JP4977125B2 - 新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法 - Google Patents

新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4977125B2
JP4977125B2 JP2008504969A JP2008504969A JP4977125B2 JP 4977125 B2 JP4977125 B2 JP 4977125B2 JP 2008504969 A JP2008504969 A JP 2008504969A JP 2008504969 A JP2008504969 A JP 2008504969A JP 4977125 B2 JP4977125 B2 JP 4977125B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
seq
galactoside
sialyltransferase
amino acid
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008504969A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2007105321A1 (ja
Inventor
浩史 塚本
利喜 峯
由光 高倉
岳 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Tobacco Inc
Original Assignee
Japan Tobacco Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from PCT/JP2006/304993 external-priority patent/WO2007105305A1/ja
Application filed by Japan Tobacco Inc filed Critical Japan Tobacco Inc
Priority to JP2008504969A priority Critical patent/JP4977125B2/ja
Publication of JPWO2007105321A1 publication Critical patent/JPWO2007105321A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4977125B2 publication Critical patent/JP4977125B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、当該酵素をコードする遺伝子、当該酵素を生産する微生物および当該酵素の製造方法に関する。
糖転移酵素は生体内において糖タンパク質や糖脂質等(以下、複合糖質)の糖鎖の生合成に関与する酵素である。その反応生成物である複合糖質の糖鎖は生体内において非常に重要な機能を有している。例えば、主に哺乳類細胞において、糖鎖は分化や発生における細胞間および細胞−細胞外マトリックス間のシグナル伝達や複合糖質のタグとして機能する重要な分子であることなどが明らかにされている。
これを応用した例として、血液中の赤血球を生産するホルモンであるエリスロポエチンが挙げられる。天然型のエリスロポエチンは効果の持続性が低い欠点があった。そこで、エリスロポエチンは元来糖タンパク質であるが、新たな糖鎖を付加することによって、生体内における寿命を向上させた組換えエリスロポエチンタンパク質が開発、製造され、市販された。今後もこのように糖鎖を付加あるいは改変した医薬品、機能性食品等の開発が増えていくと考えられている。したがって、任意に糖鎖を合成・生産する手段の開発が求められている。とりわけ、最も効率的な手段のひとつとして、糖転移酵素の開発の重要性は増してきている。
これまでに約150種類以上の糖転移酵素遺伝子がヒト、マウス、ラットおよび酵母等の真核生物から単離されてきた。さらに、これらの遺伝子はCHO細胞や大腸菌等の宿主細胞で発現され、糖転移酵素活性を有するタンパク質が生産されてきた。一方、原核生物である細菌からも、20〜30種類程度の糖転移酵素遺伝子が単離されており、さらに大腸菌を用いる組換え生産系で糖転移酵素活性を有するタンパク質が発現され、それらの基質特性や酵素化学的な諸性質が明らかにされている。
シアル酸は、糖鎖の非還元末端に存在することが多いため、糖鎖の機能発現において極めて重要な糖であると考えられている。そのため、糖転移酵素の中でもシアル酸転移酵素は最も需要の高い酵素の一つである。β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびその遺伝子に関して、動物、特に哺乳類由来のものが多く報告されている(Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141-145 (1993); Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735-17743 (1987))。しかし、これらの動物由来の酵素は精製が困難で大量に得られないため非常に高価であり、さらに酵素としての安定性が悪いという問題を有している。一方、細菌由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびその遺伝子としては、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)に属する微生物から分離されたものが唯一報告されている(国際公開第WO98/38315号;米国特許6255094号公報)。
しかしながら、フォトバクテリウム・ダムセラ由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の、フォトバクテリウム・ダムセラからの生産性は550U/L(Yamamoto, T., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(2), 210-214 (1998))であり、また、その遺伝子を含むプラスミドpEBSTΔ178を形質転換した大腸菌によるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の生産性は、224.5U/L(Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 123, 94-100 (1998))であり、更に高い生産性を有する酵素が求められている。また、フォトバクテリウム・ダムセラ由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の比活性は5.5U/mg(Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996))であり、この点においてもさらに活性の高い酵素が求められている。
また、酵素の種類は異なるが、公知の細菌由来のシアル酸転移酵素の中で生産性および活性が比較的高いものとしてパステレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のα2,3−シアル酸転移酵素が挙げられるが、その生産性は、6,000U/L(Yu, H., et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17618-17619 (2005))であり、比活性は60U/mgである。
シアル酸転移酵素の需要の高さから、さらに生産性および/または活性が高いβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素が求められている。
国際公開第WO98/38315号パンフレット 米国特許6255094号公報 Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141-145 (1993) Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735-17743 (1987) Yamamoto, T., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(2), 210-214 (1998) Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 123, 94-100 (1998) Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996) Yu, H., et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17618-17619 (2005)
本発明の課題は、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物に由来する新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、およびそれをコードする遺伝子を提供することである。また、本発明は、細菌由来の公知のシアル酸転移酵素と比較してより高い生産性および/またはより高い活性を有する、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、およびそれをコードする遺伝子を提供することを目的とする。
また、本発明の課題は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする遺伝子を利用して遺伝子組換え技術により本酵素を高生産する方法を提供することである。
本発明者らは日本全国から4,000菌株以上の微生物を分離し、その性質について鋭意研究に努めた結果、フォトバクテリウム(Photobacterium)属に属する微生物の菌株から、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を生産する菌株を見出した。次に公知の遺伝子であるフォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のDNAをプローブに、当該菌株から新規なα2,6−シアル酸転移酵素遺伝子をクローニングした。本新規遺伝子を大腸菌で発現させた結果、本遺伝子はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードし、その酵素生産量は1Lの培養液当り約10,700Uと高いことを見出した。さらに、この新規な組換え酵素を精製し詳細に解析した結果、本組換え酵素は、シアル酸を糖鎖中のガラクトース残基、N−アセチルガラクトサミン残基などにα2,6結合で効率よく転移させ、その比活性は約110U(ユニット)/mgから約260U/mgと高いことも見出した。このように、多くの点で公知の酵素であるフォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素よりも優れていることを明らかにし、本発明を完成させた。本発明は高い生産性および/または高い活性を有する、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびそれをコードする核酸、ならびに、当該シアル酸転移酵素を製造する方法を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を提供する。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素」とは、シチジン1リン酸(CMP)−シアル酸からシアル酸を、複合糖質糖鎖もしくは遊離の糖鎖中のガラクトース残基の6位、ラクトースもしくはN−アセチルラクトサミンなどのオリゴ糖に存在するガラクトースの6位、またはガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、グルコース、N−アセチルグルコサミンもしくはマンノースなどの複合糖質を構成しうる単糖であって6位の炭素に水酸基を有する単糖の6位、に転移させる活性を有するタンパク質を意味する。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性」とは、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素について上述した活性を意味する。また、ここでいうシアル酸とは、シアル酸ファミリーに属するノイラミン酸誘導体を示す。具体的には、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、5−デアミノ−5−ヒドロキシノイラミン酸(KDN)、ジシアル酸(ジN−アセチルノイラミン酸:Neu5Acα2,8(9)Neu5Ac)などを示す。
本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号2、配列番号4または配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である。配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸18−514のアミノ酸配列のN末端にメチオニンを付加した配列に相当する。配列番号12のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸111−514のアミノ酸配列のN末端にメチオニンを付加した配列に相当する。このN末端のメチオニンは、タンパク質発現のための開始コドンに由来するものであり、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素としての活性に影響を及ぼすものではない。また、タンパク質のN末端のメチオニンはしばしば細胞内プロセッシングによって脱落する場合がある。従って、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質という場合は、配列番号4と完全に一致するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である場合のみならず、N末端のメチオニンが欠失しているアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である場合も含む。
実施例2において、ISH224−N1C0/pTrc(配列番号4:配列番号2のアミノ酸18−514のアミノ酸配列のN末端にメチオニンを付加した配列)及び、ISH224−N3C0/pTrc(配列番号12:配列番号2のアミノ酸111−514のアミノ酸配列のN末端にメチオニンを付加した配列)も、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の活性を保持した。よって、配列番号2のうち少なくともアミノ酸111−514が存在すればβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の活性を保持しうる。よって、本発明の「配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質」は、配列番号2のアミノ酸1−514中のアミノ酸1−110の全部又は一部を欠失しているアミノ酸配列からなるタンパク質を含む。
また、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号1、配列番号3または配列番号11の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質である。配列番号3の塩基配列は、配列番号1の塩基52−1545の塩基配列の5’末端に開始コドン(ATG)を付加した配列に相当する。配列番号11の塩基配列は、配列番号1の塩基331−1545の塩基配列の5’末端に開始コドン(ATG)を付加した配列に相当する。配列番号1、配列番号3および配列番号11の塩基配列は、それぞれ、配列番号2、配列番号4および配列番号12のアミノ酸配列をコードする。
本発明の配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素において、配列番号2のアミノ酸12−15の配列はLeu−Thr−Ala−Cysであり、リポボックスと呼ばれる共通配列であるため、細菌内で、この共通配列のCysのアミノ末端側で切断されると考えられる(Madan Babu, M. and Sankaran, K. Bioinformatics. 18, 641-643 (2002))。従って、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は配列番号2のアミノ酸15−514のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であってもよい。また、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号1の塩基43−1545の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であってもよい。
本発明はまた、上記の本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の変異体であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する変異タンパク質をも包含する。このような変異タンパク質もまた、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素に含まれる。
本発明の変異体タンパク質は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸15−514、配列番号4、配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。置換は保存的置換であってもよく、これは特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることである。保存的置換の非限定的な例には、Ile、Val、LeuまたはAla相互の置換のような脂肪族基含有アミノ酸残基の間の置換、LysおよびArg、GluおよびAsp、GlnおよびAsn相互の置換のような極性残基の間での置換などが含まれる。
アミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487-6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。本明細書において、「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度のアミノ酸を意味する。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレーティングし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成させる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養してDNAを回収する。
なお、酵素などの生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を保持しつつ1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、および遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、置換、挿入または付加し、次いで連結する方法もある。
本発明の変異体タンパク質はまた、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。ヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加は、部位特異的変位誘発のほか上述した方法により行うことができる。
本発明の変異体タンパク質はさらに、配列番号2、配列番号2のアミノ酸15−514、、配列番号4および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
または、本発明の変異体タンパク質は、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有する核酸によってコードされるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。または、2つのアミノ酸配列の同一性%は、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)などのプログラム、または、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索はデフォルト値を用いてよい。
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux, et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12: 387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess, Nucl. Acids Res., 14: 6745, 1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;WoottonおよびFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
本発明の変異タンパク質はまた、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark's solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および例えば、約40℃−60℃、0.5−6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件(及び洗浄条件)を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。
一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、最も好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ65℃−68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションとしては、例えば、キット中のhybridization bufferにBlocking試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、42℃で4時間行い、洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、55℃で20分を二回、2xSSC中で室温、5分を一回行う、という条件が挙げられる。
シアル酸転移酵素活性は、公知の手法、例えば、J. Biochem., 120, 104-110 (1996)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法で測定してもよい。例えば、糖供与体基質としてCMP−NeuAc(N−アセチルノイラミン酸)を、そして糖受容体基質としてラクトースを用いて酵素反応を行い、反応生成物であるシアリルラクトースの量を評価することで酵素活性を評価することができる。なお、酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量である。
糖受容体基質に転移したシアル酸の結合様式の決定方法としては、限定するわけではないが、ピリジルアミノ化糖鎖を用いる手法、反応生成物の核磁気共鳴分光法(NMR)による分析など、当業者に公知の手法のいずれかを用いて行うことができる。ピリジルアミノ化糖鎖を用いる手法は、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行うことを含む。具体的には、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を糖受容体基質、CMP−NeuAcを糖供与体基質として用いて酵素反応を行い、反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、反応生成物の保持時間からシアル酸が転移された位置を特定する。
本発明の一態様において本発明の酵素は、フォトバクテリウム属に属する微生物由来である。本発明の酵素は、フォトバクテリウム属に属する微生物であれば特に限定されるものではなく、フォトバクテリウム属に属する新種の微生物由来の酵素であってもよい。
本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の酵素学的性質および理化学的性質は、上記に定義したβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することを特徴とするほか、限定するわけではないが、至適pHがpH5〜6の範囲であり、至適温度が25〜35℃であり、分子量がSDS−PAGE分析で56,000±3,000Da程度である。
また、一態様において、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、高いβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することを特徴とする。ここで、高いβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性とは、酵素1mgあたり6U以上、10U以上、20U以上、40U以上、60U以上、100U以上の活性を有することをいう。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸
本発明は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸を提供する。
本発明の核酸は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸15−514、配列番号4、配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸である。本発明の核酸はまた、配列番号1、配列番号1の塩基43−1545、配列番号3、配列番号11からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸である。
