JP2011022475A - 回転駆動部材、これを用いた駆動伝達機構および定着装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】駆動伝達体10と環状被駆動体14とを組み立てる方法は、(a)冶具挿入工程、(b)接着剤塗布工程、(c)挿入工程、(d)接着剤潰し工程、(e)乾燥工程の手順で行う。特に、(d)接着剤潰し工程では、接合部位7を環状被駆動体14の径方向外側から押し付け、接着剤3中に発生する気泡Bを外部に排出する。接着剤3中の気泡Bに起因する接着強度の低下を無くして、接着剤3の接着強度が高められる。
【選択図】図3
Description
図1(a)は本発明が適用される駆動処理装置の実施の形態の概要を示す説明図である。(b)は(a)の駆動処理装置で用いられる駆動伝達部品の一例を示す説明図、(c)は(b)の駆動伝達部品の斜視説明図である。
同図において、駆動処理装置15は、モータ等の駆動源11からの駆動力が駆動伝達機構12を介して伝達される回転駆動部材13を処理要素に含み、処理要素による処理を駆動するものである。
ここで、駆動処理装置とは例えば画像形成装置や記録材処理装置などを指す。
また、回転駆動部材13としては、環状被駆動体14を有し、駆動伝達機構12の一部品である駆動伝達体10(図1(b)・(c)参照)を通じて環状被駆動体14に駆動力が伝達されるものであればよい。つまり、回転駆動部材13は、駆動伝達体10と、この駆動伝達体10の接合要素2(図1(b)・(c)参照)に接着剤3を介して接合される環状被駆動体14とを備えたものであればよい。回転駆動部材13にあっては、環状被駆動体14が駆動伝達体10よりも高い弾性率を有する材質で形成されており、潰れやすくなっている。
さらに、定着装置を例に挙げてより具体的に示すと、回転駆動部材13が未定着トナー像を加熱定着する定着ベルトとする態様がある。この構成は、加熱手段にて加熱される環状被駆動体14となるベルト本体と、定着ベルトに対向して接触転動する加圧ロールと、ベルト本体の径方向内側に配置されて加圧ロールとの間でベルト本体を加圧する円弧部材と、を備えたものとなる。
また、駆動伝達機構12としては、駆動伝達体10(図1(b)・(c)参照)と、この駆動伝達体10の駆動伝達要素1に係わりあって駆動伝達する他の駆動伝達体(ギア、ベルト等)を少なくとも含み、駆動源11からの駆動力を環状被駆動体14に伝達するものであれば、他の伝達機構であってもよい。
図1(b)・(c)において、駆動伝達体10は、回転駆動伝達可能な駆動伝達要素1と、この駆動伝達要素1と同軸に一体的に設けられ且つ接着剤3を介して環状被駆動体14に接合される接合要素2とを備え、前記接合要素2は、駆動伝達要素1の回転中心方向に延び且つ周面に接着剤3が塗布可能で、前記駆動伝達要素1よりも小径な円筒部4を有する。この円筒部4の周面には、円筒部4の周方向に交差する方向に沿って延び且つ円筒部4の周方向に並列配置される複数の並列溝5と、円筒部4の周方向に沿って延びる少なくとも一つの周方向溝6と、が形成される。
図2(a)は図1(b)に示す駆動伝達部品と環状被駆動体との接合部を模式的に示す説明図、(b)は(a)中の矢視IIb方向から見た側面図である。
図2に示すように、並列溝5周りに接着剤3を塗布すると、並列溝5周りの接着剤3のうち並列溝5に面した厚肉部が並列溝5の底壁及び両側壁に充填されて並列溝5に抱き込み固着される。このため、この並列溝5周りの接着剤3は環状被駆動体14と駆動伝達体10との間の回転方向についての接合強度が高められる。このため、駆動伝達体10から環状被駆動体14に回転力F2が伝達される際に、駆動伝達体10と環状被駆動体14との間の接着剤3が剥がれる可能性は少ない。
先ず、駆動伝達体10の接合要素2の好ましい態様としては、円筒部4周面のうち駆動伝達要素1側に周方向溝6を、この周方向溝6に対し駆動伝達要素1とは反対側に複数の並列溝5を配置するものが挙げられる。本態様によれば、並列溝5周りの接着剤3と、周方向溝6周りの接着剤3とを分離して設けるため、例えば並列溝5周りの接着剤3の一部が剥がれようとしても、周方向溝6周りの接着剤3に影響し難い点で好ましい。
