトロポレーション法を用いてDNAを導入し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition(引用によりその全体を本明細書に援用する))に従いプラスミドDNAを抽出した。このクローンに関して、M13プライマー(タカラバイオ製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer製)で、PCR産物の塩基配列をその両端から決定した。
決定されたDNA塩基配列(929bp:配列番号17)に関して、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のGeneBankデータベースに対して、BLASTプログラムによる相同性検索を行った。その結果、有意な相同性を示すDNA配列は検出されなかった。これは本発明によって明らかにされた、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のDNA塩基配列が新規な配列であることを意味する。次に、この塩基配列をアミノ酸に翻訳して、再度BLASTサーチをかけたところ、フォトバクテリウム・ダムセーラ(Photobacterium damselae)のα2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)と30%の相同性、パスツレラ・ムルトシダ亜種ムルトシダ株(Pasteurella multocida subsp. multocida)Pm70の仮定上のタンパク質 PM0188(AAK02272)と26%の相同性、へモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)35000HP株の仮定上のタンパク質 HD0053(AAP95068)と21%の相同性が検出された。さらに、翻訳されたアミノ酸配列は、上記の精製酵素から直接決定された内部アミノ酸配列:FYNFTGFNPE(配列番号6)とSLDSMILTNAIK(配列番号5)の全体を含み、N末アミノ酸配列:XNSDSKHNNS(配列番号4)と、内部アミノ酸配列:GHPSATYNQQIIDAHNMIEIY(配列番号7)の一部を含んでいた。以上の結果から、クローニングされたDNAは、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の一部であり、かつ本発明のフォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列は、既報配列と30%程度しか相同性を示さない新規なアミノ酸配列であることが明らかとなった。
(3)スクリーニングと遺伝子クローニング
上記(2)でクローン化されたフォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の一部からなるDNA断片を、pCR2.1 TOPOベクターから制限酵素EcoRIで切り出し、これをプローブとして、上記(1)作製したフォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングした。直径9cmの丸形シャーレにλDASH II/BamHI ベクターキット(Stratagene製)の説明書きに従って、約300−500pfuのファージを宿主菌XL1−blue MRA(P2)とともにプレーティングした。プラークをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(Amersham製)に接触させ、メンブレン添付の説明書きに従ってアルカリ処理を行いDNAを変性させ、メンブレン上に固定させた。プローブはrediprime IITM DNA labelling system(アマシャムバイオサイエンス製)を用いて32Pラベルした。ハイブリダイゼーションは0.5M リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、7% SDS、1mM EDTA中で65(Cで一晩、洗浄の条件は40mM リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、1mM EDTA、5%SDS中で65℃、15分を2回、40mM リン酸ナトリウムバッファー pH 7.2、1% SDS、1mM EDTA中で65(C、15分を2回行った。1次スクリーニングで約5,000pfuのファージから24個のポジティブクローンが得られた。うち18個のクローンに関して、プラークの精製を兼ねた2次スクリーニングを行った。その結果、6種類の選抜・精製プラークを得ることが出来た。
これらのプラークを回収し、それぞれ大腸菌XL1−blue MRA(P2)とともに、一枚数万pfuとなるようにNZYプレートにプレーティングし、一晩37℃で保温した。プラークが一面に出ている6枚のプレートにSMバッファーを4mlづつ注ぎ、4℃で一晩静置した。パスツールピペットで、ファージプレートライセートを回収し、QIAGEN Lambda Mini Kit(キアゲン製)で、λDNAを抽出、精製した。これら6種類のλDNA、および(1)で精製したJT−ISH−467株の全ゲノムDNAを制限酵素EcoRI、HindIIIで消化し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分画後、0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングにより、ゲルをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(アマシャムバイオサイエンス製)に転写した。このフィルターに関して、上記の929bpのプローブ(配列番号17)を用いて、上述のようにサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、EcoRI消化では、9kbまたはそれ以上のバンドが検出された。一方、HindIII消化の場合、全てのλDNA、ゲノムDNAともに4.6kbのバンドが検出された。そこで、λDNAを再度HindIIIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、4.6kb HindIII断片を回収し、プラスミドベクターpBluescript SK(−)のHindIII部位に、常法に従いクローニングした。
次に、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の全塩基配列を決定するため、同遺伝子の部分DNA配列(上述、929bp:配列番号17)を基に以下の表5に示すプライマーを合成した。
Figure 0004812625
これらのプライマーを用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer製)で、4.6kb HindIII断片の内部塩基配列を解析し、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の内部、およびその近傍の塩基配列を解析した。その結果、配列表の配列番号1の配列を得た。この配列は、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の全塩基配列である。最初のATGの上流には同じ読み枠で、翻訳終止コドンが現れるのでこれが、本遺伝子の翻訳開始コドンであると考えられる。
フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のORFは、1230塩基からなり、409個アミノ酸をコードしていた。このアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。このアミノ酸配列は、精製酵素から決定された4箇所のアミノ酸配列全てを完全に含む。N末のアミノ酸配列の一文字目が解読されていなかったが、遺伝子から演繹されるこの部分のアミノ酸はCys(システイン)であった。また成熟タンパクのN末端は、配列表の配列番号2の配列のうちの第22番目のCysであることから、初めの21アミノ酸からなる配列は、フォトバクテリウム・フォスフォレウムにおいてはプロセッシングを受け、除去されると考えられた。遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)を用いて、本発明のフォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素タンパク質全長、およびその遺伝子全長と、それらのホモローグの全長同士の相同性を解析したところ、アミノ酸配列では、フォトバクテリウム・ダムセーラのα2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)と32%の相同性、パスツレラ・ムルトシダ亜種ムルトシダ株Pm70の仮定上のタンパク質PM0188(AAK02272)と28%の相同性を有し、そして、遺伝子DNA配列ではそれぞれと、53%、51%の相同性を有していた。
(4)発現ベクターの構築
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移活性を有するか否かを調べるため、同遺伝子の全長、およびN末端側のシグナルペプチド部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列について、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7で解析を行ったところ、N末端の24アミノ酸が、シグナルペプチドであると予測された。そこで、遺伝子全長(本明細書において467−N0C0遺伝子と表記する)をクローン化するためのプライマー 467−23ST−N0−Pci(配列番号27)および467−23ST−C0−Bm(配列番号26)、さらにシグナルペプチド部分のアミノ酸が除かれたタイプのタンパク質をコードする遺伝子(本明細書において467−N2C0遺伝子と表記する)をクローン化するためのプライマー 467−23ST−N2−Nco(配列番号25)および467−23ST−C0−Bm(配列番号26)を設計、合成した(表6)。
Figure 0004812625
クローニング用にプライマーに予め組み込んだ制限酵素PciI(467−23ST−N0−Pci)、NcoI(467−23ST−N2−Nco)、BamHI(467−23ST−C0−Bm)部位を下線で示した。翻訳開始コドンATG、翻訳終止コドンに対応する相補配列TAAを四角で囲んだ。さらに、プライマー配列のうち、制限酵素部位より3’側で、鋳型DNAとアニーリングする部分の配列を太字で示した。PCR時の鋳型DNAは、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子全長を含む上記HindIII 4.6kb断片が組み込まれたプラスミドを用いた。PCRの反応条件は以下のように設定した。50μlの反応液中に、鋳型DNA 100ng、10× Ex taq buffer 5μl、2.5mM 各dNTP 4μl、プライマー 50pmole、Ex taq(タカラバイオ製) 0.5μlをそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK製)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、50℃ 1分、72℃ 2分を15回、72℃ 6分を1回行った。その結果、467−N0C0遺伝子でおよそ1.2kb、467−N2C0遺伝子でおよそ1.1kbのPCR産物が増幅された。これらのPCR産物のうち、467−N0C0遺伝子を制限酵素PciI(New England Biolab製)とBamHI(タカラバイオ製)で二重消化し、そして、467−N2C0遺伝子を制限酵素NcoI(タカラバイオ製)とBamHIで二重消化した後、ゲル精製した。大腸菌発現用ベクターはpTrc99A(Pharmacia LKB製)を用いた。このベクターを同じ制限酵素PciIとBamHI、または制限酵素NcoIとBamHIで二重消化しゲル精製したものを、制限酵素処理を行ったPCR産物とTakara Ligation Kit(タカラバイオ製)を用いてライゲーションし、大腸菌TB1に形質転換した。常法に従いプラスミドDNAを抽出、制限酵素分析し、インサートの組み込みを確認した。さらに、クローンした467−N0C0遺伝子およびクローンした467−N2C0遺伝子の全塩基配列を決定し、PCR反応による塩基配列の変異がないことを確認した。即ち、クローンした467−N0C0遺伝子は配列番号1に示す塩基配列を含み、そしてクローンした467−N2C0遺伝子は配列番号1の第73番目の塩基から第1230番目の塩基までの配列を含んでいた。
(5)発現誘導と活性測定
上記(4)で得られた467−N0C0遺伝子、467−N2C0遺伝子に関して、タンパク質発現誘導実験を行った。467−N0C0遺伝子および467−N2C0遺伝子がそれぞれ組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1の単一コロニーを、抗生物質アンピシリン(最終濃度100(g/mL)を含むLB培地(5ml)に接種し、A600=0.5程度になるまで30℃で菌を前培養し、その後IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド、和光純薬工業製)を最終濃度で1mMとなるように加え、30℃でさらに4時間振とう培養した。培養液2ml中の菌体を遠心分離によって集めた。この菌体を、200μlの0.336%トリトンX−100および0.5M塩化ナトリウムを含む20mM ビストリス緩衝液(pH7.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。得られた破砕液を粗酵素液とし、活性測定に供試した。反応は2反復で行い、反応組成は実施例1と同様に行った。但し、反応時間は15時間とした。その結果、下記の表7に示すように、467−N0C0遺伝子形質転換体の粗酵素液中および467−N2C0遺伝子形質転換体の粗酵素液中には、糖供与体であるCMP−NeuAc中の14CでラベルされたNeuAcを糖受容体基質であるラクトースに転移する因子、即ちシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。この結果から、467−N0C0遺伝子、または467−N2C0遺伝子を導入した大腸菌にはシアル酸転移酵素が発現されていることが明らかとなった。
Figure 0004812625
(6)α2,3−シアル酸転移活性の確認