本発明の核酸は、上記の核酸の変異体であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。そのような核酸もまた、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸に含まれる。
そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸15−514、配列番号4、配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質、をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号1の塩基43−1545、配列番号3、配列番号11からなる群より選択される塩基配列において、1またはそれより多くのヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸である。アミノ酸またはヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/付加は、上述した方法により導入することができる。
また、そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸15−514、配列番号4、配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質、をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号1の塩基43−1545、配列番号3、配列番号11からなる群より選択される塩基配列と、好ましくは70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有する核酸であって、該核酸はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸である。ここで、アミノ酸配列または塩基配列の同一性は、上記に示した方法で決定することができる。
そのような核酸の変異体はさらに、配列番号1、配列番号1の塩基43−1545、および配列番号3、配列番号11からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件、または高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む核酸であって、該核酸はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸である。ここで、ストリンジェントな条件または高度にストリンジェントな条件とは、上記で定義したとおりである。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現する微生物
本発明者らは、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物が新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現することを見いだした。よって本発明は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現する微生物を提供する。本発明の微生物は、フォトバクテリウム属に属し、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素生産能を有する微生物である。β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素生産能を有するフォトバクテリウム属に属する微生物の例としては、フォトバクテリウム属(Photobacterium sp.) JT−ISH−224株(寄託番号:NITE BP−87)が挙げられる。なお、上記のフォトバクテリウム属の微生物は一般に海洋性細菌であり、海水中または海産の魚介類から分離される。たとえば、本発明のフォトバクテリウム属 JT−ISH−224株は石川県産のカマスから分離されたものである。
本発明の微生物は、例えば以下に説明するようなスクリーニング法を用いて分離することができる。海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を微生物源とする。海水、海砂、海泥はそのままもしくは滅菌海水で希釈し、接種源とする。海産魚介類は表面の粘液等をループで擦り採って接種源としたり、内臓器を滅菌海水中で磨砕した液を接種源としたりする。これらをマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントアガー培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの平板培地上に塗布し、様々な温度条件下で生育する海洋性微生物を取得する。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントブロス培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの液体培地を用い、それぞれの微生物を培養する。微生物が十分生育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集める。集めた菌体に界面活性剤である0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁する。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕する。この細胞破砕液を酵素溶液として、常法にしたがってシアル酸転移活性を測定し、シアル酸転移活性を有する菌株を得ることができる。
本発明のフォトバクテリウム属 JT−ISH−224株は上記のスクリーニング法を用いることで得られた。得られた上記の菌株の菌学的性質および生理学生化学的性質、ならびに16S−rRNA遺伝子の塩基配列解析による種の同定については、実施例1に詳述する。
フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株は、ブタペスト条約の規約に従って、2005年3月11日付でNITE BP−87として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD:National Institute of Technology and Evaluation, Patent Microorganisms Depositary;日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を製造する方法
本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を製造する方法にも関する。好ましい態様において本発明の方法は、本発明の酵素を高生産する。具体的には、本発明の方法における本発明の酵素の生産性は、1Lの培養液あたり50U/L以上、1,000U/L以上、10,000U/L以上である。
(1)β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現する微生物を培養することによる当該酵素の製造方法
本発明の一態様において、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素はフォトバクテリウム属に属する微生物由来であり、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素生産能を有する微生物を培地に培養し、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を生産させ、これを採取することによって得られる。
ここで用いる微生物としては、フォトバクテリウム属に属し、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素生産能を有する微生物であれば、いずれの菌株でも用いることができる。フォトバクテリウム属に属するものが好ましい。本発明の方法において用いる微生物の例としては、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株(寄託番号NITE BP−87)が挙げられる。
上記微生物の培養に用いる培地としては、それらの微生物が利用し得る炭素源、窒素源、無機物等を含むものを用いる。炭素源としては、ペプトン、トリプトン、カゼイン分解物、肉エキス、ブドウ糖等が挙げられ、好ましくはペプトンを用いる。窒素源としては、酵母エキスを用いるのが好ましい。塩類としては、塩化ナトリウム、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、臭化カリウム、塩化ストロンチウム、ほう酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム等を適宜組み合わせて用いるのが好ましい。
また、上記成分を含んだマリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)を用いてもよい。さらには、上記塩類を適度に含む人工海水を用い、これにペプトン、酵母エキス等を添加した培地を用いてもよい。培養条件は培地の組成や菌株によって多少異なるが、例えば、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株を培養する場合、培養温度は20〜30℃、好ましくは25〜30℃程度、培養時間は6〜48時間、好ましくは15〜24時間程度である。
目的とする酵素は菌体内に存在するため、公知の菌体破砕法、例えば超音波破砕法、フレンチプレス破砕法、ガラスビーズ破砕法、ダイノミル破砕法などのいずれかの方法を行えばよく、その菌体破砕物から目的とする酵素を分離精製する。本発明の方法における好ましい菌体破砕法は超音波破砕法である。例えば、菌体破砕物から遠心分離により固形物を除去した後に、得られた菌体破砕液上清を市販の陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、CDP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、CMP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、疎水性カラム等のカラムクロマトグラフィーおよびネイティブ−PAGE等を適宜組み合わせて精製することができる。
なお、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は完全に精製してもよいが、部分精製品でも十分な活性を有するため、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は精製品であってもよく、または部分精製品であってもよい。
(2)組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を製造する方法
本発明は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸を含む発現ベクター、および当該発現ベクターを含有する宿主細胞を提供する。そして、本発明は、当該発現ベクターを含有する宿主細胞を、組換えタンパク質の発現に適する条件下で培養して、発現された組換えタンパク質を回収することにより組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を製造する方法も提供する。
本発明の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を製造するためには、使用する宿主に応じて選ばれた発現ベクターに、哺乳動物、微生物、ウィルス、または昆虫遺伝子等から誘導された適当な転写または翻訳調節ヌクレオチド配列に機能可能に連結したβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸配列を挿入する。調節配列の例として、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに、転写および翻訳の開始および終結を制御する適切な配列が挙げられる。
本発明のベクターに挿入されるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸配列は、上述した本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸の塩基配列である。この配列は、リーダー配列を含んでいても、含んでいなくてもよい。リーダー配列を含む場合、配列番号1のヌクレオチド1−42に相当するリーダー配列であってもよく、また他の生物源由来のリーダー配列に置き換えてもよい。リーダー配列を置き換えることによって、発現したタンパク質を宿主細胞の外に分泌させるように発現システムを設計することも可能である。
また、本発明の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質は、当該酵素をコードする核酸に続いて、Hisタグ、FLAGTMタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼなどをコードする核酸を連結した核酸をベクターに挿入することにより、融合タンパク質として発現することも可能である。本発明の酵素をこのような融合タンパク質として発現させることにより、当該酵素の精製および検出を容易にすることができる。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質の発現に適する宿主細胞には、原核細胞、酵母または高等真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主で用いる適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, (1985)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌または枯草菌が含まれる。大腸菌のような原核細胞を宿主として使用する場合、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質は、原核細胞内での組換えポリペプチドの発現を容易にするためにN末端メチオニン残基を含むようにしてもよい。このN末端メチオニンは、発現後に組換えα2,6−シアル酸転移酵素タンパク質から切り離すこともできる。
原核宿主細胞内で用いる発現ベクターは、一般に1または2以上の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するか、または独立栄養要求性を付与する遺伝子である。原核宿主細胞に適する発現ベクターの例には、pBR322(ATCC37017)のような市販のプラスミドまたはそれらから誘導されるものが含まれる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有するので、形質転換細胞を同定するのが容易である。適切なプロモーターならびにβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸のDNA配列が、このpBR322ベクター内に挿入される。他の市販のベクターには、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, スウェーデン、ウプサラ)およびpGEM1(Promega Biotech.、米国、ウイスコンシン州、マディソン)などが含まれる。
原核宿主細胞用の発現ベクターにおいて通常用いられるプロモーター配列には、tacプロモーター、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター、ラクトースプロモーター(Changら、Nature 275:615, 1978;およびGoeddelら、Nature 281:544, 1979、引用によりその全体を本明細書に援用する。)などが含まれる。
また、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を酵母宿主内で発現させてもよい。好ましくは、サッカロミセス属(Saccharomyces、例えば、S. cerevisiae )を用いるが、ピキア属(Pichia)またはクルイベロミセス属(Kluyveromyces)のような他の酵母の属を用いてもよい。酵母ベクターは、2μ酵母プラスミドからの複製起点の配列、自立複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択可能なマーカー遺伝子を含有することが多い。酵母α因子リーダー配列を用いて、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質の分泌を行わせることもできる。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適する他のリーダー配列も知られている。酵母を形質転換する方法は、例えば、Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 1929-1933, 1978(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系を用いて、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を発現することもできる。哺乳動物起源の株化細胞系も用いることができる。哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳制御配列は、ウィルスゲノムから得ることができる。通常用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウィルス、アデノウイルス2などから誘導される。SV40ウィルスゲノム、例えば、SV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位から誘導されるDNA配列を用いて、哺乳動物宿主細胞内での構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝子要素を与えてもよい。哺乳動物宿主細胞内で用いるためのベクターは、例えば、OkayamaおよびBerg(Mol. Cell. Biol., 3: 280, 1983、引用によりその全体を本明細書に援用する。)の方法で構築することができる。
本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を産生する1つの方法は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、当該タンパク質が発現する条件下で培養することを含む。次いで、用いた発現系に応じてβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を培養培地または細胞抽出液から回収する。
組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を精製する操作は、用いた宿主の型および本発明のタンパク質を培養培地中に分泌させるかどうかといった要因に従って適宜選択される。例えば、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を精製する操作には、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、CDP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、CMP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、疎水性カラム等のカラムクロマトグラフィーおよびネイティブ−PAGE等、またはそれらの組み合わせが含まれる。また、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素に精製を容易にするタグなどを融合させて発現させた場合には、アフィニティークロマトグラフィーによる精製方法を利用してもよい。例えば、ヒスチジンタグ、FLAGTMタグ、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)などを融合させた場合には、それぞれ、Ni−NTA(ニトリロトリ酢酸)カラム、抗FLAG抗体を連結したカラム、またはグルタチオンを連結したカラム、などを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は電気泳動的に単一バンドになるまで精製してもよいが、部分精製品でも十分な活性を有するため、本発明のβ−ガラクトシド−2,6−シアル酸転移酵素は精製品であってもよく、または部分精製品であってもよい。
抗体
本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質に対する抗体を提供する。本発明の抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質、またはそのフラグメント、に対して作製してもよい。ここで、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素のフラグメントは、当該酵素のアミノ酸配列中、少なくとも6アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、または少なくとも30アミノ酸を含む配列を有するフラグメントである。
抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素またはそのフラグメントを、当該技術分野において抗体作製のために用いられる動物、例えば、限定されるわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギなどに免疫して作製してもよい。抗体はポリクローナル抗体であっても、またはモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、当業者に周知の抗体作製方法に基づいて作製することができる。
本発明の抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質をアフィニティー精製により回収するのに用いることができる。本発明の抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を、ウエスタンブロッティングやELISAなどのアッセイにおいて検出するのに用いることもできる。
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされてきている糖鎖の合成・生産手段を提供するという観点において貢献する。特に、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、既存のものと比較しても、生産効率が高く、比活性が高く、さらに受容体基質特異性が広範囲である。シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、糖鎖機能という観点から極めて重要な糖であるため、シアル酸転移酵素は糖転移酵素の中でも最も需要が高い酵素の一つであり、本発明の新規なシアル酸転移酵素の提供は、そのような高い需要に応えるものである。
図1−1は、JT−ISH−224株の粗酵素液を、ピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)およびCMP−シアル酸に反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.995分のピークはPA−ラクトース、4.389分のピークはPA−6’−シアリルラクトース、5.396分のピークはPA−3’−シアリルラクトースである。 図1−2は、JT−ISH−224株の粗酵素液を、ピリジルアミノ化(PA)ラクトースに反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。図1−1の実験に対してシアル酸供与体であるCMP−シアル酸を反応液に混合していない対照実験の結果である。保持時間が3.993分のピークはPA−ラクトースである。 図1−3は、PA−ラクトースの標品のHPLC分析結果を示す図である。PA−ラクトースは、保持時間4.026分のピークとして現れる。 図1−3は、PA−3’−シアリルラクトースの標品のHPLC分析結果を示す図である。PA−3’−シアリルラクトースは、保持時間5.447分のピークとして現れる。 図1−5は、公知の酵素であるPhotobacterium damselae JT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をPA−ラクトースおよびCMP−シアル酸に反応させた反応溶液(ピリジルアミノ化α2,6−シアリルラクトースが生成されている)のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が4.000分のピークはPA−ラクトース、4.406分のピークはPA−6’−シアリルラクトースである。 図1−6は、公知の酵素であるPhotobacterium damselae JT0160株由来のα2,6−シアル酸転移酵素をPA−ラクトースに反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。図1−5の実験に対し、CMP−シアル酸を反応液に混合していない対照実験である。保持時間が3.995分のピークはPA−ラクトースである。 図2−1は、JT−ISH−224由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性における反応pHの影響を示すグラフである。図中の略号は、それぞれ以下のものを示す:Ac:酢酸バッファー、Cac:カコジル酸バッファー、Phos:リン酸バッファー、TAPS:TAPSバッファー。 図2−2は、JT−ISH−224由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性における反応温度の影響を示すグラフである。 図2−3は、JT−ISH−224由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性における反応液中のNaCl濃度の影響を示すグラフである。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。

