JP4856636B2 - 新規なβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を提供する。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素」とは、シチジン1リン酸(CMP)−シアル酸からシアル酸を、複合糖質糖鎖もしくは遊離の糖鎖中のガラクトース残基の3位、ラクトースもしくはN−アセチルラクトサミンなどのオリゴ糖に存在するガラクトースの3位、またはガラクトース、グルコース、マンノース、フコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンなどの複合糖質を構成しうる単糖であって3位の炭素に水酸基を有する単糖の3位、に転移させる活性を有するタンパク質を意味する。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性」とは、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素について上述した活性を意味する。また、ここでいうシアル酸とは、シアル酸ファミリーに属するノイラミン酸誘導体を示す。具体的には、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、5−デアミノ−5−ヒドロキシノイラミン酸(KDN)、ジシアル酸などを示す。
ここで、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件としては、0.5M リン酸ナトリウム pH7.2、1mM EDTA、7%SDS、1%BSA中で55℃でハイブリダイゼーションさせた後、40mM リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、1mM EDTA、5%SDS、0.5%BSA中で55℃、15分を2回、40mM リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、1mM EDTA、1%SDS中で55℃、15分を2回、洗浄操作を行うという条件、あるいはMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、第1巻、1.101-104頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(引用によりその全体を本明細書に援用する)等に記載されているように、30% 脱イオン化ホルムアミド、0.6M NaCl、40mM リン酸ナトリウム pH7.4、2.5mM EDTA、1%SDS中で42℃で、ハイブリダイゼーションさせた後、2XSSC、0.1%SDS、中で室温で10分を2回、さらに同じバッファー中で55℃で1時間洗浄操作を行うという条件が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、高度にストリンジェントな条件におけるハイブリダイゼーションとして、例えば、Molecular Cloning(同上)等に記載されている、0.5M リン酸ナトリウム pH7.2、1mM EDTA、7%SDS、1%BSA中で65℃でハイブリダイゼーションさせた後、40mM リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、1mM EDTA、5%SDS、0.5%BSA中で65℃、40mM リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、1mM EDTA、1%SDS中で65℃、洗浄操作を行うという条件が挙げられる。
本発明は、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素をコードする核酸を提供する。
本発明者らは、ビブリオ科に属する微生物が新規なβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を発現することを見いだした。よって本発明は、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を発現する微生物を提供する。本発明の微生物は、ビブリオ科に属し、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素生産能を有する微生物であり、好ましくはビブリオ属(Vibrio spp.)に属するもの、または、好ましくはフォトバクテリウム属(Photobacterium spp.)に属するもの、さらに好ましくは、フォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)に属するものである。β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素生産能を有するビブリオ科に属する微生物の例としては、フォトバクテリウム・フォスフォレウム JT−ISH−467株(寄託番号NITE BP−88)、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株(寄託番号NITE BP−87)、および、ビブリオ属 JT−FAJ−16株(寄託番号NITE BP−98)が挙げられる。なお、上記のビブリオ科の微生物は海洋性細菌であり、海水中または海産の魚介類から分離される。たとえば、本発明のフォトバクテリウム・フォスフォレウム JT−ISH−467株は石川県産のイカから、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株は石川県産のカマスから、そして、ビブリオ属 JT−FAJ−16株は福岡県産のアジから、それぞれ分離されたものである。
(1)β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を発現する微生物を培養することによる当該酵素の製造方法
本発明の一態様において、本発明のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素はビブリオ科に属する微生物由来であり、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素生産能を有する微生物を培地に培養し、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を生産させ、これを採取することによって得られる。