上記(5)の粗酵素液を用いて、467−N2C0遺伝子を導入した大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素がα2,3−シアル酸転移活性を有するかどうか調べた。参考例1−1と同様に、糖受容体としてピリジルアミノ化ラクトースを用い、酵素反応を行った。反応終了後、95℃で5分間、反応溶液を熱処理することにより酵素を失活させ、HPLCで分析した。なお、酵素反応は、ピリジルアミノ化ラクトースが2.0μM、CMP−シアル酸が5.7μMとなるように、それぞれを20mM カコジレート緩衝液(pH6.0)25μl中に溶解し、25℃下で6時間行った(反応1)。一方、CMP−シアル酸を含まない反応液を供試した対照実験(反応2)を行った。また、標品の保持時間を明らかにするため、熱処理(95℃、5分間)によって失活させた粗酵素液を加え、ピリジルアミノ化ラクトースおよびピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトースを添加した試験を行った。
標品の分析結果から、ピリジルアミノ化ラクトースの保持時間は4.1分、ピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトースの保持時間は5.4分であることが示された。これにより反応1では検出されるが、反応2では検出されない保持時間5.3分のピークが、ピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトースであることが明らかとなった。すなわち、467−N2C0遺伝子を導入した大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素がα2,3−シアル酸転移活性を有することが証明された。
また、同様に467−N0C0遺伝子を導入した大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素がα2,3−シアル酸転移活性を有するかどうか調べた。その結果、大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素による反応において、反応生成物としてピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトースのピークが検出された。よって、この酵素がα2,3−シアル酸転移活性を有することが明らかとなった。

参考例1−5: フォトバクテリウム属細菌JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングと、塩基配列解析および当該遺伝子の大腸菌での発現
(1)JT−ISH−224株のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性と同酵素遺伝子の存在の確認
参考例1−1でシアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなったフォトバクテリウム属JT−ISH−224株において、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在するか否かを明らかにするため、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。参考例1−4に記載した方法で、JT−ISH−224株の菌体ペレットからゲノムDNAを調製した後、JT−ISH−224株のゲノムDNAを制限酵素EcoRIまたはHindIIIで消化し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分画後、0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングにより、ゲルをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(アマシャムバイオサイエンス製)に転写した。このフィルターに関して、上記のJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブとして用いて、参考例1−4に記載した方法でサザンハイブリダイゼーションを行った。ただしハイブリダイゼーション温度、および洗浄処理の温度は、55℃とした。その結果、EcoRI消化では、16kbのバンドが検出された。一方、HindIII消化の場合、5kbと2.7kbのバンドが検出された。この結果から、JT−ISH−224株にはJT−ISH−467株由来のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在することが明らかとなった。
(2)JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニング
次に、JT−ISH−224株のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングを行った。参考例1−4に記載した方法により、JT−ISH−224株のゲノムDNAから、λDASH II(Stratagene製)を用いて、ゲノムライブラリーを構築した。JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブに用い、JT−ISH−224株のゲノムライブラリーをスクリーニングした。ただし、参考例1−4と同様にハイブリダイゼーション、および洗浄の温度は55℃とした。その結果、プラーク精製を兼ねた二次選抜までに、12クローンを得、うち6つのλDNAを、参考例1−4のようにQIAGEN Lambda Mini Kit(キアゲン製)を用いて精製した。さらにこのうち3クローンのλDNAサンプル、およびJT−ISH−224株の全ゲノムDNAについて、制限酵素EcoRIまたはHindIIIで消化した。消化物をアガロースゲル電気泳動で分画し、上述の様にナイロンメンブレンフィルターに転写した。このフィルターを用いて、JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブに用い、サザン分析を行った。ハイブリダイゼーション、洗浄の温度は55℃とした。その結果、EcoRI消化の場合、12kbまたはそれ以上のバンドが検出されたのに対し、HindIII消化の場合は、3つ全てのλDNAサンプルとJT−ISH−224株の全ゲノムDNAに関して、5kbと2.7kbの二本のバンドが検出された。そこでλDNAサンプルを再度HindIIIで消化し、これら5kbと2.7kbの二本のDNA断片をゲル精製し、プラスミドベクターpBluescript SK(−)のHindIII部位に常法に従いクローニングした。
次に、これらのクローンに関して、M13プライマー(タカラバイオ製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、5kb HindIII断片と2.7kb HindIII断片の両端の塩基配列を決定した。その結果、5kb断片の片側のDNA配列、および2.7kbの片側のDNA配列から推定されるアミノ酸配列が、データベース検索の結果ともに、シアル酸転移酵素と相同性を示した。JT−ISH−224株の同酵素の遺伝子のDNAを完全に決定するため、HindIII 2.7kb断片から得られたDNA配列を基に、下記の表8のプライマーを合成し、塩基配列決定に用いた。
Figure 0004812625