実施例1: β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を生産する微生物のスクリーニングと菌株の同定
海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を接種源とした。この接種源をマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる平板培地上に塗布し、15℃、25℃もしくは30℃で生育する微生物を取得した。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる液体培地を用いてそれぞれの微生物を培養した。微生物が十分成育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集めた。集めた菌体に、0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕した。この細胞破砕液を粗酵素溶液としてシアル酸転移活性を測定し、シアル酸転移活性を有する菌株JT−ISH−224株を得た。なお、JT−ISH−224株はカマスの内臓から得られた。
シアル酸転移活性は、J. Biochem., 120, 104-110 (1996) (引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法で測定した。具体的には、糖供与体基質CMP−NeuAc(70nmol、14CでNeuAcをラベルしたCMP−NeuAc 約20,000cpmを含む。NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す)、糖受容体基質としてラクト−ス(1.25μmol)、NaClを0.5M濃度になるように添加し、および上記に記した方法で調製した酵素を含む反応溶液(30μl)を用いて酵素反応を行った。酵素反応は25℃で10分間から180分間程度行った。反応終了後、反応溶液に1.97mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をDowex1×8(PO4 3‐ フォーム、0.2×2cm、BIO−RAD製)カラムに供した。このカラムの溶出液(0〜2ml)に含まれる反応生成物、すなわち、シアリルラクト−スに含まれる放射活性を測定することで、酵素活性を算出した。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量である。
次に、シアル酸の結合様式を明らかにするために、PA−ラクトースを基質とする反応を行った。得られた粗酵素液を用い、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行った。ピリジルアミノ化糖鎖としては、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を用い分析した。5μlの粗酵素液に1.5μlの5mM CMP−NeuAcおよび1.5μlの10pmol/μl糖受容体基質を加え、25℃下で18時間反応させた。反応終了後、100℃で2分間反応溶液を処理することにより酵素を失活させた。その後、HPLCで反応生成物の分析を行った。HPLCシステムとしてShimadzu LC10A(島津製作所製)を用い、分析カラムにはTakara PALPAK Type R(タカラバイオ製)を用いた。0.15% N−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン(pH5.0)で平衡化したカラムに72μlの溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を加えた反応液を注入した。ピリジルアミノ化糖鎖の溶出には溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)および溶出液B(0.5%、n−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を用い、30〜50%溶出液Bの直線濃度勾配法(0〜20分)および100%溶出液B(21〜35分)により、順次ピリジルアミノ化糖鎖を溶出した。なお、分析は以下の条件で行った(流速:1ml/min、カラム温度:40℃、検出:蛍光(Ex:320nm、Em:400nm))。その結果、JT−ISH−224株はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性およびβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなった(図1−1〜6)。
JT−ISH−224株の細菌学的同定
得られたJT−ISH−224株の性質は以下の通りであった:
菌学的性質
(1)細胞の形態は桿菌で、大きさは0.7〜0.8μm×1.0〜1.5μm。
(2)運動性 +
(3)グラム染色性 −
(4)胞子の有無 −
生理学生化学的性質
(1)生育温度 4℃では−、25℃では+、30℃では+、37℃では−
(2)集落の色調 特徴的集落色素を産生せず
(3)O/Fテスト +/−
(4)カタラーゼテスト +
(5)オキシダーゼテスト +
(6)グルコースからの酸産生 +
(7)グルコースからのガス産生 +
(8)発光性 −
(9)硝酸塩還元 +
(10)インドール産生 +
(11)ブドウ糖酸性化 −
(12)アルギニンジヒドロラーゼ +
(13)ウレアーゼ −
(14)エスクリン加水分解 −
(15)ゼラチン加水分解性 −
(16)β‐ガラクトシダーゼ +
(17)ブドウ糖資化性 −
(18)L−アラビノース資化性 −
(19)D−マンノース資化性 −
(20)D−マンニトール資化性 −
(21)N−アセチル−D−グルコサミン資化性 −
(22)マルトース資化性 −
(23)グルコン酸カリウム資化性 −
(24)n−カプリン酸資化性 −
(25)アジピン酸資化性 −
(26)dl−リンゴ酸資化性 −
(27)クエン酸ナトリウム資化性 −
(28)酢酸フェニル資化性 −
(29)チトクロームオキシダーゼ +
(30)O/129感受性、10μg −、15μg +
(31)菌体内DNA のGC含量(モル%)39.4%
16S rRNA遺伝子の塩基配列解析
JT−ISH−224株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の全塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。塩基配列を配列番号5に示した。
JT−ISH−224株はマリンアガー上での生育性、桿菌、グラム染色性、グルコース発酵的分解性、O/129感受性などの形態観察および生理・生化学的性状試験の結果からビブリオ科に属することが示された。さらに、JT−ISH−224株の16S rRNA遺伝子のDNA塩基配列はフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)基準株ATCC11040の16S rRNA遺伝子の配列に最も相同性が高く、その相同率は99.2%であること、次にフォトバクテリウム・イリオピスカリウム(Photobacterium iliopiscarium)基準株ATCC51760の16S rRNA遺伝子の配列に相同性が高く、その相同率は99.1%であることが明らかとなった。これらの結果から、JT−ISH−224株はビブリオ科フォトバクテリウム属(Photobacterium sp.)に属する微生物であることが明らかとなった。