本発明は、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素をコードする核酸を含む発現ベクター、および当該発現ベクターを含有する宿主細胞を提供する。そして、本発明は、当該発現ベクターを含有する宿主細胞を、組換えタンパク質の発現に適する条件下で培養して、発現された組換えタンパク質を回収することにより組換えβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素タンパク質を製造する方法も提供する。
本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素タンパク質に対する抗体を提供する。本発明の抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素タンパク質、またはそのフラグメント、に対して作製してもよい。ここで、本発明のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素のフラグメントは、当該酵素のアミノ酸配列中、少なくとも6アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、または少なくとも30アミノ酸を含む配列を有するフラグメントである。
一態様において、本発明は本発明のシアル酸転移酵素を利用したシアリル糖鎖の製造方法を提供する。本発明の方法は、シアリル糖鎖の製造方法であって、
(i)本発明のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素、糖供与体基質、および糖受容体基質を含む溶液を調製し;
(ii)当該溶液においてシアル酸転移反応を行い;そして
(iii)反応溶液から生成したシアリル糖鎖を得る;
ことを含んでなる、前記方法である。
海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を接種源とした。この接種源をマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる平板培地上に塗布し、15℃、25℃もしくは30℃で生育する微生物を取得した。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる液体培地を用いてそれぞれの微生物を培養した。微生物が十分成育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集めた。集めた菌体に、0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕した。この細胞破砕液を酵素溶液としてシアル酸転移活性を測定し、シアル酸転移活性を有する菌株JT−ISH−467株、JT−ISH−224株、およびJT−FAJ−16株を得た。なお、JT−ISH−467株は、スルメイカの表皮から、JT−ISH−224株はカマスの内臓から、およびJT−FAJ−16株はアジの内臓から、それぞれ得られた。
(i)JT−ISH−467株
得られたJT−ISH−467株の性質は以下の通りであった:
(菌学的性質)
(1)細胞の形態は桿菌で、大きさは0.7〜0.8μm×1.5〜2.0μm。
(3)グラム染色性 −
(4)胞子の有無 −
(生理学生化学的性質)
(1)生育温度 4℃では+、25℃では+、30℃では−
(2)集落の色調 特徴的集落色素を産生せず
(3)O/Fテスト +/−
(4)カタラーゼテスト −
(5)オキシダーゼテスト +
(6)グルコースからの酸産生 −
(7)グルコースからのガス産生 −
(8)発光性 +
(9)硝酸塩還元 +
(10)インドール産生 +
(11)ブドウ糖酸性化 −
(12)アルギニンジヒドロラーゼ +
(13)ウレアーゼ −
(14)エスクリン加水分解 −
(15)ゼラチン加水分解性 −
(16)β‐ガラクトシダーゼ +
(17)ブドウ糖資化性 −
(18)L−アラビノース資化性 −
(19)D−マンノース資化性 −
(20)D−マンニトール資化性 −
(21)N−アセチル−D−グルコサミン資化性 −
(22)マルトース資化性 −
(23)グルコン酸カリウム資化性 −
(24)n−カプリン酸資化性 −
(25)アジピン酸資化性 −
(26)dl−リンゴ酸資化性 −
(27)クエン酸ナトリウム資化性 −
(28)酢酸フェニル資化性 −
(29)チトクロームオキシダーゼ +
(30)菌体内DNA のGC含量(モル%)39.7%
(16S rRNA遺伝子の塩基配列解析およびDNA−DNAハイブリダイゼーションによる種の同定)
JT−ISH−467株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の全塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。塩基配列を配列番号3に示した。この塩基配列はフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)基準株であるATCC11040株の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対し、相同率100%の高い相同性を示した。この結果から、JT−ISH−467株はフォトバクテリウム属に属することが明らかとなった。しかしながら、16S rRNA遺伝子は細菌の全ゲノムの一部でしかないので、16S rRNA遺伝子の塩基配列による同定解析は種レベルの極めて近縁な生物間の距離に対しては誤差が非常に大きいとされている。そこで、属内における菌株の類縁関係の定量的な評価に一般的に用いられているDNA−DNAハイブリダイゼーション試験法を用い、種の決定を行った。JT−ISH−467株およびフォトバクテリウム・フォスフォレウム基準株であるNCIMB1282株(ATCC11040株と同一株)の全DNAを抽出し、供試した。その結果、84.7%の高い相同値(DNA-DNA relatedness)が得られた。一般に、同一種間のDNA−DNA相同値は60%以上を示すことから、JT−ISH−467株はフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)と同定された。なお、DNA−DNAハイブリダイゼーション試験は「微生物の分類・同定実験法」(鈴木健一郎・平石 明・横田 明 編、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社、2001年9月、参照によりその全体を本明細書に援用する)に従い、マイクロプレートを用いたフォトビオチン標識法によって行った。
(ii)JT−ISH−224株
得られたJT−ISH−224株の性質は以下の通りであった:
(菌学的性質)
(1)細胞の形態は桿菌で、大きさは0.7〜0.8μm×1.0〜1.5μm。
(3)グラム染色性 −
(4)胞子の有無 −
(生理学生化学的性質)
(1)生育温度 4℃では−、25℃では+、30℃では+、37℃では−