その結果、配列表の配列番号28の配列を得た。この配列は、JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の全塩基配列である。最初のATGの上流には同じ読み枠で翻訳終止コドンが現れるので、これが本遺伝子の翻訳開始コドンであると考えられる。フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のORFは、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のそれと同様に、1230塩基からなり、409個のアミノ酸をコードしていた。このアミノ酸配列を配列表の配列番号29に示す。遺伝子内部にはHindIII部位を有していた。GENETYX Ver.7を用いて核酸、およびアミノ酸配列の解析を行ったところ、JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子は、JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子と92%の相同性を有していた。またアミノ酸配列でも、JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素と92%の相同性を示した。さらに、JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列は、フォトバクテリウム・ダムセーラのα2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)と33%の相同性、パスツレラ・ムルトシダ亜種ムルトシダ株Pm70の仮定上のタンパク質PM0188(AAK02272)と29%の相同性を示し、遺伝子DNA配列ではそれぞれと、54%、50%という相同性であった。
(3)発現ベクターの構築
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移酵素活性を有するか否かを調べるため、同遺伝子の全長、およびN末端側のシグナルペプチド部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列について、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7で解析を行ったところ、N末端の24アミノ酸が、シグナルペプチドであると予測された。そこで、遺伝子全長(本明細書において224−N0C0遺伝子と表記する)をクローン化するためのプライマー224−23ST−N0−Pci(配列番号35)、224−23ST−C0new−Bm(配列番号37)、さらにシグナルペプチド部分のアミノ酸が除かれたタイプのタンパク質をコードする遺伝子(本明細書において224−N1C0遺伝子と表記する)をクローン化するためのプライマー224−23ST−N1−Nco(配列番号36)、224−23ST−C0new−Bm(配列番号37)を設計、合成した(表9)。
Figure 0004812625
クローニング用にプライマーに予め組み込んだ制限酵素PciI(224−23ST−N0−Pci)、NcoI(224−23ST−N1−Nco)、BamHI(224−23ST−C0new−Bm)部位を下線で示した。翻訳開始コドンATG、および翻訳終止コドンに対応する相補配列TAAを四角で囲んだ。さらに、プライマー配列のうち、鋳型DNAとアニーリングする部分の配列を太字で示した。プライマー224−23ST−N0−Pciの場合、後のクローニング用にPciI部位を導入したことで、翻訳開始コドンATG直後のシトシン(C)がチミン(T)に置換される。このため、翻訳開始メチオニンの直後のアミノ酸配列がロイシン(Leu)からフェニルアラニン(Phe)に置換される。LeuとPheは同じ疎水性のアミノ酸であること、この部分はシグナルペプチド領域であることから、この変異によって酵素活性に大きな変化をもたらす可能性は低いと判断した。
続いてPCRを行い、発現ベクターに組み込むためのJT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子を増幅した。鋳型DNAは、JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子を含む上記λDNAを用いた。PCRの反応条件は以下のように設定した。50μlの反応液中に、鋳型DNA 100ng、10× Ex taq buffer 5μl、2.5mM 各dNTP 4μl、プライマー 50pmole、Ex taq(タカラバイオ製)0.5μlをそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK製)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、50℃ 1分、72℃ 2分を15回、72℃ 6分を1回行った。その結果、224−N0C0遺伝子でおよそ1.2kb、そして224−N1C0遺伝子でおよそ1.1kbのPCR産物が増幅された。これらのPCR産物を、制限酵素PciI(New England Biolab社製)とBamHI(224−N0C0遺伝子の場合)、または制限酵素NcoIとBamHI(224−N1C0遺伝子の場合)で二重消化した後、ゲル精製した。大腸菌発現用ベクターはpTrc99Aを用いた。このベクターを同じ制限酵素PciIとBamHI(224−N0C0遺伝子を導入する場合)、または制限酵素NcoIとBamHI(224−N1C0遺伝子を導入する場合)で二重消化しゲル精製したものを、制限酵素処理を行ったPCR産物とTakara Ligation Kit(タカラバイオ製)を用いてライゲーションし、大腸菌TB1に形質転換した。常法に従いプラスミドDNAを抽出、制限酵素分析して、インサートの組み込みを確認し、そしてクローンした224−N0C0遺伝子、ならびにクローンした224−N1C0遺伝子の全塩基配列を確認した。その結果、224−N0C0遺伝子においては、上述のシトシン(C)からチミン(T)への置換が確認されたが、それ以外は塩基配列の変異はなかった。同様に224−N1C0遺伝子の場合は、塩基配列の変異はなく、所望の塩基配列、即ち配列表の配列番号28のうち、第73番目の塩基から第1230番目の塩基までを含んでいた。
(4)発現誘導と活性測定
参考例1−4と同様に、224−N0C0遺伝子および224−N1C0遺伝子の2クローンに関して、タンパク質発現誘導実験を行い、酵素活性を測定した。その結果、下記の表10に示すように、224−N0C0遺伝子および224−N1C0遺伝子の形質転換体の粗酵素液中にシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。
Figure 0004812625
(5)α2,3−シアル酸転移酵素活性の確認
参考例1−4と同様に、224−N0C0遺伝子および224−N1C0遺伝子をそれぞれ大腸菌に導入して酵素を発現させ、ピリジルアミノ化ラクトースを糖受容体として用いる反応により、α2,3−シアル酸転移酵素活性を調べた。大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素による反応生成物をHPLCにより評価した結果、いずれのクローンを用いた反応についてもピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトースのピークが検出された。この結果から、JT−ISH−224株由来のシアル酸転移酵素がα2,3−シアル酸転移活性を有することが明らかとなった。

参考例1−6: ビブリオ属細菌JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングと塩基配列解析、および当該遺伝子の大腸菌での発現
(1)JT−FAJ−16株のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性と同酵素遺伝子の存在の確認