さらに、周方向溝6の好ましい態様としては、周方向溝6に対する接着剤3の保持強度を高めるという観点からすれば、周方向溝6の深さ寸法が並列溝5の深さ寸法よりも深いものが挙げられる。
図3は組立方法の概要を示す模式図であり、図4は接着剤潰し工程の具体例を示す図であり、図5は、接着剤潰し工程において接着剤中の気泡を逃がす状態を模式的に示す図であり、図6および図7は、接着剤潰し工程の別の具体例を示す図である。
この組立方法は、(a)冶具挿入工程、(b)接着剤塗布工程、(c)挿入工程、(d)接着剤潰し工程、(e)乾燥工程からなる。
一方、冶具205を、小径部208と大径部207との段差に駆動伝達体10が当たるまで挿入する。この際、小径部208の外径寸法φ3と駆動伝達体10の内径寸法φ4との関係から、貫通孔206の軸線が駆動伝達体10の軸線に一致する。このように、冶具201,205を環状被駆動体14,駆動伝達体10に挿入することにより、冶具201,205の軸線に環状被駆動体14,駆動伝達体10の軸線を併せて、所謂芯あわせを行う。
なお、説明の便宜上、以下の説明において、冶具201,205によって駆動伝達体10に環状被駆動体14が仮接合された回転駆動部材13を未完成製品13Aという。
接着剤潰し工程に用いられる具体的な装置について説明する。図4(a)は押付動作を行う加圧装置を示す斜視図、(b)は部分断面図である。
加圧装置300は、中央に軸体202が挿入される貫通孔302を有して冶具205の径寸法よりも大きい長さの貴台301に対し、その両側には蝶番303を介して脚部304,304が設けられ、この各脚部304の先端には押付手段となるローラ305が回転可能に支持される。ローラ304の厚さ寸法dは、接合部位7の幅寸法Wよりも小さくなっている(図5参照)。
各脚部304は貴台301との間には、コイルバネ306が斜めに架設され、両脚部304が近づく方向、つまり内側に向けて押付力(例えば、0.01N/mm2以上1N/mm2以下)を発生させる。
この状態で、各ローラ305を環状被駆動体14の径方向外側から加圧を加えると、弾性材料から成る環状被駆動体14が湾曲して接合部位7の位置にある接着剤3を潰す形となる。
図5(a)はローラ305が環状被駆動体14に当たる前の状態を示し、(b)はローラ305が環状被駆動体14を湾曲させて接着剤3を潰した状態を示す図である。
同図に示すように、先の挿入工程で、環状被駆動体14の一側縁部に駆動伝達体10の円筒部4を挿入して、接着剤3が介在される接合部位7が形成される。しかし、この接着剤3には気泡Bが発生することがある。
このように、本発明による組立方法では、環状被駆動体14の一側縁部と駆動伝達体10の円筒部4とを接着する接着剤3から気泡を排除する接着剤潰れ工程を採用しているから、接着剤3中の気泡Bに起因する接着強度の低下を無くして、接着剤3の接着強度が高められる。
次に、(d)接着剤潰し工程に用いられる加圧装置について、他の具体例を示す。
図6に示す加圧装置310は、空気圧によって接合部位7を径方向外側から加圧するものである。
加圧装置310は、接合部位7を径方向外側から押し付けるゴム製の中空体となる環状体311を有する。この環状体311内に供給される空気は、空気ポンプ312から供給される空気を切替弁313で制御することによって調整される。切替弁313は3ポート2位置のスプール弁で構成され、位置(イ)の場合には、空気ポンプ312から環状体311に空気を供給し、位置(ロ)の場合には、環状体311内の空気をタンク314に排出する。
なお、環状体311は、空気が供給されることで、径方向内側が膨らむ形状とするため、当該環状体311の径方向内側を外側に比べて柔らかくなるように、その厚さを薄く形成してもよく、要は、接合部位7に対して押付力を発生させる形状であればよい。
加圧装置320は、先端に円弧状の円弧部322を有する一対の油圧アクチュエータ321,321を有し、各油圧アクチュエータ321に供給される油圧は、油圧ポンプ323から供給される油圧を切替弁324で制御することによって調整される。切替弁324は4ポート2位置で、位置(イ)・(ロ)で切り換えられるスプール弁で構成される。