(2)集落の色調 特徴的集落色素を産生せず
(3)O/Fテスト +/−
(4)カタラーゼテスト +
(5)オキシダーゼテスト +
(6)グルコースからの酸産生 +
(7)グルコースからのガス産生 +
(8)発光性 −
(9)硝酸塩還元 +
(10)インドール産生 +
(11)ブドウ糖酸性化 −
(12)アルギニンジヒドロラーゼ +
(13)ウレアーゼ −
(14)エスクリン加水分解 −
(15)ゼラチン加水分解性 −
(16)β‐ガラクトシダーゼ +
(17)ブドウ糖資化性 −
(18)L−アラビノース資化性 −
(19)D−マンノース資化性 −
(20)D−マンニトール資化性 −
(21)N−アセチル−D−グルコサミン資化性 −
(22)マルトース資化性 −
(23)グルコン酸カリウム資化性 −
(24)n−カプリン酸資化性 −
(25)アジピン酸資化性 −
(26)dl−リンゴ酸資化性 −
(27)クエン酸ナトリウム資化性 −
(28)酢酸フェニル資化性 −
(29)チトクロームオキシダーゼ +
(30)O/129感受性、10μg −、15μg +
(31)菌体内DNA のGC含量(モル%)39.4%
(16S rRNA遺伝子の塩基配列解析)
JT−ISH−224株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の全塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。塩基配列を配列番号32に示した。
(iii)JT−FAJ−16株
得られたJT−FAJ−16株の性質は以下の通りであった:
(菌学的性質)
(1)細胞の形態は桿菌で、大きさは0.7〜0.8μm×1.2〜1.5μm。
(3)グラム染色性 −
(4)胞子の有無 −
(生理学生化学的性質)
(1)生育温度 4℃では+w、25℃では+、30℃では+、37℃では+
(2)集落の色調 淡黄色〜クリーム色
(3)O/Fテスト +/+
(4)カタラーゼテスト +
(5)オキシダーゼテスト +
(6)グルコースからの酸産生 +
(7)グルコースからのガス産生 −
(8)硝酸塩還元 +
(9)インドール産生 −
(10)ブドウ糖酸性化 +
(11)アルギニンジヒドロラーゼ −
(12)ウレアーゼ −
(13)エスクリン加水分解 +
(14)ゼラチン加水分解性 −
(15)β‐ガラクトシダーゼ +
(16)ブドウ糖資化性 −
(17)L−アラビノース資化性 −
(18)D−マンノース資化性 −
(19)D−マンニトール資化性 −
(20)N−アセチル−D−グルコサミン資化性 −
(21)マルトース資化性 −
(22)グルコン酸カリウム資化性 −
(23)n−カプリン酸資化性 −
(24)アジピン酸資化性 −
(25)dl−リンゴ酸資化性 −
(26)クエン酸ナトリウム資化性 −
(27)酢酸フェニル資化性 −
(28)チトクロームオキシダーゼ +
(29)O/129感受性、 −
(30)マンイトール発酵性、 +
(31)イノシトール発酵性、 +
(32)アラビノース発酵性、 +
(33)ラムノース発酵性、 −
(34)サッカロース発酵性、 −
(35)生育性(NaCl)、3%NaCl+、4%NaCl+、6%NaCl+、
(36)デンプン加水分解、 −
(37)Tween80分解、 −
(38)H2S産生、 −
(39)アセトイン産生(VPテスト)、 −
(16S rRNA遺伝子の塩基配列解析)
JT−FAJ−16株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の全塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。塩基配列を配列番号33に示した。
実施例2: フォトバクテリウム フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)JT−ISH−467からのβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の抽出および精製
マリンアガー2216平板培地上で継代培養したフォトバクテリウム フォスフォレウムJT−ISH−467株のコロニーから菌体をループで採取し、マリンブロス2216液体培地10mlに接種し、25℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
実施例2で得られた酵素を用い、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行った。ピリジルアミノ化糖鎖としては、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を用い分析した。糖受容体基質が2.0μM、CMP−NeuAcが5.7μMおよび酵素が20mU/mlとなるように、それぞれを20mM カコジレート緩衝液(pH6.0)25μl中に溶解し、25℃下で3時間反応させた。反応終了後、100℃で2分間反応溶液を処理することにより酵素を失活させた。その後、HPLCで反応生成物の分析を行った。
実施例4: JT−ISH−467菌株が生産するβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を用いた単糖・二糖類へのシアル酸の転移(シアル酸含有糖鎖の製造)
(材料および方法)
JT−ISH−467菌株から調整した菌体破砕液を、イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて部分精製したα2,3−シアル酸転移酵素を用いて、各種の単糖・二糖類へのシアル酸の転移を確認するために、以下の実験を行った。
反応溶液24μl中に、糖供与体基質CMP−14C−NeuAc(400nmol(15600cpm)、反応溶液中での最終濃度:16.6mM)、各種糖受容体基質(10μmol、反応溶液中での最終濃度:200mM)、シアル酸転移酵素(0.13mU)、NaCl(反応溶液中での最終濃度:500mM)からなる反応溶液を調製して、25℃で4時間、酵素反応を行った。なお、糖受容体基質として用いた単糖・二糖類は、メチル−α−D−ガラクトピラノシド(Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OMe)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、ラクト−ス(Gal−β1,4−Glc)、N−アセチルラクトサミン(Gal−β1,4−GlcNAc)、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−N−アセチルグルコサミニド(Gal−β1,3−GlcNAc−β−OMe)の6種類を用いた。
(結果)