参考例1−1でシアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなったビブリオ属 JT−FAJ−16株において、フォトバクテリウム・フォスフォレウム JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在するか否かを明らかにするため、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。参考例1−4に記載した方法で、JT−FAJ−16株の菌体ペレットからゲノムDNAを調製した後、制限酵素EcoRI、HindIIIで消化し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分画後、0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングにより、ゲルをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(アマシャムバイオサイエンス製)に転写した。このフィルターに関して、上記の929bpのプローブ(配列番号17)を用いて、参考例1−4に記載した方法でサザンハイブリダイゼーションを行った。ただしハイブリダイゼーション温度、および洗浄処理の温度は、55℃とした。その結果、EcoRI消化で、3.6kbのバンドが、HindIII消化で、7kbのバンドが検出された。即ちJT−FAJ−16株にはJT−ISH−467株由来のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在することが明らかとなった。
(2)JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニング
次に、JT−FAJ−16株のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングを行った。参考例1−4に記載した方法で、JT−FAJ−16株のゲノムDNAから、λDASH II(Stratagene製)を用いて、ゲノムライブラリーを構築した。JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブに用い、JT−FAJ−16株のゲノムライブラリーをスクリーニングした。ただし、ハイブリダイゼーション実験はECL direct labelling & detection system(アマシャムバイオサイエンス製)を使用した。キット添付の説明書きに従ってプローブを作成した。ハイブリダイゼーションは、キット中のハイブリダイゼーションバッファーにブロッキング試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、37℃で4時間行った。洗浄は、0.4%SDS、0.5X SSC中で、50℃で20分を2回、2X SSC中で室温、5分を1回行った。シグナルの検出は、キット添付の説明書きに従った。
その結果、プラーク精製を兼ねた一次選抜で、12クローンを得、うち6つのλDNAを、参考例1−4のようにQIAGEN Lambda Mini Kit(キアゲン製)を用いて精製した。さらにこれらのλDNAサンプル、およびJT−FAJ−16株の全ゲノムDNAに関して、制限酵素EcoRIで消化した。消化物をアガロースゲル電気泳動で分画し、上述の様にナイロンメンブレンフィルターに転写した。このフィルターを用いて、JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブに用い、ECLシステムを用いて、上述と同じ条件でサザン分析を行った。その結果、6つ全てのλDNAサンプルとJT−FAJ−16株の全ゲノムDNAについて、3.6kbのバンドが検出された。そこでλDNAサンプルを再度EcoRIで消化し、この3.6kbのDNA断片をゲル精製し、プラスミドベクターpBluescript SK(−)のEcoRI部位に常法に従いクローニングした。
次に、JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子を含むと考えられたEcoRI 3.6kb断片に関して、M13プライマー(タカラバイオ製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer,Perkin Elmer製)で、両端の塩基配列を決定した。その結果、片側の端のDNA配列から推定されるアミノ酸配列が、データベース検索でフォトバクテリウム・ダムセーラのα2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)と27%の相同性を示した。JT−FAJ−16株のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の全塩基配列を完全に決定するため、EcoRI 3.6kb断片から得られたDNA配列を基に、下記の表11に記載のプライマーを合成し、塩基配列決定に用いた。
Figure 0004812625
得られた塩基配列データからさらに以下の表12に記載のプライマーを設計、合成し、全塩基配列の決定を行った。
Figure 0004812625
その結果、配列表の配列番号30の配列を得た。この配列は、JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の全塩基配列である。最初のATGの上流には同じ読み枠で翻訳終止コドンが現れるので、これが本遺伝子の翻訳開始コドンであると考えられる。JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のORFは、1209塩基からなり、402個アミノ酸をコードしていた。このアミノ酸配列を配列表の配列番号31に示す。GENETYX Ver.7を用いて核酸、およびアミノ酸配列の解析を行ったところ、JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子は、JT−ISH−467株およびJT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子と、それぞれ69.7%および68%の相同性を有していた。またアミノ酸配列でも、それぞれ、64.7%および64.8%の相同性を示した。さらに、JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列は、フォトバクテリウム・ダムセーラのα2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)と30.5%の相同性、パスツレラ・ムルトシダ亜種ムルトシダ株Pm70の仮定上のタンパク質 PM0188(AAK02272)と27.3%の相同性を示し、遺伝子DNA配列ではそれぞれと、51.2%、48.3%という相同性であった。
(3)発現ベクターの構築
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移酵素活性を有するか否かを調べるため、同遺伝子の全長、およびN末端側のシグナルペプチド部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