一方、切替弁324において位置(ロ)の場合には、油圧ポンプ323から油圧アクチュエータ321のロッド側油室321Bに油を供給し、ボトム側油室321A内の油をタンク325に絞り弁326を介して排除する。これにより、円弧部322を油圧アクチュエータ321に引き戻す。
なお、円弧部322は、外側をなす外形部323Aと、この円弧部323Aの内側に張り付けられ、外形部323Aよりも柔らかい材料で形成あれたクッション部323Bと、を有する。
前記加圧装置300では、ローラ305を対向する位置に設ける場合を例示したが、1個或いは3個以上のローラを接合部位7の外周部に配置して、押し付けた状態で回転させる構成であってもよい。
また、加圧装置300は機械的に加圧する構成、加圧装置310は空気を用いて加圧する構成、加圧装置320は油圧を用いた加圧する構成を記載したが、加圧装置の構成はこれに限らず、接合部位7を径方向外側から押し付ける構成の装置であれば、他の構成であってもよい。さらに、押し付ける部位の形状もローラ305、環状体311、円弧状の円弧部322に限らず、他の形状であってもよい。
さらに、本例では、駆動伝達体10(円筒部4)の外側とその外側に挿入される環状被駆動体14の部分を接着剤3によって接合する接合部位7としたが、円筒部4の内側とその内側に挿入される環状被駆動体14の部分を接着剤3によって接合する接合部位とした場合にも適用可能である。つまり、加圧装置は、環状被駆動体の内側から外側の円筒部に向けて押し付ける構成とすればよい。
<実施形態>
<画像形成装置の全体構成>
図8は実施の形態1に係る駆動処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す。
同図において、画像形成装置は、複数の色成分(例えばイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))トナー像を形成する複数の画像形成部20(具体的には20Y、20M、20C、20K)を有し、各画像形成部20に対向した部位には所定方向に循環する中間転写ベルト21を配設される。この中間転写ベルト21の下部には記録材供給装置22が配設され、この記録材供給装置22から供給された記録材Sを搬送経路23に沿って搬送する。この搬送経路23のうち中間転写ベルト21からの画像転写部位には一括転写装置(二次転写装置)24が配設され、一括転写装置24の下流には、記録材Sに転写された各色成分トナー像が加熱定着される定着装置25が配設される。搬送経路23は搬送ローラ26によって経路が形成され、一括転写装置24で一括転写装置24を通過した記録材Sは、搬送ベルト27によって定着装置25に向けて搬送される。
本実施の形態において、定着装置25は、図9に示すように、環状のベルト本体61と、このベルト本体61の外周面に圧接配置されてベルト本体61に追従回転し且つベルト本体61との間に定着ニップ域を形成する加圧ロール62と、前記ベルト本体61の裏面に配置されて加圧ロール62との定着ニップ域間でベルト本体61を加圧する加圧パッド63と、前記ベルト本体61を電磁誘導加熱する電磁誘導加熱器67とを備えている。ベルト本体61の定着ニップ域の出口側には、ベルト本体61に巻き付いた記録材Sを剥離する剥離部材71が設けられる。
以下に定着装置25の主要要素について詳述する。
先ず、ベルト本体61は、内周面側から順に、耐熱性の高いシート状部材からなる基層61aと、この基層61a上に積層される導電層61bと、この導電層61b上に積層される弾性層61cと、この弾性層61c上に積層される表面離型層61dとを備えている。
さらに、弾性層61cは、厚さが10〜500μmであって、耐熱性、熱伝導性に優れたシリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が用いられる。