今回糖受容体基質として用いた6種類の単糖、二糖いずれにもシアル酸が転移していることが明らかとなった(表2参照)。今回糖受容体基質として用いた糖類の中では、N−アセチルラクトサミンに最も多くのシアル酸が転移していることが明らかとなった。
(1)ゲノムDNAの精製とゲノムライブラリーの作成
JT−ISH−467株の菌体ペレット約0.5gから、Qiagen Genomic-tip 100/G(Qiagen社製)を用いて、キット添付の説明書きに従って、約100μgのゲノムDNAを調製した。1−2μgのDNAに対して、0.1〜0.2ユニットの四塩基認識の制限酵素Sau3AIを反応させ、部分分解を行った。反応バッファーは酵素に添付のものを用い、反応条件は37℃、30分とした。反応終了後、反応液に最終濃度25mMのEDTA pH8.0を加え、フェノール・クロロホルム処理を行った。ゲノムDNAをエタノール沈殿で回収し、TE 400μlに溶解した。遠心チューブ(日立製作所製40PA)に、グラジエント作製装置を用いて、40%シュークロースバッファー(20mM Tris pH8.0,5mM EDTA pH8.0,1M NaCl)と10%シュークロースバッファーから、40−10%のグラジエントを作製し、そこへ上記の部分分解DNA溶液を重層した。超遠心機(日立製作所製SCP70H、ローター:SRP28SA)を用いて、26,000rpm、20℃、15時間遠心した。遠心後チューブの底部に25Gの針で穴を空け、底部の液から1mlずつ回収した。回収したゲノムDNAを含むサンプルの一部を、サブマリン電気泳動糟を用い、0.5−0.6%アガロースゲル/TAEバッファー中で、26V、20時間電気泳動を行い、9−16kbのサイズのDNAを含む画分を把握した。マーカーとしてλ/HindIIIを用いた。9−16kbのサイズのDNA断片を含む画分にTEを2.5ml加えシュークロース濃度を下げた後,エタノール沈殿、リンスを行い、少量のTEに溶解した。
(2)プライマー設計とプローブ作成
Procise 494 cLC Protein Sequencing System(Applied Biosystems製)を用いて、JT−ISH−467株由来のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素のアミノ末端(N末端)アミノ酸配列、および内部アミノ酸配列を決定した。
(3)スクリーニングと遺伝子クローニング
上記(2)でクローン化されたフォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の一部からなるDNA断片を、pCR2.1 TOPOベクターから制限酵素EcoRIで切り出し、これをプローブとして、上記(1)作製したフォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングした。直径9cmの丸形シャーレにλDASH II/BamHI ベクターキット(Stratagene製)の説明書きに従って、約300−500pfuのファージを宿主菌XL1−blue MRA(P2)とともにプレーティングした。プラークをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(Amersham製)に接触させ、メンブレン添付の説明書きに従ってアルカリ処理を行いDNAを変性させ、メンブレン上に固定させた。プローブはrediprime IITM DNA labelling system(アマシャムバイオサイエンス製)を用いて32Pラベルした。ハイブリダイゼーションは0.5M リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、7% SDS、1mM EDTA中で65(Cで一晩、洗浄の条件は40mM リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、1mM EDTA、5%SDS中で65℃、15分を2回、40mM リン酸ナトリウムバッファー pH 7.2、1% SDS、1mM EDTA中で65(C、15分を2回行った。1次スクリーニングで約5,000pfuのファージから24個のポジティブクローンが得られた。うち18個のクローンに関して、プラークの精製を兼ねた2次スクリーニングを行った。その結果、6種類の選抜・精製プラークを得ることが出来た。
(4)発現ベクターの構築
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移活性を有するか否かを調べるため、同遺伝子の全長、およびN末端側のシグナルペプチド部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
(5)発現誘導と活性測定
上記(4)で得られた467−N0C0の2クローン、467−N2C0の3クローンに関して、タンパク質発現誘導実験を行った。各クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1の単一コロニーを、抗生物質アンピシリン(最終濃度100mg/mL)を含むLB培地(5ml)に接種し、A600=0.5程度になるまで30℃で菌を前培養し、その後IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド、和光純薬工業製)を最終濃度で1mMとなるように加え、30℃でさらに4時間振とう培養した。培養液2ml中の菌体を遠心分離によって集めた。この菌体を、200μlの0.336%トリトンX−100および0.5M塩化ナトリウムを含む20mM ビストリス緩衝液(pH7.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。得られた破砕液を粗酵素液とし、活性測定に供試した。反応は2反復で行い、反応組成は実施例1と同様に行った。但し、反応時間は15時間とした。その結果、下記の表8に示すように、ISH467−N0C0第一クローンの粗酵素液中およびISH467−N0C0第二クローンの粗酵素液中には、糖供与体であるCMP−NeuAc中の14CでラベルされたNeuAcを糖受容体基質であるラクトースに転移する因子、即ちシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。また、ISH467−N2C0第一クローンおよびISH467−N2C0第三クローンの粗酵素液中にもシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。一方、ISH467−N2C0第二クローンの粗酵素液中および粗酵素液なしの反応液中にはシアル酸転移酵素活性が含まれていなかった。以上の結果から、ISH467−N0C0第一クローンもしくは第二クローン、または、ISH467−N2C0第一クローンもしくは第三クローンを導入した大腸菌にはシアル酸転移酵素が発現されていることが明らかとなった。