JT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列について、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7で解析を行ったところ、N末端の22アミノ酸が、シグナルペプチドであると予測された。そこで、遺伝子全長(本実施例においてFAJ−N0C0遺伝子と表記する)をクローン化するためのプライマーFAJ23STN0−BspHI(配列番号43)、FAJ23STC0−BamHI(配列番号45)、さらにシグナルペプチド部分のアミノ酸が除かれたタイプのタンパク質をコードする遺伝子(本実施例においてFAJ−N1C0遺伝子と表記する)をクローン化するためのプライマーFAJ23STN1−BspHI(配列番号44)、FAJ23STC0−BamHI(配列番号45)を設計、合成した(表13)。
Figure 0004812625
クローニング用にプライマーに予め組み込んだ制限酵素BspHI(FAJ23STN0−BspHI、FAJ23STN1−BspHI)、BamHI(FAJ23STC0−BamHI)部位を下線で示した。翻訳開始コドンATG、翻訳終止コドンに対応する相補配列TAAを四角で囲んだ。さらに、プライマー配列のうち、鋳型DNAとアニーリングする部分の配列を太字で示した。これらのプライマーを用いてPCRを行い、発現ベクターに組み込むためのJT−FAJ−16株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子を増幅した。鋳型DNAは、同遺伝子を含む上記3.6kbのDNA断片を用いた。PCRの反応条件は以下のように設定した。50μlの反応液中に、鋳型DNA 300ng、10× Ex taq buffer 5μl、2.5mM 各dNTP 4μl、プライマー 50pmole、Ex taq(タカラバイオ製) 0.5μlをそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK製)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、50℃ 1分、72℃ 2分を10回、72℃ 6分を1回行った。その結果、FAJ−N0C0でおよそ1.2kb、FAJ−N1C0でおよそ1.1kbのPCR産物が増幅された。これらのPCR産物を、TAクローニング用ベクターpCR2.1TOPO(Invitrogen製)に、TAクローニングキット(Invitrogen製)に添付された説明書に従って、クローニングした。大腸菌はTB1を使用した。得られたコロニーから常法でプラスミドを精製し、制限酵素EcoRIでPCR産物のベクターへの導入を確認した。導入の確認されたプラスミドサンプルを、制限酵素BspHIとBamHIで二重消化した後、1.2kb(FAJ−N0C0遺伝子)または1.1kb(FAJ−N1C0遺伝子)断片をゲル精製した。これらのDNAサンプルを、予め制限酵素NcoIとBamHIで二重消化した大腸菌発現用ベクターpTrc99Aに、Takara Ligation Kit(タカラバイオ製)を用いてライゲーションし、大腸菌TB1に組み込んだ。常法に従いプラスミドDNAを抽出、制限酵素分析を行いインサートの組み込みを確認し、クローンされたFAJ−N0C0遺伝子およびクローンされたFAJ−N1C0遺伝子の全塩基配列を確認した。FAJ−N0C0遺伝子については、塩基配列の変異はなく、所望の塩基配列、即ち、配列表の配列番号30のうち、第1番目の塩基から第1209番目の塩基までを含んでいた。また、FAJ−N1C0遺伝子については、塩基配列の変異はなく、所望の塩基配列、即ち、配列表の配列番号30うち、第67番目の塩基から第1209番目の塩基までを含んでいた。
(4)発現誘導と活性測定
参考例1−4と同様に、FAJ−N0C0遺伝子、およびFAJ−N1C0遺伝子の2クローンに関して、タンパク質発現誘導実験を行い、酵素活性を測定した。その結果、下記の表14に示すように、FAJ−N0C0遺伝子およびFAJ−N1C0遺伝子の形質転換体の粗酵素液中にシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。
Figure 0004812625
(5)α2,3−シアル酸転移活性の確認
参考例1−4と同様に、FAJ−N0C0遺伝子、およびFAJ−N1C0遺伝子をそれぞれ大腸菌に導入して酵素を発現させ、ピリジルアミノ化ラクトースを糖受容体として用いる反応により、α2,3−シアル酸転移酵素活性を調べた。大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素による反応生成物をHPLCにより分析した結果、いずれのクローンを用いた反応においてもピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトースのピークが検出された。この結果から、JT−FAJ−16株由来のシアル酸転移酵素がα2,3−シアル酸転移活性を有することが明らかとなった。

実施例1 P. damselae JT0160株由来の糖転移酵素(α2,6-シアル酸転移酵素)の酵素活性に及ぼすNaClの影響
材料および方法
海洋性微生物であるP. damselae JT0160株から、既に報告されている方法(特許第3062409号)に従ってβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素を精製した。酵素の精製純度はSDS-PAGEで確認し、最終精製酵素は電気泳動的に単一のタンパク質であることを確認した。この完全精製した酵素を用いて以下の実験を行った。
反応溶液20μl中に、糖供与体基質CMP-14C-NeuAc(50.066 nmol、25000cpm)、糖受容体基質ラクト−ス(1 mmol)、シアル酸転移酵素(0.5mU〜1.5mU)、NaClをそれぞれ0〜2.5M濃度になるように添加し、酵素反応を行った(30℃、1分)。酵素反応終了後、それぞれの条件においてラクト−スに転移されたNeuAcの放射活性を測定して酵素活性を算出し、各試験区における酵素活性に対するNaClの影響を検討した。
なお具体的には、反応終了後、反応溶液に1.98mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をAG1-×2Resin(PO4 3‐form、0.2×2cm)カラムに供した。このカラムは、AG1-×2Resin (OH- form)(BIO-RAD社製)を1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁し、30分後レジンを蒸留水で洗浄した後、蒸留水に懸濁して作成した。このカラムの溶出液(0〜2ml)の放射活性を測定した。このカラムの溶出液には、反応で生じた14C-NeuAc(N-アセチルノイラミン酸)が結合したシアリルラクト−ス及び未反応のラクト−スが含まれるが、未反応のCMP-14C-NeuAcはカラムに保持されたままである。従って、酵素反応の結果生じたシアリルラクト−ス由来の14Cの放射活性は、全て反応生成物由来であり、この画分の放射活性から酵素活性を算出することができる。
結果
P. damselae JT0160株由来のシアル酸転移酵素は、酵素反応系中のNaClの存在により、その酵素活性が増加することが認められた。NaClが酵素反応系に0.2Mから1M濃度で存在した場合、NaCl無添加の場合と比較して、その酵素活性はいずれも約1.2倍から1.4倍に向上した(図1)。

実施例2 P. damselae JT0160株由来の糖転移酵素(α2,6-シアル酸転移酵素)の酵素活性に及ぼすKClの影響
材料および方法