さらに、弾性層61cの熱伝導率λに関しては、λ=6×10-4〜2×10-3[cal/cm・sec・deg]が適している。これは、熱伝導率λが6×10-4[cal/cm・sec・deg]よりも小さい場合には熱抵抗が大きく、ベルト本体61の表層(表面離型層61d)における温度上昇が遅くなり、一方、熱伝導率λが2×10-3[cal/cm・sec・deg]よりも大きい場合には、硬度が過度に高くなったり、圧縮永久歪みが悪化することになる。
また、表面離型層61dは、記録材S上に転写された未定着トナー像と直接的に接触する層であるため、離型性および耐熱性に優れた材料を使用する必要がある。したがって、表面離型層61dを構成する材料としては、例えばテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が好適に用いられる。
また、加圧ロール62は、芯材(コア)としての金属製の円筒状ロール部材62aと、円筒状ロール部材62aの表面にシリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性を有する弾性層62bと、最外表面の表面離型層62cとで構成されている。
さらに、加圧パッド63は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料や、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)や液晶ポリマー(LCP)等の耐熱性樹脂等で形成されている。そして、加圧パッド63は、ベルト本体61の幅方向に対した記録材Sが通過する領域よりもやや広い領域に亘って配設されており、この加圧パッド63の長手方向の略全長に亘って加圧ロール62を加圧するように構成されている。
さらに、ベルト本体61内には加圧パッド63を支持する支持部材64が配設されている。
この支持部材64は加圧パッド63の長手方向に沿って延びる棒状に形成されており、加圧パッド63が抱き込み保持される保持片64aを有している。ここで、支持部材64の材料としては、加圧ロール62からの圧接力を受けたときのたわみ量が少なくなるように(例えば1mm以下)、所定以上の剛性が必要であり、鉄・SUS・アルミニウムなどの金属が好ましい。
さらにまた、本実施の形態では、ベルト本体61内には例えばFe−Ni合金などの感温磁性金属65が支持部材64に止め具66を介して固定されており、この感温磁性金属65は加圧パッド63とは反対側に位置し、ベルト本体61とは所定の空隙を有してベルト本体61の内側に対向配置されている。
また、ベルト本体61の外側で感温磁性金属65に対向する部位には電磁誘導加熱器67が配設されている。本例では、電磁誘導加熱器67は、ベルト本体61に対応する曲面を備えた台座68と、この台座68に支持された励磁コイル69と、この励磁コイル69に高周波電流を供給する図示外の励磁回路とを有している。
ここで、台座68は、絶縁性及び耐熱性を有する材料からなり、例えばフェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマ樹脂などを用いることが可能である。
また、励磁コイル69は、略円筒状のベルト本体61と一定の間隔で対向するように、ベルト本体61との対向面が略円筒曲面となっている。
このような電磁誘導加熱器67にあっては、図示外の励磁回路から励磁コイル69に高周波電流が供給されると、励磁コイル69の周囲に磁束が生成消滅を繰り返す。高周波電流の周波数としては例えば10〜500kHz程度に設定される。そして、生成された磁束がベルト本体61の導電層61bを横切るとき、その磁界の変化を妨げる磁界を生ずるように導電層61b中に渦電流が発生し、導電層61bの表皮抵抗に比例した電力でジュール熱が発生する。
次に、定着装置25の駆動伝達機構80の全体構成を図10乃至図12に基づいて説明する。
図10は定着装置を具体的に示す斜視図であり、図11は図10中の矢視XI方向から見た斜視図であり、図12は、図10中の矢視XII方向から見た斜視図である。
同図において、駆動伝達機構80は、ベルト本体61及び加圧ロール62を回転駆動させる回転駆動伝達機構81と、ベルト本体61に対して加圧ロール62を接離自在に移動する接離機構90とを備えている。