上記(5)の粗酵素液を用いて、ISH467−N2C0第一クローンを導入した大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素がα−2,3シアル酸転移活性を有するかどうか調べた。実施例3と同様に、糖受容体としてピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ社製PA−Sugar Chain 026)を用い、酵素反応を行った。反応終了後、95℃で5分間、反応溶液を熱処理することにより酵素を失活させ、HPLCで分析した。なお、酵素反応は、ピリジルアミノ化ラクトースが2.0μM、CMP−シアル酸が5.7μMとなるように、それぞれを20mM カコジレート緩衝液(pH6.0)25μl中に溶解し、25℃下で6時間行った(反応1)。一方、CMP−シアル酸を含まない反応液を供試した対照実験(反応2)を行った。また、標品の保持時間を明らかにするため、熱処理(95℃、5分間)によって失活させた粗酵素液を加え、ピリジルアミノ化ラクトースおよびピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトース(ピリジルアミノ化3’−シアリルラクトース)(Neu5Acα2−3Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製PA−Sugar Chain 029)を添加した試験を行った。
実施例6: フォトバクテリウム属細菌JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングと、塩基配列解析および当該遺伝子の大腸菌での発現
(1)JT−ISH−224株のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性と同酵素遺伝子の存在の確認
実施例1でシアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなったフォトバクテリウム属JT−ISH−224株において、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在するか否かを明らかにするため、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。実施例5の(1)に記載した方法で、JT−ISH−224株の菌体ペレットからゲノムDNAを調製した。次に実施例5の(3)に記載した方法により、JT−ISH−224株のゲノムDNAを制限酵素EcoRIまたはHindIIIで消化し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分画後、0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングにより、ゲルをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(アマシャムバイオサイエンス製)に転写した。このフィルターに関して、上記のJT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブとして用いて、実施例5の(3)に記載した方法でサザンハイブリダイゼーションを行った。ただしハイブリダイゼーション温度、および洗浄処理の温度は、55℃とした。その結果、EcoRI消化では、16kbのバンドが検出された。一方、HindIII消化の場合、5kbと2.7kbのバンドが検出された。この結果から、JT−ISH−224株にはJT−ISH−467株由来のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在することが明らかとなった。
(2)JT−ISH−224株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニング
次に、JT−ISH−224株のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングを行った。実施例5の(1)に記載した方法により、JT−ISH−224株のゲノムDNAから、λDASH II(Stratagene製)を用いて、ゲノムライブラリーを構築した。JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブに用い、JT−ISH−224株のゲノムライブラリーをスクリーニングした。ただし、実施例6の(1)と同様にハイブリダイゼーション、および洗浄の温度は55℃とした。その結果、プラーク精製を兼ねた二次選抜までに、12クローンを得、うち6つのλDNAを、実施例5の(3)のようにQIAGEN Lambda Mini Kit(キアゲン製)を用いて精製した。さらにこのうち3クローンのλDNAサンプル、およびJT−ISH−224株の全ゲノムDNAについて、制限酵素EcoRIまたはHindIIIで消化した。消化物をアガロースゲル電気泳動で分画し、上述の様にナイロンメンブレンフィルターに転写した。このフィルターを用いて、JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブに用い、サザン分析を行った。ハイブリダイゼーション、洗浄の温度は55℃とした。その結果、EcoRI消化の場合、12kbまたはそれ以上のバンドが検出されたのに対し、HindIII消化の場合は、3つ全てのλDNAサンプルとJT−ISH−224株の全ゲノムDNAに関して、5kbと2.7kbの二本のバンドが検出された。そこでλDNAサンプルを再度HindIIIで消化し、これら5kbと2.7kbの二本のDNA断片をゲル精製し、プラスミドベクターpBluescript SK(−)のHindIII部位に常法に従いクローニングした。
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移酵素活性を有するか否かを調べるため、同遺伝子の全長、およびN末端側のシグナルペプチド部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
(4)発現誘導と活性測定
実施例5(5)と同様に、ISH224−N0C0第一クローンおよびISH224−N1C0第一クローンの2クローンに関して、タンパク質発現誘導実験を行い、酵素活性を測定した。その結果、下記の表11に示すように、ISH224−N0C0第一クローンおよびISH224−N1C0第一クローンの粗酵素液中にシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。