実施例2:JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングと塩基配列決定、および当該遺伝子の大腸菌での発現
(1)JT−ISH−224株におけるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモローグの存在の確認
実施例1でβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなったJT−ISH−224株において、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在するかどうかを明らかにするため、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。JT−ISH−224の菌体ペレット約0.5gから、Qiagen Genomic−tip 100/G(Qiagen社製)を用い、キット添付の説明書きに従って、約100μgのゲノムDNAを調製した。次に、JT−ISH−224株のゲノムDNA数μgを制限酵素EcoRI、またはHindIIIで消化し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分画後、0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングにより、ゲルをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(アマシャムバイオサイエンス製)に転写した。このフィルターに関して、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(GeneBankアクセッション番号:E17028)の部分断片(ATGからHindIIIまでの約1.2kbEcoRI−HindIII断片)をプローブとして用いて、サザンハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション実験はECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用した。キット添付の説明書きに従ってプローブをラベリングした。ハイブリダイゼーションは、キット中のhybridization bufferにBlocking試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、37℃(通常42℃)で4時間行った。洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、50 ℃(通常55℃)で20分を二回、2xSSC中で室温、5分を一回行った。シグナルの検出は、キット添付の説明書きに従った。その結果、EcoRI消化で、約12.5kbのバンドが、HindIII消化で、約9kbのバンドが検出された。この結果から、JT−ISH−224株には、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のホモローグが存在することが明らかとなった。
(2)JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニング
(i)ゲノムライブラリー構築
JT−ISH−224株のゲノムDNA1−2μgにつき、0.1〜0.2ユニットの四塩基認識の制限酵素Sau3AIを反応させ、部分分解を行った。ゲノムDNAは総量80μg処理した。反応バッファーは酵素に添付のものを用い、反応条件は37℃、30分とした。反応終了後、反応液に最終濃度25mMのEDTA pH8.0を加え、フェノール・クロロホルム処理を行った。ゲノムDNAをエタノール沈殿で回収し、TE 400μlに溶解した。遠心チューブ(日立製作所製40PA)に、グラジエント作製装置を用いて、40%シュークロースバッファー(20mM Tris pH8.0,5mM EDTA pH8.0,1M NaCl)と10%シュークロースバッファーから、40−10%のグラジエントを作製し、そこへ上記の部分分解DNA溶液を重層した。超遠心機(日立製作所製SCP70H、ローター:SRP28SA)を用いて、26,000rpm、20℃、15時間遠心した。遠心後チューブの底部に25Gの針で穴を空け、底部の液から1mlずつ回収した。回収したゲノムDNAを含むサンプルの一部を、サブマリン電気泳動糟を用い、0.5−0.6%アガロースゲル/TAEバッファー中で、26V、20時間電気泳動を行い、9−16kbのサイズのDNAを含む画分を把握した。マーカーとしてλ/HindIIIを用いた。9−16kbのサイズのDNA断片を含む画分にTEを2.5ml加えシュークロース濃度を下げた後,エタノール沈殿、リンスを行い、少量のTEに溶解した。
JT−ISH−224株のゲノムライブラリー作成のためのベクターとして、λDASH II(Stratagene製)を用いた。λDASH II/BamHIベクターとゲノムDNA断片のライゲーション反応はStratagene製のライゲーションキットを用いて、12℃で一晩行った。反応後、反応液をGigaPack III Gold Packaging extractと反応させ、ゲノムDNAが組み込まれたλベクターをファージ粒子に取り込ませた。ファージ液は500μlのSMバッファーと20μlのクロロホルム中で4℃保管した。大腸菌XL1−Blue MRA(P2)(Stratagene製)をLBMM(LB+0.2%マルトース+10mM MgSO4)中でA600=0.5になるまで培養し、この培養液200μlに、適量のファージ溶液を加え、37℃で15分間培養した。ここへ48℃で保温したNZYトップアガロースを4ml加え、混合し、NZYアガープレート(直径9cmのプラスチックシャーレ)にプレーティングした。プレートを37℃で一晩培養し、プラーク数を数え、titerを計算したところ、ライブラリーサイズは約30万pfu(plaque forming unit)と算出された。
(ii)プラークハイブリダイゼーションとJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子を含むゲノム断片のサブクローニング
次に、先述のフォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片をプローブに用い、JT−ISH−224株のゲノムライブラリーをスクリーニングした。直径9cmの丸形シャーレにλDASH II/BamHI ベクターキット(Stratagene社製)の説明書きに従って、数百pfuのファージを宿主菌XL1−blue MRA(P2)とともにプレーティングした。プラークをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(Amersham社製)に接触させ、メンブレン添付の説明書きに従ってアルカリ処理を行いDNAを変性させ、メンブレン上に固定させた。プローブのラベリング、ハイブリダイゼーション条件は、上記(1)に記載の方法で行った。その結果、プラーク精製を兼ねた二次選抜までに、8クローンを得、うち4つのプラークを回収し、それぞれ大腸菌XL1−blue MRA(P2)とともに、一枚数万pfuとなるようにNZYプレートにプレーティングし、一晩37℃で保温した。プラークが一面に出ている6枚のプレートにSMバッファーを4mlづつ注ぎ、4℃で一晩静置した。パスツールピペットで、ファージプレートライセートを回収し、QIAGEN Lambda Mini Kit(キアゲン社製)で、λDNAを抽出、精製した。これらの4種のλDNAサンプルを、制限酵素EcoRIとHindIII、EcoRIとBamHI、またはEcoRIとXhoIで消化した。消化物をアガロースゲル電気泳動で分画し、上述の(1)と同様にナイロンメンブレンフィルターに転写した。このフィルターを用いて、再度フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子の部分断片をプローブに用い、サザン分析を行った。その結果、EcoRI−BamHI消化の場合、10kbのバンドが検出された。10kbの長さのゲノムは常法で高コピープラスミドベクターにサブクローン化するのは困難であると考えられたので、さらに各種の制限酵素を用いたサザンハイブリダイゼーションを行った。用いた酵素はBglII、EcoRV、KpnI、NheI、PstI、PvuII、SacI、SalI、XbaIである。その結果、EcoRVで6.6kb、KpnIで7kb、NheIで3.5kbのバンドが検出された。そこでλDNAサンプルを再度NheIで消化し、TAE緩衝液中で低融点アガロース(SeaPlaqueGTG)をもちいたアガロースゲル電気泳動を行った。3.5kbのDNA断片をゲルごと切り出し、ゲルと等量の200mM NaClを加え、65℃で10分処理し、ゲルを融解した。このサンプルをフェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出を各一回行い、エタノール沈殿によって3.5kbDNA断片を回収した。この断片をLigation kit(タカラバイオ製)を用いて、プラスミドベクターpBluescript SK(-)のXbaI部位(脱リン酸処理したもの)にライゲーションした。ライゲーション反応後、DNAをエレクトロポレーションによって大腸菌TB1に形質転換し、アンピシリン(100(g/mL)を含むLA寒天培地にプレーティングした。37℃一晩培養し得られたコロニーを複数、LB培地(アンピシリン入り)に接種し、37℃で一晩振とう培養し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition(引用によりその全体を本明細書に援用する))に従いプラスミドを抽出した。
(iii)JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子の全塩基配列の決定
次に、上記でインサートDNAが確認されたプラスミドに関して、M13プライマー(タカラバイオ製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、3.5kb NheI断片の両端の塩基配列を決定した。得られたDNA配列を、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス社製)を用いて、アミノ酸配列に翻訳し、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のGeneBankデータベースに対して、BLASTプログラムによる同一性検索を行った。その結果、片方のDNA配列から翻訳されたアミノ酸配列が、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列と有意な同一性を示した。同一性を示した領域の方向性から、3.5kb NheI断片の中には完全なJT−ISH−224株β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子が含まれることが示唆された。
次に、JT−ISH−224株の同酵素の遺伝子のDNA配列を完全に決定するため、3.5kb NheI断片から得られたDNA配列を基に、2種のプライマー:
ISH224-26ST-C3-R(5'-TTCATCGTCATCTAATCGTGGC-3' (22 mer):配列番号6);
ISH224-26ST-C4-R(5'-AGTTGTTGCGTACCACAAGT-3' (20 mer):配列番号7);
を合成し、塩基配列決定に用いた。
これらのプライマーを用いて、上述の様に塩基配列を決定した結果、配列表の配列番号1の配列を得た。この配列は、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の全塩基配列である。フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のORFは、1545塩基対からなり、514個のアミノ酸をコードしていた。このアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。GENETYX Ver.7を用いてDNA配列、およびアミノ酸配列の解析を行ったところ、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のDNA配列は、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子と63%の同一性を有していた。またアミノ酸配列でも、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)と54.5%の同一性を示した。
(3)JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子発現ベクターの構築
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移酵素活性を有するかどうかを調べるため、またJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を大量に得るため、同遺伝子の全長、およびN末端側のシグナルペプチド部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列について、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7で解析を行ったところ、N末端の17アミノ酸がシグナルペプチドであると予測された。そこで、遺伝子全長(本実施例においてISH224−N0C0と表記する)をクローン化するためのプライマーISH224-26ST-N0BspHI(5'- AGAATATCATGAAAAACTTTTTATTATTAAC-3' (31 mer):配列番号8)、ISH224-26ST-C0BamHI(5'-TTTTTTGGATCCCTAGACTGCAATACAAACACC-3' (33 mer):配列番号10)、さらにシグナルペプチド部分のアミノ酸が除かれたタイプのタンパク質をコードする遺伝子(本実施例においてISH224−N1C0と表記する)をクローン化するためのプライマーISH224-26ST-N1PciI(5'-CTTGTAACATGTCAGAAGAAAATACACAATC-3' (31 mer):配列番号9)、ISH224-26ST-C0BamHI(5'-TTTTTTGGATCCCTAGACTGCAATACAAACACC-3' (33 mer):配列番号10)を設計、合成した。
3.5kb NheI断片を含むプラスミドを鋳型に、これらのプライマーを用いてPCRを行い、発現ベクターに組み込むためのJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子を増幅した。PCRの反応条件は以下のように設定した。50μlの反応液中に、鋳型DNA 500ng、10× Ex taq buffer 5μl、2.5mM 各dNTP 4μl、プライマー 50pmole、Ex taq(タカラバイオ製)0.5μlをそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK製)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 2分を5回、72℃ 6分を1回行った。その結果、ISH224−N0C0でおよそ1.55kb、ISH224−N1C0でおよそ1.5kbのPCR産物が増幅された。これらのPCR産物を、ベクターpCR4TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。ライゲーション反応はベクターキット添付の説明書きに従った。大腸菌TB1にエレクトロポレーション法を用いてDNAを導入し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition)に従いプラスミドDNAを抽出した。インサートの確認されたクローンに関して、M13プライマー(Takara社製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、PCR産物の塩基配列をその両端から決定した。その結果、ISH224−N0C0においては、配列表の配列番号1の第718番目のチミン(T)がシトシン(C)に塩基置換されていた。この変異によって、コドンがTTAからCTAに変化するが、これらのコドンはともにロイシン(Leu)をコードするため、アミノ酸変異は生じない。一方、ISH224−N1C0には塩基配列の変化はなかった。ISH224−N1C0の塩基配列は配列番号3に示す。