実施例1と同様にして、P. damselae JT0160株からβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素を完全精製し、以下の実験を行った。
反応溶液に20μl中に、糖供与体基質CMP-14C -NeuAc(50.066 nmol,25000cpm)、糖受容体基質ラクト−ス(1 mmol)、シアル酸転移酵素(0.5mU〜1.5mU)、KClをそれぞれ0〜1M濃度になるように添加し、酵素反応を行った(30℃、1分)。酵素反応終了後、それぞれの条件においてラクト−スに転移されたNeuAcの放射活性を測定して酵素活性を算出し、各試験区における酵素活性に対するKClの影響を検討した。なお具体的には、反応終了後、反応溶液に1.98mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をAG1-×2Resin(PO4 3‐form、0.2×2cm)カラムに供した。このカラムは、AG1-×2Resin (OH- form)(BIO-RAD社製)を1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁し、30分後レジンを蒸留水で洗浄した後、蒸留水に懸濁して作成した。このカラムの溶出液(0〜2ml)の放射活性を測定した。
結果
酵素反応系中に添加した様々な濃度のKClが、P. damselae JT0160株由来のシアル酸転移酵素活性を向上させることは認められなかった(図2)。

実施例3 P. damselae JT0160株由来の糖転移酵素の酵素活性に及ぼす2価イオンを含む塩類の影響
材料および方法
実施例1と同様にして、P. damselae JT0160株からβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素を完全精製し、以下の実験を行った。
反応溶液20μl中に、糖供与体基質CMP-14C -NeuAc(50.066 nmol、25000cpm)、糖受容体基質ラクト−ス(1 mmol)、シアル酸転移酵素(0.5mU〜1.5mU)、MgCl2・MgSO4・CoCl2・CaCl2・MnCl2・FeSO4をそれぞれ最終濃度0mM、10mM、20mMになるように添加し、酵素反応を行った(30℃、1分)。酵素反応終了後、それぞれの条件においてラクト−スに転移されたNeuAcの放射活性を測定して酵素活性を算出し、各試験区における酵素活性に対する各種塩類の影響を検討した。なお具体的には、反応終了後、反応溶液に1.98mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をAG1-×2Resin(PO4 3‐form、0.2×2cm)カラムに供した。このカラムは、AG1-×2Resin (OH- form)(BIO-RAD社製)を1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁し、30分後レジンを蒸留水で洗浄した後、蒸留水に懸濁して作成した。このカラムの溶出液(0〜2ml)の放射活性を測定した。
結果
反応溶液中の各種2価イオンを含む塩類が、P. damselae JT0160株由来のα2,6-シアル酸転移酵素活性を向上させることは認められなかった(表15)。
Figure 0004812625
実施例4 ラット肝臓由来のシアル酸転移酵素(α2,6-シアル酸転移酵素)の酵素活性に及ぼすNaClの影響
材料および方法
ラット肝臓由来のβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素(和光純薬製)を使用し、酵素に添付されてきた酵素活性測定法に若干の変更を加えた以下の方法で実験を行った。
糖供与体基質CMP-14C -NeuAc(50.066 nmol、25000cpm)、糖受容体基質アシアロフェツイン(10mg)、シアル酸転移酵素(1mU〜5mU)、NaClをそれぞれ0〜1.4M濃度になるように添加し、酵素反応を行った(37℃、1時間)。酵素反応終了後、反応溶液をSephadex G-50 super fine(アマシャム製)カラム(0.8×20cm)に供し、0.1M NaCl溶液を移動層に用いて、2〜4mlに溶出する反応生成物(アシアロフェツインに14CでラベルされたNeuAcが転移した酵素反応生成物)を含む高分子画分を集めた。なお、この画分には、未反応のCMP-14C -NeuAcは溶出されないことはコントロール実験で反応毎に確認を行った。その画分からアシアロフェツインに転移されたNeuAcの放射活性を測定して酵素活性を算出した。
結果
結果を図3に示す。なお、図3では反応溶液中にNaClを含まない場合を1とした相対活性で示した。ラット肝臓由来のβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素では、NaClの添加による酵素活性の上昇は認められなかった。

実施例5 Photobacterium. damselaeに属する各種菌株から調製した糖転移酵素(α2,6-シアル酸転移酵素の粗酵素)の酵素活性に及ぼすNaClの影響
材料および方法
Photobacterium damselaeに属し、JT0160とは異なる菌株 ATCC33539T及びATCC35083を培養し、得られた菌体からP. damselae JT0160の粗酵素溶液調製方法(Purification and characterization of a Marine bacterial β-Galactoside α2,6-Sialyltransferase from Photobacterium damselae JT0160 J.Biochem. 120, 104-110. 1996)に従って粗酵素溶液を調整した。それらの粗酵素を用いて以下の実験を行った。
反応溶液20μl中に、糖供与体基質CMP-14C-NeuAc(50.066 nmol、25000cpm)、糖受容体基質ラクト−ス(1 mmol)、各種菌株由来の糖転移酵素(1mU以下)、NaClをそれぞれ0.5M濃度になるように添加し、酵素反応を行った(30℃、1分)。酵素反応終了後、それぞれの条件においてラクト−スに転移されたNeuAcの放射活性を測定して酵素活性を算出し、各試験区における酵素活性に対するNaClの影響を検討した。なお具体的には、反応終了後、反応溶液に1.98mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をAG1-×2Resin(PO4 3‐form、0.2×2cm)カラムに供した。このカラムは、AG1-×2Resin (OH- form)(BIO-RAD社製)を1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁し、30分後レジンを蒸留水で洗浄した後、蒸留水に懸濁して作成した。このカラムの溶出液(0〜2ml)の放射活性を測定した。
結果
いずれの菌株由来の糖転移酵素についても、0.5M NaClが反応系に存在した場合、酵素活性が向上していた。その程度は菌株によって異なるが、おおよそ1.2から1.3倍程度に酵素活性が上昇した(表16)。
Figure 0004812625
実施例6 P. damselae JT0160由来の糖転移酵素(組換えα2,6-シアル酸転移酵素のデリ−ション・ミュータント;N2C1)の酵素活性に及ぼすNaClの影響
材料および方法