ここで、回転駆動伝達機構81は、図5〜図7に示すように、定着装置25の長手方向一方側に図示外の駆動モータを配設し、この駆動モータに連結される駆動ギア82を設けると共に、この駆動ギア82に加圧ロール62駆動伝達用の駆動伝達ギア83を噛み合わせることで加圧ロール62を回転駆動するようになっている。
なお、エンドキャップ100の詳細は後述する。
さらに、図10及び図12において、回転検出器96は、ベルト本体61の回転動作を制御するものであり、本例では、エンドキャップ100の回転動作を取り出す検出用ギア97を備え、この検出用ギア97と同軸に回転する回転検出板98を取付け、この回転検出板98の回転動作を光学センサ99にて検出するようになっている。
次に、図13乃至図15に基づいてエンドキャップ100の構成を説明する。
図13(a)は実施形態で用いられる駆動伝達体としての駆動伝達ギア(エンドキャップ)を示す斜視図、(b)は(a)中の矢視XIIIB方向から見た正面図、(c)は(a)中の矢視XIIIC方向から見た側面図である。図14(a)は図13(b)中の矢視XIVA−XIVA方向から見た断面図、(b)は図14(a)中のXIVB部を拡大した図である。図15(a)は図13(b)中のXVA部を拡大した図、(b)は図13(c)中の矢視XVB−XVB方向から見た断面図である。
同図において、エンドキャップ100(具体的には100a,100b)はベルト本体61の両端部に挿入装着される端部覆い蓋であり、ベルト本体61の内側に配設した支持部材64の両端部に形成された軸部(図示せず)に回転自在に嵌り合うようになっている。
このエンドキャップ100は、回転駆動伝達可能なギア部110と、このギア部110と同軸に一体的に形成されてベルト本体61の両側縁部内側に挿入して接合される接合部120とを有し、前記支持部材64の軸部(図示せず)に対して軸受部材105(図14参照)を介して回転自在に支持するようにしたものである。
つまり、エンドキャップと定着ベルトとの接合としてピン留め方式を用いた場合には、ピン部分にて応力が集中してしまい、その部分で定着ベルトが裂ける虞がある。
また、一部に応力が集中しないように、定着ベルトにエンドキャップを嵌め込み、嵌め込んだ部分に対し定着ベルトの外側からリング状のバンドを圧入する方式が考えられるが、この方式でも定着ベルトとエンドキャップとが滑ってしまう場合がある。
このため、応力が一部分集中せず、かつ、滑りが発生しない接合方式として接着剤による接着方式を採用するに至ったものである。
<ギア部>
より具体的に述べると、ギア部110は円筒体111の外周にギア歯(図示略)を所定ピッチ間隔にて形成したものであり、前記ギア歯の数についてはギア比に応じて適宜選定して差し支えなく、また、ギア形状については平ギアの平行歯に限られるものではなく、はすばギアの斜歯などは適宜選定して差し支えない。
一方、本実施の形態では、接合部120は、図13(a)〜(c)に示すように、ギア部110の回転中心方向に延び、且つギア部110の最大外径よりも小径な円筒体121を有している。なお、接合部120の円筒体121の内径とギア部110の円筒体111の内径とは同じでもよいし、別個でもよい。また、夫々の円筒体111,121の内周壁は段付きでも差し支えない。
そして、本実施の形態では、接合部120の円筒体121の周面には、円筒体121の中心方向に沿って延び、且つ円筒体121の周方向に並列配置される複数の並列溝130と、これらの複数の並列溝130に対して直交配置され且つ円筒体121の周方向に沿って延びる一つの周方向溝140とが形成されている。
さらに、本実施の形態では、接合部120は、円筒体121周面が突出方向に向かって窄まる傾斜勾配θを有している。この傾斜勾配θは、円筒体121周面の最大外径部の半径寸法と円筒体121先端の外径部の半径寸法との間の差分を円筒体121の突出方向における両者間の離間距離にて除したものであり、傾斜勾配が徐々に変化するものにあってはその平均的な傾斜勾配を意味するものである。