塩基配列が確認されたISH224−N0C0ならびにISH224−N1C0の代表クローンそれぞれ一つについて、制限酵素BspHIとBamHI(ISH224−N0C0の場合)、または制限酵素PciIとBamHI(ISH224−N1C0の場合)で二重消化した後、上述(2)の(ii)と同様にゲル精製した。大腸菌発現用ベクターはpTrc99A(Pharmacia LKB製)を用いた。このベクターを制限酵素NcoIとBamHIで二重消化しゲル精製したものを、制限酵素処理を行ったISH224−N0C0ならびにISH224−N1C0のPCR産物とTakara Ligation Kit(タカラバイオ製)を用いてライゲーションし、大腸菌TB1に形質転換した。常法に従いプラスミドDNAを抽出、制限酵素分析して、インサートの組み込みを確認し、ISH224−N0C0/pTrc、ならびにISH224−N1C0/pTrcを完成した。
さらに、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の各種短縮型たんぱく質を作成するため、以下のプライマーを設計した。
プライマー名、配列(配列番号)、長さ
224-26-N2Bsp AAACTTTCATGACGCAACAACTATTAACAGAA(配列番号15)、32mer
224-26-N3Bsp AAGTAATCATGAACGTAGTGGCTCCATCTTTA(配列番号16)、32mer
224-26-N3.1Bsp CACGTGTCATGACTCTTCAGCAGCTAATGGAT(配列番号17)、32mer
224−26−N2Bspでは、N末端側62アミノ酸が欠失し、かつN末端にメチオニンが導入される。224−26−N3Bspでは、N末端側110アミノ酸が欠失し、かつN末端にメチオニンが導入される。224−26−N3.1Bspでは、N末端側127アミノ酸が欠失し、かつN末端にメチオニンが導入される。これらのプライマーと、上述のプライマーISH224−26ST−C0BamHIとの組み合わせで、ISH224−N1C0を鋳型に用い、上記と同様にPCRを行った。得られたPCR産物をベクターpCR4TOPO(Invitrogen社製)にクローニングし、塩基配列を確認したところ、すべての組み合わせのクローンに関して、それらの塩基配列は、鋳型としたISH224−N1C0の塩基配列と100%の相同性を示した。224−26−N2BspとISH224−26ST−C0BamHI の組み合わせから得られるクローンをN2C0、224−26−N3BspとISH224−26ST−C0BamHI の組み合わせから得られるクローンをN3C0、224−26−N3.1BspとISH224−26ST−C0BamHI の組み合わせから得られるクローンをN3.1C0と命名した。これらのクローンについて、制限酵素BspHIとBamHIで二重消化した後、上述のように、大腸菌発現用ベクターはpTrc99Aにクローニングし、ISH224−N2C0/pTrc、ISH224−N3C0/pTrc、ならびにISH224−N3.1C0/pTrcを完成した。
(4)発現誘導と活性測定
上記(3)で得られた5種類のクローン(ISH224−N0C0/pTrc、ISH224−N1C0/pTrc、ISH224−N2C0/pTrc、ISH224−N3C0/pTrc、及びISH224−N3.1C0/pTrc)に関して、タンパク質発現誘導実験を行った。各クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1の単一コロニーを、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地(6ml)に接種し、A600=0.5程度になるまで30℃で菌を前培養し、その後IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド、和光純薬工業社製)を最終濃度で1mMとなるように加え、30℃でさらに4時間程度振とう培養した。培養液4ml中の菌体を遠心分離によって集めた。この菌体を、200μlの0.336%トリトンX−100および0.5M塩化ナトリウムを含む20mM ビストリス緩衝液(pH7.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。得られた破砕液を粗酵素液とし、これを0.336%トリトンX−100を含む20mM カコジル酸緩衝液(pH5.0)で200倍希釈し、活性測定に供試した。反応は2反復で行った。反応条件は表1−1および表1−2の脚注に示す通りである。その結果、下記の表1−1および表1−2に示すように、ISH224−N3.1C0/pTrc以外のクローンの粗酵素液中には糖供与体であるCMP−NeuAc中の14CでラベルされたNeuAcを糖受容体基質であるラクト−スに転移する因子、即ちシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。以上の結果から、ISH224−N0C0/pTrc、ISH224−N1C0/pTrc、ISH224−N2C0/pTrc、及びISH224−N3C0/pTrcを導入した大腸菌にはシアル酸転移酵素が発現されていることが明らかとなった。
以上、ISH224−N3C0が、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の活性を保持する最小のクローンであった。よって、配列番号2のうち少なくともアミノ酸111−514が存在すればβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の活性を保持しうることが判明した。
Figure 0004977125
Figure 0004977125
(5)β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性の確認
上記(4)のISH224−N1C0クローンおよびISH224−N0C0クローンから調製した粗酵素液を用いて、ISH224−N0C0/pTrc、ならびにISH224−N1C0/pTrcを導入した大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素がβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性を有するかどうか調べた。実施例1と同様に、糖受容体としてピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ社製PA−Sugar Chain 026)を用い、酵素反応を行った。その結果、実施例1と同様に、PA−6’−シアリルラクトース(Neu5Acα2−6Galβ1−4Glc−PA)が検出された。すなわち、両クローン株由来のシアル酸転移酵素はいずれもβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性を有することが明らかとなった。これらの結果から、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子がクローニングされ、かつ、大腸菌内で発現されたことが証明された。
実施例3:JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の生産性
ISH224−N0C0クローンとISH224−N1C0クローンの比較
実施例2で得られたISH224−N0C0クローンとISH224−N1C0クローンに関して、経時的なタンパク質発現誘導実験を行った。各クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1の単一コロニーを、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地(6ml)に接種し、30℃で約8時間培養した。この前培養液を抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地(300ml)に接種し、30℃で振とう培養した。OD600=0.5程度になった時、IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド、和光純薬工業社製)を最終濃度で1mMとなるように加え、30℃でさらに振とう培養した。培養4、6、22,および28時間後、培養液中の菌体を遠心分離によって集めた。この菌体を、0.336%トリトンX−100含む20mM ビストリス緩衝液(pH6.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。得られた破砕液を粗酵素液とし、これを0.336%トリトンX−100を含む20mM カコジル酸緩衝液(pH5.0)で200倍希釈し、活性測定に供試した。反応は2反復で行った。反応条件は表2の脚注に示す通りである。その結果、下記の表2に示すように、ISH224−N0C0クローンでは、IPTG添加4時間後に、β−ガラクトシド−α2,6シアル酸転移活性が最大となり、その生産量は5,501U/L・培地であった。一方、ISH224−N1C0クローンではIPTG添加22時間後に、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性が最大となり、その生産量は10,776U/L・培地であった。
Figure 0004977125
以上より、ISH224−N0C0クローンよりISH224−N1C0クローンの方が、β−ガラクトシド−α2,6シアル酸転移酵素の生産性が高いことが明らかとなった。
本出願前に明らかにしたフォトバクテリウム・ダムセラ由来の組換え型のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の生産性、すなわち、プラスミドpEBSTΔ178を形質転換した大腸菌によるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の生産性は224.5U/L(Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996))である。この酵素と比較し、JT−ISH−224由来組換えα2,6−シアル酸転移酵素の生産性は約48倍高いことが明らかとなった。また、酵素の種類が異なるが、微生物由来のシアル酸転移酵素としては生産性の高いパステレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のα2,3−シアル酸転移酵素の生産性は6,000U/L(Yu, H. et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17618-17619, 2005)である。この酵素と比較しても、JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の生産性は、約1.8倍程度高い。
実施例4−1:ISH224−N1C0からのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の抽出、精製および精製タンパク質のアミノ末端アミノ酸配列の決定
(1)抽出及び精製
LBAmp平板培地上で継代培養したISH224−N1C0のコロニーから菌体をループで採取し、30μlの×200アンピシリン(400mg/20ml)を添加した6 ml−LB液体培地10mlに接種し、30℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
本培養は、以下の手順で実施した。1.5mlの×200アンピシリン(400mg/20ml)+300μlの1M IPTG(1.192g/5ml)を添加した300ml−LB培地を1000ml容のコブ付フラスコに300ml張り込み、これを9本(合計2.7L)用意した。各々のフラスコに前培養液12mlを接種し、30℃、毎分180回転で24時間振とう培養した。培養液を遠心分離し、菌体を回収した。湿重量で約15gを得た。
この菌体を、990mlの0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH6.0)に懸濁し、1.6g/26mlとし、氷冷下で超音波破砕した。菌体破砕液を4℃、100,000×gで1時間、遠心分離を行い、上清を得た。
この粗酵素液を、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH6.0)で平衡化したHiLoad 26/10 Q Sepharose HP(Amersham社製)という陰イオン交換カラムに吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH6.0)から1M塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が0.25M付近で溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
回収した画分を20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で希釈し、予め0.336%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したハイドロキシアパタイト(Bio−Rad製)に吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)から0.336%トリトンX−100を含む500mMリン酸緩衝液(pH6.0)へ直線濃度勾配法で溶出させ。その結果、リン酸緩衝液濃度が125mM付近に溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
この画分をMonoQ 5/50 GL(Amersham社製)陰イオン交換カラムに吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH6.0)から1M 塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が300mM付近で溶出される酵素活性を有する画分を回収した。
活性のあった画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した結果、目的酵素は単一のバンドを示し、約56,000の分子量を示した。精製された画分の比活性は、菌体破砕時の比活性に比べて9.4倍に上昇した(表3−1)。以上より、JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の比活性は113U/mgであり、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の比活性5.5U/mg(J. Biochem., 120, 104-110, 1996, T.Yamamoto et al.)と比較し、約21倍であった。また、酵素の種類が異なるが、パステレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の比活性は60U/mg(Yu, H. et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17618-17619, 2005.)である。この酵素と比較しても、JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の比活性は、約1.9倍高い。
粗酵素液からのISH224−N1C0クローンのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の精製について、上述したそれぞれの精製工程を経た試料の酵素活性を表3−1に示す。酵素活性は、実施例1に記載したのと同様にJ. Biochem. 120, 104-110(1996)に記載されている方法に準じて、表3−1脚注に示した反応条件で測定した。また、タンパク質の定量はCoomassie Protein Assay Reagent(PIERCE製)を用いて、添付されたマニュアルにしたがってタンパク質の定量を行った。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量とした。
Figure 0004977125
(2)アミノ末端アミノ酸配列の決定