実施例5(6)と同様に、ISH224−N0C0第一クローンおよびISH224−N1C0第一クローンをそれぞれ大腸菌に導入して酵素を発現させ、ピリジルアミノ化ラクトースを糖受容体として用いる反応により、α−2,3シアル酸転移酵素活性を調べた。大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素による反応生成物をHPLCにより評価した結果、いずれのクローンを用いた反応についてもピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトース(ピリジルアミノ化3’−シアリルラクトース)のピークが検出された。この結果から、JT−ISH−224株由来のシアル酸転移酵素がα−2,3シアル酸転移活性を有することが明らかとなった。
実施例7: ビブリオ属細菌JT−FAJ−16株由来β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングと塩基配列解析、および当該遺伝子の大腸菌での発現
(1)JT−FAJ−16株のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性と同酵素遺伝子の存在の確認
実施例1でシアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなったビブリオ属 JT−FAJ−16株において、フォトバクテリウム・フォスフォレウム JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在するか否かを明らかにするため、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。実施例5の(1)に記載した方法で、JT−FAJ−16株の菌体ペレットからゲノムDNAを調製した。次に実施例5の(3)に記載した通り、制限酵素EcoRI、HindIIIで消化し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分画後、0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングにより、ゲルをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(アマシャムバイオサイエンス製)に転写した。このフィルターに関して、上記の929bpのプローブ(配列番号17)を用いて、実施例5の(3)に記載した方法でサザンハイブリダイゼーションを行った。ただしハイブリダイゼーション温度、および洗浄処理の温度は、55℃とした。その結果、EcoRI消化で、3.6kbのバンドが、HindIII消化で、7kbのバンドが検出された。即ちJT−FAJ−16株にはJT−ISH−467株由来のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在することが明らかとなった。
次に、JT−FAJ−16株のα2,3−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングを行った。実施例5の(1)に記載した方法で、JT−FAJ−16株のゲノムDNAから、λDASH II(Stratagene製)を用いて、ゲノムライブラリーを構築した。JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片(929bp;配列番号17)をプローブに用い、JT−FAJ−16株のゲノムライブラリーをスクリーニングした。ただし、ハイブリダイゼーション実験はECL direct labelling & detection system(アマシャムバイオサイエンス製)を使用した。キット添付の説明書きに従ってプローブを作成した。ハイブリダイゼーションは、キット中のハイブリダイゼーションバッファーにブロッキング試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、37℃で4時間行った。洗浄は、0.4%SDS、0.5X SSC中で、50℃で20分を2回、2X SSC中で室温、5分を1回行った。シグナルの検出は、キット添付の説明書きに従った。
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移酵素活性を有するか否かを調べるため、同遺伝子の全長、およびN末端側のシグナルペプチド部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
実施例5(5)と同様に、FAJ−N0C0第一クローン、FAJ−N1C0第一クローンおよび第二クローンの3クローンに関して、タンパク質発現誘導実験を行い、酵素活性を測定した。その結果、下記の表15に示すように、FAJ−N0C0第一クローンならびにFAJ−N1C0第一クローンおよび第二クローンの粗酵素液中にシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。
実施例5(6)と同様に、FAJ−N0C0第一クローン、ならびに、FAJ−N1C0第一クローンおよび第二クローンの3クローンをそれぞれ大腸菌に導入して酵素を発現させ、ピリジルアミノ化ラクトースを糖受容体として用いる反応により、α−2,3シアル酸転移酵素活性を調べた。大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素による反応生成物をHPLCにより分析した結果、いずれのクローンを用いた反応においてもピリジルアミノ化α2,3−シアリルラクトース(ピリジルアミノ化3’−シアリルラクトース)のピークが検出された。この結果から、JT−FAJ−16株由来のシアル酸転移酵素がα−2,3シアル酸転移活性を有することが明らかとなった。
実施例8:各種シアル酸転移酵素タンパク質のアミノ酸配列のマルチアライメント分析
遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス社製)を用いて、マルチアライメント分析を行った。その結果、フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株由来、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株由来、およびビブリオ属 JT−FAJ−16株由来のα2,3−シアル酸転移酵素(それぞれ配列番号2、29、31)、フォトバクテリウム・ダムセラのα2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)、ならびに、パスツレラ・ムルトシダ亜種ムルトシダ株Pm70の仮定上のタンパク質PM0188(AAK02272)は図2のようなアラインメントを示した。なお、JT−ISH−467株由来α2,3−シアル酸転移酵素についての下線は精製タンパク質から決定されたアミノ酸配列を示す。