本例では、傾斜勾配θしては、ベルト本体61に対するエンドキャップ100の接合部120の嵌め込み易さと製造容易性、接着強度の観点から、0.5〜3°程度が好ましい。ここで、0.5°未満であると、接合部120の嵌め込み易さ、製造容易性という点で不十分であり、3°を超えてしまうと接着剤による接着性が不十分になり易い。
また、本例では、周方向溝140は円筒体121の周方向に沿って連続的に延びる凹溝141にて構成されている。
この凹溝141の幅wは接着剤を充填し易い程度の寸法であればよく、例えば0.5〜2.5mm程度が選定される。但し、凹溝141幅×円周長さが、引き抜き力に対して接着剤が応力を受ける剪断面積になるので、剪断面積×接着剤強度を引き抜き力より大きく設定する必要がある。
さらに、周方向溝140の凹溝141の底壁は、例えば図13(c)及び図15(b)に示すように、円周形状に沿った円周形状部142と、この円周形状部142の相対向する部位を直線状に切断した直線部143とを有している。この直線部143は元々は型製造上の要請に基づくものであるが、接着剤層と凹溝141との間の回転方向の滑りを抑制する作用を奏する。
次に、エンドキャップ100の製造例を図16に示す。
実施形態で用いられる駆動伝達ギアの製造方法の一例を示す説明図である。
同図において、エンドキャップ100が所定の樹脂材料(例えばPPS)で製造される場合を例に挙げると、図16に示すように、成形型160として、エンドキャップ100の内周面形状に対応した型形状を有する内型161と、エンドキャップ100のギア部110、接合部120(並列溝130,周方向溝140,仕切り壁150)の外周面形状に対応した型形状を有する例えば一対の割り型からなる外型162(具体的には162a,162b)とを用い、外型162と内型161との空間部163に溶融した樹脂材料164を流し込んでエンドキャップ100を型成形した後、割り型からなる外型162を取り外すと共に内型161から成形されたエンドキャップ100を取り外すようにすればよい。
なお、エンドキャップ100の製造法としては、上述した型成形に限られるものではなく、例えば溝のない状態で成型されたエンドキャップに機械加工を施し、溝を形成するようにしてもよい。
次に、ベルト本体61(環状被駆動体14)の両側縁部にエンドキャップ100(駆動伝達体10)を組み立てて定着ベルト60(回転駆動部材13)を製造する方法については、前述した如く、(a)冶具挿入工程、(b)接着剤塗布工程、(c)挿入工程、(d)接着剤潰し工程、(e)乾燥工程によって組立られ、接着剤中の気泡を排除した状態で接着固定される。
しかも、本例では、エンドキャップ100(例えばPPS)、ベルト本体61(例えばポリイミド)が合成樹脂製であることから、両者間に剥がれ力が作用したとしてもその剥がれ力を弾性にて吸収可能なように弾性接着剤が用いられている。この種の弾性接着剤としては、耐熱性を考慮するとシリコーン系が最適である。
次に、本実施の形態に係る定着装置の作動について説明する。
定着装置25は通常使用されていない時は、加圧ロール62はベルト本体61から離間した状態で待機している。
今、図10乃至図12に示すように、定着装置25を作動させる場合には、図示外の駆動モータからの駆動力を回転駆動伝達機構81に伝え、ベルト本体61及び加圧ロール62を駆動回転させる。駆動回転が始まり、エンドキャップ100の回転動作を回転検出板98の回転動作として光学センサ99にて検出すると、励磁コイル69に高周波の電流が流れ、ベルト本体61が加熱される。ベルト本体61の温度が所定の温度にまで上昇すると、加圧ロール62は接離機構90にてベルト本体61に対して接触して定着ニップを形成すると同時に、クラッチ入りギア85のクラッチが切れ、ベルト本体61の駆動は加圧ロール62の従動回転となる。
そして、加圧ロール62がベルト本体61に当接し、定着ニップが形成された数秒後に、未定着トナー像を乗せた記録材が定着ニップを通過し、熱と圧力によりトナーが記録材上に定着される。
また、定着動作中は、図示外の制御装置により、回転検出器96からの検出信号に基づいてベルト本体61の周速度が所定の速度となるように、加圧ロール62の回転数を制御するようになっている。