上記(1)で単一バンドまで精製した酵素溶液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した。泳動後にタンパク質をPVDF膜に転写し、CBBにて染色した後、目的のバンド部分を切り出し、Procise 494 HT Protein Sequencing System(Applied Biosystems)でアミノ酸配列を分析した。その結果、アミノ末端がセリンで始まる配列の15残基目(Ser Glu Glu Asn Thr Gln Ser Ile Ile Lys Asn Asp Ile Asn Lys)まで確定することができた。この結果から、ISH224−N1C0クローンの形質転換大腸菌が生産したβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質において、アミノ末端のメチオニンは大腸菌体内でプロセスされたと考えられる。
実施例4−2:ISH224−N3C0からのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の抽出及び精製
(1)抽出及び精製
LBAmp平板培地上で継代培養したISH224−N3C0のコロニーから菌体をループで採取し、30μlの×200アンピシリン(400mg/20ml)を添加した6 ml−LB液体培地10mlに接種し、30℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
本培養は、以下の手順で実施した。1.5mlの×200アンピシリン(400mg/20ml)+300μlの1M IPTG(1.192g/5ml)を添加した300ml−LB培地を1000ml容のコブ付フラスコに300ml張り込み、これを18本(合計5.4L)用意した。各々のフラスコに前培養液12mlを接種し、30℃、毎分180回転で24時間振とう培養した。培養液を遠心分離し、菌体を回収した。湿重量で約33.1gを得た。
この菌体を、538.5mlの0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH6.0)に懸濁し、1.6g/26mlとし、氷冷下で超音波破砕した。菌体破砕液を4℃、100,000×gで1時間、遠心分離を行い、上清を得た。
この粗酵素液を、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH6.0)で平衡化したHiLoad 26/10 Q Sepharose HP(Amersham社製)という陰イオン交換カラムに吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH6.0)から1M塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が0.25M付近で溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
回収した画分を20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で希釈し、予め0.336%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したハイドロキシアパタイト(Bio−Rad製)に吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)から0.336%トリトンX−100を含む500mMリン酸緩衝液(pH6.0)へ直線濃度勾配法で溶出させ。その結果、リン酸緩衝液濃度が125mM付近に溶出された酵素活性を有する画分を回収した。 この画分をMonoQ 5/50 GL(Amersham社製)陰イオン交換カラムに吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis−Tris緩衝液(pH6.0)から1M 塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が300mM付近で溶出される酵素活性を有する画分を回収した。
活性のあった画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した結果、目的酵素は単一のバンドを示し、約40,000の分子量を示した。精製された画分の比活性は、菌体破砕時の比活性に比べて131.5倍に上昇した(表3−2)。以上より、JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N3C0の比活性は264U/mgであり、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の比活性5.5U/mg(J. Biochem., 120, 104-110, 1996, T.Yamamoto et al.)と比較し、約48倍であった。また、酵素の種類が異なるが、パステレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素の比活性は60U/mg(Yu, H. et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17618-17619, 2005.)である。この酵素と比較しても、JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N3C0の比活性は、約4.4倍高い。
粗酵素液からのISH224−N3C0クローンのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N3C0の精製について、上述したそれぞれの精製工程を経た試料の酵素活性を表3−2に示す。酵素活性は、実施例1に記載したのと同様にJ. Biochem. 120, 104−110(1996)に記載されている方法に準じて、表3−2脚注に示した反応条件で測定した。また、タンパク質の定量はCoomassie Protein Assay Reagent(PIERCE製)を用いて、添付されたマニュアルにしたがってタンパク質の定量を行った。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量とした。
Figure 0004977125
実施例5:JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適pH、至適温度および至適塩濃度
実施例4−1で調製した精製酵素を用い、JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の至適pH、至適温度、至適塩濃度を調べた。
(1)JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適pH
酢酸バッファー(pH4.0、pH4.5、およびpH5.0)、カコジル酸バッファー(pH5.0、pH5.5、pH6.0、pH6.5、およびpH7.0)、リン酸バッファー(pH7.0、pH7.5、およびpH8.0)、TAPSバッファー(pH8.0、pH8.5、およびpH9.0)を調製し、これを用いて、25℃で各pHにおける酵素活性を測定した。
その結果、図2−1に示すように、pH5.0において、酵素活性が最大であった。なお、各pHにおける酵素活性はpH5.0における酵素活性を100とする相対活性で示した。
(2)JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適温度
カコジル酸バッファー(pH5.0)を用いて、10℃から50℃までの5℃毎の反応温度において、酵素活性を測定した。
その結果、図2−2に示すように、30℃において、酵素活性が最大であった。なお、各温度における酵素活性は30℃における酵素活性を100とする相対活性で示した
(3)JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適塩濃度
カコジル酸バッファー(pH5.0)を用いて、30℃で、反応液中のNaCl濃度をそれぞれ0M、0.1M、0.25M、0.5M、0.75M、1.0M、1.5M、2.0Mに調整し、酵素活性を測定した。
その結果、図2−3に示すように、0.5Mから0.75Mにおいて酵素活性は最大となった。また、0Mから1.0Mまではほぼ同程度の酵素活性の高さを維持した。なお、各NaCl濃度における酵素活性はNaCl濃度0Mにおける酵素活性を100とする相対活性で示した。
実施例6:JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびJT0160菌株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素(公知酵素)の受容体基質特異性(単糖・二糖類・三糖類)の比較
材料および方法
JT−ISH−224由来N1C0組換え大腸菌およびフォトバクテリウム・ダムセラ JT0160菌株から調製した菌体破砕液を、イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて電気泳動的に単一バンドまで精製したβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて、各種の単糖、二糖類および三糖類へのシアル酸の転移活性の有無を調べるために、以下の実験を行った。
各種の糖受容体基質を用いたシアル酸転移反応
反応溶液24μl中に、糖供与体基質CMP−14C−NeuAcを含むCMP−NeuAc(10.9nmol(8485cpm)、反応溶液中での最終濃度:0.455mM)、20mMカコジル酸緩衝液(pH5.0)で溶解した各種糖受容体基質(1μmol、反応溶液中での最終濃度:42mM)、シアル酸転移酵素(JT−ISH−224由来N1C0では3.0mU、JT0160由来では4.3mU)、NaCl(反応溶液中での最終濃度:500mM)からなる反応溶液を調製して、30℃で2分間、あるいは60分間、酵素反応を行った。なお、糖受容体基質として用いた単糖は、メチル−α−D−ガラクトピラノシド(Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OMe)、メチル−α−D−グルコピラノシド(Glc−α−OMe)、メチル−β−D−グルコピラノシド(Glc−β−OMe)、メチル−α−D−マンノピラノシド(Man−α−OMe)、メチル−β−D−マンノピラノシド(Man−β−OMe)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GalNAc)の8種類を用いた。二糖類として、ラクト−ス(Gal−β1,4−Glc)、N−アセチルラクトサミン(Gal−β1,4−GlcNAc)、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−N−アセチルグルコサミニド(Gal−β1,3−GlcNAc−β−OMe)、メチル−α−D−ガラクトピラノシル−α1,3−ガラクトピラノシド(Gal−α1,3−Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−ガラクトピラノシド(Gal−β1,3−Gal−β−OMe)の5種類を用いた。三糖類として、2'−フコシルラクト−ス(Fuc-α1,2-Galβ1,4-Glc )の1種類を用いた。但し、表4−2に示す糖鎖、メチル−α−D−ガラクトピラノシル−α1,3−ガラクトサミニド(Gal−α1,3−Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−ガラクトサミニド(Gal−β1,3−Gal−β−OMe)および2'−フコシルラクト−ス(Fuc-α1,2-Galβ1,4-Glc)については最終濃度8.4mMで反応させた。
酵素反応終了後、反応溶液に1.98mlの5mMリン酸バッファー(pH6.8)を添加して酵素反応を停止した。その後、5mMリン酸バッファー(pH6.8)で希釈した酵素反応溶液(2ml)を、AG1−×2Resin(PO4 3‐ フォーム、0.2×2cm)カラムに供した。このカラムは、AG1−×2Resin(OH‐form、BIO-RAD社製)を1Mリン酸バッファー(pH6.8)に懸濁し、30分後レジンを蒸留水で洗浄した後、蒸留水に懸濁して作成した。このカラムの溶出液(0〜2ml)の放射活性を測定した。このカラムの溶出液には、反応で生じた14C−NeuAc(N−アセチルノイラミン酸)が結合した反応生成物および未反応の糖受容体基質が含まれるが、未反応のCMP−14C−NeuAcはカラムに保持されたままである。従って、酵素反応の結果生じた各種シアル酸含有糖鎖由来の14Cの放射活性は、全て反応生成物由来であり、この画分の放射活性から酵素活性を算出することができる。
上記の方法を用いて、それぞれの糖受容体基質に転移されたNeuAcの放射活性を測定して転移されたシアル酸を算出した。
結果
今回糖受容体基質として用いた14種類の単糖、二糖、三糖のいずれにもシアル酸が転移していることが明らかとなった(表4−1および表4−2)。JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、公知のJT0160菌株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素と比較して、広範囲な受容体基質について高い糖転移活性を示した。より具体的には、メチル−β−D−ガラクトピラノシド、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルラクトサミン、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−N−アセチルグルコサミニド、メチル−β−D−ガラクトピラノシル−β1,3−ガラクトピラノシド、2'−フコシルラクト−スの6種類の糖受容体において、JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0は、公知のJT0160菌株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素よりも高い活性を示し、広い受容体基質特異性を有することが明らかとなった。なお、各受容体基質に対する相対活性は、ラクトースに対するシアル酸転移活性を100とした場合を示す。
Figure 0004977125
Figure 0004977125
実施例7:JT−ISH−224由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびJT0160菌株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素(公知酵素)の糖タンパク質に対する受容体基質特異性の比較
糖受容体基質として、アシアロフェツインを用いた。2mgのアシアロフェツインを1mlの20mM Bis-tris緩衝液(pH6.0)に溶解させて、糖受容体基質溶液とした。糖供与体基質としてCMP−NeuAcを用いた。糖受容体基質溶液40μl、糖供与体基質5μl、酵素溶液5μl(いずれも10mU)を混合して、25℃、2時間インキュベートしてシアル酸転移反応を行った。反応終了後、反応溶液を0.1 M塩化ナトリウムで平衡化したセファデックスG−50スーパーファイン(0.8x18.0cm)に供して、ゲルろ過を行った。糖タンパク質が含まれるゲルろ過の溶出液画分(2〜4mlの画分)を集め、この画分の放射活性を液体シンチレーションカウンターを用いて測定することで、糖受容体基質に転移したシアル酸の定量を行った。
その結果、いずれの酵素もアシアロフェツインにシアル酸を転移することが明らかとなった。また、JT−ISH−224由来のβ−ガラクトシド−α2,6シアル酸転移酵素(N1C0)は、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160菌株由来のβ−ガラクトシド−α2,6シアル酸転移酵素と比較して、シアル酸の転移効率が高いことが明らかとなった。
Figure 0004977125
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされてきている糖鎖の合成・生産手段を提供する。特に、シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、糖鎖機能という観点から極めて重要な糖であるため、シアル酸転移酵素は糖転移酵素の中でも最も需要が高い酵素の一つである。本発明の新規なシアル酸転移酵素は、糖鎖を応用した医薬品、機能性食品等の開発に利用することが可能である。