実施例9:β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の酵素活性の至適pHおよび至適温度
調製した精製酵素を用い、JT−ISH−467株が生産するβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素、ISH467−N2C0第三クローン、ISH224−N1C0第一クローン、およびFAJ−N1C0第一クローンが生産する組換えβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の至適pHおよび至適温度を調べた。
(1)酵素活性の至適pH
酢酸バッファー(pH4.0、pH4.5、およびpH5.0)、カコジル酸バッファー(pH5.0、pH5.5、pH6.0、pH6.5、およびpH7.0)、リン酸バッファー(pH7.0、pH7.5、およびpH8.0)、TAPSバッファー(pH8.0、pH8.5、およびpH9.0)、CHESバッファー(pH9.0、pH9.5、およびpH10.0)、CAPSバッファー(pH10.0、pH10.5、およびpH11.0)を調製し、これを用いて25℃で各pHにおける酵素活性を測定した。
(2)酵素活性の至適温度
JT−ISH−467株が生産するβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素ではpH5.0において、ISH467−N2C0第三クローンではカコジル酸バッファー(pH5.5)を用いて、ISH224−N1C0第一クローンではカコジル酸バッファー(pH5.0)を用いて、FAJ−N1C0第一クローンではカコジル酸バッファー(pH5.5)を用いて、5℃から45℃までの5℃毎の反応温度において、酵素活性を測定した。
実施例10:β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の質量分析
フォトバクテリウム・フォスフォレウムJT−ISH−467株が生産するβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素、ならびに、ISH467−N0C0第二クローン、ISH467−N2C0第三クローン、ISH224−N1C0第一クローン、およびFAJ−N1C0第一クローンが生産する組換えβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の精製酵素を、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置(株式会社島津製作所MALDI-TOFMS AXIMA-CFR)によって質量分析した結果、分子量はそれぞれ45,026Da、45,023Da、44,075Da、43,996Da、および43,921Daであった。
実施例11:組換えβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の受容体基質特異性(単糖・二糖類・三糖類)の比較
(材料および方法)
ISH467−N2C0第三クローン組換え大腸菌、ISH224−N1C0第一クローン組換え大腸菌、およびFAJ−N1C0第一クローン組換え大腸菌から調製した菌体破砕液を、イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて電気泳動的に単一バンドまで精製したβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を用いて、各種の単糖、二糖類および三糖類へのシアル酸の転移活性の有無を調べるために、以下の実験を行った。
反応溶液24μl中に、糖供与体基質CMP−14C−NeuAcを含むCMP−NeuAc(21.9nmol、反応溶液中での最終濃度:0.874mM)、20mMカコジル酸緩衝液(pH5.0)で溶解した各種糖受容体基質(1μmol、反応溶液中での最終濃度:42mM)、シアル酸転移酵素(酵素量は表脚注に示した)、NaCl(反応溶液中での最終濃度:500mM)からなる反応溶液を調製し、表脚注の条件で反応した。なお、糖受容体基質として用いた単糖は、メチル−α−D−ガラクトピラノシド(Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OMe)、メチル−α−D−グルコピラノシド(Glc−α−OMe)、メチル−β−D−グルコピラノシド(Glc−β−OMe)、メチル−α−D−マンノピラノシド(Man−α−OMe)、メチル−β−D−マンノピラノシド(Man−β−OMe)、メチル−α−L−フコシノピラノシド(Fuc−α−OMe)、メチル−β−L−フコシノピラノシド(Fuc−β−OMe)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の10種類を用いた。二糖類として、ラクト−ス(Gal−β1,4−Glc)、N−アセチルラクトサミン(Gal−β1,4−GlcNAc)、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−N−アセチルグルコサミニド(Gal−β1,3−GlcNAc−β−OMe)、メチル−α−D−ガラクトピラノシル−α1,3−ガラクトピラノシド(Gal−α1,3−Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−ガラクトピラノシド(Gal−β1,3−Gal−β−OMe)の5種類を用いた。三糖類として、2’−フコシルラクト−ス(Fuc-α1,2-Galβ1,4-Glc )の1種類を用いた。但し、表18に示す糖鎖、メチル−α−D−ガラクトピラノシル−α1,3−ガラクトピラノシド(Gal−α1,3−Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−ガラクトピラノシド(Gal−β1,3−Gal−β−OMe)および2’−フコシルラクト−ス(Fuc-α1,2-Gal-β1,4-Glc)については最終濃度8.4mMで反応させた。
(結果)
今回糖受容体基質として用いた16種類の単糖、二糖、三糖のいずれにも高効率でシアル酸が転移していることが明らかとなった(表16、表17および表18)。なお、各受容体基質に対する相対活性は、ラクトースに対するシアル酸転移活性を100とした値である。
ISH467−N2C0第三クローン組換え大腸菌、ISH224−N1C0第一クローン組換え大腸菌およびFAJ−N1C0第一クローン組換え大腸菌から調製した菌体破砕液を、イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて電気泳動的に単一バンドまで精製したβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を用いて、糖タンパク質へのシアル酸の転移活性の有無を調べるために、以下の実験を行った。