P. damselae JT0160株由来のβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素遺伝子のデリーション・ミュータントN2C1を作製し、発現プラスミドに組換え、同発現プラスミドで大腸菌の形質転換を行った。形質転換された大腸菌をL Broth(アンピシリン:最終濃度0.2mg/ml、IPTG:最終濃度1mMを含む)で、30℃、180rpmで12時間培養した後に、遠心分離で菌体を集めた。集めた菌体を20mM Sodium cacodyrate buffer(pH5.0)に懸濁後、4℃で超音波処理を行うことで菌体を破砕して、N2C1遺伝子由来のシアル酸転移酵素タンパク質を含む粗酵素液を調製した。N2C1遺伝子由来のシアル酸転移酵素タンパク質は、P. damselae JT0160株由来のβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素をコードする遺伝子配列から想定されるアミノ酸配列と比較すると、そのアミノ酸配列のN末端側(Met)から107残基のアミノ酸及び、C末端側から176残基のアミノ酸が削除されているが、天然の酵素と実質的に同じ酵素活性を有する。このN2C1遺伝子由来のシアル酸転移酵素タンパク質を用いて以下の実験を行った。
反応溶液20μl中に、糖供与体基質CMP-14C-NeuAc(50.066 nmol、25000cpm)、糖受容体基質ラクト−ス(1 mmol)、N2C1(0.5mU〜1.5mU)、NaClをそれぞれ0〜2.5M濃度になるように添加し、酵素反応を行った(30℃、1分)。酵素反応終了後、それぞれの条件においてラクト−スに転移されたNeuAcの放射活性を測定して酵素活性を算出し、各試験区における酵素活性に対するNaClの影響を検討した。
なお具体的には、反応終了後、反応溶液に1.98mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をAG1-×2Resin(PO4 3^form、0.2×2cm)カラムに供した。このカラムは、AG1-×2Resin (OH- form)(BIO-RAD社製)を1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁し、30分後レジンを蒸留水で洗浄した後、蒸留水に懸濁して作成した。このカラムの溶出液(0〜2ml)の放射活性を測定した。
結果
その結果、反応溶液中に0.2〜1.5MまでのNaClが含まれている場合、NaCl無添加の場合と比較して、酵素活性の活性化が認められた(図4)。

実施例7 ビブリオ科微生物由来の糖転移酵素(組換えα2,3−シアル酸転移酵素)の酵素活性に及ぼすNaClの影響
材料および方法
フォトバクテリウム・フォスフォレウム JT−ISH−467株より抽出・精製したα2,3−シアル酸転移酵素(467 native)、JT−ISH−467株由来の組換えα2,3−シアル酸転移酵素(467 N0C0または467 N2C0)、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株由来の組換えα2,3−シアル酸転移酵素(224 N1C0)、および、ビブリオ属 JT−FAJ−16株由来の組換えα2,3−シアル酸転移酵素(FAJ N1C0)について、これらの酵素活性に及ぼすNaClの影響を調べた。組換え酵素はいずれも、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一のバンドを示す程度に完全に精製したものを用いた。
467 N2C0、224 N1C0およびFAJ N1C0について、反応溶液30μl中に、1μlの1M カコジレート緩衝液(pH 5.5),糖供与体基質CMP-14C-NeuAc(70.041 nmol、25400cpm)、糖受容体基質ラクト−ス(2.88 μmol)、シアル酸転移酵素(約2mU)、NaClをそれぞれ0〜2.0M濃度になるように添加し、酵素反応を行った(25℃、5分)。また、467 nativeおよび467 N0C0について、反応溶液30μl中に、糖供与体基質CMP-14C-NeuAc(7.041 nmol、25400cpm)、糖受容体基質ラクト−ス(2.88 μmol)、シアル酸転移酵素(約250μU)、NaClをそれぞれ0〜2.0M濃度になるように添加し、酵素反応を行った(25℃、5分)。酵素反応終了後、それぞれの条件においてラクト−スに転移されたNeuAcの放射活性を測定して酵素活性を算出し、各試験区における酵素活性に対するNaClの影響を検討した。
なお具体的には、反応終了後、反応溶液に1.98mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をAG1-×2Resin(PO4 3‐form、0.2×2cm)カラムに供した。このカラムの溶出液(0〜2ml)の放射活性を測定した。このカラムの溶出液には、反応で生じた14C-NeuAc(N-アセチルノイラミン酸)が結合したシアリルラクト−ス及び未反応のラクト−スが含まれるが、未反応のCMP-14C-NeuAcはカラムに保持されたままである。従って、酵素反応の結果生じたシアリルラクト−ス由来の14Cの放射活性は、全て反応生成物由来であり、この画分の放射活性から酵素活性を算出することができる。
結果
467 native、467 N0C0、467 N2C0、224 N1C0、およびFAJ N1C0についての結果は、それぞれ、図5ないし図9に示す。フォトバクテリウム・フォスフォレウム JT−ISH−467株、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株、およびビブリオ属 JT−FAJ−16株由来のシアル酸転移酵素あるいは組換えシアル酸転移酵素はいずれも、酵素反応系中のNaClの存在により、その酵素活性が増加することが認められた。NaClが酵素反応系に0.2Mから1.5M濃度で存在した場合、NaCl無添加の場合と比較して、その酵素活性はいずれも約1.5倍から2.6倍に向上した。

Claims (5)

  1. フォトバクテリウム(Photobacterium)属またはビブリオ(Vibrio)属に属する海洋性微生物に由来するβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を用いて、糖転移反応を行うに際し、当該反応をNaClの存在下で行うことにより、NaClの非存在下に比べて当該反応の効率を高める方法。
  2. NaClを0.1M〜1.5Mの濃度で存在させる請求項1に記載の方法。
  3. NaClを0.2M〜1.0Mの濃度で存在させる請求項1に記載の方法。
  4. フォトバクテリウム(Photobacterium)属の海洋性微生物が、フォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)またはフォトバクテリウム属菌(Photobacterium sp.)であり、またはビブリオ(Vibrio)属の海洋性微生物が、ビブリオ属菌(Vibrio sp.)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素が、配列番号2、配列番号2のアミノ酸25〜409、配列番号29、配列番号29のアミノ酸25〜409、配列番号31、および配列番号31のアミノ酸23〜402からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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