Claims (14)

  1. 配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基15−514、配列番号4および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、単離されたタンパク質。
  2. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
    (a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基15−514、配列番号4および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1またはそれより多くのアミノ酸の保存的置換を含み、それにより当該アミノ酸配列と85%以上のアミノ酸同一性を有する、アミノ酸配列;または
    (b)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基15−514、配列番号4および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
    を含んでなる、前記タンパク質。
  3. 配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸によってコードされる、単離されたタンパク質。
  4. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
    (a)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列;または、
    (b)配列番号1、配列番号1の塩基43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列の相補鎖に、65℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件、および65℃、0.2×SSC、0.1%SDSの洗浄条件下でハイブリダイズする塩基配列;
    を含んでなる核酸によってコードされる、前記タンパク質。
  5. フォトバクテリウム属に属する微生物由来である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質。
  6. 配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基15−514、配列番号4および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする、単離された核酸。
  7. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
    (a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基15−514、配列番号4および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1またはそれより多くのアミノ酸の保存的置換を含み、それにより当該アミノ酸配列と85%以上のアミノ酸同一性を有する、アミノ酸配列;または
    (b)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基15−514、配列番号4および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列;
    を含んでなるタンパク質をコードする、前記核酸。
  8. 配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列を含んでなる単離された核酸。
  9. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
    (a)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列;または
    (b)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド43−1545、配列番号3および配列番号11からなる群より選択される塩基配列の相補鎖に、65℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件、および65℃、0.2×SSC、0.1%SDSの洗浄条件下でハイブリダイズする塩基配列;
    を含んでなる、前記核酸。
  10. 請求項6ないし9のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
  11. 請求項10に記載の発現ベクターで形質転換した宿主細胞。
  12. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
    1)フォトバクテリウム属(Photobacterium sp.)JT−ISH−224株(寄託番号NITE BP−87)を培養し;
    2)培養した微生物または培養上清から、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を単離する;
    ことを含んでなる、前記製造方法。
  13. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
    1)請求項6ないし9のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる発現ベクターで宿主細胞を形質転換し;
    2)得られた形質転換細胞を培養し;そして、
    3)培養した形質転換細胞またはその培養上清から、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を単離する;
    ことを含んでなる、前記製造方法。
  14. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質に対する抗体。
JP2008504969A 2006-03-14 2006-08-10 新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4977125B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008504969A JP4977125B2 (ja) 2006-03-14 2006-08-10 新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2006/304993 WO2007105305A1 (ja) 2006-03-14 2006-03-14 新規なβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法
JPPCT/JP2006/304993 2006-03-14
JP2008504969A JP4977125B2 (ja) 2006-03-14 2006-08-10 新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法
PCT/JP2006/315850 WO2007105321A1 (ja) 2006-03-14 2006-08-10 新規なβ-ガラクトシド-α2,6-シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2007105321A1 JPWO2007105321A1 (ja) 2009-07-30
JP4977125B2 true JP4977125B2 (ja) 2012-07-18