ISH467−N2C0第三クローン組換え大腸菌、ISH224−N1C0第一クローン組換え大腸菌およびFAJ−N1C0第一クローン組換え大腸菌から調製した菌体破砕液を、イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて電気泳動的に単一バンドまで精製したβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を用いて、PA糖鎖へのシアル酸の転移活性の有無を調べるために、以下の実験を行った。
。
Claims (16)
- 配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基22−409、配列番号29、配列番号29のアミノ酸残基25−409、配列番号31、および、配列番号31のアミノ酸残基23−402からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、単離されたタンパク質。
- 配列番号1、配列番号1の塩基64−1230、配列番号28、配列番号28の塩基73−1230、配列番号30、および、配列番号30の塩基67−1209からなる群より選択される塩基配列と少なくとも90%以上の相同性を有する核酸によってコードされ、そして、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有する、単離されたタンパク質。
- 配列番号1、配列番号1の塩基64−1230、配列番号28、配列番号28の塩基73−1230、配列番号30、および、配列番号30の塩基67−1209からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸によってコードされ、そして、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有する、単離されたタンパク質。
- 配列番号1、配列番号1の塩基64−1230、配列番号28、配列番号28の塩基73−1230、配列番号30、および、配列番号30の塩基67−1209からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む核酸によってコードされ、そして、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有する、単離されたタンパク質。
- ビブリオ科微生物由来である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質。
- 配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基22−409、配列番号29、配列番号29のアミノ酸残基25−409、配列番号31、および、配列番号31のアミノ酸残基23−402からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする、単離された核酸。
- 配列番号1、配列番号1の塩基64−1230、配列番号28、配列番号28の塩基73−1230、配列番号30、および、配列番号30の塩基67−1209からなる群より選択される塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する単離された核酸であって、該核酸はβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記単離された核酸。
- 配列番号1、配列番号1の塩基64−1230、配列番号28、配列番号28の塩基73−1230、配列番号30、および、配列番号30の塩基67−1209からなる群より選択される塩基配列を含んでなる単離された核酸。
- 配列番号1、配列番号1の塩基64−1230、配列番号28、配列番号28の塩基73−1230、配列番号30、および、配列番号30の塩基67−1209からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む単離された核酸であって、該核酸はβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記単離された核酸。
- 請求項6ないし9のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる組換えベクター。
- 請求項10に記載の組換えベクターで形質転換した宿主細胞。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質を発現するビブリオ科の単離された微生物。
- フォトバクテリウム・フォスフォレウム JT−ISH−467株(寄託番号NITE BP−88)、フォトバクテリウム属(Photobacterium sp.) JT−ISH−224株(寄託番号NITE BP−87)、または、ビブリオ属(Vibrio sp.) JT−FAJ−16株(寄託番号NITE BP−98)である、請求項12に記載の微生物。
- β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
1)請求項12または13に記載の微生物を培養し;
2)培養した微生物または培養上清から、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を単離する;
ことを含んでなる、前記製造方法。 - β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
1)請求項6ないし9のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる組換えベクターで宿主細胞を形質転換し;
2)形質転換した当該宿主細胞を培養し;そして、
3)培養した宿主細胞または培養上清から、β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を単離する;
ことを含んでなる、前記製造方法。 - シアリル糖鎖の製造方法であって、
(i)請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質、糖供与体基質、および糖受容体基質を含む溶液を調製し;
(ii)当該溶液においてシアル酸転移反応を行い;そして
(iii)反応溶液から生成したシアリル糖鎖を得る;
ことを含んでなる、前記方法。
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