エンドキャップ100の接合評価について検討してみるに、エンドキャップ100とベルト本体61との接着剤200による接合性能は、例えば図18(a)に示すように、通常作用する荷重に対して接着された部材(本例ではエンドキャップ100,ベルト本体61)を一体の部材として振る舞わせることを要する。
ここで、ベルト本体61の弾性係数をk1、エンドキャップ100の弾性係数をk2とすると、接着剤200を介在させた全体としての弾性係数kは以下の通りである。
k=k1・k2/k1+k2
そして、エンドキャップ100とベルト本体61との間の接着剤200による接合性能は、例えば図18(b)に示すように、弾性域ではフックの法則に従い、変位xと荷重yとが略比例関係になるが、塑性域に至れば前記接着剤200による接合性能は塑性限度にて破断することになる。
よって、通常作用する荷重に対して接着剤による接合性能が維持されるように設計することが必要である。
これは、既述したように、エンドキャップ100の接合部120の溝構成(複数の並列溝130+周方向溝140)による作用(ベルト本体61の回転方向と離脱方向とに対する剥がれ阻止作用)と推測される。
(1)並列溝、周方向溝のレイアウト
周方向溝140がギア部110寄りに配置され、仕切り壁150を介して複数の並列溝130がギア部110の反対側に配置されていることから、複数の並列溝130及び周方向溝140周りの接着剤層が夫々他方側に流入することは少ない。
複数の並列溝130が接合部120の先端にて開口しているため、並列溝130周りの接着剤層が接合部120の先端に至るまで並列溝130内に充填されることになり、並列溝130の先端が塞がれている態様に比べて、ベルト本体61の回転方向に作用する剥がれ力に抗する力が大きい。
特に、複数の並列溝130を構成する凹溝131の底部開口132縁が湾曲部133として構成されているため、並列溝130周りの接着剤層が接合開始時に不均一に分布していたとしても、その不均一な接着剤部分が並列溝130の先端開口湾曲部133側に押し出され易く、並列溝130周りの接着剤層表面が均一になり易い。
さらに、本例では、並列溝130の凹溝131幅が凹溝131間の段差部幅よりも広く設けられているため、並列溝130周りの接着剤層が凹溝131内に充填され易くなっている。
周方向溝140は複数の並列溝130よりも深い凹溝141で構成されているため、同じ深さである態様に比べて、ベルト本体61の離脱方向に対する剥がれ阻止力がより大きく確保されることになり、ベルト本体61の離脱方向に対する接着剥がれがより生じ難い。
接合部120は円筒体121周面が突出方向に向かって窄まる傾斜勾配θを有しているため、ベルト本体61に対してエンドキャップ100の接合部120を嵌め込み易いばかりか、接合部120に塗布した接着剤層が接合開始時に不均一に分布していたとしても、その不均一部分が傾斜勾配θに従って円筒体121の先端側に押し出され易いことから、接合部120周りの接着剤層表面が均一になり易い。
このようなエンドキャップ100の接合評価は後述した実施例にて裏付けられる。
本実施の形態では、エンドキャップ100の接合部120の溝構成は、ギア部110側に周方向溝140を有し、仕切り壁150を介してギア部110の反対側に複数の並列溝130を有している態様であるが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば図17に示すように、エンドキャップ100の接合部120の円筒体121周面に複数の並列溝130を形成し、この複数の並列溝130と交差するように円筒体121の周面に沿って周方向溝140を例えば一つ形成するようにしてもよいし、あるいは、実施の形態1の周方向溝140に加えて図17に示す周方向溝を付加するようにしてもよいし、あるいは、複数の並列溝130に交差する複数の周方向溝140を形成する等適宜選定して差し支えない。
ここで、実施例1〜3及び比較例1〜4に係るエンドキャップについて説明すると以下の通りである。
実施例1:実施の形態1に係るエンドキャップ100の態様(接合部120に複数の並列溝130と周方向溝140とを設けた態様:図20(a)参照)。
比較例1:エンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面を平滑面122’(表面粗さRa=0.2μm程度)とした態様(図20(b)参照)。
比較例2:エンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面に複数の並列溝130’のみを設けた態様(図20(c)参照)。
比較例3:エンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面にローレット加工溝180’を設けた態様(図20(d)参照)。
比較例4:比較例1のエンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面の平滑面122’を粗面(表面粗さRa=2.0μm程度)とした態様。
また、剥がれトルク試験とは、各実施例、各比較例に係るエンドキャップの接合部と定着ベルトとをシリコーン接着剤にて接合した態様につき、エンドキャップ及び定着ベルトの一方を固定した状態で他方にトルクを作用させ、接着剤層が剥がれた時点の接着破壊に要する力を夫々2回測定したものである。
結果を図19(a)に示す。
同図によれば、比較例1を除いて接着破壊に要する力(剥がれ力)はある程度大きいことが理解される。
このエンドキャップの性能評価は、図19(a)に示す剥がれ力評価の他に、実機に夫々のエンドキャップを用いた定着装置を組込み、記録材を通過させたランニングストレス評価、並びに、加工性評価について行った。
結果を図19(b)に示す。
同図において、剥がれ力評価は、図19(a)に示すように、比較例1を除いて実施例1及び比較例2,3が良好であることが理解される。
このことからすれば、実施例1が、剥がれ力評価、ランニングストレス評価、加工性評価の全ての点において良好であり、比較例1〜3に比べて優れていることが理解される。
なお、実施例2,3も実施例1に比べてさらに良好であることが確認されている。
Claims (7)
- 回転駆動力が伝達される駆動伝達体と環状被駆動体とが接合される部位に接着剤を塗布し、当該部位が合わさるように前記被駆動体に前記駆動伝達体を挿入した状態で、前記部位において前記環状被駆動体を前記駆動伝達体に押し付けて前記接着剤を潰し、乾燥させて成る回転駆動部材。
- 請求項1記載の回転駆動部材において、
軸線が共通の2つの冶具に前記駆動伝達体および前記環状被駆動体をそれぞれ装着し、各々の前記冶具を共通の軸線上で近づけて前記環状被駆動体に前記駆動伝達体を挿入して成る
ことを特徴とする回転駆動部材。 - 請求項1または2記載の回転駆動部材において、
前記環状被駆動体における前記部位の外周面の1または複数の箇所で当該環状被駆動体の外周面を前記駆動伝達体に押し付ける押付部材を、当該外周面に沿って移動させることで、前記部位における前記接着剤を潰して成る回転駆動部材。 - 請求項1または2記載の回転駆動部材において、
前記環状被駆動体における前記部位の外周面に、気体が供給されることで内径が縮む中空の環状体を位置させ、当該環状体の縮径する内径が前記部位を径方向外側から押し付けることで、前記部位における前記接着剤を潰して成る回転駆動部材。 - 請求項1または2記載の回転駆動部材において、
前記環状被駆動体における前記部位の外周面に、当該環状被駆動体の外径と等しいまたは大きい内径の円弧状部材を対向配置し、各円弧状部材を径方向外側から押し付けることで、前記部位における前記接着剤を潰して成る回転駆動部材。 - 請求項1ないし5いずれか1に記載の回転駆動部材と、
駆動源からの駆動力に応じた回転駆動力を前記駆動伝達体及び前記環状被駆動体に伝達する
ことを特徴とする駆動伝達機構。 - 請求項1ないし5いずれか1に記載の回転駆動部材と、
前記回転駆動部材の環状被駆動体を加熱する加熱手段と、
前記環状被駆動体に向かい合う位置に配置された対向部材と、
前記環状被駆動体の内側に配置されて前記対向部材との間で前記環状被駆動体を加圧する円弧部材と、を備える
ことを特徴とする定着装置。
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