Family

ID=46678988

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008504969A Expired - Fee Related JP4977125B2 (ja) 2006-03-14 2006-08-10 新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4977125B2 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1998038315A1 (fr) * 1997-02-28 1998-09-03 Japan Tobacco Inc. GENE CODANT LA β-GALACTOSIDE α-2,6-SIALYLTRANSFERASE

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1998038315A1 (fr) * 1997-02-28 1998-09-03 Japan Tobacco Inc. GENE CODANT LA β-GALACTOSIDE α-2,6-SIALYLTRANSFERASE

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2007105321A1 (ja) 2009-07-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8372617B2 (en) β-galactoside-α2,6-sialyltransferase, a gene encoding thereof, and a method for enhancing enzyme activity
US20120070863A1 (en) Novel beta-galactoside-alpha2,3-sialyltransferase, a gene encoding thereof, and a method for producing thereof
US8187838B2 (en) β-Galactoside-α2, 6-sialyltransferase, a gene encoding thereof, and a method for producing thereof
WO2010143713A1 (ja) 新規タンパク質およびそれをコードする遺伝子
JP4977125B2 (ja) 新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法
WO2006043406A1 (ja) 糖転移酵素の酵素活性を向上させる方法
JP2011223885A (ja) 新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法
EP1876234B1 (en) Beta-galactoside-alpha2,3-sialyltransferase, gene encoding the same, and process for production of the same
WO2012014980A1 (ja) 新規酵素タンパク質、当該酵素タンパク質の製造方法及び当該酵素タンパク質をコードする遺伝子
JP4856636B2 (ja) 新規なβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法
JP4812625B2 (ja) 糖転移酵素の酵素活性を向上させる方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090722

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20110912

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111004

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111201

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120113

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120207

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120228

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120315

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120413

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150420

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees